説明

欠陥検査方法および欠陥検査装置

【課題】 本発明はポリゴンミラーを回転させるスキャナモータの回転数を問題が生じない回転数に設定しても、その3倍以上の回転数に設定したのと同等な高速スキャンが可能で、微細な欠陥を検出することができる欠陥検査方法および欠陥検査装置を得るにある。
【解決手段】 搬送装置で搬送される検査物を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した縦長のビームスポットを走査して行なう第1のスキャン工程と、この第1のスキャン工程の縦長のビームスポットの走査方向とは90度異なる方向で、前記検査物をポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した縦長のビームスポットを走査して行なう第2のスキャン工程と、この第2のスキャン工程のデータと前記第1のスキャン工程のデータとを座標毎に二乗平均でデータを合成するデータ合成工程とで欠陥検査方法を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリゴンミラーを搭載したスキャナモータによりビームを走査して、板ガラス、フィルム、ウエハー等の表面の微細な欠陥を検出する欠陥検査方法および欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリゴンミラーをスキャナとして使用した欠陥検査装置は、CCD方式に比べ微細な欠陥を検出する能力が高いことが知られているが、ポリゴンミラーを回転させてビームを走査させているため、高速スキャンを行うにはスキャナモータの回転数を上げる必要があり、それには自ずと限界がある。
例えば、微細な欠陥を認識するためには、ポリゴンミラーに入射させるビーム径を太くし、且つビームスポットを小さくする必要があるが、その場合、ポリゴンミラーが大きくなり、高速回転には不向きとなる。
【0003】
逆にポリゴンミラーを小さくして、スキャナモータの回転数を上げようとした場合、ポリゴンミラーに入射可能なビーム径が細くなってしまうため、得られるビームスポットが大きくなってしまい、微細な欠陥を検出する能力が低下してしまう。
【0004】
このため、高速での検査が求められるフィルム、ウエハー等の生産工程における検査装置はCCD方式が主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−190942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、ポリゴンミラーを回転させるスキャナモータの回転数を問題が生じない回転数に設定しても、その3倍以上の回転数に設定したのと同等な高速スキャンが可能で、微細な欠陥を検出することができる欠陥検査方法および欠陥検査装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
【0008】
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は検査物を搬送する搬送装置と、この搬送装置で搬送される検査物を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナーモータを使用した縦長のビームスポットを+45度傾けて走査できるように設けられた第1のスキャナユニットと、前記搬送装置で搬送される検査物を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナーモータを使用した縦長のビームスポットで−45度傾けて走査できるように設けられた第2のスキャナユニットと、この第2のスキャナユニットで得たデータと前記第1のスキャナユニットで得たデータとを座標毎に二乗平均でデータを合成するデータ合成手段とで欠陥検査装置を構成している。
【0010】
さらに、本発明は検査物を搬送する搬送装置と、この搬送装置で搬送される検査物を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナーモータを使用した縦長のビームスポットで走査できるように設けられたスキャナユニットと、このスキャナユニットで前記検査物をスキャンした後、前記搬送装置に前記検査物を90度転回して搬送させる検査物転回搬送手段と、前記スキャナユニットで転回前のデータと転回後のデータとを座標毎に二乗平均でデータを合成するデータ合成手段とで欠陥検査装置を構成している。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1により、第1のスキャン工程と第2のスキャン工程で、スキャナモータを使用した縦長のビームスポットにより走査するので、ビームスポットを縦長にした分だけ高速でスキャンすることができ、かつデータ合成工程で第1のスキャン工程のデータと、この第1のスキャン工程との90度異なる方向に走査した第2のスキャン工程のデータとを座標毎に二乗平均でデータ合成するので、微細な欠陥画像として認識することができる。
【0012】
したがって、微細な欠陥を高速で検出することができる。
(2)前記(1)により、第1のスキャン工程、第2のスキャン工程およびデータ合成工程とで良いので、容易に実施することができる。
(3)前記(1)によって、第1のスキャン工程における縦長のビームスポットによる走査方向とは90度異なる方向から、第1のスキャン工程と同様に第2のスキャン工程も走査すれば良いので、第1・第2のスキャン工程ともに、従来のスキャナユニットと同等の光学系を用いて、容易に実施することができる。
(4)請求項2、3も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、請求項2は第1のスキャン工程と第2のスキャン工程とを1台のスキャナユニットで行なうことができ、請求項3は2台のスキャナユニットが必要になるが、簡単な搬送装置を用いて欠陥検査を行なうことができるとともに、連続的に欠陥検査を行うことができる。
(5)請求項4、5も前記(1)〜(3)と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を実施するための第1の形態の工程図。
【図2】本発明を実施するための第1の形態の第1のスキャン工程の説明図。
【図3】本発明を実施するための第1の形態の第2のスキャン工程の説明図。
【図4】本発明を実施するための第1の形態の画像合成工程の説明図。
【図5】本発明を実施するための第1の形態の欠陥検査装置の説明図。
【図6】本発明を実施するための第1の形態の第1のスキャナユニットの説明図。
【図7】本発明を実施するための第2の形態の工程図。
【図8】本発明を実施するための第2の形態の第1のスキャン工程の説明図。
【図9】本発明を実施するための第2の形態の第2のスキャン工程の説明図。
【図10】本発明を実施するための第2の形態の欠陥検査装置の説明図。
【図11】本発明を実施するための第3の形態の工程図。
【図12】本発明を実施するための第3の形態の欠陥検査装置の説明図。
【図13】本発明を実施するための第3の形態の第1・第2のスキャナユニットの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1ないし図6に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は板ガラス、フィルム、ウエハー等の検査物2の表面の微細な欠陥を高速で検出することができる本願発明の欠陥検査方法で、この欠陥検査方法1はベルトコンベア3を用いた搬送装置4で搬送された検査物2を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した主走査方向に対して副走査方向が3倍以上の縦長のビームスポットを走査して行なう第1のスキャン工程5と、この第1のスキャン工程5の縦長のビームの走査方向とは90度異なる走査方向で前記検査物2を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した主走査方向に対して副走査方向が3倍以上の縦長のビームスポットを走査して行なう第2のスキャン工程6と、この第2のスキャン工程6のデータと前記第1のスキャン工程5のデータとを座標毎に二乗平均でデータを合成するデータ合成工程7とで構成されている。
【0016】
前記第1のスキャン工程5は前記搬送装置4で搬送される検査物2の搬送方向に対して+45度傾けて縦長のビームスポット8を走査できるように設けられた、レーザ光源9を備えた照射装置10、この照射装置10から入射したレーザ光を反射して前記検査物2を走査するスキャナモータ11の駆動軸に取付けられたポリゴンミラー12と、前記照明装置10から前記検査物2に至る間に設けられたFθレンズなどの光学係部品とからなる第1のスキャナユニット13で構成されている。
【0017】
前記第2のスキャン工程6は前記搬送装置4で搬送される検査物2の搬送方向に対して−45度傾けて縦長のビームスポット8を走査できるように設けられた、レーザ光源9を備えた照射装置10、この照射装置10から入射したレーザ光を反射して前記検査物2を走査するスキャナモータ11の駆動軸に取付けられたポリゴンミラー12と、前記照明装置10から前記検査物2に至る間に設けられたFθレンズなどの光学係部品とからなる第2のスキャナユニット14で構成されている。
【0018】
前記データ合成工程7は前記第1のスキャナユニット13で得たデータと前記第2のスキャナユニット14で得たデータとを座標毎に二乗平均でデータを合成するデータ処理装置15を用いるもので、このデータ処理装置15は現在一般に使用されている技術を用いて行なう。
【0019】
なお、前記第1・第2のスキャナユニット13、14で縦長のビームスポット8、8を照射できるようにするにはレーザ光源9、9からの入射光のアパーチャを副走査側だけマスクすれば、同様の光学系で縦長の楕円ビームスポットを容易に得ることができる。
【0020】
また、本出願人が使用しているFθレンズは副走査方向の集光をビームスポットに近い位置でシリンダーミラーによって行なっているため、焦点位置をずらすことにより、縦長のビームスポットを容易に得ることができる。
【0021】
上記構成の第1のスキャナユニット13、第2のスキャナユニット14およびデータ処理装置15からなる欠陥検査装置16を用いた欠陥検査方法1にあっては、第1のスキャン工程5で縦長ビームスポット8を走査してスキャンするとともに、第2のスキャン工程6で第1のスキャン工程5の走査方向とは90度異なる走査方向で縦長のビームスポット8を走査してスキャンするので、従来のポリゴンミラーを回転させるスキャナモータの回転数と同じ回転数のスキャナモータであっても、副走査方向を3倍以上の速さで搬送させることがでるので、その3倍以上の回転数に設定したのと同等な高速スキャンが可能となる。
【0022】
すなわち、30,000rev/minのスキャナモータを用いても、現在不可能と思われている90,000rev/minのスキャナモータを使用したのと同様な高速スキャンができるということになる。
【0023】
なお、縦長のビームスポットを走査するため、得られるデータはスポット範囲を積分した光量値となってしまうため、副走査方向側で画像がぼやけてしまうが、90度位相が異なるデータを座標毎に二乗平均をとって、データ合成することにより、微細な欠陥画像として認識できるようにしているため、微細な欠陥も検出速度を犠牲にすることなく検出することができる。
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図7ないし図13に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0024】
図7ないし図10に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、ベルトコンベア3で搬送される検査物2を、スキャナユニット13を用いて第1のスキャン工程5を行った後、前記検査物2を手作業あるいはロボット17を用いて90度転回させて再度前記ベルトコンベア3で搬送し、前記スキャナユニット13で第2のスキャン工程6を行ない、前記第1のスキャン工程5で得たデータと前記第2のスキャン工程6で得たデータとを座標毎に二乗平均をとってデータ合成することにより、微細な欠陥画像として認識できるようにしている。
【0025】
このように手作業あるいはロボット17を用いてベルトコンベア3へ90度転回させて、再度検査物2を搬送させる搬送装置4Aを用いたり、第1・第2のスキャン工程5、6ができる1個のスキャナユニット13を用いて行なう欠陥検査方法1Aおよび欠陥検査装置16Aでも、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0026】
図11ないし図13に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、レーザ光源9からのガウシアンビームを全反射する全反射ミラー18の上に、反射防止膜19を出射領域に、1/2ハーフミラーコート20を入射領域にそれぞれコーティングした光学ガラス25を貼り合せ、さらにその上に、反射防止膜21を出射領域に、1/3ハーフミラーコート22を入射領域にそれぞれコーティングした光学ガラス26を貼り合せた複合ミラーアレイ23により、ガウシアンビームの縦方向のピークを平坦化したガウシアンビーム24をポリゴンミラー12に照射する照射装置10Aを用いた点で、このような照射装置10Aを用いた欠陥検査方法1Bおよび欠陥検査装置16Bにすることにより、検査物2を走査するガウシアンビーム24は、副走査方向のピークが合成されて平坦化されたものとなり、副走査方向のガウシアン特性をフラットにすることができるため、前記本発明を実施するための第1の形態よりも、より正確に微細な欠陥を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明はポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した欠陥検査方法および欠陥検査装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0028】
1、 、1A、1B:欠陥検査方法、
2:検査物、 3:ベルトコンベア、
4、4A:搬送装置、 5:第1のスキャン工程、
6:第2のスキャン工程、 7:画像合成工程、
8:縦長のビームスポット、 9:レーザ光源、
10、10A:照射装置、
11:スキャナモータ、 12:ポリゴンミラー、
13:第1のスキャナユニット、 14:第2のスキャナユニット、
15:データ処理装置、
16、16A、16B:欠陥検査装置、
17:ロボット、 18:全反射ミラー、
19:反射防止膜、
20:1/2ハーフミラーコート、
21:反射防止膜、
22:1/3ハーフミラーコート、
23:複合ミラーアレイ、
24:ガウシアンビーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置で搬送される検査物を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した縦長のビームスポットを走査して行なう第1のスキャン工程と、この第1のスキャン工程の縦長のビームスポットの走査方向とは90度異なる方向に、前記検査物をポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した縦長のビームスポットを走査して行なう第2のスキャン工程と、この第2のスキャン工程のデータと前記第1のスキャン工程のデータとを座標毎に二乗平均でデータを合成するデータ合成工程とを含むことを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項2】
第1のスキャン工程と第2のスキャン工程は搬送装置で搬送される検査物を90度転回させて搬送されたもので行なうことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
第1のスキャン工程と第2のスキャン工程は縦長のビームスポットの走査方向が90度異なる方向に配置された2台のスキャナユニットを用いて行なうことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
検査物を搬送する搬送装置と、この搬送装置で搬送される検査物を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した縦長のビームスポットで+45度傾けて走査できるように設けられた第1のスキャナユニットと、前記搬送装置で搬送される検査物を、ポリゴンミラーを使用した縦長のビームスポットで−45度傾けて走査できるように設けられた第2のスキャナユニットと、この第2のスキャナユニットで得たデータと前記第1のスキャナユニットで得たデータとを座標毎に二乗平均でデータを合成するデータ合成手段とからなることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
検査物を搬送する搬送装置と、この搬送装置で搬送される検査物を、ポリゴンミラーを搭載したスキャナモータを使用した縦長のビームスポットで走査できるように設けられたスキャナユニットと、このスキャナユニットで前記検査物をスキャンした後、前記搬送装置に前記検査物を90度転回して搬送させる検査物転回搬送手段と、前記スキャナユニットで転回前のデータと転回後のデータとを座標毎に二乗平均でデータを合成するデータ合成手段とからなることを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−58179(P2012−58179A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204201(P2010−204201)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000105659)日本電産コパル電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】