説明

歯牙美白用セット

【解決手段】 (A)グリセリン及び1,3−ブチレングリコール
(B)ゼオライト
(C)キサンタンガム、カルボキメチルセルロース及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤
(D)アルキル硫酸塩
を含有し、実質的に水を含まない歯牙美白用非水系歯磨組成物と、この組成物を保持した状態で歯に着脱可能に装着される適用用具とを備えた歯牙美白用セット。
【効果】 本発明の歯牙美白用セットは、貼付時の歯面への歯牙美白用非水系歯磨組成物の密着性と適用用具除去後の歯面への残存性、及び貼付時の組成物の漏出性とブラッシング時の分散性といった相反する機能が両立するもので、美白だけでなく、適用用具除去後に残存した組成物で通常の歯磨も同時に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯を自分本来の歯の色よりもさらに白くするための歯牙美白用非水系歯磨組成物(以下、単に組成物という)を適用用具と併用して歯牙に貼付し、一定時間経過後、適用用具を外して歯牙に残存した組成物を用いてブラッシングするなどして用いられる歯牙美白用セットであって、貼付時の歯面への組成物の密着性と適用用具除去後の歯面への残存性、貼付時の口腔全体への組成物の漏出抑制とブラッシング時の分散性に優れた歯牙美白用セットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯を自分本来の歯の色よりもさらに白くする手段としては、過酸化物による漂白や、歯のマニキュア剤等に代表される隠蔽剤の塗布、あるいはラミネートベニア等の歯科材料が挙げられる。しかしながら、過酸化物による漂白を専門知識のない者が行う場合には、歯肉の炎症、退縮につながる場合がある。一方、歯のマニキュア等の塗布剤は、出来上がりが不自然な色調となる上、飲食等により剥離するため効果の持続性に欠ける。また、ラミネートベニアによる方法は、歯科医しか行うことが出来ず、しかも健全な歯の表面を削る必要があるため、患者が結果に対して不満足であっても、術後元の歯に戻すことができなかった。
【0003】
そこで本発明者らは、以前に、特別な専門知識や技術を有さなくても自分で簡便に、かつ安全に歯を白くすることができる技術として、ポリエチレングリコール等の液体をエナメル質表層下に浸透させ、エナメル質部分の光学特性を変化させて一時的に見かけ上、歯を白くする方法を提案した(特許文献1;国際公開第03/030851号パンフレット、特願2003−432095号、特願2003−426716号、特願2003−429499号)。これらの方法は、歯牙白色化成分を含む組成物を数分間歯に貼付するだけで白くなったことを実感できるだけでなく、適用用具除去時に組成物が歯面に残存せず、外出先でも使用可能な簡便性に優れたものであった。
【0004】
一方で、歯牙白色化処置と同時に通常の歯磨も行ってしまいたいというニーズも強かった。しかしながら、上記の通りこれまで提案した組成物は、その使用性などの点から、適用用具除去時に歯面に残存する組成物の量が少ないのが特長であった。つまり、組成物の凝集性が強いためにブラッシングに必要な量の組成物が歯面に残存せず、ブラッシングするには分散性が低い場合があった。また、この問題を解決するために単純にゲル化剤を減量しただけでは、貼付時の歯面への組成物の密着性低下と口腔への漏出を抑制することができなかった。
このように歯牙美白用として用いられる組成物において、貼付時の歯面への組成物の密着性と適用用具除去後の歯面への残存性、貼付時の口腔全体への組成物の漏出抑制とブラッシング時の分散性という相反する特性を両立させることは難しく、従って、歯牙白色化処置と同時に通常の歯磨を行うことは困難であった。
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/030851号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、実質的に水を含有しない組成物を適用用具と併用して歯に貼付し、エナメル質部分の光学特性を変化させて見かけ上、歯を白く見せると共に、適用用具除去後に組成物が歯面に残存し、この残存した組成物を用いてブラッシングを行うことで通常の歯磨も同時に行うことができる歯牙美白用セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(A)歯牙白色化成分としてグリセリン及び1,3−ブチレングリコール、(B)下記一般式(1)で示されるゼオライト、(C)キサンタンガム,カルボキメチルセルロース及びその塩,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,カルボキシビニルポリマー,カラギーナン,架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重体の中から選ばれる少なくとも1種以上のゲル化剤、(D)アルキル硫酸塩を含有する非水系組成物が、この組成物を適用用具と併用して歯に貼付した場合、貼付時には組成物の漏出が少なく、歯面への密着性に優れ、また、適用用具除去後にはブラッシングに必要な十分な量の組成物が歯面に残存し、かつブラッシング時の分散性にも優れること、よって、上記非水系歯磨組成物を保持した状態で歯に着脱可能に装着される適用用具を備えることで、歯に貼付時の歯面への組成物の密着性と適用用具除去後の歯面への残存性、貼付時の口腔全体への組成物の漏出抑制とブラッシング時の分散性という相反する特性を両立させることができ、歯に貼付することでエナメル質部分の光学特性を変化させて、見かけ上歯を白く見せる歯牙白色化処理と同時に通常の歯磨も行うことができる歯牙美白用セットを得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、
(A)歯牙白色化成分としてグリセリン及び1,3−ブチレングリコール、
(B)下記一般式(1)で表されるゼオライト
xM2/zO・Al23・ySiO2・nH2O (1)
(但し、式中のx、y及びnはそれぞれ任意の正数であり、Mは1価又は2価の金属イオン、zはその価数を示す。)、
(C)キサンタンガム、カルボキメチルセルロース及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤、及び
(D)アルキル硫酸塩
を含有し、実質的に水を含まない歯牙美白用非水系歯磨組成物と、この歯牙美白用非水系歯磨組成物を保持した状態で歯に着脱可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯牙美白用セット
を提供する。
【0009】
この場合、上記歯牙美白用非水系歯磨組成物に、更にポリビニルピロリドンを配合することが好ましい。また、適用用具としては、水不溶性の素材で作成されたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバーが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯牙美白用セットは、適用用具と併用して歯に歯牙美白用非水系歯磨組成物を貼付した場合、貼付時の歯面への歯牙美白用非水系歯磨組成物の密着性と適用用具除去後の歯面への残存性、及び貼付時の口腔全体への歯牙美白用非水系歯磨組成物の漏出性とブラッシング時の分散性といった相反する機能が両立するもので、従って、適用用具と併用して歯に歯牙美白用非水系歯磨組成物を貼付することによって、歯を白く見せるだけでなく、適用用具除去後に残存した歯牙美白用非水系歯磨組成物を用いてブラッシングを行うことで通常の歯磨も同時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について更に詳しく説明する。本発明の歯牙美白用セットは、(A)歯牙白色化成分、(B)ゼオライト、(C)特定のゲル化剤、(D)アルキル硫酸塩を含有し、実質的に水を含まない歯牙美白用非水系歯磨組成物と、この歯磨組成物を保持した状態で歯に着脱可能に装着される適用用具とを備えたものである。
【0012】
本発明に用いられる歯牙白色化成分は、グリセリン及び1,3−ブチレングリコールである。この場合、グリセリン/1,3−ブチレングリコールを質量比で(40/60)〜(95/5)の割合で用いることが好ましく、更に好ましくは(50/50)〜(90/10)の範囲である。質量比が(95/5)を超える場合には、貼付時の口腔全体への組成物の漏出を抑制できない場合がある。質量比が(40/60)未満の場合には、貼付時に歯面に対して十分な密着性を発揮できず、また、適用用具除去後の歯面への組成物の残存性、ブラッシング時の分散性が悪くなる場合がある。
【0013】
本発明の歯牙美白用非水系歯磨組成物に歯牙白色化成分として配合されるグリセリン及び1,3−ブチレングリコールの配合量は、組成物から歯牙白色化成分が溶出すれば特に制限されないが、組成物全体の40〜96%(質量百分率、以下同じ)、特に55〜93%が好適である。
【0014】
本発明に用いられるゼオライトは、下記一般式(1)で示されるアルミノケイ酸塩である。
xM2/zO・Al23・ySiO2・nH2O (1)
上記式中のx、y及びnはそれぞれ任意の正数である。Mは1価又は2価の金属イオンであり、Mに2種以上のアルカリ又はアルカリ土類金属イオンを含む場合がある。zはその価数を示す。
【0015】
ここで、本発明組成物に使用されるゼオライトには、天然のものと、合成のものの両者があり、天然ものには約40種、合成ものでは200種以上のものが既に知られている。本発明においては、これらゼオライトはいずれも使用可能である。天然ゼオライト及び合成ゼオライトを例示すると、天然ゼオライトとして利用価値のあるものとしては、クリノブチロライト、モルデナイト、アナルサイム、シャバサイト、エリオナイト、ロ−モンタイト、フィリップサイト、フェリエライト、ワイラカイトなどがある。また、合成ゼオライトとしては、A(3A、4A、5A等)型ゼオライト、L型ゼオライト、フォージャサイト(X型ゼオライト、Y型ゼオライト)、オフレタイト、エリオナイト、モルデナイト等がある。しかし、天然ゼオライトは夾雑物を含み均質性に欠けるため、合成ゼオライトの方が好ましい。また、合成ゼオライトの中でも、A(3A、4A、5A)型ゼオライト、L型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライトが好ましく、その中でも口腔用組成物に配合したときの効果の点でA型ゼオライトがより好ましい。4A型ゼオライトは市販されており、例えばSasil(Degussa社製)、トヨビルダー、ゼオラム(東ソー(株)製)、シルトン(水澤化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0016】
使用するゼオライトの平均粒径は特に制限されないが、1〜15μmが好ましく、例えば東ソー(株)製のゼオラムA3(平均粒径14μm)、ゼオラムA4(平均粒径11μm)、ゼオラムF9(平均粒径5μm)等が挙げられ、更に好ましくは平均粒径10〜15μmのもの、具体的にはゼオラムA3、ゼオラムA4が好適に使用される。平均粒径が1μmより小さいと、組成物の歯面からの剥離性が劣る場合があり、15μmより大きいと歯牙白色化効果が向上しない場合がある。なお、平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製)による50%粒径の測定値である(以下、同様)。
【0017】
ゼオライトの配合量は、組成物全体の3〜40%が好ましく、更に好ましくは5〜30%である。配合量が40%を超える場合には、固くもろい組成物になるため密着性が失われると共に、口腔全体への漏出も抑制できない場合がある。配合量が3%未満の場合には歯面の唾液を除去しきれず、組成物の歯面への密着性を確保出来ない場合があり、またブラッシング時の分散性も悪い場合がある。
【0018】
本発明に用いられるゲル化剤としては、キサンタンガム、カルボキメチルセルロース及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体から選ばれるものが使用され、更に好ましくはキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース及びその塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体である。これらの中から選ばれる1種を単独で、又は2種以上を併用して配合し得る。
【0019】
本発明に用いられるキサンタンガムは特に制限されないが、重量平均分子量100万〜1000万のものが好ましく、更に好ましくは100万〜500万である。なお、この場合、重量平均分子量はSEC/MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー/多角レーザー光散乱)ユニットを用いて測定した値である。なおこの場合、SEC/MALLSユニットには、水410示差屈折計、ワイアット・テクノロジー−Dawn DSPレーザー光度測定器、及び二つのウォーターズ・ヒドロゲルカラム(2000及び線状のものを直列に)を装着し、アストラ21プログラムを用いてデータを分析した。
これらに該当する市販品としてエコーガム、エコーガムT(いずれも大日本製薬(株)製)等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられるカルボキシメチルセルロース及びその塩は特に制限されないが、1質量%水溶液の粘度(25℃)が、BL型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.1〜4、回転速度60rpm、測定時間2分)で測定した時、10〜4,000mPa・sであり、かつ化粧品原料基準注解第一版に記載の非水滴定法により測定した時のエーテル化度が0.6〜1.5であるものが好ましく、例えば、品番1120、1150、1190、1220、1270、1310、1390(いずれもダイセル化学工業(株)製)が挙げられる。更に好ましくは粘度が10〜300mPa・s、かつエーテル化度0.6〜1.0であり、例えば、品番1120、1150、1220、1270が挙げられる。
【0021】
本発明に用いられるヒドロキシエチルセルロースは特に制限されないが、重量平均分子量10万〜300万のものが好ましく、更に好ましくは50万〜200万である。
これらに該当する市販品としては、例えばユニオンカーバイド社製HEC−QM100M(重量平均分子量150万)、HEC−QP4400(重量平均分子量80万)等が挙げられる。
【0022】
なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって下記方法で測定した値である。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量の測定方法;
0.20mol/L酢酸リチウム緩衝液(pH4.8)及び0.25質量%ランダムメチルβ−シクロデキストリン(RAMEB−CD)移動相中で、カラム及び屈折率検出器の両方をサーモスタットで40℃に調温してSEC測定を行った。1組のTSK−Gelカラム(3 GMPWXL Linears + G3000P WXL in series)によって、流量1.0mL/分において、ポリマーをクロマトグラフィーにかけた。0.20質量%のサンプル濃度を、200μLの注入容量において使用した。分子量分布データは、ポリエチレンオキサイド/ポリエチレングリコール検量線に対して相対的なものである。
【0023】
本発明に用いられるヒドロキシプロピルセルロースは特に制限されないが、2質量%水溶液の粘度(20℃)が、単一円筒形回転粘度計((株)トキメック製TVB−20L型、ローターNo.L、M2又はM4を使用、回転数60rpm、測定時間4分)で測定した時に6〜4000mPa・sであるものが好ましく、例えば、日本曹達(株)製のHPC−L(6〜10mPa・s)、HPC−M(150〜400mPa・s)、HPC−H(1000〜4000mPa・s)等が挙げられ、更に好ましくは150〜4000mPa・sであり、例えばHPC−M、HPC−Hが好ましく使用される。
【0024】
本発明に用いられるカルボキシビニルポリマーは特に制限されないが、水酸化ナトリウムで中和した0.2質量%水溶液の粘度(25℃)が、BH型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.3〜7、回転数20rpm、測定時間2分)で測定した時に2,000〜100,000mPa・sであるものが好ましい。これらに該当する市販品としてカーボポール934,940,941(B.F.Goodrich社製)、ハイビスワコー103,104,105,204,304(和光純薬工業(株)製)、ジュンロンPW110,111(日本純薬(株)製)等が挙げられる。
【0025】
なお、カルボキシビニルポリマーは必要により塩基性物質で中和するが、その中和度でゲル性状を調整できる。中和に使用する物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基やトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどを用いることができる。
【0026】
カラギーナンには、カッパ型、ラムダ型、イオタ型の3種があり、本発明では特に制限されないが、好ましくはカッパ型及び/又はラムダ型である。更に好ましくは、カッパ型/ラムダ型の質量比が5/5〜9/1のものであり、これらに該当する市販品としては、カラギーナンK(CP−Kelco社製)、Auby−Gum X−2(CECA S.A.社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明で用いられる架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体は、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸のモル比が40/60〜60/40であり、架橋剤として1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン等を適用して架橋されたものが好適に使用され、その架橋度は1〜5%であることが好ましい。
更に、0.5%水溶液(10%水酸化ナトリウムで中和)の粘度(25℃)が、BH型粘度計(東機産業(株)製、ローターNo.7使用、回転数10rpm、測定時間30秒)で測定した時に20,000〜120,000mPa・sであるものが好適である。
【0028】
このような架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体として具体的には、市販品として、1,9−デカジエンで架橋したメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体であるSTABILEZE QM、STBILEZE 06(ISP社製)等が挙げられる。
【0029】
上記ゲル化剤の配合量は、併用する用具がテープ、シート、フィルム、スポンジやパック剤の場合には、組成物の固定力だけで歯牙に付着、固定する必要があるため、組成物全体の0.5〜6%が好ましく、更に好ましくは1.0〜5%である。一方、マウストレー、マウスピース、印象材や歯列に成型した歯のカバーの場合には、上下顎の噛み合わせや適用用具自体の吸着力によって固定力が補われるため、組成物全体の0.1〜6%が好ましく、更に好ましくは0.5〜5%である。いずれの適用用具を用いても配合量が6%を超える場合には組成物が固くなり密着性が失われ、ブラッシング時の分散性も悪くなる場合がある。併用する用具がテープ、シート、フィルム、スポンジやパック剤の時の配合量が0.5%未満、又はマウストレー、マウスピース、印象材や歯列に成型した歯のカバーの時の配合量が0.1%未満の場合には、組成物が柔かすぎて十分な固定力を発揮できない場合がある。また、口腔全体への組成物の漏出による口中の粘つき等の違和感につながる場合もある。
【0030】
更に、本発明組成物には、ポリビニルピロリドンを配合することが好ましく、上記ゲル化剤にポリビニルピロリドンを併用して配合することにより、組成物の歯面への密着性と適用用具除去後の歯面への残存性をより大きく向上させることができる。
【0031】
本発明に用いられるポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、2,000〜1,500,000が好ましく、更に好ましくは30,000〜1,500,000である。この場合、重量平均分子量は、米国の薬局方で定められた方法に従い算出されたK値を、検量線によって光散乱法により測定された重量平均分子量に換算したものである。
このようなポリビニルピロリドンに該当する市販品としては、BASF社製のKollidon30(重量平均分子量44,000〜54,000)、Kollidon90F(重量平均分子量1,000,000〜1,500,000)が挙げられる。
【0032】
ポリビニルピロリドンの配合量は、組成物全体の0.1〜6%が好ましく、更に好ましくは0.2〜5%である。配合量が0.1%未満の場合には、密着性及び残存性に向上が見られない場合があり、6%を超える場合には、逆に歯面へ密着しすぎて3分以上のブラッシング後でも歯間部に組成物が残存し、分散性が悪くなる場合がある。
【0033】
更に、ポリビニルピロリドンは、上記(C)成分のゲル化剤に対して、ポリビニルピロリドン/(C)ゲル化剤の配合比が質量比で1/30〜1/1、特に1/20〜1/1となる範囲で配合することが好ましい。ポリビニルピロリドン/(C)ゲル化剤の配合比が1/30未満の場合には、歯面への組成物の密着力と適用用具除去後の歯面への残存性とを満足に向上させることができない場合があり、1/1を超える場合には、歯面へ組成物が密着しすぎて3分以上のブラッシング後でも歯間部に組成物が残存し、分散性が悪くなる場合がある。
【0034】
本発明に用いられる(D)成分のアルキル硫酸塩としては、炭素数10〜16のアルキル基を有するアルキル硫酸塩が好ましく、特にラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウムが好適である。
【0035】
アルキル硫酸塩の配合量は、組成物全体の0.05〜0.4%が好ましく、更に好ましくは0.1〜0.3%である。配合量が0.4%を超える場合には、唾液の分泌が促進され、組成物の希釈、漏出につながり、更には歯面への密着性が低下する場合がある。配合量が0.05%未満の場合には、歯面への組成物の残存性、ブラッシング時の分散性向上に効果を発揮しない場合がある。
【0036】
本発明の歯牙美白用非水系歯磨組成物は、実質的に水を含まないものであるが、歯牙美白用非水系歯磨組成物のpH調整、原料等の吸湿による水分の持ち込み、歯牙美白用非水系歯磨組成物自体の吸湿等によって水分を微量含有する場合がある。これらの理由を考慮した上で、ここで述べる「実質的に水を含まない」とは、組成物中の水分量が組成物全体の5%以下、好ましくは3%以下のものである。
【0037】
本発明の歯牙美白用非水系歯磨組成物には、更に必要に応じて適宜、他の成分を配合することができる。
例えば、研磨剤として無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、第二リン酸カルシウム・二水和物及び無水物、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、ピロリン酸カルシウム等を必要に応じて組成物全体の0〜10%、特に0〜5%配合し得る。
【0038】
本発明の歯牙美白用非水系歯磨組成物には、乳化、分散などの目的で、界面活性剤としてアルキル硫酸塩以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤や両性イオン界面活性剤の1種又は2種以上を併用することができる。なお、上記界面活性剤の配合量は、組成物全体の0〜1.0%、特に0〜0.5%とすることができる。
【0039】
この場合、アルキル硫酸塩以外のアニオン性界面活性剤としては、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
【0040】
ノニオン界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。
【0041】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0042】
更に、本発明においては、有効成分として、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディスムターゼなどの酵素、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどの水溶性ポリリン酸塩、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、塩化ナトリウム、トリクロサン、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、アスコルビン酸及びその塩類、トコフェロール、オウゴン、オオバク、ローズマリー、チョウジ、タイムなどの生薬抽出物等を、有効量で配合し得る。
【0043】
本発明の歯牙美白用非水系歯磨組成物には、更に、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油などの香料、安息香酸及びそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、サッカリン及びそのナトリウム塩、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を通常量で配合し得る。
【0044】
歯牙美白用非水系歯磨組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、望ましくは歯牙美白用非水系歯磨組成物を精製水で10倍希釈した時の水相のpHが4.0〜10.0であり、更に望ましくは5.5〜9.0である。pH4.0未満の場合には適用時間によっては脱灰の懸念があり、pH10.0を超える場合には、味が悪くなる場合がある。なお、pH調整剤としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を配合し得る。
【0045】
上記歯牙美白用非水系歯磨組成物は、上述したように専用の適用用具と併せて適用することが好ましいが、本発明に用いられる適用用具は、歯牙美白用非水系歯磨組成物の歯牙への確実な適用、固定を補助するだけでなく、歯牙美白用非水系歯磨組成物の歯肉、舌及び口腔粘膜への溶出を抑えて不快な使用感や唾液の誘発を防ぎ、更に唾液の侵入や咬合、咀嚼、その他物理的な刺激による歯牙美白用非水系歯磨組成物の希釈や歯牙からの離脱を防ぐ目的で使用される。適用用具の素材及び形状については、上記目的を達成できるものであれば特に限定されるものではないが、水不溶性の素材で作られたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバーが好適に用いられる。他には、歯列に成型した歯牙接触面に多数の突起物を有するチューイングブラシが挙げられる。
【0046】
上記適用用具の厚みは、歯に装着した時に違和感のない0.01〜5mmが好ましく、特にテープ、シート、フィルムについては、0.01〜2mmが好ましい。
【0047】
上記適用用具の素材は、口腔内に適用可能な安全なものであれば特に制限されないが、ポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、パルプ、綿、絹、紙、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム及び金属箔等の1種または2種以上を用いるのが好ましい。歯へのフィット感の良さ、唾液の誘発が少ない等の点から、プラスチックのフィルム又は合成ないし天然繊維で構成される織布、不織布の形態で用いるのが好適である。織布、不織布として用いる場合、装着時の感触の良さからポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、ナイロン、綿、パルプ、紙、絹の1種又は2種以上で構成されるものが好ましく、目付10〜3000g/m2が好ましい。
【0048】
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の水不透過性フィルムを、織布、不織布の片面、両面、又は2枚の織布、不織布の間に張り合わせることで、歯牙美白用非水系歯磨組成物が過剰に吸着したり、透過して口腔内に溶出したり、逆に唾液が織布や不織布を透過して歯牙美白用非水系歯磨組成物に侵入するのを防ぐことも出来る。また、マウストレー、マウスピースにおいては、シリコーンゴム、天然ゴム等の可塑性樹脂や酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂も、歯列に合わせて成形し易く、歯へのフィット性に優れることから好適である。
【0049】
なお、本発明の歯牙美白用セットの適用回数及び適用時間は適宜選定されるが、通常、1日1〜6回、特に1〜3回である。適用時間は1〜120分、特に1〜60分であるが、就寝中に適用することも可能である。
【0050】
また、本発明の歯牙美白用セットは、上記のように適用後、適用用具を外した後に歯牙に組成物が残存し、この残存する組成物を用いて歯牙をブラッシングすることができるもので、歯牙白色化処理と同時に通常の歯磨も行うことが可能である。なおこの場合、適用用具を外した後に歯牙に残存する組成物の量は、通常の歯ブラシによるブラッシングに必要な適量であればよく、好ましくは0.1〜3gであり、特に好ましくは0.2〜2gである。0.1g未満の場合には、十分な歯磨効果を得ることができない場合があり、3gを超えるとブラッシングできない場合がある。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0052】
〔実施例1〜8、比較例1〜5〕
表1,2に示す組成の歯磨組成物を下記方法で調製してシートを作製し、下記方法で評価した。結果を表1,2に示す。
<製剤の調製>
界面活性剤を除く全原料をニーダーに投入後、4kPaまで減圧し、組成物が均一になるまで混合した。一旦常圧に戻し界面活性剤を投入後、再度4kPaまで減圧・混合して歯牙美白用非水系歯磨組成物を調製した。なお、pHは精製水で10倍希釈した時の25℃における水相のpHをpHメーター(東亜ディーケーケー(株)製、HM−26S)で測定し、4.0〜10.0になるように必要に応じて水酸化ナトリウムを用いて調整した。
【0053】
<シートの作製>
加熱したポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、厚さ10μm、東ソー(株)製、商品グレード;212)を、ポリプロピレン不織布(ポリプロピレン、スパンボンド、目付40g/m2、表面エンボス加工、出光石油化学(株)製、商品グレード;出光RN2040)とレーヨン/ポリプロピレン不織布(レーヨン/ポリプロピレン=70/30、スパンレース、目付40g/m2、シンワ(株)製、商品グレード;7140−6)で挟んで熱融着させて厚さ0.5mmの3層不織布シートを作製した。この3層不織布シートのレーヨン/ポリプロピレン不織布面側と、フェイシングフィルム(ポリエチレンテレフタレート、片面シリコンコート、厚さ50μm、東レフィルム加工(株)製、商品グレード;セラピールBK(S)#50)のシリコンコート面の間に、トータルの厚みが1mmになるように展延機(花栄機械工業社製、ロールサンドコーター)を用いて歯牙美白用非水系歯磨組成物を塗膏した。その後、上顎の左右1〜3番の歯の唇面、舌面を覆える大きさ(60mm×25mm)になるように歯牙美白用非水系歯磨組成物を塗膏したシートを型抜きし、上顎の歯列に貼付可能なシートを作製した。
【0054】
<歯面への組成物の密着性、装着時の漏出性、適用用具除去後の歯面への残存性、ブラッシング時の分散性の評価方法>
10名の被験者を用いて以下の方法で官能評価を実施した。
上記方法により作製したシートのフェイシングフィルムを剥がし、不織布を上顎の左右1〜3番の歯の唇面に当てながら、余った不織布を舌面に折り返して10分間装着し、途中で物理的刺激として口を大きく横に広げる行為を10回行った。その間の組成物の歯面への密着性及び口中全体への漏出性をそれぞれ「密着性」、「漏出性」として下記の通りの基準で評価した。10分後、不織布を剥がし、歯面に残った組成物の量を「残存性」として下記基準で評価した。更に、歯面に残った組成物を用い、歯ブラシで3分間ブラッシングした時の組成物の口中への広がり具合を「分散性」として下記基準で評価した。各評価項目の基準は下記の通りであった。
【0055】
「密着性」
5点:ピッタリと固定している。
4点:固定しているが、折り返した舌面側の不織布がやや浮いた感じがする。
3点:少しズレるが気になるほどではない。
2点:ズレて動いて気になる。
1点:固定できない。
「漏出性」
5点:味や違和感がない。
4点:味はするが嫌味や違和感ではない。
3点:ゲルが少量溶け出すが、嫌味・違和感ではない。
2点:ゲルが少量溶け出して嫌味・違和感となる。
1点:ゲルが多量に溶け出して違和感が強い。
【0056】
「残存性」
5点:ブラッシングするのに適した量の組成物が残存する。
4点:ブラッシングするには若干少ない、又は多い組成物が残存する。
3点:目視でわずかに組成物が残存していることを確認出来る、又は明らかに多くの組成物が残存しているが不快に感じるほどではない。
2点:目視ではゲルが残存していることを確認出来ないが味や粘つきを感じる、又は大量に組成物が残存しやや不快に感じる。
1点:全く残存しない、又はブラッシング出来ないほど残存している。
「分散性」
5点:ブラッシングによって素早く分散する。
4点:ブラッシングによって徐々に分散する。
3点:ブラッシング開始から3分後にはなんとか分散している。
2点:ブラッシング時に歯間部に分散しないゲルが残る。
1点:ブラッシングしても全く分散しない。
【0057】
上記四つの評価項目について、それぞれ各被験者の評点の平均値を算出し、下記の基準で判定した。
◎:4.5点以上5.0以下
○:3.5点以上4.5点未満
△:2.5点以上3.5点未満
×:1.0点以上2.5点未満
【0058】
<白色化効果の評価方法>
最初に初期値として上顎前歯1番の色差(L*0、a*0、b*0)を測定した。次に、表1,2に示した組成物を上記の方法により塗膏したシートを上顎の左右1〜3番の歯の唇面に当てながら、余った不織布を舌面に折り返して10分間装着した。10分後シートを剥がし、歯に残存した組成物を用いて3分間ブラッシングした。ブラッシング終了後、口をすすぎ、色差(L*1、a*1、b*1)を測定した。色差は分光測色計(ミノルタ(株)製、CM−2022)を用いて測定した。白色化効果は下記式より算出した△E値を用いて評価した。
△E値=((L*1−L*0)2+(a*1−a*0)2+(b*1−b*0)21/2
評価基準 ◎:△E≧3.5
○:3.0≦△E<3.5
△:2.5≦△E<3.0
×:0≦△E<2.5
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
上記の結果から、本発明の歯牙美白用セットが5つの評価項目全てにバランス良く優れていることがわかった。
【0062】
〔実施例9〕
下記組成の歯牙美白用非水系歯磨組成物1の調製は、前述の実施例1〜8及び比較例1〜5と同様に行った。ポリウレタンフィルム(25mm×60mm×厚さ50μm、シーダム(株)製、商品グレード;DUS2124−CDB、)とフェイシングフィルム(ポリエチレンテレフタレート、片面シリコンコート、25mm×60mm×厚さ50μm、東レフィルム加工(株)製、商品グレード;セラピールBK(S)#50)のシリコンコート面の間に、トータルの厚みが約1mmになるように歯牙美白用非水系歯磨組成物1を塗膏した。出来上がったもののフェイシングフィルムを剥がし、上顎の左右1〜3番の歯の唇面に当てながら、余った不織布を舌面に折り返して適用した。前記と同様の方法により「密着性」「漏出性」「残存性」「分散性」「白色化効果」について評価した結果、全て◎であった。
【0063】
<歯牙美白用非水系歯磨組成物1>
グリセリン(ライオン(株)製、化粧品用濃グリセリン) 52.7%
1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学工業(株)製、13BGK) 22.8
ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA4LpH、平均粒径11μm) 20.0
キサンタンガム(大日本製薬(株)製、エコーガムT) 2.0
ポリビニルピロリドン(BASF社製、Kollidon90F) 0.2
ラウリル硫酸ナトリウム 0.2
(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
シェラック 2.0
(日本シェラック工業(株)製、商品名:乾燥透明白ラック)
香料 0.1
計 100.0%
【0064】
〔実施例10〕
下記組成の歯牙美白用非水系歯磨組成物2の調製は、前述の実施例1〜8及び比較例1〜5と同様に行った。加熱したポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、厚さ10μm、東ソー(株)製、商品グレード;212)を、ポリプロピレン/レーヨン不織布(ポリプロピレン/レーヨン=8/2、スパンレース、目付40g/m2、日本バイリーン(株)製)とポリプロピレン/レーヨン不織布(ポリプロピレン/レーヨン=3/7、スパンレース、目付40g/m2、日本バイリーン(株)製)で挟んで熱融着させて厚さ0.5mmの3層不織布シートを作製し、この3層不織布シートのポリプロピレン/レーヨン不織布(8/2)面が内側になるようにニッポー(株)において加熱加圧してトレー状に成型した。
このようにして作製した不織布製マウストレーに歯牙美白用非水系組成物2を約5g充填し歯に装着した。マウストレーを用いた場合、密着性の判断が難しいことから「漏出性」「残存性」「分散性」「白色化効果」について前記と同様の方法により評価した結果、「漏出性」「残存性」「白色化効果」は○、「分散性」は◎であった。
【0065】
<歯牙美白用非水系歯磨組成物2>
グリセリン(ライオン(株)製、化粧品用濃グリセリン) 73.8%
1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学工業(株)製、13BGK) 3.9
ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA4LpH、平均粒径11μm) 10
カラギーナン(CPケルコ社製、カラギーナンK) 1.0
ミリスチル硫酸ナトリウム 0.1
(東邦化学工業(株)製、アルスコープTM−30S)
第二リン酸カルシウム・二水和物 10
(東ソー・アクゾ(株)製、第二リン酸カルシウム・二水塩)
メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体(ローム社製、Eudragit RSPO) 1.0
香料 0.2
計 100.0%
【0066】
〔実施例11〕
下記歯牙美白用非水系歯磨組成物3の調製は、前述の実施例1〜8及び比較例1〜5と同様に行った。ポリエステルテープ(15mm×60mm×厚さ0.05mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品グレードS)の上に下記歯牙美白用非水系組成物3(2.0g)を粘着層として塗膏したテープを上顎の左右1〜3番の歯の唇面のみに貼付し適用した。前記と同様の方法により「密着性」「漏出性」「残存性」「分散性」「白色化効果」について評価した結果、全て◎であった。
【0067】
<歯牙美白用非水系歯磨組成物3>
グリセリン(ライオン(株)製、化粧品用濃グリセリン) 31.8%
1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学工業(株)製、13BGK) 31.75
ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA4LpH、平均粒径11μm) 30.0
カルボキシビニルポリマー 5.0
(日本純薬(株)製、ジュンロンPW110)
ポリビニルピロリドン(BASF社製、Kollidon30) 0.25
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1
(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体 1.0
(ローム社製、商品名オイドラギットL100)
香料 0.1
計 100.0%
【0068】
〔実施例12〕
下記歯牙美白用非水系歯磨組成物4の調製は、前述の実施例1〜8及び比較例1〜5と同様に行った。エチレンビニルアセテート樹脂製のマウスピース(デンタルコンセプト社製、商品名ナイトガード)をお湯で温めて軟化させ、噛んで歯型にフィットさせた。この歯型にフィットするように作製したマウスピースに歯牙美白用非水系組成物4を約3g充填し装着した。マウスピースの場合、密着性の判断が難しいことから「漏出性」「残存性」「分散性」「白色化効果」について前記と同様の方法により評価した結果、「漏出性」は◎、「残存性」「分散性」「白色化効果」は○であった。
【0069】
<歯牙美白用非水系歯磨組成物4>
グリセリン(ライオン(株)製、化粧品用濃グリセリン) 41.2%
1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学工業(株)製、13BGK) 41.15
ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA4LpH、平均粒径11μm) 5.0
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体
(ISP社製、STABILEZE QM) 4.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 2.0
(ダイセル化学工業(株)製、品番1240)
ミリスチル硫酸ナトリウム 0.3
(東邦化学工業(株)製、アルスコープTM−30S)
無水ケイ酸(Huber社製、Zeodent113) 5.0
シェラック(日本シェラック工業(株)製、乾燥透明白ラック) 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
水酸化ナトリウム 0.05
香料 0.1
計 100.0%
【0070】
〔実施例13〕
下記歯牙美白用非水系歯磨組成物5の調製は、前述の実施例1〜8及び比較例1〜5と同様に行った。下記歯牙美白用非水系組成物5を0.2g含浸させたスポンジ(10mm×40mm×厚さ1mm、倉敷紡績(株)製、商品グレード:ソフトフォーム271S)を、歯牙に貼付して適用した。前記と同様の方法により「密着性」「漏出性」「残存性」「分散性」「白色化効果」について評価した結果、「密着性」「残存性」「分散性」「白色化効果」は○、「漏出性」は◎であった。
【0071】
<歯牙美白用非水系歯磨組成物5>
グリセリン(ライオン(株)製、化粧品用濃グリセリン) 29.4
1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学工業(株)製、13BGK) 44.1
ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA4LpH、平均粒径11μm) 20.0
ヒドロキシプロピルセルロース 5.0
(日本曹達(株)製、商品名HPC−L)
ラウリル硫酸ナトリウム 0.2
(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
イソステアリン酸 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.2
計 100.0%
【0072】
〔実施例14〕
下記歯牙美白用非水系歯磨組成物6の調製は、前述の実施例1〜8及び比較例1〜5と同様に行った。使用時に下記歯牙美白用非水系歯磨組成物6を歯牙に塗布し、その上から水不溶性アクリル製パック材(下記組成)を上塗して被膜を作って適用した。前記と同様の方法により「密着性」「漏出性」「残存性」「分散性」「白色化効果」について評価した結果、「密着性」「残存性」「分散性」「白色化効果」は○、「漏出性」は◎であった。
【0073】
<歯牙美白用非水系歯磨組成物6>
グリセリン(ライオン(株)製、化粧品用濃グリセリン) 33.4
1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学工業(株)製、13BGK) 49.9
ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA4LpH、平均粒径11μm) 10.0
カルボキシビニルポリマー 4.0
(日本純薬(株)製、ジュンロンPW110)
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0
(日本曹達(株)製、商品名HPC−L)
ラウリル硫酸ナトリウム 0.2
(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
イソステアリン酸 1.0
サッカリンナトリウム 0.2
水酸化ナトリウム 0.1
香料 0.2
計 100.0%
【0074】
<水不溶性アクリル製パック材>
メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体(Rohm Pharma社製、Eudragit EPO) 10.0
ステアリン酸 1.0
エタノール 89.0
計 100.0%
【0075】
〔実施例15〕
下記歯牙美白用非水系歯磨組成物7の調製は、前述の実施例1〜8及び比較例1〜5と同様に行った。加熱したポリエチレンフィルム(低密度ポリエチレン、厚さ10μm、東ソー(株)製、商品グレード;212)を、ポリプロピレン不織布(ポリプロピレン100%、スパンボンド、目付40g/m2、表面エンボス加工、出光石油化学(株)製、商品グレード;出光RN2040)とレーヨン/ポリプロピレン不織布(レーヨン/ポリプロピレン=70/30、スパンレース、目付40g/m2、シンワ(株)製、商品グレード;7140−6)で挟んで熱融着させて厚さ0.5mmの3層不織布シートを作製し、石膏で作った歯型を用いてポリプロピレン不織布側が歯牙白色化用非水系組成物と接する面になるように加熱加圧成型して歯型カバーを作製した。この歯型カバーに下記歯牙美白用非水系組成物7を0.5g充填し、歯牙にはめ込んで適用した。歯型カバーを用いた場合、密着性の判断が難しいことから「漏出性」「残存性」「分散性」「白色化効果」について前記と同様の方法により評価した結果、全て○であった。
【0076】
<歯牙美白用非水系歯磨組成物7>
グリセリン(ライオン(株)製、化粧品用濃グリセリン) 84.1
1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学工業(株)製、13BGK) 9.5
ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA4LpH、平均粒径11μm) 3.0
ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル工業(株)製、品番SE600) 2.0
ミリスチル硫酸ナトリウム 0.2
(東邦化学工業(株)製、アルスコープTM−30S)
オレイン酸 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.1
計 100.0%
【0077】
〔実施例16〕
下記歯牙美白用非水系歯磨組成物8の調製は、前述の実施例1〜8及び比較例1〜5と同様に行った。カップの中でアルギン酸印象剤と水を所定量、手早く混ぜ、印象用トレーに移し歯に装着して所定時間静置し歯型を作製した。印象用トレーから歯型を取り出し、内側に歯牙美白用非水系組成物8を充填し、歯牙にはめ込んで適用した。印象剤を用いた場合、密着性の判断が難しいことから「漏出性」「残存性」「分散性」「白色化効果」について実施例1〜8及び比較例1〜5と同様の方法により評価した結果、「漏出性」「残存性」「白色化効果」は○、「分散性」は◎であった。
【0078】
<歯牙美白用非水系歯磨組成物8>
グリセリン(ライオン(株)製、化粧品用濃グリセリン) 29.2
1,3−ブチレングリコール(ダイセル化学工業(株)製、13BGK) 29.1
ゼオライト(東ソー(株)製、ゼオラムA4LpH、平均粒径11μm) 40.0
1,9−デカジエンで架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体
(ISP社製、STABILEZE QM) 0.5
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1
(東邦化学工業(株)製、アルスコープMP−90N)
アクリル酸t−Bu/アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体 1.0
(BASF社製、ルビマー100P)
香料 0.1
計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)歯牙白色化成分としてグリセリン及び1,3−ブチレングリコール、
(B)下記一般式(1)
xM2/zO・Al23・ySiO2・nH2O (1)
(但し、式中のx、y及びnはそれぞれ任意の正数であり、Mは1価又は2価の金属イオン、zはその価数を示す。)
で表されるゼオライト、
(C)キサンタンガム、カルボキメチルセルロース及びその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、架橋剤により架橋されたメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体から選ばれる1種又は2種以上のゲル化剤、及び
(D)アルキル硫酸塩
を含有し、実質的に水を含まない歯牙美白用非水系歯磨組成物と、この歯牙美白用非水系歯磨組成物を保持した状態で歯に着脱可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯牙美白用セット。
【請求項2】
歯牙美白用非水系歯磨組成物が、更にポリビニルピロリドンを含有することを特徴とする請求項1記載の歯牙美白用セット。
【請求項3】
適用用具が、水不溶性の素材で作製されたテープ、シート、フィルム、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、又は歯列に成型した歯のカバーである請求項1又は2記載の歯牙美白用セット。

【公開番号】特開2006−282550(P2006−282550A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102781(P2005−102781)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】