説明

止水・排水兼用栓付き保冷容器

【課題】氷が融けて保冷容器の底部に溜まった融水を、止水・排水兼用栓の摺動操作によって速やかに排出可能にするとともに、止水・排水兼用栓が紛失することを回避可能にする。
【解決手段】止水・排水兼用栓16に、容器本体11の側壁の厚みを超える長さの長孔27または長溝あるいは長孔27と長溝が連続する組合せを軸方向に設け、止水・排水兼用栓16を排水孔に沿って所定ストローク分軸方向移動させることによって、前記長孔27または長溝を通じて前記容器本体11内の融水を排出可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果や魚介類などの生鮮食品を氷温保冷状態で梱包および搬送するのに用いられる保冷容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、青果や魚介類などの生鮮食品を氷温保冷状態で梱包および搬送するのに、発泡樹脂の成形品である保冷容器が広く用いられている。この保冷容器には、生鮮食品とともに保冷用の氷が収納されるが、長時間にわたる保冷や搬送中に次第に氷が融けて融水として保冷容器の底部に溜まっていき、その溜まった融水に生鮮食品が浸漬されると、鮮度の低下や雑菌による腐敗が進むこととなる。
【0003】
生鮮食品が例えばブロッコリである場合には、融水に浸漬した部分からエチレンガスが発生し、熟成状態になってしまい好ましくない。そこで保冷容器内に溜まった融水を適時に排出する方法が、例えば特許文献1に提案されている。
この保冷容器は、溜まった融水を外に排出するために内外に貫通する貫通孔と、搬送中にその貫通孔から外気が入って内部温度が上昇するのを防止するために、その貫通孔に差し込まれて内部を密封するための止水栓とを有する。
【0004】
この保冷容器では、搬送の中継点などで止水栓を貫通孔から抜いて、内部に溜まった氷の融水を外部に排出し、排出後に再び止水栓で貫通孔を塞ぐことにより、氷温保冷状態を保持しながらブロッコリの鮮度低下や雑菌による腐敗を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4071079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の保冷容器は、解決すべき以下の問題を有している。
即ち、保冷容器の内外に貫通する貫通孔に対し抜き差しされる止水栓は、保冷容器の容器本体とは独立して用意され、この保冷容器に対し抜き差しするように用いられるため、生鮮食品を保冷容器に収納する前後の作業中に置き忘れなどによって紛失してしまうことが多々あった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送時間が長い場合等に、保冷用の氷が融けて保冷容器の底部に溜まった融水を、止水栓としての止水・排水兼用栓を軸方向に摺動操作することで速やかに排水可能にするとともに、排出後は逆方向に軸方向摺動操作して元の位置に摺動させることで、速やかに止水可能にし、かつ融水の止水操作や排出操作の前後に置き忘れなどによって止水栓としての止水・排水兼用栓が紛失することをなくすることができる保冷容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明にかかる止水・排水兼用栓付き保冷容器は、生鮮食品を保冷用の氷とともに収納する発泡合成樹脂からなる容器本体と、該容器本体に着脱自在に装着されて前記容器本体を密閉する蓋体と、を備え、
容器本体には、側壁下部に内外に貫通して該容器本体内に溜まった氷の融水を排水する排水孔が設けられ、該排水孔には長軸状の止水・排水可能な止水・排水兼用栓が摺動可能に装着され、該止水・排水兼用栓は、排水孔に挿入される軸部に、容器本体側壁の厚みを超える長さの長孔または長溝あるいは長孔と長溝が連続する組合せが軸線方向に設けられ、前記排水孔に沿って所定ストローク分、軸線方向に前後摺動させることによって前記排水孔を開閉可能となっていることを特徴とする。
【0009】
この構成により、止水・排水兼用栓を容器本体の排水孔に差し込んで取り付けておくことにより、蓋体で覆われた容器本体の内部を密閉状態に保ち、その容器本体の内部に保冷用の氷とともに収納された生鮮食品を所定の氷冷温度下に置くことができる。一方、長時間の搬送などによって前記保冷用の氷が徐々に融け出すが、この場合にはその融け出した融水量が所定量となるタイミングを見計らって、排水孔に差し込まれている止水・排水兼用栓を、その排水孔内で、例えば抜き方向に所定のストローク長分摺動させる。
【0010】
この止水・排水兼用栓の摺動によって、この止水・排水兼用栓に形成された長孔または長溝あるいは長孔と長溝が連続する組合せの少なくとも両端部が容器本体の側壁の内外にそれぞれ同時に連通することとなる。このため、容器本体内の底部に、前述のように融けて溜まった融水がその長孔または長溝あるいは長孔と長溝が連続する組合せを通じて容器本体外に自然に流れ出る。これにより、容器本体内において生鮮食品が融水に直接接触することによって、鮮度劣化を招くことを未然に回避できる。
【0011】
一方、容器本体内から融水を排出した後は、直ちに止水・排水兼用栓を排水孔内に深く押し込んで、前記長孔や長溝あるいは長孔と長溝が連続する組合せが前記側壁の外に臨まない位置まで摺動させる。これにより、排水孔を密閉して止水できると共に、容器本体内への外気の浸入が阻止されて、外気による容器本体内の温度上昇を回避できる。従って、保冷容器内を再び氷温保冷状態に保って、生鮮食品の鮮度が長時間に亘って良好に維持される。
【0012】
また、止水・排水兼用栓は排水孔内を摺動するのみであり、排水孔に対し着脱されることはない。止水・排水兼用栓は排水孔内で摺動することで前記融水の排水および止水を選択的に実施可能となる。この結果、止水・排水兼用栓を排水操作や止水操作の前後に亘って置き忘れをして、紛失してしまうという問題発生を確実に回避することができる。
【0013】
また、本発明に係る止水・排水兼用栓付き保冷容器の前記止水・排水兼用栓の長溝は、水流が誘導されやすい断面弧状で、一端側底面はテーパ状となって軸部外周面に連続していることを特徴とする。
【0014】
この構成により氷の融水を排水する水流が良好となり、排水と共に異物(例えば、ブロッコリーの花蕾屑)をもスムーズに排出できる。
【0015】
また、本発明の止水・排水兼用栓付き保冷容器における前記容器本体の排水孔の位置する内側底部には、排水孔に装着された止水・排水兼用栓の内側に延出した部分を、両側より囲むように1対の突起が並行して設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成により搬送中の揺れによって内容物が移動しても、内容物が容器本体内に延出する止水・排水兼用栓に接触することが防止でき、従って、内容物の移動によって内容物の止水・排水兼用栓との接触で装着の正位置からズレてしまい、排水孔内壁との密着度が緩み水漏れが起きることを防止できる。
【0017】
さらに、本発明の止水・排水兼用栓付き保冷容器は、前記止水・排水兼用栓の軸部の一端側には環状の摘み部が設けられ、該環状の摘み部は、長溝または長孔の延長線上にカット部を有することを特徴とする。
【0018】
この構成により止水・排水兼用栓を保冷容器に装着した時、長孔や長溝の位置が軸部のどの側面に位置しているのか確認できると共に、万一、抜き取って置く時にも、カット部により転がりが防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、搬送時間が長い場合等に、保冷用の氷が融けて保冷容器の底部に溜まった融水を、止水・排水兼用栓を摺動操作することで速やかに排出可能にするとともに、排出後は速やかに止水・排水兼用栓を元の位置に摺動させることで排水を停止可能にし、かつ融水の止水や排出の作業の前後に亘り止水・排水兼用栓が紛失することを回避できる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態による保冷容器を分解して示す斜視図である。
【図2】図1における保冷容器の内部構成を、一部を破断して示す斜視図である。
【図3】図1における保冷容器の内部構成を、一部を破断して示す斜視図である。
【図4】止水・排水兼用栓の実施形態を例示(a)(b)(c)する斜視図である。
【図5】図1における止水・排水兼用栓の動作の前後の状態(a)(b)を示す要部の断面図である。
【図6】図1における保冷容器にブロッコリを収納した状態を示す斜視図である。
【図7】図1における保冷容器にブロッコリを収納した状態を示す断面図である。
【図8】本発明における他の止水・排水兼用栓を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態にかかる保冷容器を、図1乃至図8を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は本実施形態の止水・排水兼用栓付き保冷容器の全体を示す分解斜視図である。この止水・排水兼用栓付き保冷容器(以下、単に保冷容器とも称す。)Aは、容器本体11と、蓋体12とからなる。容器本体11および蓋体12はポリスチレン等の合成樹脂の発泡体によって成形され、いずれも平面視では矩形をなすとともに、所定の強度をもつ肉厚サイズに形成されている。
【0024】
容器本体11の対向する側壁13には、保冷容器Aの搬送時に人の手を掛けることができる略矩形の凹部14が形成され、これらのうち、一方の凹部14の下部に、側壁13の内外に水平方向に貫通する丸形の排水孔15が形成されている。この排水孔15には 、例えばゴム、金属、合成樹脂などからなる止水・排水兼用栓16が差し込まれ、差し込まれた後は、その排水孔15内で軸方向摺動可能に支持されている。この止水・排水兼用栓15は排水孔15に差し込まれた後は、その排水孔15に対し軸方向摺動自在であるが、この排水孔15から引き抜きが不可能な構成(たとえば軸部先端に抜け止め用の突起やフランジなどを突設した構成)とすることが望ましい。
【0025】
一方、容器本体11は、図2および図3に示すように、底面中央部に所定幅に亘って緩やかに円弧状に突出する突出部17を有する。この突出部17の両脇には集水溝18がそれぞれ形成されている。そして、突出部17は前記排水孔15付近にいたる部分で先細となり、この部位では両脇の集水溝18が合流して排水孔15に連続する集水部19となっている。この集水部19は、容器本体11内の底面より低位置とし、排水孔15に連結するようにすると、容器本体11内の氷の融水は集水溝18から確実に集水部19に流れ込み排水孔15より完全に排水されるようになるので好ましい。
【0026】
この集水部19には排水孔15の孔径に略合致する間隔をおいて、一対の突起20が立設されている。これらの突起20は、止水・排水兼用栓16を排水孔15に対して真直ぐにかつスムースに装着および往復摺動可能にしている。また、この一対の突起20は、排水孔15に差し込まれ容器本体11内に延出(進入)した部分に、内容物が接触するのを防止し、従って、内容物が搬送中の揺れで移動して容器本体11内に延出した止水・排水兼用栓に接触して装着の正位置からズレてしまい排水孔15の内壁との密着度が緩み水漏れが起きることを防止できる。これにより、止水・排水兼用栓16と排水孔15との密接状態を良好にし、結果として水漏れを確実に防止可能にしている。
【0027】
また、容器本体11の上端縁には、蓋体12の装着時に蓋体12の嵌合段部12a(図7を参照。)に係合する嵌合段部21が形成されている。なお、図示しないが、前記突出部17や集水溝18の形状や個数は任意に選択して行うことができる。
【0028】
前記止水・排水兼用栓16は、例えば図4(a)に示すように構成されている。この止水・排水兼用栓16は、円形断面の軸部22に先端から摘み部23、摺動規制用のフランジ部24、円弧状の縮径部25、太径部26および長孔27を有する。
図4(b)は、他の実施の形態を示す止水・排水兼用栓を示す斜視図である。この実施の形態の止水・排水兼用栓16Aは、前記図4(a)に示す止水・排水兼用栓16の長孔27に代えて長溝31として場合であり、他は図4(a)に示す実施の形態と同様であるので、同様な構成要素には同一符号を付して説明する。
図4(c)は、更に他の実施の形態を示す止水・排水兼用栓を示す斜視図である。この実施の形態の止水・排水兼用栓16Bは、前記図4(a)に示す止水・排水兼用栓16の長孔27に代えて長孔27と長溝31が連続する組合せの構成としたものであり、他は図4(a)に示す実施の形態と同様であるので、同様な構成要素には同一符号を付して説明する。
【0029】
軸部22の外径は、前記排水孔15に密接状態で摺動可能なサイズ、例えば排水孔15の内径より1〜2ミリ程度太めに形成されている。摘み部23およびフランジ部24は軸部22よりも外形が大きめに形成されている。縮径部25は全体が軸部22より径が小さく、この縮径部25からフランジ部24にかけて軸部22の外形が、例えば波状に変化する一回り太めの太径部26とされている。これにより太径部26に対する発泡樹脂側の排水孔の密接度が自身の復元作用によって高められ、密接面積の増大とともに水漏れ防止効果が高められる。
図4(b)(c)に示す止水・排水兼用栓16A、16Bの摘み部23およびフランジ部24は環状で、長孔27または長溝31の延長線の外周にはカット部23a、24aが設けられている。この構成により止水・排水兼用栓16A、16Bを保冷容器Aに装着した時、長孔27や長溝31の位置が軸部22のどの側面に位置しているのか確認できると共に、万一、抜き取って置く時にもカット部により転がりが防止できる。
【0030】
前記長孔27、長溝31および長孔27と長溝31が連続する組合せは、容器本体11の側壁13の厚みよりも十分に大きい軸方向長を持ち、軸部22の周面に形成されている。長孔27は軸部22に一側面から他側面に向かって貫通して設けられ、長溝31は相対する一側面と他側面の2箇所に設けられている。図4(c)に示す長孔27と長溝31が連続する組合せの構成は、長孔27と長溝31を合わせた軸方向長さが、容器本体11の側壁13の厚みよりも十分大きい長さとなっている。なお、図4(a)に示す長孔27内にはこの長孔27の潰れを防止する補強リブ28が一体に設けられている。
【0031】
なお、止水・排水兼用栓16、16A、16Bは、ゴム、金属、合成樹脂などで形成されるが、保冷容器Aと同様の廃棄処理が可能な合成樹脂で形成すると、保冷容器Aから取り外すことなく保冷容器Aと一緒に廃棄処理が可能となるので好ましい。例えば、保冷容器Aを合成樹脂(例えば、ポリスチレン樹脂)の発泡体で形成した場合には、止水・排水兼用栓16、16A、16Bは、同じ非発泡体の合成樹脂(例えば、ポリスチレン樹脂)で形成する如くである。
【0032】
かかる構成の止水・排水兼用栓16は、前記側壁13に形成された排水孔15にその先端から差し込まれるようにセットされて用いられる。止水・排水兼用栓16、16A、16Bのいずれも同様な作用をするので、以下では止水・排水兼用栓16で代表して説明する。かかる止水・排水兼用栓16の排水孔15に対する図5(a)に示すような装着状態においては、容器本体11内に生鮮食品としての、例えばブロッコリ29を保冷用氷30とともに、図6および図7に示すように収納し、蓋体12を被せ、これらの開閉部をテープで封止することで、搬送を可能にする。
【0033】
このブロッコリ29を収納した保冷容器Aの搬送時間が長い場合には、保冷用の氷が融け出し、その融水が容器本体11内の突出部17上から集水溝18を伝わって集水部19に至る。この状態では、図5(a)に示すように、止水・排水兼用栓16の長孔27は全長に亘り容器本体11内にあり、太径部26が排出孔15に密接して、融水はその集水部19および底面上に滞留したままとなる。
【0034】
一方、融水が集水溝18や集水部19で滞留し、その水位が所定レベルになったと思われるタイミングで、その止水・排水兼用栓16を、図5(a)の状態から図5(b)に示すように、矢印P方向に所定量移動させる。この移動量は止水・排水兼用栓16の長孔27の少なくとも両端部が、容器本体11の側壁13の内外に同時に露出(連通)する量とする。これにより、集水部19に滞留した融水は、長孔27の一端部から他端部を通って容器本体の外に向かって(矢印Q方向)排出される。
【0035】
そして、この融水の排出が終了したタイミングで、止水・排水兼用栓16を再び排水孔15内に押し込むようにして移動させ、図5(a)の状態に戻す。これにより止水・排水兼用栓16の長孔27の全体が容器本体11内に位置することとなり、止水されると共に容器本体11内への外気の浸入が停止される。これにより、再びこの容器本体11内を所定の氷温保冷温度に保つことができる。この場合において、容器本体11内のブロッコリ29の茎の端部(茎の切り口)が前記集水溝18内に落ち込むことがないように、前記突出部17上にブロッコリ29を、例えば10個並びで2段に亘って収納することが望ましい。
【0036】
このように止水・排水兼用栓16は容器本体11内の融水の排出のために用いられるものであるが、そのために止水・排水兼用栓16は容器本体11の排水孔15から抜き取る必要がない。従って、止水・排水兼用栓16はその取り扱い中の前後であっても、従来のようにどこかに置き忘れるということがなくなり、紛失することはない。なお、必要に応じて止水・排水兼用栓16の軸部22の内端に突起やフランジなどの抜け止め用のストッパを設けることで、抜き方向への摺動操作によって止水・排水兼用栓16が排水孔15から抜け出ることを確実に防止することができる。
【0037】
図8は、図4(b)に示したものと類似する他の止水・排水兼用栓16Aを示す。この止水・排水兼用栓16Aは軸部22に容器本体11の側壁13の厚みより十分に長い4本の長溝31を有する。このため4本の長溝31は断面十字状の補強片32によって隔成されて、軸部22の外に開放されている。この止水・排水兼用栓16Aも容器本体11の側壁13に設けられた排水孔15に前記同様に装着され、各長溝31が側壁13の内外部を跨ぐように移動した際に、容器本体11内の前記融水をこれらの長溝31を通じて外へ排出させることができる。なお、前記長孔27や長溝31の形状、サイズは融水の前記排出機能を果たすものであれば、特に限定されない。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば止水・排水兼用栓16、16A、16Bに、容器本体11の側壁13の厚みを越える長さの長孔27または長溝31あるいは長孔27と長溝31が連続する組合せを設け、その止水・排水兼用栓16、16A、16Bを排水孔15に沿って所定ストローク分軸方向移動させることによって、前記長孔27または長溝31あるいは長孔27と長溝31が連続する組合せを通じて容器本体11内の融水を排出可能にしたことにより、前記長孔27または長溝31あるいは長孔27と長溝31が連続する組合せの少なくとも両端部が容器本体11の側壁13の内外にそれぞれ同時に露出(連通)する。このため、容器本体11内の底部(集水溝18や集水部19)に、前述のように氷が融けて溜まった融水がその長孔27または長溝31を通じて容器本体11外に流出させることが可能になる。これにより、容器本体11内において生鮮食品が融水に直接接触することによって、鮮度劣化することを未然に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の保冷容器は、保冷用の氷が融けて保冷容器の底部に溜まった融水を、止水・排水兼用栓を摺動操作することで速やかに排出可能にするとともに、排出後は速やかに止水・排水兼用栓を元の位置に摺動させることで止水を停止可能にし、かつ融水の止水や排出の作業の前後に亘り止水・排水兼用栓が紛失することを防止でき、青果や魚介類などの生鮮食品を氷温保冷状態で梱包および搬送するのに用いられる保冷容器等に有用である。
【符号の説明】
【0040】
A 保冷容器
11 容器本体
12 蓋体
13 側壁
14 凹部
15 排水孔
16、16A、16B 止水・排水兼用栓
17 突出部
18 集水溝
19 集水部
22 軸部
23 摘み部
24 フランジ部
25 縮径部
26 太径部
27 長孔
31 長溝
32 補強片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生鮮食品を保冷用の氷とともに収納する発泡合成樹脂からなる容器本体と、該容器本体に着脱自在に装着されて前記容器本体を密閉する蓋体と、を備え、
容器本体には、側壁下部に内外に貫通して該容器本体内に溜まった氷の融水を排水する排水孔が設けられ、該排水孔には長軸状の止水・排水可能な止水・排水兼用栓が摺動可能に装着され、該止水・排水兼用栓は、排水孔に挿入される軸部に、容器本体側壁の厚みを超える長さの長孔または長溝あるいは長孔と長溝が連続する組合せが軸線方向に設けられ、前記排水孔に沿って所定ストローク分、軸線方向に前後摺動させることによって前記排水孔を開閉可能となっていることを特徴とする止水・排水兼用栓付き保冷容器。
【請求項2】
前記止水・排水兼用栓の長溝は、水流が誘導されやすい断面弧状で、一端側底面はテーパ状となって軸部外周面に連続していることを特徴とする請求項1記載の止水・排水兼用栓付き保冷容器。
【請求項3】
前記容器本体の排水孔の位置する内側底部には、排水孔に装着された止水・排水兼用栓の内側に延出した部分を、両側より囲むように1対の突起が並行して設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の止水・排水兼用栓付き保冷容器
【請求項4】
前記止水・排水兼用栓の軸部の一端側には環状の摘み部が設けられ、該環状の摘み部は、長溝または長孔の延長線上にカット部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の止水・排水兼用栓付き保冷容器・

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−62076(P2012−62076A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206261(P2010−206261)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【特許番号】特許第4876290号(P4876290)
【特許公報発行日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(594108638)株式会社ティーピーパック (1)
【出願人】(593025619)トーホー工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】