説明

欠陥検査装置

【課題】表面に細かな凹凸を有する部材であってもその表面の欠陥を検出できる欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】被検査対象Sの表面の欠陥を検査する装置であって、被検査対象Sに光を照射する投光手段10と、被検査対象Sの表面において反射した光を受光する受光部とを備えた撮影手段20とからなり、投光手段10は、一列に並んで配置された複数の発光体13を有する光源11と、光源11と被検査対象Sとの間に設けられた、各発光体13から被検査対象Sに照射される光を制限する遮光部材15を備えており、遮光部材15は、各発光体13から放出される光のうち、発光体13が並んでいる方向において、各発光体13の光軸から一定の範囲よりも内側の光を遮断し得る複数の遮断部15aを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置に関する。さらに詳しくは、被検査対象の表面を光学的手法を用いて検査する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面が平滑な被検査対象において、その表面の欠陥、例えば、スジ状の傷などの検査には、光学的手法を用いた検査が行われている。かかる検査では、LED等の光源から発せられる光を被検査対象の表面に照射して、その表面における反射光をカメラ等の撮影手段によって撮影する。すると、撮影手段に入光した光の強度に対応する信号からなる映像が得られるので、この撮影された映像の信号強度、つまり、映像レベルに基づいて欠陥の有無が判断される。
【0003】
具体的には、LED光源を、その光軸と被検査対象の表面との挟む角が、例えば、60°より小さな角度となるように配置する。そして、撮影手段を、その光軸が被検査対象の表面と直交するように配置する。つまり、被検査対象の表面に欠陥がない場合には、この表面で反射された光が撮影手段に入光しないように配置する。言い換えれば、撮影手段は、LED光源から発せられる光のうち、被検査対象の表面において乱反射された散乱光のみが入光するように配置する。
すると、被検査対象の表面が平滑な表面であるから、被検査対象の表面における乱反射は表面に欠陥が存在する場合のみ生じる。つまり、被検査対象の表面では、その表面に欠陥が存在する場合のみ乱反射による散乱光が発生するので、撮影手段によって撮影された散乱光の強度に基づいて、傷等の欠陥の有無を判断することができる。
【0004】
ところで、傷による散乱光の強度が弱ければ、散乱光が撮影手段によって撮影されても、傷等の欠陥の有無を正確に判断することは難しくなる。
LED光源から発せられる光は指向性が強いので、傷による散乱光の強さは、LED光源の光軸方向と傷の方向との相対的な配置に依存する。例えば、傷の方向がLED光源の光軸方向に対して垂直かこれに近い場合は、傷による散乱光の強度が強くなる。一方、傷の延在方向がLED光源の光軸方向に対して平行かこれに近い場合は、傷による散乱光の強度が弱くなる。
すると、傷の延在方向がLED光源の光軸方向に対して平行かこれに近い場合には、撮影される散乱光の強度が弱くなり、傷の部分における信号強度が小さくなるから、その傷を検出できない可能性が生じる。
【0005】
上記ごとき問題を解決する技術として、検査対象に対して、互いに交差する方向から光を照射する技術が開発されている(特許文献1)。
特許文献1には、複数の発光ダイオードを光軸が互いに平行になるように直線状に配列してなる発光ダイオード配列体を複数段に配設し、発光ダイオードの光軸の方向が発光ダイオード配列体ごとに異なるようにした光源を用いて、上述したような欠陥検査を行う技術が開示されている。
そして、特許文献1には、上記光源を用いれば、欠陥に対してその延在方向と平行でない方向から必ず光を照射することができるから、被検査対象に如何なる延在方向の傷等の欠陥が存在していても、傷等の欠陥を精度良く検出して良好な欠陥検査が可能になる旨が記載されている。
【0006】
しかるに、特許文献1の技術は、検査対象の表面が平滑な場合であれば、その表面欠陥を検出することができる。言い換えれば、検査対象の表面に欠陥が存在せず、検査対象の表面において光の乱反射がほとんど生じないような場合であれば、欠陥のない部分と欠陥部分との間で撮影される光の強度差が大きくなるので、撮影された映像に基づいて表面欠陥を検出することができる。
しかし、ヘアライン仕上げをした金属表面のように細かな凹凸を有する表面については、この凹凸でも照射された光の乱反射が生じるため、凹凸と表面欠陥とを識別することができない。
【0007】
かかるヘアライン仕上げをした金属表面において、表面の凹凸で反射する光の信号を抑えるため、つまり、表面の凹凸において反射する散乱光の強度を弱くするために、拡散板を使用した正反射方式の光学系による検査が行われている。
しかし、表面の凹凸において反射する散乱光の強度だけでなく、欠陥での散乱光の強度も弱くなってしまう。すると、撮影された映像において、凹凸部分の信号と欠陥部分の信号との差が小さくなり、小さな欠陥の信号が認識できなくなってしまうという問題が生じている。
【0008】
現在のところ、光学的方法を用いて、ヘアライン仕上げをした金属表面や梨地肌等の検査を行うことができる検査装置は存在せず、かかる検査装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−139275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、表面に細かな凹凸を有する部材であってもその表面の欠陥を検出できる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の欠陥検査装置は、被検査対象の表面の欠陥を検査する装置であって、前記被検査対象に光を照射する投光手段と、前記被検査対象の表面において反射した光を受光する受光部とを備えた撮影手段とからなり、前記投光手段は、一列に並んで配置された複数の発光体を有する光源と、該光源と前記被検査対象との間に設けられた、各発光体から前記被検査対象に照射される光を制限する遮光部材を備えており、該遮光部材は、各発光体から放出される光のうち、該発光体が並んでいる方向において、各発光体の光軸から一定の範囲よりも内側の光を遮断し得る複数の遮断部を備えていることを特徴とする。
第2発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記遮光部材は、前記複数の発光体が並んでいる方向に沿って移動可能に設けられていることを特徴とする。
第3発明の欠陥検査装置は、第1または第2発明において、前記遮光部材は、前記複数の発光体が並んでいる方向に沿って延びた、複数の貫通孔を有する板状部材であり、前記複数の貫通孔は、前記複数の発光体が並んでいる方向に沿って並び、隣接する貫通孔間に位置する部分が前記複数の遮断部となるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、同じ列上に位置する複数の発光体から、各発光体の光軸から一定の範囲よりも外側の光のみが被検査対象の表面に照射されるので、被検査対象に対して異なる方向から光を照射することができる。すると、均一な凹凸より深い凹凸欠陥を光らせることが可能となるから、被検査対象の表面が、ヘアーラインや梨地肌のような細かな凹凸を有する表面であっても、表面の傷などを検出することができる。
第2発明によれば、遮光部材を移動させれば、遮断部によって遮断される光の範囲を変えることができる。すると、全ての発光体から、被検査対象に対して同じ方向から光を照射するようにすることもできる。このように、被検査対象の表面の状態に合わせて、光の照射状態を最適な状態とすることができるので、検査精度を高くすることができる。
第3発明によれば、板状部材に貫通孔を形成しているだけであるから、遮光部材の構造を簡単な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の欠陥検査装置1における投光手段10の軸方向と平行な断面の概略説明図であって、(A)は投光手段10の概略説明図であり、(B)は被測定対象近傍の概略説明図である。
【図2】本実施形態の欠陥検査装置1における投光手段10の軸方向と直交する断面の概略説明図である。
【図3】本実施形態の欠陥検査装置1における投光手段10において、遮光部材20の位置と、投光手段10から放射される出射光の関係を説明した図である。
【図4】本実施形態の欠陥検査装置1の概略説明図である。
【図5】実施例の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の欠陥検査装置は、被検査対象の表面を光学的手法を用いて検査する欠陥検査装置であって、表面に形成された傷などの検出することができるものである。
とくに、ヘアーラインのように規則的な細かな凹凸が形成された表面や、梨地肌のような細かな凹凸が形成された表面に発生した傷等の検出に適した装置である。
【0015】
(欠陥検査装置1の説明)
本発明の欠陥検査装置は、被検査対象の表面に対して光を照射する投光手段に特徴を有しているが、まず、欠陥検査装置の全体的な構成を簡単に説明する。
【0016】
図4において、符号Sは、本発明の欠陥検査装置1によって表面の欠陥(筋状の傷等)が検査される被検査対象を示している。この被検査対象Sは、連続して搬送される、フィルムや金属等からなるシート状の部材などであるが、とくに限定されない。
図4に示すように、本発明の欠陥検査装置1は、被検査対象Sにおいて検査を行う表面側に、被検査対象Sの表面に対して光を照射する投光手段10と、この投光手段10から被検査対象Sの表面に照射された光(以下、照射光という)が被検査対象Sの表面で反射した光(以下、反射光という)を受光する受光部とを備えた撮影手段20と、図示しないが、撮影手段20の受光部によって撮影された信号に基づいて傷等の有無を判断する解析手段とを備えている。
【0017】
そして、撮影手段20は、被検査対象Sの表面が滑らかな面であれば、入射光と等しい角度で反射される反射光(正反射光)が、撮影手段20の受光部に直接入射することがないように配設されている。言い換えれば、被検査対象Sの表面が滑らかな面であれば、被検査対象Sの表面に傷などが存在して照射光が傷などで乱反射した場合に、その散乱光だけが撮影手段20に入射するように、撮影手段20は配設されているのである。
例えば、図4に示すように、撮影手段20の光軸20aと被検査対象Sの表面の法線方向とのなす角θ1と、投光手段10の光軸10aと被検査対象Sの表面の法線方向とのなす角θ2との差が、10度以上となるように配設すれば、上記のごとき状態とすることができる。
【0018】
なお、上述した撮影手段20の受光部21は、例えば、ラインセンサやCCDエリアカメラ等の撮像装置であるが、上述したような散乱光を検出できる機器であれば、とくに限定されない。
【0019】
(投光手段10)
つぎに、投光手段10を説明する。
図1および図2において、符号10aは、投光手段10のケースを示している。このケース10aは、被検査対象Sの幅方向(図1では左右方向、図2では紙面に垂直な方向)に沿って延びた中空な部材である。
図2に示すように、このケース10aには、その一端、具体的にいえば、被検査対象Sと対向するように配置されるケース10aの端部(図2では下端)に、光を透過する光放出窓11cが形成されている。
なお、光放出窓11cは光を透過する部材(ガラスや透明アクリル板等)によって形成されているが、光を透過する部材によって形成されていればよく、とくに限定されない。また、光放出窓11cに代えて、ケース10a内と外部とを連通する貫通孔を設けてもよい。
【0020】
図1および図2に示すように、ケース10a内には、光放出窓11cに向けて光を放射する光源11が設けられている。この光源11は、ケース10aの軸方向、つまり、被検査対象Sの幅方向に沿って延びた基板12を備えており、この基板12に複数の発光体13が設けられている。具体的には、複数の発光体13は、基板12の軸方向(被検査対象Sの幅方向)に沿って一列に並んで、かつ、一定の間隔を空けて配設されている。そして、この発光体13は、発光体13から離れるにつれ、放射する光(以下、放射光という)が照射される範囲が広がるようになっている(図1参照)。
【0021】
なお、発光体13は、例えば、LEDを使用できるが、その光軸13aを中心としてある程度の角度範囲に光を放射することができるものであればとくに限定されない。
また、発光体13が光を放射する範囲はとくに限定されないが、光軸13aに対して、100〜140度程度の角度範囲(図1におけるθ3)に、検査に必要な照度の光を放射できるものが好ましい。
【0022】
図2に示すように、光源11と光放出窓11cとの間には、円筒状のレンズ14が設けられている。このレンズ14は、その軸方向が被検査対象Sの幅方向と平行となるように配設されている。
このレンズ14は、発光体13から放出される光を平行光とするために設けられている。具体的には、レンズ14は、被検査対象Sの幅方向と直交する方向(つまり、被検査対象Sの搬送方向、図2では左右方向)では、発光体13から放射された放射光を平行光とすることができるように設けられている。
つまり、被検査対象Sの幅方向と直交する方向では、レンズ14によって発光体13から放射される放射光を平行光となるように集束することができるので、被検査対象Sにおける検査を行う領域に照射される光の強度を強くすることができる。
【0023】
そして、光源11とレンズ13との間には、遮光部材15が設けられている。この遮光部材15は、被検査対象Sの幅方向に沿って延びた板状の部材である。この遮光部材15には、基板12の軸方向に沿って、複数の貫通孔15hが設けられている。この貫通孔15hは、各発光体13の光軸13a間に位置するように形成されており、各発光体13から放射される放射光の一部が貫通孔15hを通って被検査対象Sに照射されるように構成されている。
【0024】
上記のごとき貫通孔15hが形成された遮光部材15では、隣接する貫通孔15h間に位置する部分(遮断部15a)が各発光体13の光軸13a上に位置することになる。すると、基板12の軸方向では、各発光体13の光軸から一定の範囲よりも内側の放射光は、遮断部15aによって遮断され、被検査対象Sに照射されなくなる。言い換えれば、各発光体13からの光は、その光軸13aから一定の範囲よりも外側の放射光のみが貫通孔15hを通って被検査対象Sの表面に照射される。すると、発光体13は、放射光が、発光体13から離れるにつれその範囲が広がるように放射することができるようになっているので、貫通孔15hを通過した照射光は被検査対象Sの表面に対して斜めに照射される。
しかも、各発光体13の放射光は、その光軸13a上に位置する遮断部15aを挟む貫通孔15hからそれぞれ放射されるので、被検査対象Sに対して、一つの発光体13から、逆向きの照射光(図1(B)であれば、右からに照射される照射光(光束1〜5)と、左に向かう照射される照射光(光束a〜e)が相当する)が被検査対象Sの表面に照射される。
【0025】
以上のごとき構成であるから、本実施形態の欠陥検査装置1では、同じ列上に位置する複数の発光体13から被検査対象Sに放射光を放射することができるので、被検査対象Sの同じ領域に対して、異なる方向から光を同時に照射することができる。つまり、被検査対象Sにおける検査領域において、ある部分よりも右側に位置する発光体13からはその部分に対して右側から光が照射され、ある部分よりも左側に位置する発光体13からはその部分に対して左側から光が照射される状態となる。
しかも、発光体13から被検査対象Sまでのある程度距離が離れていれば、被検査対象Sにおける検査領域の各部分には、複数の発光体13(例えば、数個〜十数個)からの光が照射される。
【0026】
すると、被検査対象Sの表面にどのような方向の傷が形成されていても、いずれかの照射光の方向が傷の軸方向と交差するようになるので、傷による乱反射を生じさせることができる。よって、被検査対象Sの表面に形成された傷を検出する精度を高くできる。
【0027】
しかも、上記のごとき構成を採用しているので、表面に凹凸(例えば、均一な凹凸)が形成されている被検査対象Sであれば、その表面に形成されている凹凸における散乱光の強度よりも、表面欠陥(例えば、深さの深い凹凸欠陥)における散乱光の強度を強くする(光らせる)ことが可能となる。よって、被検査対象Sの表面が、ヘアーラインや梨地肌のような細かな凹凸を有する表面であっても、表面に存在する傷などを検出することができる。つまり、傷以外にも乱反射を生じさせる細かな凹凸があっても、表面の傷などを検出することができるのである。
【0028】
なお、遮光部材15は、上記機能を有する複数の遮断部15aを有するものであればとくに限定されない。しかし、上記のごとく、遮光部材15として、板状部材に貫通孔15hを形成したものを採用すれば、遮光部材15の構造を簡単な構造とすることができる。
また、貫通孔15hを通過して被検査対象Sに照射される照射光は、発光体13から被検査対象Sまでの距離が十分に離れている場合(例えば、100mm以上)であれば、図1(B)に示すようにほぼ平行光と見なせるような状態で照射される。発光体13から被検査対象Sまでの距離は、必ずしも被検査対象Sに照射される照射光が平行光となるまで離さなくてもよい。しかし、被検査対象Sに照射される照射光がほぼ平行光となっている方が(つまり、発光体13から被検査対象Sまでの距離が十分に離れている方が)、光量のムラが少なくなるので、検出感度を安定させることができる点で好ましい。
【0029】
この複数の発光体13と遮光部材15の遮断部15aおよび貫通孔15hとの関係は、以下の図1、図2および図4における各値が、以下の範囲が好ましい。
発光体13から被検査対象S表面までの距離H1:100〜200mm
撮影手段20の受光部から被検査対象S表面までの距離H2:500〜1000mm
発光体13から遮光部材15までの距離H3:3〜5mm
撮影手段20の光軸20aと被検査対象S表面の法線方向とのなす角度θ1:30〜40度
投光手段10の光軸10aと被検査対象S表面の法線方向とのなす角度θ2:40〜60度
発光体13の放射光が有効な照度の光を放出する範囲θ3:100〜140度
隣接する発光体13間の間隔L1:10〜30mm
遮光部材15における遮光部15aの長さL2:5〜15mm
【0030】
(移動構造)
本実施形態の欠陥検査装置1が、ヘアーラインや梨地肌のような細かな凹凸を有する表面を有する被検査対象Sのみを検査する場合であれば、被検査対象Sに照射される照射光が常に上述した状態となるように、遮光部材15を設けておけばよい。
【0031】
しかし、本実施形態の欠陥検査装置1によって、他の被検査対象Sも検査可能とするのであれば、遮光部材15をその軸方向(つまり、基板12の軸方向)に沿って移動できるようにケース10aに設けることが好ましい。つまり、基板12の軸方向における、各遮断部15aおよび各貫通孔15hと各発光体13との相対的な位置を変更できるようにすることが好ましい。
【0032】
かかる構成とすれば、遮光部材15を移動させることによって、遮断部15aによって遮断される光の範囲を変えることができるから、各発光体13から被検査対象Sに対して照射する照射光の方向や、照射光を照射する領域を変更することができる。すると、被検査対象Sの表面の状態に合わせて、被検査対象Sに照射される照射光の状態を最適な状態とすることができるので、傷などの欠陥の検査精度を高くすることができる。
【0033】
例えば、本実施形態の欠陥検査装置1によって、表面が散乱性を有する物(例えば、紙等)に形成された凹凸欠陥の検査を行う場合であれば、被検査対象Sの幅方向において、全ての発光体13からの照射光が、被検査対象Sに対して斜めの同じ方向から照射されるようにすることが好ましい。すると、表面が散乱性を有する被検査対象Sであっても、その表面散乱の影響を抑えることができるから、凹凸欠陥の検査などを正確に検査することができる(図3(A)参照)。
【0034】
また、本実施形態の欠陥検査装置1によって、反射光が少ない被検査材の検査を行う場合であれば、被検査対象Sの幅方向において、全ての発光体13からの照射光が、被検査対象Sと直交するように照射されるようにすることが好ましい。すると、被検査対象Sの表面に形成されている傷などを正確に検査することができる(図3(B)参照)。
【0035】
そして、上記全ての状態を可能とする上では、この複数の発光体13と遮光部材15の貫通孔15hとの関係は、以下の図1、図2および図4における各値が、以下の範囲であればよい。
発光体13から被検査対象S表面までの距離H1:100〜200mm
撮影手段20の受光部から被検査対象S表面までの距離H2:500〜1000mm
発光体13から遮光部材15までの距離H3:3〜5mm
撮影手段20の光軸20aと被検査対象S表面の法線方向とのなす角度θ1:30〜40度
投光手段10の光軸10aと被検査対象S表面の法線方向とのなす角度θ2:40〜60度
発光体13の放射光が有効な照度の光を放出する範囲θ3:100〜140度
隣接する発光体13間の間隔L1:10〜30mm
遮光部材15における遮光部15aの長さL2:5〜15mm
【0036】
(実験結果)
本発明の欠陥検査装置の効果を確認するために、遮光部材を設けた場合(実施例)と設けない場合(比較例)について、表面に凹凸を有する部材の表面検査を行った。
実験では、アルミ箔の裏面(地合の悪い面)に、アルミ箔を折り曲げて筋状のしわを形成し、このしわを検出できるか否かを確認した。
【0037】
実験に使用した装置は、実施例の装置に遮光部材を設けた以外は、実施例と比較例で同じものを使用した。
なお、使用した装置、図1、図2および図4における各数値は、以下のとおりである。
(1)使用した装置
撮影手段:リニアCCDカメラ(品番4020:ヒューテック製)
発光体:LED光源(品番LEDB1:ヒューテック製)
(2)各数値
発光体から被検査対象表面までの距離H1:60mm
撮影手段の受光部から被検査対象表面までの距離H2:463mm
発光体から遮光部材までの距離H3:4mm
撮影手段の光軸と被検査対象表面のなす角度θ1:30度
投光手段の光軸と被検査対象表面のなす角度θ2:55度
発光体の放射光が有効な照度の光を放出する範囲θ3:120度
隣接する発光体間の間隔L1:20mm
遮光部材における遮光部の長さL2:6.8mm
【0038】
実験結果を図5に示す。なお、図5におけるXの位置が、筋状のしわが存在している部分に対応する。
まず、図5(A)に示すように、比較例では全体的に信号強度が大きく、また、その強度の変化も大きい。このため、しわの位置での散乱光に起因する信号を、他の部分の散乱光に起因する信号に埋もれてしまっており、しわの有無を検出できなかった
一方、図5(B)に示すように、実施例では、全体的に信号強度が小さくなっており、その強度の変化も小さくなっている。しかし、しわの位置における信号強度は、他の部分の信号よりも強くなっており、その位置にしわが存在することが確認できた。
つまり、実施例の装置では、検査対象の表面に細かな凹凸が存在しても、しわ等の欠陥からの散乱光の強度を他の部分の散乱光の強度よりも強くでき、しわ等の欠陥の欠陥を検出できることが確認できる。
【0039】
以上の結果から、本発明の欠陥検査装置は、表面に細かな凹凸を有する部材における表面検査に有効であることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の欠陥検査装置は、表面に細かな凹凸を有する、梨地肌やヘアーライン等を有する部材の表面検査に適している。
【符号の説明】
【0041】
1 欠陥検査装置
10 投光手段
11 光源
13 発光体
15 遮光部材
15h 貫通孔
20 撮影手段
21 受光部
S 被検査対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象の表面の欠陥を検査する装置であって、
前記被検査対象に光を照射する投光手段と、
前記被検査対象の表面において反射した光を受光する受光部とを備えた撮影手段とからなり、
前記投光手段は、
一列に並んで配置された複数の発光体を有する光源と、
該光源と前記被検査対象との間に設けられた、各発光体から前記被検査対象に照射される光を制限する遮光部材を備えており、
該遮光部材は、
各発光体から放出される光のうち、該発光体が並んでいる方向において、各発光体の光軸から一定の範囲よりも内側の光を遮断し得る複数の遮断部を備えている
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記遮光部材は、
前記複数の発光体が並んでいる方向に沿って移動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記遮光部材は、
前記複数の発光体が並んでいる方向に沿って延びた、複数の貫通孔を有する板状部材であり、
前記複数の貫通孔は、
前記複数の発光体が並んでいる方向に沿って並び、隣接する貫通孔間に位置する部分が前記複数の遮断部となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169782(P2011−169782A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34441(P2010−34441)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【特許番号】特許第4630945号(P4630945)
【特許公報発行日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(591114641)株式会社ヒューテック (19)
【Fターム(参考)】