説明

欠陥検査装置およびその方法

【課題】 外観が類似しているブツと塗装後の塵埃とを区別して検査できる欠陥検査技術を提供する。
【解決手段】
入射光の角度を変化させて対象物の一定の領域を照射する照射手段と、入射光が対象物に照射されたときの画像を撮像素子で取得する撮像手段と、撮像手段によって取得した画像から欠陥候補を抽出し、該欠陥候補の特性に基づいてブツと塗装後の塵埃とを区別する欠陥種別を判定する欠陥判定手段を有することを特徴とする欠陥検査装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装面の欠陥検査装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話など小型機器は、デザインが流麗化するとともに、複雑な表面形状を持つようになったため、より緻密に塗装面のキズやブツを検査する必要性が増大している。対象表面のキズやブツを検査する従来の方法として、ブツやキズの程度によって明/暗視野照明法(リング照明法、パターン照明法等)が提案されている。
【0003】
塗装面の「ブツ」とは、塗装時に局所的に生じる凸状の盛り上がりのことであり、一因としては塗装前にゴミ等を巻き込むことにより発生する。また、「塵埃」は、塗装後の主に検査の際に付着により生じるものを指している。これらブツや塵埃を含んだ塗装面を検査するのに、従来例としては図6のようなパターン照明が使われる。
【0004】
パターン照明は、撮像視野内に照射光の明暗のパターンが生じるような照明法であり、塗装面上のブツや塵埃により微妙に盛り上がった箇所を照明したときの局所的な明暗の映り込み部分を欠陥候補とすることによって、平坦な正常面との区別を行う。
【0005】
従来のパターン照明法では、測定対象となる欠陥部分の大きさ等により、その形状を構成する平均的な勾配が異なるブツ(A(勾配小)、B(勾配中)、C(勾配大))と塵埃は、カメラ(撮像素子)に照明光を反射するが、平坦である正常面からの反射光は,カメラには入射しない。
【0006】
したがって、カメラ映像では、測定対象とする塗装面において、正常面の場合は暗く、ブツA、B、Cと塵埃についての欠陥面は、明るく撮像されるため、正常面と欠陥面とを区別して検出できることとなる。ただし、塗装面の欠陥であるブツやキズとは違い、検査の際に付着等により発生する恐れのある塵埃については除去が容易であるため,他の欠陥と区別できることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−10052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述してきた従来のパターン照明法では、外観がブツに類似する場合、照明の種類によっては、塵埃をブツやキズと同様に欠陥として検出してしまうため、欠陥の過剰検出による検査精度の低下が問題となる。
【0009】
そこで、本発明では、外観が類似しているブツと塗装後に付着した塵埃とを区別して検査する高精度な塗装面の欠陥検査装置およびその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の一つの態様は、入射光の角度を変化させて対象物の一定の領域を照射する照射手段と、前記入射光が前記対象物に照射されたときの画像を撮像素子で取得する撮像手段と、前記撮像手段によって取得した画像から欠陥候補を抽出し、該欠陥候補の特性に基づいて欠陥の種別を判定する欠陥判定手段と、を有することを特徴とする欠陥検査装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の一態様によれば、外観が類似しているブツと塗装後の塵埃とを区別して検査できることにより、過剰検出を低減することで携帯電話などの筐体の塗装面のブツを効率良く検査でき、検査精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態になる欠陥検査装置の一基本構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態になる欠陥検査の原理を説明する模式図である。
【図3】本発明の実施の形態になる欠陥検査の照射角度依存を説明する模式図である。
【図4】RGB各色照明領域における欠陥候補の判断基準テーブルを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態になる欠陥検査手順のフローを示す図である。
【図6】従来のパターン照明法による欠陥検査例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態になる欠陥検査装置の一基本構成を示す。欠陥検査装置は、試料ステージに搭載された測定すべき対象物5の一定領域を照射角度が異なるRGB(Red 、Green 、Blue)各色の照射光を照明するRGBパターン照明1(照射手段)と、照射された対象物5からの反射光による画像を取得するカラー撮像素子3(撮像手段)を有する。
【0015】
なお、RGBパターン照明1は、RGB各色を発光する発光素子が一体に所定の幅で併置された構造となっており、RGBパターン照明1を対象物5に対して、ある傾斜させて対象物5の一定領域への照射を行う。あるいは、RGBパターン照明1は、白色光源を別に備え、該白色光源の光を通過させる一体に所定の幅で併置されたRGBフィルタを用いて対象物5に照射する構造であってもよい。
【0016】
以下に、欠陥検査装置の動作について説明する。
【0017】
まず、図示していないハンドラ等から検査対象の対象物5を試料ステージ6上に設置する。設置したときの検知信号が制御手段8に出力されると、制御手段8は必要に応じてステージコントローラ7により試料ステージ6を動かし、対象物5がカラー撮像素子3の視野内に入るよう調整し、測定準備を行う。なお、試料ステージ6は、XYZ軸方向に移動可能となっている。
【0018】
また、測定準備には、カラー撮像素子3の視野内の欠陥箇所がRGBパターン照明1により映り込むことによって画像が鮮鋭化されるよう、RGBパターン照明1の位置を調整しておくことも含まれる。
【0019】
測定準備が整ったことが制御手段8に出力されると、制御手段8は照明コントローラ2により、RGBパターン照明1を対象物5に向けて照射し、撮像素子コントローラ4を制御して、RGBの画像を一括して取り込む。得られた撮像データは、撮像素子コントローラ4を経由して、制御手段8内のメモリに蓄積される。撮像データがメモリに蓄積されたことが制御手段8に出力されると、制御手段3は、ステージコントローラ7を制御して、次の検査位置まで試料ステージ6を駆動する。制御手段8は、撮像データから、例えば、後述する図2に示す方法を使って欠陥箇所と塵埃とを判別して検出し、その検査結果を、適宜、出力手段9に出力する。そして、制御手段8は、測定箇所が無くなるまで上述の動作を繰り返す。
【0020】
以上の本発明になる欠陥検査装置の構成によって、携帯電話などの筐体の滑らかな塗装面上のブツと塵埃の反射角度の照射方向による依存性を利用して両者を区別することが可能となり、検査精度を向上させることができる。
【0021】
また、照射手段と撮像手段に、RGBパターン照射とカラー撮像素子を備えることにより、3方向からの照射画像の取得を一括で行い、RGB成分毎の検査を行うことが可能となり、検査速度の向上を図ることができる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態になる欠陥検査の原理を説明する模式図を示す。図2(a)は、欠陥検査の構成を示し、図2(b)は、照射光の角度依存性による欠陥種別の判定方法を示している。
【0023】
ここで、RGBパターン照明1について、上述した白色光源とRGBフィルタを用いた場合を例として説明する。
【0024】
本発明のパターン照明は、図2(a)で示すようなRGBパターン照明1の位置に,照明部分のみを透過するようなRGBフィルタを設け、斜め上方からRGBフィルタに向けてほぼ平行光を照射することにより行うものである。平行光は、例えば、RGBフィルタから数十cm離した位置に配置した白色光源により生成する。照射角度の調整は、この白色光源の位置を変えることにより行うことができる。
【0025】
以上により、RGBフィルタの開口形状とサイズが保たれた各色の明部を、照射角度を制御しつつ対象物5に向けて照射することができる(なお、パターン照明は、透過面以外は暗部となることから明暗照明とも呼ばれる)。
【0026】
対象物5の表面が平坦である場合、対象物5の表面上には、RGBフィルタの各色の開口形状とサイズをほぼ保った明部が投射される。RGBフィルタの形状は、後の画像処理の都合上,矩形とするのが好適である。
【0027】
RGBフィルタの大きさは、撮像系の光学倍率に依存する。例えば、10cm平方の視野を持つ撮像系の場合、フィルタの大きさを5cm×10cm程度とし、対象表面に明暗が生じるようにRGBフィルタと対象の相対位置を調整することで、基本的なパターン照明が構成できる。
【0028】
また、このRGBパターン照明1として、好適には、指向性の良いLED(発光素子)光源による面光源をRGBパターン照明1の位置に配置してもよい。この場合、照射角度の調整は、面光源であるRGBパターン照明1自体の傾斜角度を制御することにより行うことができる。
【0029】
RGBパターン照明1からの照射光を対象物5の一定領域に照射することによって、カラー撮像素子3は、対象物5からの反射光による勾配の異なるブツ(勾配が小さいブツA、勾配が中位のブツB、勾配が大きなブツC)または塵埃の画像を取得する。図2(a)の左図は、カラー撮像素子3側に映し込まれる画像を示している。平坦である正常表面からの反射光は、投射面以外からはカラー撮像素子3には入射しない。一方、ブツや塵埃からの反射光は、その形状に応じてカラー撮像素子3に入射する。ただし、図2(a)では、明るく撮像されているブツや塵埃を、描画の都合上黒く描いている。
【0030】
さらに、入射角の小さい照射光(赤色)による反射光からは、勾配が小さいブツAと塵埃が検出され、入射角が中程度の照射光(緑色)による反射光からは、勾配が中位のブツBと塵埃が検出され、および入射角の大きな照射光(青色)による反射光からは、勾配が大きなブツCと塵埃が検出される。すなわち、塵埃は角度依存性を持たず、ブツは角度依存性を持つという差異が検出でき、ブツと塵埃とを特定することが可能となる。
【0031】
図3は、本発明の実施の形態になる欠陥検査の照射角度依存を説明する模式図を示す。図3では、さらに、欠陥種別を判定するポイントとなる欠陥検出の照射角度依存性について述べる。図3(a)は、種々の形状を持つブツからの反射光の状態を示し、図3(b)は、塵埃からの反射光の状態を示している。
【0032】
塗装後に付着する塵埃と、塗装面に生じるブツとを区別するために、RGBパターン照明1を用いる。この結果、図3(a)に示す傾斜部分が緩やかなブツAは、RGBパターン照明1のうち、主に、入射角が小さい(θ1)照明光aであるR(赤色)成分の反射光aを撮像素子方向へ反射する。また、傾斜部分が中程度のブツBは、RGBパターン照明1のうち、主に、入射角度が中程度(θ2)の照明光bであるG(緑色)成分の反射光bを撮像素子方向へ反射する。さらに、傾斜部分が急であるブツCは、RGBパターン照明1のうち、入射角度が大きい(θ3)照明光cのB(青色)成分の反射光cを撮像素子方向へ反射する。
【0033】
このように、ブツの検出に関し、ブツCに入射角θ2で入射する照明光dの反射光dは、撮像素子方向に反射しない。以上の結果、撮像素子の位置から観測した場合、ブツAは赤色、ブツBは緑色、ブツCは青色に輝くことになる。
【0034】
一方、塵埃の検出に関しては、その形状が不定であるため、その反射パターンが拡散状態になることにより、図3に示した入射角θ1、θ2、θ3を持つ照明光群を撮像素子方向に反射する。その結果、塵埃は白く輝くことになる。このように、ブツと塗装後に付着する塵埃との照射方向による反射角度の依存性の違いを利用することにより、例えば、撮像素子として、カラー撮像素子を用いることにより、一回の撮像でブツと塗装後に付着した塵埃との区別を図4(後述)に示す判断基準により行うことが可能となる。
【0035】
以上、本発明により、外観が類似しているブツと塗装後の塵埃とを区別して検査することが可能となり、過剰検出が低減され、検査精度の向上とともに検査速度の向上を図ることができる。
【0036】
図4は、RGB各色照明領域における欠陥候補の判断基準テーブルを示す。
【0037】
判断基準テーブルは、カラー撮像素子1で取得した画像から抽出した「欠陥候補」、RGBパターン照明1による照射光「R」、「G」、「B」、および欠陥種別を特定する「検査論理」の項目を有する複数のレコードで構成されている。
【0038】
ブツAは照射光「R」にのみ表示され、ブツBは照射光「G」にのみ表示され、ブツCは照射光「B」にのみ表示され、塵埃は照射光「R」、「G」、「B」の全てにおいて表示される。したがって、検査論理として、R or B orCであるとき、ブツと判断し、また、R and B and Cであるとき、塵埃と判断する。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態になる欠陥検査手順のフローを示す。まず、ステップS11において、図示していないハンドラ等から検査対象の対象物5を試料ステージ6上に設置する。つぎに、ステップS12において、ステージコントローラ7は、試料ステージ6を動かし、対象物5がカラー撮像素子3の視野内に入るよう調整する。また、カラー撮像素子3の視野内の欠陥箇所がRGBパターン照明1により映り込むことによって画像が鮮鋭化されるようRGBパターン照明1の位置を調整する。
【0040】
ステップS13において、測定対象及び照明の位置調整が準備されたかを判定する。測定準備が完了したときに、ステップS14において、照明コントローラ2は、RGBパターン照明1を対象物5に向けて照射し、撮像素子コントローラ4は、RGBの画像を一括してカラー撮像素子3に取り込む。得られた撮像データは、撮像素子コントローラ4を経由して装置内のメモリに蓄積される。
【0041】
ステップS15において、制御手段3は、メモリに蓄積された撮像データから欠陥候補の抽出を行い(RGB成分毎の閾値処理)、ステップS16において、各RGB成分に現れる欠陥候補のRGB成分強度を比較する。
【0042】
ステップS17において、制御手段8は、RGB成分の強度がどの成分にも同程度に検出されているか否かを判定する。RGB成分のどれにも同程度に検出されていれば、判断基準テーブルに基づいてステップS19において、塵埃と判断し(後に除去作業を行う)、RGB成分の強度がなく、全てで検出されなければ、ブツと判断し、ステップS18において、当該データを保存する。
【0043】
つぎに、ステップS20において、全欠陥候補についての終了を判定し、終わっていなければ、ステップS16に戻り、次の欠陥候補について以降の処理を行う。また、終了していれば、対象物5の次の検査領域について、ステップS12に戻り、測定箇所がなくなるまで以降の処理を繰り返す。さらに、対象物5の検査領域全てが終了していれば、ステップS22において、次の検査対象に移り、ステップS11以降の処理を繰り返す。
【0044】
以上の本発明によって、外観が類似しているブツと塗装後の塵埃とを区別して検査することが可能となり、過剰検出を低減させ、検査精度と検査速度の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
携帯電話などの筐体の滑らかな塗装面上のブツと、塗装後の付着などにより発生する塵埃とを区別して検査する技術に関する。
【符号の説明】
【0046】
1 RGBパターン照明
2 照明コントローラ
3 カラー撮像素子
4 撮像素子コントローラ
5 対象物
6 試料ステージ
7 ステージコントローラ
8 制御手段
9 出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の角度を変化させて対象物の一定の領域を照射する照射手段と、
前記入射光が前記対象物に照射されたときの画像を撮像素子で取得する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得した画像から欠陥候補を抽出し、該欠陥候補の特性に基づいて欠陥の種別を判定する欠陥判定手段と、
を有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記照射手段は、RGB各色の光が前記対象物の一定領域を照射可能に所定の幅で一体に配置されたRGBパターン照明であり、前記撮像手段は、カラー撮像素子を用いることによって前記対象物からのRGB各色の反射画像を一括して取得することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記RGBパターン照明は、RGB各色の光を発光する発光素子を有する構造体、または白色光源とRGBフィルタを有する構造体によって形成されたことを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記欠陥候補の特性は、該欠陥候補に入射光が照射されたときに得られる反射光の反射方向であり、前記判定手段は、該反射光の反射方向に基づいて欠陥種別を判定する請求項1乃至3のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
塗装面の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
入射光の角度を変化させて対象物の一定の領域を照射する照射工程と、
前記入射光が前記対象物に照射されたときの画像を撮像素子で取得する撮像工程と、
前記撮像ステップによって取得した画像から欠陥候補を抽出し、該欠陥候補の特性に基づいて欠陥の種別を判定する欠陥判定工程と、
を有することを特徴とする欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−208941(P2011−208941A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73811(P2010−73811)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】