欠陥検査装置および欠陥検査方法
【課題】高アスペクトの深溝パターンに存在する欠陥を高い精度で検出できる欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】実施形態の欠陥検査装置は、照射手段と、加震手段と、検出手段と、判定手段とを持つ。前記照射手段は、複数のパターンが形成された基体に光を照射する。前記加振手段は、欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる。前記検出手段は、振動させられている前記基体から発生する光を検出する。前記判定手段は、前記検出手段からの信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で揺れ方の相違があるかどうかを検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する。
【解決手段】実施形態の欠陥検査装置は、照射手段と、加震手段と、検出手段と、判定手段とを持つ。前記照射手段は、複数のパターンが形成された基体に光を照射する。前記加振手段は、欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる。前記検出手段は、振動させられている前記基体から発生する光を検出する。前記判定手段は、前記検出手段からの信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で揺れ方の相違があるかどうかを検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子デバイスの高集積化に伴い、パターンのアスペクト比が一層高くなっている。
【0003】
電子デバイスの一例として半導体メモリを取り挙げると、高集積化に伴ってその構造が三次元化し、製造プロセス中で高アスペクトの深溝形状のパターン(以下、単に「深溝パターン」という)が形成されている(図1参照)。
【0004】
深溝パターンの表面部から下、特に底部に欠陥が存在する場合、これを検出するために、ウェーハ表面から光を照射する方式の従来の検査手法を使用しただけでは、照射光が溝の底まで到達しないために欠陥からの反射光が十分得られない場合があり、検出することが困難になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−268199号公報
【特許文献2】特開2003−083907号公報
【特許文献3】特開2003−098113号公報
【特許文献4】特開2003−271927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高アスペクトの深溝パターンに存在する欠陥を高い精度で検出できる欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の欠陥検査装置は、照射手段と、加震手段と、検出手段と、判定手段とを持つ。前記照射手段は、複数のパターンが形成された基体に光を照射する。前記加振手段は、欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる。前記検出手段は、振動させられている前記基体から発生する光を検出する。前記判定手段は、前記検出手段からの信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で揺れ方の相違があるかどうかを検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】深溝パターンの一例を示す図。
【図2】固有振動数に関する説明図。
【図3】実施形態1による欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図。
【図4】散乱光の静止画像とパターン欠陥との関係を説明する図。
【図5】実施形態2による欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図。
【図6】周波数−信号強度の分布の相互比較により欠陥を検出する方法の一例を説明する図。
【図7】ラインパターンを加工して得られた、短冊状に区切られたパターンの一例を示す図。
【図8】固有振動数の算出例の説明図。
【図9】図8に示す例についての固有信号数の算出結果の一例を示す図。
【図10】実施形態1による欠陥検査方法の概略手順を示すフローチャート。
【図11】図10の手順のうち、深溝パターンの揺れ具合を検査するための具体的手順の一例を示すフローチャート。
【図12】図10の手順のうち、深溝パターンの揺れ具合を検査するための具体的手順の他の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)検査対象と実施形態の依拠する原理
実施形態を説明する前に、検査の対象となる深溝パターンと実施形態が依拠する固有振動数の相違について概説する。
【0010】
図1(a)は、高アスペクト深溝パターンの一例を示す分解斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。
図1に示す深溝パターンは幅20nm、高さ700nmのパターンが互いに20nmの間隔を有するように所定方向に繰り返し形成されたライン・アンド・スペース(以下、単に「L/S」という)のパターンである。そして、そのアスペクト比は700/20=35となっている。このような深溝パターンに従来の光学式検査装置を使用するだけでは、溝の底にまで届く光の量が少ないため、欠陥からの反射光強度が低く、充分な精度の欠陥検出が困難であった。なお、本願明細書において、高アスペクトとは、アスペクト比が20以上であることを意味する。
【0011】
図2は、以下の実施形態が依拠する原理を説明する図である。図2(a)は図1(b)中のパターンP3〜P5の部分拡大図である。これらのパターンを構造力学上の片持ち梁と見立てると、溝の底部に欠陥が存在する場合と存在しない場合とで片持ち梁の固有振動数が相違する。この点に着目すると、固有振動数の相違を利用した共振現象から深溝内に存在する欠陥を検出することができる。
【0012】
より具体的には、図2(a)の図を90°右回転させた図2(b)を用いて説明する。欠陥DF1を間に挟むパターンP3およびP4を一つの片持ち梁Aと見立て、周囲の溝内に欠陥が存在しないパターンP5をもう一つの片持ち梁Bと見立て、それぞれの固有振動数をFAおよびFBとすると、図2(c)に示すように、
固有振動数F=(1/(2π))(λ/L)(((EI)/(ρA))1/2) …(式1)
(E:ヤング率、I:断面二次モーメント、ρ:密度、A:断面積、λ:振動モード)
であるから、片持ち梁A,Bの固有振動数は互いに異なる、すなわち、
FA≠FB
であることは明らかである。
【0013】
そこで、例えば欠陥が存在しないパターンP5の固有振動数FBでL/Sパターンを振動させ、パターン表面の揺れ具合をモニタすれば、欠陥の検出が可能になる。
【0014】
以下、上述の原理を利用した実施形態のいくつかについて説明する。添付図面において同一の部分には同一の参照符号を付し、その重複説明は適宜省略する。
【0015】
(2)実施形態1
(A)欠陥検査装置
図3は、実施形態1による欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の欠陥検査装置1は、光源10、鏡筒20、制御部30、メモリMR、ステージ40、ステージコントローラ50、検出器60、信号処理部70、欠陥判定部80および演算部90を備える。
光源10は、本実施形態においてパルス状の光L1を照射する。鏡筒20は、ハーフミラーHMおよび対物レンズ22を含む光学系を含み、光L1をハーフミラーで反射してその光路をウェーハWに向け、対物レンズ22で焦点位置を制御してウェーハWに照射させる。
【0016】
対物レンズ22は、電気的に屈折率を変えるEO(Electric−Optical)素子で形成され、制御部30から与えられる制御信号に従って光L1のフォーカス位置を変更する。
【0017】
ウェーハW上には検査対象であるL/Sの深溝パターンが形成されている。ウェーハWは、本実施形態において例えば基体に対応する。
光L1はウェーハWで反射し、反射光L2が鏡筒20に入射する。鏡筒20は反射光L2に対しハーフミラーHMを透過させて検出器60に導く。これにより、検出器60の検出面でL/Sの溝パターンを含むウェーハWの表面の光学像が結像される。
【0018】
ステージ40は、ウェーハWを載置するとともに、ステージコントローラ50から与えられる制御信号に従い、ウェーハWをウェーハ面に水平な方向で移動させる。これにより、ウェーハWはウェーハ面に水平な方向で光L1により走査される。ステージ40はまた、水晶等で構成される高周波の振動子VBを含む。振動子VBは、所望の振動数でウェーハWを加振させて深溝パターンを共振させる。
【0019】
ステージコントローラ50は、制御部30からの指令信号に従い、ステージ40を駆動するための制御信号を生成するとともに、振動子VBを駆動するための制御信号をも生成する。振動子VB、ステージコントローラ50および制御部30は、本実施形態において、例えば加振手段に対応する。
【0020】
検出器60は、その検出面で結像した光L2を光電変換して検出信号を出力する。検出器60は、例えば赤外CCD(Charge Coupled Device)または光電子増倍管などにより構成される。ただし、これらに限定されるわけではなく、結像された像の光を光電変換できるものを適宜選択することができる。
信号処理部70は、検出器60から与えられる検出信号を処理して深溝パターンを含むウェーハWの表面の光学像を生成する。本実施形態では、光源10からパルス状の光が照射されるので、生成される光学像は散乱光の静止画像となる。
【0021】
欠陥判定部80は、信号処理部70から与えられる画像を相互に比較して散乱光に強度の相違があるかどうかを検出し、これにより、深溝パターンにおける欠陥の有無などを判定する。本実施の形態において、欠陥判定部80は例えば判定手段に対応する。
【0022】
メモリMRには、後述する欠陥検査方法を実行するための検査アルゴリズムが記述されたレシピファイルが格納され、また、三次元の位置情報を含む、検査対象である深溝パターンの設計データベースが格納される。
制御部30は、メモリMRからレシピファイルを読み込んで、ファイルに記述された検査アルゴリズムに従って上述した各種の制御信号を生成し、ステージコントローラ50、対物レンズ22、欠陥判定部80および演算部90へ与える。
【0023】
演算部90は、制御部30がメモリMRから読み出した深溝パターンの設計データから各パターンの固有振動数を検査に先立って算出する。
【0024】
(B)欠陥検査方法
次に、図3に示すパターン検査装置1を用いて欠陥検査を行う方法について説明する。
まず、検査に先立って、演算部90により、深溝パターンを構造力学上の片持ち梁と見立ててその固有振動数を求める。このときの固有振動数は、欠陥が無いものと仮定した場合の固有振動数である。
【0025】
次に、制御部30は、演算部90により算出された固有振動数で振動子VBが振動するように制御信号を生成し、ステージコントローラ50を介して振動子VBに供給する。これにより、算出された固有振動数でステージ40が加振され、深溝パターンが共振する。この共振により、欠陥の無いパターンは欠陥のあるパターンと比べて大きく振動することになる。このことから、深溝パターンの頂面およびその近傍(以下、深溝パターンの「頂面部」という)の揺れ具合をモニタすることにより、欠陥の有無、およびその位置を検出することが可能になる。
【0026】
本実施形態では、光源10からパルス状の光をウェーハWに照射し、各パターンからの散乱光を検出器60により検出し、得られた静止画像中の反射強度の相違から欠陥の有無および位置を検出する。
【0027】
より具体的には、振動子VBによる深溝パターンへの加振に同期させて制御部30が光源10からパルス状の光L1を照射させる。このときのパルス周期としては、演算部90により予め算出された固有振動数を用いる。光L1は、ハーフラーHMで反射して対物レンズ22でその焦点位置が調整され、深溝パターンへ照射する。深溝パターンの頂面部から発生する光L2は散乱光となって鏡筒20、ハーフミラーHMを通過して検出器60で検出される。検出器60により検出された信号は信号処理部70へ供給され、信号処理部70により、深溝パターンを構成するパターンのそれぞれについて散乱光の静止画像が生成される。
【0028】
図4は、散乱光の静止画像とパターン欠陥との関係を説明する図である。図4に示す例では、ウェーハW上の深溝パターンのうち、パターンP1〜P6が示され、それぞれのこれらの頂面部からの散乱光静止画像Img1〜Img6が各パターンに対応付けて示されている。図4中、下向きの直線矢印は、予め算出された固有振動数と同じ周期でパルス状に照射される入射光L1を表し、上向きの破線矢印は、ウェーハWの表面からの散乱光L2を表す。また、符号FLは共振による「梁たわみ」を表し、各パターンを表す実線の近傍に描かれる破線は共振によりパターンがたわむ様子を表す。
【0029】
図4中のパターンP1,P2およびパターンP5,P6には欠陥が無く、これらの静止画像Img1,Img2,Img5およびImg6には低輝度の楕円パターンが描かれている。この一方、パターンP3およびP4は、その間の底面に欠陥DF1が形成されており、このため、パターンP1,P2,P5,P6ほどには振動しない。その結果、これらのパターンの頂面部からの散乱光の静止画像Img3,Img4には、Img1,Img2,Img5およびImg6と著しく輝度が異なる楕円パターン、本例では高輝度の楕円パターンが描かれている。なお、図4の例では、静止画像Img1,Img2,Img5およびImg6中の楕円パターンが低輝度で、静止画像Img3,Img4中の楕円パターンが高輝度である場合を示したが、パルス光と振動子VBとの同期の取り方に依存して、これとは逆に静止画像Img1,Img2,Img5およびImg6中の楕円パターンが高輝度で、静止画像Img3,Img4中の楕円パターンが低輝度である場合も勿論ある。
【0030】
そして、欠陥判定部80は、このような散乱光の静止画像Img1〜Img6における反射強度の相違を検出し、パターンP3,P4の間に欠陥DF1が存在するものと判定する。
【0031】
図10および図11のフローチャートを参照しながら、本実施形態の欠陥検査方法の手順を説明する。図10は本実施形態の欠陥検査方法の概略手順を示すフローチャートであり、図11は、図10の手順のうち、ステップS30の具体的手順を示すフローチャートである。
【0032】
まず、検査に先立って、検査対象である深溝パターンの固有振動数を予め算出しておく(ステップS10)。
【0033】
次に、算出された固有振動数で、深溝パターンが形成されたウェーハを加振する(ステップS20)。
【0034】
次いで、深溝パターンの頂面部の揺れ具合を検査する(ステップS30)。
【0035】
最後に、深溝パターンの頂面部の揺れ具合を検査した結果から欠陥の有無を判定し(ステップS40)、概略位置を特定する。
【0036】
深溝パターンの頂面部の揺れ具合の検査方法の具体的手順について図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0037】
本実施形態では、予め算出した固有振動数のパルス周期の光をウェーハWに照射し、散乱光イメージをパターン毎に取得する(ステップS31)。そして、各パターンについて得られた散乱光イメージの間で反射強度に相違があるかどうかを調べ、相違がある場合には欠陥があるものと判定し(ステップS32)、概略位置を特定する。
【0038】
(3)実施形態2
(A)欠陥検査装置
図5は、実施形態2による欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図である。図3との対比により明らかなように、本実施形態の欠陥検査装置2は、図3の欠陥検査装置1の光源10および検出部60に換えて、光源12および検出部62を備える。欠陥検査装置2のその他の構成は、図3の欠陥検査装置1と実質的に同一である。
【0039】
光源12は、高コヒーレンスのDUVレーザ光を発光する。また、検出部62は、深溝パターンからの反射光の周波数を高い分解能で検出できる周波数分解光学系を含む。
【0040】
(欠陥検査方法)
次に、図5に示すパターン検査装置2を用いて欠陥検査を行う方法について説明する。
演算部90により深溝パターンの固有振動数を予め算出する点、算出された固有振動数で振動子VBによりステージ40を加振して深溝パターンを共振させる点は、前述した実施形態1と同様である。本実施形態の特徴は、深溝パターンの頂面部の揺れ具合をモニタする方法にあり、パターン頂面部からの反射光の振動数の相違から欠陥の有無および位置を検出する点にある。
【0041】
本実施形態では、光源12から高コヒーレンス、例えば、コヒーレンス長:833[m]以下のDUVレーザ光L1を照射する。これは、高速をc、共振振動数をfとした場合、L=c/fで定義されるコヒーレンス長は共振周波数(f:360[kHz])より短ければいいので、L=3.0×108[m/s]/360[kHz]=833[m])がコヒーレンス長の上限となる。パターン頂面部からの反射光を検出部62により検出し、その検出信号から、所定の周波数帯域に亘る信号強度の分布を、各パターンに対応付けて求める。欠陥が無いパターンは、予め算出された固有振動数で共振するので、これらのパターン同士で信号強度の分布に相違は無い。この一方、欠陥があるパターンは、予め算出された固有振動数では共振しないため、欠陥が無いパターンよりも頂面部の揺れが少ない。
【0042】
従って、周波数−信号強度の分布を、例えば隣り合うパターン同士で比較すれば、強度分布が大きく変化した場合にパターンの欠陥があると判断することができる。周波数−信号強度の分布の比較は、例えば隣り合うパターンで差分を取ることにより容易に実行することができる。
【0043】
図6は、周波数−信号強度の分布の比較による欠陥検出方法の一例を説明する図である。
【0044】
信号強度のグラフGL1はDUVレーザ光L1の信号強度分布を、信号強度のグラフG11,G12は、ウェーハW上の深溝パターンのうちのパターンP11,P12からの反射光の信号強度分布を、周波数−信号強度のグラフにそれぞれプロットしたものである。図6に示すように、パターンP12とP13との間の底面に欠陥DF2が形成されているためグラフG11とG12とでは分布状況が変化し、その差分グラフG(11−12)で強度分布の相違を確認することができる。以上のグラフ作成および差分演算は信号処理部70により実行される。欠陥判定部80は、このような信号強度分布の相違を検出してパターンP12に欠陥DF2が存在するものと判定する。
【0045】
このように、以上述べた少なくともひとつの実施形態の欠陥検査装置および欠陥検査方法によれば、高アスペクトな深溝形状のパターンの溝底,溝途中に存在する欠陥を検出することが可能になる。
【0046】
図12のフローチャートを参照しながら、本実施形態の欠陥検査方法の手順を説明する。前述した通り、本実施形態の欠陥検査方法の概略手順は図10のフローチャートに示した通りであり、ここでは、図10の手順のうちステップS30に関する、本実施形態に特有の具体的手順について説明する。
【0047】
すなわち、高コヒーレントなDUVレーザ光をウェーハWに照射し(ステップS36)、反射光の周波数を周波数分光光学系にて検出する(ステップS37)。得られた周波数をパターン間で比較し、差異があるかどうかを調べ、差異がある場合には欠陥が有るものと判定する(ステップS38)。
【0048】
以上述べた欠陥検査方法では、L/Sパターン中のどのパターンの間に欠陥があるかを判定することができるが、パターンの長手方向に沿った方向内のどの位置にパターンが存在するかを特定することまではできない。そこで、図7に示すように、ラインパターンを加工して短冊状に区切られたパターンとし、これに対して上述した欠陥検査を行うと、より詳細な欠陥検出が可能になる。
【0049】
図7の紙面上段に示す例では、パターンP1〜P4を含むL/Sの深溝パターンにおいてパターンP2とP3との間に欠陥DF3が存在することが上述した欠陥検査方法で判明したが、パターンの長手方向に沿った位置、すなわち、Y方向の位置までは特定できない。
【0050】
そこで、フォトレジストを用いたパターニングなどにより、図7の紙面下段に示すように、パターンP1〜P4を短冊状に区切られたパターンP21〜P24,P21〜P24,P21〜P24,P21〜P24に一旦加工し、これに対して上述した欠陥検査を行うと、欠陥DF3がパターンP32とP42の間に位置することが判明し、XY方向でのより正確な位置まで検出することが可能になる。
【0051】
(4)固有振動数の算出例
図8は、固有振動数の算出例の説明図である。図8(a)は、図7の加工後の短冊状パターンのうち、欠陥が無いパターンP41,P51について固有振動数を求めたものである。本例において、短冊状パターンの材質はSiO2であり、(式1)中の変数について
L=700nm、ヤング率E=8000[kgf/mm2]、密度ρ=2.65×10−6[kgf/mm3]、A=50nm×20nm、断面二次モーメント=2.1×10−20[mm4]である。
【0052】
図8(b)は、参考のため、欠陥が形成されたパターンについての固有振動数の求め方を示す。欠陥DF3がパターンP32,P42間に形成されているため、この場合は、パターンP32、欠陥DF3およびパターンP42の全部を構造力学上の片持ち梁とみなす必要がある。そのため、A=50nm×20nm+20nm×20nm+50nm×20nmとなり、断面二次モーメント=3.3×10−20[mm4]となる。
【0053】
なお、固有振動数には固有振動モードの問題があるが、本実施例では、振動子VBの加振可能な振動数から、3次モードまで考慮すれば足りると思われる。
【0054】
図8に示す例についての固有信号数の算出結果の一例を図9に示す。図9に示すように、固有振動数は、いずれのモードにおいても欠陥の有無に応じて異なる。
【0055】
以上述べた少なくとも一つの欠陥検査装置および欠陥検査方法によれば、アスペクト比の高い深溝形状のパターンについても、溝の底や溝途中に存在する欠陥を高い精度で検出することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1,2…欠陥検査装置、10,12…光源、20…鏡筒、22…対物レンズ、30…制御部、32…DUVレーザ光源、40…ステージ、50…ステージコントローラ、60,62…検出器、70…信号処理部、80…欠陥判定部、90…演算部、L1…パルス状の光、L2,L4…反射光、L3…DUVレーザ光、MR…メモリ、S…ステージ、VB…振動子、W…ウェーハ
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、欠陥検査装置および欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子デバイスの高集積化に伴い、パターンのアスペクト比が一層高くなっている。
【0003】
電子デバイスの一例として半導体メモリを取り挙げると、高集積化に伴ってその構造が三次元化し、製造プロセス中で高アスペクトの深溝形状のパターン(以下、単に「深溝パターン」という)が形成されている(図1参照)。
【0004】
深溝パターンの表面部から下、特に底部に欠陥が存在する場合、これを検出するために、ウェーハ表面から光を照射する方式の従来の検査手法を使用しただけでは、照射光が溝の底まで到達しないために欠陥からの反射光が十分得られない場合があり、検出することが困難になってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−268199号公報
【特許文献2】特開2003−083907号公報
【特許文献3】特開2003−098113号公報
【特許文献4】特開2003−271927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高アスペクトの深溝パターンに存在する欠陥を高い精度で検出できる欠陥検査装置および欠陥検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の欠陥検査装置は、照射手段と、加震手段と、検出手段と、判定手段とを持つ。前記照射手段は、複数のパターンが形成された基体に光を照射する。前記加振手段は、欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる。前記検出手段は、振動させられている前記基体から発生する光を検出する。前記判定手段は、前記検出手段からの信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で揺れ方の相違があるかどうかを検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】深溝パターンの一例を示す図。
【図2】固有振動数に関する説明図。
【図3】実施形態1による欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図。
【図4】散乱光の静止画像とパターン欠陥との関係を説明する図。
【図5】実施形態2による欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図。
【図6】周波数−信号強度の分布の相互比較により欠陥を検出する方法の一例を説明する図。
【図7】ラインパターンを加工して得られた、短冊状に区切られたパターンの一例を示す図。
【図8】固有振動数の算出例の説明図。
【図9】図8に示す例についての固有信号数の算出結果の一例を示す図。
【図10】実施形態1による欠陥検査方法の概略手順を示すフローチャート。
【図11】図10の手順のうち、深溝パターンの揺れ具合を検査するための具体的手順の一例を示すフローチャート。
【図12】図10の手順のうち、深溝パターンの揺れ具合を検査するための具体的手順の他の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)検査対象と実施形態の依拠する原理
実施形態を説明する前に、検査の対象となる深溝パターンと実施形態が依拠する固有振動数の相違について概説する。
【0010】
図1(a)は、高アスペクト深溝パターンの一例を示す分解斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。
図1に示す深溝パターンは幅20nm、高さ700nmのパターンが互いに20nmの間隔を有するように所定方向に繰り返し形成されたライン・アンド・スペース(以下、単に「L/S」という)のパターンである。そして、そのアスペクト比は700/20=35となっている。このような深溝パターンに従来の光学式検査装置を使用するだけでは、溝の底にまで届く光の量が少ないため、欠陥からの反射光強度が低く、充分な精度の欠陥検出が困難であった。なお、本願明細書において、高アスペクトとは、アスペクト比が20以上であることを意味する。
【0011】
図2は、以下の実施形態が依拠する原理を説明する図である。図2(a)は図1(b)中のパターンP3〜P5の部分拡大図である。これらのパターンを構造力学上の片持ち梁と見立てると、溝の底部に欠陥が存在する場合と存在しない場合とで片持ち梁の固有振動数が相違する。この点に着目すると、固有振動数の相違を利用した共振現象から深溝内に存在する欠陥を検出することができる。
【0012】
より具体的には、図2(a)の図を90°右回転させた図2(b)を用いて説明する。欠陥DF1を間に挟むパターンP3およびP4を一つの片持ち梁Aと見立て、周囲の溝内に欠陥が存在しないパターンP5をもう一つの片持ち梁Bと見立て、それぞれの固有振動数をFAおよびFBとすると、図2(c)に示すように、
固有振動数F=(1/(2π))(λ/L)(((EI)/(ρA))1/2) …(式1)
(E:ヤング率、I:断面二次モーメント、ρ:密度、A:断面積、λ:振動モード)
であるから、片持ち梁A,Bの固有振動数は互いに異なる、すなわち、
FA≠FB
であることは明らかである。
【0013】
そこで、例えば欠陥が存在しないパターンP5の固有振動数FBでL/Sパターンを振動させ、パターン表面の揺れ具合をモニタすれば、欠陥の検出が可能になる。
【0014】
以下、上述の原理を利用した実施形態のいくつかについて説明する。添付図面において同一の部分には同一の参照符号を付し、その重複説明は適宜省略する。
【0015】
(2)実施形態1
(A)欠陥検査装置
図3は、実施形態1による欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の欠陥検査装置1は、光源10、鏡筒20、制御部30、メモリMR、ステージ40、ステージコントローラ50、検出器60、信号処理部70、欠陥判定部80および演算部90を備える。
光源10は、本実施形態においてパルス状の光L1を照射する。鏡筒20は、ハーフミラーHMおよび対物レンズ22を含む光学系を含み、光L1をハーフミラーで反射してその光路をウェーハWに向け、対物レンズ22で焦点位置を制御してウェーハWに照射させる。
【0016】
対物レンズ22は、電気的に屈折率を変えるEO(Electric−Optical)素子で形成され、制御部30から与えられる制御信号に従って光L1のフォーカス位置を変更する。
【0017】
ウェーハW上には検査対象であるL/Sの深溝パターンが形成されている。ウェーハWは、本実施形態において例えば基体に対応する。
光L1はウェーハWで反射し、反射光L2が鏡筒20に入射する。鏡筒20は反射光L2に対しハーフミラーHMを透過させて検出器60に導く。これにより、検出器60の検出面でL/Sの溝パターンを含むウェーハWの表面の光学像が結像される。
【0018】
ステージ40は、ウェーハWを載置するとともに、ステージコントローラ50から与えられる制御信号に従い、ウェーハWをウェーハ面に水平な方向で移動させる。これにより、ウェーハWはウェーハ面に水平な方向で光L1により走査される。ステージ40はまた、水晶等で構成される高周波の振動子VBを含む。振動子VBは、所望の振動数でウェーハWを加振させて深溝パターンを共振させる。
【0019】
ステージコントローラ50は、制御部30からの指令信号に従い、ステージ40を駆動するための制御信号を生成するとともに、振動子VBを駆動するための制御信号をも生成する。振動子VB、ステージコントローラ50および制御部30は、本実施形態において、例えば加振手段に対応する。
【0020】
検出器60は、その検出面で結像した光L2を光電変換して検出信号を出力する。検出器60は、例えば赤外CCD(Charge Coupled Device)または光電子増倍管などにより構成される。ただし、これらに限定されるわけではなく、結像された像の光を光電変換できるものを適宜選択することができる。
信号処理部70は、検出器60から与えられる検出信号を処理して深溝パターンを含むウェーハWの表面の光学像を生成する。本実施形態では、光源10からパルス状の光が照射されるので、生成される光学像は散乱光の静止画像となる。
【0021】
欠陥判定部80は、信号処理部70から与えられる画像を相互に比較して散乱光に強度の相違があるかどうかを検出し、これにより、深溝パターンにおける欠陥の有無などを判定する。本実施の形態において、欠陥判定部80は例えば判定手段に対応する。
【0022】
メモリMRには、後述する欠陥検査方法を実行するための検査アルゴリズムが記述されたレシピファイルが格納され、また、三次元の位置情報を含む、検査対象である深溝パターンの設計データベースが格納される。
制御部30は、メモリMRからレシピファイルを読み込んで、ファイルに記述された検査アルゴリズムに従って上述した各種の制御信号を生成し、ステージコントローラ50、対物レンズ22、欠陥判定部80および演算部90へ与える。
【0023】
演算部90は、制御部30がメモリMRから読み出した深溝パターンの設計データから各パターンの固有振動数を検査に先立って算出する。
【0024】
(B)欠陥検査方法
次に、図3に示すパターン検査装置1を用いて欠陥検査を行う方法について説明する。
まず、検査に先立って、演算部90により、深溝パターンを構造力学上の片持ち梁と見立ててその固有振動数を求める。このときの固有振動数は、欠陥が無いものと仮定した場合の固有振動数である。
【0025】
次に、制御部30は、演算部90により算出された固有振動数で振動子VBが振動するように制御信号を生成し、ステージコントローラ50を介して振動子VBに供給する。これにより、算出された固有振動数でステージ40が加振され、深溝パターンが共振する。この共振により、欠陥の無いパターンは欠陥のあるパターンと比べて大きく振動することになる。このことから、深溝パターンの頂面およびその近傍(以下、深溝パターンの「頂面部」という)の揺れ具合をモニタすることにより、欠陥の有無、およびその位置を検出することが可能になる。
【0026】
本実施形態では、光源10からパルス状の光をウェーハWに照射し、各パターンからの散乱光を検出器60により検出し、得られた静止画像中の反射強度の相違から欠陥の有無および位置を検出する。
【0027】
より具体的には、振動子VBによる深溝パターンへの加振に同期させて制御部30が光源10からパルス状の光L1を照射させる。このときのパルス周期としては、演算部90により予め算出された固有振動数を用いる。光L1は、ハーフラーHMで反射して対物レンズ22でその焦点位置が調整され、深溝パターンへ照射する。深溝パターンの頂面部から発生する光L2は散乱光となって鏡筒20、ハーフミラーHMを通過して検出器60で検出される。検出器60により検出された信号は信号処理部70へ供給され、信号処理部70により、深溝パターンを構成するパターンのそれぞれについて散乱光の静止画像が生成される。
【0028】
図4は、散乱光の静止画像とパターン欠陥との関係を説明する図である。図4に示す例では、ウェーハW上の深溝パターンのうち、パターンP1〜P6が示され、それぞれのこれらの頂面部からの散乱光静止画像Img1〜Img6が各パターンに対応付けて示されている。図4中、下向きの直線矢印は、予め算出された固有振動数と同じ周期でパルス状に照射される入射光L1を表し、上向きの破線矢印は、ウェーハWの表面からの散乱光L2を表す。また、符号FLは共振による「梁たわみ」を表し、各パターンを表す実線の近傍に描かれる破線は共振によりパターンがたわむ様子を表す。
【0029】
図4中のパターンP1,P2およびパターンP5,P6には欠陥が無く、これらの静止画像Img1,Img2,Img5およびImg6には低輝度の楕円パターンが描かれている。この一方、パターンP3およびP4は、その間の底面に欠陥DF1が形成されており、このため、パターンP1,P2,P5,P6ほどには振動しない。その結果、これらのパターンの頂面部からの散乱光の静止画像Img3,Img4には、Img1,Img2,Img5およびImg6と著しく輝度が異なる楕円パターン、本例では高輝度の楕円パターンが描かれている。なお、図4の例では、静止画像Img1,Img2,Img5およびImg6中の楕円パターンが低輝度で、静止画像Img3,Img4中の楕円パターンが高輝度である場合を示したが、パルス光と振動子VBとの同期の取り方に依存して、これとは逆に静止画像Img1,Img2,Img5およびImg6中の楕円パターンが高輝度で、静止画像Img3,Img4中の楕円パターンが低輝度である場合も勿論ある。
【0030】
そして、欠陥判定部80は、このような散乱光の静止画像Img1〜Img6における反射強度の相違を検出し、パターンP3,P4の間に欠陥DF1が存在するものと判定する。
【0031】
図10および図11のフローチャートを参照しながら、本実施形態の欠陥検査方法の手順を説明する。図10は本実施形態の欠陥検査方法の概略手順を示すフローチャートであり、図11は、図10の手順のうち、ステップS30の具体的手順を示すフローチャートである。
【0032】
まず、検査に先立って、検査対象である深溝パターンの固有振動数を予め算出しておく(ステップS10)。
【0033】
次に、算出された固有振動数で、深溝パターンが形成されたウェーハを加振する(ステップS20)。
【0034】
次いで、深溝パターンの頂面部の揺れ具合を検査する(ステップS30)。
【0035】
最後に、深溝パターンの頂面部の揺れ具合を検査した結果から欠陥の有無を判定し(ステップS40)、概略位置を特定する。
【0036】
深溝パターンの頂面部の揺れ具合の検査方法の具体的手順について図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0037】
本実施形態では、予め算出した固有振動数のパルス周期の光をウェーハWに照射し、散乱光イメージをパターン毎に取得する(ステップS31)。そして、各パターンについて得られた散乱光イメージの間で反射強度に相違があるかどうかを調べ、相違がある場合には欠陥があるものと判定し(ステップS32)、概略位置を特定する。
【0038】
(3)実施形態2
(A)欠陥検査装置
図5は、実施形態2による欠陥検査装置の概略構成を示すブロック図である。図3との対比により明らかなように、本実施形態の欠陥検査装置2は、図3の欠陥検査装置1の光源10および検出部60に換えて、光源12および検出部62を備える。欠陥検査装置2のその他の構成は、図3の欠陥検査装置1と実質的に同一である。
【0039】
光源12は、高コヒーレンスのDUVレーザ光を発光する。また、検出部62は、深溝パターンからの反射光の周波数を高い分解能で検出できる周波数分解光学系を含む。
【0040】
(欠陥検査方法)
次に、図5に示すパターン検査装置2を用いて欠陥検査を行う方法について説明する。
演算部90により深溝パターンの固有振動数を予め算出する点、算出された固有振動数で振動子VBによりステージ40を加振して深溝パターンを共振させる点は、前述した実施形態1と同様である。本実施形態の特徴は、深溝パターンの頂面部の揺れ具合をモニタする方法にあり、パターン頂面部からの反射光の振動数の相違から欠陥の有無および位置を検出する点にある。
【0041】
本実施形態では、光源12から高コヒーレンス、例えば、コヒーレンス長:833[m]以下のDUVレーザ光L1を照射する。これは、高速をc、共振振動数をfとした場合、L=c/fで定義されるコヒーレンス長は共振周波数(f:360[kHz])より短ければいいので、L=3.0×108[m/s]/360[kHz]=833[m])がコヒーレンス長の上限となる。パターン頂面部からの反射光を検出部62により検出し、その検出信号から、所定の周波数帯域に亘る信号強度の分布を、各パターンに対応付けて求める。欠陥が無いパターンは、予め算出された固有振動数で共振するので、これらのパターン同士で信号強度の分布に相違は無い。この一方、欠陥があるパターンは、予め算出された固有振動数では共振しないため、欠陥が無いパターンよりも頂面部の揺れが少ない。
【0042】
従って、周波数−信号強度の分布を、例えば隣り合うパターン同士で比較すれば、強度分布が大きく変化した場合にパターンの欠陥があると判断することができる。周波数−信号強度の分布の比較は、例えば隣り合うパターンで差分を取ることにより容易に実行することができる。
【0043】
図6は、周波数−信号強度の分布の比較による欠陥検出方法の一例を説明する図である。
【0044】
信号強度のグラフGL1はDUVレーザ光L1の信号強度分布を、信号強度のグラフG11,G12は、ウェーハW上の深溝パターンのうちのパターンP11,P12からの反射光の信号強度分布を、周波数−信号強度のグラフにそれぞれプロットしたものである。図6に示すように、パターンP12とP13との間の底面に欠陥DF2が形成されているためグラフG11とG12とでは分布状況が変化し、その差分グラフG(11−12)で強度分布の相違を確認することができる。以上のグラフ作成および差分演算は信号処理部70により実行される。欠陥判定部80は、このような信号強度分布の相違を検出してパターンP12に欠陥DF2が存在するものと判定する。
【0045】
このように、以上述べた少なくともひとつの実施形態の欠陥検査装置および欠陥検査方法によれば、高アスペクトな深溝形状のパターンの溝底,溝途中に存在する欠陥を検出することが可能になる。
【0046】
図12のフローチャートを参照しながら、本実施形態の欠陥検査方法の手順を説明する。前述した通り、本実施形態の欠陥検査方法の概略手順は図10のフローチャートに示した通りであり、ここでは、図10の手順のうちステップS30に関する、本実施形態に特有の具体的手順について説明する。
【0047】
すなわち、高コヒーレントなDUVレーザ光をウェーハWに照射し(ステップS36)、反射光の周波数を周波数分光光学系にて検出する(ステップS37)。得られた周波数をパターン間で比較し、差異があるかどうかを調べ、差異がある場合には欠陥が有るものと判定する(ステップS38)。
【0048】
以上述べた欠陥検査方法では、L/Sパターン中のどのパターンの間に欠陥があるかを判定することができるが、パターンの長手方向に沿った方向内のどの位置にパターンが存在するかを特定することまではできない。そこで、図7に示すように、ラインパターンを加工して短冊状に区切られたパターンとし、これに対して上述した欠陥検査を行うと、より詳細な欠陥検出が可能になる。
【0049】
図7の紙面上段に示す例では、パターンP1〜P4を含むL/Sの深溝パターンにおいてパターンP2とP3との間に欠陥DF3が存在することが上述した欠陥検査方法で判明したが、パターンの長手方向に沿った位置、すなわち、Y方向の位置までは特定できない。
【0050】
そこで、フォトレジストを用いたパターニングなどにより、図7の紙面下段に示すように、パターンP1〜P4を短冊状に区切られたパターンP21〜P24,P21〜P24,P21〜P24,P21〜P24に一旦加工し、これに対して上述した欠陥検査を行うと、欠陥DF3がパターンP32とP42の間に位置することが判明し、XY方向でのより正確な位置まで検出することが可能になる。
【0051】
(4)固有振動数の算出例
図8は、固有振動数の算出例の説明図である。図8(a)は、図7の加工後の短冊状パターンのうち、欠陥が無いパターンP41,P51について固有振動数を求めたものである。本例において、短冊状パターンの材質はSiO2であり、(式1)中の変数について
L=700nm、ヤング率E=8000[kgf/mm2]、密度ρ=2.65×10−6[kgf/mm3]、A=50nm×20nm、断面二次モーメント=2.1×10−20[mm4]である。
【0052】
図8(b)は、参考のため、欠陥が形成されたパターンについての固有振動数の求め方を示す。欠陥DF3がパターンP32,P42間に形成されているため、この場合は、パターンP32、欠陥DF3およびパターンP42の全部を構造力学上の片持ち梁とみなす必要がある。そのため、A=50nm×20nm+20nm×20nm+50nm×20nmとなり、断面二次モーメント=3.3×10−20[mm4]となる。
【0053】
なお、固有振動数には固有振動モードの問題があるが、本実施例では、振動子VBの加振可能な振動数から、3次モードまで考慮すれば足りると思われる。
【0054】
図8に示す例についての固有信号数の算出結果の一例を図9に示す。図9に示すように、固有振動数は、いずれのモードにおいても欠陥の有無に応じて異なる。
【0055】
以上述べた少なくとも一つの欠陥検査装置および欠陥検査方法によれば、アスペクト比の高い深溝形状のパターンについても、溝の底や溝途中に存在する欠陥を高い精度で検出することができる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1,2…欠陥検査装置、10,12…光源、20…鏡筒、22…対物レンズ、30…制御部、32…DUVレーザ光源、40…ステージ、50…ステージコントローラ、60,62…検出器、70…信号処理部、80…欠陥判定部、90…演算部、L1…パルス状の光、L2,L4…反射光、L3…DUVレーザ光、MR…メモリ、S…ステージ、VB…振動子、W…ウェーハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパターンが形成された基体にDUVレーザ光を照射する照射手段と、
欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる加震手段と、
振動させられている前記基体から発生する前記DUVレーザ光の散乱光を検出する検出手段と、
前記検出手段からの信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で散乱光の強度の相違があるかどうかを前記基体からの反射光の周波数から検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する判定手段と、
を備える欠陥検査装置。
【請求項2】
複数のパターンが形成された基体に光を照射する照射手段と、
欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる加震手段と、
振動させられている前記基体から発生する光を検出する検出手段と、
前記検出手段からの信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で揺れ方の相違があるかどうかを検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する判定手段と、
を備える欠陥検査装置。
【請求項3】
前記照射手段は、DUVレーザ光を照射し、
前記判定手段は、前記基体からの反射光の周波数を検査することにより前記欠陥の有無を判定することを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
複数のパターンが形成された基体に光を照射する工程と、
欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる工程と、
振動させられている前記基体から発生する光を検出する工程と、
検出により得られた信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で揺れ方の相違があるかどうかを検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する工程と、
を備える欠陥検査方法。
【請求項5】
前記基体に照射される光は、前記固有振動数に同期する周期でパルス状に発生する光であり、
前記欠陥の有無は、前記基体から発生する散乱光の強度をパターン毎に検査することにより検出される、
ことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記基体に照射される光は、DUVレーザ光であり、
前記欠陥の有無は、前記基体からの反射光の周波数を検査することにより判定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査方法。
【請求項1】
複数のパターンが形成された基体にDUVレーザ光を照射する照射手段と、
欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる加震手段と、
振動させられている前記基体から発生する前記DUVレーザ光の散乱光を検出する検出手段と、
前記検出手段からの信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で散乱光の強度の相違があるかどうかを前記基体からの反射光の周波数から検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する判定手段と、
を備える欠陥検査装置。
【請求項2】
複数のパターンが形成された基体に光を照射する照射手段と、
欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる加震手段と、
振動させられている前記基体から発生する光を検出する検出手段と、
前記検出手段からの信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で揺れ方の相違があるかどうかを検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する判定手段と、
を備える欠陥検査装置。
【請求項3】
前記照射手段は、DUVレーザ光を照射し、
前記判定手段は、前記基体からの反射光の周波数を検査することにより前記欠陥の有無を判定することを特徴とする請求項2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
複数のパターンが形成された基体に光を照射する工程と、
欠陥が存在しない場合の前記パターンの固有振動数で前記基体を振動させる工程と、
振動させられている前記基体から発生する光を検出する工程と、
検出により得られた信号を処理して前記散乱光による前記基体の画像を生成し、前記複数のパターンのそれぞれの間で揺れ方の相違があるかどうかを検査し、検査結果から欠陥の有無を判定する工程と、
を備える欠陥検査方法。
【請求項5】
前記基体に照射される光は、前記固有振動数に同期する周期でパルス状に発生する光であり、
前記欠陥の有無は、前記基体から発生する散乱光の強度をパターン毎に検査することにより検出される、
ことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査方法。
【請求項6】
前記基体に照射される光は、DUVレーザ光であり、
前記欠陥の有無は、前記基体からの反射光の周波数を検査することにより判定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の欠陥検査方法。
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−68509(P2013−68509A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207146(P2011−207146)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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