説明

欠陥検査方法およびその装置

【課題】検査準備等の工数を極力減らして、検査の有効性を簡単かつ容易に判断することのできる欠陥検査方法を提供する。
【手段】内部欠陥5が表面温度の差として顕著に表れているのは、被検査体1に対して与えられる熱3の熱量が熱7の熱量よりも大きいため、被検査体1の表面温度が大きく上昇し、これによって生じた熱流が内部欠陥5において反射することによって、被検査体1の表面2の温度を上昇させているためである。表面温度の温度上昇率と、健全部と欠陥部の間に生じる表面温度の差に着目し、これらの関係を定量化することにより、被検査体の内部における欠陥を検出することのできる有効範囲を決定し、当該有効範囲において検査結果の信頼性を保証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートのような低熱伝導性材料から構成された被検査体における内部欠陥を検出する方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルや高架橋などに代表されるコンクリート構造物における浮きや剥離などの内部欠陥を調べる方法として、サーモグラフィー法が知られている。この従来のサーモグラフィー法では、コンクリート構造物などに熱負荷等を与えたときに発生するコンクリート表面の局所的な温度変化領域を赤外線カメラで計測し、この計測データを画像として出力して内部欠陥の検査を行う。
【0003】
この場合の検査方法の原理を図14を用いて説明する。図14に示すように、コンクリート構造物201に熱負荷205を与えると、コンクリート構造物201の内部には熱流207が生じる。特性上コンクリートは熱伝導性が低いため、熱流207は比較的ゆっくりと内部方向に伝播していく。このため、コンクリート構造物201における内部温度は、表面209に近いほど温度が高く、その内部に向かうにつれ温度が低くなる。
【0004】
ところが、コンクリート構造物201に浮きや剥離などの内部欠陥203が存在していると、熱流207が内部欠陥203によって遮断されるため、それ以上奥側に伝播しなくなる。これにより、熱流207は表面209の方向に反射し、その深さ方向に内部欠陥203が存在する表面領域bの表面温度は、内部欠陥203が存在しない表面領域aの表面温度よりも高温になる。
【0005】
この状態におけるコンクリート209の表面温度を赤外線サーモグラフィーで計測し、その画像の解析処理を行うことによって、欠陥部位の検出を行うことができる。
【0006】
しかしながら、従来のサーモグラフィー法では、検査時の熱環境条件によって検査結果が大きく異なる場合があり、その信頼性は決して高いものではなかった。
【0007】
例えば、日射を熱負荷として利用したパッシブ・サーモグラフィー法においては、コンクリート構造物への日射量が少ない北向き面で、かつ日内気温の較差が小さい曇天の場合には、存在する内部欠陥を検出できない可能性がある。
【0008】
また、ヒーター等の熱を熱負荷として強制加熱を行うアクティブ・サーモグラフィー法においても同様に、加熱強度、加熱時間および加熱方法(加熱体の種類、距離、配置)などの条件や、上述の立地条件や気温条件によっては、存在する内部欠陥を検出できない可能性がある。
【0009】
したがって、従来においては、熱環境条件が検査結果に与える影響は、各検査者の主観や経験等に基づいて判断されている場合が多く、同様の熱環境条件であっても検査者によっては異なる判断を行う可能性があった。
【0010】
例えば、存在する内部欠陥を検出できない熱環境であるにもかかわらず、検査者が検出可能であると判断して検査を行った場合、内部欠陥を見落としてしまう可能性がある。
【0011】
そこで、このような問題点を解決する技術として、出願人は、被検査体の内部温度を測定することにより、欠陥の検出可能範囲を明らかにして欠陥検査を行う方法を発明し、出願している(例えば、特許文献1参照。)。また、出願人は、被検査体の模擬欠陥を判断することにより、欠陥の検出可能範囲を明らかにして欠陥検査を行う発明についても出願している(例えば、特許文献2参照。)
なお、パッシブ・サーモグラフィー法において検査精度を向上させることのできる条件についての報告も存在する(例えば、非特許文献1および2参照。)
【0012】
【特許文献1】特開2004−69439号
【0013】
【特許文献2】特開2004−117238号
【0014】
【非特許文献1】松沼政明、他2名、”赤外線カメラを用いた高架橋の剥離検査”、平成14年9月、土木学会第57回年次学術講演会
【0015】
【非特許文献2】虫明成生、他3名、”夜間時の赤外線カメラを用いた高架橋コンクリートの剥離診断(その2)”、平成15年9月、土木学会第58回年次学術講演会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、これらの先行技術では、内部温度を測定するための熱電対または欠陥を模擬するための標準片を被検査体側に設置する必要があった。また、広範囲の領域を検査する場合においては、所定領域毎に熱電対や標準片を設置する必要もあった。
【0017】
このため、従来の方法では、検査精度を向上させることができるものの、検査準備等に工数がかかり検査に要する期間が長くなるという問題があった。
【0018】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、コンクリート構造物などの低熱伝導性材料から構成された被検査体の内部欠陥を検出する際において、検査準備等の工数を極力減らして、検査の有効性を簡単かつ容易に判断することのできる欠陥検査方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)(5)(6)(15)この発明の欠陥検査方法は、
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を検査するための欠陥検査方法であって、
計測領域の各単位領域について、表面温度の時間的変動を計測し、
計測した表面温度の時間的変動に基づいて、所定期間における表面温度の時間変化率を算出し、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定し、
前記検出可能範囲を明らかにして当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする。したがって、欠陥検査における検査準備等の工数を極力減らして、検査の有効性を簡単かつ容易に判断することができる。
【0020】
(2)この発明の欠陥検査方法においては、
所定期間における表面温度の時間変化率は、時間経過の各時点において算出されるものであること
を特徴とする。したがって、表面温度の計測中において検査の有効性を予測することができる。
【0021】
(3)この発明の欠陥検査方法においては、
計測によって取得したいずれかの時点における各単位領域間の表面温度の違いに基づいて、当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする。したがって、所定時間表面温度データの計測を行った後、事後的に検査の有効性を判断することができる。
【0022】
(4)この発明の欠陥検査方法においては、
計測によって取得したいずれかの時点における各単位領域間の表面温度の変化の違いに基づいて、当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする。したがって、所定時間表面温度データの計測を行った後、事後的に検査の有効性を判断することができる。
【0023】
(7)この発明の欠陥検査方法においては、
前記被検査体は、低熱伝導性材料から構成されたものであること
を特徴とする。したがって、コンクリート構造物や熱伝導性の低い複合材料などの欠陥検査に本発明を適用することができる。
【0024】
(8)この発明の欠陥検査方法は、
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を検査するための欠陥検査方法であって、
計測領域の各単位領域について、時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度を取得し、
取得した前記時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定し、
前記検出可能範囲を明らかにして当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする。したがって、欠陥検査における検査準備等の工数を極力減らして、検査の有効性を簡単かつ容易に判断することができる。
【0025】
(9)この発明の欠陥検査方法においては、
取得した前記時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度に基づいて、前記被検査体の表面からの深さ方向に存在する欠陥が前記被検査体の表面温度に与える影響の度合いを推定して、前記検出可能範囲を決定すること
を特徴とする。したがって、表面温度という数値化された値に基づく推定を行うことによって検出可能範囲を定量化して決定できる。
【0026】
(10)この発明の欠陥検査方法においては、
前記被検査体の表面からの深さ方向に存在する欠陥が前記被検査体の表面温度に与える影響の度合いは、前記時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度間における時間変化率に基づいて決定されること
を特徴とする。したがって、表面温度の時間変化率という数値化された値に基づく推定を行うことによって検出可能範囲を定量化して決定できる。
【0027】
(11)この発明の欠陥検査方法においては、
前記被検査体の表面からの深さ方向に存在する欠陥が前記被検査体の表面温度に与える影響の度合いは、前記時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度間における時間変化率の最大値に基づいて決定されること
を特徴とする。したがって、表面温度の時時間変化率の最大値という数値化された値に基づく推定を行うことによって検出可能範囲を定量化して決定できる。
【0028】
(12)この発明の欠陥検査装置は、
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測する温度計測器からのデータを入力して各単位領域の温度データとして記録するデータ記録手段と、
記録された前記温度データに基づいて、各単位領域における表面温度の変化を検出して、前記被検査体における欠陥を判断する欠陥判断手段と、
記録された前記温度データに基づいて、各単位領域について所定期間における表面温度の時間変化率を算出する変化率算出手段と、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定する検出可能範囲決定手段と、
を備えたことを特徴とする。したがって、被検査体の表面温度変化に基づく欠陥の検出可能範囲を決定して欠陥検査を行うことができるので、欠陥検査における信頼性を向上させることができる。
【0029】
(13)この発明の欠陥検査装置においては、
被検査体の表面に対し計測領域全面にわたり同時に加熱を行う加熱装置に対して加熱開始指令を行う加熱制御手段を、さらに備えたこと
を特徴とする。したがって、加熱過程において発生する被検査体の表面反射熱を考慮した計測を行うことができる。すなわち、加熱停止期間である冷却過程において計測を行うため、より正確な被検査体の表面温度を計測することができる。これにより、被検査体の欠陥を正確に検出するとともに、検出結果の信頼性を保証することができる。
【0030】
(14)この発明の欠陥検査装置においては、
データ記録手段は、加熱停止後における温度計測器からのデータを入力して前記各単位領域の温度データとして記録し、
前記欠陥判断手段は、前記各単位領域における表面温度の時間変化に関する前記各単位領域間の相対的相違を検出して、前記被検査体における欠陥を判断すること
を特徴とする。したがって、計測した被検査体の表面温度データに基づいて、欠陥を正確に検出するとともに、検出結果の信頼性を保証することができる。
【0031】
(16)この発明の欠陥検査装置は、
前記検出可能範囲決定手段によって決定された検出可能範囲を受けて、当該検出可能範囲を表示する検出可能範囲表示手段を、さらに備えたこと
を特徴とする。したがって、検出可能範囲決定手段によって決定された欠陥の検出可能範囲を明示して欠陥検査を行うことができるので、検査者にとって検査可能範囲が理解しやすい。例えば、決定した検出可能範囲を出力表示するためのプログラムおよびディスプレイなどが検査可能範囲表示手段に該当する。
【0032】
(17)(18)(19)(20)この発明の欠陥検査装置は、
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を検査するための欠陥検査方法であって、
計測領域の各単位領域について、表面温度の時間的変動を計測し、
計測した表面温度の時間的変動に基づいて、所定期間における表面温度の時間変化率を算出し、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体における所定深さの欠陥についての検出可否を判断し、
前記検出可否を明らかにして当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする。したがって、検出可否判断手段によって所定の深さの欠陥の検出可否を明示して欠陥検査を行うことができるので、検査者に所望の深さの欠陥有無の検査を行うことができる。
【0033】
[実施形態との対応]
「計測領域の各単位領域について、表面温度の時間的変動を計測」とは、実施形態においては、図6のステップS603の処理がこれに該当する。
【0034】
「計測した表面温度の時間的変動に基づいて、所定期間における表面温度の時間変化率を算出」とは、実施形態においては、図8のステップS803〜S811の処理がこれに該当する。
【0035】
「算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定」とは、実施形態においては、図8のステップS813〜S823の処理がこれに該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明における実施形態について図面を参照して説明する。
【0037】
1.第1の実施形態
1−1.実施形態の概要
赤外線サーモグラフィーを用いて、トンネルや高架橋などに代表されるコンクリート構造物の被検査体の欠陥検査を行う場合、欠陥部位と健全部位の赤外線強度のコントラスト差(温度差)に基づいて内部欠陥の検出を行う。
【0038】
しかしながら、欠陥検査において前記コントラスト差が表れなかった場合、その結果の有効性が定かではない。すなわち、はじめから被検査体には欠陥が存在しなかったのか、もしくは、欠陥が存在していたにもかかわらず、その欠陥が検出可能範囲よりも深い位置にあるために、検出することができなかったのかは不明である。
【0039】
一方、赤外線サーモグラフィーでは被検査体の表面温度を計測している。そこで、本実施形態では、計測した表面温度の時間変化に着目し、この変化を定量化して表現することにより、その時点での被検査体の内部における検査可能な範囲(有効検査深度)を明らかにすることとした。
【0040】
これにより、欠陥検査の過程において検査環境の評価を行い、赤外線サーモグラフィー等によって得られた検査結果の信頼性を保証することができる。
【0041】
図1を用いて本実施形態の基本概念を説明する。図1のAまたはBは、表面2に熱3および7の負荷が与えられたコンクリート構造物などの被検査体1を示しており、この被検査体1は内部欠陥5を有している。また、表面温度グラフ13および17は、この場合における被検査体1の表面2の位置(Y軸方向)と表面温度(X軸方向)との関係を示している。
【0042】
図1のCは、図1のAに示す被検査体1の表面の測定点α(健全部)における表面温度の時間変化を示すグラフである。同様に、図1のDは、図1のBに示す被検査体1の表面の測定点α’(健全部)における表面温度の時間変化を示すグラフである。
【0043】
被検査体1の表面に熱3または7が与えられると、表面温度が時間とともに上昇することにより、表面部と内部との間に温度勾配が生じる。この温度勾配により、被検査体1内部への熱伝導が起こることになる。そして、被検査体1の内部において剥離または空洞等による内部欠陥5が存在し、この内部欠陥5の熱伝導率が被検査体1の熱伝導率より極めて小さい場合には、被検査体1の表面2から深さ方向への熱流の多くは遮断される。この結果、内部欠陥5に対する表面付近β(欠陥部)またはβ’(欠陥部)においては、内部欠陥のない健全部に対する表面付近αまたはα’に比べて、表面温度が上昇しやすくなる。
【0044】
例えば、図1のCに示す表面温度グラフαでは、比較的熱量の大きな熱3が与えられることにより、時間の経過とともに表面温度が大きく上昇している。その結果、図1のCの表面温度グラフ13が表すように、その深さ方向に内部欠陥5が存在する表面2の一部(β付近)は、内部欠陥5が存在しない他の表面2(α付近)よりも高温になる。
【0045】
一方、図1のDに示す表面温度グラフα’では、比較的熱量の小さな熱7が与えられているため、表面温度グラフαに比べて、表面温度の上昇が緩やかである。そして、表面温度グラフ17が表すように、その深さ方向に内部欠陥5が存在する表面2の一部(β’付近)と、内部欠陥7が存在しない他の表面2(α’付近)では、表面温度の差が図1のAの表面温度グラフ13ほど顕著に表れていない。
【0046】
以上の点を考察すると、図1のAの表面温度グラフ13において、内部欠陥5が表面温度の差として顕著に表れているのは、被検査体1に対して与えられる熱3の熱量が熱7の熱量よりも大きいため、被検査体1の表面温度が大きく上昇し、これによって生じた熱流が内部欠陥5において反射することによって、被検査体1の表面2の温度を上昇させているためであると考えられる。
【0047】
また、図1のBの表面温度グラフ17において表面温度の差があまり顕著に表れていないのは、被検査体1に対して与えられる熱7の熱量が熱3の熱量よりも小さいため、被検査体1の表面温度があまり大きく上昇せず、これによって生じる熱流も小さくなり、被検査体1の表面2の温度をあまり大きく上昇させることができなかったためであると考えられる。
【0048】
よって、表面温度の単位時間当たりの温度上昇率が大きい程、被検査体1に対してより大きな熱量を与えることができると考えられ、「表面温度の上昇率」と「欠陥部および健全部における表面温度の差」との間には、正の相関関係が認められる。
【0049】
本発明は、上記のような表面温度の温度上昇率と、健全部と欠陥部の間に生じる表面温度の差に着目し、これらの関係を定量化することにより、被検査体の内部における欠陥を検出することのできる有効範囲を決定し、当該有効範囲において検査結果の信頼性を保証しようとするものである。また、現時点での温度上昇率に基づいて、その後に生じる表面温度の差を予測し、欠陥の存在する可能性を示すものでもある。
【0050】
なお、本実施形態においては、日射等の自然環境によって被検査体に熱を与えるパッシブ・サーモグラフィー法を前提として説明する。
【0051】
1−2.欠陥検査システムの機能ブロック図
図2に、本発明を実現する欠陥検査システムの概略構成を機能ブロック図で示す。この図において、欠陥検査装置20は、表面温度計測器24が計測した被検査体の表面温度の計測データを記録するデータ記録手段25と、データ記録手段25に記録された計測データを読み出して、これに基づく所定の処理を行い内部欠陥の有無を判断する欠陥判断手段27と、欠陥判断手段27が判断した結果に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定する検出可能範囲決定手段21と、検出可能範囲決定手段21において決定された検出可能範囲および欠陥判断手段27によって判断された欠陥の有無に関する情報を受けて、これらの表示を行う結果表示手段23とを備えている。
【0052】
1−3.欠陥検査システムの装置の構成
図3に、前記欠陥検査システムを実現する装置の具体的な構成図を示す。赤外線カメラ35は、コンクリート構造物30に対向して設置されるとともに、コンピュータ装置36に接続されており、日射33を受けたコンクリート構造物30の表面温度を計測し、この計測データを表面温度データとしてコンピュータ装置36に出力する。なお、本実施形態において使用する赤外線カメラ35の温度分解能は、0.1℃とする。
【0053】
表面温度データの出力を受けて、コンピュータ装置36は、データ記録手段25によって計測データを記録し、欠陥判断手段27によって内部欠陥の有無を判断する。さらに、検出可能範囲決定手段21によってコンクリート構造物30の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定し、検出可能範囲表示手段23によって、この検出可能範囲を表示する。
【0054】
すなわち、図2における欠陥検査装置20は、コンピュータ装置36によって実現され、表面温度計測器21は、赤外線カメラ35によって実現される。
【0055】
1−4.コンピュータ装置のハードウェア構成図
図4に、コンピュータ装置36のハードウェア構成図を示す。この装置は、CPU40、メモリ41、ディスプレイ43、ハードディスク45(記憶装置)、キーボード/マウス47および通信回路49を備えている。通信回路49は、他の装置との通信を行うための回路である。ハードディスク45には、検出可能範囲を決定するためのプログラムおよび欠陥判断のためのプログラムなどが記録されている。
【0056】
1−5.欠陥検査装置におけるフローチャート
図6に、欠陥検査装置20であるコンピュータ装置36において行われる処理のフローチャートを示す。
【0057】
1−5−1.表面温度の測定開始
コンピュータ装置36のCPU40は、接続されている赤外線カメラ35に対して測定開始信号を送出する(ステップS601、図6)。この信号を受けて赤外線カメラ35は、コンクリート構造物30の表面温度の測定を開始する。なお、コンピュータ装置36から赤外線カメラ35に対して測定開始信号を送出できない場合には、手動で赤外線カメラ35を操作して測定を開始させればよい。
【0058】
図5に、このとき赤外線カメラ35が計測する表面温度データの概念図を示す。赤外線カメラ35は、計測領域であるコンクリート構造物30の表面を所定の大きさに分割し、各単位領域毎の表面温度データθ(i=1,2,・・・N)を計測する。例えば、単位領域501の表面温度データθ 、単位領域502の表面温度データθ 、単位領域503の表面温度データθ ・・・、が順次計測される。
【0059】
なお、前記単位領域の表面積は、使用する赤外線カメラの空間分解能によって定まり、単位領域が小さいほど精度の高い欠陥検査を行うことができる。
【0060】
1−5−2.表面温度データの取得
コンピュータ装置36のCPU40は、赤外線カメラ35が計測したコンクリート構造物30の表面温度データを取得する(ステップS603、図6)。また、取得された表面温度データは、メモリ41またはハードディスク45に時系列データとして記録される。
【0061】
1−5−3.赤外線画像の表示
CPU40は、メモリ41またはハードディスク45に記録された最新の時系列データである表面温度データに基づいて赤外線画像を生成し、これをディスプレイ43上に表示する(ステップS605)。なお、図7に、このときCPU40によって行われる赤外線画像の表示処理のフローチャートの例を示す。
【0062】
CPU40は、メモリ41またはハードディスク45に記録されている各単位領域毎の表面温度データθ(i=1,2,・・・N)を呼び出す(ステップS701)。さらに、呼び出した表面温度データθに基づいて、単位領域iにおける表面温度画像色を決定する(ステップS703)。また、決定された表面温度画像色はメモリ41に記録される(ステップS705)。
【0063】
次に、CPU40は、iに1を増分した後(ステップS707)、全領域について処理を行ったか否かを判断し、未処理の領域がなくなるまで(i=Nまで)上記の処理(ステップS701〜S707)を繰り返す(ステップS709、No)。
【0064】
全領域についての処理が終了すると(ステップS709、Yes)、ステップS705においてメモリに記録した表面温度画像色に基づいて、全領域の赤外線画像をディスプレイ43に表示する(ステップS711)。
【0065】
続いてCPU40は、各領域間における表面温度画像色の差に基づいて、コンクリート構造物30における内部欠陥の情報を出力表示する(ステップS713)。
【0066】
図10に、この場合にコンピュータ装置36のディスプレイ43に表示される検査結果画面100を示す。表面温度画像色が略一致する領域の塊が存在すれば、この領域の塊を欠陥部位とみなすことができる。図10では、CPU40によって判定された内部欠陥101が、内部温度のコントラスト差として画面の中央左付近に示されている。
【0067】
また、計測領域全体における内部欠陥101の情報として、その位置と大きさが数値や寸法線等を用いて表示されている。例えば、内部欠陥101は、計測領域の左端から約400mmであって下端から約300mmに位置しており、その大きさは縦100mm、横100mmであると表示されている。
【0068】
なお、表面温度画像色が他の領域と異なる領域の塊が存在しない場合には、赤外線画像には、欠陥部位が表示されない。
【0069】
赤外線画像を表示すると、CPU40は、最初に時系列の表面温度データを表示したときから所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS607)。所定時間が経過していなければ、上記ステップS603に戻って同様の処理を繰り返す(ステップS607、NO)。
【0070】
一方、所定時間が経過していれば、下記に示す検出可能範囲の決定処理を行う(ステップS609)。なお、この所定時間は、1〜20分の範囲とすることが望ましく、特に2〜10分程度の範囲がより好ましい。これは、所定時間が短すぎると、変化量が少ないために表面温度変化を測定することができず、逆に長すぎると、表面温度の変動により表面温度変化が正しく反映されないためである。
【0071】
1−5−4.検出可能範囲の決定
コンピュータ装置36のCPU40は、その時刻tおよび、tから所定期間過去の時刻tにおける表面温度データに基づいて、当該コンクリート構造物30における、欠陥の検出可能範囲を決定する(ステップS609)。図8に、欠陥の検出可能範囲を決定する場合のフローチャートを示す。
【0072】
まず、CPU40は、処理に用いる変数を初期化するためDeに0をセットし、mに1をセットする(ステップS801)。
【0073】
次に、CPU40は、時刻tにおける表面温度データθ(i=1,2,・・・N)をメモリ41に読み込む(ステップS803)。さらに、CPU40は、時刻tにおける表面温度の平均値Tを算出する。ここで、平均値Tは、コンクリート構造物30における表面温度の代表値として用いられる。なお、代表値として他の値を用いてもよい。例えば、撮影範囲の代表的な範囲の平均値や代表的な地点の表面温度をそのまま用いてもよい。
【0074】
続いて、CPU40は、時刻tにおける表面温度データθ(i=1,2,・・・N)をメモリ41に読み込む(ステップS807)。さらに、CPU40は、時刻tにおける表面温度の平均値Tを算出する。上記と同様に、平均値Tは、コンクリート構造物30における表面温度の代表値として用いられる。
【0075】
次に、CPU40は、温度変化率Aを以下の式にしたがって算出する(ステップS811)。
【0076】
A = |(T−T)/(t−t)|
CPU40は、上記で求めた温度変化率Aに基づいて検出可能範囲(有効検査深度)を求めるため、図9に示すテーブルを参照し、有効検査深度Xm(m=1,2,・・・M)に対応する温度変化率の最小値Aminを読み込む(ステップS813)。例えば、有効検査深度X1(深さ10mm)の温度変化率の最小値Amin「1.5(℃/hr)」を読み込む。ここで、温度変化率の最小値Aminは、有効検査深度Xmの値の昇順に読み込まれる。これは、検出可能な欠陥深さは表面の温度変化率に比例して大きくなるためである。
【0077】
なお、図9のテーブルは、[実施例]に示す解析方法に基づき、赤外線カメラ35の温度分解能との関係で生成すればよい。
【0078】
CPU40は、時刻tからtにおける温度変化率が最小値Amin以上であるか否かを判断する(ステップS815)。例えば、温度変化率Aが「1.2(℃/hr)」の場合は、有効検査深度X1(深さ10mm)における温度変化率の最小値Amin「1.5(℃/hr)」よりも小さいので、検出可能範囲が「0mm」となる(De=0)。
【0079】
一方、温度変化率Aが最小値Amin以上である場合には、その時の有効検査深度をDeにセットする(ステップS817)。例えば、温度変化率Aが「1.8(℃/hr)」の場合は、有効検査深度X1(深さ10mm)における温度変化率の最小値Amin「1.5(℃/hr)」よりも大きいので、検出可能範囲が「10mm」となる(De=10)。
【0080】
次に、CPU40は、mに1を増分し(ステップS819)、増分後のmが最大値Mを超えたか否かを判断する(ステップS821)。例えば、図9に示すテーブルにおいては、mの最大値Mは、X5(50mm)の場合の「5」である。
【0081】
そして、増分後のmが2の場合には、最大値5以下であるのでステップS813に戻って処理を繰り返す(ステップS821、NO)。ここで、図9のテーブルによりX2の温度変化率の最小値Aminは、「2.0(℃/hr)」であるので(ステップS813)、算出した温度変化率Aが「1.8(℃/hr)」の場合には、検出可能範囲を現在のDe「10mm」と決定される(ステップS823)。
【0082】
1−5−5.検出可能範囲の出力表示
検出可能範囲を決定したCPU40は、赤外線カメラ35で計測した画像とともに、決定した検出可能範囲Deをディスプレイ43に出力表示する(ステップS611、図6)。例えば、図10に示すように、検出可能範囲は「0mm〜10mm」が表示される。
【0083】
なお、内部欠陥が存在しない場合は、「表面からの深さ0mm〜10mmにおいては、内部欠陥は存在しませんでした。」と表現してもよい。また、コンクリート構造物30の側面図を表示するとともに、決定した検出可能範囲を、前記側面図上において色分け表示するようにしてもよい。
【0084】
また、模擬欠陥が検出できない場合(例えば、上記Deが0の場合。)には、「検出可能範囲:0mm」と表示するか、または「検査することはできません。」と表示するようにしてもよい。
【0085】
これにより、検査者は、コンクリート構造物30の内部欠陥の検出の際における検出可能範囲を定量化して知ることができる。また、当該欠陥検査システムを用いることにより、上記のような赤外線サーモグラフィー法等によって得られた検査結果の信頼性を保証することができる。
【0086】
CPU40は、検査終了と判断しない場合には、上記ステップS603に戻って同様の処理を繰り返す(ステップS613、NO)。なお、検査終了は、検査者等の指示に基づいて判断してもよいし、予め設定した時刻が経過したことに基づいて判断してもよい。
【0087】
1−6.その他
1−6−1.
図10においては、赤外線画像に欠陥がはっきりと表れているが、計測の初期段階においては、欠陥が表れていない場合もあり得る。本発明は、欠陥が表れにくい計測の初期の段階であっても、表面温度の僅かな変化に基づいて欠陥の検出可能範囲を示すことができる。
【0088】
これにより、初期の段階で検査環境の有効性を評価することができる。例えば、検査環境が有効でない場合にあっては、日射を利用するパッシブ加熱環境から、ヒーター等を利用するアクティブ加熱環境に変更する判断を行うことができる。
【0089】
1−6−2.
また、算出した表面温度変化率Aに基づいて、将来の表面温度差を予測することも可能である。この場合、検査範囲内において欠陥を検出するための検査時間を算出することも可能である。これにより、検査効率を向上させることができる。
【0090】
1−6−3.
本発明は、被検査体表面からの深度が比較的小さい欠陥を検出する場合に有効である。特に、表面近傍に存在する内部欠陥は、剥離や落下を引き起こす可能性が非常に高いため、簡単かつ高精度に欠陥検査を行う手法が求められているからである。
【0091】
もっとも、以下に示すアクティブ加熱の場合であっても、本発明を適用可能である。この場合は、検査結果の有効性を簡単に担保することができる点にメリットがある。
【0092】
2.その他の実施形態
2−1.
上記実施形態においては、日射を利用したパッシブ・サーモグラフィー法を前提にして説明しているが、本発明は、ヒーター等で強制加熱を行うアクティブ・サーモグラフィー法であっても適用可能である。
【0093】
2−2.検出可否の判断
上記実施形態においては、被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定して欠陥検査を行う場合を説明したが、所定の深さにかかる欠陥が、検出可能か否かのみを判断するようにしてもよい。すなわち、検査環境における検出可能範囲の限界値を示すまでもなく、必要限度の深さの欠陥検出が可能か否かのみを示すようにしてもよい。これにより、処理効率を高めることができ、より間便に欠陥検査を行うことができる。
【0094】
例えば、検査者によって、判断の対象となる深さとして「10mm」が与えられたとする。この場合、図8のステップS813〜S823の処理に代えて、以下の処理を行えばよい。
【0095】
(1)図9の関係テーブルから有効検査深度が10mmの場合の温度変化率の最小値Aminを読み込む。
【0096】
(2)ステップS811において算出した温度変化率Aが、最小値Aminよりも大きい場合には検出可能であると判断し、そうでなければ検出不可能と判断する。
【0097】
さらに、図10の103に、検出可能である場合には「深さ10mmまでの欠陥は検出できます。」と表示し、検出不可能である場合には「深さ10mmまでの欠陥は検出できません。」を表示する。
【0098】
2−3.
上記実施形態においては、被検査体としてコンクリート材料を使用しているが、例えば、CFRPなどの低熱伝導性材料から構成された複合材料における欠陥検査にも本発明は適用可能である。また、ある程度の厚みを有しており内部温度に熱の流れが生じる被検査体であれば、複数の層から構成されているような構造物の欠陥検出にも本発明は適用可能である。例えば、鋼板や繊維補強材料シートなど一体化させて耐久性の補強がなされたコンクリートにも適用可能である。
【0099】
2−4.
本発明は、表面がタイルやモルタル等で覆われているような構造物における、その接合面の欠陥検査についても適用可能である。また、熱伝導性の良い材質によって構成される型枠の中にコンクリートを充填した際に生じる充填不良部を検出する場合においても適用可能である。
【0100】
2−5.
上記実施形態においては、被検査体の表面温度が上昇している場合について説明したが、下降している場合にも本発明を適用できる。例えば、加熱後における冷却過程においては健全部よりも欠陥部の方が、急激に温度が低下するからである。
【0101】
2−6.
上記実施形態においては、所定時間における2点の表面温度に基づいて温度変化率Aを算出したが、2点以上の表面温度に基づいて算出してもよい。また、測定時間を長くとった場合には表面温度が上下変動しやすくなるが、このような場合には、表面温度変動値の微分係数の絶対値の最大値をAに採用すればよい。
【0102】
2−7.
上記実施形態においては、欠陥検査装置を1つのコンピュータ装置を用いて構成したが、検出可能範囲決定手段ならびに結果表示手段を実現するコンピュータ装置および、データ記録手段、欠陥判断手段ならびに結果表示手段を実現するコンピュータ装置で構成してもよい。例えば、通信回線を利用してこれらの装置を接続することで、欠陥検査における遠隔操作が可能となる。
【実施例】
【0103】
コンクリート表面の温度変化と、欠陥部と健全部に生じる温度差との関係を2次元熱伝導解析した結果について説明する。
【0104】
1.解析方法
解析には計算力学研究センター製の解析ソフトASTEA−MACS(商標)Ver.4を用いた。解析モデルは図11に示すような欠陥部として空洞を含むコンクリート板の1/2対象モデルとした。
表面から10mmの位置に厚さ3mmの空気層を配置した。欠陥の幅は56mm及び150mm(1/2モデルにおいてはその半分)の2種類とした。表面部のみを熱伝達境界とし、境界面の外気温変化を与えた際のコンクリート表面温度変化を調べた。解析に用いたコンクリート及び空気層の熱物性とコンクリート表面における熱伝達率は図12のように設定した。コンクリートの熱伝導率は1.5W/m/Kと2.6W/m/Kの2種類とした。これは、コンクリートの熱伝導率の上限、下限を想定したものである。
【0105】
ケース1、2、3として、初期温度20℃から解析モデルの境界面における外気温が1時間でそれぞれ1、5、10℃上昇するものとした。コンクリートの熱伝導率は1.5W/m/Kとした。ケース4,5,6では、コンクリートの熱伝導率を2.6W/m/Kとしてケース1,2,3と同条件の解析を行った。ケース1〜6は欠陥の幅を56mm(モデルでは28mm)とした。ケース7では、欠陥の幅を150mmとし、ケース3と同条件の解析を行った。
【0106】
2.解析結果
ケース1〜7において、任意の時刻における健全部の表面温度変化率A(℃/hr)と欠陥部と健全部の間に生じた温度差ΔT(℃)の関係の一例を図13のAおよびBに示す。Aの算出は、任意の2時点t1、t2における健全部温度T1、T2から次式により算出した。
【0107】
A=|(T2−T1)/(t2−t1)|
ΔTの算出は、時間t2における欠陥部の表面平均温度Tdと健全部の表面温度Tsから次式により算出した。
【0108】
ΔT=Td−Ts
図13のAおよびBより、AとΔTには正の相関があり、例えば0.2℃の温度差が健全部と欠陥部の間に生じた場合に欠陥を検出可能と判定する場合、Aが1.5℃/hr以上であれば欠陥を検出可能になる。また、コンクリートの熱伝導率が1.5〜2.6W/m2/Kの範囲では、AとΔTの関係は同様と見なしてよい。ケース7の欠陥の幅を大きくしたケースでは、ケース1〜6に比べてΔTが大きい傾向にあり、より小さいAの環境条件においても欠陥を検出できる可能性が高くなる。例えば、検出する欠陥の最小寸法を150mmより大きいものと限定すれば、欠陥検出に必要なAの最小値を1.0℃/hrとしても良い。
【0109】
Aを算出する2時点の時間間隔t2−t1は、ケース1〜7のように外気温が一様に増加する場合には、t2−t1=1〜30分の範囲でいずれを用いてもよい。ただし、実際の測定においては、時間間隔が短すぎると正しいAの算出が難しくなる。
【0110】
本実施例は、検出する欠陥が深さ10mmより浅い場合であるが、より深さの大きい欠陥の検出に必要な表面温度変化率に関しても同様に行うことが可能である。
【0111】
以上の結果に基づき、欠陥の最小寸法が50mmより大きく、深さが10mmより浅い欠陥を検出するために必要な温度変化率の絶対値は1.5℃程度であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の基本概念を示す図である。
【図2】この発明の一実施形態による欠陥検出システムの機能ブロック図を示す例である。
【図3】この発明の一実施形態による欠陥検出システムを実現する装置の構成図を示す例である。
【図4】この発明の一実施形態によるコンピュータ装置のハードウェア構成図を示す例である。
【図5】この発明の一実施形態による、赤外線カメラが計測する表面温度データの概念図の例を示す図である。
【図6】欠陥検査装置におけるフローチャートを示す図である。
【図7】赤外線画像の表示におけるフローチャートを示す図である。
【図8】検出可能範囲の決定におけるフローチャートを示す図である。
【図9】欠陥深さと温度変化率の最小値との関係テーブルを示す図である。
【図10】内部欠陥の検査結果を示す表示画面の例である。
【図11】2次元熱伝導解析のコンクリート板の1/2対象モデルを示す例である。
【図12】コンクリートの熱特性を示す図である。
【図13】表面温度変化率と表面温度差との関係を示すグラフである。
【図14】従来における赤外線サーモグラフィー法を用いた欠陥検査の原理を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
20・・・欠陥検査装置
21・・・検出可能範囲決定手段
23・・・結果表示手段
24・・・表面温度計測器
25・・・データ記録手段
27・・・欠陥判断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を検査するための欠陥検査方法であって、
計測領域の各単位領域について、表面温度の時間的変動を計測し、
計測した表面温度の時間的変動に基づいて、所定期間における表面温度の時間変化率を算出し、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定し、
前記検出可能範囲を明らかにして当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1の欠陥検査方法において、
前記所定期間における表面温度の時間変化率は、時間経過の各時点において算出されるものであること
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項1または2の欠陥検査方法において、
前記計測によって取得したいずれかの時点における前記各単位領域間の表面温度の違いに基づいて、当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項1または2の欠陥検査方法において、
前記計測によって取得したいずれかの時点における前記各単位領域間の表面温度の変化の違いに基づいて、当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項5】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を見いだす欠陥検査のための検出可能範囲決定方法であって、
計測領域の各単位領域について、表面温度の時間的変動を計測し、
計測した表面温度の時間的変動に基づいて、所定期間における表面温度の時間変化率を算出し、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定すること
を特徴とする検出可能範囲決定方法。
【請求項6】
請求項5の検出可能範囲決定方法において、
前記所定期間における表面温度の時間変化率は、時間経過の各時点において算出されるものであること
を特徴とする検出可能範囲決定方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの欠陥検査方法または検出可能範囲決定方法において、
前記被検査体は、低熱伝導性材料から構成されたものであること
を特徴とする欠陥検査方法または検出可能範囲決定方法。
【請求項8】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を検査するための欠陥検査方法であって、
計測領域の各単位領域について、時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度を取得し、
取得した前記時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定し、
前記検出可能範囲を明らかにして当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項9】
請求項8の欠陥検査方法において、
取得した前記時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度に基づいて、前記被検査体の表面からの深さ方向に存在する欠陥が前記被検査体の表面温度に与える影響の度合いを推定して、前記検出可能範囲を決定すること
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項10】
請求項9の欠陥検査方法において、
前記被検査体の表面からの深さ方向に存在する欠陥が前記被検査体の表面温度に与える影響の度合いは、前記時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度間における時間変化率に基づいて決定されること
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項11】
請求項9の欠陥検査方法または検出可能範囲決定方法において、
前記被検査体の表面からの深さ方向に存在する欠陥が前記被検査体の表面温度に与える影響の度合いは、前記時間経過の時点が異なる少なくとも2以上の表面温度間における時間変化率の最大値に基づいて決定されること
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項12】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測する温度計測器からのデータを入力して各単位領域の温度データとして記録するデータ記録手段と、
記録された前記温度データに基づいて、各単位領域における表面温度の変化を検出して、前記被検査体における欠陥を判断する欠陥判断手段と、
記録された前記温度データに基づいて、各単位領域について所定期間における表面温度の時間変化率を算出する変化率算出手段と、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定する検出可能範囲決定手段と、
を備えたことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項13】
請求項12の欠陥検査装置において、
被検査体の表面に対し計測領域全面にわたり同時に加熱を行う加熱装置に対して加熱開始指令を行う加熱制御手段を、さらに備えたことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項14】
請求項13の欠陥検査装置において、
前記データ記録手段は、加熱停止後における温度計測器からのデータを入力して前記各単位領域の温度データとして記録し、
前記欠陥判断手段は、前記各単位領域における表面温度の時間変化に関する前記各単位領域間の相対的相違を検出して、前記被検査体における欠陥を判断することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項15】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を見いだす欠陥検査のための検出可能範囲決定装置であって、
前記被検査体の表面温度を計測する温度計測器からの温度データに基づいて、各単位領域について所定期間における表面温度の時間変化率を算出する変化率算出手段と、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体の深さ方向のいずれの範囲内の欠陥まで検出可能かを示す検出可能範囲を決定する検出可能範囲決定手段と、
を備えたことを特徴とする検出可能範囲決定装置。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれかの欠陥検査装置または検出可能範囲決定装置において、
前記検出可能範囲決定手段によって決定された検出可能範囲を受けて、当該検出可能範囲を表示する検出可能範囲表示手段を、さらに備えたことを特徴とする欠陥検査装置または検出可能範囲決定装置。
【請求項17】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を検査するための欠陥検査方法であって、
計測領域の各単位領域について、表面温度の時間的変動を計測し、
計測した表面温度の時間的変動に基づいて、所定期間における表面温度の時間変化率を算出し、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体における所定深さの欠陥についての検出可否を判断し、
前記検出可否を明らかにして当該被検査体における欠陥を見いだすこと
を特徴とする欠陥検査方法。
【請求項18】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を見いだす欠陥検査のための検出可能範囲決定方法であって、
計測領域の各単位領域について、表面温度の時間的変動を計測し、
計測した表面温度の時間的変動に基づいて、所定期間における表面温度の時間変化率を算出し、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体における所定深さの欠陥についての検出可否を判断すること
を特徴とする検出可否判断方法。
【請求項19】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測する温度計測器からのデータを入力して各単位領域の温度データとして記録するデータ記録手段と、
記録された前記温度データに基づいて、各単位領域における表面温度の変化を検出して、前記被検査体における欠陥を判断する欠陥判断手段と、
記録された前記温度データに基づいて、各単位領域について所定期間における表面温度の時間変化率を算出する変化率算出手段と、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体における所定深さの欠陥についての検出可否を判断する検出可否判断手段と、
を備えたことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項20】
所定の厚みを有する被検査体の表面温度を計測し、計測領域の各単位領域における表面温度に基づいて、当該被検査体における欠陥を見いだす欠陥検査のための検出可能範囲決定装置であって、
前記被検査体の表面温度を計測する温度計測器からの温度データに基づいて、各単位領域について所定期間における表面温度の時間変化率を算出する変化率算出手段と、
算出した前記所定期間における表面温度の時間変化率に基づいて、前記被検査体における所定深さの欠陥についての検出可否を判断する検出可否判断手段と、
を備えたことを特徴とする検出可否判断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−236863(P2009−236863A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86491(P2008−86491)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】