説明

欠陥検査装置

【課題】検出光学系で検出された検査光の照度分布に適合するようにしきい値の設定が可能な欠陥検査装置を実現する。
【解決手段】検出光学系で検出された光の照度分布を取り込み、取り込んだデータを基に、検出光学系の画素毎にしきい値を算出する。次に、検査結果データから、しきい値係数の変更による検査結果の再計算を可能とし、アシストツール画面(GUI)上に表示させ、検出欠陥の観察も可能とする。また、複数個のしきい値係数の算出ができ、アシストツール画面(GUI)上にそれぞれのしきい値係数で再算出した結果を表示させることができる。したがって、TDIセンサに取り込まれる光の照度分布に適合したしきい値を設定することができる。つまり、光学部品の劣化や装置固有の照射系、検出系の特性に適合したしきい値を設定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料上の回路パターンに生じた異物や欠陥を検出する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パターン欠陥検査装置やパターン無し検査装置といった欠陥検査装置は、半導体ウェーハ,液晶パネル,HDD等のパターンドメディア,太陽電池用ウェーハ等を検査対象の試料として、試料上に生成した回路パターンに生じた異物や欠陥を検出する。以下では、本発明の欠陥検査装置を半導体ウェーハの欠陥検査に適用した場合を例に説明する。
【0003】
半導体製造工程では、半導体ウェーハ上に異物や欠陥(ショートや断線等)が存在すると、配線やキャパシタの絶縁不良や短絡,ゲート酸化膜等の膜破損等の原因となり、半導体デバイスの不良原因になる。そのため、半導体デバイスの歩留まり向上には、製造工程において半導体ウェーハ上の異物や欠陥を迅速かつ的確に検出することが重要になる。
【0004】
半導体ウェーハ上の異物や欠陥を検出する技術として、一般に、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)式検査技術や光学式検査技術が知られている。光学式検査技術には、さらに明視野検査技術と暗視野検査技術とがある。明視野検査技術では、対物レンズを通して半導体ウェーハを照明し、その反射・回折光を対物レンズで集光する。この集光された反射・回折光は検出器で光電変換され、その信号処理の結果に基づいて異物や欠陥を検出する。一方、暗視野検査技術では、対物レンズのNA(Numerical Aperture:開口数)外から半導体ウェーハを照明し、その散乱光を対物レンズで集光する。この集光された散乱光は検出器で光電変換され、その信号処理の結果に基づいて明視野検査技術の場合と同様に異物や欠陥を検出する。
【0005】
特許文献1には、上述した光学式の暗視野検査技術に係り、半導体ウェーハ上に検査光としてレーザー光を照射して異物や欠陥からの散乱光を検出し、直前に検査した同一品種の半導体ウェーハの検査結果と比較することにより、パターンによる虚報を無くし、高感度かつ高信頼度な異物及び欠陥検査を可能にする方法が開示されている。また、特許文献2〜4には、異物や欠陥を検査する技術として、半導体ウェーハに検査光としてコヒーレント光を照射してウェーハ上の繰り返しパターンから発生する光を空間フィルタで除去し、繰り返し性を持たない異物や欠陥を強調して検出する方法が開示されている。
【0006】
このような光学式検査技術では、半導体ウェーハの表面に各チップを構成するパターンが形成されている場合、通常、検出した反射・回折光又は散乱光の強度から検査部分の画像信号を作成し、この画像信号を隣接するチップの対応部分の画像信号又は予め用意した良品のチップの対応部分の画像信号と比較して、両者の相違がしきい値以上である場合に検査部分を異物や欠陥と判定している。従来、このしきい値は、チップ内の画素毎にチップ間で生じるばらつき(標準偏差)を考慮して算出したものであり、チップ間でのばらつきの小さな領域は低いしきい値を、チップ間でのばらつきの大きな領域は高いしきい値をそれぞれ用いて、異物や欠陥があるか否かの判定に使用している。
【0007】
また、半導体プロセスの成膜工程の検査では、半導体ウェーハの処理枚数を優先するため、検査光であるレーザー光の半導体ウェーハ上における照射範囲(照射スポット)を拡げ、1スキャン当たりの検出器(センサ,すなわち検出光学系)による情報取り込み量の多い検査を実施している。このような1スキャン当たりの検出器による情報取り込み量の増大をはかった欠陥検査では、検出器に取り込まれる反射・回折光又は散乱光の形態は、検査光の照射範囲内での照度分布に大きな影響を受ける。つまり、検出器において、レーザーの照射範囲内の中央部分からの光を取り込む画素は、その検出する画像信号のレベルが高く、レーザーの照射範囲内の周縁側部分からの光を取り込む画素は、その検出する画像信号のレベルが中央部分に比して小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−89336号公報
【特許文献2】特開平1−117024号公報
【特許文献3】特開平4−152545号公報
【特許文献4】特開平5−218163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した欠陥検査では、致命的では無く歩留まりに影響しないのに判別される擬似欠陥を無くすため、異物や欠陥があるか否かの判定に使用するしきい値は、検出器の中央部分の画素による信号レベルに合わせて、チップ内の画素毎に対応してチップ間で生じるばらつき(標準偏差)を考慮して設定される。しかしながら、そのしきい値は、チップ内の画素毎に対応してチップ間で生じるばらつきを考慮したものであるに過ぎない。
【0010】
そのため、1スキャン当たりの検出器の情報取り込み量の増大をはかった欠陥検査の場合、検査光の照射範囲内の周縁側部分からの反射・回折光又は散乱光を取り込む検出器の周縁側部分の画素では、設定の際に基準とした中央部分の画素によりも画像信号のレベルは検査光の照射範囲内の照度分布により低くなるため、検出すべき異物や欠陥の信号レベルが低くなり、異物や欠陥の見逃しが発生している虞があった。
【0011】
また、検出した反射・回折光や散乱光を集光する対物レンズ等の検出系の特性や,検出系の光学部品の劣化によっても、検出器の周縁側部分の画素による画像信号のレベルが変化して低くなることがあり、このような場合も異物や欠陥の見逃しが発生している虞があった。
【0012】
この結果、従来のチップ内の画素毎に対応してチップ間で生じるばらつき(標準偏差)だけを考慮して算出したしきい値では、前述した検査光の照射範囲内の照度分布の影響に基づく検出器の中央部分と周縁側部分との画素間の画像信号のレベルの違いや、検出系の特性の違いや光学部品の劣化による検出器の周縁側部分の画素による画像信号のレベル変化が考慮されていないため、検査結果の精度と、信頼性に問題があった。
【0013】
本発明は、上述した問題に鑑み、検出器の周縁側部分の画素についても検出器の中央部分の画素と同等の異物や欠陥の検出を可能とし、検査光の照射範囲を拡げた1スキャン当たりの検出器による情報取り込み量が多い検査であっても、検査結果の精度と信頼性との向上をはかることができる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、欠陥検査装置に係り、検出器(検出光学系)の中央部分と周縁側部分との画素間の画像信号のレベルの違いや、検出系の特性の違いや光学部品の劣化によって検出器の周縁側部分の画素による画像信号のレベルが変化してしまった場合であっても、これらの現象に適応させて、検出器の各画素の画像信号に対応させた欠陥判別のためのしきい値を的確かつ容易に設定できるようしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検出器に取り込まれる光の照度分布を装置の記憶装置へ取り込み、取り込んだデータを基に、検出器の画素毎にしきい値を算出できる。また、検査結果データから、しきい値係数の変更による検査結果の再計算も可能とし、GUI上に表示させ、検出欠陥の観察を行うこともできる。さらに、複数のしきい値係数の再計算も可能とし、GUI上に複数個の検査結果マップを表示することも可能となる。
【0016】
本発明によれば、検出器の周縁側部分の画素の画像信号を用いて検出することになる、検査光の照射範囲内の周縁側部分の試料領域に生じた異物や欠陥の見逃しを低減させることが可能になり、欠陥検査における検査結果の精度と信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の欠陥検査装置の一実施の形態としてのパターン欠陥検査装置の概略構成図である。
【図2】本実施の形態のパターン欠陥検査装置の検査光の走査についての説明図である。
【図3】本実施の形態のパターン欠陥検査装置による検査条件の作成処理のフローチャートである。
【図4】図3に示したしきい値の設定処理の詳細を示したフローチャットである。
【図5】しきい値の設定処理のためのアシストツール画面の一実施例である。
【図6】取得データの記憶装置における格納例を示した図である。
【図7】観察用のアシストツール画面の一実施例である。
【図8】効果についての対照表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の欠陥検査装置の一実施の形態としてのパターン欠陥検査装置の概略構成図である。
【0019】
図1において、パターン欠陥検査装置1は、照明手段10と、検出手段20と、試料ステージ30と、Xスケール40と,Yスケール50と、処理装置100とを備えて、大略構成されている。
【0020】
照明手段10は、例えば、検査光として所定波長のレーザー光を発生するレーザー装置であり、検査光を検査対象の試料である半導体ウェーハ2の表面へ照射する。図示の例では、照明手段10は、検査光を半導体ウェーハ2の表面に斜めに所定の角度、照明仰角θで照射する構成になっている。この照明手段10としてのレーザー装置は、検査対象の試料としての半導体ウェーハ2の処理枚数を優先させるため、半導体ウェーハ2の表面上に対してレーザー光の照射範囲を拡げて照射する構成になっている。
【0021】
検出手段20は、フーリエ変換レンズ21及び逆フーリエ変換レンズ22と、フーリエ変換レンズ21のフーリエ変換面に配置した空間フィルタ23と、TDIセンサ24と、フーリエ変換面観察用手段25とを備えている。なお、図示の例では、検出手段20は、検査対象の試料としての半導体ウェーハ2の直上に位置するように配置しているが、半導体ウェーハ2の斜め上方に位置するように配置してもよい。
【0022】
フーリエ変換レンズ21及び逆フーリエ変換レンズ22は、レーザー装置10から半導体ウェーハ2にレーザー光(検査光)を照射することにより、その照射範囲内のパターン(回路パターン),欠陥,異物からの散乱光を、検出器としてのTDIセンサ24のセンサ面に結像させる。フーリエ変換レンズ21は、半導体ウェーハ2の繰り返しパターンからの回折像をそのフーリエ変換面に結像させる。逆フーリエ変換レンズ22は、何本かの個別に倍率を有する逆フーリエ変換レンズを任意で切り替え可能な機構になっており、試料である半導体ウェーハ2の種類、又は検出したい異物や欠陥の大きさに応じてその検出感度を変更できる構成になっている。
【0023】
フーリエ変換面観察手段25は、フーリエ変換レンズ21のフーリエ変換面の像を観察するためのものである。フーリエ変換面観察手段25は、例えば、TDIセンサ24への光路中に出し入れ可能に配置された光路切り替え部(ビームスプリッタ)で光路を分岐し、レンズを介してフーリエ変換レンズ21のフーリエ変換面の像、すなわち半導体ウェーハ2の繰り返しパターンからの回折像を撮像して観察できる構成になっている。
【0024】
空間フィルタ23は、フーリエ変換レンズ21と逆フーリエ変換レンズ22との間のフーリエ変換面で、ウェーハ上の繰り返しパターンから発生する散乱光が逆フーリエ変換レンズ22を介してTDIセンサ24に入力するのを除去する。空間フィルタ23は、ウェーハ上に照射された検査光によるパターン,欠陥,異物からの散乱光のうち、異物や欠陥からの散乱光以外であるパターン上の繰り返しピッチに応じたX−Y方向(図1に図示)に結像した回折光の間隔に合わせて回折光を遮光できるように、X−Y方向それぞれの間隔及び位置を任意で切り替える機構を有している。
【0025】
TDIセンサ24は、TDI(Time Delayed Integration)方式のCCDイメージセンサで、そのセンサ面は複数の光電変換素子が配列されて形成され、各光電変換素子が画素を形成する構成になっている。これにより、TDIセンサ24では、試料の移動方向に積分段数だけ電荷を積算することにより、段数に比例する感度向上及びノイズの軽減を実現した検査対象試料の画像を生成することができる。そのために、TDIセンサ24では、試料の移動速度が一定である必要がある。また、試料の移動速度と画像取り込みタイミングを同期させる必要がある。
【0026】
このように構成された検出手段20によって、照明手段10によって検査光を照射されたウェーハ上の繰り返しパターンからの散乱光は、フーリエ変換レンズ21のフーリエ変換面で繰り返しパターンピッチに対応した回折像を結ぶ。これに対し、ウェーハ上の異物や欠陥からの散乱光は、フーリエ変換レンズ21のフーリエ変換面では結像しない。これにより、フーリエ変換面での回折光を空間フィルタ21によって遮光することで、ウェーハ上に形成されたパターンからの散乱光の大部分を遮光し、一方で欠陥や異物からの散乱光を大部分通過させることができる。この結果、半導体ウェーハ2に形成されたパターンからの散乱光を除去し、異物や欠陥からの散乱光のみをTDIセンサ24に結像でき、高いS/N比で異物や欠陥の画像信号を得ることが可能となる。
【0027】
検査対象の試料として、表面にチップ8,・・・が形成された半導体ウェーハ2は、試料ステージ30の試料ホルダ上に搭載される。試料ステージ30はステージ移動機構の作動によってX方向及びY方向の2次元移動が可能な構成になっている。この試料ステージ30の2次元移動に伴い、試料ホルダ上に搭載された半導体ウェーハ2及びそのチップ8,・・・は、図1に示すX−Y座標系上の任意の座標位置に移動位置できるようになっている。これにより、この試料ステージ30が逆X方向及び逆Y方向へ移動することによって、照明手段10から照射された検査光がウェーハ1の表面をX方向及びY方向に走査できる構成となっている。
【0028】
図2は、図1に示したパターン欠陥検査装置の検査光の走査についての説明図である。
図2において、半導体ウェーハ2を搭載した試料ステージ30が、図中に示したX軸方向に沿って矢印S2方向(逆X方向)へ移動すると、照明手段10から照射された検査光が、ウェーハ1上に形成されたチップ8a,8b,8c,8dの表面を矢印S1で示す方向(X方向)に相対移動し、X軸方向の1ラインの検査光の照射走査が行われる。
【0029】
図1に戻り、このように構成された試料ステージ30には、図に示すように、半導体ウェーハ2を搭載した試料ホルダの2次元移動位置を計測するためのXスケール40及びYスケール50が備えられている。
【0030】
Xスケール40及びYスケール50は、例えばレーザースケール等を用いて構成され、半導体ウェーハ2を載せた試料ステージ30のX方向移動位置及びY方向移動位置をそれぞれ検出して、その位置情報を次に述べる処理装置100の座標管理装置140へ出力する。
【0031】
処理装置100は、A/D変換器110と,画像処理装置120と,異物・欠陥判定装置130と,座標管理装置140と,検査結果記憶装置150と,検査結果表示装置160と,入力装置170と、結果処理装置180とを備えている。
【0032】
A/D変換器110は、検出手段20のTDIセンサ24から入力するアナログ信号の画像信号を、デジタル信号の画像信号に変換して出力する。
【0033】
画像処理装置120は、画像比較回路121と、しきい値演算回路122と、しきい値格納回路123とを備えている。
【0034】
画像比較回路121は、例えば遅延回路と差分検出回路とを備えており、検出手段20で検出された検査エリアの画像信号を参照エリアの対応画素の画像信号と比較して両者の差分を検出する比較手段としての役割を果たす。この場合、遅延回路は、A/D変換器110から画像信号が入力され、これを遅延することにより、図2に示した走査で、例えば現在検査光が照射されている検査エリアの1つ前の既に検査光の照射が終了した検査エリアの画像信号を、参照エリアの対応画素の画像信号として出力する。そして、差分検出回路は、A/D変換器110からの現在検査光が照射走査されている検査エリアの画像信号と遅延回路からの参照エリアの画像信号とが入力され、両者の差分を検出して出力する。これにより、画像比較回路121は、検査エリアとこれに隣接する参照エリアの画像信号を比較することができる。この比較によって、検査エリアの表面に異物や欠陥が存在する場合は、これら異物や欠陥で散乱した散乱光が検査エリア及び参照エリアにそれぞれ対応した隣接するチップ相互の画像信号の差分となって現れる。
【0035】
なお、画像比較回路121に、遅延回路の代わりに予め参照エリアの画像として用意した良品チップの画像信号のデータを記憶したメモリ回路を備えておき、検出手段20で検出された検査エリアの画像信号をこの良品の検査エリアの画像信号と比較して、両者の差分の検出を行う構成としても良い。
【0036】
しきい値演算回路122は、例えばTDIセンサ24に取り込まれる光の照度分布を基にして、検査エリアと参照エリアとの画像信号の差分を比較するためのしきい値を演算するしきい値演算手段である。
【0037】
しきい値格納回路123は、しきい値演算回路122から入力されるしきい値を、後述する座標管理装置140から入力される検査エリアの座標情報に対応付けて保存するための回路である。
【0038】
一方、欠陥判定装置130は、判定回路131と、係数テーブル132,133とを備えて構成されている。
【0039】
係数テーブル132,133には、画像処理装置120から欠陥判定装置130に入力される、画像処理装置120のしきい値演算回路122で演算されたしきい値を変更するための係数が、ウェーハ上の座標情報と対応付けられて格納されている。係数テーブル132,133は、後述する座標管理装置140から入力される座標情報を基に、その座標情報に対応付けられて格納されている係数を呼び出し、判定回路131へ出力する。この係数テーブル132,133に格納されている係数は、座標情報を基に呼び出されて判定回路131に出力された際に、判定回路131において、画像処理装置120のしきい値格納回路123から入力される対応座標のしきい値に乗じられる。これにより、例えば多数の同一製品を検査する場合、過去の検査・分析データの蓄積から、欠陥の生じ易い検査エリア内の箇所或いはウェーハ上の箇所(エッジ近傍等)とそうでない箇所とで、判定回路131においては、その欠陥判定に用いられるしきい値が係数テーブル132,133それぞれに格納されている係数を用いて柔軟に調整される構成になっている。
【0040】
判定回路131には、画像比較回路121からの検査エリアと参照エリアとの対応画素の画像信号の差分信号と、しきい値格納回路123から読み出された対応画素のしきい値データと、係数テーブル132,133から入力された対応画素のしきい値変更用の係数が入力される。判定回路131は、まず、画像処理装置120のしきい値格納回路123から入力された対応画素のしきい値に係数テーブル132、133から入力される対応画素の係数を乗じて、画像比較回路121からの対応画素の画像信号の差分信号に適用する判定用しきい値を作成する。そして、画像比較回路121からの対応画素の画像信号の差分信号とこの作成した対応画素の判定用しきい値とを比較し、その比較結果に基づき欠陥の有無を判定する。ここでは、差分信号が判定用しきい値以上である場合に当該画素の差分信号が異物や欠陥からの散乱光によるものと判定し、その検査結果を検査結果記憶装置150へ出力する。その際、判定回路131は、判定に用いた判定用しきい値の情報も検査結果記憶装置150へ併せて出力する。
【0041】
座標管理装置140は、Xスケール30及びYスケール40から入力した試料ステージ30の移動位置情報、すなわち検査光であるレーザー光の半導体ウェーハ2上における照射範囲(照射スポット)移動位置情報に基づき、ウェーハ上の現在レーザー光が照射されている検査対象位置のX座標及びY座標を検出して、その座標情報を、画像処理装置120や欠陥判定装置130,及び検査結果記憶装置150にそれぞれ出力する。この座標管理装置140には、検査に際して、ウェーハ1上のレーザー光を照射走査する各検査エリアの配置情報が記憶されている。その上で、座標管理装置140に記憶された各検査エリアの配置情報に対応して、検査エリア毎の検査対象位置のX座標及びY座標が、前述したように画像処理装置120や欠陥判定装置130,及び検査結果記憶装置150にそれぞれ出力される。
【0042】
検査結果記憶装置150は、欠陥判定装置130から入力される検査結果と、座標管理装置140から入力される対応画素の座標情報とを対応付けて記憶する。その際、検査結果記憶装置150は、欠陥判定装置130から併せて入力される前述した判定用しきい値の情報を、対応画素の検査結果又は座標情報と対応付けて記憶する。また、検査結果記憶装置150は、チップレイアウト及びチップ内座標に対応付けしたフーリエ変換面観察用手段23での撮像した像、及び入力装置170から入力したチップレイアウト及び当該チップレイアウトに対応付けしたパターンピッチも対応付けて記憶する。
【0043】
入力装置170は、例えばチップレイアウト及び当該チップレイアウトに対応付けしたパターンピッチを入力したり等、欠陥検査における各種設定や操作指示を行うためのものである。この入力装置の一例としては、検査対象の試料に関する情報等を取得するための機器や、OSD(On-Screen Display)表示された画面上のGUI(Graphical User Interface)及びその操作機器、等が該当する。
【0044】
結果処理装置180は、例えば検査結果記憶装置150に記録されているチップレイアウトに対応付けしたパターンピッチから回折光ピッチの演算を行う等、欠陥検査における各種演算処理や各種設定処理を行う処理部として機能する。また、結果処理装置180は、パターン欠陥検査装置1の装置各部を制御する制御部としても機能する。
【0045】
検査結果表示装置160は、検査結果記憶装置150に格納されている検査結果情報を表示する等、欠陥検査に係る各種情報を表示する。検査結果表示装置160は、例えば、フーリエ変換面観察用手段23での撮像した像や、後述するしきい値の設定用のGUI画面を表示したり等もする。
【0046】
なお、パターン欠陥検査装置1では、結果処理装置180が欠陥検査における各種演算処理や各種制御処理を行う構成としたが、さらに、これら各種処理及び各種制御を分担して行う外部計算装置を備えている構成であってもよい。
【0047】
次に、上記構成のパターン欠陥検査装置における検査条件の作成処理について、図3を基に説明する。
【0048】
図3は、本実施の形態のパターン欠陥検査装置による検査条件の作成処理のフローチャートである。
【0049】
検査条件の作成に当たって、ステップS10で、まず、パターン欠陥検査装置1の処理部として機能する結果処理装置180は、作業者による検査条件の作成指示に基づき、検査対象の半導体ウェーハ2を試料ステージ30の試料ホルダ上にロードする。
【0050】
次のステップS20では、結果処理装置180は、このロードした半導体ウェーハ2のウェーハサイズ,チップサイズ,ウェーハマトリクス,アライメントチップ等といった標準的な設定情報を入力装置170から入力し、検査結果記憶装置150に品種ファイルとして記憶する。
【0051】
次にステップS30では、結果処理装置180は、検査結果表示装置160に検査条件作成のためのGUI画面をOSD表示し、このGUI画面に基づいて欠陥検査に関わる検査条件の設定、例えば、照明仰角,照明角度,検査倍率,ステージスピード,レーザーパワーの設定(ステップS30a)や、空間フィルタ,しきい値の設定(ステップS30b)等を作業者に行わせるようにし、作業者によるこれらの検査条件の設定が完了すると、これらを工程ファイルとして検査結果記憶装置150に記憶する。なお、この工程ファイルについては、ロードした半導体ウェーハ2に対して、複数の工程ファイルを作成して記憶しておくことも可能である。
【0052】
ステップS40では、結果処理装置180は、作業者による工程ファイルの作成が完了すると、この作成した品種ファイルと1又は複数の工程ファイルとによって設定された条件を使用し、ロードした半導体ウェーハ2の欠陥検査を画像処理装置120,欠陥判定装置130,座標管理装置140を用いて実施し、検査対象の半導体ウェーハ2の生じた異物や欠陥の観察を行う。
【0053】
ステップS50では、結果処理装置180は、この欠陥検査の実施によって得られた観察結果を検査結果表示装置160に表示し、この観察結果を基に、観察された異物や欠陥が、歩留まりに影響を与える欠陥であるのか、又は歩留まりに影響を与えない擬似欠陥であるのかの判定を、作業者に行わせる。
【0054】
この観察の結果、検出した異物や欠陥の中、致命的では無く歩留まりに影響しない擬似欠陥が多数含まれるような場合には、結果処理装置180は、作業者の指示に基づいて、しきい値等の検査条件を含む工程ファイルを画像処理装置120,欠陥判定装置130,座標管理装置140を用いて作成し直し(ステップS30)、再びこの変更された工程ファイルに基づいて半導体ウェーハ2の欠陥検査を実施することになる(ステップS40)。したがって、パターン欠陥検査装置1では、異物や欠陥についての擬似が無くなるまでステップS30からステップS50までの処理並びに作業が繰り返されることになる。
【0055】
これに対して、ステップS30からステップS50の処理の結果、擬似欠陥の検出が無くなった、又は擬似欠陥が検出されてもそれが異物や欠陥の検出に与える影響が無くなった場合には、結果処理装置180は、作業者の指示に基づいて、検査条件の作成処理を終了させる。その際、結果処理装置180は、ステップS50からステップS60へ進み、半導体ウェーハ2を試料ステージ30の試料ホルダからアンロードし、検査条件の作成処理を終了する。
【0056】
次に、この検査条件の作成処理に係り、ステップS30bで示されたしきい値の設定処理について、図4,図5に基づいて説明する。
【0057】
図4は、図3のステップS30bに示したしきい値の設定処理の詳細を示したフローチャットである。
【0058】
図5は、このしきい値の設定処理を行う際に、検査結果表示装置に表示されるしきい値の設定処理のためのアシストツール画面の一実施例である。
【0059】
図4のステップS3100に示す光の強度分布の取り込み処理では、パターン欠陥検査装置1の処理部として機能する結果処理装置180は、図3のステップS30bに示すしきい値の設定処理に移行すると、図5に示すしきい値の設定処理のためアシストツール画面(GUI)500を検査結果表示装置160に表示し、その処理を開始する。
【0060】
このアシストツール画面(GUI)500で、その取り込み範囲設定エリア510に設けられた画像取得ボタン511が作業者によってクリック操作されると、結果処理装置180は、画像処理装置120,欠陥判定装置130,座標管理装置140を用いて、ウェーハ上の任意の範囲に図3のステップS30aで設定された検査倍率,レーザーパワー等でレーザー光を照射し、その際の散乱光に基づいたTDIセンサ24のデジタル化された画像信号をA/D変換器110から画像処理装置120に取り込む。
【0061】
この取り込み処理では、散乱光は複数の光電変換素子が配列配置されてなるTDIセンサ24の全画素でそれぞれ画像信号として取り込まれる。結果処理装置180は、この画像信号を、取り込み方向に対して、検査光の主走査方向に該当するX方向のTDIセンサ24の画素については例えば100画素分、検査光の副走査方向に該当するY方向のTDIセンサ24の画素については全画素で画像信号を画像処理装置120のしきい値演算回路122に取り込む。次に、結果処理装置180は、この取り込みを行った画像信号に基づく観察画像を、アシストツール画面500の取り込み位置設定エリア510内の表示領域512に表示する。作業者は、この表示領域512に表示された観察画像から、異物及び欠陥についての画像信号の取り込みを実施する領域を観察画像上の任意の範囲で選択する。この任意の範囲の領域の選択は、アシストツール画面500の表示領域512の観察画像上に選択フレーム514を配置することによって行われる。その際、選択フレーム514で選択された領域については、取り込み位置設定エリア510内の位置表示部513に、この領域の対角する頂点のウェーハ上の座標が開始位置[Xstart,Ystart],終了位置[Xend,Yend]として表示される。この領域の選択に当たって、作業者は、検査エリアと同一のパターンのエリアを選択する。これは、選択する領域の違いによって画像信号の差を発生させないためである(ステップS3101)。
【0062】
次に、結果処理装置180は、画像処理装置120,欠陥判定装置130,座標管理装置140を用いて、この選択した領域でTDIセンサ24の取り込み方向(X方向及びY方向)の画素数が画像処理装置120に全て取り込まれるように、TDIセンサ24の画素毎のデジタル化された画像信号の取り込みを複数回実施する(ステップS3102)。結果処理装置180は、この取り込み後は、TDIセンサ24のY方向の画素毎にX方向の画素それぞれの画素信号のレベルを平均値化した画像信号を、検査結果記憶装置150のしきい値設定用テーブル151にY方向の画素番号(画素No.)順に格納する(ステップS3103)。
【0063】
図6は、取得データの記憶装置における格納例を示した図である。
この場合、検査結果記憶装置150のしきい値設定用テーブル151には、選択された領域のY方向の画素毎の画像番号に対応付けて、X方向の画素それぞれの画像信号のレベルを平均値化した画像信号と、後述する画像信号比とが記憶される構成になっている。
【0064】
そして、結果処理装置180は、上述した光の強度分布の取り込み処理(ステップS3100)を行うと、次に、ステップS3200で示すしきい値の算出処理を行う。
【0065】
このステップS3200で示したしきい値の算出処理では、結果処理装置180は、まず、検査結果記憶装置150のしきい値設定用テーブル151に格納してあるTDIセンサ24のY方向の画素番号順の、TDIセンサ24のX方向の画素それぞれの画像信号のレベルを平均値化した画像信号を読み出し(ステップS3201)、その中で最も高い画像信号レベルを持ったY方向の画素を算出する(ステップS3202)。以降では、このY方向の画素の画素を最高画素と称し、その画像信号レベルを最高値と称す。
【0066】
次に、結果処理装置180は、画像処理装置120のしきい値演算回路122を用いて、このTDIセンサ24のY方向の画素番号の画素毎に、そのTDIセンサ24のX方向の画素それぞれの画像信号のレベルを平均値化した画像信号のレベルを最高値と比較し、Y方向の画素の画素No.毎の画像信号比を算出する。
【0067】
この画像信号比の計算式は、Y方向の画素の画素No.毎に、
[画像信号比]=[(X方向の平均値化した)画像信号]÷[最高値]・・・(式1)
により算出される(ステップS3203)。
【0068】
したがって、Y方向の画素の画素番号毎の画像信号比は、最高画素では “1”となり、TDIセンサ24の副走査に該当するY方向の両端側の画素番号では、その画素信号のレベルがレーザー光の照射範囲での照度分布等の影響によって小さくなっているので、最高値よりもそのレベルは、図6に示すように小さくなる。
【0069】
結果処理装置180は、TDIセンサ24のY方向の画素の画素番号毎にしきい値演算回路122で算出された画像信号比を、検査結果記憶装置150のしきい値設定用テーブル151に、TDIセンサ24のY方向の画素の画素番号に対応付けて格納する(ステップS3204)。これにより、検査結果記憶装置150のしきい値設定用テーブル151では、選択された領域のTDIセンサ24のY方向の画素毎の画素番号と、X方向の画素それぞれの画素信号のレベルを平均値化した画像信号と、この画像信号比とが、図6に示したように、互いに対応付けられることになる。
【0070】
次に、結果処理装置180は、検査結果記憶装置150のしきい値設定用テーブル151に格納してある画像信号比を読み出し(ステップS3205)、しきい値演算回路122を用いて予めデフォルト値として設定されているしきい値係数xと乗算することで、最適化しきい値の算出を行う。
【0071】
ここでは、しきい値係数として、例えば、図5に示すしきい値の設定処理のためアシストツール画面(GUI)500のしきい値係数設定エリア520に示されているような「A)0(設定:OFF)」,「B)1.0(最大)」及び「C)0.7(最小)」の3種類のしきい値係数が、デフォルト値として設定されているものとして説明する。
【0072】
結果処理装置180は、これら「A)0(設定:OFF)」,「B)1.0(最大)」及び「C)0.7(最小)」の各しきい値係数について、しきい値演算回路122で、
[しきい値]=[画像信号比]×[しきい値係数] ・・・(式2)
を算出することにより(ステップS3206)、このデフォルトされたしきい値係数それぞれについて、TDIセンサ24のY方向の画素の画素番号毎に、しきい値係数に画素番号に対応する画像信号比を乗算することにより最適化しきい値が算出される(ステップS3207,S3208,S3209)。
【0073】
なお、ここでは、簡便のため、デフォルト値として設定されているしきい値係数は1つの一定値として説明したが、チップ内の画素毎に対応してチップ間で生じるばらつき(標準偏差)等を考慮してしきい値係数の値が変化し複数の値を有するような場合であっても、TDIセンサ24のY方向の画素の画素番号毎に、この複数のしきい値係数の値それぞれに画素番号に対応する画像信号比を乗算して、複数のしきい値係数の値それぞれの最適化しきい値を算出することも可能である。この方法であれば、複数の連続変化するしきい値係数の最適化しきい値も算出することができる。
【0074】
そして、結果処理装置180は、上述したしきい値の処理(ステップS3200)をしきい値演算回路122を用いて行った後、アシストツール画面(GUI)500で、そのしきい値係数設定エリア520に設けられた検査結果マップ算出ボタン521が作業者によってクリック操作されると、検査結果の算出処理を行う(ステップS3300)。
【0075】
このステップS3300で示した検査結果の算出処理では、結果処理装置180は、画像処理装置120,欠陥判定装置130,座標管理装置140を用いて、デフォルト値として設定されているしきい値係数毎にステップS3207,S3208,S3209それぞれで算出した最適化しきい値を反映して欠陥判定を実施し、しきい値係数毎に対応した検査結果を算出する。
【0076】
図示の例では、結果処理装置180は、まず、最小設定値のしきい値係数「C)0.7(最小)」から算出したTDIセンサ24のY方向の画素の画素番号毎の最適化しきい値を反映させた欠陥検査を、画像処理装置120,欠陥判定装置130,座標管理装置140を用いて実施する(ステップS3301)。なお、その際には、画像処理装置120のしきい値格納回路123には、まず、しきい値係数「C)0.7(最小)」から算出したTDIセンサ24のY方向の画素の画素番号毎の最適化しきい値を反映させたしきい値が格納されることになる。
【0077】
検査の実施によって、画像処理装置120の画像比較回路121からは、検出手段20で検出された検査エリアの画像信号を参照エリアの対応画素の画像信号と比較することで得られる、検査エリア及び参照エリアの画像信号の差分信号が出力される。また、画像処理装置120のしきい値格納回路123からは、しきい値係数「C)0.7(最小)」から算出したTDIセンサ24のY方向の画素の画素番号毎の最適化しきい値を反映させたしきい値が出力される。欠陥判定装置130では、これら画像処理装置120からの検査エリア及び参照エリアの画像信号の差分信号及びしきい値を基に異物や欠陥の判定が行われることになる。
【0078】
次に、結果処理装置180は、上記のしきい値係数「C)0.7(最小)」による検査結果を基にして、他のしきい値係数「A)0(設定:OFF)」,「B)1.0(最大)」による検査結果を算出する(ステップS3302)。この場合、結果処理装置180は、半導体ウェーハ2上へのレーザー光の照射走査を繰り返して行わなくとも、しきい値係数「A)0(設定:OFF)」,「B)1.0(最大)」それぞれから算出したTDIセンサ24のY方向の画素の画素番号毎の最適化しきい値を反映させたしきい値を、画像処理装置120のしきい値格納回路123から欠陥判定装置130に供給されるようにすることで、検査エリア及び参照エリアの画像信号の差分信号はそのまま利用することができる。
【0079】
そして、結果処理装置180は、これら算出したしきい値係数別の検査結果マップを、図5に示すように、アシストツール画面(GUI)500のしきい値係数設定エリア520上の検査結果表示画面522に表示する(ステップS3303)。
【0080】
結果処理装置180は、上述のようにして検査結果の算出処理(ステップS3300)を行うと、次に、ステップS3400で示すしきい値係数の設定処理を行う。
【0081】
作業者は、検査結果表示画面522上にそれぞれ表示されたしきい値係数毎の検査結果を観察し、擬似を除去できるしきい値係数を選択する(ステップS3300)。しきい値係数の選択は、検査結果表示画面522上で所望のしきい値係数に対応する検査結果をクリックすることで行われ、当該選択されたしきい値係数に対応する検査結果の表示は、図5に示すように、選択されなかったしきい値係数に対応する検査結果の表示に対してハイライト表示され、作業者が確認し易いようになっている。
【0082】
このようにして、検査結果表示画面522上で一のしきい値係数が選択されている状態で、作業者によってしきい値係数設定エリア520上に設けられた観察ボタン523がクリックされたのが検出されると、結果処理装置180は、図7に示す観察用のアシストツール画面(GUI)700を表示する。
【0083】
図7は、検査結果表示装置に表示される観察用のアシストツール画面の一実施例である。
【0084】
図示のアシストツール画面700では、選択したしきい値係数の検査結果が拡大表示される検査結果表示部710と、検出された異物又は欠陥それぞれのウェーハ上における所在を示すMAP情報が表示されるMAP情報部720と、アシストツール画面700上で使用される操作コマンドがGUI表示された操作コマンド部730と、検査結果表示部状で選択された所定の異物又は欠陥の明視野像が表示される観察画面部740と、この選択された所定の欠陥のパッチイメージ(暗視野像)が表示されるパッチイメージ部750と、画像信号レベル等のこの選択された所定の欠陥についての詳細情報が表示される欠陥情報部760とを有する構成になっている。
【0085】
作業者は、このような構成からなる観察用のアシストツール画面700を見て、選択したしきい値係数の検査結果の検出欠陥を詳細に観察することができる。なお、この観察用のアシストツール画面(GUI)700では、操作コマンド部の所定GUIを操作することによって、図5に示したしきい値の設定処理のためアシストツール画面500に画面表示を戻すことができる。
【0086】
一方、同様にして、検査結果表示画面522上で一のしきい値係数が選択されている状態で、作業者によってしきい値係数設定エリア520上に設けられたOKボタン525がクリックされたのが検出されると、結果処理装置180は、選択されている検査結果のしきい値係数を検査結果記憶装置150に保存する。
【0087】
また、デフォルト値として設定されているしきい値係数の中に最適な検査結果が無い場合は、アシストツール画面500のしきい値係数設定エリア520上に設けられたしきい値係数入力524よりしきい値係数を任意で数値設定ができる構成になっている。そして、設定後に、計算ボタン525がされたのが検出されると、結果処理装置180は、入力されたしきい値係数について、TDIセンサ24のY方向の画素の画素番号毎に、しきい値係数に画素番号に対応する画像信号比を乗算することにより最適化しきい値を算出し(ステップS3210,S3211)、この算出した最適化しきい値を反映して欠陥判定を実施し、しきい値係数毎に対応した検査結果を算出して(ステップS3302)、しきい値係数設定エリア520上の検査結果表示画面522に表示する(ステップS3303)。なお、このしきい値係数入力524を用いたしきい値係数の数値設定は、擬似が無くなるまで繰り返し実施することができる。また、その際には、検査結果表示画面522上には、デフォルトされているしきい値係数による検査結果の表示に代えて、しきい値係数の設定が新しい順に対応する検査結果が表示される。
【0088】
したがって、このステップS3400で示すしきい値係数の設定処理では、作業者は、検査結果表示画面522上に表示されるしきい値係数それぞれに対応した検査結果を対照しながら最適な検査結果のしきい値係数を選択し(ステップS3401)、OKボタン525をクリック操作することにより(ステップS3402)、作成中の工程ファイルに検査条件として登録することができる。
【0089】
これにより、従来の欠陥検査装置では、擬似がある場合に検査条件を変更後に、再度、試料上へレーザー光の照射走査を行って検査を実施する必要があったが、本実施の形態の欠陥検査装置によれば、上記検査ステップS3200〜S3400では、一度ステップS3100の光の強度分布の取り込み処理を実施しておけば、その後の検査条件の変更に関しては検査結果を再計算することができるため、検査条件を設定する時間を短縮することができる。また、検査条件の設定も、しきい値の設定処理のためアシストツール画面(GUI)500
を参照しながら、的確な検査条件を迅速かつ容易に設定することができる。
【0090】
次に、本実施の形態の欠陥検査装置で作成したしきい値の効果について、図8に示す対照表により説明する。
【0091】
図8において、対照表800は、現状すなわち従来のしきい値の特徴を表わした部分810と本実施の形態の欠陥検査装置で作成したしきい値との特徴表わした部分820とから構成される。
【0092】
また、各部分810,820では、横軸にTDIセンサ24の検出画素を、縦軸に対応画素の欠陥、擬似の差分信号としきい値の算出結果を表示したグラフ811,821と、検査結果マップ812,822を表示している。
【0093】
従来のしきい値の特徴を表わした部分810のグラフ811では、TDIセンサ24の検査光の副走査方向に該当するY方向のTDIセンサ24の画素に関して、レーザーの照射範囲内の周縁側部分からの光を取り込む周縁側部分の画素で、欠陥の差分信号がしきい値以下となり、欠陥の検出見逃しが発生している。
【0094】
その結果、検査結果マップ812では、TDIセンサ24の取り込み方向(検査光の副走査方向に該当するY方向)で検出のばらつきが発生している。
【0095】
これに対し、本実施の形態の欠陥検査装置で作成したしきい値によれば、しきい値は検査画像の画素毎に前述した最適化しきい値によって図示のように補正される。
【0096】
この結果、そのしきい値の特徴を表わした部分820のグラフ821では、TDIセンサ24の全ての画素で、欠陥の差分信号をしきい値以上とすることが可能になる。
【0097】
これにより、検査結果マップ822では、TDIセンサ24の取り込み方向(検査光の副走査方向に該当するY方向)での検出のばらつきが発生しない。
【0098】
以上のように、本実施の形態に係る欠陥検査装置によれば、TDIセンサに取り込まれる光の照度分布を装置の記憶装置へ取り込み、取り込んだデータを基に、TDIセンサの画素毎にしきい値を算出する。また、検査結果データから、しきい値係数の変更による検査結果の再計算も可能とし、GUI上に表示させ、検出欠陥の観察も可能とする。さらに、複数のしきい値係数の再計算も可能とし、GUI上に複数個の検査結果マップを表示することも可能となる。
【0099】
これにより、作業者は、TDIセンサで取り込む画像範囲を指定でき、それを基に算出される、複数のしきい値係数に対応した複数個の検査結果を参照して、しきい値係数の設定をすることができる。したがって、TDIセンサに取り込まれる光の照度分布に適合したしきい値を設定することができる。つまり、画像信号の低い画素でも画像信号の高い画素同様欠陥の検出が可能になる。
【符号の説明】
【0100】
1 パターン欠陥検査装置、 2 半導体ウェーハ、 8 チップ、
10 照明手段、 20 検出手段、 21 フーリエ変換レンズ、
22 逆フーリエ変換レンズ、 23 空間フィルタ、 24 TDIセンサ、
25 フーリエ変換面観察用手段、 30 試料ステージ、 40 Xスケール、
50 Yスケール、 60 処理装置、 100 処理装置、
110 A/D変換器、 120 画像処理装置、 121…画像比較回路、
122 しきい値演算回路、 123 しきい値格納回路、
130 異物・欠陥判定装置、 131 判定回路、
132,133 係数テーブル、 140…座標管理装置,
500,700 アシストツール画面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査光を検査対象へ照射し、
検査光が照射された検査対象の検査領域からの反射光又は散乱光の強度を検出器により検出し、当該検出された反射光又は散乱光の強度をしきい値と比較し、
当該比較結果に基づいて、検査対象の検査領域に存在する異物又は欠陥の有無を判定する異物及び欠陥検査装置であって、
前記検出器の検査光の副走査方向に沿った検出信号の強度分布を算出し、当該強度分布を反映した形で前記しきい値を設定するしきい値設定手段
を備えていることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記検出器の検査光の副走査方向に複数の光電変換素子が配置されて構成された検出器である
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記しきい値設定手段には、当該設定したしきい値の適否を確認するため、当該設定したしきい値を用いた検査結果を表示する確認手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記確認手段は、当該設定した複数のしきい値それぞれを用いた検査結果を対照表示する
ことを特徴とする請求項3記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−257186(P2011−257186A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130154(P2010−130154)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】