説明

止水性屋根下葺材

【課題】釘孔止水性に優れた柔軟で軽量な止水性を有する屋根用下葺材を提供する。
【解決手段】合成樹脂フィルム層1、粘着性樹脂層2、吸水性高分子層による吸水膨潤層4、が形成された撥水性不織布層3の順に積層された積層体であって、粘着性樹脂の粘着性が、JIS Z 0237(2000)に基づいて測定した傾斜角30°での傾斜式ボールタックが20〜80℃の範囲においてNo.5以上であることを特徴とする止水性屋根下葺材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水性の屋根下葺材に関する。更に詳しくは、住宅の建築の際に、野地板の上に容易に貼着でき、建築後に瓦等の屋根上葺材の隙間などから水が侵入することを防止できる止水性屋根下葺材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造勾配屋根は、瓦、住宅用屋根スレート、金属板などの屋根上葺材で被覆されている。しかし、これら上葺材だけでは完全な防水機能を得ることが困難なため、従来はアスファルトを紙や不織布などに含浸または塗布したアスファルトルーフィングなどの下葺材を、瓦などの上葺材と野地板との間に敷き屋根下葺材として用いてきた。しかし、アスファルトルーフィングは目付が約1000g/mと重いため屋根の上へ持ち上げにくく、外力が加わると破れやすい。また、低温時は折り曲げにより亀裂が入りやすく、そこから漏水するなどの問題が発生するおそれがある。更に、瓦を葺く際、特にスレート瓦と称される瓦を使用する場合には、スレート瓦の上から釘を打ちつけて野地板に固定するため、屋根下葺材が釘によって突き破られ屋根下葺材と釘との隙間から雨水などが侵入し野地板が腐食してしまう問題があった。
【0003】
そのため、近年軽量で防水性に優れる屋根下葺材が使用されてきている。例えば、特許文献1には、フラッシュ紡糸により三次元網状繊維を形成せしめ、これをコンベアベルト上に振り落としウェブ状にした後ロール等により部分圧着または全面圧着しシート状になしたポリオレフィン系不織シートが記載されている。ところがこのようにして得られる全面圧着した不織シートを屋根下葺材として用いても、下葺材の固定用に通常用いられているタッカー釘を打ち込むと簡単に漏水し、さらに瓦固定用釘を打ち込むと、釘周辺に亀裂が発生するおそれがある。
【0004】
また、特許文献2には、布帛の表面に伸縮性、粘着性を有する樹脂層をコーティング又はラミネートし、該樹脂層の上に粘着性の少ない樹脂層をコーティング又はラミネートする屋根下葺材が記載されている。しかし布帛に不織布や編物を用いているため樹脂がしみだすおそれがあり、また、この屋根下葺材上で作業を行う場合、釘孔部に荷重がかかる為孔部が広がり、止水性が損なわれるおそれがある。
【0005】
また、特許文献3には、アスファルトを用いない屋根下葺材として、フラッシュ紡糸法による不織布を用いて、釘孔シール性、特に釘軸廻り水密シール性を改善することを目的として、不織布の表面の釘打ち込み部分に伸縮性、粘着性の樹脂を塗布することが記載されている。しかしながら、この特許に開示された屋根下葺材は、樹脂を塗布し、乾燥する工程が煩雑であるとともに、樹脂の塗布量の低減化とそのコントロールに難点があり、得られた屋根下地材も作業者が特に降雨時に滑り易いといった問題点を有する。
【0006】
また、特許文献4にはゴム系シートに細孔を穿孔した透湿・防水性シートが記載されている。しかし、この構造では、耐水性が不十分であり、また、このシートを透湿・防水性の不織布とラミネートしても、釘やタッカーなどにより生じた隙間を十分に埋めることができず、釘孔止水性が十分確保されないおそれがある。
【0007】
【特許文献1】特開平2−118177号公報
【特許文献2】特開平2−269277号公報
【特許文献3】特開平4−309649号公報
【特許文献4】特開平9−324062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、釘孔止水性にすぐれ、高強力で、柔軟性、防滑性にすぐれた止水性屋根下葺材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、効果の顕著な本発明に到達した。
即ち、本発明は第1に、合成樹脂フィルム層Aと吸水高分子からなる吸水膨潤層が形成された撥水性不織布層の間に、JIS Z 0237(2000)に基づいて測定した傾斜角30°での傾斜式ボールタックが20〜80℃の範囲においてNo.5以上である粘着性を有する粘着性樹脂を介在させたことを特徴とする止水性屋根下葺材である。
【0010】
本発明は、第2に、不織布層と粘着性樹脂層の間に合成樹脂フィルム層Bを有する上記の止水性屋根下葺材である。
【0011】
本発明は、第3に、JIS L1906に基づいて測定したタテおよびヨコ方向の引張り強度が250N/5cm以上である上記の止水性屋根下葺材である。
【0012】
本発明は、第4に、合成樹脂フィルム層Bが押し出しラミネートにより不織布層と熱圧着している上記の止水性屋根下葺材である。
【0013】
本発明は、第5に、撥水性不織布層の厚みが0.2〜1.5mmで且つタテ及びヨコ方向の引張強度が150N/5cm以上である不織布からなり、該不織布にポリアミド系、ポリアクリル系及びポリウレタン系から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂とフッ素系、シリコーン系及びワックス系から選ばれる少なくとも一種の撥水性樹脂が付与されたことを特徴とする上記の止水性屋根下葺材である。
【0014】
本発明は、第6に、不織布層の粘着性樹脂層側に、吸水高分子による吸水膨潤層が付与されている上記の止水性屋根下葺材である。
【0015】
本発明は、第7に、2N/cmの荷重をかけた後のJIS A 5430 5.6(透水試験)における釘孔止水性が145mm水柱以上であることを特徴とする上記の止水性屋根下葺材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の屋根下葺材は、粘着性樹脂が、その粘着性により釘打ちの際に釘にまとわりつき、釘と屋根下葺材の隙間を封鎖する機能を示すため、広い温度範囲に亘って釘孔止水性が良好で、撥水性を有する不織布層に配された吸水膨潤層がもれた水分を吸収し、撥水性不織布層が水分の浸透を防止するため優れた止水性を示す。さらに合成樹脂フィルム層Aや不織布、更に合成樹脂フィルム層Bが積層されているので屋根下葺材の強度が向上するため、屋根下葺材上に作業者が乗った場合でも釘と屋根下葺材の隙間が大きくなることを防止することができ、作業中に懸念される止水性の低下が防止でき、取扱性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の止水性屋根下葺材の典型例は、図1に示すように、合成樹脂フィルム層A、粘着性樹脂層、不織布層の3層構成、または、図2に示すように、合成樹脂フィルム層A、粘着性樹脂層、合成樹脂フィルム層B、不織布層の4層構成の積層体を含むものである。
【0018】
実際に用いる場合には、合成樹脂フィルム層Aまたは不織布層のいずれかを野地板側に面するように敷設し、その上面に屋根瓦等の屋根上葺材を配設する様に用いる。
【0019】
本発明の止水性屋根下葺材を不織布を野地板側に配設した場合、屋根瓦の隙間から侵入した雨水などの水分は、合成樹脂フィルム層Aの釘孔部の隙間から粘着性樹脂層に達する。そして粘着性樹脂層で粘着性樹脂がその粘着性により釘に絡みつくように密着しているので水分の浸透を防止する。さらに、そこから漏水した水分は吸水膨潤層で水分を吸収し、撥水性不織布層で水分の浸透を防止することができる。不織布層側を表面として使用した場合も同様の効果が得られる。
【0020】
本発明に用いる粘着性樹脂は、20〜80℃の範囲で、JIS Z 0237(2000)に基づく、傾斜角30°のボールタックにおいてNo.5以上である粘着性を有するものである。No.5未満であると粘着性樹脂層の釘への密着性が不十分となり、十分な止水性を得ることが困難になる。これらの粘着性樹脂の具体例としては、上記粘着性を有するEVA系や合成ゴム系などのホットメルトと称される粘着性熱可塑性樹脂(ゴムも包含する)を挙げることができる。
【0021】
更に、使用する粘着性樹脂粘度は160℃に於いて3000〜10000mPa・sが好ましい。3000mPa・sより小さいと塗布加工時や加工後に、粘着性樹脂が不織布から染み出し、巻き取り後にブロッキング等の不具合が生じるおそれがある。また、10000mPa・sより大きいと樹脂の塗工性が悪くなり、塗工性を改善しようとして粘度を落とすために温度を上げると、基材が熱変形する等の不具合が発生するおそれがある。
【0022】
また、粘着性樹脂層の厚みは3〜300μmであることが好ましく、更に好ましくは、10〜200μmである。厚みが3μm未満であると、合成樹脂フィルム層Aや吸水膨潤層が形成された撥水性不織布層などとの十分な接着性が得られず、また止水性も十分に発揮することができないおそれがあり、300μmより厚くなると屋根下葺材の柔軟性が損なわれたり、屋根下葺材の重量が大きくなり、施工性が損なわれるおそれがある。
【0023】
これら粘着性樹脂層はそれと接する吸水膨潤層が形成された撥水性不織布層の一方の面に、塗布することによって付与される。粘着性樹脂を塗布する方法としては、粘着性樹脂を溶融状態で塗布することが可能な加熱式グラビアロールコーター、加熱式リバースロールコーター、加熱式ダイコーターなどによるコーティング方法やカーテンスプレー法などが挙げられるが、これらの方法に限定されるものはない。この場合の粘着性樹脂の塗布量は3〜300g/mが好ましい。より好ましくは10〜200g/mである。塗布量が3g/mより少ないと十分な止水性が得られない。300g/mより多いと屋根下葺材の柔軟性が損なわれたり、屋根下葺材の重量が大きくなり施工性が損なわれるおそれがある。
【0024】
また、合成樹脂フィルム層Aの厚みは50〜300μmが好ましく、さらに、100〜250μmが好ましい。厚さが50μm未満では施工時において、釘孔部分からフィルムが裂けてしまうおそれがあり、さらに、釘孔部以外でもフィルムが裂けやすくなるため、止水性が損なわれたり、屋根下葺材の強度が保てなくなるおそれがある。また、300μmを超えると屋根下葺材が硬くなるため、巻きにくく、非常に取り扱いが難しくなるおそれがある。
【0025】
本発明において用いることのできるフィルム層Aの素材としては、ポリオレフィン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリスチレン系などの合成樹脂などが挙げられる。例えばポリオレフィン系樹脂の具体例としては、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体などの非エラストマー状のポリオレフィン系樹脂、非晶質ポリオレフィンを含有する軟質ポリオレフィン樹脂などを挙げることができる。また、ポリウレタン樹脂としてはポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のウレタン系樹脂を挙げることができる。また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。
【0026】
また、合成樹脂フィルムを表使いにした場合、防滑機能を付与する目的で、エンボス加工を施してもかまわない。エンボス加工によるフィルムの見かけ厚みは200〜600μmが好ましく、より好ましくは250〜400μmである。見かけ厚みとは、エンボス加工を施したフィルムの凹凸による厚みを含んだ厚みである。見かけ厚みが200μmより小さいと、フィルム層が雨などにより水に濡れた状態になった場合に十分な防滑性を得ることが難しい。また、600μmより大きいと屋根下葺材の柔軟性が損なわれたり、重量が大きくなるなど、施工性が損なわれるおそれがある。エンボスの柄としては、丸形ドットやダイヤ形ドット、亀甲形ドットなどが好ましい。さらにフィルムにおけるドット部の占有面積率は20〜80%が好ましく、より好ましくは、40〜60%である。占有面積が20%より小さいとフィルム表面が水に濡れた状態において作業靴とシートの間に水が入り込み滑り易くなる。また80%より大きいとフィルム表面が水に濡れた状態において水はけが悪い状態となる。
【0027】
また、本発明の止水性屋根下葺材で使用される不織布は、寸法安定性や強度の点から、長繊維からなる不織布が好ましく用いられる。これはポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系などの合成樹脂製長繊維フィラメントが高密度かつ無方向に堆積接合された不織布であり、紡糸、延伸、開繊、接着の工程を連続的に行なう直接紡糸法により、長繊維をランダムに堆積しボンディングして得られるものである。具体的には、紡糸可能な合成樹脂を押出機に投入して溶融状態とし、紡糸ノズルから押し出された繊維をローラー法またはエアジェット法で延伸繊維化するスパンボンド法による不織布や、溶融状態の樹脂を高圧ガス流と共に紡糸ノズルから噴射して延伸繊維化するメルトブロー法による不織布や、紡糸可能な合成樹脂を溶媒に高温高圧化で溶解した溶液を、紡糸ノズルを通して大気中に放出し、溶媒を気化させて繊維化するフラッシュ紡糸法による不織布などが挙げられる。
【0028】
また不織布の目付は50〜300g/mが好ましい。50g/mより小さいと屋根下葺材の強度が低下するおそれがあり、更に粘着性樹脂がしみだすおそれがあり、巻いた場合ブロッキングなどの不具合が生じるおそれがある。300g/mより大きいと不織布が厚く硬い状態となり、持ち運びや施工時の作業性が悪くなる。不織布の厚みは0.2〜1.5mmが好ましく、より好ましくは0.4〜0.8mmであり、且つこの厚み範囲においてタテ及びヨコ方向の引張強度が150N/5cm以上が好ましく、より好ましくは200N/5cm以上である。厚みが0.2mmより小さいと不織布のコシが無くなり施工性が悪くなるおそれがある。また、1.5mmより大きいと巻き径が大きくなるなど取り扱い性が悪くなる。また引張強度が150N/5cmより低くなると屋根下葺材としての強度が十分得られないおそれがある。
【0029】
不織布層を表面とした場合、不織布表面に防滑層を設けることにより、作業者の安全性を向上させることができる。防滑層は通常、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリウレタン系などの合成樹脂を不織布表面に付与することにより形成される。更に、撥水性樹脂を付与することにより、特に施工作業中の降雨時においては、不織布表面が撥水性を有することから、その表面に落ちた雨滴は小さい玉となって流れ去り、その表面が濡れることがない。即ち、水膜の生成が防止される。その結果、防滑効果の低下が防止され、長時間に亘り、安定な足場を確保し、作業を安定良好に維持できるのである。
【0030】
また、不織布層、合成樹脂フィルム層B、粘着性樹脂層、合成樹脂フィルム層Aの4層からなる屋根下葺材の場合、合成樹脂フィルム層Bの厚みは15〜60μmが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。15μmより薄いと破れやすく、また押出しラミネートの場合樹脂層が形成されにくく、樹脂の裏抜けを防止することが難しく屋根下葺材全体の強度を向上させることができないおそれがあり、50μm以上を超えてフィルム層を形成させて場合、粘着性樹脂浸透防止性能は十分であるが、重量が増加し取り扱いが困難となるおそれがあり、かつ経済的ではない。
【0031】
合成樹脂フィルム層Bは、上記の様に粘着性樹脂付与時における樹脂の不織布への浸透を防ぐために施すものであり、また屋根下地材の強度を向上させるものである。粘着性樹脂の不織布への浸透を防ぐ効果は、塗工時に粘着性樹脂の粘度が低い場合に特に効果的である。
【0032】
フィルム層Bの重量は、5〜30g/mが好ましい。5g/mより少ないと樹脂の浸透を防ぐ効果が十分得られないおそれがある。また、30g/mより大きくなるとフィルムが硬くなりすぎて取り扱い性に不具合が生じるおそれがある。
【0033】
合成樹脂フィルム層Bの付与は、合成樹脂を押出しラミネートにより不織布に溶融ラミネートする方法で行うことが経済的観点から好ましい。用いるフィルム素材としてはTダイなどで押出しラミネートできる樹脂でかつ、不織布との密着性及び粘着性樹脂との接着性が良好であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、ポリオレフィン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリスチレン系等の合成樹脂が用いられる。これらのなかから、使用する不織布素材の種類及び粘着性樹脂との接着性を考慮して適宜のものを選択することができる。
【0034】
また、不織布層に付与する撥水性樹脂としてはフッ素系、シリコーン系、ワックス系などの撥水剤を用いることができる。具体例としては、旭硝子(株)製のアサヒガードAG−7000、アサヒガードGS−10などを挙げることができる。これらを単独、または、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリウレタン系のバインダー樹脂を併用して不織布層に付与することにより撥水性不織布を得ることができる。
【0035】
不織布層に撥水性樹脂を付与する方法としては、特に限定されるものではないが、一般的な繊維の仕上げ加工に使用されるマングルパッド法やグラビア法などを用いて不織布の片面若しくは全面に撥水層を形成することができ、不織布部での止水性を向上させることができる。
【0036】
また、止水性能を向上させるために、不織布層に吸水膨潤層を形成する。吸水膨潤層を形成するための吸水高分子としては一般市販されているものが使用できる。具体例としては、橋かけポリアクリル酸塩、橋かけポリビニルアルコール、澱粉−ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩、イソブチレン−マレイン酸塩などが挙げられる。これらは1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。吸水膨潤層は不織布の野地板と接触しない側に配置することにより野地板の腐敗を防止することはいうまでもない。
【0037】
吸水高分子は通常バインダーを使用して不織布に固着される。使用するバインダーとしては、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂などが使用でき、中でも加工時の取り扱い性の良さおよびコストの面から、アクリル系樹脂が好ましく使用される。吸水高分子の付与方法としては、コーティング法、グラビア法、スクリーン捺染法などが挙げられる。吸水高分子の付与量としてはドライ状態で5〜40g/mが好ましく、より好ましくは10〜30g/mである。付与量が5g/mより少ないと、止水性を維持できないおそれがある。また、40g/mより多く付与しても性能は向上せず、コスト的に無駄となる。
【0038】
屋根下葺材のトータル重量は150〜500g/mが好ましく、より好ましくは200〜400g/mである。150g/mより軽いと、施工時に風の影響を受けやすく、施工性が悪くなるおそれがある。また、500g/mより重いと屋根の上での作業性が悪くなるおそれがある。
【0039】
本発明の止水性屋根下葺材の強度は、JIS L1906に基づく引張り強さの測定においてタテおよびヨコの強度が250N/5cm以上であることが好ましい。引張り強度が250N/5cm未満であると、屋根下葺材敷設後に釘打ち施工し、屋根下葺材上を歩行した場合、釘孔部分の強度が維持できず、釘孔が拡大して漏水するおそれがある。
【0040】
本発明における止水性屋根下葺材を構成する不織布及び樹脂フィルム層のそれぞれの重量は、屋根下葺材トータルの重量及びトータルの強度が上記の範囲に入るように適宜選択される。
【0041】
〔実施例〕
次に実施例によって本発明を例証する。実施例で用いた評価方法は次のとおりである。
【0042】
〔釘孔止水性〕
室温(20〜25℃)において、9mm厚の合板に実施例または比較例で作製した下葺材をのせてタッカー釘(肩幅12mm、足長10mm、MAX社製 T3−10MB)を打ち込み、JIS A 5430 5.6(透水試験)における水柱(初期高さ150mm)の24時間放置後の高さで釘孔止水性を評価した。
評価は以下の2通りの水準で評価を実施した。
(1)タッカー通常打ち:タッカー釘を下葺材に打ち込んでそのままの状態で止水性評価を行った。
(2)2N/cm荷重:タッカー釘を下葺材に打ち込み後、タッカー釘2本の足にそれぞれに均一に荷重がかかるように水平方向に2N/cm荷重を15秒間かけた後、止水性評価を行った。(施工時の作業員の歩行による釘孔拡大を想定した条件)
漏水の有無の判定は下記のように行った。
◎:水柱における水の高さが145mm以上
○:水柱における水の高さが140mm以上145mm未満
△:水柱における水の高さが100mm以上140mm未満
×:水柱における水の高さが100mm未満
【0043】
〔防水性〕
JIS−L1092A法(低水圧法)に準拠して評価した。
【0044】
〔屋根施工性〕
下記のように判断した。
○:作業性がよく、軽く、容易に施工が可能である。
×:作業性が悪く、施工に時間を要する。
【0045】
〔総合評価〕
下記のように判断した。
◎:屋根下葺材として十分な性能である。
○:屋根下葺材として使用できる。
△:屋根下葺材として使用可能であるが、使い方に制限がある。
×:屋根下葺材としては問題がある。
【実施例1】
【0046】
重量が130g/mポリエステルスパンボンド不織布(東レ(株)製 アクスター、厚み0.41mm)にフッ素系撥水剤(旭硝子(株)製 AG−7000)を、3wt%濃度で含む水溶液でピックアップ率が70wt%となる条件でマングルパッド法により付与し、その後170℃で1分間熱処理して、撥水性不織布を得た。作製した撥水性を有する不織布に、固形分重量比で25wt%のアクリルバインダーを加えた澱粉−ポリアクリル酸塩よりなる吸水性高分子樹脂(三洋化成工業(株)製 サンフレッシュST−100)をトルエンに固形分で25wt%となるように溶解させた溶液を用いてグラビアロールコーターにより固形分として20g/mとなるように塗布した。さらにこの不織布を加熱ロール型リバースロールコーターにより粘着性樹脂(旭化学合成(株)製 アサヒタックAZ2525 160℃での粘度3900mPa・sボールタックは23℃の傾斜角30°でNo.6)を100μmの厚みで吸水性高分子樹脂を付与した面全面に塗布した後、フィルム実厚み100μmで菱形エンボスを施して見かけ厚みが350μmである密度0.95g/cmのポリエチレンフィルム(大倉工業(株)製)を合わせ加圧ロールによりプレスラミネートし目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材はポリエチレンフィルム面を表面にして使用した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0047】
重量が130g/mポリエステルスパンボンド不織布(東レ(株)製 アクスター 嵩比重0.35)にフッ素系撥水剤(大日本インキ化学工業(株)製 SDF−20)を、10wt%濃度で含む溶液でピックアップ率が20wt%となる条件でグラビアコーターにより片面に付与し、その後170℃で1分間熱処理して、撥水性を有する不織布を得た。作製した撥水性を有する不織布の撥水剤付与面に対して、固形分重量比で25wt%のアクリルバインダーを加えた澱粉−ポリアクリル酸塩よりなる吸水性高分子樹脂(三洋化成工業(株)製 サンフレッシュST−100)をトルエンに固形分で25wt%となるように溶解させた溶液を用いてグラビアロールコーターにより固形分として20g/mとなるように塗布した。さらにこの不織布の吸水性高分子樹脂を付与した面にTダイによりポリブチルエステル系樹脂を押出しラミネートし、不織布にポリブチルエステル系樹脂を積層した素材を得た。積層したポリブチルエステル系樹脂の重量は約20g/mである。この積層素材に対して加熱ロール型リバースロールコーターを用いてポリブチルエステル系樹脂が形成されている面に対して、実施例1と同様な方法で粘着性樹脂を用いて実施例1で使用した見かけ厚み350μmの高密度ポリエチレンフィルム(大倉工業(株)製)をラミネート処理し、目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材はポリエチレンフィルム面を上側にして使用した。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0048】
重量が100g/mのポリエステルスポンボンド不織布(ユニチカ(株)製 マリックス21008WTV、厚み0.43mm)にシリコン系撥水剤(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製 SM8707)を、10wt%濃度で含む溶液でピックアップ率が30wt%となる条件でグラビアコーターにより片面に付与し、その後170℃で1分間熱処理して、撥水性を有する不織布を得た。作製した撥水性を有する不織布に、固形分重量比で25wt%のアクリルバインダーを加えた澱粉−ポリアクリル酸塩よりなる吸水性高分子樹脂(三洋化成工業(株)製 サンフレッシュST−100)をトルエンに固形分で25wt%となるように溶解させた溶液を用いてグラビアロールコーターにより固形分として20g/mとなるように塗布した。さらにこの不織布を加熱ロール型リバースロールコーターにより粘着性樹脂(旭化学合成(株)製 アサヒタックAZ2525 160℃での粘度3900mPa・sボールタックは23℃の傾斜角30°でNo.6)を100μmの厚みで吸水性高分子樹脂を付与した面全面に塗布した後、実厚み200μmで菱型エンボスを施して、見かけ厚みが450μmであるポリエチレン酢酸ビニルフィルム(サンビック(株)製 VA%:15%、メルトインデックス1.5)を使用して、目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材はポリエチレン酢酸ビニルフィルム面を表面にして使用した。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0049】
実施例1で作製した止水性屋根下葺材の不織布側にグラビアロールコーターを用いて防滑剤(新中村化学工業(株)製 NK Resin NS−5)をドット状にドライ状態で5g/mとなるように塗布し、熱処理乾燥後、目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材は不織布面を表面にして使用した。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0050】
実施例1で作製した撥水性を有する不織布に、固形分重量比で25wt%のアクリルバインダーを加えた澱粉−ポリアクリル酸塩よりなる吸水性高分子樹脂(三洋化成工業(株)製 サンフレッシュST−100)をトルエンに固形分で25wt%となるように溶解させた溶液を用いてグラビアロールコーターにより固形分として15g/mとなるように塗布した。さらにこの不織布の吸水性高分子樹脂を付与した面に対してカーテンスプレー装置((株)サンツール製、シム径0.3mm×0.3mm、ピッチ間隔0.5mm、押出しスクリュー式ホットメルトアプリケーター(株)笠松加工研究所製)を用いて180℃に加熱溶融した粘着性樹脂(旭化学合成(株)製 アサヒタックAZ3781 160℃での粘度13000mPa・sボールタックは23℃の傾斜角30°でNo.27)を、全体として10g/mで不織布状に塗布した後、実施例1で使用した高密度ポリエチレンフィルム(大倉工業(株)製)を合わせ加圧ロールによりプレスしてラミネートして、目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材はポリエチレンフィルム面を表面にして使用した。結果を表1に示す。
【0051】
〔比較例1〕
実施例1における固形分重量比で25wt%のアクリルバインダーを加えた澱粉−ポリアクリル酸塩よりなる吸水性高分子(三洋化成工業(株)製 サンフレッシュST−100)を塗布しない以外は、実施例1と同様な方法により、目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材はポリエチレンフィルム面を表面にして使用した。結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例2〕
実施例1におけるフッ素系撥水剤(旭硝子(株)製 AG−7000)による処理を実施しない以外は実施例1と同様な方法により、目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材はポリエチレンフィルム面を表面にして使用した。結果を表1に示す。
【0053】
〔比較例3〕
実施例1における合成ゴム系ホットメルト(旭化学合成(株)製 アサヒタックAZ2525 160℃での粘度3900mPa・sボールタックは23℃の傾斜角30°でNo.6)を合成ゴム系ホットメルト(旭化学合成(株)製 アサヒタックAM8500 190℃での粘度44000mPa・sボールタックは23℃の傾斜角30°でNo.1以下)に変更した以外は実施例1と同様な方法により、目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材はポリエチレンフィルム面を表面にして使用した。結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例4〕
重量が50g/mのポリエステルスパンボンド不織布(ユニチカ(株)製 マリックス20507WTA、厚み0.19mm)シリコン系撥水剤(東レ、ダウコーニング・シリコーン(株)製 SM8707)を、10wt%濃度で含む溶液でピックアップ率が20wt%となる条件でグラビアコーターにより片面に付与し、その後170℃で1分間熱処理して、撥水性を有する不織布を得た。作製した撥水性を有する不織布に、固形分重量比で25wt%のアクリルバインダーを加えた澱粉−ポリアクリル酸塩よりなる吸水性高分子樹脂(三洋化成工業(株)製 サンフレッシュST−100)をトルエンに固形分で25wt%となるように溶解させた溶液を用いてグラビアロールコーターにより固形分として20g/mとなるように塗布した。さらにこの不織布を加熱ロール型リバースロールコーターにより合成ゴム系ホットメルト(旭化学合成(株)製 アサヒタックAZ2525 160℃での粘度3900mPa・sボールタックは23℃の傾斜角30°でNo.6)を100μmの厚みで吸水性高分子樹脂を付与した面全面に塗布した後、実厚み100μmで菱形エンボスを施して、見かけ厚みが350μmであるポリエチレン酢酸ビニルフィルム(サンビック(株)製、VA%:15%、メルトインデックス:1.5)を使用して、目的とする止水性屋根下葺材を得た。得られた止水性屋根下葺材はポリエチレン酢酸ビニルフィルム面を表面にして使用した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の屋根止水材を示す概略図である。
【図2】本発明の屋根止水材の別の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0057】
1.合成樹脂フィルム層A
2.粘着性樹脂層
3.撥水性不織布層
4.吸水膨潤層
5.合成樹脂フィルム層B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルム層Aと吸水性高分子からなる吸水膨潤層が形成された撥水性不織布層の間に、JIS Z 0237(2000)に基づいて測定した傾斜角30℃での傾斜式ボールタックが20〜80℃の範囲においてNo.5以上である粘着性を有する粘着性樹脂層を介在させたことを特徴とする止水性屋根下葺材。
【請求項2】
撥水性不織布と粘着性樹脂層の間に合成樹脂フィルム層Bを有する請求項1記載の止水性屋根下葺材。
【請求項3】
JIS L1906に基づいて測定したタテおよびヨコ方向の引張り強度が250N/5cm以上である請求項1又は2記載の止水性屋根下葺材。
【請求項4】
合成樹脂フィルム層2が押し出しラミネートにより不織布層と熱圧着している請求項2又は3記載の止水性屋根下葺材。
【請求項5】
撥水性不織布層の厚みが0.2〜1.5mmで且つタテ及びヨコ方向の引張強度が150N/5cm以上である不織布からなり、該不織布にポリアミド系、ポリアクリル系及びポリウレタン系から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂とフッ素系、シリコーン系及びワックス系から選ばれる少なくとも一種の撥水性樹脂が付与されたことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の止水性屋根下葺材。
【請求項6】
不織布層の粘着性樹脂層側に、吸水性高分子による吸水膨潤層が付与されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の止水性屋根下葺材。
【請求項7】
2N/cmの荷重をかけた後のJIS A 5430 5.6(透水試験)における釘孔止水性が145mm水柱以上であることを特徴とする請求項1乃至6記載の止水性屋根下葺材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−177106(P2006−177106A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373667(P2004−373667)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】