説明

欠陥検出装置、欠陥検出方法及びコンピュータプログラム

【課題】一様に連続している背景模様が存在する場合であっても、ゴミ、傷、汚れ等の欠陥を正しく検出することができる欠陥検出装置、欠陥検出方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】検出対象の欠陥のサイズを設定して記憶し、背景模様が一様に連続している第一の方向の指定を受け付けて記憶する。記憶された欠陥のサイズに応じた画像縮小率で、記憶された第一の方向へ縮小した縮小画像を生成する。縮小画像に対して縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を第一の方向に実行し、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する。多値画像と第一の拡大画像との差分演算を実行した差分画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体表面を撮像して取得した多値画像の、一様に連続している背景模様の中に存在するゴミ、傷、汚れ等の欠陥を検出する欠陥検出装置、該欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法、及び該欠陥検出方法における処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、ディジタルカメラで撮像により取得した、シェーディングと、ゴミ、傷、汚れ等の欠陥が形成する特異点とを含む元画像に対して、1ラインごとに最小2乗法を適用してn次近似を行い、全ライン分を統合して平坦化データとしてシェーディング画像データを生成し、元画像データとシェーディング画像データとの差分演算を実行して、差分が所定値よりも大きい特異点を示す場合に、該特異点を上記欠陥による特異点であると判定する検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、特許文献1では、周期的でない複雑なシェーディングが生じる場合、ユーザは、欠陥を検出するためのn次近似曲線の次数nを適切に設定するのが困難であり、次数nを大きく設定してシェーディング画像を生成した場合であっても、元画像にシェーディング画像が一致しない。そして、一致しない部分に近似誤差が生じ、該近似誤差による差分と、欠陥部分による差分とを区別することができない、という問題点があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献2では、設定したサイズ以下の欠陥画像を縮小画像から除去することで、元の多値画像と拡大画像との差分画像から、ユーザが所望するサイズ以下の欠陥を高い精度で検出することができる欠陥検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−050356号公報
【特許文献2】特開2009−199126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来例では、周期的でない複雑なシェーディングを解消することができるものの、背景模様が一様に連続している場合、例えば縞状の背景模様が生じている場合には、シェーディングについては解消することができるものの、縞状の模様は解消することができずに残存するという問題点があった。したがって、ゴミ、傷、汚れ等の欠陥を正しく検出することが困難になる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、一様に連続している背景模様が存在する場合であっても、ゴミ、傷、汚れ等の欠陥を正しく検出することができる欠陥検出装置、該欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法、及び該欠陥検出方法における処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1発明に係る欠陥検出装置は、撮像手段で撮像された多値画像から、撮像されている物体表面の欠陥を検出する欠陥検出装置において、検出対象の欠陥のサイズの設定を受け付けるサイズ設定受付手段と、該サイズ設定受付手段にて設定を受け付けた欠陥のサイズを記憶するサイズ記憶手段と、背景模様が一様に連続している第一の方向の指定を受け付ける方向指定受付手段と、該方向指定受付手段で指定を受け付けた第一の方向を記憶する方向記憶手段と、前記多値画像を、記憶された欠陥のサイズに応じた画像縮小率で、記憶された第一の方向へ縮小した縮小画像を生成する画像縮小手段と、前記縮小画像に対して前記縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第一の方向に実行するフィルタ処理手段と、該フィルタ処理手段によりフィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する画像拡大手段と、前記多値画像と前記第一の拡大画像との差分演算を実行した差分画像を生成する差分演算手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2発明に係る欠陥検出装置は、第1発明において、前記差分演算手段により生成された差分画像に対してノイズの低減度の設定を受け付けるノイズ低減度設定受付手段と、受け付けた前記ノイズの低減度を前記差分画像に対して減算又は加算して、ノイズ低減処理画像を生成するノイズ低減処理手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、第3発明に係る欠陥検出装置は、第1又は第2発明において、前記差分画像に対してゲインの設定を受け付けるゲイン設定受付手段と、受け付けた前記ゲインを前記差分画像に乗算して、強調処理画像を生成する強調処理手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、第4発明に係る欠陥検出装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記差分演算手段は、正の差分画像及び負の差分画像を生成するようにしてあり、前記正の差分画像及び前記負の差分画像のうち少なくとも一方の差分画像の選択を受け付ける差分画像選択受付手段と、受け付けた差分画像を選択する差分画像選択手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、第5発明に係る欠陥検出装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記フィルタ処理手段は、前記サイズ設定手段により設定された欠陥のサイズが大きいほど、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を大きく設定するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、第6発明に係る欠陥検出装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記背景模様のエッジ情報を抽出するエッジ情報抽出手段と、抽出したエッジ情報に基づいて前記第一の方向を特定する方向特定手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、第7発明に係る欠陥検出装置は、第6発明において、特定した前記第一の方向を、垂直方向又は水平方向となるよう画像を回転させる画像回転手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、第8発明に係る欠陥検出装置は、第1乃至第7発明のいずれか1つにおいて、前記画像縮小率を1に設定し、前記フィルタ処理手段は、前記サイズ設定手段により設定された欠陥のサイズに応じて、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を設定するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、第9発明に係る欠陥検出装置は、第1乃至第8発明のいずれか1つにおいて、前記方向指定受付手段により、前記第一の方向とは異なる方向である第二の方向の指定を受け付け、前記方向記憶手段は、前記方向指定受付手段で指定を受け付けた第二の方向も記憶し、前記画像縮小手段は、前記第一の拡大画像と前記多値画像との差分画像を、前記画像縮小率で前記第二の方向へ縮小した縮小画像を生成し、前記フィルタ処理手段は、前記縮小画像に対して欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第二の方向に実行し、前記画像拡大手段は、フィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第二の方向へ拡大した第二の拡大画像を生成し、前記差分演算手段は、前記第二の拡大画像と、前記第一の拡大画像と前記多値画像との差分画像である第一の差分画像との差分演算を実行した第二の差分画像を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
また、第10発明に係る欠陥検出装置は、第9発明において、前記画像縮小手段は、前記多値画像を、前記画像縮小率で前記第二の方向へ縮小した縮小画像を生成し、前記フィルタ処理手段は、前記縮小画像に対して欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第二の方向に実行し、前記画像拡大手段は、フィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第二の方向へ拡大した第三の拡大画像を生成し、前記差分演算手段は、前記第一の拡大画像と前記第三の拡大画像とを合成した合成画像と前記多値画像との差分演算を実行して差分画像を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
次に、上記目的を達成するために第11発明に係る欠陥検出方法は、撮像手段で撮像された多値画像から、撮像されている物体表面の欠陥を検出する欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法において、検出対象の欠陥のサイズの設定を受け付けるサイズ設定受付工程と、該サイズ設定受付工程にて設定を受け付けた欠陥のサイズを記憶するサイズ記憶工程と、背景模様が一様に連続している第一の方向の指定を受け付ける方向指定受付工程と、該方向指定受付工程で指定を受け付けた第一の方向を記憶する方向記憶工程と、前記多値画像を、記憶された欠陥のサイズに応じた画像縮小率で、記憶された第一の方向へ縮小した縮小画像を生成する画像縮小工程と、前記縮小画像に対して前記縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第一の方向に実行するフィルタ処理工程と、該フィルタ処理工程によりフィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する画像拡大工程と、前記多値画像と前記第一の拡大画像との差分演算を実行した差分画像を生成する差分演算工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
次に、上記目的を達成するために第12発明に係るコンピュータプログラムは、撮像手段で撮像された多値画像から、撮像されている物体表面の欠陥を検出する欠陥検出装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、検出対象の欠陥のサイズの設定を受け付けるサイズ設定受付処理と、該サイズ設定受付手段にて設定を受け付けた欠陥のサイズを記憶するサイズ記憶処理と、背景模様が一様に連続している第一の方向の指定を受け付ける方向指定受付処理と、該方向指定受付処理で指定を受け付けた第一の方向を記憶する方向記憶処理と、前記多値画像を、記憶された欠陥のサイズに応じた画像縮小率で、記憶された第一の方向へ縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理と、前記縮小画像に対して前記縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第一の方向に実行するフィルタ処理と、該フィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する画像拡大処理と、前記多値画像と前記第一の拡大画像との差分演算を実行した差分画像を生成する差分演算処理とを前記欠陥検出装置に実行させることを特徴とする。
【0020】
第1発明、第11発明及び第12発明では、撮像手段で撮像により取得した多値画像に含まれるシェーディングの発生状態の変化及び変動に依存せず、背景模様が一様に連続している第一の方向にのみ多値画像を縮小し、フィルタ処理を実行し、拡大して第一の拡大画像を生成することにより、ユーザが設定したサイズ以下の欠陥画像を縮小画像から除去する一方で、一様に連続している背景模様を縮小画像から消滅させずに残すことができるため、元の多値画像と第一の拡大画像との差分画像から、ユーザが所望するサイズ以下の欠陥を高精度で検出することができる。
【0021】
第2発明では、受け付けたノイズの低減度を差分画像に対して減算又は加算して、ノイズ低減処理画像を生成することにより、ユーザが設定した所望の低減度で差分画像からノイズを低減することができ、欠陥検出の精度を向上させるとともに、差分画像の視認性を向上させることができる。
【0022】
第3発明では、受け付けたゲインを差分画像に乗算して、強調処理画像を生成することにより、ユーザが設定した所望のゲインで差分画像を強調処理することができ、欠陥検出の精度をさらに向上させるとともに、差分画像の視認性を向上させることができる。
【0023】
第4発明では、生成された拡大画像(シェーディング画像)の輝度値に対して、輝度値が高い明欠陥画像を示す正の差分画像、及び輝度値が低い暗欠陥画像を示す負の差分画像のうち少なくとも一方の差分画像を自由に選択することができ、検出対象とするべき欠陥を選別することが可能となる。
【0024】
第5発明では、設定された欠陥のサイズが大きいほど、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を大きく設定することにより、より大きな欠陥に対しても適切に検出することが可能となる。
【0025】
第6発明では、背景模様のエッジ情報を抽出し、抽出したエッジ情報に基づいて第一の方向を特定することにより、背景模様が一様に連続している方向が変動した場合であっても、追従して欠陥を検出することが可能となる。
【0026】
第7発明では、特定した第一の方向を、垂直方向又は水平方向となるよう画像を回転させることにより、演算処理負荷の比較的大きい斜め方向の画像縮小処理、フィルタリング処理等を実行することがなく、演算処理負荷を低減しつつ、高い精度で欠陥を検出することが可能となる。
【0027】
第8発明では、画像縮小率を1に設定し、設定された欠陥のサイズに応じて、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を設定することにより、画像縮小処理を実行することなく、検出対象物の輪郭部分の抽出を抑制しつつ欠陥を検出することが可能となる。
【0028】
第9発明では、第一の方向とは異なる方向である第二の方向の指定を受け付け、第一の拡大画像と多値画像との差分画像を、設定された画像縮小率で第二の方向へ縮小した縮小画像を生成し、縮小画像に対して縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を第二の方向に実行し、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で第二の方向へ拡大した第二の拡大画像を生成し、第二の拡大画像と、第一の拡大画像と多値画像との差分画像である第一の差分画像との差分演算を実行した第二の差分画像を生成する。これにより、2つの方向に一様に連続している背景模様が存在する多値画像であっても、高い精度で欠陥を検出することが可能となる。
【0029】
第10発明では、多値画像を、設定された画像縮小率で第二の方向へ縮小した縮小画像を生成し、縮小画像に対して縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を第二の方向に実行し、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で第二の方向へ拡大した第三の拡大画像を生成し、第一の拡大画像と第三の拡大画像とを合成した合成画像と多値画像との差分演算を実行した差分画像を生成する。これにより、2つの方向に一様に連続している背景模様が存在する多値画像であっても、演算処理負荷を抑制しながらより高い精度で欠陥を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、撮像手段で撮像により取得した多値画像に含まれるシェーディングの発生状態の変化及び変動に依存せず、背景模様が一様に連続している第一の方向にのみ多値画像を縮小し、フィルタ処理を実行し、拡大して第一の拡大画像を生成することにより、ユーザが設定したサイズ以下の欠陥画像を縮小画像から除去する一方で、一様に連続している背景模様を縮小画像から消滅させずに残すことができるため、元の多値画像と第一の拡大画像との差分画像から、ユーザが所望するサイズ以下の欠陥を高精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1に係る欠陥検出装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法の各設定データの算出工程を示すフローチャートである。
【図3】背景模様が一様に連続しているX方向の指定を受け付けた場合の多値画像の変遷を示す例示図である。
【図4】背景模様が一様に連続しているY方向の指定を受け付けた場合の多値画像の変遷を示す例示図である。
【図5】元の多値画像と拡大画像との差分演算を実行して生成された差分画像の例示図である。
【図6】ノイズ低減処理及び強調処理を実行した後の差分画像の例示図である。
【図7】正の差分画像及び負の差分画像のうち少なくとも一方の差分画像の選択を受け付けた場合の差分画像の例示図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法の差分画像の取得処理工程を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2に係る欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法の各設定データの算出工程を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態3に係る欠陥検出方法による欠陥抽出用差分画像の例示図である。
【図11】X方向及びY方向に連続模様が存在する多値画像に対して、X方向及びY方向に連続して画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理、差分画像生成処理を実行した場合の差分画像の例示図である。
【図12】X方向及びY方向に連続模様が存在する多値画像に対して、X方向及びY方向に別個に画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行して差分画像を生成した場合の差分画像の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各実施の形態の説明で参照する図面を通じて、同一又は同様の構成又は機能を有する要素については、同一又は同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る欠陥検出装置の一構成例を示すブロック図である。図1において、本実施の形態1に係る欠陥検出装置1は、撮像手段2と、画像処理部3と、記憶手段4と、入力受付/画像表示部5とで構成される。
【0034】
撮像手段2は、例えばディジタルカメラとして機能し、検出対象物として例えばフィルム表面を撮像し多値画像を取得して画像処理部3に出力する。
【0035】
画像処理部3は、サイズ設定・記憶手段31と、縮小率設定手段32と、画像縮小手段33と、フィルタ処理手段34と、画像拡大手段35と、差分演算手段36と、ノイズ低減処理手段37と、強調処理手段38と、差分画像選択手段39と、方向設定・記憶手段40と、画像回転手段41とを含む。また、画像処理部3は、CPU、ROM、RAM、外部I/F等を含んで構成され、サイズ設定・記憶手段31、縮小率設定手段32、画像縮小手段33、フィルタ処理手段34、画像拡大手段35、差分演算手段36、ノイズ低減処理手段37、強調処理手段38、差分画像選択手段39、方向設定・記憶手段40、及び画像回転手段41の処理動作を制御する。
【0036】
記憶手段4は、画像メモリとして機能し、撮像手段2により撮像された元の多値画像、及び画像処理部3において各種処理を実行した後の画像を随時記憶する。また、各種の設定されたデータを記憶しておき、欠陥検出処理の実行時に読み出す。
【0037】
入力受付/画像表示部5は、コンピュータ用のモニタ、マウス、キーボード等で構成される。入力受付部は、例えばダイアログボックスとしてモニタの表示画面上に設けられ、サイズ設定受付手段51と、ノイズ低減度設定受付手段52と、ゲイン設定受付手段53と、差分画像選択受付手段54と、表示画像選択受付手段58と、方向指定受付手段59とを含む。画像表示部は、モニタの表示画面上の入力受付部に隣接して設けられ、元画像表示手段55と、拡大画像表示手段56と、差分画像表示手段57とを含む。ユーザは、表示画像選択受付手段58にて元の多値画像、拡大画像、及び差分画像のいずれかを選択して、モニタの画面上に表示させることができる。
【0038】
次に、画像処理部3の各構成について説明する。
【0039】
サイズ設定・記憶手段31は、入力受付/画像表示部5のサイズ設定受付手段51にて、ユーザから設定を受け付けた欠陥のサイズを記憶する。ここで、「欠陥のサイズ」とは、方向設定・記憶手段40で記憶されている方向に投影した場合の長さに相当する画素数を意味する。例えばX方向が記憶されている場合にはX方向の幅に相当し、Y方向が記憶されている場合にはY方向の高さに相当する画素数に相当する。
【0040】
方向設定・記憶手段40は、背景模様が一様に連続している方向(第一の方向)の指定を入力受付/画像表示部5の方向指定受付手段59で受け付け、指定を受け付けた方向を画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行する方向として記憶する。
【0041】
縮小率設定手段32は、サイズ設定・記憶手段31により設定されて記憶されている欠陥のサイズに応じて、撮像手段2により取得された元の多値画像に対する画像縮小率を画像縮小手段33に対して設定する。縮小率設定手段32は、欠陥のサイズが大きい(小さい)ほど、画像縮小率を大きく(小さく)設定するように、例えば、欠陥のサイズを引数とする画像縮小率の参照テーブルの形態で構成されている。
【0042】
なお、必ずしも参照テーブルである必要はなく、予め定められた規定の計算式に基づいて算出するようにしても良い。
【0043】
さらに、ここで述べている画像縮小率とは、例えば1/2倍から1/50倍までのものであり、その中で画像縮小率が大きいとは、例えば1/2倍より1/50倍が画像縮小率が大きいという定義であり、逆に画像縮小率が小さいとは、1/50倍より1/2倍が画像縮小率が小さいということを意味する。
【0044】
画像回転手段41は、背景模様が一様に連続している方向(第一の方向)が、垂直方向又は水平方向、例えばX方向又はY方向から傾いている場合、第一の方向が、垂直方向又は水平方向となるように画像を回転させる。これにより、背景模様が一様に連続している方向が垂直方向又は水平方向、例えばX方向又はY方向から傾いている場合であっても、回転後にX方向又はY方向について画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行することによって、一様に連続している背景模様を演算処理負荷を高めることなく除去することができる。
【0045】
画像縮小手段33は、例えば面積平均法という手法を用いる処理を行い、縮小率設定手段32により設定された画像縮小率で元の多値画像を、記憶されている方向に縮小した縮小画像を生成する。ここで、面積平均法は、例えば4画素×4画素の元の多値画像をX方向に1/4に縮小して、1画素×4画素の縮小画像を生成する場合、元の多値画像を4画素×1画素の4ブロックに分割し、各ブロックを構成する4画素の輝度値の平均値を算出し、各ブロックの平均値を1画素値として1画素×4画素の縮小画像を生成する手法である。
【0046】
また、例えば4画素×4画素の元の多値画像をY方向に1/4に縮小して、4画素×1画素の縮小画像を生成する場合、元の多値画像を1画素×4画素の4ブロックに分割し、各ブロックを構成する4画素の輝度値の平均値を算出し、各ブロックの平均値を1画素値として4画素×1画素の縮小画像を生成する。
【0047】
フィルタ処理手段34は、例えばメディアンフィルタに代表される二次元フィルタとして機能し、画像縮小手段33により生成された縮小画像に対して縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を、記憶されている方向に実行する。フィルタ処理手段34は、欠陥のサイズ(又は画像縮小率)が大きい(小さい)ほど、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を大きく(小さく)設定するように、欠陥のサイズ(又は画像縮小率)を引数とするフィルタサイズ(又はフィルタ通過回数)の参照テーブルを含んで構成され、縮小画像から、ユーザにより設定されたサイズ以下の欠陥画像を除去する。
【0048】
なお、必ずしも参照テーブルである必要はなく、予め定められた規定の計算式に基づいて算出するようにしても良い。
【0049】
ここで、「フィルタサイズ」とは、M画素×M画素の二次元フィルタの一辺を構成する画素数Mを指す。また、メディアンフィルタは、注目画素の画素値を、フィルタサイズ範囲内の全画素の画素値のうちの中間値で置き換えて出力する二次元フィルタである。本実施の形態1では、一方向へのフィルタ処理となるので、例えばX方向のフィルタ処理である場合、M画素×1画素の横方向に長いフィルタとなり、Y方向のフィルタ処理である場合、1画素×M画素の縦方向に長いフィルタとなる。フィルタサイズは、上述したMの値を意味する。
【0050】
画像拡大手段35は、例えばバイリニア補間法という手法を用いる処理を行い、フィルタ処理手段34により、記憶されている方向にフィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で拡大して拡大画像を生成する。該拡大画像は、元の多値画像に含まれるシェーディングに対応する。ここで、バイリニア補間法は、線形補間を二次元に拡大した補間法で、一画素の周囲4画素から補間対象画素までの距離に応じて重み付け平均された補間値を補間対象画素の画素値とする手法である。本実施の形態1では、例えばX方向に画像縮小している場合にはX方向にのみ、Y方向に画像縮小している場合にはY方向にのみ、それぞれ補間すれば良い。
【0051】
差分演算手段36は、元の多値画像と、画像拡大手段35により生成された拡大画像(第一の拡大画像)との差分演算を行い差分画像を生成する。該差分画像は、画像拡大手段35により生成された拡大画像(シェーディング画像)の輝度値に対して、輝度値が高い明欠陥画像を示す正の差分画像、及び輝度値が低い暗欠陥画像を示す負の差分画像からなる。
【0052】
ノイズ低減処理手段37は、入力受付/画像表示部5のノイズ低減度設定受付手段52にてユーザから設定を受け付けたノイズの低減度(階調数)を、差分演算手段36により生成された差分画像に対して減算又は加算して、ノイズ低減処理画像を生成する。これにより、欠陥検出の精度を向上させ、差分画像の視認性を向上させることができる。
【0053】
強調処理手段38は、入力受付/画像表示部5のゲイン設定受付手段53にてユーザから設定を受け付けたゲイン(倍率)を、ノイズ低減処理手段37により生成されたノイズ低減処理画像に乗算して、強調処理画像を生成する。これにより、欠陥検出の精度をさらに向上させ、差分画像の視認性を向上させることができる。また、ノイズ低減処理手段37と強調処理手段38とを組み合わせることで、後段に別の画像処理を実行する場合であっても、解析を容易化・安定化することができる。
【0054】
差分画像選択手段39は、入力受付/画像表示部5の差分画像選択受付手段54にてユーザから受け付けた差分画像の選択に応じて、ノイズ低減処理手段37及び強調処理手段38によりノイズ低減処理及び強調処理が実行された正の差分画像及び負の差分画像のうち少なくとも一方の差分画像を選択する。
【0055】
図2は、本発明の実施の形態1に係る欠陥検出装置1で用いる欠陥検出方法の各設定データの算出工程を示すフローチャートである。本発明に係る欠陥検出方法の各設定データの算出工程は、画像処理部3の内部に格納された本発明に係るコンピュータプログラムに従って実行される。
【0056】
図2において、まず、画像処理部3は、撮像により物体表面の多値画像を取得する(ステップS201)。次に、画像処理部3は、入力受付/画像表示部5がユーザから欠陥のサイズ(画素数)の設定を受け付けたか否かを判断し(ステップS202)、画像処理部3が、欠陥のサイズの設定を受け付けていないと判断した場合(ステップS202:NO)、画像処理部3は、欠陥のサイズの設定の受付待ち状態となる。画像処理部3が、欠陥のサイズの設定を受け付けたと判断した場合(ステップS202:YES)、画像処理部3は、欠陥のサイズを設定して記憶する(ステップS203)。
【0057】
次に、画像処理部3は、入力受付/画像表示部5が画像処理の方向の指定を受け付けたか否かを判断し(ステップS204)、画像処理部3が、方向の指定を受け付けていないと判断した場合(ステップS204:NO)、画像処理部3は、方向の指定の受付待ち状態となる。画像処理部3が、方向の指定を受け付けたと判断した場合(ステップS204:YES)、画像処理部3は、画像処理の方向を設定して記憶する(ステップS205)。
【0058】
次に、画像処理部3は、記憶された欠陥のサイズに応じて画像縮小率を設定し(ステップS206)、取得した多値画像を、設定された画像縮小率で記憶された方向に縮小して、縮小画像を生成する(ステップS207)。次に、画像処理部3は、画像縮小率(又は欠陥のサイズ)に応じたフィルタサイズ(又はフィルタ通過回数)で、縮小画像に対して記憶された方向にフィルタ処理を実行する(ステップS208)。
【0059】
この画像縮小とフィルタ処理の中で、対象とする欠陥を除去する必要がある。そうすることで、(欠陥が除去された)縮小画像を元の多値画像サイズへ拡大した画像と、元の多値画像との差分をとった時に、最終的に対象となる欠陥のみを検出することができる。
【0060】
除去できる欠陥のサイズと、画像縮小率、メディアンフィルタサイズとの間には、式(1)の関係がある。すなわち、画像縮小率を1/R、メディアンフィルタサイズをMとした場合には、式(1)により除去できる欠陥のサイズを求めることができる。なお、式(1)において、RoundDown(x)は、xの小数点を切り捨てる演算を意味する。
【0061】
RoundDown(M/2)×R ・・・ (1)
【0062】
メディアンフィルタは、注目画素をフィルタサイズ範囲内の全画素の濃度値のうちの中間値で置き換える処理であるため、少なくともフィルタサイズMの半分以下の幅、つまりRoundDown(M/2)よりも小さい幅の欠陥は、中間値に置き換えられて除去されることになる。さらに、メディアンフィルタは縮小画像上で実行されているので、その除去される幅を、元画像上の幅に変換することで実際に除去できる欠陥のサイズを計算することができる。元画像上での幅を計算するには、縮小画像上での幅に縮小率の逆数を乗算すれば良いため、上記のような式で計算することができる。例えば、縮小率を1/4、フィルタサイズを5とした場合、除去できる欠陥のサイズは8画素以下となる。
【0063】
なお、画像縮小率を大きくすればする程、高速に処理することができる反面、画像を大きく歪めることになるためシェーディング画像生成の精度が下がる傾向にある。また、フィルタサイズを大きくすればする程、画像縮小率をそれほど大きくしなくても(画像をそれほど歪めることなく)、縮小画像上で欠陥を除去することができ、シェーディング画像の精度を維持することができる反面、処理時間が多くかかる傾向にある。画像縮小率及びフィルタサイズを適切に選択することにより、欠陥を除去した適切な縮小画像を生成することができる。なお、これらの計算は、欠陥のサイズを引数とした参照テーブルの形態で持っていても良いし、計算式により毎回算出する形でも良い。
【0064】
次に、画像処理部3は、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率1/Rの逆数に相当する画像拡大率Rで記憶された方向に拡大し、拡大画像(シェーディング画像)を生成する(ステップS209)。画像処理部3は、元の多値画像と拡大画像との差分演算を行い、差分画像として正の差分画像(明欠陥画像)及び負の差分画像(暗欠陥画像)を生成する(ステップS210)。
【0065】
図3は、背景模様が一様に連続しているX方向の指定を受け付けた場合の多値画像の変遷を示す例示図である。図3(a)に示す元の多値画像には、X方向に一様に連続している背景模様が存在している。図3(b)は、多値画像を画像縮小率1/4でX方向に縮小した場合の縮小画像の例示図である。図3(b)に示すように、X方向に一様に連続している背景模様は消滅することなく存在する。
【0066】
図3(c)は、縮小画像に対してX方向にフィルタ処理を実行した場合のフィルタ画像の例示図であり、図3(d)は、画像縮小率1/4の逆数に相当する画像拡大率4でX方向に拡大した場合の拡大画像(第一の拡大画像)の例示図である。拡大した場合であっても、シェーディング模様及びX方向に一様に連続している背景模様は、元の多値画像と同じ位置に消滅することなく存在する。
【0067】
図4は、背景模様が一様に連続しているY方向の指定を受け付けた場合の多値画像の変遷を示す例示図である。図4(a)に示す元の多値画像には、Y方向に一様に連続している背景模様が存在している。図4(b)は、多値画像を画像縮小率1/4でY方向に縮小した場合の縮小画像の例示図である。図4(b)に示すように、Y方向に一様に連続している背景模様は消滅することなく存在する。
【0068】
図4(c)は、縮小画像に対してY方向にフィルタ処理を実行した場合のフィルタ画像の例示図であり、図4(d)は、画像縮小率1/4の逆数に相当する画像拡大率4でY方向に拡大した場合の拡大画像(第一の拡大画像)の例示図である。拡大した場合であっても、シェーディング模様及びY方向に一様に連続している背景模様は、元の多値画像と同じ位置に消滅することなく存在する。
【0069】
したがって、差分演算手段36で、元の多値画像と拡大画像(第一の拡大画像)との差分演算を行い差分画像を生成することにより、シェーディング模様だけでなく、X方向に一様に連続している背景模様又はY方向に一様に連続している背景模様は消滅するので、確実に欠陥を検出することが可能となる。
【0070】
図5は、元の多値画像と拡大画像との差分演算を実行して生成された差分画像の例示図である。図5(a)は、図3に示す元の多値画像に基づく差分画像を、図5(b)は、図4に示す元の多値画像に基づく差分画像を、それぞれ示している。シェーディング模様、背景模様ともに、元の多値画像と拡大画像(第一の拡大画像)とで一致しているので、差分画像を生成することにより図5(a)及び(b)に示すように欠陥のみが差異として検出される。なお、図5(a)及び(b)では、差分画像における正負の境目である±0の値を、中間輝度値(グレイ)として表現している。
【0071】
図2に戻って、画像処理部3は、生成された正の差分画像及び負の差分画像に対するノイズの低減度(階調数)及びゲイン(倍率)の設定をユーザから受け付けたか否かを判断し(ステップS211)、画像処理部3が、ノイズの低減度(階調数)及びゲイン(倍率)の設定を受け付けていないと判断した場合(ステップS211:NO)、画像処理部3は、デフォルトとしてノイズの低減度をゼロに、ゲインを‘1’に設定する(ステップS212)。画像処理部3が、ノイズの低減度(階調数)及びゲイン(倍率)の設定を受け付けたと判断した場合(ステップS211:YES)、画像処理部3は、ユーザから設定を受け付けたノイズの低減度及びゲインに設定して記憶する(ステップS213)。
【0072】
次に、画像処理部3は、生成された正の差分画像及び負の差分画像に対して、記憶されたノイズの低減度及びゲインでノイズ低減処理及び強調処理を実行する(ステップS214)。ここで、ノイズの低減度をN、ゲインをG、生成された差分画像の差分値をD(i,j)(i,jは画像上の座標位置を示す)、ノイズ低減処理及び強調処理を実行した後の差分値をD’(i,j)とした場合、該差分値D’(i,j)は、式(2)で与えられる。
【0073】
D’(i,j)=Max(D(i,j)−N, 0)×G (D(i,j)が正の場合)
D’(i,j)=Min(D(i,j)+N, 0)×G (D(i,j)が負の場合)
・・・ (2)
【0074】
なお式(2)で、Min(x,y)は、xとyのうち小さい方の値を求める演算を意味する。
【0075】
図6は、ノイズ低減処理及び強調処理を実行した後の差分画像の例示図である。図6(a)は、図3に示す元の多値画像及び濃度値プロファイルを、図6(b)は、図3に示す元の多値画像に基づく差分画像に強調処理を実行した後の差分画像及び濃度値プロファイルを、図6(c)は、図3に示す元の多値画像に基づく差分画像に強調処理及びノイズ低減処理を実行した後の差分画像及び濃度値プロファイルを、それぞれ示している。
【0076】
図6(b)は、ゲインGを‘4’としており、欠陥が約4倍に強調されて表示されている。そして、図6(c)は、ゲインGを‘4’とする強調処理に加えて、ノイズの低減度Nを‘20’としたノイズ低減処理を実行しており、ノイズが効果的に除去されている。したがって、欠陥のみを効果的に検出することができる。また、後段に別の画像処理を実行する場合であっても、解析を容易化・安定化することができる。
【0077】
また、正の差分画像と負の差分画像とで異なるノイズの低減度及びゲインを設定することもできる。これにより、欠陥に対する許容値が異なる場合、一方をより強調させたい場合等、ユーザが自由に調整を行うことができる。ここで、正の差分画像に対するノイズの低減度をNw、ゲインをGwとし、負の差分画像に対するノイズの低減度をNb、ゲインをGbとすると、ノイズ低減処理及び強調処理を実行した後の差分値D’(i,j)は、式(3)で与えられる。
【0078】
D’(i,j)=Max(D(i,j)−Nw, 0)×Gw (D(i,j)が正の場合)
D’(i,j)=Min(D(i,j)+Nb, 0)×Gb (D(i,j)が負の場合)
・・・ (3)
【0079】
図2に戻って、画像処理部3は、正の差分画像及び負の差分画像のうち少なくとも一方の差分画像の選択をユーザから受け付けたか否かを判断し(ステップS215)、差分画像の選択を受け付けていないと判断した場合(ステップS215:NO)、画像処理部3は、デフォルトとして正の差分画像及び負の差分画像を選択し(ステップS216)、画像処理部3は、処理を終了する。画像処理部3が、正の差分画像及び負の差分画像のうち少なくとも一方の差分画像の選択を受け付けたと判断した場合(ステップS215:YES)、画像処理部3は、ユーザから選択を受け付けた差分画像を選択し(ステップS217)、処理を終了する。
【0080】
差分画像の選択処理は、画像データを8ビットデータ、選択処理の結果をZ(i,j)とした場合、式(4)で表わされるクリッピング演算により行われる。
【0081】
Z(i,j)=Clip(D’(i,j),0,255) (正の差分画像を選択する場合)
Z(i,j)=Clip(D’(i,j)+255,0,255) (負の差分画像を選択する場合)
Z(i,j)=Clip(D’(i,j)+128,0,255) (正、負両方の差分画像を選択する場合)
・・・ (4)
【0082】
なお式(4)で、Clip(n,x,y)は、n<xである場合、xを選択し、n>yである場合、yを選択し、x≦n≦yである場合、nを選択する演算を意味する。
【0083】
図7は、正の差分画像及び負の差分画像のうち少なくとも一方の差分画像の選択を受け付けた場合の差分画像の例示図である。図7(a)は、図3に示す元の多値画像に基づく正の差分画像及び負の差分画像の両方を選択した場合の差分画像及び濃度値プロファイルを、図7(b)は、図3に示す元の多値画像に基づく正の差分画像を選択した場合の差分画像及び濃度値プロファイルを、図7(c)は、図3に示す元の多値画像に基づく負の差分画像を選択した場合の差分画像及び濃度値プロファイルを、それぞれ示している。
【0084】
図7(a)、(b)、(c)の濃度値プロファイルを比較すればわかるように、図7(a)では、正の欠陥及び負の欠陥の双方を検出することができているのに対し、図7(b)では、正の欠陥のみを、図7(c)では、負の欠陥のみを、それぞれ検出している。したがって、検出対象となる欠陥を確実に選別することが可能となる。
【0085】
上述した本実施の形態1によれば、ユーザは、所望の差分画像、すなわちユーザが欠陥として検出した欠陥のみが背景模様から分離されて表示してある差分画像を取得することができるまで、欠陥サイズ、画像縮小処理・フィルタ処理・画像拡大処理の方向、ノイズの低減度、ゲイン等を変化させて差分画像を繰り返し取得する。そして、所望の差分画像を取得することができたと判断した時点の欠陥サイズ、画像縮小処理・フィルタ処理・画像拡大処理の方向、ノイズの低減度、ゲイン等を設定データとして記憶し、記憶された設定データを用いて欠陥検出用の差分画像を取得する。
【0086】
図8は、本発明の実施の形態1に係る欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法の差分画像の取得処理工程を示すフローチャートである。本発明に係る欠陥検出方法の差分画像の取得処理工程は、画像処理部3の内部に格納された本発明に係るコンピュータプログラムに従って実行される。
【0087】
図8の処理により取得された差分画像は、欠陥検出処理の対象画像となる。例えば、取得した差分画像に対して、例えばエッジ検出処理を実行して欠陥の有無、位置等を判定する。すなわち、本実施の形態1に係る差分画像の取得処理は、背景模様から欠陥のみを浮き上がらせるための前処理であり、ユーザは取得した差分画像に対して個別の画像処理を実行し、判別基準を設定して欠陥の有無、位置等を正確に判定又は特定することが可能となる。
【0088】
図8において、画像処理部3は、撮像により物体表面の多値画像を取得する(ステップS801)。次に、画像処理部3は、記憶された設定データを読み出す(ステップS802)。具体的には、欠陥サイズ、画像縮小処理・フィルタ処理・画像拡大処理の方向、ノイズの低減度、ゲイン等を読み出す。
【0089】
画像処理部3は、読み出した欠陥のサイズに応じて画像縮小率を設定し(ステップS803)、取得した多値画像を、設定された画像縮小率で読み出した方向に縮小して、縮小画像を生成する(ステップS804)。次に、画像処理部3は、画像縮小率(又は欠陥のサイズ)に応じたフィルタサイズ(又はフィルタ通過回数)で、縮小画像に対して記憶された方向にフィルタ処理を実行する(ステップS805)。
【0090】
次に、画像処理部3は、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率1/Rの逆数に相当する画像拡大率Rで読み出した方向に拡大し、拡大画像(シェーディング画像)を生成する(ステップS806)。画像処理部3は、元の多値画像と拡大画像との差分演算を行い、差分画像として正の差分画像(明欠陥画像)及び負の差分画像(暗欠陥画像)を生成する(ステップS807)。
【0091】
画像処理部3は、読み出したノイズの低減度及びゲインに基づいて、ノイズ低減処理及び強調処理を実行し(ステップS808)、所望の差分画像を取得する(ステップS809)。
【0092】
以上のように本実施の形態1によれば、撮像手段2で撮像により取得した多値画像に含まれるシェーディングの発生状態の変化及び変動に依存せず、背景模様が一様に連続している第一の方向にのみ多値画像を縮小し、フィルタ処理を実行し、拡大して第一の拡大画像を生成することにより、ユーザが設定したサイズ以下の欠陥画像を縮小画像から除去する一方で、一様に連続している背景模様を縮小画像から消滅させずに残すことができるため、元の多値画像と第一の拡大画像との差分画像から、ユーザが所望するサイズ以下の欠陥を高精度で検出することができる。
【0093】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法の各設定データの算出工程を示すフローチャートである。本発明に係る欠陥検出方法の各設定データの算出工程は、画像処理部3の内部に格納された本発明に係るコンピュータプログラムに従って実行される。図9の処理フローのうち、図2と同じ処理を実行するフローについては、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。
【0094】
図9では、画像処理部3が、欠陥のサイズを設定して記憶した(ステップS203)後、画像処理部3は、背景模様のエッジ情報を抽出する(ステップS901)。本実施の形態2でも、一様に連続している背景模様が存在することから、エッジ情報は一定の方向のエッジとして抽出される。
【0095】
画像処理部3は、抽出したエッジ情報に基づいて、画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行する方向(第一の方向)を特定して記憶する(ステップS902)(方向特定手段)。これにより、本実施の形態2では、背景模様が一様に連続している方向が変動した場合であっても、追従して欠陥を検出することが可能となる。
【0096】
エッジ情報の抽出に用いるフィルタは特に限定されるものではなく、例えばSobelフィルタ等を用いれば良い。抽出するエッジ情報としては、画素ごとのエッジ強度及びエッジ角度である。
【0097】
抽出したエッジ情報に基づいて、所定値以上のエッジ強度を有する画素についてエッジ角度の角度ヒストグラムを生成し、ヒストグラムの中で最大値となるエッジ角度を求めることにより、画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行する方向を特定する。
【0098】
もちろん、求めたエッジ角度がY方向(垂直方向)又はX方向(水平方向)となるように画像をアフィン変換により回転させ、回転させた画像について画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理、差分画像生成処理、強調処理等を実行した後、元の角度に戻すよう逆方向のアフィン変換により差分画像を回転させても良い。
【0099】
(実施の形態3)
上述した実施の形態1及び2では、多値画像を縮小してフィルタ処理をした後に拡大することにより、欠陥を検出するための差分画像生成の基礎となる拡大画像(第一の拡大画像)を生成しているが、画像縮小をすることなく、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を大きくすることにより差分画像生成の基礎となる拡大画像(実際には拡大していない)を生成しても良い。
【0100】
すなわち、画像縮小率を‘1’に設定し、フィルタ処理手段34は、サイズ設定・記憶手段31により設定されて記憶されている欠陥のサイズに応じて、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を設定すれば良い。例えば抽出する欠陥のサイズSに対して、フィルタサイズが(S×2+1)となるメディアンフィルタによるフィルタ処理を実行することにより、所望のサイズの欠陥を検出することができる。
【0101】
図10は、本発明の実施の形態3に係る欠陥検出方法による欠陥抽出用差分画像の例示図である。図10(a)に示す元の多値画像に対してX方向の指定を受け付ける。図10(b)は、画像縮小率を例えば‘4’に設定してX方向に多値画像を縮小し、フィルタ処理を実行した後に画像を拡大し、元の多値画像との差分演算を実行した差分画像である。輝度値の変動幅が大きい画素が検出されてしまうので、元の多値画像の検出対象物と背景との輪郭部分がくっきりと欠陥として検出されてしまう。
【0102】
それに対して、図10(c)は、画像縮小率を‘1’に設定することにより、多値画像を縮小及び拡大することなくフィルタ処理を実行し、元の多値画像との差分演算を実行した差分画像である。多値画像を縮小及び拡大していないので、フィルタ処理に要する時間は増大するが、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を大きくすることにより、元の多値画像の検出対象物と背景との輪郭部分についても効果的に除去することができ、欠陥のみを正しく検出することができる。
【0103】
つまり、検出対象となる欠陥のサイズが所定の値より大きい場合には、実施の形態1及び2と同様、指定を受け付けた方向に多値画像を縮小し、フィルタ処理を実行した後に多値画像を拡大し、元の多値画像との差分演算を実行した差分画像により欠陥を検出し、検出対象となる欠陥のサイズが所定の値より小さい場合には、多値画像を縮小及び拡大することなく、実施の形態1及び2と同様、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を大きくしてフィルタ処理を実行し、元の多値画像との差分演算を実行した差分画像により欠陥を検出することにより、欠陥のサイズに応じて検出方法を変えることができる。
【0104】
また、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数についても、抽出する欠陥のサイズに応じて設定すれば良いので、ユーザは、画像縮小率、フィルタサイズ等を意識することなく、多値画像中の欠陥の大きさと背景模様が一様に連続している方向との指定を受け付けるだけで、欠陥を効果的に検出することができる。
【0105】
(実施の形態4)
一様に連続している背景模様(連続模様)が1つの方向だけでなく、2つの方向に存在する場合であっても、実施の形態1及び2の欠陥検出方法を適用することができる。すなわち、まずは第一の方向(例えばX方向)の指定を受け付け、実施の形態1と同様、設定された画像縮小率で元の多値画像を第一の方向へ縮小した縮小画像を生成し、縮小画像に対して縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を第一の方向に実行し、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する。生成した第一の拡大画像と元の多値画像との差分画像を生成することにより、第一の方向の連続模様を除去することができる。
【0106】
次に、第二の方向(例えばY方向)の指定を受け付け、実施の形態1と同様、設定された画像縮小率で、生成した差分画像(第一の拡大画像と元の多値画像との差分画像)を第二の方向へ縮小した縮小画像を生成し、縮小画像に対して縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を第二の方向に実行し、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で第二の方向へ拡大した第二の拡大画像を生成する。生成した第二の拡大画像と第一の差分画像(第一の拡大画像と元の多値画像との差分画像)との差分画像である第二の差分画像を生成することにより、第一の方向の連続模様だけでなく、第二の方向の連続模様も除去することができる。
【0107】
すなわち、異なる二方向について連続して画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理、差分画像生成処理を実行することにより、2つの方向に存在する一様に連続している背景模様(連続模様)を除去することができる。3方向以上の場合についても、同様に処理を増やすことで簡単に拡張することが可能であることは言うまでもない。
【0108】
図11は、X方向及びY方向に連続模様が存在する多値画像に対して、X方向及びY方向に連続して画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理、差分画像生成処理を実行した場合の差分画像の例示図である。図11(a)に示す元の多値画像は、一様に連続している背景模様(連続模様)がX方向及びY方向それぞれに存在している。
【0109】
まず、X方向について、元の多値画像に対して画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行することにより、図11(b)に示す拡大画像(第一の拡大画像)を生成する。そして、図11(c)に示す、図11(a)の元の多値画像と図11(b)の拡大画像との差分画像を生成する。図11(c)では、横方向の連続模様は効果的に除去することができているものの、縦方向の連続模様については残存している。
【0110】
次に、Y方向について、図11(c)に示す差分画像に対して画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行することにより、図11(d)に示す拡大画像(第二の拡大画像)を生成する。そして、図11(e)に示す、図11(c)の差分画像(第一の差分画像)と図11(d)の拡大画像との差分画像(第二の差分画像)を生成する。図11(e)では、横方向の連続模様だけでなく、縦方向の連続模様も効果的に除去することができており、確実に欠陥のみを検出することが可能となる。
【0111】
もちろん、連続して異なる二方向にそれぞれ差分画像を生成することに限定されるものではなく、第一の方向について、第一の方向とは異なる第二の方向について、それぞれ画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行した第一の拡大画像と第三の拡大画像とを生成し、両者を合成した合成画像に基づいて元の多値画像との間で差分演算を実行して差分画像を生成しても良い。
【0112】
すなわち、まずは第一の方向(例えばX方向)の指定を受け付け、実施の形態1と同様、設定された画像縮小率で元の多値画像を第一の方向へ縮小した縮小画像を生成し、縮小画像に対して縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を第一の方向に実行し、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する。
【0113】
次に、第二の方向(例えばY方向)の指定を受け付け、実施の形態1と同様、設定された画像縮小率で、元の多値画像を第二の方向へ縮小した縮小画像を生成し、縮小画像に対して縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を第二の方向に実行し、フィルタ処理が実行された縮小画像を、画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で第二の方向へ拡大した第三の拡大画像を生成する。生成した第三の拡大画像と第一の拡大画像とを合成して合成画像を生成することにより、元の多値画像と同じ位置に第一の方向及び第二の方向に一様に連続している背景模様が存在する合成画像を生成することができる。
【0114】
最後に、元の多値画像と合成画像との差分演算を実行した差分画像を生成することにより、第一の方向及び第二の方向の連続模様は除去されるので、欠陥のみを確実に検出することができる。
【0115】
図12は、X方向及びY方向に連続模様が存在する多値画像に対して、X方向及びY方向に別個に画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行して差分画像を生成した場合の差分画像の例示図である。図12(a)に示す元の多値画像は、一様に連続している背景模様(連続模様)がX方向及びY方向それぞれに存在している。
【0116】
まず、X方向について、元の多値画像に対して画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行することにより、図12(b)に示す拡大画像(第一の拡大画像)を生成する。次に、Y方向についても、元の多値画像に対して画像縮小処理、フィルタ処理、画像拡大処理を実行することにより、図12(c)に示す拡大画像(第三の拡大画像)を生成する。
【0117】
そして、図12(b)に示す拡大画像(第一の拡大画像)と、図12(c)に示す拡大画像(第三の拡大画像)とを合成して、図12(d)に示す合成画像を生成する。合成画像を生成する場合、輝度値の小さい方を優先する、いわゆるMIN演算を適用するか、輝度値の大きい方を優先する、いわゆるMAX演算を適用するかは、ワーク、欠陥の特性に依存する。図12の例ではMIN演算を適用している。
【0118】
最後に、図12(e)に示す、図12(a)の元の多値画像と図12(d)の合成画像との差分画像を生成する。図12(e)では、横方向の連続模様だけでなく、縦方向の連続模様も効果的に除去することができており、しかも図11(e)ではわかりにくいが、2回差分処理を実行する場合の副作用として生じてしまう、X方向の背景模様とY方向の背景模様との交点に生じる輝度値が周囲より高い白点(ノイズ)が生じることがなく、しかも差分画像生成処理を1回実行すれば足りるので、演算処理時間を短縮することができるとともに、高い精度で欠陥のみを検出することが可能となる。3方向以上の場合についても、同様に合成する画像を増やすことで簡単に拡張することが可能であることは言うまでもない。
【0119】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変更、改良等が可能である。例えば、上述した実施の形態1乃至4において、フィルタ処理手段34としてメディアンフィルタを用いる構成について説明したが、本発明は斯かる構成に限定されず、縮小画像から欠陥を除去することができる構成であれば、例えば膨張フィルタ及び収縮フィルタを用いてもよい。
【0120】
また、差分演算手段36により演算された結果は、必ずしも正の差分画像、負の差分画像という形で別々に記憶しておく必要はなく、1つの差分画像として記憶しておいても良い(例えば、正負の境目である±0の値を、データの中間値として表現して保持するなど)。さらに、画像拡大手段35、差分演算手段36、ノイズ低減処理手段37、強調処理手段38、差分画像選択手段39の一連の処理は、必ずしも一の手段による画像全体への処理を終えてから次の手段による処理へ移る必要はなく、画素単位に全手段を実行しても良い。すなわち、画像の左上の画素から順に、画像拡大手段(拡大後の注目画素における輝度値を計算する)35、差分演算手段36、ノイズ低減処理手段37、強調処理手段38、差分画像選択手段39の一連の処理を順次実行し、最終的な結果画像を算出しても良い。
【符号の説明】
【0121】
1 欠陥検出装置
2 撮像手段
3 画像処理部
4 記憶手段
5 入力受付/画像表示部
31 サイズ設定・記憶手段
32 縮小率設定手段
33 画像縮小手段
34 フィルタ処理手段
35 画像拡大手段
36 差分演算手段
37 ノイズ低減処理手段
38 強調処理手段
39 差分画像選択手段
40 方向設定・記憶手段
41 画像回転手段
51 サイズ設定受付手段
52 ノイズ低減度設定受付手段
53 ゲイン設定受付手段
54 差分画像選択受付手段
55 元画像表示手段
56 拡大画像表示手段
57 差分画像表示手段
58 表示画像選択受付手段
59 方向指定受付手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段で撮像された多値画像から、撮像されている物体表面の欠陥を検出する欠陥検出装置において、
検出対象の欠陥のサイズの設定を受け付けるサイズ設定受付手段と、
該サイズ設定受付手段にて設定を受け付けた欠陥のサイズを記憶するサイズ記憶手段と、
背景模様が一様に連続している第一の方向の指定を受け付ける方向指定受付手段と、
該方向指定受付手段で指定を受け付けた第一の方向を記憶する方向記憶手段と、
前記多値画像を、記憶された欠陥のサイズに応じた画像縮小率で、記憶された第一の方向へ縮小した縮小画像を生成する画像縮小手段と、
前記縮小画像に対して前記縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第一の方向に実行するフィルタ処理手段と、
該フィルタ処理手段によりフィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する画像拡大手段と、
前記多値画像と前記第一の拡大画像との差分演算を実行した差分画像を生成する差分演算手段と
を備えることを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項2】
前記差分演算手段により生成された差分画像に対してノイズの低減度の設定を受け付けるノイズ低減度設定受付手段と、
受け付けた前記ノイズの低減度を前記差分画像に対して減算又は加算して、ノイズ低減処理画像を生成するノイズ低減処理手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の欠陥検出装置。
【請求項3】
前記差分画像に対してゲインの設定を受け付けるゲイン設定受付手段と、
受け付けた前記ゲインを前記差分画像に乗算して、強調処理画像を生成する強調処理手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の欠陥検出装置。
【請求項4】
前記差分演算手段は、正の差分画像及び負の差分画像を生成するようにしてあり、
前記正の差分画像及び前記負の差分画像のうち少なくとも一方の差分画像の選択を受け付ける差分画像選択受付手段と、
受け付けた差分画像を選択する差分画像選択手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項5】
前記フィルタ処理手段は、前記サイズ設定手段により設定された欠陥のサイズが大きいほど、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を大きく設定するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項6】
前記背景模様のエッジ情報を抽出するエッジ情報抽出手段と、
抽出したエッジ情報に基づいて前記第一の方向を特定する方向特定手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項7】
特定した前記第一の方向を、垂直方向又は水平方向となるよう画像を回転させる画像回転手段を備えることを特徴とする請求項6記載の欠陥検出装置。
【請求項8】
前記画像縮小率を1に設定し、
前記フィルタ処理手段は、前記サイズ設定手段により設定された欠陥のサイズに応じて、フィルタサイズ又はフィルタ通過回数を設定するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項9】
前記方向指定受付手段により、前記第一の方向とは異なる方向である第二の方向の指定を受け付け、
前記方向記憶手段は、前記方向指定受付手段で指定を受け付けた第二の方向も記憶し、
前記画像縮小手段は、前記第一の拡大画像と前記多値画像との差分画像を、前記画像縮小率で前記第二の方向へ縮小した縮小画像を生成し、
前記フィルタ処理手段は、前記縮小画像に対して欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第二の方向に実行し、
前記画像拡大手段は、フィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第二の方向へ拡大した第二の拡大画像を生成し、
前記差分演算手段は、前記第二の拡大画像と、前記第一の拡大画像と前記多値画像との差分画像である第一の差分画像との差分演算を実行した第二の差分画像を生成するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の欠陥検出装置。
【請求項10】
前記画像縮小手段は、前記多値画像を、前記画像縮小率で前記第二の方向へ縮小した縮小画像を生成し、
前記フィルタ処理手段は、前記縮小画像に対して欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第二の方向に実行し、
前記画像拡大手段は、フィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第二の方向へ拡大した第三の拡大画像を生成し、
前記差分演算手段は、前記第一の拡大画像と前記第三の拡大画像とを合成した合成画像と前記多値画像との差分演算を実行した差分画像を生成するようにしてあることを特徴とする請求項9記載の欠陥検出装置。
【請求項11】
撮像手段で撮像された多値画像から、撮像されている物体表面の欠陥を検出する欠陥検出装置で用いる欠陥検出方法において、
検出対象の欠陥のサイズの設定を受け付けるサイズ設定受付工程と、
該サイズ設定受付工程にて設定を受け付けた欠陥のサイズを記憶するサイズ記憶工程と、
背景模様が一様に連続している第一の方向の指定を受け付ける方向指定受付工程と、
該方向指定受付工程で指定を受け付けた第一の方向を記憶する方向記憶工程と、
前記多値画像を、記憶された欠陥のサイズに応じた画像縮小率で、記憶された第一の方向へ縮小した縮小画像を生成する画像縮小工程と、
前記縮小画像に対して前記縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第一の方向に実行するフィルタ処理工程と、
該フィルタ処理工程によりフィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する画像拡大工程と、
前記多値画像と前記第一の拡大画像との差分演算を実行した差分画像を生成する差分演算工程と
を含むことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項12】
撮像手段で撮像された多値画像から、撮像されている物体表面の欠陥を検出する欠陥検出装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
検出対象の欠陥のサイズの設定を受け付けるサイズ設定受付処理と、
該サイズ設定受付手段にて設定を受け付けた欠陥のサイズを記憶するサイズ記憶処理と、
背景模様が一様に連続している第一の方向の指定を受け付ける方向指定受付処理と、
該方向指定受付処理で指定を受け付けた第一の方向を記憶する方向記憶処理と、
前記多値画像を、記憶された欠陥のサイズに応じた画像縮小率で、記憶された第一の方向へ縮小した縮小画像を生成する画像縮小処理と、
前記縮小画像に対して前記縮小画像における欠陥を除去するためのフィルタ処理を前記第一の方向に実行するフィルタ処理と、
該フィルタ処理が実行された縮小画像を、前記画像縮小率の逆数に相当する画像拡大率で前記第一の方向へ拡大した第一の拡大画像を生成する画像拡大処理と、
前記多値画像と前記第一の拡大画像との差分演算を実行した差分画像を生成する差分演算処理と
を前記欠陥検出装置に実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−168013(P2012−168013A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29066(P2011−29066)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】