説明

止水部を備えたシールド電線および該シールド電線の止水部の形成方法

【課題】シールド電線の止水性能に優れると共に外径を肥大化させない止水部を設ける。
【解決手段】複数本のコア線2をシールド層4で被覆し、該シールド層を絶縁樹脂外皮からなるシース5で被覆しているシールド電線1であって、シールド電線1の端末側でシールド層およびシースが切断除去されて前記コア線が露出し、前記切断位置を挟んだ部分では前記シースの外周から露出させたコア線の外周面にかけて粘着テープ12が巻き付けられ、さらに、前記コア線側の外周に巻き付けられた粘着テープの外周に密着させてシース材5Aが外嵌され、前記切断位置を挟んで、コア線の露出側では前記シース材および前記粘着テープに囲まれた部分にシリコーン等の止水剤15が充填されると共に、シースの残留側の内部ではシース内部の空隙に止水剤が充填されている止水部10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は止水部を備えたシールド電線および該シールド電線の止水部の形成方法に関し、特に、車両の浸水領域から車室内等の非浸水領域に配索するシールド電線が、浸水領域においてシールド電線中に侵入した水が非浸水領域の端末側まで伝わるのを遮断する止水部を備えたものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に配索される電線のうち、特に、ノイズに対する遮蔽が要求される配索領域にはシールド電線が用いられている。図7(A)に示すように、シールド電線100は複数本の絶縁被覆電線からなるコア線102とアース用のドレン線103とを金属箔や金属網チューブからなるシールド層104で被覆し、該シールド層104を絶縁樹脂層の外皮からなるシース105で被覆している(特開2002−208321号公報参照)。
【0003】
シールド電線100は、通常、図7(B)に示すように、両端末に端子金具107、108を圧着接続し、これら端子金具107、108をコネクタ109A、109Bに挿入し、該コネクタを機器のコネクタ収容部に嵌合し、または、他の電線端末のコネクタと嵌合接続している。
前記シールド電線100の両端末では、シース105とシールド層104とを約80〜200mmにわたって皮剥ぎし、露出させたコア線102の端末を更に皮剥ぎして端子金具107、108を圧着している。
【0004】
前記シールド電線100では、複数のコア線102の間、コア線102とシールド層104の間、シールド層104とシース105の間に空隙が存在する。よって、シールド電線100の端子金具を接続した端末が浸水領域に位置すると、該端子金具と接続するコネクタは防水コネクタとする等の防水対策がなされる。
しかしながら、浸水領域側の皮剥端に開口する空隙を通してシールド電線100の内部に水が伝わり、シールド電線100の他端末に接続した端子側へと浸水が生じる恐れがある。このシールド電線100の他端が非浸水領域に配線されれると、該端末の端子は非防水コネクタに挿入されるため、シールド電線100の浸水領域側からの浸水を非浸水領域側の端子に達するまでに止水する必要がある。
【0005】
前記シールド電線の止水対策として、図8(A)〜(C)に示すように、シールド電線100の皮剥位置Pでシリコーンからなる止水剤120を注入し、前記シールド電線100の空隙に止水剤120を充填し、その後、皮剥位置Pを挟んでシース105の外周から露出させたコア線102の外周にかけて止水機能を有するブチルパッド121を巻き付けて、止水部122を設けている場合が多い。該ブチルパッド121の厚さは1.5mm〜3mm程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−208321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記図8に示す止水部122を設けた場合、ブチルパッド121が厚肉であるため、止水部122の外径が肥大化し、シールド電線100が多数本あるセンサー系の回路が重なるワイヤハーネスでは、該ワイヤハーネスが外装材のコルゲートチューブ内に収容できない問題がある。
また、シールド電線100のシース105の切断位置で止水剤を硬化させて止水部を形成していると、サーマルショックや車両振動を止水部が破壊されるおそれがある。特に、シース105とコア線102との熱収縮率の相違により、止水部にズレが生じる恐れがある。このズレは前記サーマルショックや車両振動をうけて増長し、止水性を維持できなくなる恐れがある。
さらに、図8(C)に示すように、シールド電線100を垂直配置し、皮剥位置Pから下向きに止水剤10を注入すると、シールド電線100の前記空隙Cを通して止水剤120がシールド電線100内で流れ落ちてしまい、皮剥位置Pで止水剤120によるシールが出来ない場合もある。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、止水部を肥大化させず、かつ、サーマルショックや車両振動で止水部が破壊されないようにし、シール性能を確実に保持できる止水部を備えたシールド電線を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、複数本のコア線をシールド層で被覆し、該シールド層を絶縁樹脂外皮からなるシースで被覆しているシールド電線であって、
前記シールド電線の端末側で前記シールド層およびシースが切断除去されて前記コア線が露出し、前記切断位置を挟んだ部分では前記シースの外周から露出させたコア線の外周面にかけて粘着テープが巻き付けられ、
さらに、前記コア線側の外周に巻き付けられた粘着テープの外周に密着させてシース材が外嵌され、前記切断位置を挟んで、コア線の露出側では前記シース材および前記粘着テープに囲まれた部分に止水剤が充填されると共に、シースの残留側の内部ではシース内部の空隙に止水剤が充填されている止水部を備えたシールド電線を提供している。
【0010】
前記粘着テープは、塩化ビニルテープ等の薄肉テープで片面に粘着剤が塗布されており、肉厚は0.1mm〜0.2mm程度である。前記した従来用いられているブチルパッドの肉厚は1.5mm〜3mmであるため、前記粘着テープをハーフラップ巻きしても仕上がり外径は約6.0mmで、従来のブチルパッドをすし巻きで用いた場合の仕上がり外径が約10.3mmであるため、仕上がり外径は30%程度を減少できる。
【0011】
前記粘着テープとして細幅の粘着テープを用いる場合は、ハーフラップ巻きとし、広幅な粘着テープを用いる場合は寿司巻きとしてもよい。いずれの場合も、粘着テープの巻付領域では粘着テープの間に隙間が生じないようにしている。
前記粘着テープは切断位置を挟む前記シースの外周から前記露出したコア線の外周に前記粘着テープが連続して円錐状に巻き付けられ、該コア線の外周に巻き付けられた粘着テープの外周面と前記シース材の内周面との間に溢れた止水材の受け部が形成される。
【0012】
前記のように、止水剤の充填部分をブチルパッドを用いて被覆する代わりに、薄肉の粘着テープを用いて被覆することにより止水部の外径の肥大化を低減することができる。
また、露出させたコア線に巻き付けた粘着テープで囲まれた内部に止水剤を注入し、コア線と粘着テープとの間の空隙に止水剤を注入している。この注入した止水剤をシースの切断位置に達した後にシースの内部の空隙にも浸透していき、該コア線の露出側では無く、シールド電線の内部側で止水剤が、シース、シールド層およびコア線の間の空隙に浸透して硬化する。このように、シールド電線のシースを皮剥していない内部の空隙に止水剤を充填し、硬化させて止水部を設け、止水部を外面に露出させていない。よって、サーマルショックにおいてコア線とシースとの収縮率の相違で硬化した止水剤にヒビが入っても、ズレが生じて硬化した止水剤が剥離し、止水性能が低下するのを防止することができる。
また、止水剤の注入時に、粘着テープの巻付部の先端から止水剤が溢れても、粘着テープの外周にシース材を外嵌し、かつ、粘着テープは注入側に向かって小径化する円錐状に巻き付けられているため、注入側ではシース材と粘着テープとの隙間が生じ、溢れた止水剤を粘着テープとシース材との間に受け止めることができる。よって、シールド線の外周面に沿って止水剤が垂れ落ちることを防止できる。
【0013】
本発明は、前記シールド電線の止水方法を提供している。該止水方法は、
前記シールド電線の端末で、前記シールド層およびシースに環状の切断を入れ、切断された筒状のシールド層およびシースを端末側に移動させて、前記切断位置から前記コア線を露出させると共に、前記移動させたシールド層およびシースの先端側を切断除去して所要長さの短尺なシース材とし、
ついで、前記切断位置を挟んでシースの外周面から前記露出したコア線の外周面にかけて粘着テープを隙間なく巻き付け、
ついで、前記シース材を前記切断位置へと戻すように移動させて前記コア線の外周に巻き付けた粘着テープに被せ、
ついで、前記シース材および粘着テープで囲まれた部分に止水剤を注入している。
【0014】
前記止水剤の注入時には、露出させたコア線の先端を上端として垂直方向に配置して、前記シース材および粘着テープで囲まれた部分の上端から下方にむけて止水剤を注入している。
【0015】
前記粘着テープに外嵌する前記シース材の先端側は斜めカットしたものでもよい。
この場合、止水剤の注入時には、前記シース材の斜めカット部を下面側として水平方向に配置し、前記斜めカット部の上方から止水剤を注入することができる。
止水剤をシース材の斜めカット部の上方から充填すると、斜めカットされた下面側が受皿となり、止水剤が下方へ流れ落ちるのを防止できる。
【0016】
また、前記シースの外周に巻き付けた前記粘着テープの外周面から前記シース材の外周面にかけて別の粘着テープが巻き付けてもよい。
前記のように、粘着テープの外周面にシース材を外嵌しているが、該シース材と粘着テープとの間に隙間があると該隙間から止水剤が流れ落ちる恐れがある。よって、シース材の外周面と前記粘着テープとの隙間を無くすために、別の粘着テープを巻き付けてもよい。
【0017】
前記コア線は2〜6本であり、前記粘着テープを外装したシース材の先端からコア線の露出させた先端までの寸法は80mm〜200mm程度としている。このように、シールド機能の点からコア線の露出領域は短い程よいが、前記した寸法を露出させると、コア線の端末に端子金具を圧着し、該端子金具をコネクタに挿入係止できる寸法を得ることができる。
【0018】
本発明のシールド電線は、車両に配索され、前記止水部を設けた端末側は非浸水領域の車室内に配索されると共に、反対側の端末に接続した端子は浸水領域に配置されるコネクタに接続され、該浸水領域側から浸入する水を前記止水部で遮断する場合に最も好適に用いられる。
【0019】
本発明で用いる止水剤としてはシリコーン、ウレタンアクリレート(UV)が挙げられる。特に、充填時に前記空隙への浸透性を良くするために、粘度が4〜6Pa・s程度の低粘度のシリコーンが好適に用いられる。
【発明の効果】
【0020】
前記のように、本発明のシールド電線では、止水剤を充填する止水部を厚肉のブチルパッドではなく、薄い粘着テープで隙間なく覆っているため、止水部の肥大化を抑制できる。よって、多数本のシールド線を集束したワイヤハーネスにおいて、止水部が集中しても極端な肥大化を防止でき、コルゲートチューブで外装することができる。
また、シースの切断位置を挟んだコア線の露出側のシース材の内部と、シース残留側の内部の両方に止水剤を充填し、特に、止水部をシースの皮剥領域のみに設けているのではなく、シースの切断位置から残留したシースの内部側の空隙に止水剤を浸透させて硬化させ、止水部を設けている。よって、サーマルショックや車両振動によりシース残留側の内部に設けた止水部がズレたり破壊されることはなく、止水性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)はシールド電線の断面図、(B)はシールド電線の車両での配線位置を示す概略図、(C)はシールド電線の端末のシール剥離位置を示す拡大図である。
【図2】(A)〜(F)は第1実施形態の止水部の形成工程を示す図面である。
【図3】止水剤の注入時の拡大断面図である。
【図4】第1実施形態のシールド電線の止水部の断面図である
【図5】(A)〜(F)は第2実施形態の止水部の形成工程を示す図面である。
【図6】(A)〜(F)は第3実施形態の止水部の形成工程を示す図面である。
【図7】従来例を示し、(A)シールド電線の断面図、(B)はシールド電線の配線状態を示す概略図である。
【図8】(A)は従来のシールド電線の止水部の断面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は問題点を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の止水部を備えたシールド電線の実施形態を説明する。
図1に示すように、シールド電線1の基本的構造は前記図7(A)と同一である。シールド電線1は2〜6本(本実施形態では6本)のコア線2とアース用のドレン線3とを金属箔または金属網チューブからなるシールド層4で被覆し、該シールド層4を絶縁樹脂層の外皮からなるシース5で被覆している。前記コア線2は多数本の銅系素線をより合わせた芯線を絶縁樹脂層で被覆した被覆丸電線である。
該シールド電線1は、前記図7(B)と同様に、両端末に端子金具7、8を圧着接続している。該シールド電線1はエンジンルームの浸水領域(X)から車室内の非浸水領域(Y)へと配索しており、浸水領域に位置させるシールド電線1の一端末に端子金具7を接続し、防水コネクタ9Aに挿入して接続するものとし、非浸水領域に位置させるシールド電線1の他端末に端子金具8を接続し、非防水コネクタ9Bに挿入して接続するものとしている。
前記シールド電線1の両端末では、シース5とシールド層4とを約80〜200mmにわたって皮剥ぎし、露出させたコア線2の端末を更に皮剥ぎして端子金具7、8を圧着している。
【0023】
前記シールド電線1は、浸水領域(X)側でシース5の切断端からシールド電線1の内部に侵入する水が非浸水領域(Y)側まで流れて端子金具8へと伝わり、非防水コネクタ9B内で腐食が発生するのを防止するため、端子金具8との接続側に後述する止水部10を設けている。
【0024】
図2乃至図4に第1実施形態の止水部10を設けたシールド電線1を示す。
第1実施形態の止水部10は図2に示す工程で形成している。
まず、シールド電線1の非浸水領域(Y)の端末側において、先端P2から120mmの位置でシース5およびシールド層4に環状の切り目をいれて切断する。切断後、図2(A)に示すように、シースおよびシールド層の切断位置P1から先端P2側へと移動させ、コア線2およびドレン線3を露出させる。移動させたシース5およびシールド層4が先端P2から80mm突出した位置で停止し、図2(B)に示すように、突出させた80mmを切断除去し、40mmの短いシース材5Aをコア線2の外周面に被覆した状態で残す。即ち、皮剥工程で切除したシースは廃棄せず、後工程で利用するシース材5Aとして残している。
【0025】
ついで、図2(C)に示すように、切断位置P1を挟んで、シース5の外周面から露出させたコア線2の外周面にかけて粘着テープ12をハーフラップ巻きする。該粘着テープ12はシース5の外周面での巻付部分12aは外径が大きいが、露出させたコア線2の外周の巻付部分12bでは外径が小さくなるため、粘着テープ12の巻き付け部分は円錐形状となる。この粘着テープ12を巻き付ける領域の長さは20mm程度である。
前記粘着テープ12として本実施形態では塩化ビニルテープの内面側に粘着剤を塗布したものを用い、肉厚は0.1mm〜0.2mmで、ハーフラップ巻きで2枚重ねした状態でも厚さは0.2mm〜0.4mmである。
【0026】
ついで、図2(D)に示すように、前記露出させたコア線2の外周面に残しているシース材5Aを切断位置P1側に戻すように移動させ、コア線2の外周の粘着テープの巻付部分12bの外周にシース材5Aを被せる。この状態で、切断位置P1からコア線2の露出側では、粘着テープの巻付部分12bに外嵌したシース材5Aが粘着テープの巻付部分12aから30mm程度突出し、該シース材5Aの先端からコア線2の先端までの寸法を80mmとしている。また、シース5の外周に巻き付けた粘着テープの巻付部分12aはシース材5Aのシース5との間にはみ出した状態となる。
【0027】
ついで、図2(E)に示すように、シース5の外周面の粘着テープの巻付部分12aおよびシース材5Aの外周面にかけて別の粘着テープ13をハーフラップ巻きで巻き付ける。これにより、シース材5Aの外周面からシース5の外周面にかけて隙間が完全に無い状態としている。
【0028】
ついで、図2(F)に示すように、シールド電線1を露出させたコア線2の先端位置P2を上端として垂直方向に保持する。この状態で、シース材5Aの上端で囲まれたコア線2の部分に粘度が5pa・sである比較的低粘度のシリコーン15からなる止水剤をノズル18から注入する。
【0029】
前記注入口16から溶融させてシリコーン15を注入すると、図3に示すように、シース材5および粘着テープの巻付部分12bで囲まれた内部で、コア線2同士の空隙およびコア線2とシース材5の空隙、粘着テープの巻付部分12bではコア線2と粘着テープ12bの内周面の空隙にシリコーン15が流れ落ちてくる。かつ、流れ落ちたシリコーン15がシースの切断位置P1に達すると、シース5の内周面とシールド層4、シールド層4とコア線2、コア線2同士の空隙にシリコーン15が浸透する。即ち、切断位置P1を挟んだ両側の空隙にシリコーン15が浸透して充填される。
【0030】
また、前記シリコーン15の注入口16では、図3に示すように、コア線2に巻き付けた粘着テープの巻付部分12bが先端に向かって縮径する円錐状になっているのに対して、外嵌するシース材5Aは円筒形状であるため、前記シリコーン15の注入口16の外周に上端開口に向けて拡がった受部17が存在する。
よって、注入口16が注入するシリコーン15が外部に溢れた時に受部17に受け入れることができ、シリコーン15がシールド電線1の外周面に沿って流れ落ちて付着するのを防止できる。
【0031】
前記のようにシリコーン15を注入後に、シールド電線1を水平方向に向きを変えて、所要時間静置し、注入したシリコーン15を自然硬化させる。
これにより、シールド電線1には、シース切断位置P1を挟んで、コア線露出側では粘着テープ12bとシース材5Aの内部の空隙が硬化したシリコーンで充填された止水部10aと、シース切断位置P1よりシース残留側でシース5の内部の空隙が硬化したシリコーンで充填された止水部10bとが連続的に形成される。
【0032】
前記止水部10aと10bとが連続した止水部10を備えたシールド電線1は、シース5を除去したコア線2の露出位置では厚肉のブチルパッドを用いず、薄い粘着テープ12と、切断除去したシース5を利用したシース材5Aで止水剤を被覆しているだけであるため、該止水部10の外径はブチルパッドを用いた場合より30%程度小径化することができる。
また、コア線2の露出箇所に設けた止水部10aに連続させて切断位置P1を越えてシース残留側の内部に止水部10bを設けているため、サーマルショックや車両振動の影響を抑制し、シース5とコア線2との間で充填硬化されているシリコーンのヒビやズレの発生を防ぐことができる。よって、サーマルショックにおける耐久試験で設定したシール性を確保することができる。
【0033】
図5に第2実施形態を示す。
第2実施形態は、第1実施形態の粘着テープ12aに外嵌するシース材を変えており、他の大径のシールド電線の切断除去するシース材50を用いている点が相違し、他の構成および止水部の形成方法は同様である。
【0034】
本第2実施形態では、図5(A)〜(F)に示すように止水部10を形成している。
即ち、図5(A)に示すように、シールド電線1の先端から120mmの長さでシース5およびシールド層4を切断除去する。
ついで、図5(B)に示すように、シールド電線1よりワンランク大きな他のシールド電線の切断除去して廃棄されるシースを再利用してシース材50として用い、露出させたコア線2の先端側に外嵌しておき、後工程で、該シース材50を移動させて粘着テープ12aの外周に被せ、その後、別の粘着テープ13をシース5から連続して巻き付け、その後、シリコーンからなる止水剤を注入しており、これらの工程は第1実施形態と同じである。
【0035】
この第2実施形態のように、ワンランク大きな他の廃棄されるシースを用いて、露出させたコア線2の被覆するシース材50とすると、該シース材50の内径が大きくなるため、シリコーンの所要の注入量を連続的に迅速に注入でき、シリコーンの注入作業の迅速化が図れ、生産性を高めることができる。
他の作用効果は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0036】
図6に第3実施形態を示す。
第3実施形態は、第1実施形態のシース材5Aの形状を変え、止水剤の注入時にシールド電線1を水平配置している点が相違し、他の構成および止水部の形成方法は第1実施形態と略同様である。
第3実施形態では、シース材5Aの先端側の下側部を斜めカットして、下面側に受部5A−1を設けている。
【0037】
本第3実施形態では、図6(A)に示すように、切断位置P1からシース5を移動させ、コア線2の先端から突出させたシース5を切断し、切断端を図6(B)に示すように、先端に向けて下方傾斜させて斜めカットし、先端側に斜めカットの受部5A−1を有するシース材5Aを設ける。その後、第1実施形態と同様に、図6(C)(D)に示すように、粘着テープ12を巻き付け、シース材5A−1を移動させて粘着テープ12に外嵌し、図6(E)に締めすように、再度粘着テープ13を巻き付ける。
その後、シールド電線1を水平状態としたまま、シース材5Aの受部5A−1の上端側からシース材5A内に向けて溶融させたシリコーン15を注入する。
【0038】
このように、シース材5Aの先端を斜めカットして下面側に受部5A−1を設けているため、シールド電線1を水平配置し、上方からシリコーン15を注入しても、該シリコーン15を受部5A−1で受け止めて溜めておくことができる。よって、シリコーンの注入量を定量とし、該定量のシリコーンを注入しても受部5A−1で溜めておくことができるように設定すると、シリコーンの設定量を一度の精度良く注入することができる。
他の作用効果は第1実施形態と同様であり、説明を省略する。
【符号の説明】
【0039】
1 シールド電線
2 コア線
4 シールド層
5 シース
5A シース材
5A−1 受部
10 止水部
12、13 粘着テープ
15 シリコーン
P1 切断位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のコア線をシールド層で被覆し、該シールド層を絶縁樹脂外皮からなるシースで被覆しているシールド電線であって、
前記シールド電線の端末側で前記シールド層およびシースが切断除去されて前記コア線が露出し、前記切断位置を挟んだ部分では前記シースの外周から露出させたコア線の外周面にかけて粘着テープが巻き付けられ、
さらに、前記コア線側の外周に巻き付けられた粘着テープの外周に密着させてシース材が外嵌され、前記切断位置を挟んで、コア線の露出側では前記シース材および前記粘着テープに囲まれた部分に止水剤が充填されると共に、シースの残留側の内部ではシース内部の空隙に止水剤が充填されている止水部を備えたシールド電線。
【請求項2】
前記粘着テープは、細幅でハーフラップ巻きされ又は広幅で寿司巻きとされ、前記切断位置を挟む前記シースの外周から前記露出したコア線の外周に前記粘着テープが連続して円錐状に巻き付けられ、該コア線の外周に巻き付けられた粘着テープの外周面と前記シース材の内周面との間に溢れた止水材の受け部が形成されている請求項1に記載の止水部を備えたシールド電線。
【請求項3】
前記粘着テープに外嵌する前記シース材の先端側は斜めカットされている請求項1または請求項2に記載の止水部を備えたシールド電線。
【請求項4】
前記シースの外周に巻き付けた前記粘着テープの外周面から前記シース材の外周面にかけて別の粘着テープが巻き付けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の止水部を備えたシールド電線。
【請求項5】
前記コア線は複数本であり、前記シース材の先端から露出した前記コア線の先端までの寸法は80mm〜200mmである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の止水部を備えたシールド電線。
【請求項6】
車両に配索され、前記止水部を設けた端末側は非浸水領域の車室内に配索されると共に、反対側の端末に接続した端子は浸水領域に配置されるコネクタに接続され、該浸水領域側から浸入する水を前記止水部で遮断している請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の止水部を備えたシールド電線。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のシールド電線の止水部の形成方法であって、
前記シールド電線の端末で、前記シールド層およびシースに環状の切断を入れ、切断された筒状のシールド層およびシースを端末側に移動させて、前記切断位置から前記コア線を露出させると共に、前記移動させたシールド層およびシースの先端側を切断除去して形成した短尺な前記シース材とし、
ついで、前記切断位置を挟んでシースの外周面から前記露出したコア線の外周面にかけて粘着テープを隙間なく巻き付け、
ついで、前記シース材を前記切断位置へと戻すように移動させて前記コア線の外周に巻き付けた粘着テープに被せ、
ついで、前記シース材および粘着テープで囲まれた部分に止水剤を注入しているシールド電線の止水部の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−65921(P2011−65921A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216731(P2009−216731)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】