説明

歩行支援装置、及び歩行支援プログラム

【課題】装着者の筋力に応じた歩行支援を行う。
【解決手段】装着型ロボット1(図1)は、超音波センサ35によって装着者の大腿部の筋厚と皮脂厚を測定し、これによって装着者の骨格筋率(体組成情報)を推定する。装着型ロボット1は、予め様々な被験者の骨格筋率の平均値を記憶しており、装着者の骨格筋率が平均値よりも小さい場合は、アシスト力を強めに調節し、平均値よりも大きい場合はアシスト力を弱めに調節する。即ち、装着型ロボット1は、装着者の骨格筋率によって装着者の脚部の筋力を推定し、筋力が弱い場合にはアシスト力を強めに設定し、筋力が強い場合はアシスト力を弱めに設定する。このように、装着型ロボット1は、装着者の脚部の筋力の個人差に応じて自動的にアシスト力を調節するため、装着者は、筋力の個人差によらずに快適な歩行支援を受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援装置、及び歩行支援プログラムに関し、例えば、歩行をアシストするものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、介護ビジネスなどを中心に、人の動作(歩行や持ち上げなど)に使われる筋力を補助する装着型ロボット(パワーアシストスーツ)などが開発されている。
装着型ロボットには、上半身の筋力を補助するもの、下半身の筋力を補助するもの、あるいは、全身の筋力を補助するものなど各種のものがある。
【0003】
装着型ロボットは、例えば、装着者の筋電から筋肉の動きを解析して関節モーメントを算出し、これに応じたアシスト力を発生させる。これによって、装着者は、重量物の持ち上げや歩行を楽に行うことができる。
【0004】
このような技術に、特許文献1の「装着式動作補助装置、装着式動作補助装置の制御方法および制御用プログラム」がある。
この技術は、装着者に設置したセンサによって生体信号を検出し、これを用いて装着者の意思に従った動力をアクチュエータに発生させるものである。
【0005】
しかし、従来の装着型ロボットは、装着者の関節に発生する関節モーメントに対してアシスト力を一様に発生させるものであり、脚部の筋力に基づくアシストは行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−95561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、装着者の筋力に応じた歩行支援を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、歩行支援対象者の脚部の筋力を推定する筋力推定情報を取得する筋力推定情報取得手段と、前記取得した筋力推定情報を用いて前記歩行支援対象者の脚部の支援量を決定する支援量決定手段と、前記決定した支援量に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援手段と、を具備したことを特徴とする歩行支援装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記筋力推定情報取得手段は、少なくとも前記脚部の筋量を前記筋力推定情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記脚部の筋量を計測する筋量計測手段を具備し、前記筋力推定情報取得手段は、前記計測した筋量を前記筋力推定情報として取得することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項4に記載の発明では、筋力の基準値を記憶する筋力基準値記憶手段を具備し、前記支援量決定手段は、前記記憶した筋力の基準値と前記推定される筋力の比率によって前記支援量を決定することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項5に記載の発明では、前記筋力基準値記憶手段は、身長と体重の組ごとに筋力の基準値を記憶しており、前記歩行支援対象者の身長と体重を取得する身長体重取得手段と、前記取得した身長と体重の組に対応する筋力の基準値を前記筋力基準値記憶手段で検索する検索手段と、を具備し、前記歩行支援手段は、前記検索した筋力の基準値を用いて前記支援量を決定することを特徴とする請求項4に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項6に記載の発明では、前記推定する筋力は、前記歩行支援対象者の単位体重当たりの筋力であることを特徴とする請求項1から請求項5までのうちの何れか1の請求項に記載の歩行支援装置を提供する。
請求項7に記載の発明では、歩行支援対象者の脚部の筋力を推定する筋力推定情報を取得する筋力推定情報取得機能と、前記取得した筋力推定情報を用いて前記歩行支援対象者の脚部の支援量を決定する支援量決定機能と、前記決定した支援量に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援機能と、をコンピュータに実現するための歩行支援プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装着者の筋力を推定することにより装着者の筋力に応じた歩行支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】装着型ロボットの装着状態を示した図である。
【図2】装着者の大腿部の組成を説明するための概念図である。
【図3】制御装置の構成を説明するための図である。
【図4】制御装置がアシスト力を決定する手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施形態の概要
装着型ロボット1(図1)は、股関節アシストアクチュエータ17で股関節の動作を支援し、膝関節アシストアクチュエータ18で膝関節の動作を支援し、足首関節アシストアクチュエータ19で足首関節の動作を支援する。
即ち装着型ロボット1は、装着者が歩行のために関節モーメントを発生させる際に、各アシストアクチュエータを駆動して装着者が発生させる関節モーメントを軽減する。
【0012】
装着型ロボット1は、超音波センサ35によって装着者の大腿部の筋厚と皮脂厚を測定し、これによって装着者の骨格筋率(体組成情報)を推定する。
装着型ロボット1は、予め様々な被験者の骨格筋率の平均値を記憶しており、装着者の骨格筋率が平均値よりも小さい場合は、アシスト力を強めに調節し、平均値よりも大きい場合は、アシスト力を弱めに調節する。
【0013】
即ち、装着型ロボット1は、装着者の骨格筋率によって装着者の脚部(腰部より下の部分)の筋力を推定し、筋力が弱い場合にはアシスト力を強めに設定し、筋力が強い場合はアシスト力を弱めに設定する。
このように、装着型ロボット1は、装着者の脚部の筋力の個人差に応じて自動的にアシスト力を調節するため、装着者は、筋力の個人差によらずに快適な歩行支援を受けることができる。
【0014】
(2)実施形態の詳細
図1は、装着型ロボット1の装着状態を示した図である。
装着型ロボット1は、装着者の腰部及び下肢に装着し、装着者の歩行を支援(アシスト)するものである。
装着型ロボット1は、腰部装着部21、上腿装着部22、下腿装着部23、足装着部24、上腿連結部材26、下腿連結部材27、制御装置2、つま先接地センサ10、つま先姿勢センサ11、踵接地センサ12、踵姿勢センサ13、腰姿勢センサ14、上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19、超音波センサ35などを備えている。なお、腰部装着部21、制御装置2、腰姿勢センサ14以外は、両足に設けられている。
【0015】
腰部装着部21は、装着者の腰部の周囲に取り付けられ装着型ロボット1を固定する。
腰姿勢センサ14は、腰部装着部21に取り付けられ、ジャイロなどによって腰部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、腰部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0016】
制御装置2は、腰部装着部21に取り付けられ、装着型ロボット1の動作を制御する。本実施の形態では、装着者の脚部の筋力を推定し、これに応じたトルクを装着者の関節に作用させて、装着者の歩行を支援する。
股関節アシストアクチュエータ17は、装着者の股関節と同じ高さに設けられており、腰部装着部21に対して上腿連結部材26を前後方向に駆動する。なお、股関節アシストアクチュエータ17を3軸アクチュエータとして横方向にも駆動するように構成することもできる。
装着型ロボット1は、股関節アシストアクチュエータ17を駆動させることにより装着者が股関節に発生させる関節モーメントを軽減することができる。
【0017】
上腿連結部材26は、装着者の上腿部の外側に設けられた剛性を有する柱状部材であり、股関節アシストアクチュエータ17と膝関節アシストアクチュエータ18を連結する。
上腿装着部22は、外側が上腿連結部材26の内側に固定されており、内側が装着者の上腿に固定される。
上腿姿勢センサ15は、上腿部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、上腿部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0018】
超音波センサ35は、上腿装着部22に取り付けられており、装着者の大腿部中央付近の内部に超音波を出力すると共に、大腿部内部の組織から反射されてくる反射波を検知する。この反射波を解析することにより、大腿部内部の組成(皮脂厚、筋厚など)を得ることができる。
【0019】
なお、超音波によって大腿部の皮脂厚や筋厚を測定する方法は、例えば、「形態・機能 第6巻第1号(コ・メディカル形態機能学会 2007年9月)」の「超音波皮脂厚計を用いた下肢筋厚測定値の妥当性と筋力・筋量との関連について」などで研究されている。本研究によれば、超音波のエコーによって大腿部の筋厚を測定し、これによって筋力の推定が可能となる。
また、特許文献(特開2001−128973)「超音波生体組織測定装置及び超音波生体組織測定方法」では、超音波のエコーにっよて体脂肪などの生体組織を検出する技術が開示されている。
【0020】
膝関節アシストアクチュエータ18は、装着者の膝関節と同じ高さに設けられており、上腿連結部材26に対して下腿連結部材27を前後方向に駆動する。
装着型ロボット1は、膝関節アシストアクチュエータ18を駆動させることにより装着者が膝関節に発生させる関節モーメントを軽減することができる。
下腿連結部材27は、装着者の下腿部の外側に設けられた剛性を有する柱状部材であり、膝関節アシストアクチュエータ18と足首関節アシストアクチュエータ19を連結する。
【0021】
下腿装着部23は、外側が下腿連結部材27の内側に固定されており、内側が装着者の下腿に固定される。
下腿姿勢センサ16は、下腿部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、下腿部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0022】
足首関節アシストアクチュエータ19は、装着者の足首関節と同じ高さに設けられており、下腿連結部材27に対して足装着部24のつま先を上下する方向に駆動する。
装着型ロボット1は、足首関節アシストアクチュエータ19を駆動させることにより装着者が足首関節に発生させる関節モーメントを軽減することができる。
足装着部24は、装着者の足部(足の甲、及び足裏)に固定される。一般に、足指の付け根の関節は歩行の際に屈曲するが、足装着部24も足指の付け根の部分が足指に従って屈曲するようになっている。
【0023】
つま先姿勢センサ11と踵姿勢センサ13は、それぞれ、足装着部24の先端と後端に設置され、それぞれ、つま先と踵の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、つま先や踵の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0024】
つま先接地センサ10は、足装着部24の足裏部前方に設置され、つま先の接地を検出する。
踵接地センサ12は、足装着部24の足裏部後方に設置され、踵の接地を検出する。
以上のように構成された装着型ロボット1は、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19を駆動することにより、装着者の歩行を支援する。
【0025】
なお、本実施の形態では、装着型ロボット1は、各姿勢センサからの出力により、各アシストアクチュエータを駆動するが、姿勢センサの代わりに、あるいは、姿勢センサと共に筋電を用いて各アシストアクチュエータを制御するように構成することもできる。
【0026】
図2の各図は、装着者の大腿部40の組成を説明するための概念図である。
図2(a)の左図は、大腿部40aの大腿骨に垂直な方向の断面図を表しており、右図は、大腿骨に平行な方向の断面図を表している。
大腿部40aは、大腿部40aの筋肉が発達しており、筋力が大きい場合を示している。
超音波センサ35によって大腿部40の内部に超音波を出力すると、皮脂41aの皮脂厚と筋肉42aの筋厚を測定することができる。
【0027】
図2(b)は、図2(a)と同様に大腿部40bの断面図を表している。
大腿部40bは、大腿部40aに比べて筋肉の発達が劣っており、大腿部40aに比べて皮脂41bの皮脂厚が厚く、筋肉42bの筋厚が薄くなっている。
大腿部40bの場合も、超音波センサ35によって、皮脂41bの皮脂厚と筋肉42bの筋厚を測定することができる。
【0028】
このように、筋肉の発達具合は、装着者によって個人差があり、これにより、歩行に使用できる筋力も個人差がある。そこで、装着型ロボット1は、装着者の筋力に応じてアシスト力(装着型ロボット1が装着者の関節に作用させるモーメント)を調節する。この調節方法は、例えば、以下のように各種考えられる。
(1)測定した筋厚によってアシスト力を調節する場合。
この場合、装着型ロボット1は、筋厚が厚い装着者に対しては、アシスト力を弱くし、筋厚が薄い人に対しては、アシスト力を強くする。これは、筋厚が薄いほど、発揮できる筋力が弱く、より多くのアシスト力を必要とすると考えられるためである。
【0029】
(2)測定した筋厚と皮脂厚によってアシスト力を調節する場合。
この場合、例えば、アシスト力の基準値は筋厚によって設定し(即ち、筋肉量の絶対値によってアシスト力の基準値を設定し)、これを筋厚と皮脂厚の比率によって調節する。 即ち、筋厚の比率が小さい装着者は、筋肉量に対して皮下脂肪が多いと考えられるため、アシスト力が強くなるように筋厚比率に基づいてアシスト力を調節する。
【0030】
(3)筋厚と体重によってアシスト力を調節する場合。
この場合、装着者に体重を入力してもらうか、つま先姿勢センサ11、踵接地センサ12などの検出値によって測定することにより、例えば、単位体重当たりの筋厚(筋肉量)によってアシスト力を調節する。即ち、単位体重当たりの筋厚が小さい人ほどアシスト力を強くする。
これは、大腿部の筋肉量が同じであっても、体重が重い人ほどアシスト力を必要とするためである。
【0031】
(4)骨格筋率によってアシスト力を調節する場合。
この場合、装着者の大腿部の筋厚(筋肉の断面積)と皮脂厚(皮脂の断面積)から装着者の骨格筋率を推定し、当該骨格筋率によってアシスト力を調節する。骨格筋率が低い装着者は、大腿部の筋力が弱いと考えられるため、アシスト力が大きくなるようにアシスト力を調節する。
即ち、骨格筋率が高い装着者は、脚部の筋力が高いと推定され、骨格筋率が低い装着者は、脚部の筋力が低いと推定されるため、(4)は、脚部の筋力を推定する手段として骨格筋率を用いたものである。
【0032】
ここで、骨格筋率とは、体重に対する骨格筋(全筋肉から内臓を構成する筋肉を除いたもの)の比率である。骨格筋率の計算は、例えば、筋厚、皮脂厚、骨格筋率の対応表を用いて行う。あるいは、体重、身長、筋厚、皮脂厚、骨格筋率などのより多くのパラメータを用いた対応表であってもよい。また、筋厚と皮脂厚から骨格筋率を算出する計算式を用意して計算によって求めてもよい。
【0033】
超音波センサ35の検出値を用いたアシスト力の調整方法は、この他にも各種考えられるが、本実施の形態では、(4)の骨格筋率によってアシスト力を調節する方法を採用する。
具体的には、事前に求めた複数の被験者の骨格筋率から平均値を算出し、測定した骨格筋率と平均骨格筋率の比をアシスト係数αとする。即ち、(アシスト係数α)=(平均骨格筋率)/(測定した骨格筋率)・・・(式1)とする。
【0034】
次に、任意に設定した一律なアシスト率に対してアシスト係数αを掛けることで、アシスト率を個人適合させ、装着者が発生する関節モーメントからアシスト率分の力をアシストする。即ち、(アシスト力)=(装着者が発生する関節モーメント)×(アシスト係数α)×(任意の一律なアシスト率)・・・(式2)とする。
【0035】
図3は、制御装置2の構成を説明するための図である。
制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、記憶媒体、各種インターフェースなどを備えたコンピュータで構成されており、CPUで歩行支援プログラムを実行すると、超音波センサ情報取得部51、平均骨格筋率データベース52、アシスト係数算出部53、歩行アシスト力決定部54が構成される。
【0036】
超音波センサ情報取得部51は、超音波センサ35から検出値を取得する。
平均骨格筋率データベース52は、平均骨格筋率を記憶したデータベースであり、記憶媒体に記憶されている。
平均骨格筋率データベース52は、例えば、性別、年齢別、身長体重別など、項目によって場合分けして構成することも可能である。
【0037】
アシスト係数算出部53は、超音波センサ情報取得部51から超音波センサ35の検出値を取得し、これから装着者の骨格筋率を計算し、この計算値と平均骨格筋率データベース52のデータから(式1)によってアシスト係数αを算出する。
歩行アシスト力決定部54は、アシスト係数算出部53からアシスト係数αを取得し、(式2)によって各関節のアシスト力を決定する。股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19は、歩行アシスト力決定部54が決定したアシスト力にて装着者の歩行を支援する。
【0038】
図4は、制御装置2が装着者に対するアシスト力を決定する手順を説明するためのフローチャートである。
以下の手順は、制御装置2のCPUが歩行支援プログラムに従って行うものである。
まず、装着者が装着型ロボット1を装着してスイッチをオンすると、CPUは、起動する(ステップ5)。
【0039】
次に、CPUは、超音波センサ35を駆動して装着者の大腿部の体組成を測定することにより、骨格筋率の測定を開始すると共に(ステップ10)、装着者の骨格筋率が測定可能か否かを判断する(ステップ15)。
【0040】
超音波センサ35からエラー信号が出力されるなど、骨格筋率が測定可能でない場合(ステップ15;N)、CPUは、アシスト係数αを1に設定する(ステップ25)。
骨格筋率が測定可能な場合(ステップ15;Y)、CPUは、超音波センサ35の検出値から装着者の骨格筋率を取得し、平均骨格筋率データベース52のデータを参照して(式1)によりアシスト係数αを設定する(ステップ20)。
【0041】
次に、CPUは、アシスト係数αを(式2)に代入してアシスト力を設定し(ステップ30)、当該アシスト力にて股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19を駆動してアシストを開始する(ステップ35)。
電源がオフされると(ステップ40)、CPUは、歩行支援動作を終了する。
【0042】
次に、変形例について説明する。
本変形例では、装着者の身長体重別の平均骨格筋率を用いてアシスト力を設定する。
このため、事前に複数の被験者の骨格筋率、身長、体重を測定し、同一の身長・体重の組合せとなる被験者をグループに分け、グループごとの平均骨格筋率を算出してデータベースに登録しておく。
そして、装着型ロボット1は、(アシスト係数α)=(同一の身長体重での平均骨格筋率)/(測定した骨格筋率)・・・(式3)によってアシスト係数αを算出する。
【0043】
図5は、本変形例に係る制御装置2の構成を説明するための図である。実施の形態と同じ構成には、同じ符号を付し、説明を省略・簡略化する。
身長体重情報入力部61は、タッチパネルなどで構成され、装着者が自身の身長と体重を入力する。または、携帯電話やパーソナルコンピュータなどから通信によって入力するように構成してもよい。
【0044】
身長体重情報取得部62は、入力された身長と体重を取得する。
身長体重別平均骨格筋率データベース63は、身長・体重の組合せごとの平均骨格筋率を登録したデータベースである。
【0045】
以上のように構成された制御装置2は、次のようにしてアシスト力を決定する。
装着者が身長体重情報入力部61から身長・体重を入力すると、身長体重情報取得部62がこれを取得し、アシスト係数算出部53に通知する。
アシスト係数算出部53は、超音波センサ情報取得部51から超音波センサ35による測定値を取得して装着者の骨格筋率を推定すると共に、装着者の身長・体重と同じ身長・体重の被験者の平均骨格筋率を身長体重別平均骨格筋率データベース63で検索する。
そして、アシスト係数算出部53は、(式3)により、アシスト係数αを算出する。
【0046】
歩行アシスト力決定部54は、アシスト係数算出部53からアシスト係数αを取得して(式2)によりアシスト力を決定し、当該アシスト力にて股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19を駆動して装着者の歩行を支援する。
【0047】
以上に説明した実施の形態、及び変形例によって、次のような効果を得ることができる。
(1)装着型ロボット1は、装着者の脚部の筋力を推定し、当該推定した筋力に応じてアシスト力を自動的に調節することができる。
(2)装着型ロボット1は、超音波センサ35によって筋厚と皮脂厚を測定することができ、これによって装着者の脚部の筋力を推定することができる。
(3)装着型ロボット1は、装着者の脚部の筋力を推定する目安として、骨格筋率を用いることができる。
(4)装着型ロボット1は、被験者による実測から基準となる骨格筋率(即ち、基準となる脚部の筋力)を記憶しておき、当該基準となる骨格筋率と、装着者の骨格筋率(即ち、装着者の脚部の筋力)の比率からアシスト力を設定することができる。
(5)装着型ロボット1は、基準となる骨格筋率を身長と体重の組ごとに記憶しておき、装着者と同じ身長体重での基準となる骨格筋率と比較することによりアシスト力を調節することができる。
(6)人体の組成情報(骨格筋率など)を推定し、人が出力する関節モーメントが同じであっても負担を軽減させるように歩行支援をすることができる。即ち、体重が同じでも筋力の筋肉質の装着者に対するよりも皮下脂肪の覆い装着者に対するアシスト力を強くすることができる。
【0048】
なお、実施の形態では、超音波によって装着者の大腿部の組成を測定したが、これは、測定手段を超音波に限定するものではなく、例えば、生体インピーダンス法などを用いてもよい。
また、実施の形態では、測定箇所を大腿部に限定するものではなく、例えば、ふくらはぎなど、他の箇所の体組成を用いることもできる。
更に、実施の形態では、測定により装着者の骨格筋率を推定したが、装着者が自身の骨格筋率を入力するように構成することもできる。
【0049】
以上に説明した実施の形態、及び変形例によって、次の構成を得ることができる。
装着型ロボット1は、超音波センサ35によって装着者の大腿部の筋厚と皮脂厚を測定するが、これらの情報は、装着者の脚部の筋力を推定する筋力推定情報として機能している。このため、装着型ロボット1は、歩行支援対象者(装着者)の脚部の筋力を推定する筋力推定情報を取得する筋力推定情報取得手段を具備している。
また、装着型ロボット1は、筋厚と皮脂厚から装着者の骨格筋率を推定し、これによってアシスト力を決定している。このため、装着型ロボット1は、前記取得した筋力推定情報を用いて前記歩行支援対象者の脚部の支援量(アシスト力)を決定する支援量決定手段を備えている。
また、装着型ロボット1は、決定したアシスト力を股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19に発揮させることにより装着者の脚部に力を作用させ、装着者が発生させる関節モーメントを軽減するため、前記決定した支援量に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援手段を備えている。
【0050】
装着型ロボット1は、装着者の脚部の筋量を大腿部の筋厚によって測定するため、前記筋力推定情報取得手段は、少なくとも前記脚部の筋量を前記筋力推定情報として取得している。
【0051】
装着型ロボット1は、超音波センサ35によって装着者の大腿部の筋厚を測定し、これによって脚部の筋量を測定するため、前記脚部の筋量を測定する筋量測定手段を備えている。
そして、装着型ロボット1は、測定した筋厚を取得するため、前記筋力推定情報取得手段は、前記測定した筋量を前記筋力推定情報として取得している。
【0052】
装着型ロボット1は、予め複数の被験者の骨格筋率の平均値を記憶しており、これは筋力の基準値として機能している。
このため、装着型ロボット1は、筋力の基準値を記憶する筋力基準値記憶手段を備えている。
また、装着型ロボット1は、平均骨格筋率(脚部の筋力の基準値を表す量)と装着者の骨格筋率(装着者の脚部の筋力を推定する量)によってアシスト係数αを計算し、これによってアシスト力を決定するため、前記支援量決定手段は、前記記憶した筋力の基準値と前記推定される筋力の比率によって前記支援量を決定している。
【0053】
また、変形例では、装着型ロボット1は、被験者の身長と体重の組ごとに平均骨格筋率を身長体重別平均骨格筋率データベース63に記憶しており、装着型ロボット1は、前記筋力基準値記憶手段は、身長と体重の組ごとに筋力の基準値を記憶している。
また、装着型ロボット1は、身長体重情報入力部61によって装着者の身長と体重を取得するため、前記歩行支援対象者の身長と体重を取得する身長体重取得手段を備えている。
また、装着型ロボット1は、装着者の身長と体重の組に対応するものを身長体重別平均骨格筋率データベース63で検索するため、前記取得した身長と体重の組に対応する筋力の基準値を前記筋力基準値記憶手段で検索する検索手段を備えている。
更に、装着型ロボット1は、検索された平均骨格筋率を用いてアシスト力を決定するため、前記歩行支援手段は、前記検索した筋力の基準値を用いて前記支援量を決定している。
【0054】
装着型ロボット1は、筋厚、皮脂厚から装着者の骨格筋率を推定するが、骨格筋率は、単位体重当たりの骨格筋の割合であり、単位体重当たりの脚部の筋力に対応するため、前記推定する筋力は、前記歩行支援対象者の単位体重当たりの筋力ということができる。
【0055】
また、装着型ロボット1は、歩行支援対象者の脚部の筋力を推定する筋力推定情報を取得する筋力推定情報取得機能と、前記取得した筋力推定情報を用いて前記歩行支援対象者の脚部の支援量を決定する支援量決定機能と、前記決定した支援量に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援機能と、をコンピュータで実現する歩行支援プログラムを記憶しており、これをCPUで実行して歩行支援機能を発揮する。
【符号の説明】
【0056】
1 装着型ロボット
2 制御装置
10 つま先接地センサ
11 つま先姿勢センサ
12 踵接地センサ
13 踵姿勢センサ
14 腰姿勢センサ
15 上腿姿勢センサ
16 下腿姿勢センサ
17 股関節アシストアクチュエータ
18 膝関節アシストアクチュエータ
19 足首関節アシストアクチュエータ
21 腰部装着部
22 上腿装着部
23 下腿装着部
24 足装着部
26 上腿連結部材
27 下腿連結部材
35 超音波センサ
40a、40b 大腿部
41a、41b 皮脂
42a、42b 筋肉
51 超音波センサ情報取得部
52 平均骨格筋率データベース
53 アシスト係数算出部
54 歩行アシスト力決定部
61 身長体重情報入力部
62 身長体重情報取得部
63 身長体重別平均骨格筋率データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行支援対象者の脚部の筋力を推定する筋力推定情報を取得する筋力推定情報取得手段と、
前記取得した筋力推定情報を用いて前記歩行支援対象者の脚部の支援量を決定する支援量決定手段と、
前記決定した支援量に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援手段と、
を具備したことを特徴とする歩行支援装置。
【請求項2】
前記筋力推定情報取得手段は、少なくとも前記脚部の筋量を前記筋力推定情報として取得することを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置。
【請求項3】
前記脚部の筋量を計測する筋量計測手段を具備し、
前記筋力推定情報取得手段は、前記計測した筋量を前記筋力推定情報として取得することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の歩行支援装置。
【請求項4】
筋力の基準値を記憶する筋力基準値記憶手段を具備し、
前記支援量決定手段は、前記記憶した筋力の基準値と前記推定される筋力の比率によって前記支援量を決定することを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の歩行支援装置。
【請求項5】
前記筋力基準値記憶手段は、身長と体重の組ごとに筋力の基準値を記憶しており、
前記歩行支援対象者の身長と体重を取得する身長体重取得手段と、
前記取得した身長と体重の組に対応する筋力の基準値を前記筋力基準値記憶手段で検索する検索手段と、
を具備し、
前記歩行支援手段は、前記検索した筋力の基準値を用いて前記支援量を決定することを特徴とする請求項4に記載の歩行支援装置。
【請求項6】
前記推定する筋力は、前記歩行支援対象者の単位体重当たりの筋力であることを特徴とする請求項1から請求項5までのうちの何れか1の請求項に記載の歩行支援装置。
【請求項7】
歩行支援対象者の脚部の筋力を推定する筋力推定情報を取得する筋力推定情報取得機能と、
前記取得した筋力推定情報を用いて前記歩行支援対象者の脚部の支援量を決定する支援量決定機能と、
前記決定した支援量に応じた力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させることにより、前記歩行支援対象者が前記脚部の関節に発生させるモーメントを軽減して前記歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援機能と、
をコンピュータに実現するための歩行支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−143449(P2012−143449A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5038(P2011−5038)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】