説明

歯磨組成物

【解決手段】(A)硝酸カリウム、(B)イソプロピルメチルフェノール、(C)ノニオン界面活性剤を含有し、前記(B)成分の配合量が0.03〜0.5質量%であり、かつ(A)成分/(C)成分の質量比が1.5〜20であることを特徴とする歯磨組成物。
【効果】本発明の歯磨組成物は、優れた神経鈍麻作用及びバイオフィルム殺菌力を有し、かつ使用感にも優れるもので、象牙質知覚過敏症の予防又は抑制に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経鈍麻作用及びバイオフィルム殺菌力に優れ、使用感も良好であり、象牙質知覚過敏症の予防又は抑制に有効な歯磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
象牙質知覚過敏症は、歯周病の進行等により歯肉が退縮することにより象牙質が露出し、象牙細管を通じて擦過や冷たい物などの刺激が神経に伝わることで痛みを生じる疾患である。従って、象牙質知覚過敏症を予防又は抑制するためには、歯周病の原因である歯周バイオフィルムの殺菌と神経鈍麻による痛みの緩和という両効果を兼ね備えた口腔用組成物が非常に有効である。
【0003】
従来、イソプロピルメチルフェノールは、口腔内の歯周バイオフィルムの殺菌に有効であることが知られており、テレビンオイルと界面活性剤及び/又はアルコール類とを併用することや、ヒスチジンキナーゼ阻害剤と併用することで、口腔バイオフィルムの抑制効果が発揮されることが提案されている(特許文献1,2参照)。更に、特許文献3には、難水溶性の非イオン性薬効成分とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とラウリル硫酸ナトリウムとを併用することで、特殊なプラスチック容器を使用しなくても上記薬効成分の効果を損なわずに安定配合できることが提案されている。
【0004】
一方、硝酸カリウムは、象牙質の知覚過敏症緩和剤として有効であり、硝酸カリウムを配合した口腔用組成物が提案されている(特許文献4参照)。また、硝酸カリウムを非イオン界面活性剤、カルボキシメチルセルロースナトリウムと併用して、口腔内の油脂汚れを除去する技術が特許文献5に提案されている。更に、硝酸カリウムと特定の香料を配合することで、硝酸カリウムの苦味を低減した技術が特許文献6に提案されている。
【0005】
しかしながら、口腔用組成物にイソプロピルメチルフェノール等の難水溶性殺菌成分と硝酸カリウム等の知覚過敏緩和成分とを配合すれば、歯周バイオフィルムの殺菌効果と神経鈍麻作用とを兼備できると考えられるが、両成分を同一組成に安定配合することは難しく、いずれかの効果が低下してしまうという問題があった。
従って、優れた歯周バイオフィルム殺菌力と神経鈍麻効果とを兼ね備えた歯磨組成物の開発が望まれる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−124315号公報
【特許文献2】特開2005−187377号公報
【特許文献3】特許第3894132号公報
【特許文献4】特開2003−73246号公報
【特許文献5】特開2000−178150号公報
【特許文献6】特開2003−73282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、神経鈍麻作用及びバイオフィルム殺菌力に優れ、使用感も良好であり、象牙質知覚過敏症の予防又は抑制に有効な歯磨組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、(A)硝酸カリウムと、(B)イソプロピルメチルフェノールと、(C)ノニオン界面活性剤とを、前記(B)成分の配合量が0.03〜0.5質量%であり、かつ(A)成分/(C)成分の質量比が1.5〜20となる範囲で配合することにより、硝酸カリウム及びイソプロピルメチルフェノールを安定配合でき、神経鈍麻作用に優れる上、優れた口腔バイオフィルム殺菌力が発揮され、使用感も良好となることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、知覚過敏症を予防又は抑制のためには、硝酸カリウムによる神経鈍麻作用と象牙細管を開口させる歯周バイオフィルムを殺菌する作用を同時に発揮させることが有効であるが、イソプロピルメチルフェノールと硝酸カリウムとを同一組成に安定に配合することは難しく、いずれかの成分由来の効果が低下してしまい、上記した神経鈍麻作用と歯周バイオフィルムの殺菌作用を同時にかつ満足に発揮させることは困難であった。本発明者らは、上記課題を解決するため検討した結果、歯周バイオフィルムに効果のあるイソプロピルメチルフェノールの殺菌力の低下を防ぐためにノニオン界面活性剤の配合が有効であるものの、ノニオン界面活性剤、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は硝酸カリウム由来の神経鈍麻作用を阻害してしまうこと、これに対して、硝酸カリウムと、イソプロピルメチルフェノールとノニオン界面活性剤とを特定割合で組み合わせて歯磨組成物に配合することによって、上記課題を解決でき、硝酸カリウムとイソプロピルメチルフェノールとを同一組成に安定に配合でき、神経鈍麻作用が損なわれることもなく、高い神経鈍麻作用及びバイオフィルム殺菌力を兼ね備え、使用感も良好な歯磨組成物が得られることを見出したものである。後述する実施例から明らかなように、本発明の必須要件のいずれかを満たさない場合は優れた神経鈍麻効果と歯周バイオフィルム殺菌力、及び使用感を兼ね備えることはできず、本発明の目的は達成されない。
【0010】
従って、本発明は、(A)硝酸カリウム、(B)イソプロピルメチルフェノール、(C)ノニオン界面活性剤を含有し、前記(B)成分の配合量が0.03〜0.5質量%であり、かつ(A)成分/(C)成分の質量比が1.5〜20であることを特徴とする歯磨組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯磨組成物は、優れた神経鈍麻作用及びバイオフィルム殺菌力を有し、かつ使用感にも優れるもので、象牙質知覚過敏症の予防又は抑制に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の歯磨組成物は、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨等の歯磨剤、特に練歯磨として調製され、硝酸カリウム、イソプロピルメチルフェノール、ノニオン界面活性剤を必須成分として含有する。
【0013】
本発明において、(A)硝酸カリウムとしては、歯磨組成物に通常使用されている硝酸カリウムを使用でき、例えばマツモト交商(株)製等の市販品を使用できる。硝酸カリウムの配合量は組成物全体の1〜10%(質量%、以下同様。)、特に3〜7%が好適である。配合量が1%未満では配合効果が満足に発揮されず、十分な神経鈍麻効果が認められず、10%を超えると塩味、苦味が強く、使用に適さない場合がある。
【0014】
(B)イソプロピルメチルフェノールは、非イオン性の殺菌成分として広く知られており、例えば、商品名ビオゾールとして大阪化成(株)から販売されているものを使用することができる。イソプロピルメチルフェノールの配合量は、組成物全体の0.03〜0.5%であり、好ましくは0.1〜0.5%である。0.03%未満では歯周バイオフィルム殺菌効果が得られず、0.5%を超えると苦味が強く、使用に適さない。
【0015】
(C)ノニオン界面活性剤としては、例えばショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、モノセチル酸ヘキサグリセリル、モノセチル酸ヘキサグリセリルラウリル酸モノ又はジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、プルロニック等が用いられる。この中でも、使用時の味の点からポリオキシエチレン脂肪酸エステル、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の使用が好ましい。
【0016】
このようなノニオン界面活性剤としては、市販品を使用でき、例えば日光ケミカルズ(株)製のNIKKOL BC-20(ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル)、NIKKOL BS-20(ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル)、NIKKOL HCO-10(ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油)、NIKKOL HCO-20(ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油)、NIKKOL HCO-30(ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油)、日本エマルジョン(株)製のEMALEX 720(ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル)などが挙げられる。
【0017】
また、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、酸化エチレンの平均付加モル数が10〜30モル、特に10〜20モルであることが、使用時の味、歯周バイオフィルム殺菌力の点から好ましい。上記付加モル数が10モル未満であると歯周バイオフィルム殺菌力の効果が十分得られない場合があり、30モルを超えると使用時の味が悪化する場合がある。
【0018】
ノニオン界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.1〜8%、好ましくは0.2〜4%である。配合量が0.1%未満では十分な殺菌力向上効果が発揮されず、8%を超えると苦味が強くなるなど使用時の味が悪くなり、また製剤の安定性が悪くなる場合がある。
【0019】
本発明組成物では、(A)硝酸カリウム/(C)ノニオン界面活性剤の質量比が1.5〜20であり、特に2〜5であることが優れた使用感及び神経鈍麻効果、殺菌力を満たすために好適である。上記質量比が1.5未満であると神経鈍麻効果が悪くなり、20を超えると殺菌力が劣り、また使用時の味が悪くなる。
【0020】
本発明の歯磨組成物には、上述した成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、通常歯磨組成物に使用されているその他の各種成分を任意成分として配合することができる。配合できる他の成分としては、粘結剤、ノニオン界面活性剤以外の界面活性剤、研磨剤、湿潤剤、甘味剤、香料、pH調整剤、硝酸カリウム及びイソプロピルメチルフェノール以外の有効成分あるいは薬効成分、防腐剤等がある。
【0021】
粘結剤としては、カラギーナン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、カーボポール、ビーガム等がある。粘結剤の配合量は、通常、組成物全体の0.3〜2%である。
【0022】
界面活性剤としては、(C)成分のノニオン界面活性剤に加えて、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が配合可能である。
アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−ミリストリルザルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム等のN−アシルグルタメート、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム等のN−アシルタウレート等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。なお、他の界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを配合することが、安定性向上効果の点から好適である。
【0023】
上記任意成分としての界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.1〜2%、特に0.1〜1.5%が好ましい。
【0024】
研磨剤としては、第2リン酸カルシウム・2水和塩及び無水和物、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系化合物、沈降性シリカ、アルミノシリケート等のシリカ系化合物、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト等の1種又は2種以上を配合することができる。研磨剤の配合量は通常、組成物全体の0〜50%、特に2〜40%である。
【0025】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、重量平均分子量200〜6,000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の多価アルコールの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて配合できる。配合量は通常、組成物全量に対して5〜70%である。
【0026】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、ペルラルチン、グリチルリチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等がある。甘味剤の配合量は通常、組成物全体の0.01〜5%である。
【0027】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1.2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができる。
【0028】
また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0029】
pH調整剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸及びその塩類、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ニナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどの無機化合物などが挙げられる。
【0030】
薬効成分あるいは有効成分としては、必須成分である硝酸カリウム、イソプロピルメチルフェノールに加えて、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ等の酵素、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、ビタミン類等の抗炎症剤、銅クロロフィル、グルコン酸銅、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化リゾチーム等の殺菌剤、ポリリン酸塩類等の歯石予防剤、ポリビニルピロリドン等のタバコヤニ除去剤、グリシン、プロリンなどのアミノ酸類、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、乳酸アルミニウムなどを配合できる。
【0031】
その他にも、任意成分として、リン酸水素カルシウム、ゼオライト、ハイドロキシアパタイトなどの無機化合物やその造粒物、結晶性セルロース等の有機粉末の造粒物や、寒天、ゼラチン、デンプン、グルコマンナン等の天然高分子や、ポリ酢酸ビニル、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル等の合成高分子及びそれらの共重合体、カルナバワックス、ロジン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、パラフィンワックス等のワックス類、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ウレタン、シリコン、天然ゴム等のラテックスゴムを架橋、重合、成形等により得られたもの、あるいは、これらの原料を混合して得られたものやラメフィルムを用いることができる。ラメフィルムとしては、有機樹脂の積層フィルム末、及び、有機樹脂積層フィルム中にアルミニウム等の蒸着層を導入した積層フィルム末等、具体的には、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末などを本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0032】
着色剤としては青色1号、黄色4号、緑色3号等が例示される。なお、これら成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0033】
本発明の口腔用組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、口腔用組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0035】
[実施例1〜10、比較例1〜7]
表1,2に示す組成の歯磨組成物を下記方法にて調製し、神経鈍麻効果、殺菌力及び使用時の味を下記方法で評価した。結果を表1,2に示す。なお、使用原料は下記に示すとおりである。
【0036】
(1)試験歯磨組成物の調製
表1、2に示す組成の歯磨組成物を調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mm、口径8mmのラミネートチューブ(低密度ポリエチレン72μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂90μm/アルミニウム10μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂35μm/直鎖状低密度ポリエチレン50μm,厚み257μm(大日本印刷社(株)製))に50g充填した。
【0037】
これらの歯磨組成物の調製には、硝酸カリウムにはマツモト交商(株)の硝酸カリウムを使用し、イソプロピルメチルフェノールには大阪化成(株)のビオゾールを使用、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油には日光ケミカル(株)のHCO−30,HCO−20,HCO−10を使用し、ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテルには日本エマルジョン(株)のエマレックス720を用いた。他成分については、ソルビット液、プロピレングリコール、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、乳酸アルミニウム、サッカリンナトリウム、フッ化ナトリウム、ポリエチレングリコール4000、無水ケイ酸、酸化チタン、リン酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、イミダゾリンベタイン、ラウリル硫酸ナトリウム、精製水は粧原基(化粧品原料基準)規格品、トラネキサム酸は日局(日本薬局方)規格品を用いた。
【0038】
<神経鈍麻効果の評価>
冷水を口に含むと歯がしみる10人のパネラーが、ラミネートチューブに充填した試験歯磨組成物を歯ブラシ上に1cm押出し、普段と同じ方法で2分間歯磨きし、以下に示す評価基準−1で評価した。10人の平均点を評価基準−2で評価した。
【0039】
評価基準−1
5点:歯磨き後、冷水を口に含むと、まったく歯がしみない
4点:歯磨き後、冷水を口に含むと、歯がしみない
3点:歯磨き後、冷水を口に含むと、ほとんど歯がしみず、問題のないレベル
2点:歯磨き後、冷水を口に含むと、歯がしみる
1点:歯磨き後、冷水を口に含むと、著しく歯がしみる
評価基準−2
◎:10人の平均点が4.0点以上
○:10人の平均点が3.0点以上4.0点未満
△:10人の平均点が2.0点以上3.0点未満
×:10人の平均点が2.0点未満
【0040】
<殺菌力評価>
凍結保存してあったポルフィロモーナス ジンジバリス培養液40μLをそれぞれ5mg/Lヘミン(Sigma社製)及び1mg/LのビタミンK(和光純薬工業社製)を含むトッドヘーウィットブロース(Becton and Dickinson社製)培養液(THBHM)4mLに添加し、37℃で二晩嫌気培養(窒素:二酸化炭素:水素=80:10:10の容積比)後、波長660nmでの濁度(OD660)=1に調整し、菌液とした。
調製した歯磨組成物10gに人工唾液40mLを加え撹拌した後、遠心(10000rpm、10min)し、得られた上清を試料原液とした。この試料原液2mLを菌液2mLに30秒間作用させた後、50μLを分取し、殺菌力評価サンプル液とした。殺菌力評価は、殺菌力評価サンプル液(50μL)をTHB液体培地(4mL)に添加し、培養(37℃、8時間)した後、増殖した菌量を濁度(OD660)を指標に測定し、数値の小さいものがより高い殺菌力が得られたものとして評価を行った。殺菌力1.0以下を良好とした。
【0041】
なお、人工唾液としては、3.73gの塩化カリウム、0.14gのリン酸2水素1カリウム、0.15gの塩化カルシウム・2水和物、0.02gの塩化マグネシウム・6水和物を精製水に溶解し、水酸化カリウムでpHを7.0に調整し、1,000mLとしたものを使用した。
【0042】
<使用時の味の評価>
10人の専門パネラーが、ラミネートチューブに充填した試験歯磨組成物を歯ブラシ上に1cm押出し、普段と同じ方法で2分間歯磨きし、以下に示す評価基準−1で試験歯磨組成物の使用時の味(塩味及び苦味)を評価した。10人の平均点を評価基準−2で評価した。
【0043】
評価基準−1
5点:歯磨きをしている間にまったく塩味及び苦味を感じない
4点:歯磨きをしている間、塩味及び苦味を感じない
3点:歯磨きをしている間、わずかに塩味、苦味を感じるが、使用上問題がない
2点:歯磨きをしている間、塩味、苦味を感じ、使用感が悪い
1点:歯磨きをしている間、著しく塩味、苦味を感じ、非常に使用感が悪い
評価基準−2
◎:10人の平均点が4.0点以上
○:10人の平均点が3.0点以上4.0点未満
△:10人の平均点が2.0点以上3.0点未満
×:10人の平均点が2.0点未満
【0044】
【表1】

【0045】
使用原料
硝酸カリウム;マツモト交商(株)製 硝酸カリウム
イソプロピルメチルフェノール;大阪化成(株)製 ビオゾール
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油;
日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL HCO-20、酸化エチレン付加モル数20
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油;
日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL HCO-10、酸化エチレン付加モル数10
ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油;
日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL HCO-30、酸化エチレン付加モル数30
ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル;
日本エマルジョン(株)製 EMALEX 720 酸化エチレン付加モル数20
【0046】
【表2】

【0047】
使用原料
硝酸カリウム;マツモト交商(株)製 硝酸カリウム
イソプロピルメチルフェノール;大阪化成(株)製 ビオゾール
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油;
日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL HCO-20
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油;
日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL HCO-10
ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル;
日本エマルジョン(株)製 EMALEX 720
【0048】
表1,2の結果から、本発明の必須要件のいずれかを満たさない組成では、神経鈍麻効果、殺菌力、使用時の味のいずれかの点で満足な効果が発揮されなかった(比較例1〜7)。これらに対して、本発明の歯磨組成物は、神経鈍麻効果、殺菌力、及び使用時の味に優れた歯磨組成物であることが確認された(実施例1〜10)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硝酸カリウム、(B)イソプロピルメチルフェノール、(C)ノニオン界面活性剤を含有し、前記(B)成分の配合量が0.03〜0.5質量%であり、かつ(A)成分/(C)成分の質量比が1.5〜20であることを特徴とする歯磨組成物。
【請求項2】
(C)ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である請求項1記載の歯磨組成物。

【公開番号】特開2009−137897(P2009−137897A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316851(P2007−316851)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】