説明

歩行型移動農機のマフラ冷却構造

【課題】マフラカバーがマフラの熱で変形したり破損する可能性を低減する。
【解決手段】エンジン5の排気音を消音するマフラ11と、マフラ11の外側方を覆うマフラカバー12と、を備える歩行型管理機1において、所定の間隔を存してマフラ11の上面及び左右側面を覆い、マフラ11の上面及び左右側面との間に冷却風路を形成する正面視冂字状の冷却風路形成部材15と、マフラ11の下方位置からベルト伝動機構6の内側方に向けて傾斜状に延出し、エンジン5の冷却風出口5cからベルト伝動機構6に向けて排出される冷却風をマフラ11と冷却風路形成部材15との間の冷却風路に導く導風部材16と、を備え、冷却風路内に導いた冷却風をマフラ11の前方及び/又は後方から排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型管理機などの歩行型移動農機のマフラ冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歩行型管理機などの歩行型移動農機は、エンジンの排気音を消音するマフラを備えている。マフラは、エンジンの排気ガスが内部に充満し、その外側は高温になるので、通常はマフラカバーで覆われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−302139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外側が高温になるマフラを樹脂製のマフラカバーで覆っている歩行型移動農機では、マフラカバーがマフラの熱で変形したり破損する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、冷却ファンを備える空冷式のエンジンと、エンジンの動力をミッションケースに伝動するベルト伝動機構と、ベルト伝動機構の外側方を覆うベルトカバーと、ベルト伝動機構の上方に配置され、エンジンの排気音を消音するマフラと、マフラの外側方を覆うマフラカバーと、を備える歩行型移動農機において、所定の間隔を存してマフラの上面及び左右側面を覆い、マフラの上面及び左右側面との間に冷却風路を形成する正面視冂字状の冷却風路形成部材と、マフラの下方位置からベルト伝動機構の内側方に向けて傾斜状に延出し、エンジンの冷却風出口からベルト伝動機構に向けて排出される冷却風をマフラと冷却風路形成部材との間の冷却風路に導く導風部材と、を備え、冷却風路内に導いた冷却風をマフラの前方及び/又は後方から排出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エンジンから排出される冷却風を、マフラの周囲に形成した冷却風路に沿って排出することにより、マフラを効率良く冷却し、マフラカバーがマフラの熱で変形したり破損する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】歩行型管理機の左側面図である。
【図2】歩行型管理機の要部左側面図である。
【図3】マフラカバー及びベルトカバーを外した状態を示す歩行型管理機の要部左側面図である。
【図4】ベルトカバーを外した状態を示す歩行型管理機の要部正面図である。
【図5】マフラカバー及びベルトカバーを外した状態を示す歩行型管理機の要部正面図である。
【図6】マフラ冷却作用を示す歩行型管理機の要部概略左側面図である。
【図7】マフラ冷却作用を示す歩行型管理機の要部概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は歩行型管理機(歩行型移動農機)であって、該歩行型管理機1は、機体フレームに兼用されるミッションケース2を備えている。ミッションケース2の左右両側方には、車軸(図示せず)を介して車輪3が取り付けられ、ミッションケース2の後方には、ロータリ式の耕耘部4が構成され、ミッションケース2の前方には、空冷式のエンジン5が搭載されている。エンジン5の動力は、ベルト伝動機構6を介してミッションケース2に入力され、ミッションケース2内の変速機構で変速された後、車輪3及び耕耘部4に伝動される。
【0009】
ミッションケース2の後部には、後方斜め上方に向かって突出するハンドル7が取り付けられている。ハンドル7には、クラッチ操作レバー8及びスロットル操作レバー9が設けられており、クラッチ操作レバー8の操作に応じて、ベルト伝動機構6に設けられるベルトテンション式のクラッチ機構6aが入り切りされ、スロットル操作レバー9の操作に応じて、エンジン5の回転数が変更されるようになっている。
【0010】
さらに、ミッションケース2の後部には、後方斜め上方に向かって突出する変速操作レバー10が設けられている。変速操作レバー10は、ミッションケース2内の変速機構を変速操作するための操作具であり、変速操作レバー10の操作に応じて、車輪3及び耕耘部4の駆動速度や回転方向が変速されるようになっている。
【0011】
エンジン5は、クランク軸部が前側、シリンダ部が後側となるように前低後高状の傾斜姿勢で機体前部に搭載されている。また、クランク軸部の右側部には、リコイルスタータ5aやファンケース5bが設けられており、ファンケース5b内には、冷却風を起風する冷却ファン(図示せず)が内装されている。冷却ファンは、クランク軸の動力で回転駆動され、起風した冷却風は、エンジン5のシリンダ部などを冷却すべく、クランク軸部の冷却風出口5cから排出される。これにより、走行停止状態でも、冷却ファンからの冷却風によってエンジン5を冷却することが可能になる。
【0012】
図8に示すように、エンジン5の近傍には、エンジン5の排気音を消音するマフラ11が設けられている。本実施形態のマフラ11は、エンジン5の左側上方に設けられており、エンジン5の排気ガスを、導入管11aを介して内部に導入し、前面部の排気管11bから排出する過程で排気音を消音するようになっている。このようなマフラ11は、内部に排気ガスが充満し、その外側は高温になるので、マフラカバー12で覆う必要がある。
【0013】
本発明の実施形態に係る歩行型管理機1は、機体を覆うカバー類として、上記マフラカバー12の他に、エンジン5の上方を覆うボンネット13や、ベルト伝動機構6の側方を覆うベルトカバー14を備えている。本実施形態のボンネット13は、下方が開口した略半球形状の樹脂製カバーであり、エンジン5の上方を覆う位置に着脱自在又は回動自在(開閉自在)に設けられている。また、ベルトカバー14は、側面視略長円形状の樹脂製カバーであり、ベルト伝動機構6の側方を覆う位置に着脱自在に設けられている。そして、マフラ11は、側面視でボンネット13とベルトカバー14との間に配置され、その側方がマフラカバー12で覆われるようになっている。
【0014】
マフラカバー12は、側面視略長円形状の樹脂製カバーであり、側面視でベルトカバー14の上側に並列状に配置される。マフラカバー12の成形に用いられる樹脂材料としては、ボンネット13やベルトカバー14の樹脂材料に比べて耐熱温度が高いものが選択されるが、カバー内部にマフラ11の熱がこもると、限界温度を超えてマフラカバー12が熱で変形したり破損する可能性がある。尚、マフラカバー12は、ボンネット13に一体的に取り付けてもよいし、機体に着脱自在に取り付けてもよい。
【0015】
マフラカバー12の熱変形や熱破損を防止するために、本発明の実施形態に係る歩行型管理機1は、冷却風路形成部材15と導風部材16を備えている。冷却風路形成部材15は、金属板を曲げ加工して形成される正面視冂字状の部材であり、所定の間隔を存してマフラ11の上面及び左右側面を覆い、マフラ11の上面及び左右側面との間に冷却風路を形成している。
【0016】
導風部材16は、金属板を曲げ加工して形成される正面視逆L字状の部材であり、所定の間隔を存してマフラ11の下面を覆い、マフラ11の下面との間に冷却風路を形成する冷却風路形成部16aと、冷却風路形成部16aの機体中心側端部からベルト伝動機構6の内側方に向けて傾斜状に延出する導風部16bとを備えている。
【0017】
導風部16bは、エンジン5の冷却風出口5cからベルト伝動機構6に向けて排出される冷却風をマフラ11と冷却風路形成部材15との間の冷却風路に導くことができる。換言すれば、エンジン5の冷却風出口5cからベルト伝動機構6に向けて排出される冷却風をマフラ11と冷却風路形成部材15との間の冷却風路に導くように導風部16bの傾斜が設定されている。そして、冷却風路内に導かれた冷却風は、マフラ11の表面に沿って流れ、マフラ11の前方及び後方(冷却風路形成部材15の前部開口及び後部開口)から排出される。
【0018】
このようにすると、エンジン5から排出される冷却風を利用してマフラ11を効率良く冷却できるので、マフラカバー12がマフラ11の熱で変形したり破損する可能性を低減できる。しかも、導風部材16の導風部16bは、ベルト伝動機構6の内側方を覆うように配置されるので、機体の右側から機体内部に手を入れた際に、ベルト伝動機構6との接触を防ぐ保護カバーとして機能するので、専用の保護カバーを別途設ける場合に比べてコストダウンが図れるという利点がある。
【0019】
叙述の如く構成されたものにおいて、冷却ファンを備える空冷式のエンジン5と、エンジン5の動力をミッションケース2に伝動するベルト伝動機構6と、ベルト伝動機構6の外側方を覆うベルトカバー14と、ベルト伝動機構6の上方に配置され、エンジン5の排気音を消音するマフラ11と、マフラ11の外側方を覆うマフラカバー12と、を備える歩行型管理機1において、所定の間隔を存してマフラ11の上面及び左右側面を覆い、マフラ11の上面及び左右側面との間に冷却風路を形成する正面視冂字状の冷却風路形成部材15と、マフラ11の下方位置からベルト伝動機構6の内側方に向けて傾斜状に延出し、エンジン5の冷却風出口5cからベルト伝動機構6に向けて排出される冷却風をマフラ11と冷却風路形成部材15との間の冷却風路に導く導風部材16と、を備え、冷却風路内に導いた冷却風をマフラ11の前方及び/又は後方から排出させるので、エンジン5から排出される冷却風を、マフラ11の周囲に形成した冷却風路に沿って排出することにより、マフラ11を効率良く冷却し、マフラカバー12がマフラ11の熱で変形したり破損する可能性を低減できる。
【符号の説明】
【0020】
1 歩行型管理機
5 エンジン
5b ファンケース
5c 冷却風出口
6 ベルト伝動機構
11 マフラ
11a 導入管
11b 排気管
12 マフラカバー
14 ベルトカバー
15 冷却風路形成部材
16 導風部材
16a 冷却風路形成部
16b 導風部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンを備える空冷式のエンジンと、
エンジンの動力をミッションケースに伝動するベルト伝動機構と、
ベルト伝動機構の外側方を覆うベルトカバーと、
ベルト伝動機構の上方に配置され、エンジンの排気音を消音するマフラと、
マフラの外側方を覆うマフラカバーと、を備える歩行型移動農機において、
所定の間隔を存してマフラの上面及び左右側面を覆い、マフラの上面及び左右側面との間に冷却風路を形成する正面視冂字状の冷却風路形成部材と、
マフラの下方位置からベルト伝動機構の内側方に向けて傾斜状に延出し、エンジンの冷却風出口からベルト伝動機構に向けて排出される冷却風をマフラと冷却風路形成部材との間の冷却風路に導く導風部材と、を備え、
冷却風路内に導いた冷却風をマフラの前方及び/又は後方から排出させることを特徴とする歩行型移動農機のマフラ冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−228937(P2012−228937A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98076(P2011−98076)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】