説明

欠陥検査システムおよび欠陥検査方法

【課題】ガラス板等の透明性を有する板状体の製造ライン等において、板状体に存在する欠陥か、否かを効率よく判別して検出する。
【解決手段】第1の線状光源から投光して板状体を通過した透過光を第1のカメラで明視野画像を撮影するとき、第1のカメラの透過光の光路中の第1のカメラの前面の位置にナイフエッジ状の光路遮蔽部材を設ける。撮影された明視野画像の中から、明視野画像の背景成分の信号値に比べて高い信号値を閾値として、明視野画像の中から明部の領域を探索し、探索の結果、明部の領域を抽出したとき、この明部の領域を用いて、板状体に欠陥領域が存在するか否かを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有するガラス板等の板状体に存在する欠陥を検出する欠陥検査システムおよび欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ガラス板は、フラットパネルディスプレイ等の電子機器に用いられることから、板厚が薄く、泡等の欠陥が極めて少ない、あるいは全く存在しないガラス板が強く求められている。
ガラス板に含まれる泡や表面のキズ等の欠陥は、低減することが可能であるが、必ずしも完全に除去できるものではないため、検査工程で泡等の存在するガラス板の部分は除去する等の処置が必要である。このため、従来より、製造されたガラス板等の透明性を有する板状体に存在する泡等の欠陥を検査する装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、図6に示すように、搬送されるガラス板Gの一方の側に、ガラス板Gの幅より長い線状光源52を設けてガラス板Gに所定の光強度で投光し、ガラス板Gを透過した透過光の明視野画像を、他方の側に設けたラインセンサタイプのカメラ54で撮影し、この画像を処理ユニット56へ送る。処理ユニット56で、明視野画像に含まれる暗部となった領域を抽出して欠陥領域として抽出する。このとき、ガラス基板Gに投光する線状光源52は、ラインセンサタイプのカメラ54で撮影するために、ガラス板Gの幅方向に延びる細長いスリットを用いて、略平行光とする。これにより、搬送されるガラス板Gの欠陥を検出することができる。
【0004】
一方、下記特許文献1には、透明板状体における欠点を検出するための欠陥検出方法が提案されている。当該検出方法では、板状体の面に対して垂直に近い角度で照明する照明器と、平行に近い角度で照明する照明器とを設け、これらの照明器を用いて得られる画像の画像処理を行うことにより、板状体の表面および内部に存在する欠陥を検出することができる、とされている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−214158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の欠陥検出方法や上述の図6に示す方法では、ガラス板の面に存在する欠陥と内部に存在する欠陥を区別することができない。さらに、特許文献1のように2つの照明器を用いて照明方法を変えて撮影するのでは、一定速度で搬送されるガラス板から、オンラインで欠陥を検出することはできない。このため、ガラス板の製造ライン上で上記欠陥検出方法を実施することはできない、といった問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、ガラス板等の透明性を有する板状体の製造ライン等で有効に用いることのできる欠陥検査システム、欠陥検査方法であって、板状体に存在する欠陥か、否かを効率よく判別して検出することのできる欠陥検査システムおよび欠陥検査方法を提供するとともに、この検査方法を用いた板状体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、透明性を有する板状体に存在する欠陥を検出する欠陥検査システムであって、前記板状体の面に投光する第1の線状光源と、前記板状体を通過した透過光を集光して明視野画像を撮影する第1のカメラと、前記第1のカメラの透過光の光路中の前記第1のカメラの前面の位置に設けられるナイフエッジ状の光路遮蔽部材と、を有する第1の欠陥検査装置と、前記第1のカメラで撮影された明視野画像の中から、明視野画像の背景成分の信号値に比べて高い信号値を閾値として、明視野画像の中から明部の領域を探索し、探索の結果、明部の領域を抽出したとき、この明部の領域を用いて、前記板状体に欠陥領域が存在するか否かを判別する処理装置と、を備えることを特徴とする欠陥検査システムを提供する。
【0009】
その際、前記第1の光源は、線状光源であり、前記第1のカメラの受光面の前面には、板状体の像を結像するための結像レンズが設けられ、前記第1の光源から、前記結像レンズを介して前記第1のカメラの受光面に至る前記第1の光源の透過光の光束の拡がり角の半分の角度を照明発光有効角とし、前記第1のカメラの受光面の位置から前記結像レンズを介して前記第1の光源の照射面に至る視野範囲の見込み角の半分の角度を画角とし、前記第1の光源の発光指向性を表す値をαとしたとき、前記照明発光有効角に対する前記画角の比率に前記第1の光源の発光指向性を表す値αを乗算した値が、2より大きい第1の条件と、前記光路遮蔽部材の前記透過光の通過位置において、前記結像レンズの光軸に直交する面にできる前記受光面からみた視野範囲である錯乱円を定めたとき、前記光路遮蔽部材により前記錯乱円が遮断される部分の面積が、前記錯乱円の面積の43〜57%になる第2の条件と、を満たすように、前記第1の光源、前記結像レンズおよび前記第1のカメラが設定されていることが好ましい。例えば、前記第1の条件および前記第2の条件を満たすように、前記第1のカメラの絞り値、前記第1のカメラと板状体との間の距離、板状体と前記第1の光源との間の距離、前記第1の光源の発光幅が定められる。
特に、第1のカメラの受光素子が、板状体を挟んで、第1の光源に正対するように第1のカメラを配置するのが好ましい。ここで正対するように配置するとは、前記第1のカメラの受光素子が、ガラス板Gを挟んで、第1の光源の最大光強度の方向に位置するように配置することをいう。
【0010】
また、前記第1の欠陥検査装置の他に、前記第1の欠陥検査装置の検査対象とする板状体に対して、板状体から反射した照明光を受光して、欠陥を検査する第2の欠陥検査装置を有し、前記第2の欠陥検査装置は、板状体の面に照明光を照射する第2の光源と、照射され板状体の面から出射した反射光を集光し、明視野反射画像を撮影する、板状体から見て前記第2の光源と同じ側に設けられる第2のカメラと、を有し、前記処理装置は、前記第2のカメラで撮影された明視野反射画像から、板状体で反射した画像中の暗部の領域を抽出し、この暗部の領域が前記明部の領域と近接して向かい合う場合、板状体に欠陥が存在すると判別することが好ましい。
その際、前記処理装置は、板状体で反射した画像中の前記暗部の領域と、板状体の他方の面で反射した画像中の暗部との位置ずれに基づいて、板状体の厚さ方向の、欠陥の位置情報を求めることが好ましい。
【0011】
なお、前記板状体は、一方向に搬送されて移動し、前記第1の欠陥検査装置と前記第2の欠陥検査装置は、前記第1の欠陥検査装置が、前記第2の欠陥検査装置の上流側に設けられていることが好ましい。しかし、前記第1の欠陥検査装置が、前記第2の欠陥検査装置の下流側に設けられていてもよい。
ここで、前記第1の欠陥検査装置と前記第2の欠陥検査装置は、搬送方向において隣り合うようにして設けられることが好ましい。前記第1の欠陥検査装置と前記第2の欠陥検査装置との距離が短い方が、長い場合に比べて、欠陥の検出と特定を、より短い時間内で処理できることになるからである。
【0012】
更に、本発明は、透明性を有する板状体に存在する欠陥を検出する欠陥検査方法であって、第1の線状光源から前記板状体の面に投光し、前記板状体を通過した透過光を集光して第1のカメラで明視野画像を撮影するとき、前記第1のカメラの透過光の光路中の前記第1のカメラの前面の位置にナイフエッジ状の光路遮蔽部材を設けて撮影し、前記第1のカメラで撮影された明視野画像の中から、明視野画像の背景成分の信号値に比べて高い信号値を閾値として、明視野画像の中から明部の領域を探索し、探索の結果、明部の領域を抽出したとき、この屈折異常がもたらす明部の領域を用いて、前記板状体に欠陥領域が存在するか否かを判別することを特徴とする欠陥検査方法を提供する。
【0013】
なお、本発明は、板状体の厚みに制限を受けることは特になく、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)においては、薄板タイプを含む液晶ディスプレイ(LCD)用途であって、厚みが0.1〜0.7mmのものや、プラズマディスプレイパネル(PDP)等においては、厚み1mm以上のもの、例えば、厚みが1.8mmのものや、厚みが2.8mmのもの、さらには、建材用途の板ガラス、及び、板状体の中間形態をとる透明な物品の製造に適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の欠陥検査システムおよび欠陥検査方法では、第1のカメラの透過光の光路中の第1のカメラの前面の位置に、ナイフエッジ状の光路遮蔽部材を設け、第1のカメラで撮影された明視野画像の中から、明視野画像の背景成分の信号値に比べて高い信号値を閾値として、明視野画像の中から明部の領域を抽出し、この抽出した明部の領域を、板状体に存在する欠陥領域の検出に用いることにより、板状体に存在する欠陥か、否かを効率よく判別して検出することができる。
特に、照明発光有効角に対する画角の比率に第1の光源の発光指向性を表す値α(0以上1以下の数値)を乗算した値が、2より大きい第1の条件と、光路遮蔽部材により前記錯乱円が遮断される部分の面積が前記錯乱円の面積の43〜57%になるように設定される第2の条件と、を満たすように第1のカメラの光学系を設定することにより、明視野画像に上記明部を有効に生じさせることができる。特に、計測に用いる第1の光源と第1のカメラとが、ガラス板Gを挟んで正対するように設けることで、より効果的に欠陥検査を行なうことができる。
また、板状体の面に照明光を照射する前記第2の光源と、照射され板状体の面で反射して得られる反射光を集光し、明視野反射画像を撮影する、板状体から見て前記第2の光源と同じ側に設けられる前記第2のカメラと、を有し、前記処理装置は、前記第2のカメラで撮影された明視野反射画像から、板状体の面で反射した画像中の暗部の領域を抽出し、この暗部の領域が前記明部の領域と近接して向かい合う場合、欠陥の実像と欠陥の鏡像との位置ずれに基づいて、板状体に位置する欠陥の厚さ方向の位置情報を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の欠陥検査システムおよび欠陥検査方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
図1に示される欠陥検査システム10は、第1の欠陥検査装置12と、第2の欠陥検査装置14と、処理装置16と、を有して構成されている。
第1の欠陥検査装置12と第2の欠陥検査装置14は、ガラス板Gの搬送経路に沿って上流側から、この順に設けられる。処理装置16は、第1の欠陥検査装置12と第2の欠陥検査装置14で得られた画像を処理し、欠陥検出を行う装置である。
ガラス板Gは、溶融炉から取り出され所定の厚さとなった長尺状の板材であり、搬送経路に設けられた複数の駆動ローラ18上で搬送される。
【0016】
第1の欠陥検査装置12は、欠陥検査システム10の搬送側最上流に位置し、ガラス板Gの欠陥を検査する装置である。
具体的には、第1の欠陥検査装置12は、ガラス板Gの面に、駆動ローラ18の側(下側)から投光する第1の線状光源20と、ガラス板Gを通過した透過光を集光して明視野画像を撮影する第1のカメラ22と、第1の線状光源20の透過光の光路中の第1のカメラ22の前面の位置に設けられるナイフエッジ状の光路遮蔽部材24と、を有する。
【0017】
第1の線状光源20は、略平行光を出射するLED光源であり、第1の線状光源20の出射口は、ガラス板Gの幅方向(図1中の紙面垂直方向)に沿って線状に延びている。第1の線状光源20の出射口は、ガラス板Gの面から、例えば100〜900mm離れた位置に設けられ、光源の搬送方向に沿った幅L(図2参照)は、例えば1〜20mmに設定される。なお、第1の線状光源20は、ガラス板Gの面から離れて設けられていることが、高い位置精度を必要としない点で好ましい。LED光源における光の種類は特に制限されず、白色が好適に用いられるが、赤色、青色、緑色等であってもよい。LED光源は、具体的には、発光する発光源(不図示)と、発光された光を略平行光とするフレネルレンズ(不図示)と、光強度を略均一にする拡散板(不図示)と、光の出射を絞るスリット板(不図示)とを有する。これにより、第1の線状光源20は、略均一な光強度を持った略平行光を発する。なお、上述のようにフレネルレンズ、拡散板及びスリット板を用いても、必ずしも光強度を均一にし、かつ光を平行光にすることはできず、光強度は指向特性を持ち、光は拡がる。このときの光強度の指向特性を考慮して、指向特性を表す値をαとする。
【0018】
第1のカメラ22は、第1の線状光源20と、ガラス板Gを挟んで対向する位置に設けられ、ガラスGを透過した透過光を直接受光面で読み取るラインセンサー型カメラである。第1のカメラ22は、図1中の紙面に垂直方向に複数台設けられ、搬送方向の同じ位置を撮影し、しかも複数台のカメラは、ガラス板Gの幅方向における視野範囲がお互いに部分的に重なるように設定され、ガラス板Gの検査部分において、非検査エリアがないように配置されている。
第1のカメラ22は、ガラス板Gの面から、第1のカメラ22の結像レンズ23(図2参照)のピントが合う位置、例えば200〜400mm離れた位置に受光面が来るように設けられる。第1のカメラ22には、結像レンズ23を備える光学系、及び、図示されないが、開口を調整する絞りを有する。第1のカメラ22で得られた画像データは、ライン状に読み取られる度に逐次処理装置16に送られる。
【0019】
光路遮蔽部材24は、ガラスGからの透過光の光路中の、第1のカメラ22の前面の位置で、光路の一部を遮断するナイフエッジ状の部材である。光路中の先端部分は、刃を成すように先鋭化されている。光路遮蔽部材24は、第1のカメラ22の光学系(結像レンズ23)の前面の位置、例えば1〜5mm離れた位置に設けられる。光路遮蔽部材24を保持する部分は、光路遮蔽部材24が、光路中を横断するようにX方向に移動可能な機構が設けられている。その際、光路遮蔽部材24の透過光の通過位置において、第1のカメラ22中の結像レンズ23の光軸に直交する面にできる、受光面からみた視野範囲を表す錯乱円を定めたとき、光路遮蔽部材24により錯乱円が遮断される部分の面積が、錯乱円の面積の43〜57%に該当し、好ましくは略50%に該当する。43%より小さい場合、明視野画像に後述する明部が発生しにくく、57%を超えると暗視野画像になりやすい。
このような光路を遮断する範囲は、例えば、光遮蔽部材24とガラス板Gとの間の距離と、第1のカメラ22の絞り値とを調整することで実現できる。光路を遮断する範囲をこの範囲に設定することにより、後述するように、明視野画像内に存在する泡等の欠陥によってつくられる暗部の領域に近接して、明部の領域を効率よく形成させるためである。
【0020】
その際、第1の線状光源20の発光指向性を表す値をαとしたとき、図2に示す照明発光有効角θに対する画角φの比率に値αを乗算した値が、2より大きくなっていることが好ましい。照明発光有効角θとは、第1の線状光源20から、結像レンズ23を介して第1のカメラ22の受光素子の受光面に至る、第1の線状光源20の透過光の光束の拡がり角の半分の角度をいう。画角φは、第1のカメラ22の受光素子の受光面の位置から結像レンズ23を介して(レンズの有効口径dを用いて)第1の線状光源20の照射面に至る視野範囲の見込み角の半分の角度である。
ここで、第1の線状光源20の発光指向性を表す値αとは、図3に示すように、横軸に光源の照射面に直交する方向を方位角0度として方位角度をとり、縦軸に最大光強度の値を1としたときの、相対光強度の平均値をいう。
【0021】
さらに、第1のカメラ22の受光素子は、図2に示すように、ガラス板Gを挟んで、第1の線状光源20と正対するように、第1のカメラ22が配置されることが好ましい。なお、図2中のdは、結像レンズ23の有効口径であり、f/F(fは焦点距離、FはF値である)で表される。このように、本発明において用いる照明発光有効角θおよび画角φは、図2に示すように、各装置の設定や配置に基づいて、幾何学的に定められる。
【0022】
このような第1の欠陥検査装置12により、ガラス板Gに存在する微小な泡等の欠陥を容易に検出することができるようになった。
【0023】
第2の欠陥検査装置14は、第2の光源28と、第2のカメラ30とを有する。第2の欠陥検査装置14は、第1の欠陥検査装置の検査対象として検査されたガラス板Gに対して、一方の側からガラス板を照明し、このときガラス板Gの表面と裏面で反射した照明光を第2のカメラ30で受光して、欠陥を検査する装置である。
上記した第1の欠陥検査装置12による検出結果に加えて、この第2の欠陥検査装置14の検出結果を組み合わせて、総合的に評価することにより、ガラス板Gに存在する欠陥の特定をより的確に行うことができるようになった。
【0024】
第2の光源28は、ガラス板Gの面に略平行光を出射するLED光源であり、ガラス板Gの面に対して傾斜した方向から光を入射させる。第2の光源28は、図1の紙面に垂直方向に延びている。第2の光源28に用いられるLED光源における光の種類は特に制限されず、白色が好適に用いられるが、赤色、青色、緑色等であってもよい。LED光源は、具体的には、発光する発光源(不図示)と、発光された光を略平行光とするフレネルレンズ(不図示)と、光強度を略均一にする拡散板(不図示)と、光の出射を絞るスリット板(不図示)とを有する。これにより、第2の線状光源28は略均一な光強度を持った略平行光を発する。
【0025】
第2のカメラ30は、ガラスGの表面から出射した反射光を集光し、明視野反射画像を撮影するラインセンサー型カメラである。第2のカメラ30は、ガラス板Gから見て第2の光源28と同じ側に設けられている。
【0026】
第2のカメラ30で撮影される画像は、第2の光源28で照明されてガラスGの裏面で反射した画像であり、ガラス板Gに存在する欠陥の領域が暗部になる画像である。この画像には、ガラス板Gの面に対して傾斜した方向からガラス板Gの表面に入射し、ガラス板Gの裏面で反射した後、この反射光の光路を欠陥の領域が通過することによってできる欠陥の実像と、ガラス板Gの表面に対して傾斜した方向からガラス板Gの表面に入射した入射光が、ガラス板G内の光路中にある欠陥の領域を通過した後、ガラス板Gの裏面で反射してできる欠陥の鏡像とが含まれる。第2のカメラ30で得られた画像データは、ライン状に読み取られる度に処理装置16に送られる。
【0027】
処理装置16は、第1の欠陥検査装置12および第2の欠陥検査装置14から送られた画像データを用いて、ガラス板Gの欠陥を検出し、その種類を識別し、また、欠陥のガラス板Gの厚さ方向における位置を特定する装置でもある。処理装置16には、ディスプレイ32が接続され、ディスプレイ32には、第1の欠陥検査装置12および第2の欠陥検査装置14で得られた画像、欠陥の検出結果、識別結果、あるいは欠陥の位置特定結果が画面表示される。
第1の欠陥検査装置12で得られる画像は、上述したように、明視野画像であり、ガラス板Gの欠陥は、欠陥領域の乱反射によって、画像中では暗部となって現れる。また、上述したように、第1のカメラ22の光学系の直前には、光路の一部分を遮断するナイフエッジ状の光路遮蔽部材24が設けられていることにより、この光路遮蔽部材24により、画像中の暗部の領域と近接して向かい合うように、あるいは接して対するように、明部の領域が形成される。この明部は、欠陥の部分の屈折異常により発生し、明視野画像の背景部分に比べて明度が高い。
【0028】
図4(a)は、光路遮蔽部材24が光路中にあるときの欠陥画像の一例の模式図である。図4(a)に示すように、暗部の領域と近接して向かい合う明部が形成される。これに対して、図4(b)は光路遮蔽部材24が光路中に存在しない(光を遮断しない)ときの欠陥画像の一例の模式図である。図4(b)に示すように、暗部の領域と近接して向かい合う明部は形成されない。明視野画像中において、図4(a)に示すように、明部が暗部の領域に近接して向かい合うように形成されるのは、ガラス板Gの表面や内部に存在する気泡や異物等により、ガラス板Gの表面が凹凸形状となって、ガラス板Gの屈折異常が僅かに変化することによるものと考えられる。実際、ガラス板Gの面に生じるキズや付着した異物では、図4(a)に示すような明部は形成されない。
このため、処理装置16では、明視野画像において、明視野画像における背景部分の画像データの値より高い閾値を設定し、この閾値以上の領域を明部の領域として抽出する。なお、第1のカメラ22から送られてくる画像データは、検査位置を通過してラインセンサー型カメラで読み取られた一次元の画像データであるので、処理装置16では、複数ライン(例えば500ライン)の画像データが蓄積されて一定の面領域の画像が得られると、上記明部の領域の抽出を開始する。この抽出した明部の領域の位置情報は、ガラス板Gに存在する欠陥領域の検出の際に、以下のようにして用いられる。
【0029】
第2の欠陥検査装置14で得られ処理装置16に送られた画像データは、明視野反射画像のデータであり、欠陥の部分が暗部の領域となる画像である。上述したように、欠陥の実像と鏡像が暗部となって現れる。ガラス板Gの欠陥が存在するガラス板Gの厚さ方向の位置に応じて、欠陥の実像と鏡像とに位置ずれが生ずる。例えば、ガラス板Gの裏面近くに欠陥が位置する場合、実像と鏡像との位置ずれ量は小さくなり、表面近くに欠陥が位置する場合、実像と鏡像との位置ずれ量は大きくなる。
【0030】
そこで、処理装置16は、上記抽出された明部の領域の情報を用いて、欠陥のガラス板Gの幅方向の位置を特定する。さらに、この幅方向の位置を用いて、第1の欠陥検査装置12で得られる画像と第2の欠陥検査装置14で得られる画像との間の、ガラス板Gの同一箇所の画像が現れる時間ずれ量に基づいて、第2のカメラ30で得られた欠陥の実像および鏡像の暗部の領域を検出する。上記時間ずれ量は、第1の欠陥検査装置12の計測位置と第2の欠陥検査装置14の計測位置との搬送方向の離間距離とガラスGの搬送速度とが既知であるので、これらの情報から求めることができる。
暗部の領域の抽出には、予め設定された閾値を用いて行われる。
次に、この実像の中心位置と鏡像の中心位置との位置ずれ量を求め、この位置ずれ量に基づいて欠陥のガラス板Gにおける厚さ方向の位置を算出する。
また、処理装置16は、第2のカメラ30で得られた欠陥の実像を用いて暗部の領域の大きさを求め、この領域の大きさから、欠陥の大きさを推定する。なお、処理装置16は、上記明部の領域の情報に基づく処理と独立して、上記明部の領域の情報を用いることなく、予め設定された閾値を用いて暗部の領域を抽出する。
【0031】
処理装置16は、抽出した暗部の領域と、明部の領域の情報を用いて、明部の領域と暗部の領域が近接して向かい合うか否かと、算出されたガラス板Gに存在する欠陥の厚さ方向の位置と、抽出した暗部の領域から求められる欠陥の大きさや欠陥の特徴量を用いて、欠陥の種類を特定する。好ましくは、欠陥の形状を、明視野透過画像中の明部及び暗部の領域と明視野反射画像中の暗部の領域から識別することにより、欠陥の種類、例えば、泡による欠陥、異物による欠陥、あるいは、キズ等に分けて推定する。
ガラス板Gの面上にある異物やキズ等の欠陥は、第1の欠陥検査装置12から得られる明視野画像中では明部を形成しない。
【0032】
なお、第1の欠陥検査装置12において、明視野画像中の、欠陥の暗部の領域と近接して向かい合う明部が効果的に出現するには、以下の条件を満たすことが好ましい。
すなわち、図2に示す各部分の配置において、照明発光有効角θに対する画角φの比率に値αを乗算した値が、2より大きい第1の条件を満たすように、第1のカメラ22とガラス板Gとの間の距離、ガラス板Gと第1の線状光源20との間の距離、第1の線状光源の照射幅Lが設定されている。
また、光路遮蔽部材24の配置位置の、結像レンズ23の光軸に直交する面にできる、受光面からみた視野範囲の縁を定める錯乱円を定めたとき、光路遮蔽部材24により錯乱円が遮断される部分の面積が、錯乱円の面積の43〜57%になる第2の条件を満たすように、第1のカメラ22の絞り値、および第1のカメラ22とガラス板Gとの間の距離が設定されている。
さらに、第1のカメラ22の受光素子が、ガラス板Gを挟んで、第1の線状光源20の最大光強度の方向に位置するように、第1のカメラ22が配置される。
この3つの条件を満たすように各装置を配置することで、明視野画像に上記明部を有効に生じさせることができる。
また、F値を小さくすることにより、撮影における被写体焦点深度は浅くなり、画像のピンボケが生じ易くなるといった不都合が生じる。このため、明部を効率よく抽出するためには、F5.6〜F11が好ましく、第1のカメラ20の発光部分34の幅L1〜20mmの範囲において、上記比率に値αを乗算した値が2より大きいことが好ましい。
【0033】
図5(a),(b)に示す表では、第1のカメラ20の発光部分34の幅LがL=1mm、3mm、4mm、5mm、7mmにより定められる照明発光有効角θの数値と、F値によって定められる画角φの値を示し、各表の対応する欄には、φ/θに第1の光源20のαの値を含めて乗算した値を示している。図5(a),(b)に示す表中の太枠で囲まれる範囲において、値αが略1のとき、図4(a)に示すα・φ/θの値が2より大きい条件で、明部が効果的に出現することが確かめられた。これより、第1の線状光源20の値αが1より小さい(発光指向性を考慮した)とき、α・φ/θが2より大きい条件で、明部が効果的に出現するといえる。
なお、ガラス板Gと第1のカメラ22の結像レンズ23の表面までの距離を380mmとした。第1の線状光源20の照射面からガラス板Gの計測位置までの照明WDは、図5(a)では200mm、図5(b)では400mmである。このときの光路遮蔽部材24により錯乱円が遮断される部分の面積が、錯乱円の面積の50%になるようにした。
【0034】
このような欠陥検査システム10では、平行光をガラス板Gに斜めから照射し、シュリーレン撮影法に似た従来の自動欠陥検査で見逃していた欠陥を、精度良く抽出することができる他、修復できないガラス板Gの欠陥を区別することができる点で、有効である。これにより、修復できない欠陥部分を避けるようにして、所定のサイズにガラス板Gを切り出すことができる。
【0035】
以上、本発明の欠陥検査システムおよび欠陥検査方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の欠陥検査システムおよび欠陥検査方法の一実施形態の概略の構成を説明する図である。
【図2】本発明の欠陥検査システムにおける照明発光有効角θと画角φを説明する図である。
【図3】本発明の欠陥検査システムに用いるαを説明する図である。
【図4】(a)は、本発明の第1の欠陥検査装置で得られる画像の一例を模式的に示す図であり、(b)は、通常の透過光による明視野画像で得られる画像の一例を模式的に示す図である。
【図5】(a),(b)は、図1に示す欠陥システムの第1の欠陥検査装置において明部を生成するための好ましい範囲を説明する図である。
【図6】従来の欠陥検査装置の概略の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
10 欠陥検査システム
12 第1の欠陥検査装置
14 第2の欠陥検査装置
16 処理装置
18 駆動ローラ
20 第1の線状光源
22 第1のカメラ
23 結像レンズ
24 光路遮蔽部材
28 第2の光源
30 第2のカメラ
32 ディスプレイ
34 発光部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する板状体に存在する欠陥を検出する欠陥検査システムであって、
前記板状体の面に投光する第1の光源と、
前記板状体を通過した透過光を集光して明視野画像を撮影する第1のカメラと、
前記第1のカメラの透過光の光路中の前記第1のカメラの前面の位置に設けられるナイフエッジ状の光路遮蔽部材と、を有する第1の欠陥検査装置と、
前記第1のカメラで撮影された明視野画像の中から、明視野画像の背景成分の信号値に比べて高い信号値を閾値として、明視野画像の中から明部の領域を探索し、探索の結果、明部の領域を抽出したとき、この明部の領域を用いて、前記板状体に欠陥領域が存在するか否かを判別する処理装置と、を備えることを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項2】
前記第1の光源は、線状光源であり、
前記第1のカメラの受光面の前面には、板状体の像を結像するための結像レンズが設けられ、
前記第1の光源から、前記結像レンズを介して前記第1のカメラの受光面に至る前記第1の光源の透過光の光束の拡がり角の半分の角度を照明発光有効角とし、前記第1のカメラの受光面の位置から前記結像レンズを介して前記第1の光源の照射面に至る視野範囲の見込み角の半分の角度を画角とし、前記第1の光源の発光指向性を表す値をαとしたとき、前記照明発光有効角に対する前記画角の比率に前記第1の光源の発光指向性を表す値αを乗算した値が、2より大きい第1の条件と、
前記光路遮蔽部材の前記透過光の通過位置において、前記結像レンズの光軸に直交する面にできる前記受光面からみた視野範囲である錯乱円を定めたとき、前記光路遮蔽部材により前記錯乱円が遮断される部分の面積が、前記錯乱円の面積の43〜57%になる第2の条件と、を満たすように、前記第1の光源、前記結像レンズおよび前記第1のカメラが設定されている請求項1に記載の欠陥検査システム。
【請求項3】
前記第1の欠陥検査装置の他に、前記第1の欠陥検査装置の検査対象とする板状体に対して、板状体から反射した照明光を受光して、欠陥を検査する第2の欠陥検査装置を有し、
前記第2の欠陥検査装置は、
板状体の面に照明光を照射する第2の光源と、
照射され板状体の面で反射して得られる反射光を集光し、明視野反射画像を撮影する、板状体から見て前記第2の光源と同じ側に設けられる第2のカメラと、を有し、
前記処理装置は、前記第2のカメラで撮影された明視野反射画像から、板状体で反射した画像中の暗部の領域を抽出し、この暗部の領域が前記明部の領域と近接して向かい合う場合、板状体に欠陥が存在すると判別する請求項1または2項に記載の欠陥検査システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記明視野反射画像に欠陥の像として形成される欠陥の実像と欠陥の鏡像との位置ずれに基づいて、板状体に位置する欠陥の厚さ方向の位置情報を求める請求項3に記載の欠陥検査システム。
【請求項5】
前記板状体は、一方向に搬送されて移動し、
前記第1の欠陥検査装置と前記第2の欠陥検査装置は、前記第1の欠陥検査装置が、前記第2の欠陥検査装置の上流側に設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の欠陥検査システム。
【請求項6】
透明性を有する板状体に存在する欠陥を検出する欠陥検査方法であって、
第1の線状光源から前記板状体の面に投光し、前記板状体を通過した透過光を集光して第1のカメラで明視野画像を撮影するとき、
前記第1のカメラの透過光の光路中の前記第1のカメラの前面の位置にナイフエッジ状の光路遮蔽部材を設けて撮影し、
前記第1のカメラで撮影された明視野画像の中から、明視野画像の背景成分の信号値に比べて高い信号値を閾値として、明視野画像の中から明部の領域を探索し、探索の結果、明部の領域を抽出したとき、この明部の領域を用いて、前記板状体に欠陥領域が存在するか否かを判別することを特徴とする欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−48745(P2010−48745A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215091(P2008−215091)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】