説明

欠陥検査方法及びその装置

【課題】パターン検査装置において、パターンの明るさむらの影響を低減して、高感度な欠陥検査を実現する。
【解決手段】被検査対象物上の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、前記被検査対象物を所定の光学条件で照射して前記被検査対象物のパターンの画像データを取得する工程と、前記画像データから算出される特徴量に基づいて形成されるしきい値面関数のパラメータを決定する工程と、前記パラメータに基づいて形成された前記しきい値面関数を用いて、前記被検査対象物上の欠陥を検出する工程と、を有し、前記パラメータを決定する工程では、任意のパラメータを設定した前記しきい値面関数を用いて前記被検査対象物上の欠陥候補を抽出する工程と、前記工程により抽出された前記欠陥候補に関する欠陥情報の教示に基づき、前記しきい値面関数のパラメータを自動的に更新する工程と、を有することを特徴とする欠陥検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光若しくはレーザ若しくは電子線等を用いて得られた被検査対象物の画像(検出画像)と、参照画像とを比較して、その比較結果に基づいて微細パターン欠陥や異物等を検出する検査に係り、特に半導体ウエハ、TFT、ホトマスク等の外観検査を行うのに好適な欠陥検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検出画像と参照画像とを比較して欠陥検出を行う従来の技術としては、特許文献1に記載の方法が知られている。これは、繰り返しパターンが規則的に並んでいる被検査対象物をラインセンサで順次撮像し、繰り返しパターンピッチ分の時間遅れをおいた画像と比較し、その不一致部を欠陥として検出するものである。
【0003】
従来の欠陥検査に用いる被検査対象物の一例として半導体ウエハを例に図2を用いて説明する。図2(a)は、半導体ウエハ11の構造を示す模式図であり、図2(b)は半導体ウエハ上のチップ20の構造を示す模式図である。半導体ウエハ11には図2(a)に示すように同一パターンのチップ20が多数、規則的に並んでいる。各々のチップの同一位置に対応する領域21乃至25には、基本的に同一パターンが形成されている。DRAM等のメモリ素子では、各チップ20は図2(b)に示すようにメモリマット部20−1と周辺回路部20−2に大別することができる。メモリマット部20−1は小さな繰り返しパターン(セル)の集合であり、周辺回路部20−2は基本的にランダムパターンの集合である。一般的にはメモリマット部20−1はパターン密度が高く、得られる画像は暗くなる。これに対し、周辺回路部20−2はパターン密度が低く、得られる画像は明るくなる。
従来の欠陥検査では、周辺回路部20−2は隣接するチップの対応する位置、例えば図2(a)の領域22と領域23等での画像の明るさ(輝度値)を比較し、その差がしきい値よりも大きい部分を欠陥として検出する。以下、このような検査をチップ比較と記載する。メモリマット部20−1はメモリマット部内の隣接するセルの画像の明るさを比較し、同様にその差がしきい値よりも大きい部分を欠陥として検出する。以下、このような検査をセル比較と記載する。
【0004】
【特許文献1】特開平05−264467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被検査対象物である半導体ウエハでは、CMPによる平坦化等により、隣接チップであってもパターンに膜厚の微妙な違いが生じ、チップ間の画像には局所的に明るさの違い(輝度差)がある。従来方式のように、輝度差が特定のしきい値th以上となる部分を欠陥とするならば、このような膜厚の違いにより明るさが異なる領域も欠陥として検出されることになる。これは本来、欠陥として検出されるべきものではない。つまり虚報である。従来は虚報発生を避けるための1つの方法として、欠陥検出のためのしきい値を大きくしていた。しかし、これは感度を下げることになり、同程度以下の差分値の欠陥は検出できない。
また、膜厚の違いによる明るさの違いは、図2に示した配列チップのうち、ウェハ内の特定チップ間でのみ生じる場合や、チップ内の特定のパターンでのみ生じる場合があるが、これらのローカルなエリアにしきい値を合わせてしまうと全体の検査感度を著しく低下させることになる。さらに、ローカルなエリア毎の明るさの違いに応じてしきい値を設定するのは、操作が煩雑となり、ユーザにとって好ましくない。
また、感度を阻害する要因として、パターンの太さのばらつきを起因とするチップ間の明るさの違いがある。従来の明るさによる比較検査では、このような明るさばらつきがある場合、検査時のノイズとなる。
【0006】
一方、欠陥の種類は多様であり、検出する必要のない欠陥(正常パターンノイズと見なしてよいもの)と検出すべき欠陥に大別できる。本願では、欠陥ではないのに誤って欠陥として検出されたもの(虚報)と正常パターンノイズ等とを合わせて非欠陥と呼ぶ。外観検査には、膨大な数の欠陥の中からユーザが所望する欠陥のみを抽出することが求められているが、上記輝度差としきい値との比較では、これを実現することは難しい。また、材質、表面粗さ、サイズ、深さ等検査対象に依存したファクタと、照明条件等検出系に依存したファクタとの組合せにより、欠陥の種類ごとの見え方が変わることが多く、所望する欠陥のみを抽出する条件設定を行うのは困難である。
【0007】
本発明の目的は、このような従来の検査技術の問題を解決して、同一パターンとなるように形成されたパターンの対応する領域の画像を比較して画像の不一致部を欠陥と判定する欠陥検査装置において、煩雑なしきい値設定を行うことなく、ノイズや検出する必要のない欠陥に埋没した、ユーザが所望する欠陥を高感度、かつ高速に検出する欠陥検査を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば次のとおりである。
(1)被検査対象物上の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、前記被検査対象物を所定の光学条件で照射して前記被検査対象物のパターンの画像データを取得する工程と、前記画像データから算出される特徴量に基づいて形成されるしきい値面関数のパラメータを決定する工程と、前記パラメータを決定する工程により決定されたパラメータに基づいて形成された前記しきい値面関数を用いて、前記被検査対象物上の欠陥を検出する工程と、を有し、前記パラメータを決定する工程では、任意のパラメータを設定した前記しきい値面関数を用いて前記被検査対象物上の欠陥候補を抽出する工程と、前記欠陥候補を抽出する工程により抽出された前記欠陥候補に関する欠陥情報の教示に基づき、前記しきい値面関数のパラメータを自動的に更新する工程と、を有することを特徴とする欠陥検査方法である。
(2)(1)記載の欠陥検査方法であって、前記パラメータを自動的に更新する工程では、前記欠陥候補が非欠陥であることのみを教示して、前記しきい値面関数のパラメータを自動的に更新することを特徴とする欠陥検査方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非欠陥を教示することにより、ユーザが所望する欠陥種を高感度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図1乃至図17を用い、被検査対象物として半導体ウエハを対象とした暗視野照明による欠陥検査装置を例にとって説明する。
【0011】
図1に本発明の欠陥検査装置の構成の概念図を示す。光学部1は、複数の照明部15a,15b及び検出部17を有して構成される。照明部15aと15bは互いに異なる光学条件の照明光を検査対象物(半導体ウエハ11)に照射する。照明部15aおよび15b各々による照明光にて、それぞれ散乱光3a,3bが発生し、検出部17で散乱光強度信号として検出される。検出した散乱光強度信号は一旦、メモリ2に格納され、画像処理部18に入力される。
【0012】
画像処理部18は、前処理部18−1、欠陥候補検出部18−2、欠陥抽出部18−3を適宜有して構成される。画像処理部18に入力された散乱光強度信号は、前処理部18−1において、後述する信号補正、画像分割等を行う。欠陥候補検出部18−2では前処理部18−1で生成された画像から、後述する処理を行い、欠陥候補を検出する。欠陥抽出部18−3では、欠陥候補検出部18−2で検出された欠陥候補の画像情報からユーザが不要とする欠陥種やノイズを除外し、ユーザが必要とする欠陥種を抽出し(後工程)、全体制御部19に出力する。図1では、散乱光3a,3bは共通の検出部17で検出する例を示すが、2つの検出部で各々検出しても構わない。また、照明部及び検出部は2つである必要はなく、1又は3つ以上であっても構わない。
散乱光3aおよび3bは、各々照明部15aおよび15bに対応して発生する散乱光分布を指す。照明部15aによる照明光の光学条件と照明部15bによる照明光の光学条件が異なれば、各々によって発生する散乱光3aと散乱光3bは互いに異なる。本明細書において、ある照明光によって発生した散乱光の光学的性質およびその特徴を、その散乱光の散乱光分布と呼ぶ。散乱光分布とは、より具体的には、散乱光の出射位置・出射方位・出射角度に対する、強度・振幅・位相・偏光・波長・コヒーレンシ等の光学パラメータ値の分布を指す。
【0013】
次に、図1の構成を実現する具体的な検査装置の一例として、欠陥検査装置の模式図を図3に示す。
本発明に係る検査装置は、検査対象物(半導体ウエハ11)に対して照明光を斜方から照射する複数の照明部15a,15bと、半導体ウエハ11からの垂直方向への散乱光を結像させる検出光学系(上方検出系)16と、結像された光学像を受光し、画像信号に変換する検出部17と、得られた画像信号を格納するメモリ2と、画像処理部18と、全体制御部19とを適宜含んで構成される。半導体ウエハ11はXY平面内の移動及び回転とZ方向への移動が可能なステージ(X-Y-Z-θステージ)12に搭載され、X-Y-Z-θステージ12はメカニカルコントローラ13により駆動される。このとき、半導体ウエハ11をX-Y-Z-θステージ12に搭載し、該X-Y-Z-θステージ12を水平方向に移動させながら被検査対象物上の異物からの散乱光を検出することで、検出結果を二次元画像として得る。
照明部15a,15bの照明光源は、レーザを用いても、ランプを用いてもよい。また、照明光源の波長の光は短波長であってもよく、また、広帯域の波長の光(白色光)であってもよい。短波長の光を用いる場合、検出する画像の分解能を上げる(微細な欠陥を検出する)ために、紫外領域の波長の光(Ultra Violet Light:UV光)を用いることもできる。レーザを光源として用いる場合、それが単波長のレーザである場合には、可干渉性を低減する手段(図示していない)を照明部15a,15bに備えることも可能である。
【0014】
検出部17は、イメージセンサに複数の1次元イメージセンサを2次元に配列して構成した時間遅延積分型のイメージセンサ(Time Delay Integration Image Sensor:TDIイメージセンサ)を採用し、X-Y-Z-θステージ12の移動と同期して各1次元イメージセンサが検出した信号を次段の1次元イメージセンサに転送して加算することにより、比較的高速で高感度に2次元画像を得ることが可能になる。このTDIイメージセンサとして複数の出力タップを備えた並列出力タイプのセンサを用いることにより、センサからの出力を並列に処理することができ、より高速な検出が可能になる。
【0015】
画像処理部18は被検査対象物である半導体ウエハ11上の欠陥を抽出するものであって、検出部17から入力された画像信号に対してシェーディング補正、暗レベル補正等の画像補正を行い、一定単位の大きさの画像に分割する前処理部18−1、補正、分割された画像から欠陥候補を検出する欠陥候補検出部18−2、検出された欠陥候補からユーザ指定の不要欠陥やノイズ以外の欠陥を抽出する欠陥抽出部18−3、抽出された欠陥を欠陥種に応じて分類する欠陥分類部18−4、外部から入力される教示データを受け付け、欠陥候補検出部18−2および欠陥抽出部18−3へセットする教示データ設定部18−5を適宜含んで構成される。
【0016】
全体制御部19は、各種制御を行うCPU(全体制御部19に内蔵)を備え、ユーザからの教示データ(後述する、正常パターンノイズ、不要欠陥等の大量に検出されるパターン)や、半導体ウエハ11の設計情報を受け付け、検出された欠陥候補の画像、最終的に抽出された欠陥の画像等を表示する表示手段と入力手段を持つユーザインターフェース部19−1、検出された欠陥候補の特徴量や画像等を記憶する記憶装置19−2と適宜接続されている。メカニカルコントローラ13は、全体制御部19からの制御指令に基づいてX-Y-Z-θステージ12を駆動する。尚、画像処理部18、検出光学系16等も全体制御部19からの指令により駆動される。
ここで、被検査対象物である半導体ウエハ11は、図2に示すように、メモリマット部20−1と周辺回路部20−2を有する同一パターンのチップ20が多数、規則的に並んでいる。全体制御部19では半導体ウエハ11をX-Y-Z-θステージ12により連続的に移動させ、これに同期して、順次、チップの像を検出部17より取り込み、検出画像に対し、規則的に配列されたチップの同じ位置、例えば図2(a)の検出画像の領域23に対し、領域21、22、24、25のデジタル画像信号を参照画像とし、検出画像と参照画像との間で特徴量を比較し、欠陥を抽出する。
半導体ウエハ11は前述の通り同一パターンが規則的に形成されており、図2(a)に示した領域21乃至25の画像は本来、同一であるべきだが、実際には画像間で明るさが異なっている。図4では、検出画像41、参照画像42およびこれらの画像の差について説明する。検出画像41と参照画像42との差画像43は、検出画像41と隣接するチップの対応する領域の参照画像42の明るさの差を表している。明るさの差が大きい画素ほど明るく表される。半導体ウエハ11は多層膜でできており、チップ間の膜厚の違いに起因して、画像間には大きな明るさの違いが生じているが、これは正常であって検出する必要はない。すなわち、正常パターンノイズである。従来の比較検査は対応する画素間で明るさを比較し、輝度差があらかじめ設定されたしきい値より大きい画素を欠陥候補として検出するが、差画像43のような検出する必要のないノイズを検出しないようにしきい値を高く設定すると、輝度差の小さい欠陥を見逃してしまう。
【0017】
更に、ノイズの要因として、パターンの太さのばらつきに起因するものがある。パターンの太さのばらつきが大きい隣接チップの画像の輝度信号波形を表したものが検出画像の輝度信号44および参照画像の輝度信号45であり、これらを重ね合わせたものが検出画像と参照画像の輝度信号重ね合わせ47である。検出画像の輝度信号44と参照画像の輝度信号45の差画像46のように、パターンの太さのばらつきによる特定の画素での画像間の明るさの違いがしきい値以上のとき、欠陥として検出されてしまう。更に、検査装置の高感度化が進むと、欠陥数、欠陥種も膨大となり、ユーザが、所望する欠陥を検出するために、しきい値を低くし、明るさの比較による高感度検査を行うと、欠陥候補の大半がノイズや不要な欠陥となり、欠陥候補の中からユーザが所望する欠陥を見つけ出すのが困難になってくる。
【0018】
図5(a)に検出画像と参照画像の輝度差のヒストグラムを表わす。検出画像は参照画像に対して、明るい部分、暗い部分があるため、輝度差は正負、両方の値をとる。従来技術のように、明るさの比較により欠陥を検出する場合、ヒストグラムのプラス側、マイナス側のそれぞれにしきい値51、52を設定し、その外側にあるものを欠陥候補として検出することになる。これらのしきい値は、ユーザがノイズの出方を見ながら手動で設定することも可能であるし、ヒストグラムの分散値等から、パラメトリックに自動設定することも可能である。ノイズを検出しないようにしきい値51、52を外側に設定すると、感度は低くなり、大きな欠陥53のみを検出する。しきい値51、52をより内側に設定すると、感度は高くなり、差のヒストグラムの網掛け部分からも欠陥を検出する。これにより、より微小な欠陥54が検出可能となるが、同時に正常パターンノイズ55も大量に検出されることがあり、ユーザ所望の微小な欠陥54が検出可能となっても、正常パターンノイズに埋没してしまい、欠陥候補の中からそれを特定できなくなる。
このため、本発明では、明るさの差だけでは判別できない欠陥と正常パターンノイズについて、図5(b)に示すように、複数の特徴量A,B,Cを用い、多次元特徴空間において、多角形しきい値面関数56からはずれる画素を欠陥とすることにより、ノイズを抑制し、欠陥のみを検出可能とする。ここで、多次元特徴空間において、はずれ画素を特定するためのしきい値面関数は、図5(b)の多角形しきい値面関数56のように正常パターンノイズを包含するように設定する必要がある。また、多角形しきい値面関数56設定の基準となる微小欠陥はノイズに埋没しており、欠陥の出方を確認しながらしきい値を手動で設定するのも困難である。そこで、本発明では、大多数を占め、特定しやすい正常パターン領域や正常パターンノイズを教示することにより、欠陥を検出するための多角形しきい値面関数56を自動生成する。以下にその処理の流れを説明する。
【0019】
図6は、検査対象物上の検出画像31と参照画像32とに基づき算出される特徴量を用いて欠陥候補を検出する欠陥候補検出部18−2の処理フローの例を示したものである。
まず検査対象となる検出画像31と対応する参照画像32(ここでは、隣接するチップの像として図2の22を用いる。)間の位置ずれ量を検出し、位置合わせを行う(step303)。位置ずれ量の検出は一方の画像をずらしながら、他方の画像との間で輝度差の二乗和が最小になるずれ量を求める、もしくは、正規化相関係数が最大となるずれ量を求める方法等が一般的である。
次に、位置合わせを行った検出画像31の各画素に対して、参照画像32の対応する画素との間で特徴量を演算する(step304)。特徴量は、その画素の特徴を表すものであればよい。その一例としては、(1)明るさ、(2)コントラスト、(3)濃淡差、(4)近傍画素の明るさ分散値、(5)相関係数、(6)近傍画素との明るさの増減、(7)2次微分値等がある。これらの特徴量の一例は、検出画像の各点の明るさをf(x,y)、対応する参照画像の明るさをg(x,y)とすると以下の式で表される。
明るさ; f(x,y)、もしくは {f(x,y)+g(x,y)}/2 (式1)
コントラスト;max{f(x,y)、f(x+1,y)、f(x,y+1)、f(x+1,y+1)}−
min{f(x,y)、f(x+1,y)、f(x,y+1)、f(x+1,y+1)} (式2)
濃淡差; f(x,y)−g(x,y) (式3)
分散; [Σ{f(x+i,y+j)2}−{Σf(x+i,y+j)}2/M]/(M-1) i、j=-1,0,1 M=9 (式4)
特徴量としては、上記(1)〜(7)の他に様々なノイズや欠陥種の特性を表すものを用いることができる。
そして、これらの特徴量のうち、いくつか、あるいは全ての特徴量を軸とする空間に各画素をプロットすることにより特徴空間を形成する(step305)。この特徴空間上に(後述する)任意のパラメータを設定したしきい値面関数を形成し(step306)、特徴空間を構成する各画素のうちしきい値面関数の外側にプロットされる画素、すなわち特徴的にはずれ値となる画素を欠陥候補として検出する(step307)。
ここで、半導体ウエハ11の画像は図3に示したX-Y-Z-θステージ12の移動に伴い連続的に得られるため、特定単位の小画像に分割して、欠陥候補検出処理を行う。このため、欠陥候補検出部18−2は複数のプロセッサで構成される。そして、分割した各チップの対応する位置の小画像のセットを同一プロセッサに入力し、各プロセッサは並列に処理を実行する。
【0020】
次に、はずれ画素を検出するためのしきい値面関数の設定方法を図7(a)(b)を用いて説明する。図7(a)はしきい値面関数の設定に用いる被検査対象物71であり、図7(b)はしきい値面関数の設定フローの一例である。
まず、しきい値面関数の設定に用いる検査チップを設定する(step71)。しきい値面関数設定の際は、処理時間短縮のために被検査対象領域(図7(a)の黒塗り部分)を限定してもよいし、しきい値面関数の高精度化のために領域限定をせずに全チップ(半導体ウエハの全面)を検査対象としてもよい。
次に適当なしきい値面関数のパラメータ若しくはデフォルトで設定してあるしきい値面関数のパラメータで、検査対象物71について図6で示した欠陥候補検出処理を実行する(step72)。ここで、欠陥候補の検出は単なる明るさの比較による処理でも構わない。これをテスト検査と呼ぶ。
ユーザはテスト検査で検出した欠陥候補の像を観察し、欠陥か非欠陥かを確認する(step73)。確認は、本発明による装置の照明光学系で得られる像でもよいし、電子線による像といった別の検出系によるものでもよく、欠陥と非欠陥の区別がつくものならいずれでもよい。また、本発明では、欠陥候補検出処理を実行すると、検出画像より欠陥候補となる画素とその周辺部の小画像、及び参照画像より対応する位置の小画像がセットで切り出され、欠陥候補画像として、保存されるので、その像を確認してもよい。そして、確認した欠陥候補に基づく欠陥情報を教示する(step74)。ここで欠陥情報とは、欠陥候補として抽出された画素が、非欠陥又は欠陥のいずれであるかの情報であり、ユーザは任意個の欠陥候補についてそれが欠陥であるか非欠陥であるかを欠陥情報とした教示データを教示する。
教示データに基づき、非欠陥を検出しないようなしきい値面関数の演算を自動的に実行させ(step75)、演算されたしきい値面関数を用いて、被検査対象物について図6で示した欠陥候補検出処理(テスト検査)を実行する(step76)。
適当なパラメータで欠陥候補検出処理を行うと、検出される欠陥候補の大半が非欠陥である可能性が高いため、基本的には非欠陥のみを指定するが、欠陥が含まれていれば、欠陥を教示することも可能である。検出される欠陥候補に対し、step73乃至step76を非欠陥が欠陥候補として検出されなくなるまで繰返し、パラメータを自動的に更新することで、しきい値面関数のパラメータが決定する。そして、決定したパラメータに基づいて形成されたしきい値面関数を用いて、全チップ(半導体ウエハ全面)に対し欠陥候補検出処理を行う(step77)。
【0021】
図8は、しきい値面関数設定の際にユーザインターフェース部のモニタに表示される画面81、88の一例である。
画面81は、半導体ウエハ上の欠陥候補の位置を示す欠陥マップ82、検出された欠陥候補の寸法等、全ての特徴量等を表示する欠陥リスト83、欠陥マップ82又は欠陥リスト83から選択した欠陥候補画像(欠陥部、参照部、差画像等)とその特徴量を表示する個々の欠陥表示画面84、別の照明光学系による観察像表示画面85、各欠陥候補が非欠陥(正常)であるか欠陥であるかを教示する教示ボタン86、しきい値面関数を自動的に更新するしきい値面関数設定ボタン87を適宜有して構成される。
欠陥マップ82では、テスト検査の被検査対象物が明るく示され(ここでは中央の5チップ)、検出された欠陥がその上にプロットされる。個々の欠陥表示画面84は、欠陥マップ82、もしくは欠陥リスト83上の欠陥を個々にマウスで指定することで欠陥候補画像(欠陥部、参照部、差画像等)とその特徴量が表示される。教示ボタン86は、ユーザが個々の欠陥候補画面84、別照明光学系による観察像表示画面85を観察しながら、欠陥候補が欠陥か非欠陥かの教示を行う際に用いる。また、画面88は、ユーザが教示ボタン86をマウスで選択し、順次、欠陥候補を指定し欠陥か非欠陥を数点から数十点の欠陥について、順次教示する際に用いる。教示が終了した時点で、しきい値面関数設定ボタン87を選択すると、しきい値面関数の演算を行う。
【0022】
次に、しきい値面関数演算方法の一例を説明する。本発明では、装置の高感度化が進み、検出される欠陥候補が増大すると、ユーザが真に必要とする欠陥をその中から見つけるのは容易ではないとの前提で、簡単に見つけることができる非欠陥のみを教示して、欠陥と非欠陥を識別するためのしきい値面関数を算出可能とする。その手法は、一般的に1クラスの識別問題として扱われ、各種ある。その一例として、教示された非欠陥画素の特徴の分布は正規分布になると仮定し、被検査対象物となる画素が非欠陥画素である確率を求めて識別する方法がある。教示されるn個の非欠陥画素のd個の特徴量をx1、x2、‥、xnとすると、特徴量がxとなる画素を欠陥候補として検出するための識別関数φは、式5、式6で与えられる。



また、非欠陥画素の特徴がパラメトリックな分布モデルを仮定できない場合の一例としては、1クラスSVM(Support Vector Machine)の手法等を適用することもできる。これは、教示された非欠陥画素からなる特徴空間を、密度空間に写像する。そして、密度空間の原点と非欠陥画素の分布を分離する最大マージンを持つ超平面をしきい値面関数とする識別関数φを計算する(式は省略)。
以上のような識別関数を算出することにより、特徴空間において、教示された非欠陥画素の分布を囲む包絡線をしきい値面関数として算出する。図7で説明したとおり、非欠陥画素の教示を追加していくことにより、しきい値面関数のパラメータは更新される。ユーザは非欠陥が欠陥候補として検出されなくなるまで教示によるしきい値面関数のパラメータの更新を繰り返す。テスト検査で、所望の欠陥が見つかった場合には、図8の画面88のメニューにおいて、欠陥と教示してもよい。なお、これらの教示は図3に示す教示データ設定部18−5を介して行われる。
【0023】
次に新規データが入力された場合は、図6に示したような欠陥候補検出部18−2の処理フローの通り、参照画像との間で特徴量を計算し、教示された欠陥候補に基づき更新したしきい値面関数の内側か外側か、すなわち、識別関数φに従い非欠陥か、欠陥かを判定する。このように本発明では、検出したくないもの(非欠陥)を教示することにより、教示したものと特徴的に異なる画素、すなわち検出したい画素を検出することができる。
更に本発明では、図1の欠陥候補検出部18−2において、検出する様々な種類の欠陥候補の中から、所望の欠陥種のみを抽出することも可能である。装置の高感度化が進むと検出される欠陥数、欠陥種も膨大になり、ユーザが真に見つけたい欠陥が大量の不要な欠陥に埋没して見つけられない可能性が出てくる。このため、大量に検出される不要な欠陥を不要(非欠陥)と教示することにより、それ以外のもの、すなわち、真に必要な欠陥を抽出する。本処理を図3で示した欠陥抽出部18−3で行う。
【0024】
欠陥抽出のための手順を図9を用いて説明する。まず、欠陥候補検出部18−2にて、微小な欠陥も検出するような低いしきい値面関数で高感度検査を行う(step91)。これにより、図5で示した通り、多数のノイズや不要な欠陥種と一緒に、微小な欠陥を多数検出する。欠陥候補検出部18−2にて検出したものは、欠陥候補に該当する部分とその周辺を含む小画像、及び参照画像の対応する位置の小画像がセットで欠陥候補画像として切り出され、欠陥抽出部18−3へ入力される。
ユーザは、検出された欠陥候補画像を任意個(数点)観察し、非欠陥画素を教示する(step92)。教示の仕方は図8に示した通りである。ここでも欠陥と非欠陥の両方を教示してもよい。欠陥抽出部18−3では、非欠陥と教示された欠陥候補画像から、これらを検出しないためのしきい値面関数を設定する(step93)。そして、検出された全欠陥候補に対して、特徴量を算出し(step94)、各欠陥候補が特徴空間上で、算出されたしきい値面関数の内側にある(すなわち非欠陥である)か、しきい値面関数の外側にある(すなわち欠陥である)か、を判定し(step95)、外側にあるもののみを抽出して、全体制御部19へ出力し、最終的な検査結果としてマップ表示する(step96)。
【0025】
図10に、図1の欠陥抽出部18−3のしきい値面関数設定方法の一例を示す。まず、非欠陥と教示された欠陥候補画素(欠陥を含むように切り出し小画像と、対応する参照画像)が入力されると(step1001)、各欠陥候補画素から特徴量を算出する(step1002)。特徴量は式1〜式4で説明したものでもよいし、それ以外の各欠陥種の特徴を示すものでもよい。本発明では多数用意し、教示された欠陥種に適したものを選択することも可能である。そして、選択した特徴量を軸とする空間上に非欠陥と教示された欠陥候補をプロットして特徴空間を形成し(step1003)、これらを包含するようにしきい値面(識別面)関数を演算(step1004)する。
演算方法は、上述の式5、6に従ってもよいし、1クラスSVMに従うことも可能である。欠陥抽出部18−3のしきい値面関数の設定は、図7で示したテスト検査による欠陥候補検出部のしきい値面設定と同じタイミングで行ってもよく、図7のstep77の全チップ(全面)検査後には、ユーザ所望の欠陥のみが検出される。また、欠陥候補の全画像を保存すれば、全チップ検査の結果を見ながら、欠陥候補の教示を追加し、しきい値面関数を高精度に設定し直し、欠陥抽出部18−3の欠陥抽出処理をチューニングすることも可能である。
【0026】
図11は非欠陥又は欠陥の追加教示による欠陥抽出処理のチューニングの例を示す。図11(a)は、特徴空間上のしきい値面関数の模式図である。黒点3個が非欠陥と教示されたものであり、3点を囲む包絡線1101が設定され、その外側にある5点(白点)が、欠陥として抽出される。図11(b)は追加教示した例である。点1102および点1103の2点を非欠陥と追加教示すると、しきい値面関数は拡大し、包絡線1104のように設定され、その外側にある2点(白点)が欠陥として抽出される。図11(c)は、欠陥も教示した例である。点1105および点1106の2点を欠陥と追加教示すると、しきい値面関数は2つにわかれ、欠陥と教示した2点も抽出されるようになる。このように、追加で非欠陥部の教示や欠陥の教示を行うことにより、より高精度なしきい値面関数を設定し、高感度に所望の欠陥種を抽出することが可能となる。
ここで、図1で示した欠陥抽出部18−3において、欠陥候補画像から特徴量の演算を行い、欠陥抽出を行う例を述べたが、欠陥候補検出部18−2にて、欠陥候補を抽出する際に全ての特徴量をあらかじめ算出して保持しておき、欠陥抽出部18−3では、それらの特徴量を用いて欠陥抽出を行うことも可能である。また、欠陥抽出部18−3は複数のプロセッサで構成され、欠陥候補画像に対する欠陥か非欠陥かの判定を並列で実行する。
【0027】
上述の発明により、ノイズや多数の不要な欠陥を非欠陥と教示することにより、これらに埋没したユーザ所望の少数欠陥を検出する例を述べたが、更なる効果を述べる。図12(a)は、半導体ウエハ上に8つのチップD1〜D8が形成されていることを示す。半導体ウエハの中心部のチップ間では膜厚の違いが小さく、比較する画像間で正常パターンの明るさの違いは小さい。従って、図12(b)に示す通り、隣接チップ(D3、D4)で明るさを比較すると、欠陥のみを検出することが可能である(1201)。これに対し、半導体ウエハの端に近いチップ(D7、D8)では膜厚の違いが大きく、画像間で正常パターンノイズの明るさの違いも大きくなる(図12(c))。これにより、背景の明るさの差に埋没して、欠陥が検出できない可能性がある(1202)。また、明るさの違いが小さい半導体ウエハの中心部のチップ(D3、D4)であっても、図12(d)に示すように、両チップの同じ位置に欠陥がある場合、検出は困難である(1203)。同様に全チップの同じ位置に欠陥があった場合も検出は困難である。このように、チップの比較では検出が困難な、ウェハの端にあるチップの欠陥や、各チップの同じ位置に発生するリピート欠陥に対しても、本発明によると検出が可能である。
【0028】
図13は上記、本来のチップ間の特徴比較では検出するのが困難な欠陥を、本発明により検出する処理の一例を示す。図2で示したメモリマット部20−1はセルと呼ばれる、微細な同一のパターンが繰り返し形成されている。このため、メモリマット部20−1の一部の正常領域1301を非欠陥と教示する(step1302)。このとき、欠陥は含まないように教示する。正常領域が教示されると、欠陥候補検出部18−2にて、教示された正常領域の特徴量を演算する(step1303)。そして、これまでに述べたように、特徴空間において、正常領域の分布を取り囲むしきい値面関数を算出する(step1304)。このように、あらかじめ、メモリマット部の正常領域を識別するためのしきい値面関数を算出しておく。そして、全チップ検査にて、メモリマット部の各画素の特徴量を演算し(step1305)、教示した正常パターンと特徴的に異なる画素、すなわち、特徴空間上でしきい値面関数の外側になる画素を欠陥候補として検出する(step1306)。このように、教示された正常領域と特徴量を比較し、特徴的はずれ値(しきい値面関数の外側に存在する画素)を欠陥候補として検出することにより、従来のチップ間の特徴(特に明るさ)比較では検出が困難であった欠陥が検出可能となる。
【0029】
以上に非欠陥の教示のみでしきい値面関数を算出し、特徴空間上で教示された非欠陥の分布から、はずれるものを欠陥として検出する例を述べたが、本発明では感度の調整も可能である。図14(a)の包絡面1401は、教示データから算出したしきい値面関数である。通常は、しきい値面関数は教示データからの尤度がほとんどない状態で算出される。この包絡面の膨張、収縮を行うことでユーザは感度調整が可能である。また、図14(b)の包絡面1402は図14(a)で算出されたしきい値面関数の外側にある欠陥候補を非欠陥と追加教示した場合のしきい値面関数である。このように、追加教示を行えば、一部の特徴に対する感度を微調整することも可能である。
【0030】
これまで、1つの検出器で得られた画像による欠陥判定方法について記述したが、本発明による欠陥検査方法では、複数の画像を複数の検出器で得る手段をもつ。図15は図1に示した暗視野照明による欠陥検査装置において検出光学系が2つになった例である。図15の斜方検出系(検出光学系)130を有し、検出光学系16と同様に、半導体ウエハ11からの散乱光を結像させ、散乱光像をイメージセンサ131で受光して、画像信号に変換する。得られた画像信号は、上方検出系と同じ画像処理部18に入力され、処理される。ここで、2つの異なる検出系で撮像される画像は当然のことながら画質が異なり、検出される欠陥種も一部で異なる。このため、各検出系の情報を統合して欠陥の検出を行うことにより、より多様な欠陥種の検出が可能となる。
【0031】
図16は、異なる2つの検出光学系から取得した2枚の画像情報の統合により、欠陥を検出する処理のフローである。上述の通り、欠陥候補検出処理、欠陥抽出処理は、それぞれ複数のプロセッサで並列に処理を行うが、各プロセッサには、同一位置を異なる検出光学系で取得した画像がセットで入力され、欠陥の検出処理が行われる。まず、非欠陥と教示された画素について、図15に示す検出光学系16により得られた対象画素を含む小領域画像(検出画像)161aとその参照画像161a’の位置ずれを検出し、位置合わせを行う(step1601a)。次に位置合わせを行った検出画像161aの対象画素に対して、参照画像161a’の対応する画素との間で特徴量を演算する(step1602a)。同様に図15に示す検出光学系130により得られた対象画素を含む小領域画像(検出画像)161bとその参照画像161b’も同様に位置合わせ、対象画素に対して特徴量演算を行う(step1601b、step1602b)。
ここで、検出光学系16と検出光学系130の画像が時系列に撮像されたものであれば、検出画像161aと161bの位置ずれ量も同様に算出する(step1603)。そして、検出光学系16と130の画像の位置関係を加味して、対象画素の特徴量全て、あるいは、いくつかを選択し、特徴空間を形成する(step1604)。特徴量は前述の(1)明るさ、(2)コントラスト、(3)濃淡差、(4)近傍画素の明るさ分散値、(5)相関係数、(6)近傍画素との明るさの増減、(7)2次微分値等を、それぞれの画像のセットから算出する。加えて、各画像の明るさそのもの(検出画像161a、参照画像161a’、検出画像161b、参照画像161b’)も特徴量とする。また、各検出系の画像を統合して、例えば、検出画像161aと161b、参照画像161a’と161b’の平均値から(1)〜(7)の特徴量を求める等でも構わない。ここで、特徴量として、検出画像161aと参照画像161a’で算出した明るさ平均Baと、検出画像161bと参照画像161b’で算出した明るさ平均Bbの2つを選択する例を説明する。検出画像161aに対する検出画像161bの位置のずれが(x1、y1)であった場合、検出光学系16から算出した各画素(x,y)の特徴量 Ba(x,y)に対する、検出光学系130から算出した特徴量はBb(x+x1,y+y1)である。このため、特徴空間は、X値をBa(x,y)、Y値をBb(x+x1,y+y1)として、 2次元空間に教示された全画素の値をプロットして生成する。そして、この2次元空間内で教示データの分布を囲むしきい値面関数を演算する(step1605)。
【0032】
図17(a)は生成した特徴空間の例であり、波線1701は算出されたしきい値面関数である。そして、全チップ検査時には、検査対象の全画素について、同様にして特徴量Ba、Bbを算出し(step1606)、算出したしきい値面関数の外側にプロットされる画素を欠陥候補とする(step1607)。図17(b)において、網掛けの領域1702にプロットされた画素は非欠陥とされ、それ以外にプロットされた画素1703は欠陥候補として検出される。本例では、特徴量を2つとし、2次元特徴空間上でのしきい値面関数(正常領域)設定、及び欠陥候補検出について述べたが、3つ以上の特徴量を選択し、N次元特徴空間に展開することも可能である。
上記に説明したように、本発明では異なる検出光学系で受光して得られた複数の画像信号を1つのプロセッサに入力し、欠陥判定処理を行う。2つの異なる検出光学系の画像は当然のことながら散乱光の分布状態が異なり、処理をして検出される欠陥種も一部で異なるため、異なる検出光学系から得られた情報を統合して欠陥の検出を行うことにより、より多様な欠陥種の顕在化が可能となる。
以上のように、本発明の各実施例で説明した検査装置によれば、画像処理部による欠陥判定処理は、欠陥候補検出部と、欠陥抽出部とを適宜有し、それぞれが複数のプロセッサで構成され、並列処理を行う。欠陥候補検出部は、ユーザがテスト検査時に、比較的入手の容易な非欠陥を教示すると、教示されたデータと特徴的に異なる画素を検出する。これにより、複雑な条件設定を必要とせずに、複数の特徴量を用いた高精度な欠陥候補の検出が可能となる。また、同一の繰返しパターンで形成されるメモリマット部の一部を正常領域と教示すると、メモリマット部における特徴的なはずれ画素を検出する。これにより、膜厚の違いによる見え方が他のチップとは大きく異なるウェハの端のチップにある欠陥や、各チップの同じ位置に発生するシステマティック欠陥といった、チップの比較では検出困難な欠陥の検出が可能となる。
また、検出された欠陥候補から、不要な欠陥をユーザが教示すると、教示された欠陥候補と特徴的に異なる欠陥候補のみを抽出する。これにより、複雑な条件設定を必要とせずに、不要な欠陥に埋没したユーザが所望する重要欠陥を抽出することが可能となる。
これらの処理は、複数の異なる検出光学系の画像を統合して実行することも可能である。これにより、多様な欠陥を高感度に検出することが可能となる。チップの比較による欠陥判定処理として、本例では、参照画像は隣接するチップの画像(図2の領域22)として、比較検査を行う例を示したが、参照画像は、複数のチップ(図2の領域21、領域22、領域24、領域25)の平均値等から1つ生成するのもかまわないし、領域23と領域21、領域23と領域22、・・・、領域23と領域25といったように1対1の比較を複数領域で行い、全ての比較結果を統計的に処理し、欠陥を検出することも本方式の発明の範囲である。
また、CMP等平坦化プロセス後のパターンの膜厚の微妙な違いや、照明光の短波長化により比較するチップ間に大きな明るさの違いがあっても、本発明により、20nm〜90nm欠陥の検出が可能となる。
さらに、SiO2をはじめ、SiOF、BSG、SiOB、多孔質シリア膜、等の無機絶縁膜や、メチル基含有SiO2、MSQ、ポリイミド系膜、パレリン系膜、テフロン(登録商標)系膜、アモルファスカーボン膜等の有機絶縁膜といったlow k膜の検査において、屈折率分布の膜内ばらつきによる局所的な明るさの違いがあっても、本発明により、20nm〜90nm欠陥の検出が可能となる。
【0033】
以上、本発明の一実施例を半導体ウエハを対象とした暗視野検査装置における比較検査画像を例にとって説明したが、電子線式パターン検査における比較画像にも適用可能である。また、明視野照明のパターン検査装置にも適用可能である。
検査対象は半導体ウエハに限られるわけではなく、画像の比較により欠陥検出が行われているものであれば、例えばTFT基板、ホトマスク、プリント板等でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る欠陥検査装置の構成の概念図である。
【図2】被検査対象物(半導体ウエハ)の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る欠陥検査装置の実施例を示す図である。
【図4】検出画像、参照画像およびこれらの差画像の説明図である。
【図5】(a)は検出画像と参照画像の輝度差のヒストグラムであり、(b)は多角形しきい値面関数の一例を示す図である。
【図6】欠陥候補検出部の処理フローの一例を示す図である。
【図7】欠陥候補検出部のしきい値面関数の設定方法の一例を示す図である。
【図8】欠陥候補検出部のしきい値面関数設定の際にユーザインターフェース部のモニタに表示される画面の一例を示す図である。
【図9】欠陥抽出部の処理フローの一例を示す図である。
【図10】欠陥抽出部のしきい値面関数設定方法の一例を示す図である。
【図11】本発明に係る欠陥検査方法の実施例を示す図である。
【図12】隣接チップとの比較検査では検出できない欠陥の説明図である。
【図13】本発明に係る欠陥検査方法の変形例である。
【図14】本発明に係る欠陥検査方法の変形例である。
【図15】本発明に係る欠陥検査装置の変形例である。
【図16】本発明に係る欠陥検査方法の変形例である。
【図17】本発明に係る欠陥検査方法の変形例である。
【符号の説明】
【0035】
2 メモリ、3a,3b 散乱光、11 半導体ウエハ、12 X-Y-Z-θステージ、13 メカニカルコントローラ、15a,15b 照明部、16 検出光学系、17 検出部、18−1 前処理部、18−2 欠陥候補検出部、18−3 欠陥抽出部、18−4欠陥分類部、18−5 教示データ設定部、18 画像処理部、19−1 ユーザインターフェース部、19−2記憶装置、19 全体制御部、20−1 メモリマット部、20−2 周辺回路部、20 チップ、21,22,23,24,25 領域、31,41 検出画像、32,42 参照画像、43 差画像、44 検出画像の輝度信号、45 参照画像の輝度信号、46 差画像、47 検出画像と参照画像の輝度信号重ね合わせ、51,52 しきい値、53 大きな欠陥、54 微小な欠陥、55 正常パターンノイズ、56 多角形しきい値面関数、71被検査対象物、81,88 画面、82 欠陥マップ、83 欠陥リスト、84 個々の欠陥表示画面、85 観察像表示画面、86 教示ボタン、87 しきい値面設定ボタン、130 検出光学系、131 イメージセンサ、161a,161b 検出画像、161a’,161b’ 参照画像、1101,1104 包絡線、1102,1103,1105,1106 点、1301 正常領域、1401,1402 包絡面、1701 波線、1702 領域、1703 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象物上の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
前記被検査対象物を所定の光学条件で照射して前記被検査対象物のパターンの画像データを取得する工程と、
前記画像データから算出される特徴量に基づいて形成されるしきい値面関数のパラメータを決定する工程と、
前記パラメータを決定する工程により決定されたパラメータに基づいて形成された前記しきい値面関数を用いて、前記被検査対象物上の欠陥を検出する工程と、
を有し、
前記パラメータを決定する工程では、
任意のパラメータを設定した前記しきい値面関数を用いて前記被検査対象物上の欠陥候補を抽出する工程と、
前記欠陥候補を抽出する工程により抽出された前記欠陥候補に関する欠陥情報の教示に基づき、前記しきい値面関数のパラメータを自動的に更新する工程と、
を有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の欠陥検査方法であって、
前記パラメータを自動的に更新する工程では、前記欠陥候補が非欠陥であることのみを教示して、前記しきい値面関数のパラメータを自動的に更新することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の欠陥検査方法であって、
前記パラメータを自動的に更新する工程では、前記欠陥候補が非欠陥又は欠陥のいずれであるかを教示して、前記しきい値面関数のパラメータを自動的に更新することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の欠陥検査方法であって、
前記パラメータを自動的に更新する工程では、非欠陥であると教示された前記欠陥候補を包含するように前記しきい値面関数のパラメータを更新することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の欠陥検査方法であって、
前記欠陥候補を抽出する工程では、前記画像データから算出される特徴量が、前記しきい値面関数の内側又は外側のいずれの側に存在するかにより、欠陥候補を抽出することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の欠陥検査方法であって、
前記パラメータを決定する工程では、前記欠陥候補を抽出する工程と前記パラメータを自動的に更新する工程とを繰り返すことにより、前記しきい値面関数のパラメータを決定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の欠陥検査方法であって、
前記パラメータを決定する工程では、複数種の特徴量に基づいて前記パラメータを決定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項8】
請求項7記載の欠陥検査方法であって、
前記パラメータを決定する工程では、ユーザが任意に設定した前記複数種の特徴量に基づいてパラメータを決定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項9】
被検査対象物上の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
前記被検査対象物を所定の光学条件で照射して前記被検査対象物のパターンの画像データを取得する工程と、
前記画像データから算出される特徴量に基づいて形成される第一しきい値面関数のパラメータを決定する工程と、
前記第一しきい値面関数のパラメータを決定する工程により決定されたパラメータに基づいて形成された前記第一しきい値面関数を用いて、前記被検査対象物上の全面の欠陥候補を検出する全面検査工程と、
前記全面検査工程により検出された前記欠陥候補の近傍画素データから算出される特徴量に基づいて形成される第二しきい値面関数のパラメータを決定する工程と、
前記第二しきい値面関数のパラメータを決定する工程により決定されたパラメータに基づいて形成された前記第二しきい値面関数を用いて、前記欠陥候補のうち、所望の欠陥のみを抽出して前記被検査対象物上の欠陥を検査する工程とを有し、
前記第一しきい値面関数のパラメータを決定する工程では、
任意のパラメータを設定した第一しきい値面関数を用いて前記被検査対象物上の欠陥候補を検出する工程と、
前記欠陥候補を検出する工程により検出された欠陥候補に関する欠陥情報の教示に基づき前記第一しきい値面関数のパラメータを自動的に更新する工程とを有し、
前記第二しきい値面関数のパラメータを決定する工程では、
任意のパラメータを設定した第二しきい値面関数を用いて、前記欠陥候補から非欠陥以外のものを欠陥として抽出する工程と、
前記欠陥候補から欠陥を抽出する工程とにより抽出された欠陥に関する欠陥情報の教示に基づき前記第二しきい値面関数のパラメータを自動的に更新する工程とを有することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項10】
被検査対象物上の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
所定の照明条件で前記被検査対象物を照射する照明部と、
前記被検査対象物からの散乱光を検出する検出光学系と、
前記検出光学系で検出された散乱光に基づく画像信号から算出される特徴量に基づいて形成されるしきい値面関数のパラメータを決定し、前記決定されたパラメータに基づいて形成された前記しきい値面関数を用いて前記被検査対象物上の欠陥を検出する画像処理部とを有し、
前記画像処理部は、
任意のパラメータを設定した前記しきい値面関数を用いて前記被検査対象物上の欠陥候補を抽出し、前記欠陥候補に関する欠陥情報の教示に基づき、前記しきい値面関数のパラメータを自動的に更新して前記しきい値面関数のパラメータを決定する欠陥候補検出部を有することを特徴とする欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−48730(P2010−48730A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214802(P2008−214802)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】