説明

歯磨組成物

【解決手段】フッ素化合物を含有する歯磨組成物に、(A)ラウリル硫酸ナトリウムを0.5〜1.5質量%と、(B)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を0.4〜1.2質量%と、(C)アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも一種の両性界面活性剤とを配合してなり、(A)成分/(B)成分の質量比が1.2〜3.5の範囲であることを特徴とする歯磨組成物。
【効果】本発明の歯磨組成物は、フッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、使用中の泡立ち及びすすぎ後の使用感(残存感)が良好で、かつ液分離がほとんどなく優れた保存安定性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、使用中の泡立ち及びすすぎ後の使用感(残存感)が良好で、保存安定性に優れた歯磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抗う蝕予防分野の歯磨剤では、有効成分としてフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ素化合物が配合されてきた。そして、その効果を向上させるために、フッ素化合物の口腔内滞留性を上げる技術の開発が行われている。
【0003】
薬効成分の口腔内滞留性を上げるための技術として、カチオン性ポリマーを配合する技術が提案されている(特許文献1〜4参照)。このカチオン性ポリマーを配合する技術は、フッ素化合物の口腔内滞留性を上げる手段としても提案されている(特許文献5〜7参照)。
【0004】
カチオン性ポリマーを配合することにより、フッ素化合物などの薬効成分の口腔内滞留性が向上する1つの作用メカニズムとして、カチオン性ポリマーのカチオン基の部分と同じ組成中に存在するアニオン性界面活性剤のアニオン基が疎水性の複合体を形成することが考えられる。従って、この複合体がより多くできれば、フッ素化合物を口腔内により滞留させることができる。しかしながら、カチオン性ポリマーを多く配合すると複合体が多くなるものの、使用中の泡立ちの悪化及び保存安定性(液分離)が悪くなる傾向がある。
【0005】
特許文献5では、アニオン性界面活性剤とカチオン性ポリマーによりフッ素化合物の滞留性向上が実施されているが、使用できる香料が制限され、市場のニーズに応えるべく様々な種類の香味に対して効果を実施できない。特許文献6、7では、歯磨剤として使用中の泡立ちに改良の余地があった。
【0006】
また、上記のように、これまでにもカチオン性ポリマーを配合し、薬効成分の効果を高める検討は行われてきたが、すすぎ後に薬効成分が歯表面に残存する感覚についての検討はこれまでほとんどされてこなかった。
【0007】
従って、う蝕を予防するためにフッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、使用中の泡立ち及びすすぎ後の使用感(残存感)が良好で、保存安定性に優れた歯磨組成物の開発が求められていた。
【0008】
【特許文献1】特開2001−316235号公報
【特許文献2】特開2001−226244号公報
【特許文献3】特開2002−187829号公報
【特許文献4】特開2002−205929号公報
【特許文献5】特開2001−163743号公報
【特許文献6】特開2001−342122号公報
【特許文献7】特開2005−179230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、フッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、使用中の泡立ち及びすすぎ後の使用感(残存感)が良好で、保存安定性に優れた歯磨組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、フッ素化合物を含む歯磨組成物に、ラウリル硫酸ナトリウムを0.5〜1.5質量%と、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を0.4〜1.2質量%と、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも一種の両性界面活性剤とを配合し、ラウリル硫酸ナトリウム/ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩の質量比を1.2〜3.5にすることにより、意外にもフッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、使用中の泡立ち、かつすすぎ後の使用感(残存感)が良好で、更に液分離がほとんどなく、保存安定性に優れることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、フッ素化合物を含む歯磨組成物に、(A)ラウリル硫酸ナトリウムを0.5〜1.5質量%と、(B)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を0.4〜1.2質量%と、(C)アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも一種の両性界面活性剤とを配合してなり、(A)成分/(B)成分の質量比が1.2〜3.5の範囲であることを特徴とする歯磨組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の歯磨組成物は、フッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、使用中の泡立ち及びすすぎ後の使用感(残存感)が良好で、かつ液分離がほとんどなく優れた保存安定性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯磨組成物は、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨等の歯磨剤、特に練歯磨として調製され、フッ素化合物と、ラウリル硫酸ナトリウムと、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩と、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも一種の両性界面活性剤とを含有するものである。
【0014】
本発明組成物において、フッ素化合物としては、う蝕予防のために通常使用されているものを使用することができ、例えばフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化アンモニウム、フッ化ストロンチウムなどを挙げることができる。これらの中では、特にフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズが、工業的に安価に入手することができることから好適であり、とりわけ味の点でフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムが好適に使用できる。これらは1種を単独でも、2種以上の複数を組み合わせても使用可能である。
【0015】
フッ素化合物の配合量は、組成物中のフッ素イオン濃度が0.01〜2.5質量%、特に0.01〜0.5質量%となる範囲が好適である。フッ素イオン濃度が0.01質量%よりも少ないとう蝕予防効果が十分でない場合があり、2.5質量%を超えると苦味を生じる場合がある。
フッ素イオン濃度を上記範囲とするためには、組成物中にフッ化ナトリウムの場合は0.02〜5.6質量%、モノフルオロリン酸ナトリウムの場合は、0.06〜19.0質量%、フッ化第一スズの場合は、0.04〜10.4質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0016】
本発明組成物には、(A)ラウリル硫酸ナトリウムを配合するが、ラウリル硫酸ナトリウムの配合量は、組成物全体の0.5〜1.5質量%であり、特に十分な泡立ち及び口腔内のフッ素化合物の良好な滞留性を得る点で好ましくは0.8〜1.5質量%、より好ましくは0.8〜1.2質量%である。ラウリル硫酸ナトリウムの配合量が0.5質量%より少ないと本発明の十分な効果が得られない場合があり、1.5質量%より多いと口腔内への刺激が生じる場合がある。
【0017】
また、本発明には、(B)成分としてカチオン化ポリマーの1種であるヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を配合する。ここで、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩とは、ヒドロキシエチルセルロースにジメチルジアリルアンモニウム塩をグラフト重合して得られるカチオン性ポリマーである。対イオンは、塩素イオンなどのハロゲンイオン、メトサルフェートイオンなどが挙げられるが、特に塩素イオンが対イオンである、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが好適に使用される。
【0018】
本発明にかかわるヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩の2質量%水溶液粘度は、30〜3,000mPa・s(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、21℃、測定時間1分)、特に35〜350mPa・s(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、21℃、測定時間1分)の範囲であることが好ましい。また、その窒素含有量は0.1〜3質量%、特に0.5〜2.5質量%であることが好ましい。
更に、本発明にかかわるヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩の重量平均分子量は特に限定されないが、ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法による重量平均分子量で、好ましくは250,000〜1,500,000である。
【0019】
このようなヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩としては、日本エヌエスシー株式会社から市販されているセルコートL−200[2質量%粘度:35〜350mPa・s(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、21℃、測定時間1分)、重量平均分子量:250,000〜350,000(ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法)]、セルコートH−100[2質量%粘度:500〜2,750mPa・s(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、21℃、測定時間1分)、重量平均分子量:1,300,000〜1,500,000(ポリエチレングリコールを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法)]などが挙げられる。これらは、対イオンが塩素イオンである。この中でも、フッ素化合物の口腔内滞留性、泡立ちの良さの点から、セルコートL−200が好ましい。
【0020】
上記ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩の配合量は、組成物全体の0.4〜1.2質量%で、フッ素化合物の優れた口腔内滞留性を得る点から好ましくは0.5〜1.2質量%、より好ましくは0.6〜1.0質量%である。ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩の配合量が0.4質量%よりも少ないと、フッ素化合物の口腔内滞留性が不十分であり、1.2質量%を超えると十分な使用中の泡立ちが得られず、本発明の効果が得られない。
【0021】
本発明においては、(A)ラウリル硫酸ナトリウム/(B)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩の質量比は1.2〜3.5であり、優れた口腔内のフッ素化合物滞留性及び使用中の泡立ちを満たす点で好ましくは1.4〜3.0、より好ましくは1.8〜2.4である。ラウリル硫酸ナトリウム/ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩の質量比が1.2未満であると、フッ素化合物の優れた口腔内滞留性が得られず、3.5を超えると使用中の泡立ちが悪く、満足な保存安定性が得られない。
【0022】
また、本発明の歯磨組成物は、(C)アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも一種の両性界面活性剤を配合する。
【0023】
上記両性界面活性剤のアルキル鎖長としては、いずれの場合も泡立ちや苦味のなさの点から、好ましくはアルキル鎖長の炭素数が8〜20、より好ましくは10〜18である。
【0024】
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインの例としては、商品名NIKKOL AM−301として日光ケミカルズ(株)より販売されているラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液等が用いられる。脂肪酸アミドプロピルベタインの例としては、商品名TEGO BetainCKやTEGO BetainF50、TEGO BetainZFとしてDegussa.社より販売されているヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン水溶液等が用いられる。また、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインとしては、商品名エナジコールC−40Hとしてライオン(株)より販売されているN−ヤシ油アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン水溶液等が用いられるが、いずれの場合も上記に限ったものではない。
【0025】
これらの両性界面活性剤は単独で用いても2種以上を併用しても良い。また、その合計配合量は、純分換算として組成物全量に対して、起泡量や苦味の点より好ましくは0.02〜0.6質量%、より好ましくは0.04〜0.4質量%である。0.04質量%未満では十分な起泡量が得られない場合があり、また0.6質量%を超えると苦味が生じるおそれがある。
【0026】
本発明の歯磨組成物には、上述した成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、通常歯磨組成物に使用されているその他の各種成分を任意成分として配合することができる。配合することのできる他の成分としては、上記ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩以外の粘結剤、上記ラウリル硫酸ナトリウムや両性界面活性剤以外の界面活性剤、研磨剤、湿潤剤、甘味剤、香料、pH調整剤、フッ素化合物以外の有効成分あるいは薬効成分、防腐剤等がある。
【0027】
粘結剤としては、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキエチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、カーボポール、ビーガム等がある。なお、粘結剤の配合量は、組成物全体の0.3〜2質量%とすることができる。
【0028】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム以外のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が配合可能であり、アニオン性界面活性剤としては、ミリスチル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−ミリストイルザルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタメート、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム等のN−アシルタウレート等が挙げられる。
【0029】
ノニオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ラウリル酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルあるいはプルロニック等が挙げられる。
【0030】
上記任意成分としての界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.1〜2質量%、特に0.1〜1.5質量%とすることができる。
【0031】
研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和物又は無水和物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物、沈降性シリカ、アルミノシリケート等のシリカ系化合物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト等の1種又は2種以上を配合することができる。なお、研磨剤の配合量は、組成物全体の0〜50質量%とすることができる。
【0032】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコ−ル、重量平均分子量200〜6000のポリエチレングリコ−ル、エチレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール等の1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。配合量は通常、組成物全量に対して5〜70質量%である。
【0033】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、ペルラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等がある。なお、甘味剤の配合量は、組成物全体の0.01〜5質量%とすることができる。
【0034】
香料としては、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テレピネオール、シトロネリルアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、桂葉油、シソ油、冬緑油、丁字油あるいはユーカリ油等が挙げられる。香料の配合量としては、組成物全体の0.001〜2質量%とすることができる。
【0035】
pH調整剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸又はその塩類、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどの無機化合物などが挙げられる。
【0036】
薬効成分あるいは有効成分としては、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ等の酵素、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、ビタミン類等の抗炎症剤、銅クロロフィル、グルコン酸銅、塩化セチルピリジウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌剤、ポリリン酸塩類等の歯石予防剤、ポリビニルピロリドン等のタバコヤニ除去剤、グリシン、プロリンなどのアミノ酸類などを配合できる。
【0037】
その他にも、任意成分として、リン酸水素カルシウム、ゼオライト、ハイドロキシアパタイトなどの無機化合物やその造粒物、結晶性セルロース等の有機粉末の造粒物や、寒天、ゼラチン、デンプン、グルコマンナン等の天然高分子や、ポリ酢酸ビニル、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル等の合成高分子及びそれらの共重合体、カルナバワックス、ロジン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、パラフィンワックス等のワックス類、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ウレタン、シリコン、天然ゴム等のラテックスゴムを架橋、重合、成形等により得られたもの、あるいは、これらの原料を混合して得られたものやラメフィルムを用いることができる。ラメフィルムとしては、有機樹脂の積層フィルム末、及び、有機樹脂積層フィルム中にアルミニウム等の蒸着層を導入した積層フィルム末等、具体的には、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末などを本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の歯磨組成物に該当する組成例(実施例)及び該当しない組成例(比較例)を用いた、フッ素化合物の口腔内滞留性、使用中の泡立ち、すすぎ後の歯への残存感、保存安定性(液分離)の実験例を示し、本発明の特徴及び優れた効果を具体的に説明するが、本発明はこの実施例により制限されるものではない。
【0039】
〔実施例1〜5、比較例1〜9〕
表1に示した成分を配合した試験歯磨組成物を常法にて調製し、フッ素化合物の口腔内滞留量、使用中の泡立ち、すすぎ後の歯への残存感、保存安定性(液分離のなさ)について以下の方法により評価した。結果を表1に示す。なお、使用原料は表2に示すとおりである。
【0040】
<フッ素化合物の口腔内滞留性の測定>
まず、上面をアルミナ粉末にて鏡面研磨したエナメル質モデル(ヒドロキシアパタイトディスク(PENTAX社製、φ7mm))の上面以外を市販のマニキュアにて被覆し、1%乳酸水溶液に20分間浸漬(室温)し、表面を脱灰した。脱灰したヒドロキシアパタイトディスクを10人のパネラーの口腔内に9枚、1時間装着した。歯ブラシに試験歯磨剤1gを取り、3分間歯磨き後、15mlの水道水で3回口腔内をすすいでもらった。ヒドロキシアパタイトディスクを回収し、各ディスクの上面に0.15mlの0.075N塩酸を添加し、5分間浸漬することでヒドロキシアパタイトディスク表面からフッ素化合物を回収した。回収した溶液0.1mlに酢酸緩衝液0.3mlを加えて、フッ素イオンメーター(サーモエレクトロン社製)にてフッ素化合物量を測定した。なお、検量線の作成は、サーモエレクトロン社製のフッ素標準液(100ppm)を用い作成した。フッ素化合物量は、ヒドロキシアパタイト単位面積あたりの量で比較した。
【0041】
<使用中の泡立ち>
専門パネラー10人を用いた官能試験により評価した。口径8mmのラミネートチューブに充填した試験歯磨組成物を歯ブラシ上に約1.5cm乗せ、通常歯を磨く方法で使用してもらった。使用中の泡立ちの程度について以下に示す基準で評価した。
5点:十分に泡立った
4点:泡立った
3点:やや泡立った
2点:あまり泡立たなかった
1点:泡立たなかった
専門パネラー10人が評価した結果を平均した値を以下の基準で示した。
◎:平均点が4.5点以上5.0点以下
○:平均点が4.0点以上4.5点未満
△:平均点が3.0点以上4.0点未満
×:平均点が3.0点未満
【0042】
<すすぎ後の歯への残存感>
専門パネラー10人を用いた官能試験により評価した。口径8mmのラミネートチューブに充填した試験歯磨組成物を歯ブラシ上に約1.5cm乗せ、通常歯を磨く方法で使用してもらった。すすぎ後の歯への残存感の程度について以下に示す基準で評価した。
5点:残存感を強く感じる
4点:残存感を感じる
3点:残存感をやや感じる
2点:どちらともいえない
1点:残存感を全く感じない
専門パネラー10人が評価した結果を平均した値を以下の基準で示した。
◎:平均点が4.0点以上5.0点以下
○:平均点が3.0点以上4.0点未満
△:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0043】
<保存安定性の評価>
試験歯磨組成物を口径8mmのラミネートチューブに充填し、50℃の恒温槽に4週間保存後、チューブから紙の上に押し出したときの液分離を評価した。
○:液分離は認められない
△:やや液分離が認められる
×:明らかに液分離している
【0044】
【表1】


*1)30%水溶液を用い、純分換算した配合量を示した。
【0045】
【表2】


*2)2質量%粘度 132mPa・s(BH型ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、20回転、21℃、測定時間1分)
【0046】
実験の結果は表1に示す通りであり、(A)ラウリル硫酸ナトリウム、(B)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩、(C)アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも一種の両性界面活性剤を含有し、(A)成分/(B)成分の質量比が1.2〜3.5の範囲である歯磨組成物は、フッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、使用中の泡立ちが良く、すすぎ後の残存感も良好で、かつ保存安定性に優れていることがわかる。
(A)成分のラウリル硫酸ナトリウムが0.5質量%未満であると、フッ素化合物の滞留性及び使用時の泡立ちに優れず、またすすぎ後の使用感に優れない。1.5質量%を超えると使用中の泡立ちは良くなるが、フッ素化合物の滞留性及びすすぎ後の使用感が優れない。また、(A)成分をN−ラウロイルメチルタウリンナトリウムに置き換えると使用中の泡立ち及びフッ素化合物の滞留性に劣る。
(B)成分のヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩が0.4質量%未満であるとフッ素化合物の口腔内滞留性に優れず、1.2質量%を超えると使用中の泡立ち及び保存安定性に優れない。(B)成分を他のセルロース骨格を持つカチオン化合物(塩化−O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース)に置き換えるとフッ素化合物の口腔内滞留性及びすすぎ後の使用感に劣る。
(A)成分/(B)成分の質量比が1.2未満であるとフッ素化合物の滞留性に優れず、使用中の泡立ち、すすぎ後の使用感、保存安定性に劣る。また、(A)成分/(B)成分の質量比が3.5を超えると使用中の泡立ち及び保存安定性は良好であるが、口腔内でのフッ素化合物の滞留性及びすすぎ後の使用感に優れない。
また、(C)成分を含有しないと使用中の泡立ち及び保存安定性で良好な結果が得られない。この実験の結果から、フッ素化合物を含有する歯磨組成物に、(A)ラウリル硫酸ナトリウムを0.5〜1.5質量%と、(B)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を0.4〜1.2質量%と、(C)アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも一種の両性界面活性剤とを配合し、(A)成分/(B)成分の質量比が1.2〜3.5の範囲であることにより、フッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、使用中の泡立ちが良く、すすぎ後の残存感も良好であり、かつ優れた保存安定性を達成できることがわかった。
【0047】
以下に、本発明の歯磨組成物に該当する組成の実施例6〜8を示す。なお、使用原料は下記の通りである。なお、ソルビット液及び両性界面活性剤の配合量は、有り姿(溶液)としての配合量で示した。
ラウリル硫酸ナトリウム;表2と同様。
ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド;表2と同様。
2−ヤシ油アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム(30%水溶液);表2のN−ヤシ油アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム(30%水溶液)と同様。
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(35%水溶液);日光ケミカルズ(株)製、商品名NIKKOL AM−301
【0048】
〔実施例6〕
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド 0.7
フッ化ナトリウム 0.2
2−ヤシ油アルキル−N−カルボキシメチル− 2.0
N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム(30%水溶液)
デキストラナーゼ 0.2
アルギン酸ナトリウム 0.7
カラギーナン 0.6
ポリアクリル酸ナトリウム 0.1
ソルビット液(70%) 45.0
プロピレングリコール 3.0
無水ケイ酸 20.0
塩化ベンザルコニウム 0.1
酸化チタン 0.4
キシリット 5.0
サッカリンナトリウム 0.1
香料 1.2
精製水 バランス
計 100.0%
(A)成分/(B)成分=1.4
【0049】
〔実施例7〕
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド 0.5
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
2−ヤシ油アルキル−N−カルボキシメチル− 1.5
N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム(30%水溶液)
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.0
デキストラナーゼ 0.2
アルギン酸ナトリウム 0.7
キサンタンガム 0.3
ソルビット液(70%) 35.0
プロピレングリコール 3.0
水酸化アルミニウム 40.0
無水ケイ酸 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
香料 1.1
精製水 バランス
計 100.0%
(A)成分/(B)成分=2.0
【0050】
〔実施例8〕
ラウリル硫酸ナトリウム 1.2
ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド 0.8
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(35%水溶液) 2.0
トラネキサム酸 0.05
カルボキシメチルセルロース 1.2
ソルビット液(70%) 25.0
プロピレングリコール 3.0
リン酸水素カルシウム 45.0
無水ケイ酸 2.0
塩化ベンザルコニウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
香料 1.2
精製水 バランス
計 100.0%
(A)成分/(B)成分=1.5
【0051】
これらの実施例では、いずれもフッ素化合物の口腔内滞留性に優れ、良好な使用中の泡立ち、すすぎ後の良好な使用感(残存感)、かつ良好な保存安定性をもっていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化合物を含有する歯磨組成物に、(A)ラウリル硫酸ナトリウムを0.5〜1.5質量%と、(B)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウム塩を0.4〜1.2質量%と、(C)アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも一種の両性界面活性剤とを配合してなり、(A)成分/(B)成分の質量比が1.2〜3.5の範囲であることを特徴とする歯磨組成物。

【公開番号】特開2007−320894(P2007−320894A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152060(P2006−152060)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】