説明

歩行ロボット

【課題】 本発明は、ピッチ方向大腿部関節及び膝関節の駆動構造が改善された歩行ロボットを提供するためのものである。
【解決手段】 本発明に係る歩行ロボットは、大腿リンクが上体に対してピッチ方向に回転されるように第1ピッチ方向の大腿部関節を駆動する第1ピッチ方向アクチュエータと、下腿リンクが大腿リンクに対してピッチ方向に回転されるように第1ピッチ方向アクチュエータの駆動力を上記膝関節に伝達する動力伝達装置を具備して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行ロボットに関し、より詳しくは、ピッチ方向大腿部関節と膝関節の駆動構造を改善した歩行ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用、軍事用、産業用の目的に、2足歩行、4足歩行などが可能な多様な形態の歩行ロボットが開発されている。
【0003】
大韓民国公開特許第2001−50273号は、2足歩行ロボットに該当する人型ロボット(humanoid)を開示している。
【0004】
大韓民国公開特許第2001−50273号に開示された人型ロボットは、上体と、胴体の上段部に設けられる頭部と、上体の上部両側に設けられる一対の腕と、上体の下部両側に設けられる一対の脚とを含む。
【0005】
各脚は、3自由度の大腿部関節を通じて上体と連結される大腿リンクと、1自由度の膝関節を通じて大腿リンクと連結される下腿リンクと、2自由度の足首関節を通じて下腿リンクと連結される足を含んで、総6自由度の運動が可能であるように設けられる。これにより、駆け足、歩きなどの歩行動作だけでなく、多様な下体動作が具現される。
【0006】
特に、駆け足、歩きなどの歩行動作は、主にピッチ方向大腿部関節及び膝関節の反復的な回動によりなされ、足の地面との接触時に地面から相当な大きさの衝撃がロボットに加えられる。この際、ピッチ方向大腿部関節、膝関節などを制御して、ある程度の衝撃緩和が可能である。
【0007】
しかしながら、従来の歩行ロボットは、各関節、特にピッチ方向大腿部関節及び膝関節が性能が相異する別のアクチュエータにより独立的に駆動されるので、効果的に衝撃を緩和させるためには、制御メカニズムが複雑になる問題点がある。
【0008】
また、従来の歩行ロボットでは、膝関節を駆動させるためのアクチュエータが膝関節に隣接するように配置されるので、歩行時に脚に大きい慣性力が発生し、大腿部関節駆動用アクチュエータに大きい負荷を加える問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、歩行ロボットのピッチ方向大腿部関節及び膝関節の駆動構造を改善して、制御メカニズムが簡単で、かつ歩行時に脚で発生する慣性力を減少させて、より小さな出力で、よりスムースな歩行が可能な歩行ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る歩行ロボットは、上体と大腿リンクとを連結する第1ピッチ方向大腿部関節と、大腿リンクと下腿リンクとを連結する膝関節を備える歩行ロボットであって、上記大腿リンクが上記上体に対してピッチ方向に回転されるように、上記第1ピッチ方向大腿部関節を駆動する第1ピッチ方向アクチュエータと、上記下腿リンクが上記大腿リンクに対してピッチ方向に回転されるように、上記第1ピッチ方向アクチュエータの駆動力を上記膝関節に伝達する動力伝達装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、上記上体と上記大腿リンクとを連結する第2ピッチ方向大腿部関節と、上記第2ピッチ方向大腿部関節を駆動する第2ピッチ方向アクチュエータをさらに備えることを特徴とする。
【0012】
また、上記第1ピッチ方向大腿部関節と上記第2ピッチ方向大腿部関節との間には上記第1ピッチ方向大腿部関節と上記第2ピッチ方向大腿部関節とを互いに結束または結束解除する電子クラッチと、上記電子クラッチに電源を供給または遮断する制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記第1ピッチ方向大腿部関節と上記第2ピッチ方向大腿部関節とが互いに結束される場合、上記制御部は上記第1ピッチ方向アクチュエータを停止させ、上記第2ピッチ方向アクチュエータを動作させることを特徴とする。
【0014】
また、上記第1ピッチ方向大腿部関節と上記第2ピッチ方向大腿部関節とが互いに結束解除される場合、上記制御部は上記第1ピッチ方向アクチュエータを動作させ、上記第2ピッチ方向アクチュエータを停止させることを特徴とする。
【0015】
また、上記制御部は、上記第2ピッチ方向アクチュエータを動作させることを特徴とする。
【0016】
また、上記動力伝達装置は、上記第1ピッチ方向大腿部関節に連結される上記大腿リンクと、上記大腿リンクと離隔して上記第2ピッチ方向大腿部関節と上記下腿リンクに回転可能に連結される伝達リンクを具備し、上記大腿リンクと上記下腿リンクとを連結する上記膝関節は、上記下腿リンクを長手方向に分けるどの一地点に設けられることを特徴とする。
【0017】
また、上記伝達リンクは、上記第2ピッチ方向大腿部関節の中心から所定間隔離隔して設置されることを特徴とする。
【0018】
また、上記動力伝達装置は、上記大腿リンクの回転方向と異なる方向に上記下腿リンクを回転させることを特徴とする。
【0019】
また、上記第1ピッチ方向アクチュエータと上記第2ピッチ方向アクチュエータは、各々回転力を発生させるモータと、回転速度を調節する減速機からなることを特徴とする。
【0020】
また、上記第1ピッチ方向大腿部関節と上記第2ピッチ方向大腿部関節は、同一な回転中心を持つことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る歩行ロボットは、上体と大腿リンクとを連結する第1ピッチ方向大腿部関節と、大腿リンクと下腿リンクとを連結する膝関節を備える歩行ロボットであって、上記大腿リンクを上記上体に対してピッチ方向に回転させるために、上記第1ピッチ方向大腿部関節を駆動する第1ピッチ方向アクチュエータと、上記下腿リンクを上記大腿リンクに対してピッチ方向に回転させるために上記第1ピッチ方向アクチュエータと連動されて上記膝関節を駆動する動力伝達装置と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る歩行ロボットは、上体と、上記上体に連結され、大腿リンクと下腿リンクを持つレグ部と、上記上体に対して上記レグ部をピッチ方向に回転させるための第1ピッチ方向大腿部関節及び第2ピッチ方向大腿部関節と、上記第1ピッチ方向大腿部関節を駆動する第1ピッチ方向アクチュエータと、上記第1ピッチ方向大腿部関節と第2ピッチ方向大腿部関節を駆動する第2ピッチ方向アクチュエータと、上記下腿リンクが上記大腿リンクに対してピッチ方向に相対回転するように上記第2ピッチ方向大腿部関節と上記下腿リンクとを連結する伝達リンクと、を含む。
【0023】
また、上記第2ピッチ方向アクチュエータによる上記第2ピッチ方向大腿部関節の回転力を上記第1ピッチ方向大腿部関節に伝達または遮断する動力団束装置をさらに含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る歩行ロボットでは、ピッチ方向大腿部関節及び膝関節の制御が簡単になる。
【0025】
また、歩行ロボットの歩行時に脚で発生する慣性力が格段に減少されて脚の駆動に必要とされる出力が減少する。
【0026】
また、大腿リンク及び下腿リンクのピッチ方向回動のための2つのアクチュエータのうち、一つのアクチュエータを低い出力を持つアクチュエータに代替することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る歩行ロボットのレグ部の関節構造を中心にして模式的に示す概略図である。
【図2】図1で示したレグ部12Lの右側を詳細に示す右側面図である。
【図3】図1で示したレグ部12Lの正面を詳細に示す正面図である。
【図4】本発明に係るレグ部12Lにおいて、大腿リンクと下腿リンクが互いに反対方向に回転することを示す状態図である。
【図5】本発明に係るレグ部12Lにおいて、大腿リンクと下腿リンクが同一な方向に一緒に回転することを示す状態図である。
【図6】本発明に係るレグ部12Lにおいて、大腿リンクと下腿リンクが同一な方向に一緒に回転することを示す状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る歩行ロボットの好ましい実施形態を添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る歩行ロボットのレグ部の関節構造を中心にして模式的に示す概略図である。図1に示すように、二足歩行ロボット(以下、「ロボット」という)10は、左右それぞれのレグ部12R、12L(右側をR、左側をLとする。以下、同一である)を備える。左右それぞれのレグ部12R、12Lは、上体14と大腿リンク16R、16Lとを連結する大腿部関節18R、18Lと、大腿リンク16R、16Lと下腿リンク20R、20Lとを連結する膝関節22R、22Lと、下腿リンク20R、20Lと足裏24R、24Lとを連結する足首関節26R、26Lを持つ。
【0030】
大腿部関節18R、18Lは、大腿リンク16R、16Lから末端側(足裏側)を重力軸(Z軸。即ち、重力方向)の周りに回転させるヨー(yaw)方向大腿部関節18RZ、18LZと、大腿リンク16R、16Lから末端側を前後軸(X軸。即ち、進行方向)の周りに回転させるロール方向大腿部関節18RX、18LXと、大腿リンク16R、16Lから末端側を左右軸(Y軸。即ち、進行方向及び重力方向と直交する方向)の周りに回転させるピッチ方向大腿部関節18RY、18LYとからなる。
【0031】
膝関節22R、22Lは、下腿リンク20R、20Lから末端側を左右軸の周りに回転させるピッチ方向膝関節22RY、22LYからなる。また、足首関節26R、26Lは、足裏24R、24Lを前後軸の周りに回転させるロール方向足首関節26RX、26LXと、足裏24R、24Lを左右軸の周りに回転させるピッチ方向足首関節26RY、26LYとからなる。前述した各軸は、電動モータ(同図面では図示せず。一部後述)により駆動される。
【0032】
足首関節26R、26Lと足裏24R、24Lとの間には、公知の6軸力センサ30R、30Lが付着されて、力の3方向成分(Fx、Fy、Fz)とモーメントの3方向成分(Mx、My、Mz)を測定して、レグ部12R、12Lの着地の有無と、床面からレグ部12R、12Lに作用する床反力などを検出する。また、上体14には傾斜センサ32が設置されて、ロボット10のZ軸に対する傾斜とその各速度を検出する。また、各軸を駆動する電動モータには、その回転量を検出するロータリーエンコーダー(図示せず)が設置される。
【0033】
これらの6軸力センサ30R、30Lや傾斜センサ32などの出力は、上体14に受容された制御ユニット34に入力される。制御ユニット34は、メモリ(図示せず)に格納されているデータ及び入力された検出値に基づいて、各軸を駆動する電動モータの制御値を算出する。
【0034】
このように、ロボット10は、左右のレグ部12R、12Lの各々に対し、6個の軸(自由度)が与えられて、これら6×2=12個の軸を駆動する電動モータを制御ユニット34で算出された制御値に基づいて動作させることによって、脚全体に希望する動きを与えて、任意に3次元空間を移動することができる。
【0035】
以下、図2乃至図6を参照して、ロボット10のレグ部12R、12Lについて詳細に説明する。左側のレグ部12Lを例として説明するが、左右のレグ部12R、12Lは左右対称であるので、以下の説明は右側のレグ部12Rにも妥当である。
【0036】
図2は図1で示したレグ部12Lの右側を詳細に示す側面図であり、図3は図1で示したレグ部12Lの前面を詳細に示す正面図である。
【0037】
図2及び図3に示すように、ヨー方向大腿部関節18LZを駆動して、レグ部12LをZ軸の周りに回転させるヨー方向大腿部関節アクチュエータ18LZAが設置され、ロール方向大腿部関節18LXを駆動して、レグ部12LをX軸の周りに回転させるロール方向大腿部関節アクチュエータ18LXAが設置され、ピッチ方向大腿部関節18LYを駆動してレグ部12LをY軸の周りに回転させるピッチ方向大腿部関節アクチュエータ18LYAが設置される。
【0038】
ピッチ方向大腿部関節18LYは、第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42とからなるが、第1ピッチ方向大腿部関節41が第2ピッチ方向大腿部関節42上で回転可能に設けられる。第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42との間には動力団束装置の一例として電子クラッチ60が設けられるが、電子クラッチ60は第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42とを結束または結束解除させることができる。より詳細に説明すると、電子クラッチ60は磁気力を発生させるコイルを具備しているが、コイルに電源を供給すると磁気力を発生することになり、この磁気力によって第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42とが結束される。これと反対に、コイルに電源の供給を中断すると磁気力が消えて、第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42との結束が解除される。
【0039】
ピッチ方向大腿部関節アクチュエータ18LYAは、第1ピッチ方向大腿部関節41を駆動して大腿リンク16Lを上体14に対してピッチ方向に回転させる第1ピッチ方向アクチュエータ51と、第2ピッチ方向大腿部関節42を駆動して大腿リンク16Lを上体14に対してピッチ方向に回転させる第2ピッチ方向アクチュエータ52とを備える。第1ピッチ方向アクチュエータ51と第2ピッチ方向アクチュエータ52は、各々モータMと減速機Rからなり、第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42を駆動する。この際、モータMには電源が供給されることで、動作するようになる。
【0040】
前述したように、第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42は、各々回転可能に設置される。但し、電子クラッチ60に電源が供給されて、第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42とが結束される場合、第2ピッチ方向アクチュエータ52に挿入されたモータMには電源が供給されて、第2ピッチ方向大腿部関節42が第2ピッチ方向アクチュエータ52により駆動されるが、第1ピッチ方向アクチュエータ51に挿入されたモータMには電源が供給されないので、第1ピッチ方向大腿部関節41は第1ピッチ方向アクチュエータ51により駆動できない。この際、第1ピッチ方向大腿部関節41は、第2ピッチ方向大腿部関節42に結束されて第2ピッチ方向アクチュエータ52により回転する。
【0041】
これと反対に、電子クラッチ60に電源供給が中断されて、第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42とが結束解除される場合、第1ピッチ方向アクチュエータ51に挿入されたモータMには電源が供給されるが、第2ピッチ方向アクチュエータ52に挿入されたモータMには電源が供給されない。したがって、第1ピッチ方向アクチュエータ51に連結される第1ピッチ方向大腿部関節41は駆動するが、第2ピッチ方向アクチュエータ52と連結解除される第2ピッチ方向大腿部関節42は駆動できない。これと共に、第2ピッチ方向大腿部関節42の回転を必要とする場合には、第2ピッチ方向アクチュエータ52に電源を供給することができる。
【0042】
このように、第1ピッチ方向大腿部関節41を独立的に駆動させるか、第1ピッチ方向大腿部関節41と同時に第2ピッチ方向大腿部関節42を駆動させるか、第1ピッチ方向大腿部関節41を第2ピッチ方向大腿部関節42に従属させて駆動させるためには、第1ピッチ方向アクチュエータ51と第2ピッチ方向アクチュエータ52の動作を制御し、電子クラッチ60の動作を制御できる制御部61が設けられる。ここで、制御部61は第1ピッチ方向アクチュエータ51と第2ピッチ方向アクチュエータ52に挿入されたモータMに電源を供給または遮断し、電子クラッチ60に電源を供給または遮断する。
【0043】
膝関節22L(図1参照)は、下腿リンク20Lを大腿リンク16Lに対してピッチ方向のみに回転させるピッチ方向膝関節22LY(図1参照)からなる。
【0044】
図2及び図3に示すように、第1ピッチ方向アクチュエータ51の駆動力を膝関節22Lに伝達させる動力伝達装置70が設けられる。
【0045】
動力伝達装置70は、大腿リンク16Lと、この大腿リンク16Lと所定距離離隔して設置される伝達リンク73を備える。大腿リンク16Lの一端71は第1ピッチ方向大腿部関節41に固定され、大腿リンク16Lの他端72は膝関節22LYに回転可能に連結される。伝達リンク73の一端74は第2ピッチ方向大腿部関節42に回転可能に設置され、伝達リンク73の他端75は下腿リンク20Lに回転可能に設置される。この際、伝達リンク73の一端74は第2ピッチ方向大腿部関節42の中心から所定距離離れて設置される。
【0046】
膝関節22LYは、下腿リンク20Lを長手方向に分けるどの一地点に設けられる。これで、下腿リンク20Lは膝関節22LYを軸にしてシーソー運動が可能になる。言い換えると、下腿リンク20Lは大腿リンク16Lに対してピッチ方向に回転運動可能になる。結局、大腿リンク16Lと下腿リンク20Lは、概略的に平行四辺形リンク構造を持つことになるので、大腿リンク16Lと伝達リンク73の相対運動に従って下腿リンク20Lも相対運動をするようになる。
【0047】
以下、レグ部12Lの動作を説明しながら動力伝達装置70が膝関節22LYを駆動させる動作について説明する。
【0048】
まず、図2及び図3を参照してレグ部12Lが膝関節22Lを基準にして折れるための第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42の動作を説明する。制御部61が電子クラッチ60に電源供給を遮断すると、第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42とは結束解除される。これと共に、制御部61が第1ピッチ方向アクチュエータ51に電源を供給し、第2ピッチ方向アクチュエータ52に電源供給を遮断すると、第1ピッチ方向大腿部関節41は駆動し、第2ピッチ方向大腿部関節42は駆動しない。
【0049】
図4は、本発明に係るレグ部が第1ピッチ方向アクチュエータにより動作することを示す状態図である。図4に示すように、第1ピッチ方向大腿部関節41が駆動すると、大腿リンク16Lの一端71は第1ピッチ方向大腿部関節41に一体に連結されるので、大腿リンク16Lは上体14に対してピッチ方向に回転する。伝達リンク73は第2ピッチ方向大腿部関節42が駆動しないので、伝達リンク73の一端74が第2ピッチ方向大腿部関節42の中心を基準にして回転しない。但し、このような場合にも下腿リンク20Lと連結された伝達リンク73は第2ピッチ方向大腿部関節42に回転可能に連結された一端74を軸にして回転するようになる。
【0050】
これによって、伝達リンク73の他端75は下腿リンク20Lを加圧することになり、下腿リンク20Lは膝関節22LYを軸にしてシーソー運動する。即ち、膝関節22LYを駆動して下腿リンク20Lが大腿リンク16Lに対してピッチ方向に回転させるものである。この際、下腿リンク20Lが回転する方向は大腿リンク16Lが上体14に対して回転する方向と互いに反対になる。
【0051】
結局、図4に示すように、レグ部12Lは膝関節22LYを軸にして折れることになり、足裏24Lは地面から離れて上側へ移動する。
【0052】
以下、レグ部12Lが膝関節22LYを軸にして折れた状態で、または折れていない状態で大腿リンク16Lと下腿リンク20Lが同一な方向に一緒に回転することについて説明する。
【0053】
まず、図2及び図3を参照して大腿リンク16Lと下腿リンク20Lを同一な方向に一緒に回転させるために必要な第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42の動作を説明する。制御部61が電子クラッチ60に電源を供給すると、第1ピッチ方向大腿部関節41と第2ピッチ方向大腿部関節42は結束される。これと共に、制御部61が第1ピッチ方向アクチュエータ51に電源供給を遮断し、第2ピッチ方向アクチュエータ52に電源を供給すると、第1ピッチ方向大腿部関節41は駆動せず、第2ピッチ方向アクチュエータ52は駆動する。
【0054】
図5は、本発明に係るレグ部が第2ピッチ方向アクチュエータにより前方に回転することを示す状態図である。図5は、レグ部12Lが膝関節22LYを軸にして折れていない状態でレグ部12Lが前方に回転することを表す。この際、大腿リンク16Lと下腿リンク20Lは同一な方向に回転しながら相対回転が発生させない。図5を参照すると、第2ピッチ方向大腿部関節42が駆動すると、大腿リンク16Lは第2ピッチ方向大腿部関節42の中心を軸にして上体14に対してピッチ方向に回転する。この際、伝達リンク73の一端74は第2ピッチ方向大腿部関節42と一緒に回転するので、伝達リンク73は大腿リンク16Lと略平行するように一定の間隔を維持しながら回転する。したがって、伝達リンク73の他端75が下腿リンク20Lを加圧しなくなり、これによって、下腿リンク20Lは膝関節22LYを軸にして回転しなくなって、大腿リンク16Lと一緒に上体14に対してピッチ方向に回転する。
【0055】
図6は、本発明に係るレグ部が第2ピッチ方向アクチュエータにより後方に回転することを示す状態図である。図6は、レグ部12Lが膝関節22LYを軸にして折れた状態で後方へ回転することを表す。この際、大腿リンク16Lと下腿リンク20Lは同一な方向に回転しながら相対回転が発生させない。
【0056】
図6に示されたレグ部12Lの初期位置は、図4に示されたレグ部12Lと同一である。即ち、図4のようにレグ部12Lが足首関節26Lを軸にして折れた状態で第2ピッチ方向アクチュエータ52により後方に回転することを表す。
【0057】
図6に示されたレグ部12Lが第2ピッチ方向アクチュエータ52により回転する動作原理は、図5に示されたレグ部12Lが第2ピッチ方向アクチュエータ52により回転する動作原理と同一である。但し、図5でのレグ部12Lは前方に回転するが、図6でのレグ部12Lは後方に回転することが互いに相違している。
【0058】
但し、図6のように、レグ部12Lを回転させる理由は、図4に示すように、大腿リンク16Lと下腿リンク20Lが互いに反対方向に回転すると、足首関節26Lがヨー方向大腿部関節18LZから大きく外れた場合が存在することになる。このような場合、レグ部12Lにより重心が揺れてロボット10がバランスを取り難いという問題点が生じることがある。
【0059】
これに、制御部61が第1ピッチ方向アクチュエータ51を動作させて図4のように大腿リンク16Lと下腿リンク20Lを互いに反対方向に回転させ、これと共に(または、順次に)制御部61が第2ピッチ方向アクチュエータ52を動作させて、図6のように大腿リンク16Lと下腿リンク20Lを同一な方向に回転させる。結局、図6に示すように、足首関節26Lがヨー方向大腿部関節18LZ線上に位置することになって、ロボット10の均衡が維持できる。
【0060】
図2乃至図6では、第1ピッチ方向アクチュエータ51の駆動力を動力伝達装置70に通じて膝関節22LYに伝達することによって、下腿リンク20Lが大腿リンク16Lに対してピッチ方向に回転する駆動構造と、第2ピッチ方向アクチュエータ52の駆動力によって下腿リンク20Lが大腿リンク16Lと一緒に上体14に対してピッチ方向に回転する駆動構造に対して開示している。
【0061】
また、図2及び図3にはロール方向足首関節26LXを駆動して足裏24Lを前後軸の周りに回転させるロール方向アクチュエータ26LXAが設置され、ピッチ方向足首関節26LYを駆動して足裏24Lを左右軸の周りに回転させるピッチ方向アクチュエータ26LYAが設置される。これらロール方向アクチュエータ26LXAとピッチ方向アクチュエータ26LYAは、モータ及び減速機で構成されることができ、その他にリニアアクチュエータなど、いろいろな他の部品から構成されることができる。足首関節26Lの駆動構造は、本発明の要旨とあまり関係ないので、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0062】
10 ロボット
12R、12L レグ部
14 上体
16R、16L 大腿リンク
20R、20L 下腿リンク
22R、22L 膝関節
24R、24L 足裏関節
26R、26L 足首関節
34 制御ユニット
41 第1ピッチ方向大腿部関節
42 第2ピッチ方向大腿部関節
51 第1ピッチ方向アクチュエータ
52 第2ピッチ方向アクチュエータ
60 電子クラッチ
61 制御部
70 動力伝達装置
73 伝達リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上体と大腿リンクとを連結する第1ピッチ方向大腿部関節と、大腿リンクと下腿リンクとを連結する膝関節を備える歩行ロボットであって、
前記大腿リンクが前記上体に対してピッチ方向に回転されるように、前記第1ピッチ方向大腿部関節を駆動する第1ピッチ方向アクチュエータと、
前記下腿リンクが前記大腿リンクに対してピッチ方向に回転されるように、前記第1ピッチ方向アクチュエータの駆動力を前記膝関節に伝達する動力伝達装置と、
を備えることを特徴とする歩行ロボット。
【請求項2】
前記上体と前記大腿リンクとを連結する第2ピッチ方向大腿部関節と、前記第2ピッチ方向大腿部関節を駆動する第2ピッチ方向アクチュエータをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の歩行ロボット。
【請求項3】
前記第1ピッチ方向大腿部関節と前記第2ピッチ方向大腿部関節との間には、前記第1ピッチ方向大腿部関節と前記第2ピッチ方向大腿部関節とを互いに結束または結束解除する動力団束装置と、前記動力団束装置を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の歩行ロボット。
【請求項4】
前記第1ピッチ方向大腿部関節と前記第2ピッチ方向大腿部関節とが互いに結束される場合、前記制御部は前記第1ピッチ方向アクチュエータを停止させ、前記第2ピッチ方向アクチュエータを動作させることを特徴とする請求項3に記載の歩行ロボット。
【請求項5】
前記第1ピッチ方向大腿部関節と前記第2ピッチ方向大腿部関節とが互いに結束解除される場合、前記制御部は前記第1ピッチ方向アクチュエータを動作させ、前記第2ピッチ方向アクチュエータを停止させることを特徴とする請求項3に記載の歩行ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2ピッチ方向アクチュエータを動作させることを特徴とする請求項5に記載の歩行ロボット。
【請求項7】
前記動力伝達装置は、
前記第1ピッチ方向大腿部関節に連結される前記大腿リンクと、前記大腿リンクと離隔して前記第2ピッチ方向大腿部関節と前記下腿リンクに回転可能に連結される伝達リンクを具備し、
前記大腿リンクと前記下腿リンクとを連結する前記膝関節は、前記下腿リンクを長手方向に分けるどの一地点に設けられることを特徴とする請求項2に記載の歩行ロボット。
【請求項8】
前記伝達リンクは、前記第2ピッチ方向大腿部関節の中心から所定間隔離隔して設置されることを特徴とする請求項7に記載の歩行ロボット。
【請求項9】
前記第1ピッチ方向大腿部関節が駆動される際、前記動力伝達装置は、前記下腿リンクを前記大腿リンクの回転方向と異なる方向に回転させることを特徴とする請求項1に記載の歩行ロボット。
【請求項10】
前記第2ピッチ方向大腿部関節が駆動される際、前記動力伝達装置は、前記下腿リンクを前記大腿リンクの回転方向と同一な方向に回転させることを特徴とする請求項2に記載の歩行ロボット。
【請求項11】
前記第1ピッチ方向アクチュエータと前記第2ピッチ方向アクチュエータは、各々回転力を発生させるモータと、回転速度を調節する減速機からなることを特徴とする請求項2に記載の歩行ロボット。
【請求項12】
前記第1ピッチ方向大腿部関節と前記第2ピッチ方向大腿部関節は、同一な回転中心を持つことを特徴とする請求項2に記載の歩行ロボット。
【請求項13】
上体と大腿リンクとを連結する第1ピッチ方向大腿部関節と、大腿リンクと下腿リンクとを連結する膝関節を備える歩行ロボットであって、
前記大腿リンクを前記上体に対してピッチ方向に回転させるために、前記第1ピッチ方向大腿部関節を駆動する第1ピッチ方向アクチュエータと、
前記下腿リンクを前記大腿リンクに対してピッチ方向に回転させるために前記第1ピッチ方向アクチュエータと連動されて前記膝関節を駆動する動力伝達装置と、
を備えることを特徴とする歩行ロボット。
【請求項14】
上体と、
前記上体に連結され、大腿リンクと下腿リンクを持つレグ部と、
前記上体に対し、前記レグ部をピッチ方向に回転させるための第1ピッチ方向大腿部関節及び第2ピッチ方向大腿部関節と、
前記第1ピッチ方向大腿部関節を駆動する第1ピッチ方向アクチュエータと、
前記第1ピッチ方向大腿部関節と第2ピッチ方向大腿部関節を駆動する第2ピッチ方向アクチュエータと、
前記下腿リンクが前記大腿リンクに対し、ピッチ方向に相対回転するように前記第2ピッチ方向大腿部関節と前記下腿リンクとを連結する伝達リンクと、
を含むことを特徴とする歩行ロボット。
【請求項15】
前記第2ピッチ方向アクチュエータによる前記第2ピッチ方向大腿部関節の回転力を前記第1ピッチ方向大腿部関節に伝達または遮断する動力団束装置をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の歩行ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−291933(P2009−291933A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66990(P2009−66990)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】