説明

歯磨剤組成物

【解決手段】水分量が45〜70質量%である歯磨剤組成物に、酸化チタンとカチオン性殺菌剤とを配合し、酸化チタンの含有量を0.7〜2質量%とする。
【効果】本発明の歯磨剤組成物は、高い防腐力が確保される上、使用中の異味がほとんどなく、使用性に優れるもので、歯肉に対して刺激が少なく、薬用成分が口腔内の隅々にまで行き渡りやすいソフトペーストタイプ等の歯磨剤として調製して、各種歯周疾患の予防又は治療に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分含有量が多く、特にソフトペースト状の歯磨剤などとして調製される歯磨剤組成物であって、製剤の防腐力が高く、かつ使用中の異味が少なく、使用感に優れた歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周疾患患者数の増加に伴い、歯肉に対して刺激の少ないソフトペースト状(ソフトペーストタイプ)の歯磨剤が求められている。ソフトペーストタイプの歯磨剤は、組成中の水分量が多いことから、製剤の粘性が低く、口腔内での分散性も高いので、歯肉に対する負担が小さく、薬用成分が口腔内の隅々にまで行き渡りやすいという特徴がある。
【0003】
一方で、ソフトペーストタイプの歯磨剤は、その水分量の多さから製剤の防腐力が弱く、雑菌に汚染され易いといった問題があった。
【0004】
歯磨剤の防腐力を高め、製剤の雑菌汚染を防ぐ方法としては、防腐剤を配合することが一般的である。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステルや、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウムなどが知られている。
【0005】
しかしながら、パラオキシ安息香酸エステルをはじめとする防腐剤を歯磨剤に配合すると、歯磨剤の使用感、特に味が悪くなるという問題があった。特にソフトペーストタイプの歯磨剤は、通常の練歯磨等のペースト状の歯磨剤の水分含有量が通常15〜50質量%程度であるのに比べて、製剤中の水分含有量が多いことから雑菌に汚染され易く、このため、防腐力を十分に維持させるには防腐剤を多く配合する必要があるが、防腐力を満足に発揮させるのに十分な量の防腐剤を配合すると、使用中の味が悪くなって使用感に劣るという課題がある。
【0006】
パラオキシ安息香酸エステル等の防腐剤を含まず、十分な防腐力を確保する技術としては、水溶性カルシウム塩と界面活性剤とを併用する方法(特許文献1;特開昭58−216115号公報)や特定の香料を用いる方法(特許文献2;特開2001−302475号公報)などが知られている。しかし、いずれの方法を採用しても、水分量の多い歯磨製剤においては十分な防腐力が発揮されない。
【0007】
一方、カチオン性殺菌剤は、口腔内の病原性細菌数を低下させる有効な手段として口腔ケア製品に配合されており、その殺菌効果を向上させる技術として、特定の非イオン性界面活性剤との併用により優れた殺菌効果を示す口腔用組成物(特許文献3;特開平11−255629号公報、特許文献4;特開2005−179266号公報)などが提案されている。しかし、これらの技術では、水分量の多い歯磨剤組成物の防腐力を満足に高めることができるとは言い難かった。また、カチオン性殺菌剤も、歯磨剤に高濃度配合すると使用中の異味が増すという問題があった。
【0008】
このため、水分量が多いソフトペーストタイプなどの歯磨剤において、製剤の防腐力と使用感とを満足に両立させることは困難であった。従って、水分量の多い歯磨剤組成物の製剤の防腐力を高め、しかも、異味がほとんどなく良好な使用感を維持できる技術の開発が求められる。
【0009】
なお、酸化チタンは、隠蔽力が非常に強く、製剤の退色を防ぐことを目的とした白色顔料として多くの口腔用組成物に配合されている(特許文献5;特表2003−526649号公報、特許文献6;特開2004−250381号公報)が、酸化チタンの配合により歯磨剤組成物の防腐力が高まることは示されていない。
【0010】
【特許文献1】特開昭58−216115号公報
【特許文献2】特開2001−302475号公報
【特許文献3】特開平11−255629号公報
【特許文献4】特開2005−179266号公報
【特許文献5】特表2003−526649号公報
【特許文献6】特開2004−250381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、水分量が多く、ソフトペースト状の歯磨剤などとして調製される歯磨剤組成物であって、製剤の防腐力が高く、かつ使用中の異味がほとんどなく使用感の良好な歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を進めた結果、水分量が45〜70%(質量%、以下同様。)である歯磨剤組成物に、酸化チタンと、カチオン性殺菌剤とを配合し、酸化チタンの含有量が0.7〜2%であることにより、水分含有量が多い組成の歯磨製剤の防腐力が格段に高くなり、しかも、使用中の異味がほとんどなく良好な使用感となることを知見し、本発明をなすに至った。
【0013】
本発明においては、水分含有量が多く、特にソフトペーストタイプの歯磨剤などとして調製される歯磨剤組成物において、水分量を適当量とし、かつ酸化チタンとカチオン性殺菌剤とを組み合わせて配合することによって、後述の実施例からも明らかなように、これら両成分が相乗的に作用して、カチオン性殺菌剤を特段多く配合しなくても、更にはパラオキシ安息香酸エステルや安息香酸又はその塩等の防腐剤を配合しなくても、優れた防腐力が発揮され、雑菌による汚染を有効に防止でき、使用中の異味もほとんどないこと、よって、水分含有量が多い歯磨剤組成物において、高い防腐力と優れた使用感とを兼ね備えることができるという格別の作用効果を達成できるもので、このような本願発明の作用効果は、カチオン性殺菌剤の持つ殺菌作用が酸化チタンの存在によって向上することに由来するものと考えられる。
【0014】
従って、本発明は下記の歯磨剤組成物を提供する。
(1)水分量が45〜70%である歯磨剤組成物に、酸化チタンとカチオン性殺菌剤とを配合し、酸化チタンの含有量が0.7〜2%であることを特徴とする歯磨剤組成物。
(2)カチオン性殺菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムから選ばれる1種以上である上記(1)の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の歯磨剤組成物は、高い防腐力が確保される上、使用中の異味がほとんどなく、使用性に優れるもので、歯肉に対して刺激が少なく、薬用成分が口腔内の隅々にまで行き渡りやすいソフトペーストタイプの歯磨剤などに調製して、各種歯周疾患の予防又は治療に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯磨剤組成物は、組成中の水分量が45〜70%で、(A)酸化チタンと(B)カチオン性殺菌剤とを含有するもので、ソフトペーストタイプの練歯磨、液状歯磨等として好適に調製される。
なお、ソフトペーストタイプとは、その粘度が、BH型粘度計(東機産業(株)製、VISCOMETERTVB−10)を用いて25℃、No.6ローター、20回転で3分間後の粘度を測定した値が40Pa・s以下のペースト状製剤とすることができる。
【0017】
本発明の歯磨剤組成物中の水分量は、45〜70%、好ましくは51〜60%である。水分量が45%に満たないとソフトペーストタイプの製剤にならない場合があり、70%を超えると十分な製剤の防腐力が得られない場合がある。
【0018】
酸化チタンとしては、ルチル型、アナタース型の2種類が挙げられるが、特にルチル型が好ましい。平均粒径は0.1〜10μmのものが好ましい。なお、平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製)による50%粒径の測定値である。
酸化チタンとしては、市販品を用いることができ、具体的には石原産業(株)製TIPAQUE、富士チタン工業(株)製TR−600等が挙げられる。
【0019】
酸化チタンの配合量は、組成物全体の0.7〜2%、特に0.9〜1.5%が好ましい。0.7%未満では十分な製剤の防腐力が得られない場合があり、また2%を超えると、使用中の味が悪くなる場合がある。
【0020】
カチオン性殺菌剤としては、アルキルピリジニウム塩、ベンジル長鎖アルキル短鎖ジアルキルアンモニウム塩又はその誘導体、長鎖アルキル短鎖トリアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。このようなカチオン性界面活性剤として具体的には、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられ、これらの中では、歯磨製剤の防腐力、使用中の味の観点からアルキルピリジニウム塩、特に塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが好ましく使用される。
これらのカチオン性殺菌剤としては、和光純薬工業(株)、関東化学工業(株)、東京化成工業(株)などの試薬メーカーから入手可能な市販品を使用できる。
【0021】
カチオン性殺菌剤は、1種単独でも2種以上を併用してもよいが、配合量は組成全体の0.005〜0.1%、特に0.006〜0.05%が好ましい。配合量が0.005%に満たないと十分な製剤防腐力が得られない場合があり、0.1%を超えると使用中の味が悪くなる場合がある。
【0022】
なお、本発明組成物には、カチオン性殺菌剤以外の殺菌成分は配合しなくてもよく、特にパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸又はその塩などの防腐剤は配合しなくてもよい。
【0023】
本発明の歯磨剤組成物は、上記必須成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で任意成分としてその他の添加剤を剤型に応じて配合できる。例えばソフトペーストタイプの歯磨剤に調製する場合は、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、有効成分、色素、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合し、常法により製造できる。
【0024】
研磨剤としては、酸化チタン以外の公知の研磨剤を添加することができる。例えば第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケートなどが挙げられる。これら研磨剤の配合量は、組成物全体の5〜50%が好適である。
【0025】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、平均分子量200〜6000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の糖アルコール、多価アルコールの少なくとも1種が使用できる。通常、これらの粘稠剤の配合量は、組成物全体の10〜40%である。
【0026】
粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、カーボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル等の有機粘結剤や、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤が挙げられる。通常、これら粘結剤の配合量は組成物全体の0.5〜3%である。
【0027】
界面活性剤としては、公知のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤を添加することができる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリスチルサルコシンナトリウム等のアシルサルコシン塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、N−ラウロイルタウリン塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えばアルキル基の炭素数が8〜16であるアルキルグリコシド、ショ糖モノ又はジラウレート等の脂肪酸基の炭素数が12〜18であるショ糖脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド等の多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウロイルジエタノールアミド等のアルキロイルエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0028】
これら任意成分としての界面活性剤は、1種又は2種以上を配合でき、その配合量は通常、組成物全量に対して0.1〜3%である。
【0029】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ぺリラルチン等が配合可能である。
【0030】
有効成分としては、カチオン性殺菌剤に加えて、歯磨剤組成物への配合成分として公知の各種有効成分、例えばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートなどのキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸又はその誘導体、ゼオライト、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ナトリウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の植物抽出物などが挙げられる。なお、これらの有効成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0031】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料や、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1.2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
【0032】
また、香料の配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0033】
着色剤としては赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号が例示される。なお、これら成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0035】
〔実施例、比較例〕
表1,2に示す組成の歯磨剤組成物(ソフトペーストタイプ)を下記方法で調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30,厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填し、歯磨製剤の防腐力、使用中の異味のなさを以下の方法により評価した。結果を表1,2に示す。
なお、得られた歯磨剤組成物の粘度は、BH型粘度計(東機産業(株)製、VISCOMETERTVB−10)を用いて25℃、No.6ローター、20回転で3分間後に測定した値がいずれも40Pa・s以下であった。
【0036】
(1)試験歯磨剤組成物の調製
歯磨剤組成物の調製は、精製水にサッカリンナトリウム、ソルビット等の水溶性物質を溶解させた後、塩化セチルピリジニウムなどのカチオン性殺菌剤を溶解させ、キサンタンガムなどの粘結剤を分散させたプロピレングリコール液を加え、酸化チタンを添加して撹拌した。その後、香料、研磨剤、ラウリル硫酸ナトリウムの順に加え、更に減圧下(4kPa)で撹拌し、歯磨剤組成物を得た。なお、製造にはユニミキサー(FM−SR−25、POWEREX CORPORATION社)を用いた。
【0037】
これらの歯磨剤組成物の調製には、酸化チタン(石原産業(株)製 TIPAQUE)、塩化セチルピリジニウム(和光純薬工業(株)製)、塩化ベンザルコニウム(和光純薬工業(株)製)、塩化ベンゼトニウム(和光純薬工業(株)製)、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム(和光純薬工業(株)製)、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業(株)製)を用いた。その他、フッ化ナトリウム、ソルビット、サッカリンナトリウム、無水ケイ酸、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル、水は、医薬部外品原料規格品を用いた。ソルビットについては、70%水溶液品を用いて歯磨剤組成物を調製しており、表中には70%水溶液の配合量を示した。
【0038】
使用したラミネートチューブの層構成における略号と名称は以下の通りであり、略号に続く数字は各層の厚み(μm)を示したものである。
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
EAA:エチレン・アクリル酸の共重合体樹脂
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
SiOx−PET:ガラス蒸着ポリエチレンテレフタレート
【0039】
(2)歯磨製剤の防腐力の評価方法
歯磨剤組成物30g中に供試菌株(環境由来の細菌類、真菌類)を約107CFU/gとなるように接種し、1、4、7、14、28日後の菌数を測定し、以下の基準で評価した。
【0040】
評価基準
◎:4日以内で菌が死滅
○:5〜14日で菌が死滅
△:15〜28日で菌が死滅
×:菌が死滅しない
【0041】
(3)使用中の異味のなさの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた異味について、対照品(比較例6の歯磨剤)との比較で下記の4段階の基準で評価し、10名の平均点を求めて下記判定基準に従い判定した。
【0042】
使用中の異味のなさの評価基準(対照品:比較例6)
4:対照品の異味と比較して異味が全くなかった
3:対照品の異味と比較して異味がほとんどなく問題なかった
2:対照品の異味と比較して同等の異味があった
1:対照品の異味と比較して異味があった
使用中の異味のなさ(使用感)の判定基準
◎:3.5点以上〜4.0点以下
○:3.0点以上〜3.5点未満
△:2.0点以上〜3.0点未満
×:2.0点未満
【0043】
表1,2の結果から、本発明の歯磨剤組成物(実施例)は、歯磨製剤の防腐力が高く、使用中の異味がほとんどなく使用感に優れることが確認された。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2−1】

【0046】
【表2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分量が45〜70質量%である歯磨剤組成物に、酸化チタンとカチオン性殺菌剤とを配合し、酸化チタンの含有量が0.7〜2質量%であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
カチオン性殺菌剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウムから選ばれる1種以上である請求項1記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2010−37293(P2010−37293A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203826(P2008−203826)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】