説明

歯切り研削盤及び研削工具をドレッシングするための方法

工作物スピンドル18が、第1の線形移動ユニット15の上に設置された第1の枢動移動ユニット17上に支持される、歯切り研削盤において、回転自在に駆動され得るドレッシング・スピンドル21が上に設置される第2の線形移動ユニット19が、第1の線形移動ユニット15の上に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の線形運動ユニットが、第1の線形運動軸に沿ってベッドに対して移動可能であり、第1の旋回運動ユニットを担持し、この第1の旋回運動ユニットが、前記第1の線形運動軸に対して直交である第1の旋回軸を中心として旋回し得るように第1の線形運動ユニットの上に設置され、さらに工具スピンドルが、前記第1の旋回軸に対して直交である工具スピンドル軸を中心とした回転運動として駆動され得るように第1の旋回運動ユニットの上に設置される、固定式のベッドを備える歯車研削盤に関し、さらに、本発明は、前記歯車研削盤の研削工具をドレッシングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの歯車研削盤は、例えば砥石車又は研削ウォームなどの研削工具により工作物の歯車をハード仕上げする役割を果たす。この研削工具は、工作物と研磨係合するため、摩損を受ける。したがって、一定の回数の工作サイクルにわたって使用された後に、この研削工具は、ドレッシングされる必要がある。このドレッシング・プロセスにより、研削工具の所要の形状が回復し、それと同時に研削工具の表面が鋭利になる。
【0003】
最新技術は、ドレッシング・プロセスについて、総形ドレッシング及びプロファイル・ドレッシングとして知られている2つの主要な方法を提案する。総形ドレッシングの方法においては、ドレッシング工具は、ドレッシングされることとなる研削工具の表面において制御された移動経路を辿り、それにより所望の輪郭形状の研削工具を生成する。プロファイル・ドレッシングについては、ドレッシング工具は、研削工具の所望の形成に応じて形成される。
【0004】
最新技術の歯車ホブ盤(EP0614406B1)は、ベッド上に、ベッドの長手方向に水平方向に移動可能なスタンドを備え、摺動キャリッジが、このスタンド上において垂直移動に案内される。スタンドから離れる方向に向いた摺動キャリッジの自由側には、ホブ・ウォーム歯車の支持部が、水平方向旋回軸を中心として旋回し得るように設置される。ホブ・ウォーム歯車の回転軸は、サポートの旋回軸に対して直交方向に延在する。研削工具のドレッシングの問題は、この歯車ホブ盤においては生じない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP0614406B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、現行において使用されている研削工具を、工具スピンドル上の定位置にロックした状態のままでドレッシングすることが可能な、本明細書の冒頭で述べた種類の歯車研削盤を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、解決策としての装置は、第1の線形運動ユニットの上に、第2の線形運動軸に沿って移動可能な第2の線形運動ユニットが設置され、前記第2の線形運動ユニットの上に、前記第2の線形運動軸に対して直交であるドレッシング・スピンドル軸を中心とした回転運動として駆動され得るドレッシング・スピンドルが設置されるというコンセプトにより、構成される。
【0008】
解決策としての方法は、本発明による歯車研削盤により具現化される。この歯車研削盤のドレッシング・スピンドルは、第2の旋回運動ユニットの上に設置され、第2の旋回運動ユニットは、第2の線形運動軸に対して平行である第2の旋回運動軸を中心として旋回し得るように、第2の線形運動ユニットの上に設置され、ドレッシング工具を担持するドレッシング・スピンドルの旋回角度位置は、第2の旋回運動軸に対して固定値に設定され、前記固定値は、工具スピンドルの上に設置された研削工具に合わされ、ドレッシング工具は、所望のドレッシング方法にしたがって研削工具と係合される。
【0009】
したがって、本発明の歯車研削盤により、及び該歯車研削盤において前述のドレッシング方法を実施することにより、例えばプロファイル・ドレッシング又は総形ドレッシングなどの各場合において望ましい特定のドレッシング方法にしたがって、例えば研削ウォーム又は砥石車などの種々のタイプの研削工具をドレッシングすることが可能となる。
【0010】
さらに、本発明による歯車研削盤の各軸の構成により、工作物に対するクランプ高さが特に低くなり、したがってシステムの剛性が高められる。
【0011】
好ましくは、第1の旋回運動軸は、工具スピンドル軸と交差すべきである。この要件が厳密には満たされない場合には、制御システムにおけるソフトウェア・ベース補正により修正することが可能である。しかし、いずれの場合においても、偏差は小さくあるべきである。好ましくは、これらの2つの軸の交差は、0.1mm未満の区域内に限定されるべきである。
【0012】
第2の線形運動軸及び第2の旋回運動軸は、互いに対して可能な限り正確に位置合わせされるべきであり、工具スピンドル軸に交差すべきである。この条件が厳密には満たされない場合には、これらの軸の交差に関する許容範囲は、好ましくは5μm未満であるべきである。
【0013】
好ましくは、種々の軸の間において、直交関係が必要な場合には、これは、可能な限り正確に満たされるべきである。しかし、起こり得る偏差は、それが許容範囲内にある限り、制御システムにおいてソフトウェア・ルーチンにより調整することが可能である。
【0014】
本発明の目的を達成するのに適したドレッシング工具であって、ディスク形状本体を備え、このディスク形状本体が、回転軸に対して回転対称であり、2つの離間され軸方向に向く面の間に画成され、このディスク形状本体のラジアル方向において外側の周囲区域には、歯車研削盤の研削工具に作動係合する役割を果たすドレッシング領域が形成される、ドレッシング工具は、一方の軸方向に向く面のドレッシング領域が、総形ドレッシングのプロセス用に構成され、このドレッシング領域が、所望の輪郭形状の研削工具を生成するように制御された経路に沿って研削工具上を移動し、対向側の軸方向に向く面のドレッシング領域が、プロファイル・ドレッシングのプロセス用に構成され、このプロファイル・ドレッシングのプロセスについては、このドレッシング領域は、研削工具の所望の輪郭形状に応じてプロファイリングされるという特徴によって特徴付けられる。
【0015】
「総形ドレッシング」という用語は、具体的には、プロファイル研削用の砥石車のドレッシングに該当し、「プロファイル・ドレッシング」という用語は、研削ウォームのドレッシングに該当する。
【0016】
本発明によるドレッシング工具においては、総形ドレッシング用に構成された前記ドレッシング領域は、その作動係合が、ドレッシングされることとなる研削工具の一点に基本的に集中し、前記ドレッシング領域が、研削工具の表面上の適切に予め定められた作動経路に沿って被制御移動を行なうことによって所望の研削工具の輪郭形状をもたらすように、輪郭形状設定される。これとは対照的に、プロファイル・ドレッシング用に構成された前記ドレッシング領域は、基本的に係合線に沿って、ドレッシングされることとなる研削工具に接触し、この場合には、研削工具の所望の輪郭形状に関する情報は、ドレッシング領域自体に包含される。この軸方向に非対称な構成により、本発明によるドレッシング工具は、ドレッシングされることとなる研削工具をこれらのドレッシング領域の一方又は他方と選択的に作動係合させることによって、総形ドレッシング及びプロファイル・ドレッシングのために使用することが可能となる。したがって、総形ドレッシングからプロファイル・ドレッシングに、又はその逆方向に切替えるために、ドレッシング工具のクランプ・デバイス内のドレッシング工具を交換する必要はない。
【0017】
総形ドレッシングがドレッシング工具のドレッシング領域とドレッシングされることとなる研削工具との間における1点接触を要するということを鑑みると、実用的な一実施例においては、ドレッシング工具の軸方向断面において見た場合に、総形ドレッシング用に構成されたドレッシング領域に対して曲線形状を与えることが予期される。
【0018】
他方において、プロファイル・ドレッシング用に構成されたドレッシング領域は、実用的な一実施例においては、その形状が、ドレッシング工具の軸方向断面において見た場合に、ドレッシングをドレッシングされることとなる研削工具の部分に対して与えることが意図されるプロファイル形状と形状合致するように、具現化される。ドレッシングされることとなる研削工具、具体的には研削ウォームの領域のプロファイルに対して適した断面平面を選択する際には、例えば、その軸方向断面、その法線断面、又はさらには軸方向断面及び法線断面に近い若しくはそれらの間の任意の断面平面などを考慮することが可能である。無修正インボリュートねじ面(unmodified involute screw surface)を研削するためには、ドレッシング工具の軸方向断面は、直線状に延在する。この場合には、例えば研削ウォームのプロファイル・ドレッシングにおいては、軸方向断面において見た場合の直線状ドレッシング部分は、ディスク形状本体のラジアル方向平面に対して、研削ウォームのフランク角度に対応する角度にて構成される。修正インボリュート・プロファイル(modified involute profile)に対しては、軸方向断面の形状は、それに応じて修正される。
【0019】
ドレッシング工具のドレッシング領域は、特に、ドレッシング工具の本体に接合される研磨剤の層により、最新技術を用いて被覆される。この研磨層は、ポジティブ・処理又はネガティブ・処理により施すことが可能である。一般的な研磨剤には、例えば、種々の形態のコランダム、窒化ホウ素(CBN)、又はダイヤモンドが含まれる。
【0020】
以下、図面を参照として、実用的な実施例の一例を介して本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ハウジングを取り除いた歯車研削盤の斜視図である。
【図2】研削工具及びドレッシング工具のためのスピンドル(図1にも図示される)の構成のさらに詳細な図である。
【図3】工具交換装置が設置された、歯車研削盤(ここではそのハウジングと共に図示される)の背面側の図である。
【図4a】研削ウォームのプロファイル・ドレッシングを示す概略図である。
【図4b】プロファイル砥石車の総形ドレッシングを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に図示される歯車研削盤は、歯車研削盤が設置される床平面に対して平行方向に延在する長手方向軸を有する基本的に長尺の直角平行六面体(以降においては直方体と称する。)の形状のベッド1を有し、この直方体の2つの最大表面の一方が、床平面に向く下面を形成し、対向側の表面2が、上面を形成する。上面2の上には、この直方体の長手方向軸に対して平行に延在する線形ガイド・トラック3及び4が設置され、これらの線形ガイド・トラック3及び4の上には、スタンド5が、この直方体の長手方向軸に対して平行に延在する第4の線形運動軸X1に沿って移動するように支持及び案内される。この第4の線形運動軸X1に沿ったスタンド5の移動は、制御装置から命令を受ける線形運動駆動部6によって引き起こされる。
【0023】
線形ガイド・トラック3、4は、図1において、ベッド1の約左半分にわたって延在する。図1の線形ガイド・トラック3及び4の右端部付近のベッドの上面2上には、上面2に対して直交方向に延在する工作物回転軸C1を中心とした回転移動として駆動されるように設計された回転運動ユニット7が設置される。研削されることとなる歯車の形態の工作物は、回転運動ユニット7の上にクランプ固定され、研削プロセスの要件にしたがって工作物回転軸C1を中心として制御されつつ回転される。
【0024】
上面2に対して直交し、上面2に対して平行な断面形状がほぼ正四方形のコラム8が、図1においてはベッド1の右端部部分の上方に立設されている。コラム8は、回転運動ユニット7の方向を向く面に、上面2に対して直交方向に延在する線形ガイド・トラック9を担持する。コラム8から回転運動ユニット7の方向に突出する心押し台10は、ガイド・トラック7によって、工作物の回転軸C1に対して平行な線形摺動移動に制約される。心押し台10は、心合わせ心棒11を担持し、この心合わせ心棒11は、工作物の回転軸C1に位置合わせされ、回転運動ユニット7上にクランプ固定された工作物と心合わせされて係合する。
【0025】
スタンド5は、ベッド1の上面2に対して直交する4つの側壁部によって画成され、それらの側壁部の中の2つが、直方体形状のベッド1の長手方向軸に対して平行であり、他の2つが、直方体形状のベッド1の長手方向軸に対して直交する。回転運動ユニット7の方向に向く側壁部12は、上面2に対して直交方向に、及び工作物の回転軸C1に対して平行方向に延在する線形ガイド・トラック13、14を担持し、これらの線形ガイド・トラック13、14は、工作物の回転軸C1に対して平行方向に延在する第1の線形運動軸Z1に沿って、第1の線形運動ユニット15の線形移動を案内する。第1の線形運動軸Z1に沿った第1の線形運動ユニット1の移動は、制御装置から命令を受ける線形運動駆動部16によって引き起こされる。
【0026】
第1の線形運動ユニット15の下方部分、すなわちベッド1に最も近い部分の、回転運動ユニット7の方向に向いた面には、第1の線形運動軸Z1に対して直交方向に及び直方体形状のベッド1の長手方向に対して平行方向に延在する第1の旋回運動軸A1を中心として旋回することが可能な、第1の旋回運動ユニット17が設置される。この第1の旋回運動ユニット17には、第1の旋回運動軸A1に対して直交である工具スピンドル軸B1を有する工具スピンドル18が設置される。工具スピンドル18は、制御される駆動源の動力下において、その工具スピンドル軸B1を中心として回転するように設計される。さらに、工具スピンドル18は、工具スピンドル軸B1に整列される第3の線形運動軸Y1に沿って、制御されつつ移動することが可能である。
【0027】
第1の線形運動ユニット15の上方部分、すなわちベッド1から最も遠い部分の、回転運動ユニット7の方向に向いた前面で、第2の線形運動ユニット19が、第2の線形運動軸Z2に沿った移動を制御されて案内される。第2の線形運動軸Z2は、第1の線形運動軸Z1及び第1の旋回運動軸A1に対して平行である平面内に位置する。この平面内において、第2の線形運動軸Z2は、ベッド1から離れる方向において、第1の線形運動軸Z1に対して鋭角で延在するように、第1の線形運動軸Z1に対して傾斜している。
【0028】
第2の旋回運動ユニット20が、第2の線形運動ユニット19の下方端部、すなわち工具スピンドル18の方向に向いた端部に設置される。この第2の旋回運動ユニット20は、第2の線形運動軸Z2に対して平行である第2の旋回運動軸C2を中心として旋回され得る。この第2の旋回運動ユニット20には、ドレッシング・スピンドル軸S2を中心とした回転移動にて駆動されるように設計されたドレッシング・スピンドル21が設置される。ドレッシング・スピンドル軸S2は、第2の旋回運動軸C2及び第2の線形運動軸Z2に対して直交方向に配向される。
【0029】
工具スピンドル18は、回転運度ユニット7上にクランプ固定された工作物の歯車歯の仕上げ動作を行なうために、歯車研削工具を保持し、その歯車研削工具に対して回転運動を与える役割を果たす。とりわけ、この仕上げ動作は、ホブ研削動作又はプロファイル研削動作からなるものであることが可能である。歯車研削工具は、例えば砥石車又は研削ウォームであることが可能である。
【0030】
ドレッシング・スピンドル21は、総形ドレッシング及びプロファイル・ドレッシングのためのドレッシング工具を保持し、そのドレッシング工具に対して回転運動を与える役割を果たす。総形ドレッシング作動においては、ディスク形状ドレッシング工具が、ドレッシングされることとなる研削工具の表面において制御された移動経路を辿り、それにより所望の輪郭形状の研削工具を生成する。プロファイル・ドレッシングについては、ディスク形状ドレッシング工具は、研削工具の所望の輪郭形状に応じて構成される。
【0031】
それぞれ異なるドレッシング・プロセス及び工具ジオメトリに対して必要とされる、ドレッシング工具及び研削工具の互いに対する種々の配置は、各運動軸のコンピュータ制御を介して行なわれる。一実例としては、プロファイル・ドレッシングの方法のために、ドレッシング工具23を担持するドレッシング・スピンドル21の旋回角度が、第2の旋回運動軸C2に対して固定位置にクランプ固定される。さらに、ドレッシング・スピンドル軸S2を中心として回転するドレッシング・スピンドル21の1分間当たりの回転数と、工具スピンドル軸B1を中心として回転する工具スピンドル18の1分間当たりの回転数の比が、固定値に設定される。第2の線形運動軸Z2に沿った移動及び第3の線形運動軸Y1に沿った移動は、プロファイル・ドレッシング方法にしたがって制御される。総形ドレッシング方法のためには、第2の旋回運動軸C2に対するドレッシング・スピンドル21の旋回角度が、研削工具22の基準直径に応じて要求される位置に設定される。ドレッシング・スピンドル軸S2に対するドレッシング・スピンドル21の回転角度位置、及び第3の線形運動軸Y1に沿った移動は、工具スピンドル軸B1に対する工具スピンドル18の回転角度位置に応じて、総形ドレッシング方法にしたがって制御される。さらに、非旋回研削工具については、第2の線形運動軸Z2に沿った移動が制御される。
【0032】
図2は、研削スピンドル18により駆動される研削工具22が研削ウォームである場合を示す。さらに、図2は、第2の旋回運動ユニット20に設置されたドレッシング・スピンドル21の上のディスク形状ドレッシング工具23を示す。
【0033】
図1の場合と同様に、図2の参照符号15は、第1の線形運動ユニットを示し、参照符号17は、第1の旋回運動ユニットを示す。
【0034】
図3においては、ハウジングが定位置におかれた歯車研削盤が、図1の背面及び右手側面を見せた斜視図において示される。ハウジングの外部にその背面に隣接して配置された保持ラック24が、研削工具22、22’を、工具交換装置によるピックアップが可能な状態に保つ。これらの工具の中の1つが必要とされる場合には、その工具は、工具交換装置により、第1の線形移動軸Z1及び工作物の回転軸C1に対して直交である平面内を延在する経路に沿って、ハウジングの背面中の開口25を通り移動して、最終的には工具スピンドル18の作動スペース内に達する。工具スピンドル18は、その運動軸に対する適切に指示された運動により、工具交換装置から工具を受け、図1及び図2に示される位置において、工具スピンドル18に対してその工具をクランプ固定する。当然ながら、移動シーケンスが逆転する場合には、工具スピンドル18上にクランプ固定された、交換される必要のある工具が、工具交換機により受け取られ、外部に搬送され、保持フレーム24内に配置される。工具の交換が行なわれていないときには、ハウジング中の開口25は、摺動ドア26により閉じられる。
【0035】
背面とは逆方向に向いており、したがってこの図においては見ることのできないハウジングの正面は、水平方向摺動ドアを備え、このドアは、開位置においては、歯車研削盤の作業スペース、すなわちスタンド5とコラム8との間のスペースへのアクセスを可能にし、閉位置においては、外部に対して歯研削盤を完全に遮蔽する。
【0036】
図4(a)及び図4(b)はそれぞれ、工具スピンドル軸B1及びドレッシング・スピンドル軸S2を含む断面平面において描いた、進行中のドレッシング動作を示す。歯車研削工具22は、図4(a)においてはホブ研削ウォーム22’であり、図4(b)においては砥石車22’’である。ドレッシング工具23は、両方の場合において同一である。
【0037】
詳細な特徴に関して述べると、このドレッシング工具23は、ドレッシング・スピンドル軸S2に対して回転対称であるディスク形状本体27を有し、図4(a)及び図4(b)においては、ドレッシング・スピンドル軸S2の上方に延在する本体27の半分のみが示される。このディスク形状本体は、互いからある軸方向距離で離間された2つの軸方向に向く面28、28’の間に画成される。これらの軸方向に向く面28、28’のラジアル方向における外側の周囲区域が、それぞれドレッシング領域29及び29’として構成される。これらのドレッシング領域29及び29’のそれぞれにおいて、ドレッシング工具の本体27は、本体27に接合された研削剤で被覆される。本体27のラジアル方向において中央の区域には、ハブ30が形成される。このハブ30は、ドレッシング・スピンドル軸S2と同軸であり、本体27をドレッシング・スピンドル21に対してクランプ固定するのを可能にする。
【0038】
図4(a)及び図4(b)に図示される軸方向断面においては、プロファイル・ドレッシングのために構成されたドレッシング領域29が、本体27のラジアル方向鞍部31から始まり、対向側の軸方向に向く面28’に対してある角度にてラジアル方向に外方に延在し、本体27のラジアル方向外方端部32にて終端する。ドレッシングされることとなる研削工具が、無修正インボリュートねじ面を研削するように設計される場合には、この輪郭形状は、直線を辿り、修正ねじ面(modified screw surface)の場合には、それに応じて適切に構成される。これとは対照的に、総形ドレッシング用に構成されたドレッシング領域29’の軸方向断面輪郭形状は、初めに軸方向に向く面28’から外方に曲線弧状に突出し、次に外方端部32の方向に弧状曲線にて曲がって戻る。
【0039】
図4(a)は、プロファイル・ドレッシング・プロセスの際の、ドレッシング工具23とホブ研削ウォーム22’との間の作動係合を示す。図4(a)の左側の図においては、ドレッシング領域29は、線形接触区域に沿ってホブ研削ウォーム22’の左フランクと作動係合状態にある。送り運動は、矢印によって示されるように、左フランクに対して軸方向に行なわれる。図4(a)の右側の図においては、ホブ研削ウォーム22’の右フランクに対するプロファイル・ドレッシング・プロセスが図示される。この場合には、ドレッシング工具23の配向及び送り運動は、図4(a)の左側の図のものと鏡像対称になる。これらの両方の場合において、総形ドレッシング用に構成されたドレッシング領域29’は、ホブ研削ウォーム22’のフランクから離れた位置に留まり、したがってドレッシング・プロセス全体にわたって非作動状態にある。
【0040】
それとは対照的に、図4(b)は、砥石車22’’の総形ドレッシングを図示し、この場合には、プロファイル・ドレッシングのために設計されたドレッシング領域29は、非係合状態に、したがって非作動状態にあり、総形ドレッシング領域29’は、基本的に一点に集中される作動係合により、砥石車22’の左側(図4(b)の左側図において)と、及び右側(図4(b)の右側図において)と接触状態になり、総形ドレッシング領域29’は、所望の輪郭形状を生成する経路に沿って、砥石車22’の側部上を案内される。図面の平面内に位置するこの移動経路の成分は、図4(b)の左側図及び右側図の双方の中の矢印によって示される。
【符号の説明】
【0041】
1 ベッド
2 上面
3、4 線形ガイド・トラック
5 スタンド
6 線形運動駆動部
7 回転運動ユニット
8 コラム
9 線形ガイド・トラック
10 心押し台
C1 工作物の回転軸
11 心合わせ心棒
12 側壁部
13、14 線形ガイド・トラック
15 第1の線形運動ユニット
16 線形運動駆動部
17 第1の旋回運動ユニット
A1 第1の旋回運動軸
18 工具スピンドル
B1 工具スピンドル軸
Y1 第3の線形運動軸
19 第2の線形運動ユニット
Z2 第2の線形運動軸
20 第2の旋回運動ユニット
C2 第2の旋回運動軸
21 ドレッシング・スピンドル
S2 ドレッシング・スピンドル軸
22 研削工具
22’ ホブ研削ウォーム
22’’ 砥石車
23 ドレッシング工具
24 保持フレーム
25 ハウジングの開口
26 摺動ドア
27 ディスク形状本体
28、28’ 軸方向に向く面
29、29’ ドレッシング領域
30 ハブ
31 ラジアル方向鞍部
32 外方端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定式のベッド(1)を備える歯車研削盤であって、第1の線形運動ユニット(15)が、第1の線形運動軸(Z1)に沿って前記ベッド(1)に対して移動可能であり、第1の旋回運動ユニット(17)を担持し、前記第1の旋回運動ユニット(17)は、前記第1の線形運動軸(Z1)に対して直交である第1の旋回運動軸(A1)を中心として旋回し得るように前記第1の線形運動ユニット(15)の上に設置され、さらに、工具スピンドル(18)が、前記第1の旋回運動軸(A1)に対して直交である工具スピンドル軸(B1)を中心とした回転運動として駆動され得るように前記第1の旋回運動ユニット(17)の上に設置される、歯車研削盤において、前記第1の線形運動ユニット(15)の上に、第2の線形運動軸(Z2)に沿って移動可能な第2の線形運動ユニット(19)が設置され、前記第2の線形運動ユニット(19)の上に、前記第2の線形運動軸(Z2)に対して直交であるドレッシング・スピンドル軸(S2)を中心とした回転運動として駆動され得るドレッシング・スピンドル(21)が設置されることを特徴とする、歯車研削盤。
【請求項2】
前記ドレッシング・スピンドル(21)は、第2の旋回運動ユニット(20)の上に設置され、前記第2の旋回運動ユニット(20)は、前記第2の線形運動軸(Z2)に対して平行である第2の旋回運動軸(C2)を中心として旋回し得るように前記第2の線形運動ユニット(19)の上に設置されることを特徴とする、請求項1に記載の歯車研削盤。
【請求項3】
前記第2の旋回運動軸(C2)及び前記工具スピンドル軸(B1)は、互いに交差することを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯車研削盤。
【請求項4】
前記第1の旋回運動軸(A1)及び前記工具スピンドル軸(B1)は、互いに交差することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の歯車研削盤。
【請求項5】
前記工具スピンドル(18)は、前記工具スピンドル軸(18)に対して平行方向に延在する第3の線形運動軸(Y1)に沿って移動可能であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の歯車研削盤。
【請求項6】
前記第2の線形運動軸(Z2)は、前記第1の線形運動軸(Z1)及び前記第1の旋回運動軸(A1)に対して平行な平面内に延在することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の歯車研削盤。
【請求項7】
前記平面内において、前記第2の線形運動軸(Z2)は、前記第1の線形運動軸(Z1)に対して傾斜していることを特徴とする、請求項6に記載の歯車研削盤。
【請求項8】
前記ベッド(1)の上に、工作物回転軸(C1)を中心とした回転移動として駆動され得る回転運動ユニット(7)が設置され、前記第1の線形運動軸(Z1)は、前記工作物回転軸(C1)に対して平行方向に延在することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の歯車研削盤。
【請求項9】
前記第1の線形運動ユニット(15)の移動は、スタンド(5)上において、前記第1の線形運動軸(Z1)の方向に制約され、さらに、前記スタンド(5)の移動は、前記ベッド(1)上において、前記第1の線形運動軸(Z1)及び前記工作物回転軸(C1)に対して平行である平面内で前記第1の線形運動軸(Z1)に対して直角に延在する第4の線形運動軸(X1)の方向に制約されることを特徴とする、請求項8に記載の歯車研削盤。
【請求項10】
前記工作物回転軸(C1)は、垂直方向に延在することを特徴とする、請求項8又は9に記載の歯車研削盤。
【請求項11】
前記歯車研削盤は、前記第1の線形運動軸(Z1)及び前記工作物回転軸(C1)に対して直交である平面内に位置する経路に沿って移動可能な工具交換装置を含み、前記工具交換装置は、保持ラックと前記工具スピンドル(18)との間において工具(22)を移送する役割を果たすことを特徴とする、請求項8から10までのいずれか一項に記載の歯車研削盤。
【請求項12】
固定式のベッド(1)を備える歯車研削盤において研削工具をドレッシングする方法であって、第1の線形運動ユニット(15)が、第1の線形運動軸(Z1)に沿って前記ベッド(1)に対して移動可能であり、且つ、第1の旋回運動ユニット(17)を担持し、前記第1の旋回運動ユニット(17)は、前記第1の線形運動軸(Z1)に対して直交である第1の旋回運動軸(A1)を中心として旋回し得るように前記第1の線形運動ユニット(15)の上に設置され、さらに、工具スピンドル(18)が、前記第1の旋回運動軸(A1)に対して直交である工具スピンドル軸(B1)を中心とした回転運動として駆動され得るように前記第1の旋回運動ユニット(17)の上に設置され、前記第1の線形運動ユニット(15)の上に、第2の線形運動軸(Z2)に沿って移動可能な第2の線形運動ユニット(19)が設置され、さらに、前記第2の線形運動軸(Z2)に対して直交であるドレッシング・スピンドル軸(S2)を中心とした回転運動として駆動され得るドレッシング・スピンドル(21)が、前記第2の線形運動ユニット(19)の上に設置され、前記ドレッシング・スピンドル(21)は、第2の旋回運動ユニット(20)の上に支持され、前記第2の旋回運動ユニット(20)は、前記第2の線形運動軸(Z2)に対して平行方向に延在する第2の旋回運動軸(C2)を中心として旋回可能な状態で前記第2の線形運動ユニット(19)の上に設置される、方法において、ドレッシング工具(23)を担持する前記ドレッシング・スピンドル(21)の旋回角度位置が、前記第2の旋回運動軸(C2)に対して固定値に設定され、前記固定値は、前記工具スピンドル(18)の上に設置された研削工具(22)に合わせられ、前記ドレッシング工具(23)は、所望のドレッシング方法にしたがって前記研削工具(22)と係合されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記ドレッシング・スピンドル軸(S2)を中心として回転する前記ドレッシング・スピンドル(21)の1分間当たりの回転数と、前記工具スピンドル軸(B1)を中心として回転する前記工具スピンドル(18)の1分間当たりの回転数との比が、固定値に設定され、前記第2の線形運動軸(Z2)に沿った移動及び第3の線形運動軸(Y1)に沿った移動が、プロファイル・ドレッシング方法にしたがって制御されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の旋回運動軸(C2)に対する前記ドレッシング・スピンドル(21)の旋回角度が、前記研削工具の基準直径に応じて要求される位置に設定され、前記ドレッシング・スピンドル軸(S2)に対する前記ドレッシング・スピンドル(21)の回転角度位置及び前記第3の線形運動軸(Y1)に沿った移動が、前記工具スピンドル軸(B1)に対する前記工具スピンドル(18)の回転角度位置に応じて、総形ドレッシング方法にしたがって制御されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
非旋回研削工具については、前記第2の線形運動軸(Z2)に沿った移動が制御されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の歯車研削盤のための、又は請求項12から15までのいずれか一項に記載のドレッシング方法のための、ドレッシング工具であって、回転軸(S2)に対して回転対称であるディスク形状本体(27)を備え、前記ディスク形状本体(27)は、互いから軸方向に離間された2つの軸方向に向く面(28、28’)によって画成され、前記ディスク形状本体(27)のラジアル方向において外側の周囲区域には、歯車研削盤の研削工具(22、22’、22’’)に作動係合する役割を果たすドレッシング領域(29、29’)が形成される、ドレッシング工具において、一方の前記軸方向に向く面(28’)の前記ドレッシング領域(29’)は、総形ドレッシングのプロセス用に構成され、且つ、所望の輪郭形状の前記研削工具を生成する制御された経路に沿って、前記研削工具(22、22’、22’’)上を移動し、他方の前記軸方向に向く面(28)の前記ドレッシング領域(29)は、プロファイル・ドレッシングのプロセス用に構成され、このプロファイル・ドレッシングのプロセスについては、前記ドレッシング領域(28)は、前記研削工具(22、22’、22’’)の所望の輪郭形状に応じてプロファイリングされることを特徴とする、ドレッシング工具。
【請求項17】
総形ドレッシング用に構成された前記ドレッシング領域(29’)は、前記ドレッシング工具の軸方向断面において見た場合に、曲線形状を有するように設計されることを特徴とする、請求項16に記載のドレッシング工具。
【請求項18】
プロファイル・ドレッシング用に構成された前記ドレッシング領域(29)は、その形状が、前記ドレッシング工具の軸方向断面において見た場合に、ドレッシングされることとなる前記研削工具の部分の断面プロファイルと形状が合致するように設計されることを特徴とする、請求項16又は17に記載のドレッシング工具。
【請求項19】
前記ドレッシング領域(29、29’)は、前記ドレッシング工具(23)の前記本体(27)に接合される研削剤の層で被覆されることを特徴とする、請求項16から18までのいずれか一項に記載のドレッシング工具。
【請求項20】
前記ドレッシング工具(23)の前記本体(27)内に、ハブ(30)が形成され、前記ハブ(30)は、前記ドレッシング工具の前記回転軸S2と同軸であり、回転運動として駆動されるように設計されたドレッシング・スピンドル(21)の上に前記ドレッシング工具をクランプ固定することを特徴とする、請求項16から18までのいずれか一項に記載のドレッシング工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【公表番号】特表2012−501859(P2012−501859A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525471(P2011−525471)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006453
【国際公開番号】WO2010/025942
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(500120211)グリーソン − プァウター マシネンファブリク ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】