説明

欠陥検査装置及び方法

【課題】積層フィルムの擬似欠陥の有無の判定を簡単に行う。
【解決手段】偏光板13とセパレータ15を有する積層フィルム9上に、偏光フィルタ19を配置する。偏光フィルタ19の偏光軸を、偏光板13の偏光軸と略直交させる。積層フィルム9の直下にライン光源17を配置し、偏光フィルタ19の直上にラインセンサカメラ20を配置する。ライン光源17から積層フィルム9に向けて検査光24を照射する。積層フィルム9及び偏光フィルタ19を透過した検査光24をラインセンサカメラ20で撮像する。撮像により得られた画像データ41から、輝度が高くなる高輝度領域40を欠陥画像データとして抽出する。欠陥画像データが2つの高輝度領域40が並ぶ特定欠陥画像データである場合に、この欠陥画像データに対応するフィルム欠陥部分を、擬似欠陥であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板とフィルムとを積層してなる積層フィルムの欠陥を検査する欠陥検査装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイには、各種の光学機能性フィルムが用いられている。この光学機能フィルムとしてフィルム状の偏光板が知られている。この偏光板の一面には、偏光板を液晶ディスプレイのガラス基板等に貼り付けるための粘着層が形成されている。この粘着層は、ガラス基板等に貼り付けられるまでの間はセパレータで覆われている。このため、液晶ディスプレイの製造工程には、偏光板とセパレータとを積層してなる積層フィルムの製造工程が含まれる(特許文献1参照)。
【0003】
このような積層フィルムには、その製造工程においてフィルム表面またはフィルム内部に異物が付着したり、汚れや傷が付いたりする等の各欠陥が発生する場合がある。このため、積層フィルムの製造工程では、光源から積層フィルムに対して光を照射して、積層フィルムの透過光または反射光をカメラで撮影し、この撮影により得られた画像に基づいて欠陥検査を行う。
【0004】
特許文献2には、積層フィルムとカメラとの間に偏光フィルタを介在させた状態で、積層フィルムの透過光を撮影する欠陥検査装置が開示されている。偏光フィルタは、その偏光軸が偏光板の偏光軸と直交する、いわゆるクロスニコルとなるように配置されている。これにより、積層フィルムに欠陥が存在しなければ、積層フィルムの透過光の振動方向は偏光フィルタの偏光軸と直交するので、この透過光は偏光フィルタにより遮断される。このため、透過光像は全面黒画像となる。逆に、積層フィルムに欠陥が存在する場合は、その欠陥部分を透過した透過光の偏光状態が変わることにより、この欠陥部分の透過光は偏光フィルムを透過する。このため、透過光像の欠陥部分に対応する部分の輝度が高くなる。これにより、積層フィルムの欠陥の有無を検査することができる。
【0005】
特許文献3には、細長く延びた欠陥部の画像を解析して、この欠陥部の種類を判定する傷検査方法が開示されている。この特許文献3の傷検査方法では、欠陥部の画像の2次モーメントから欠陥部の形状と方向性を求めることにより、欠陥部が傷であるか汚れであるかを判定する。
【0006】
特許文献4には、積層フィルム等の被検査体の反射光を撮影して得られた画像から各種の特徴量を抽出し、この特徴量を基づき欠陥検査を行う欠陥検査装置が開示されている。この欠陥検査装置では、各特徴量をもとに重回帰式を計算して予測特性値を得るとともに、判別関数から判別スコアを計算して、これらの結果に基づいて欠陥の有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−069142号公報
【特許文献2】特開2007−213016号公報
【特許文献3】特開平6−160295号公報
【特許文献4】特開平7−318508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
積層フィルムのセパレータは、液晶ディスプレイの製造工程において最終的に偏光板から剥離されてしまう。このため、セパレータ自体に欠陥が存在していても粘着層の保護機能が損なわれていなければ、このセパレータの欠陥を本来は欠陥として扱う必要はない。しかしながら、特許文献2及び3の検査方法では、偏光板の欠陥とセパレータの欠陥を区別することができないので、検査員等が欠陥の発生箇所を確認して、偏光板の欠陥である実害欠陥であるか、あるいはセパレータの欠陥である擬似欠陥であるかを判定する必要がある。
【0009】
特許文献4の欠陥検査装置では、撮影画像から抽出する特徴量の種類を適宜設定することで、実害欠陥と擬似欠陥を判別することは不可能ではないが、撮影画像の全てに対して特徴量の抽出処理、重回帰式及び判別関数による複雑な演算処理を行う必要がある。このため、演算量が膨大になり処理に時間が掛かるという問題が生じる。その結果、特許文献4の欠陥検査装置を、搬送ラインを走行中の積層フィルムの欠陥検査に用いることは極めて困難である。
【0010】
本発明の目的は、積層フィルムの擬似欠陥の判定を簡単に実行することができる欠陥検査装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の欠陥検査装置は、偏光板とフィルムとを積層してなる多層の積層フィルムの表裏面の一方側に配置され、前記積層フィルムに対して光を照射する光源と、前記表裏面の他方側に配置され、前記表裏面に平行でかつ前記偏光板の第1偏光軸に略直交する第2偏光軸を有し、前記積層フィルムの正常部分を透過した前記光を遮断する偏光フィルタと、前記偏光フィルタの前記積層フィルムに対向する面側とは反対面側に配置され、前記偏光フィルタを透過した光を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により取得された前記偏光フィルタの透過光像から、前記積層フィルムの欠陥部分及び前記偏光フィルタを透過した前記光によって輝度が高くなる高輝度領域を欠陥画像として抽出する欠陥画像抽出手段と、前記欠陥画像抽出手段が抽出した前記欠陥画像が、2つの高輝度領域が並んでいる特定欠陥画像である場合に、当該欠陥画像に対応する前記欠陥部分を前記偏光板の欠陥ではない擬似欠陥であると判定する擬似欠陥判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
前記欠陥画像抽出手段が抽出した前記欠陥画像から、前記欠陥画像の輝度の平均値である平均輝度と、前記欠陥画像の中心位置における輝度である中心輝度とを少なくとも含む複数種類の特徴量を抽出する特徴量抽出手段を備え、前記擬似欠陥判定手段は、前記特徴量抽出手段の抽出結果を、前記特定欠陥画像の特徴に応じて予め定められた各前記特徴量のしきい値と比較することで、前記欠陥画像が前記特定欠陥画像であるか否かを判定することが好ましい。
【0013】
前記特徴量には、前記平均輝度と前記中心輝度との差が含まれることが好ましい。
【0014】
前記特定欠陥画像は、N(Nは2以上の自然数)種類の第1〜第N擬似欠陥にそれぞれ対応した第1〜第N特定欠陥画像からなり、前記しきい値は、前記第1〜第N特定欠陥画像の特徴に応じてそれぞれ個別に定められた第1〜第Nしきい値からなるものであり、前記擬似欠陥判定手段に設けられ、前記特徴量抽出手段の抽出結果を、第1〜第Nしきい値とそれぞれ個別に比較することで、前記欠陥画像が前記第1〜第N特定欠陥画像であるか否かを個別に判定する第1〜第N判定手段と、前記第1〜第N判定手段による判定処理を所定の順番で実行させるとともに、第M[Mは(N−1)以下の自然数]番目の判定処理で前記欠陥部分が前記擬似欠陥であると判定された場合には、第(M+1)番目以降の判定処理を中止させる判定制御手段と、を備えることが好ましい。
【0015】
前記特定欠陥画像には、略十字形状の前記高輝度領域を有するものが含まれることが好ましい。
【0016】
前記フィルムは、前記偏光板の表面上に形成された粘着層上に剥離自在に貼り付けられたセパレータであることが好ましい。
【0017】
前記擬似欠陥判定手段が前記特定欠陥画像であると判定しなかった前記欠陥画像に対応をする前記欠陥部分を、前記偏光板の欠陥である実害欠陥と判定する実害欠陥判定手段を備えることが好ましい。
【0018】
前記積層フィルムの前記実害欠陥と判定された部分に、前記実害欠陥を示すマーキングを行うマーキング手段を備えることが好ましい。
【0019】
また、本発明の欠陥検査方法は、偏光板とフィルムとを積層してなる多層の積層フィルムの表裏面の一方側に配置された光源から、前記積層フィルムに対して光を照射する照射ステップと、前記表裏面の他方側に配置され、前記表裏面に平行でかつ前記偏光板の第1偏光軸に略直交する第2偏光軸を有する偏光フィルタにより、前記積層フィルムの正常部分を透過した前記光を遮断する遮断ステップと、前記偏光フィルタの前記積層フィルムに対向する面側とは反対面側に配置された撮影手段により、前記偏光フィルタを透過した光を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップで取得された偏光フィルタの透過光像から、前記積層フィルムの欠陥部分及び前記偏光フィルタを透過した前記光によって輝度が高くなる高輝度領域を欠陥画像として抽出する欠陥画像抽出ステップと、前記欠陥画像抽出ステップで抽出した前記欠陥画像が、2つの高輝度領域が並んでいる特定欠陥画像である場合に、当該欠陥画像に対応する前記欠陥部分を前記偏光板の欠陥ではない擬似欠陥であると判定する擬似欠陥判定ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の欠陥検査装置及び方法は、偏光フィルタの透過光像からその高輝度領域を欠陥画像として抽出し、この欠陥画像の中で2つの高輝度領域が並んでいる特定欠陥画像に対応する積層フィルムの欠陥部分を、偏光板の欠陥ではない擬似欠陥であると判定することにより、重回帰式及び判別関数などを用いた複雑な演算処理を行うことなく擬似欠陥の判定を簡単に実行することができる。これにより、検査処理に掛かる時間を短縮することができるので、走行中の積層フィルムの欠陥検査が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】欠陥検査装置の概略図である。
【図2】欠陥検査装置の斜視図である。
【図3】積層フィルムの断面図である。
【図4】セパレータ内の異物に起因する積層フィルムの擬似欠陥を説明するための説明図である。
【図5】擬似欠陥が偏光板の性能に影響を及ぼさないことを説明するための説明図である。
【図6】欠陥検査装置の電気的構成を示したブロック図である。
【図7】セパレータ内の異物により、偏光板中の各分子の配向方向に乱れが生じることを説明するための説明図である。
【図8】2つの高輝度領域が並んでいる画像データの説明図である。
【図9】擬似欠陥である「2点並び(1)」を説明するための説明図である。
【図10】擬似欠陥である「2点並び(2)」を説明するための説明図である。
【図11】「2点並び(2)」の他の例を説明するための説明図である。
【図12】第1抽出パターンによる欠陥画像データの抽出処理を説明するための説明図である。
【図13】第2抽出パターンによる欠陥画像データの抽出処理を説明するための説明図である。
【図14】欠陥画像抽出基準データ、擬似欠陥分類用特徴量データ、及び欠陥位置情報データを説明するための説明図である。
【図15】欠陥検査装置による検査処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】実害欠陥の種類を判定するための実害欠陥分類用特徴量データの説明図である。
【図17】図7とは異なる偏光板中の各分子の配向方向の乱れを説明するための説明図である。
【図18】十字形状の高輝度領域が含まれる画像データの説明図である。
【図19】2点並び擬似欠陥と十字擬似欠陥の種類を判定可能な他実施形態の欠陥検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図20】セパレータと偏光板との間に挟まれている異物に起因する積層フィルムの擬似欠陥を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1及び図2に示すように、長尺の積層フィルム9を製造する積層フィルム製造ライン10には、欠陥検査装置11が配置されている。欠陥検査装置11は、図中Y方向に走行する積層フィルム9の欠陥を検査する。図3に示すように、検査対象となる積層フィルム9は、フィルム状の偏光板13と、この偏光板13の一面に形成された粘着層14上に積層されたセパレータ(フィルム)15とを備える積層構造を有している。
【0023】
偏光板13は、例えばポリビニルアルコール(PVA)などのポリマー中に各種有機物を混合してなるフィルムを所定方向に延伸することで生成される。これにより、偏光板13の中の各分子M(図7参照)が延伸方向に沿って配向する。その結果、偏光板13は、各分子Mの配向方向に平行な方向に振動する偏光を透過させる。ここで、偏光板13の偏光軸D1(図2参照)は図中Y方向に平行であるものとする。偏光板13は、その一面に形成された粘着層14を介して液晶ディスプレイのガラス基板(図示せず)等に貼り付けられる。
【0024】
セパレータ15は、粘着層14上に剥離可能に積層されており、偏光板13がガラス基板等に貼り付けられるまでの間は粘着層14を保護する。このセパレータ15は、偏光板13をガラス基板等に貼り付ける際など、最終的には粘着層14上から剥離される。
【0025】
図1及び図2に戻って、欠陥検査装置11は、積層フィルム9の搬送ラインの途中に配置されている。この欠陥検査装置11は、ライン光源17と、偏光フィルタ19と、ラインセンサカメラ(以下、単にカメラという、撮影手段)20と、マーキング装置21と、欠陥検査装置本体(以下、単に装置本体という)22とで構成されている。
【0026】
ライン光源17及び偏光フィルタ19は、それぞれ積層フィルム9の幅方向(以下、単にフィルム幅方向という、図中X方向)に積層フィルム9の幅よりも長く延びた形状を有している。
【0027】
ライン光源17は、積層フィルム9の表裏面の一面側(図中下面側)に配置されている。ライン光源17は、フィルム幅方向に平行なライン状の検査光24を積層フィルム9に向けて照射する。なお、ライン光源17としては、ハロゲンランプ、LED等を用いることができる。
【0028】
偏光フィルタ19は、積層フィルム9の表裏面の他面側(図中上面側)、より具体的には積層フィルム9とカメラ20との間に配置されている。偏光フィルタ19は、積層フィルム9の表裏面に平行で、かつ偏光軸D1に対して略直交する偏光軸D2を有している。なお、ここでいう「略直交」には、完全に直交している場合とほぼ直交している場合(偏光軸D1と偏光軸D2とのなす角度が90°に近い値となる場合)の両方が含まれる。これにより、偏光フィルタ19と偏光板13とは、いわゆるクロスニコルの関係になる。
【0029】
偏光フィルタ19は、積層フィルム9を透過して入射した検査光24のうち、偏光軸D2に垂直な方向に振動する偏光成分の光を遮断し、偏光軸D2に平行な方向に振動する偏光成分の光はそのまま透過させる。これにより、偏光フィルタ19を透過した検査光24は、偏光軸D2に平行な方向に振動する偏光となる。
【0030】
カメラ20は、偏光フィルタ19の積層フィルム9に対向する面側とは反対面側で、かつ積層フィルム9の幅方向中心の直上位置に配置されている。カメラ20は、フィルム幅方向に1列に配列された複数の画素からなるライン状の撮像領域を有している。この撮像領域は、フィルム幅方向に積層フィルム9の幅よりも長く延びている。
【0031】
カメラ20は、積層フィルム9及び偏光フィルタ19を透過した検査光24を撮像して、1ライン分の画像信号を装置本体22へ出力する。このカメラ20は、積層フィルム9が1ライン分ずつ搬送されるごとに撮像と画像信号の出力とを連続して実行する。これにより、積層フィルム9の全領域を透過した検査光24の撮像信号が得られる。
【0032】
マーキング装置21は、積層フィルム9の搬送路上で、かつライン光源17やカメラ20などよりも積層フィルム9の搬送方向下流側に配置されている。マーキング装置21は、装置本体22の制御の下、積層フィルム9で特定の欠陥が発生した場合に、その位置を示すマーキングを積層フィルム9に行う。
【0033】
装置本体22は、カメラ20から入力された画像信号に基づき、積層フィルム9に欠陥が発生している否かの欠陥検査を行う。また、装置本体22は、積層フィルム9に欠陥が発生している場合に、この欠陥がセパレータ15で発生した擬似欠陥であるか、あるいは偏光板13で発生した実害欠陥であるかを判定する。
【0034】
ここで擬似欠陥とは、例えば、図4に示すようにセパレータ15の内部に存在する異物26に起因する欠陥である。この場合には、異物26によって偏光板13の表面に凹み13aが形成されるものの、図5に示すように、偏光板13からセパレータ15を剥離した場合には偏光板13に異物26は残らない。また、偏光板13の復元力により凹み13aも消えてしまうので、偏光板13の性能にも影響を及ぼさない。このため、擬似欠陥は、セパレータ15による粘着層14や偏光板13の保護という機能が損なわれていなければ、本来は欠陥として扱う必要がないものである。
【0035】
実害欠陥は、例えば、偏光板13に異物が付着あるいは埋め込まれるなどの外観欠陥であり、セパレータ15を剥離した場合でも偏光板13に残る欠陥である。この実害欠陥は、偏光板13の性能に影響を及ぼすものであるので、欠陥として扱う必要がある。
【0036】
図6に示すように、装置本体22のCPU28は、操作部29からの制御信号に基づき、メモリ30から読み出した各種プログラムやデータを逐次実行することで、装置本体22の各部を統括的に制御する。メモリ30のRAM領域は、CPU28が処理を実行するためのワークメモリや、各種データの一時保管先として機能する。また、メモリ30のROM領域には、制御用の各種プログラムやデータが格納されている。
【0037】
CPU28には、バスBuを介して、操作部29、メモリ30、入力I/F31、画像処理回路32、欠陥画像抽出回路33、特徴量抽出回路34、擬似欠陥判定回路35、実害欠陥判定回路36、欠陥位置検出回路37、マーキング制御回路38などが接続されている。操作部29は、欠陥検査の開始/停止操作などに用いられる。
【0038】
入力I/F31は、カメラ20と接続している。入力I/F31は、カメラ20から逐次入力される1ライン分の画像信号を、画像処理回路32へ逐次出力する。
【0039】
画像処理回路32は、入力I/F31から入力される1ライン分の画像信号を蓄積し、例えば所定ライン数分の画像信号が蓄積される度に、これら画像信号に基づき2次元の画像データを生成する。これにより、積層フィルム9をY方向に複数の区間に分けたときの、各区間をそれぞれ透過した検査光24を撮影した画像データが生成される。画像処理回路32は、画像データをメモリ30に逐次格納する。
【0040】
画像データは、積層フィルム9の正常部分に対応する領域が黒画像となる。これは、積層フィルム9の正常部分を透過した検査光24の振動方向が偏光軸D2と直交するため、この検査光24が偏光フィルタ19で遮断されるからである。
【0041】
逆に画像データは、積層フィルム9の欠陥部分(以下、フィルム欠陥部分という)に対応する領域の輝度が高くなる。これは、検査光24がフィルム欠陥部分を透過する際に偏光状態が変わることで、偏光軸D2と垂直な方向に振動する直線偏光ではなくなり、検査光24が偏光フィルタ19を透過するためである。
【0042】
この際に、偏光フィルタ19を透過する検査光24の量(以下、透過検査光量という)は、フィルム欠陥部分を透過した検査光24の偏光状態によって変わる。例えば、検査光24に偏光軸D2に平行な方向に振動する偏光成分が多い場合には透過検査光量が増加し、逆に少ない場合には透過検査光量は減少する。なお、フィルム欠陥部分を透過した検査光24の偏光状態は、偏光板13中の分子Mの配向方向によって変わる。
【0043】
例えば、図4に示した異物26による擬似欠陥が発生した場合には、この異物26からの押圧を受けて偏光板13中の分子M(図7参照)の配向方向に乱れが生じる。具体的に異物26からの押圧により、各分子Mは異物26の中心に向けて引っ張られる。図7に示すように、異物26の中心付近に位置する分子Maは、異物26により偏光板13の厚み方向に押圧されるだけなので、分子Maの配向方向は偏光軸D1にほぼ平行な方向のまま変わらない。
【0044】
また、分子Maの周辺に位置する分子Mbの中で、異物26の中心に向けて偏光軸D1に平行な方向に引っ張られるものは、そのまま平行移動するだけで配向方向は変わらない。一方、分子Mbの中で、異物26の中心に向けて斜め方向に引っ張られるものは、配向方向が異物26の中心に向けて斜めに傾く。
【0045】
このような分子Mの配向方向に乱れが生じている箇所を透過した検査光24は、偏光軸D2と垂直な方向に振動する直線偏光ではなくなるので、偏光フィルタ19を透過する。その結果、この検査光24を撮像すると、図8に示すように、黒画像(図中のドットで表示)の中に輝度が高い2つの高輝度領域40(図中の白抜き部分で表示)が並んでいる画像データ(透過光像)41が取得される。以下、2つの高輝度領域40が並んで観察される擬似欠陥を「2点並び擬似欠陥」という。
【0046】
2点並び擬似欠陥には、両高輝度領域40の輝度、画素数、及び間隔等が異なるN(Nは2以上の自然数)種類があり、各々の2点並び擬似欠陥を「2点並び(1)」、「2点並び(2)」・・・「2点並び(N)」という。例えば、図9に示すように「2点並び(1)」は、両高輝度領域40が完全に分離している。
【0047】
図10に示すように「2点並び(2)」は、目視では2つの高輝度領域40が分離しているように見えても実際には両者が繋がっている。また、2点並び(2)には、図11に示すように、両高輝度領域40の面積及び輝度が大きくなり、目視でも2つの高輝度領域40が繋がっていることが確認可能なものも含まれる。
【0048】
一方、実害欠陥には、偏光板13に球形あるいは多角形状の異物が付着する「異物」と、「異物」よりも細長形状の異物が偏光板13に付着する「細長異物」と、偏光板13に繊維状異物が埋め込まれている「ケバ」との少なくとも3種類がある。なお、異物の大きさが所定の下限規格値を下回る「異物(小)」は、偏光板13の性能に影響を及ぼすものではないので、実害欠陥とは判定しない。
【0049】
図6に戻って、欠陥画像抽出回路33は、メモリ30に格納された画像データ41から、予め定められた条件に従って、フィルム欠陥部分に起因する高輝度領域40を欠陥画像データとして抽出する。この条件とは、例えば、高輝度領域40を構成する各画素の輝度値の下限値や、画素数の下限値である。これにより、輝度値が所定値以上の画素が所定個数以上連結されてなる高輝度領域40が欠陥画像データとして抽出される。また、欠陥画像抽出回路33は、第1抽出パターンと第2抽出パターンの2種類の抽出パターンで欠陥画像データの抽出を行う。
【0050】
図12に示すように、第1抽出パターンでは、高輝度領域40の外周に沿うように外接四角形43aを設定し、この外接四角形43aの内側を欠陥画像データ42aとして抽出する。例えば2点並び擬似欠陥のように複数の高輝度領域40が集合している場合には、これら高輝度領域40の集合体を含む外接四角形43aを設定し、この外接四角形43aの内側を欠陥画像データ42aとして抽出する。また、3以上の高輝度領域40が集合している場合にも、全ての高輝度領域40の集合体を欠陥画像データ42aとして抽出する。
【0051】
一方、高輝度領域40が単体で存在している場合には、これを含む外接四角形43aを設定して欠陥画像データ42aの抽出を行う。なお、外接四角形43aの大きさには上限が定められている。従って、外接四角形43a内に入らない高輝度領域40については、別のフィルム欠陥部分に起因するものと見なして、別途抽出を行う。
【0052】
図13に示すように、第2抽出パターンでは、複数の高輝度領域40が集合している場合に、画素数の多い高輝度領域40を含む外接四角形43bを設定し、この外接四角形43bの内側を欠陥画像データ42bとして抽出する。なお、高輝度領域40が単体で存在している場合には、これを含む外接四角形43bを設定して欠陥画像データ42bの抽出を行う。この場合には、欠陥画像データ42aと欠陥画像データ42bとは同じものになる。欠陥画像抽出回路33は、画像データ41から抽出した欠陥画像データ42a,42bを互いに関連付けてメモリ30に格納する。
【0053】
図6に戻って、特徴量抽出回路34は、メモリ30に格納された欠陥画像データ42a,42bからそれぞれ特徴量を抽出する。この特徴量には、例えば「平均輝度」、「中心輝度」、「平均輝度−中心輝度」、「最大輝度」、「画素数」、「面積比1」、「面積比2」、「幅」、「長さ」、「縦横比」、「平均幅」、「平均幅縦横比」などが含まれる。
【0054】
「平均輝度」は、欠陥画像データ42aを構成する各画素の輝度の平均値である。「中心輝度」は、欠陥画像データ42aの中心位置における画素の輝度である。「平均輝度−中心輝度」は、「平均輝度」−「中心輝度」である。
【0055】
「画素数」は、欠陥画像データ42a,42b内の高輝度領域40を構成する画素の画素数である。「面積比1」は、欠陥画像データ42aにおける「画素数」÷「高輝度領域40外の画素の画素数」であり、「面積比2」は、欠陥画像データ42bにおける「画素数」÷「高輝度領域40外の画素の画素数」である。
【0056】
「幅」は、欠陥画像データ42aの幅(外接四角形43aの幅)である。「長さ」は、欠陥画像データ42aの長さ(外接四角形43aの長さ)である。「縦横比」は、「長さ」÷「幅」である。「平均幅」は、欠陥画像データ42a内の高輝度領域40の幅の平均値である。「平均幅縦横比」は、「長さ」÷「平均幅」である。特徴量抽出回路34は、欠陥画像データ42a,42bから抽出した各特徴量を、抽出元の欠陥画像データ42a,42bに対応付けてメモリ30に格納する。
【0057】
擬似欠陥判定回路35は、メモリ30内の欠陥画像データ42a,42bに対応するフィルム欠陥部分が2点並び擬似欠陥であるか否かを判定する。この際に、2点並び擬似欠陥には、「2点並び(1)」〜「2点並び(N)」のN種類がある。このため、擬似欠陥判定回路35は、フィルム欠陥部分が「2点並び(1)」・・・「2点並び(N)」であるか否かを個別に判定する第1判定回路46(1)〜第N判定回路46(N)を有している。
【0058】
第1判定回路46(1)は、メモリ30内の欠陥画像データ42a,42bの特徴量に基づき、欠陥画像データ42a,42bが「2点並び(1)」を示す第1特定欠陥画像データ(図14参照)であるか否かを判定する第1判定処理を行うことで、フィルム欠陥部分が「2点並び(1)」であるか否かを判定する。この第1判定処理は、欠陥画像データ42a,42bの各特徴量と、第1特定欠陥画像データの特徴に応じて予め定められた各特徴量の第1しきい値54(1)(図14参照)と、の比較により実行される。
【0059】
第2判定回路46(2)は、欠陥画像データ42a,42bが「2点並び(2)」を示す第2特定欠陥画像データ(図14参照)である否かを判定する第2判定処理を行うことで、フィルム欠陥部分が「2点並び(2)」であるか否かを判定する。以下同様に、第N判定回路46(N)は、欠陥画像データ42a,42bが「2点並び(N)」を示す第N特定欠陥画像データである否かを判定する第N判定処理を行うことで、フィルム欠陥部分が「2点並び(N)」であるか否かを判定する。
【0060】
第2〜第N判定処理は、欠陥画像データ42a,42bの各特徴量を、第2〜第N特定欠陥画像データの特徴に応じて個別に予め定められた各特徴量の第2〜第Nしきい値54(2)〜54(N)(図14参照)とそれぞれ比較することにより実行される。
【0061】
実害欠陥判定回路36は、メモリ30内に格納された欠陥画像データ42a,42bに対応するフィルム欠陥部分が実害欠陥であるか否かを判定する。実害欠陥判定回路36は、擬似欠陥判定回路35により第1〜第N特定欠陥画像データであると判定されなかった欠陥画像データ42a,42bに対応するフィルム欠陥部分を、実害欠陥であると判定する。
【0062】
欠陥位置検出回路37は、擬似欠陥判定回路35及び実害欠陥判定回路36によりそれぞれ2点並び擬似欠陥、実害欠陥と判定されたフィルム欠陥部分の積層フィルム9内における位置座標を検出する。この位置座標は、例えば、積層フィルム9の先端の通過を検出する先端検出センサ(図示せず)からの検出情報、既知の積層フィルム9の搬送速度、及び画像データ41内における欠陥画像データ42a,42bの位置情報などから求められる。なお、この方法以外にも公知の各種検出方法を用いてフィルム欠陥部分の位置座標を検出してもよい。欠陥位置検出回路37は、2点並び擬似欠陥及び実害欠陥の位置座標データをメモリ30に格納する。
【0063】
マーキング制御回路38は、メモリ30内の実害欠陥の位置座標データ(以下、実害欠陥位置座標データという)に基づき、マーキング装置21を制御して、搬送路上の積層フィルム9に実害欠陥の位置を示すマーキングを行う。マーキング制御回路38は、先端検出センサからの検出情報、既知の積層フィルム9の搬送速度などから、積層フィルム9の実害欠陥位置座標データに対応する位置(以下、位置座標対応位置という)の移動を監視する。これにより、積層フィルム9の位置座標対応位置へのマーキングが可能となる。
【0064】
CPU28は、メモリ30のROM領域から読み出した各種プログラムを逐次実行することで、擬似欠陥判定制御部28aとして機能する。擬似欠陥判定制御部28aは、第1〜第N判定回路46(1)〜46(N)による判定処理を所定の順番(例えば、第1判定回路46(1)、第2判定回路46(2)、・・・第N判定回路46(N))で実行させる。
【0065】
また、擬似欠陥判定制御部28aは、第1判定処理でフィルム欠陥部が2点並び(1)であると判定された場合には第2〜第N判定処理を中止させ、第2判定処理でフィルム欠陥部が2点並び(2)であると判定された場合には第3〜第N判定処理を中止させる。このため、第M[Mは(N−1)以下の自然数]判定処理でフィルム欠陥部が2点並び擬似欠陥であると判定された場合には、それ以降の判定処理は行われない。
【0066】
図14に示すように、メモリ30のROM領域には、各種プログラムの他に、欠陥画像抽出基準データ60と、擬似欠陥分類基準データ61と、欠陥位置情報データ62とが格納されている。
【0067】
欠陥画像抽出基準データ60は、欠陥画像抽出回路33が画像データ41から欠陥画像データ42a,42bを抽出するための基準データとして用いられる。この欠陥画像抽出基準データ60には、高輝度領域40を構成する画素の輝度値の下限値、画素数の下限値などが格納されている。これにより、欠陥画像抽出回路33は、欠陥画像抽出基準データ60を参照して、画像データ41から欠陥画像データ42a,42bを抽出する。
【0068】
擬似欠陥分類基準データ61は、第1〜第N判定回路46(1)〜46(N)による第1〜第N判定処理に用いられるデータである。擬似欠陥分類基準データ61には、第1〜第N特定欠陥画像データの特徴に応じてそれぞれ予め定められた各特徴量の第1〜第Nしきい値54(1)〜54(N)が格納されている。
【0069】
例えば、第1しきい値54(1)は、第1特定欠陥画像データの外観上の特徴に応じて定められている。この特徴とは、具体的には(a1)面積が大きい方の高輝度領域40が略円形で、(b1)目視観察上は両高輝度領域40が分離しており、(c1)両高輝度領域40が近接して並んでいる、などである。第1しきい値54(1)は、(a1)に対応して、「面積比2」が所定値β以上に定められている。(b1)に対応して、「平均輝度−中心輝度」が0.0以上(正の値)に定められている。(c1)に対応して、「縦横比」が1.0以下の所定値でかつ「面積比1」が所定値α以上に定められている。
【0070】
また、第2しきい値54(2)は、第2特定欠陥画像データの外観上の特徴、具体的には(a2)ほぼ円形の2つの高輝度領域40が一部重なるように並んでいる、などの特徴に応じて定められている。第2しきい値54(2)は、(a2)に対応して、「縦横比」が1.0以下、「平均輝度−中心輝度」が所定値γ以上、「面積比1」が所定値δ以上、「平均幅縦横比」が所定値ε以下に定められている。
【0071】
第1〜第N判定回路46(1)〜46(N)は、それぞれ第1〜第Nしきい値54(1)〜54(N)を参照することにより、欠陥画像データ42a,42bが第1〜第N特定欠陥画像データであるか否かを個別に判定する。
【0072】
欠陥位置情報データ62は、欠陥位置検出回路37により抽出された2点並び擬似欠陥及び実害欠陥の位置座標データを格納する。これにより、マーキング制御回路38は、欠陥位置情報データ62を参照することにより、実害欠陥位置座標データを取得することができる。
【0073】
次に、図16を用いて上記構成の欠陥検査装置11の作用について説明を行う。操作部29で検査開始操作がなされると、積層フィルム9の搬送開始と同時に欠陥検査装置11による検査処理が開始される。最初に、ライン光源17から積層フィルム9に向けて検査光24が照射される。
【0074】
積層フィルム9の正常部分に入射した検査光24は、偏光軸D1に平行な方向に振動する直線偏光に変換されて積層フィルム9を透過する。これに対して、フィルム欠陥部分に入射した検査光24は、フィルム欠陥部分を透過する際に偏光状態が変わることで、偏光軸D1と平行な方向に振動する直線偏光にはならない。これら正常部分またはフィルム欠陥部分を透過した検査光24は、偏光フィルタ19に入射する。
【0075】
偏光フィルタ19に入射した検査光24の中で、偏光軸D1と平行な方向(偏光軸D2に垂直な方向)に振動する直線偏光は偏光フィルタ19により遮断される。これに対して、フィルム欠陥部分を透過することで、偏光軸D1と平行な方向に振動する直線偏光にならなかった検査光24は、偏光フィルタ19を透過してカメラ20に入射する。
【0076】
カメラ20は、偏光フィルタ19を透過した検査光24を撮像して、1ライン分の画像信号を装置本体22へ出力する。以下、カメラ20は、積層フィルム9が1ライン分ずつ搬送されるごとに撮像と画像信号の出力とを連続して実行する。
【0077】
カメラ20から出力された1ライン分の画像信号は、入力I/F31を介して、画像処理回路32に逐次入力する。画像処理回路32は、入力I/F31から入力される1ライン分の画像信号を蓄積し、所定ライン数分の画像信号が蓄積される度に、これら画像信号に基づき2次元の画像データ41を生成してメモリ30に格納する。
【0078】
CPU28は、新たな画像データ41がメモリ30に格納されたときに、欠陥画像抽出回路33に対して欠陥画像抽出指令を発する。この指令を受けて、欠陥画像抽出回路33は、メモリ30内の画像データ41を読み出す。そして、欠陥画像抽出回路33は、メモリ30内の欠陥画像抽出基準データ60で定められた基準に従って、画像データ41からフィルム欠陥部分に起因する高輝度領域40の抽出を開始する。
【0079】
最初に、欠陥画像抽出回路33は、図12に示したように第1抽出パターンで高輝度領域40の抽出を行う。これにより、2点並び擬似欠陥のように複数の高輝度領域40が集合している場合には、これら高輝度領域40の集合体が欠陥画像データ42aとして抽出される。なお、高輝度領域40が単体で存在している場合には、この高輝度領域40が欠陥画像データ42aとして抽出される。
【0080】
次いで、欠陥画像抽出回路33は、図13に示したように第2抽出パターンで高輝度領域40の抽出を行う。これにより、2点並び擬似欠陥のように複数の高輝度領域40が集合している場合には、その中で最大画素数の高輝度領域40が欠陥画像データ42bとして抽出される。なお、高輝度領域40が単体で存在している場合には、この高輝度領域40が欠陥画像データ42bとして抽出されるので、欠陥画像データ42bは欠陥画像データ42aと同じものになる。欠陥画像抽出回路33は、欠陥画像データ42a,42bをメモリ30に格納する。
【0081】
CPU28は、新たな欠陥画像データ42a,42bがメモリ30に格納されたときに、特徴量抽出回路34に対して特徴量抽出指令を発する。この指令を受けて、特徴量抽出回路34は、メモリ30内の欠陥画像データ42a,42bから各種の特徴量を抽出する。特徴量抽出回路34は、各特徴量を抽出元の欠陥画像データ42a,42bに対応付けてメモリ30に格納する。
【0082】
次いで、CPU28は、擬似欠陥判定回路35及び実害欠陥判定回路36に対して判定指令を発する。最初に、擬似欠陥判定制御部28aによる制御の下、第1判定回路46(1)は、メモリ30内の欠陥画像データ42a,42bの各特徴量と、擬似欠陥分類基準データ61の第1しきい値54(1)とを比較する。この比較結果を基に、第1判定回路46(1)は、欠陥画像データ42a,42bが第1特定欠陥画像データであるか否かを判定する第1判定処理を行う。これにより、フィルム欠陥部分が「2点並び(1)」であるか否かが判定される。
【0083】
擬似欠陥判定制御部28aは、フィルム欠陥部分が「2点並び(1)」ではないと判定されたときに、第2判定回路46(2)を作動させる。第2判定回路46(2)は、欠陥画像データ42a,42bの各特徴量と第2しきい値54(2)とを比較して、欠陥画像データ42a,42bが第2特定欠陥画像データであるか否かを判定する第2判定処理を行う。これにより、フィルム欠陥部分が「2点並び(2)」であるか否かが判定される。
【0084】
以下同様にして、フィルム欠陥部分が2点並び擬似欠陥であると判定されるまで、擬似欠陥判定制御部28aは、第3判定回路46(3)〜第N判定回路46(N)による第3〜第N判定処理を順番に実行させて、2点並び擬似欠陥の有無を判定させる。
【0085】
積層フィルム9の擬似欠陥の殆どはセパレータ15内部の異物26に起因するものであり、この異物26に起因する擬似欠陥では、図7〜図8に示したように高輝度領域40が2つ並んで観察される。このため、画像データ41から抽出した欠陥画像データ42a,42bの中で、2つの高輝度領域40が並んでいる欠陥画像データ42aに対応するフィルム欠陥部分を擬似欠陥として判定することができる。その結果、従来のように、画像データ41の全てに対して特徴量の抽出処理や、重回帰式及び判別関数による複雑な演算を行うことなく、擬似欠陥の有無を判定することができる。これにより、検査処理に掛かる時間を短縮することができるので、走行中の積層フィルム9の欠陥検査が可能になる。
【0086】
擬似欠陥判定制御部28aは、第1〜第(N(1))判定処理のいずれかでフィルム欠陥部分が2点並び擬似欠陥であると判定されたときには、それ以降の判定処理を中止させる。これにより、無駄な判定処理が行われなくなるので、より検査を迅速に行うことができる。
【0087】
実害欠陥判定回路36は、第1判定回路46(1)〜第N判定回路46(N)による第1〜第N判定処理を監視する。そして、実害欠陥判定回路36は、各判定処理のいずれでも2点並び擬似欠陥と判定されなかった場合に、フィルム欠陥部分を実害欠陥であると判定する。
【0088】
CPU28は、フィルム欠陥部分が2点並び擬似欠陥あるいは実害欠陥であると判定されたときに、欠陥位置検出回路37に対して位置検出指令を発する。この指令を受けて、欠陥位置検出回路37は、2点並び擬似欠陥あるいは実害欠陥と判定されたフィルム欠陥部分の積層フィルム9内における位置座標を検出する。次いで、欠陥位置検出回路37は、2点並び擬似欠陥あるいは実害欠陥の位置座標データをメモリ30内の欠陥位置情報データ62に格納する。
【0089】
CPU28は、実害欠陥位置座標データが欠陥位置情報データ62に格納されたときに、マーキング制御回路38に対してマーキング指令を発する。この指令を受けて、マーキング制御回路38は、欠陥位置情報データ62から実害欠陥位置座標データを読み出す。
【0090】
次いで、マーキング制御回路38は、先端検出センサからの検出情報、及び積層フィルム9の搬送速度などから、積層フィルム9における位置座標対応位置の移動を監視する。そして、マーキング制御回路38は、位置座標対応位置がマーキング装置21の直下に移動したときに、マーキング装置21を作動させて位置座標対応位置にマーキングを行わせる。これにより、積層フィルム9における実害欠陥の位置の判別が容易となる。
【0091】
以下、積層フィルム9の全領域の検査が完了するまで、上述の処理が繰り返し実行される。
【0092】
上記実施形態では、実害欠陥判定回路36はフィルム欠陥部分が実害欠陥であるか否かの判定しか行っていないが、フィルム欠陥部分が実害欠陥である場合にはその種類(「異物」、「細長異物」、「ケバ」など)の判定を行ってもよい。この場合には、図16に示すように、メモリ30のROM領域に実害欠陥分類基準データ64を格納しておく。
【0093】
実害欠陥分類基準データ64には、「異物」、「細長異物」、「ケバ」などの実害欠陥の種類に応じてそれぞれ予め定められた各特徴量のしきい値が格納されている。これにより、実害欠陥判定回路36は、特徴量抽出回路34の抽出結果に基づき、実害欠陥分類基準データ64を参照することで、実害欠陥の種類を判定することができる。
【0094】
上記実施形態では、セパレータ15内の異物26による擬似欠陥として、図7〜図11に示した「2点並び擬似欠陥」が発生する場合を例に挙げて説明を行ったが、これ以外に十字形状の擬似欠陥(以下、十字擬似欠陥という)が発生する場合がある。なお、ここでいう「十字」には、「X字」も含まれるものとする。
【0095】
セパレータ15内に異物26が存在している場合には、図4に示したように、異物26からの押圧を受けて偏光板13の表面に凹み13aが形成される。この際に、凹み13aが理想円に近い形状に形成されると、図17に示すように、異物26の中心を通りかつ偏光軸D1に平行な直線L1上またはその付近に位置する分子Mcは、偏光軸D1に平行な方向に平行移動するだけで、配向方向は変わらない。また、異物26の中心を通りかつ偏光軸D1に垂直な直線L2上またはその付近に位置する分子Mdも、偏光軸D1に垂直な方向に平行移動するだけで、配向方向は変わらない。これに対して、異物26の中心に対して斜め方向に位置する分子Meの配向方向は、異物26の中心に向けて斜めに傾く。
【0096】
分子Mc,Mdを透過した検査光24は、偏光軸D1と平行な方向(偏光軸D2に対して垂直な方向)に振動する直線偏光であるので、この検査光24は偏光フィルタ19で遮断される。これに対して、分子Meを透過した検査光24の振動方向は偏光軸D2に対して垂直な方向に振動する直線偏光ではなくなるので、偏光フィルタ19を透過する。その結果、この検査光24を撮像すると、図18に示すように、黒画像(図中のドットで表示)の中に十字形状の高輝度領域66(図中の白抜き部分で表示)を含む画像データ41が取得される。
【0097】
このようにセパレータ15内の異物26に起因する擬似欠陥に、「2点並び擬似欠陥」と「十字擬似欠陥」との両方がある場合には、擬似欠陥判定回路35に第X判定回路46(X)を設けるとともに、擬似欠陥分類基準データ61に第Xしきい値54(X)を登録しておく。
【0098】
第X判定回路46(X)は、欠陥画像データ42a,42bが「十字擬似欠陥」を示す第X特定欠陥画像データであるか否かを判定する第X判定処理を行うことで、フィルム欠陥部分が「十字擬似欠陥」であるか否かを判定する。
【0099】
第Xしきい値54(X)は、第X判定処理に用いられるデータであり、第X特定欠陥画像データの外観上の特徴に応じて定められている。この特徴は、具体的には(aX)高輝度領域40が略十字形状になり、(bX)十字の中央部分の輝度が他の部分の輝度に比べて同等または暗い、などである。また、(aX)において高輝度領域40が略十字形状になる場合の特徴とは、(aX−1)外接四角形43aが略正方形状であり、(aX−2)外接四角形43a内における高輝度領域40の面積の割合が所定値以下になる、などが挙げられる。
【0100】
第1しきい値54(1)は、(aX−1)に対応して、「縦横比」が1.0を含む所定範囲(ζ以上η以下)に定められている。また、(aX−2)に対応して、「面積比1」が0.5以下の所定範囲内に定められるとともに、「平均幅縦横比」が3.0以下の所定範囲内に定められる。また、(bX)に対応して、「平均輝度−中心輝度」が−5.0以上の0に近い値に定められている。
【0101】
第X判定回路46(X)は、特徴量抽出回路34の抽出結果と、第Xしきい値54(X)とを比較することで、第X判定処理を行うことができる。なお、各判定処理の中で第X判定処理を行う順番を、例えば1番目にするなど適宜変更してもよい。この場合に、擬似欠陥判定制御部28aは、フィルム欠陥部分が「十字擬似欠陥」であると判定されたときにはそれ以降の判定処理を中止させる。
【0102】
また、「十字擬似欠陥」が1種類だけでなく複数種類ある場合にも本発明を適用することができる。この場合には「2点並び擬似欠陥」と同様に、「十字擬似欠陥」の種類毎に予め定められた各特徴量のしきい値を擬似欠陥分類基準データ61に格納しておく。これにより、擬似欠陥判定回路35は、擬似欠陥分類基準データ61を参照することで、「十字擬似欠陥」の種類を判定することができる。
【0103】
上記実施形態では、積層フィルム9の擬似欠陥として、セパレータ15内に含まれる異物26に起因する擬似欠陥を例に挙げて説明を行ったが、例えば、図20に示すように、セパレータ15と偏光板13との間に存在する異物68に起因した擬似欠陥の検査にも本発明を適用することができる。セパレータ15を偏光板13から剥離した際に、異物68は粘着層14に残るおそれがあるが、偏光板13を液晶ディスプレイのガラス基板等に貼り付ける前に行われるクリーニング処理により異物68は除去される。このため、異物68が発生していても偏光板13の性能に影響は及ぼさない。なお、異物68に起因する擬似欠陥の検査は、上記の異物26に起因する2点並び擬似欠陥や十字擬似欠陥の検査と同様の方法で行うことができる。
【0104】
上記実施形態では、偏光フィルタ19を透過した検査光24をカメラ20で撮像しているが、積層フィルム9の幅方向に移動自在なエリアカメラなどの各種のカメラ(撮影手段)を用いて検査光24を撮像してもよい。
【0105】
上記実施形態では、特徴量抽出回路34が欠陥画像データ42a,42bから抽出する特徴量として、「平均輝度」及び「中心輝度」などを例に挙げて説明したが、2点並び擬似欠陥や十字擬似欠陥の判定に有用な上記以外の特徴量の抽出を行ってもよい。
【0106】
上記実施形態では、2点並び擬似欠陥や十字擬似欠陥を積層フィルム9の擬似欠陥として判定しているが、セパレータ15で発生するような偏光板13の性能に影響を及ぼさない各種欠陥を積層フィルム9の擬似欠陥として判定してもよい。
【0107】
上記実施形態では、積層フィルム9は3層構造であるが、少なくとも偏光板13を含む2層または4層以上の積層フィルムの検査を行う場合にも本発明を適用することができる。また、偏光板13の両面に粘着層14を介してセパレータ15が貼り付けられていてもよい。
【0108】
液晶ディスプレイに用いられる積層フィルム9を製造する積層フィルム製造ライン10に配置される欠陥検査装置11を例に挙げて説明を行ったが、駅層ディスプレイ以外に用いられる積層フィルムの欠陥検査装置にも本発明を適用することができる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明の効果を実証するための実施例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
下記表1に示すように、実施例では、欠陥検査装置11で1139枚分の画像データ41(積層フィルム9の約7500m分のデータ)で取得するとともに、個々の画像データ41ごとに欠陥画像データ42a,42bの取得、欠陥画像データ42a,42bからの各特徴量の取得、及び2点並び擬似欠陥及び実害欠陥の有無の判定を実施した。
【0111】
【表1】

【0112】
欠陥検査装置11により2点並び擬似欠陥及び実害欠陥と判定されたフィルム欠陥部分を検査員により目視で確認を行った。その結果、2点並び擬似欠陥をケバと判定したものが10個、ケバを2点並び擬似欠陥と判定したものが1個発生した。実際の606(=597+10−1)個の2点並び擬似欠陥の中で誤判定が11個となり、誤判定率が約1.81%になった。その結果、欠陥検査装置11では高精度で2点並び擬似欠陥の有無の判定が実行できることが確認された。
【符号の説明】
【0113】
9 積層フィルム
11 欠陥検査装置
13 偏光板
15 セパレータ
17 ライン光源
19 偏光フィルタ
20 ラインセンサカメラ
21 マーキング装置
22 装置本体
24 検査光
28 CPU
33 欠陥画像抽出回路
34 特徴量抽出回路
35 擬似欠陥判定回路
36 実害欠陥判定回路
40,66 高輝度領域
42a,42b 欠陥画像データ
46(1)〜46(N) 第1判定回路〜第N判定回路
54(1)〜54(N) 第1しきい値〜第Nしきい値
61 擬似欠陥分類基準データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光板とフィルムとを積層してなる多層の積層フィルムの表裏面の一方側に配置され、前記積層フィルムに対して光を照射する光源と、
前記表裏面の他方側に配置され、前記表裏面に平行でかつ前記偏光板の第1偏光軸に略直交する第2偏光軸を有し、前記積層フィルムの正常部分を透過した前記光を遮断する偏光フィルタと、
前記偏光フィルタの前記積層フィルムに対向する面側とは反対面側に配置され、前記偏光フィルタを透過した光を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により取得された前記偏光フィルタの透過光像から、前記積層フィルムの欠陥部分及び前記偏光フィルタを透過した前記光によって輝度が高くなる高輝度領域を欠陥画像として抽出する欠陥画像抽出手段と、
前記欠陥画像抽出手段が抽出した前記欠陥画像が、2つの高輝度領域が並んでいる特定欠陥画像である場合に、当該欠陥画像に対応する前記欠陥部分を前記偏光板の欠陥ではない擬似欠陥であると判定する擬似欠陥判定手段と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記欠陥画像抽出手段が抽出した前記欠陥画像から、前記欠陥画像の輝度の平均値である平均輝度と、前記欠陥画像の中心位置における輝度である中心輝度とを少なくとも含む複数種類の特徴量を抽出する特徴量抽出手段を備え、
前記擬似欠陥判定手段は、前記特徴量抽出手段の抽出結果を、前記特定欠陥画像の特徴に応じて予め定められた各前記特徴量のしきい値と比較することで、前記欠陥画像が前記特定欠陥画像であるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記特徴量には、前記平均輝度と前記中心輝度との差が含まれることを特徴とする請求項2記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記特定欠陥画像は、N(Nは2以上の自然数)種類の第1〜第N擬似欠陥にそれぞれ対応した第1〜第N特定欠陥画像からなり、前記しきい値は、前記第1〜第N特定欠陥画像の特徴に応じてそれぞれ個別に定められた第1〜第Nしきい値からなるものであり、
前記擬似欠陥判定手段に設けられ、前記特徴量抽出手段の抽出結果を、第1〜第Nしきい値とそれぞれ個別に比較することで、前記欠陥画像が前記第1〜第N特定欠陥画像であるか否かを個別に判定する第1〜第N判定手段と、
前記第1〜第N判定手段による判定処理を所定の順番で実行させるとともに、第M[Mは(N−1)以下の自然数]番目の判定処理で前記欠陥部分が前記擬似欠陥であると判定された場合には、第(M+1)番目以降の判定処理を中止させる判定制御手段と、を備えることを特徴とする請求項2または3記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記特定欠陥画像には、略十字形状の前記高輝度領域を有するものが含まれることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記フィルムは、前記偏光板の表面上に形成された粘着層上に剥離自在に貼り付けられたセパレータであることを特徴とする請求項1ないし5記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記擬似欠陥判定手段が前記特定欠陥画像であると判定しなかった前記欠陥画像に対応をする前記欠陥部分を、前記偏光板の欠陥である実害欠陥と判定する実害欠陥判定手段を備えることを特徴する請求項1ないし6いずれか1項記載の欠陥検査装置。
【請求項8】
前記積層フィルムの前記実害欠陥と判定された部分に、前記実害欠陥を示すマーキングを行うマーキング手段を備えることを特徴とする請求項7記載の欠陥検査装置。
【請求項9】
偏光板とフィルムとを積層してなる多層の積層フィルムの表裏面の一方側に配置された光源から、前記積層フィルムに対して光を照射する照射ステップと、
前記表裏面の他方側に配置され、前記表裏面に平行でかつ前記偏光板の第1偏光軸に略直交する第2偏光軸を有する偏光フィルタにより、前記積層フィルムの正常部分を透過した前記光を遮断する遮断ステップと、
前記偏光フィルタの前記積層フィルムに対向する面側とは反対面側に配置された撮影手段により、前記偏光フィルタを透過した光を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップで取得された偏光フィルタの透過光像から、前記積層フィルムの欠陥部分及び前記偏光フィルタを透過した前記光によって輝度が高くなる高輝度領域を欠陥画像として抽出する欠陥画像抽出ステップと、
前記欠陥画像抽出ステップで抽出した前記欠陥画像が、2つの高輝度領域が並んでいる特定欠陥画像である場合に、当該欠陥画像に対応する前記欠陥部分を前記偏光板の欠陥ではない擬似欠陥であると判定する擬似欠陥判定ステップと、
を有することを特徴とする欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−7689(P2013−7689A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141426(P2011−141426)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】