説明

歯科ユニット

【課題】簡易な構造で信頼性高く患者用椅子とドクターユニットとの衝突を防止できる歯科ユニットを提供する。
【解決手段】基台20と、患者用椅子10と、第一アーム40、第二アーム45、及び治療に用いられる器具が配置された作業台31を備えるドクターユニット30と、患者用椅子の昇降及び傾倒起立の範囲内にドクターユニットの少なくとも一部が侵入する可能性があるときに、患者用椅子の昇降及び傾倒起立を禁止する干渉検知装置50と、を備え、干渉検知装置は、第一アームの回動量と第二アームの回動量とを積算値として物理量を変化させる1つの被検知手段55と、被検知手段の前記物理量を検知する1つの検知手段56と、検知手段に接続されて該検知手段からの情報に基づいて患者用椅子の昇降及び傾倒起立を禁止可能に設けられる停止指令手段166と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科において患者が着座する患者用椅子、及び歯科医師等の施術者が施術の際に使用する器具が備えられるドクターユニットを有する歯科ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科ユニットは、歯科治療等の際に使用される各種設備が備えられるユニットであり、患者が着座する患者用椅子を備えている。そしてその周囲には、施術者が使用する歯科治療のための各種器具が配置されるドクターユニット、主にアシスタントが用いる各種器具が具備されるアシスタントハンガー、患者にうがい水等を供給する給水部、これを排水するためのスピットン、及び患者の口腔内を照らす歯科用照明等が備えられている。
ここで患者用椅子は、患者を治療や処置のしやすい姿勢にさせるため、昇降自在であるとともに、背もたれを傾倒起立できるように構成されている。
【0003】
一方、患者用椅子の周囲に備えられる上記したドクターユニット、アシスタントハンガー、スピットン、及び歯科用照明等の各種機器も、施術者、患者の位置や姿勢に応じて移動や回動が可能であることが好ましい。その中でも、ドクターユニットは患者用椅子の側方のうちの一方側に配置され、移動回動させることが頻繁に行われる。具体的には例えば、患者が患者用椅子に離着席する際には、該患者用椅子の側方は大きく開けておいた方が患者にとって利便性がよいので、ドクターユニットを大きく移動(回動)させておくことが好ましい。また、歯科治療においては施術者と患者との対話も重要であり、その際には施術者が患者と対面して対話をすることから、患者の頭部の側方は施術者が座る等するスペースを開け、かつ、施術者の近くにドクターユニットを位置づけておくことがよい。一方、施術のときには、ドクターユニットをできるだけ患者の頭部に近い位置に配置させておくことが便利である。特に患者の背面側から口腔内に施術するときには、ドクターユニットを患者の頭部の真横に配置することにより円滑な施術ができる。
【0004】
ところが、患者用椅子の昇降、及び傾倒起立が可能であること、及びドクターユニットが移動回動自在であることにより、両者の可動範囲が重なる部分を生じることがあり、場合によっては衝突する虞もあった。このような衝突は当然に回避されるべきである。そのために、両者の可動範囲が全く重ならないように設定すれば、衝突は回避することができるが、上記したようにドクターユニットの可動範囲は大きい方が便利であるので、できるだけ広い可動範囲を確保したい。
【0005】
かかる問題に対して、特許文献1には、保安スイッチが背もたれ(背板)と着座部(座板)の間、アシスタントホルダ、背もたれの3箇所に設けられた発明が開示されている。これによれば、背もたれが傾倒起立方向に移動するときに力が加わることで異常を検知することできる。
また、特許文献2には、歯科ユニット(チェアユニット)周りの所定の複数の領域を検出領域とし、各領域において非接触のセンサにより障害物を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−96014号公報
【特許文献2】特開2005−177131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の歯科ユニットは、何らかの異常な力を受けたときに起動してその異常を検知するように構成されており、接触すること自体を回避するものではない。また特許文献2に記載の歯科ユニットでは、広い検出領域において障害物の有無を検知する必要があり、必ずしも1つの検知手段で全てをカバーすることができるとは限らず、構成が複雑となっていた。また、検知されるべきでないものによっても歯科用椅子を停止させてしまう虞があり、その感度の調整も容易ではなかった。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑み、簡易な構造で信頼性高く、患者用椅子とドクターユニットとの衝突を防止できる歯科ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
請求項1に記載の発明は、基台(20)と、基台の上方に昇降動可能に設けられた着座部(11)、着座部に対して回動して傾倒起立可能である背もたれ(12)、及び該背もたれの端部に設けられるヘッドレスト(13)を備える患者用椅子(10)と、基台及び患者用椅子に近接して配置され、基台側に配置された一端側を軸に回動可能に設けられた第一アーム(40)、第一アームの他端側に一端側を軸として回動可能に配置された第二アーム(45)、及び第二アームの他端側を軸に回動可能に具備され、治療に用いられる器具が配置された作業台(31)を有するドクターユニット(30)と、患者用椅子の昇降及び傾倒起立の可動範囲内にドクターユニットの少なくとも一部が侵入する可能性があるときに、患者用椅子の昇降及び傾倒起立を禁止する干渉検知装置(50、150)と、を備え、干渉検知装置は、第一アームの回動量と第二アームの回動量とを積算値として物理量を変化させる1つの被検知手段(55、161a)と、該被検知手段の物理量を検知する1つの検知手段(56、165)と、検知手段に接続されて該検知手段からの情報に基づいて患者用椅子の昇降及び傾倒起立を禁止可能に設けられる停止指令手段(57、166)と、を具備する歯科ユニット(1、101)を提供することにより前記課題を解決する。
【0011】
ここで、被検知手段が変化させる「物理量」とは、位置、移動量、回動量、圧力等のいわゆる物理的に認識されるものを意味し、電気的な信号を除外する意味である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の歯科ユニット(1)において、干渉検知装置(50)は、ドクターユニット(30)の第一アーム(40)の回動軸と同軸に回動自在に設けられた第一回転子(51)と、第二アーム(45)に連動して回動する第二回転子(52)と、第一回転子及び第二回転子に掛け渡され、被検知手段(55)が具備された伝達ベルト(53)と、を備え、被検知手段は、第一アーム、及び第二アームの回動による伝達ベルトの回動に追随してその位置を変更可能であり、検知手段(56)は、被検知手段が所定の位置に達したときに該検知手段が被検知手段を検知する位置に配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の歯科ユニット(101)において、干渉検知装置(150)は、ドクターユニット(30)の第一アーム(40)に連動して回動する第一回転子(151)と、第二アーム(45)に連動して回動する第二回転子(152)と、第一回転子及び第二回転子のそれぞれに設けられたワイヤ(154、155)と、を備え、被検知手段(161a)は箱体の内側に充填された作動流体であるとともに、検知手段が圧力センサ(165)であり、第一回転子の回動、及び第二回転子の回動に基づいてワイヤが作動流体の圧力を変更することが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の歯科ユニットによれば、簡易な構造で信頼性高く患者用椅子とドクターユニットとの衝突を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態に係る歯科ユニットの外観斜視図である。
【図2】図1に示した歯科ユニットの平面図である。
【図3】干渉検知装置の概念図である。
【図4】干渉検知装置による検知の場面を説明する図である。
【図5】干渉検知装置による検知の他の場面を説明する図である。
【図6】干渉検知装置による検知の他の場面を説明する図である。
【図7】第二実施形態に係る歯科ユニットの干渉検知装置の概念を示す図である。
【図8】図7の干渉検知装置による検知の場面を説明する図である。
【図9】図7の干渉検知装置による検知の他の場面を説明する他の図である。
【図10】他の形態に係る歯科ユニットの干渉検知装置の概念を示す図である。
【図11】さらなる他の形態に係る歯科ユニットの干渉検知装置の概念を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1、図2は、第一実施形態に係る歯科ユニット1の外観を示している。図1は斜視図、図2は上方から見た図である。
歯科ユニット1は、基台20、患者用椅子10、歯科用照明2、アシスタントユニット4、ドクターユニット30、及び干渉検知装置50(図3参照)を備えている。
【0018】
基台20は患者用椅子10の下方に配置されており、患者用椅子10の土台となるものである。当該基台20は、筐体により外郭が形成されるとともに、該筐体内側には、各種制御機器が内包されている。ここに含まれる制御機器としては、例えば、患者用椅子10の昇降、傾倒起立等をさせるための油圧回路、及び該油圧回路を制御する油圧制御手段を挙げることができる。従って、基台20のうち、患者用椅子10の背面側には、図1に表れるようにフットスイッチ21が設けられる。施術者はこのフットスイッチ21や後述するドクターユニット30の操作パネル33の操作スイッチを操作して油圧制御手段に対して指令を出し、油圧回路を制御して患者用椅子10の昇降、傾倒起立をさせることができる。
【0019】
患者用椅子10は、着座部11、背もたれ12、ヘッドレスト13、レッグレスト14、及びフットレスト15を備えている。
【0020】
着座部11は、基台20の上方に昇降可能に取り付けられている。着座部11の昇降は、上記したように基台20内に収められた油圧回路により行われる。具体的には、フットスイッチ21や後述するドクターユニット30の操作パネル33を施術者が操作し、その操作指令を受けた油圧制御回路が、上記油圧回路に組み込まれた油圧シリンダを適切に作動させることで当該着座部11が昇降する。そして背もたれ12、ヘッドレスト13、レッグレスト14、及びフットレスト15は着座部11と一体に昇降する。
【0021】
背もたれ12は、着座部11の一端側を軸に回動可能に設けられている部材で、患者の胴部をサポートするものである。背もたれ12は、患者が着座の姿勢、仰向けの姿勢になることができるように傾倒、起立が可能とされている。背もたれ12の傾倒起立は、基台20内から連結される油圧回路により行われる。具体的には、フットスイッチ21や後述するドクターユニット30の操作パネル33を施術者が操作し、その操作指令を受けた油圧制御回路が、上記油圧回路に組み込まれた油圧シリンダを適切に作動させることで当該背もたれ12が傾倒起立する。
【0022】
ヘッドレスト13は、背もたれ12の端部のうち、着座部11が配置される側とは反対側の端部に配置される部材で、患者の頭部をサポートする部材である。ヘッドレスト13は、患者の頭部位置を施術に都合よい姿勢にさせるため、移動、回動可能に形成されている。ヘッドレスト13のこのような動作は背もたれ12の内部に組み込まれたモータを含む機構により行われる。具体的には、背もたれ12又はヘッドレスト13の背面側に設けられた不図示のスイッチや後述するドクターユニット30の操作パネル33を施術者が操作する等して、その操作指令を受けた上記機構が作動することでヘッドレスト13が移動回動する。
【0023】
レッグレスト14は、着座部11の端部のうち、上記背もたれ12が配置される側に対向する端部側を軸に回動可能に設けられている部材で、患者の脚部をサポートするものである。レッグレスト14は、背もたれ12の傾倒起立の姿勢に合わせて鉛直、水平の姿勢となることができるように回動可能である。このようなレッグレスト14の回動は、背もたれ12の傾倒起立にリンクして作動するリンク機構により行われる。具体的には、上記のように背もたれ12をフットスイッチ21やドクターユニット30の操作パネル33を施術者が操作すると、背もたれ12が傾倒起立し、これにリンクしてレッグレスト14が回動する。
【0024】
フットレスト15は、レッグレスト14から該レッグレスト14を延長する方向、及びその逆方向に移動可能に設けられている部材で、患者の仰向けの姿勢において該患者の足先をサポートするものである。具体的には、背もたれ12が起立した姿勢、すなわち着座の姿勢では、フットレスト15はレッグレスト14に重なっており、突出していない状態である。一方、背もたれが傾倒され患者が仰向けとなる姿勢では、図1、図2のようにレッグレスト14を延長するようにフットレスト15が突出する。フットレスト15のこのような移動の手段としては油圧、モータ、リンク機構等を用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0025】
歯科用照明2は、治療を行うときに的確に患者の口腔内を照明することができるように、自在継ぎ手等により自由度高く移動回動可能なアーム3を介して取り付けられている。従って、歯科用照明2は、その位置、角度を調整することにより、施術者が患者の口腔内を適切に観察できる位置へ該歯科用照明2を移動させることが可能である。歯科用照明2は、手で移動させる他、アーム3中に備えられたガススプリングやエアシリンダにより自動に移動させることができてもよい。
【0026】
アシスタントユニット4は、患者用椅子10の側方のうちの一方側に設けられ、アシスタントハンガー5、スピットン6、及び給水装置7を備えている。
【0027】
アシスタントハンガー5は、主にアシスタントが使用する器具が具備された部位である。アシスタントハンガー5は、ハンガー部5a、及びハンガー支柱5bを備えている。
ハンガー支柱5bは筒状(中空柱状)の部材で、その下端はアシスタントユニット4の下端に回動可能に具備されている。ハンガー支柱5bの回動可能方向は、少なくとも下端を中心として垂直面内の回動である。ただし、水平面内の回動が可能であってもよい。また、ハンガー部5aはハンガー支柱5bの上端に設けられ、アシスタントが使用する各器具が懸架されている。ハンガー部5aは、水平面内に回動可能にハンガー支柱5bの上端に設置されている。これによりハンガー部5aは、前後方向(図2の紙面上下方向)に回動可能であるとともに、水平面内で向きを変えることができる。アシスタントハンガー5に懸架される器具としては、例えばバキューム、排唾管、シリンジ等のハンドピースを挙げることができる。バキュームや排唾管は、吸引管を介してバキュームユニットに接続されている。
【0028】
スピットン6は、給水部7より供給された水により治療中や治療後に患者がうがいをして、口腔内を洗浄するときに使用するものである。従って、スピットン6は、うがいをした後の口腔内の水を吐き捨てるため、鉢状とされている。そしてスピットン6に排出された唾液や水は、ウオーターユニット中の排水トラップを介して排出される。ここで、スピットン6は、患者の正面側に向かって水平面内で回動可能とされている。これにより患者の目の前にスピットン6を配置することができ、利便性を向上させている。
【0029】
ドクターユニット30は、患者用椅子10の側方のうちアシスタントユニット4とは反対側の側方に設けられ、作業台31、第一アーム40、及び第二アーム45を有している。
作業台31は、施術者が必要とする各器具やスイッチ等が備えられる部位である。具体的には、作業台31はその上面に作業面31aを具備し、患者用椅子10の背面側端部には、施術者が施術の際に使用するハンドピース群32、及びこれを収納するホルダーが設けられている。ハンドピース群32に含まれるハンドピースとしては、例えば、エアタービン、マイクロモータ、スケーラ、シリンジ等を挙げることができる。ほとんど全てのハンドピースは、チューブ類を介して、電気回路、水回路、エア回路等と連結されている。また、作業面31aとホルダーとの間には操作パネル33が具備されている。操作パネル33には、各種操作スイッチ類が設けられており、例えば患者用椅子10の傾倒起立、昇降操作、歯科用照明2の点灯消灯の切り替え等が可能となっている。
このように、施術者が操作したり、取り扱ったりする器具や部位は、作業台31のうち、患者用椅子10の背面側に集められている。これにより患者の頭部付近で施術を進める施術者の利便が図られている。
【0030】
第一アーム40は、中空棒状のいわゆるアーム部材であり、その一端が基台20の下部に配置され、水平面内で回動可能とされている。従って第一アーム40は、図2に矢印IIaで示した方向に回動することが可能である。
第二アーム45も、中空棒状のアーム部材である。第二アーム45の一端は、第一アーム40の端部のうち、基台20側とは反対側である他端に配置され、これを軸に水平面内で回動可能とされている。従って第二アーム45は、図2に矢印IIbで示した方向に回動することができる。また、第二アーム45の他端には、作業台31が配置され、水平面内で回動可能とされている。従って、作業台31は図2に矢印IIcで示した方向に回動することができる。
【0031】
次に干渉検知装置50について説明する。上記したように第一アーム40、第二アーム45、及び作業台31は水平面内で個別に回動することができるように構成されている。これにより、施術者は作業台31を所望の位置に自在に移動(回動)させることができる。しかしながら一方で、このように自由度高く移動(回動)自在であることにより、作業台が患者用椅子10の可動範囲に入ってしまうこともあり、作業台31と患者用椅子10との衝突を未然に防ぐ必要がある。これに対して、干渉検知装置50は、作業台31が患者用椅子10の可動範囲内に入る可能性があるときには患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する。以下、詳しく説明する。
【0032】
図3に干渉検知装置50の構成を概念的に表わした。干渉検知装置50は、第一回転子51、及び第二回転子52を備え、第一回転子51と第二回転子52との間に伝達ベルト53が掛け渡されて構成される。さらに干渉検知装置50は、被検知手段としての停止位置決め部材55、検知手段56、及び停止指令装置57を備えている。
【0033】
第一回転子51は、第一アーム40の回動軸うち、基台20側の回動軸と同軸である回転子であり、回転自在に設けられている。
第二回転子52は、第一アーム40と第二アーム45とが回動可能に連結された回動軸と同軸の回転子である。そして当該第二回転子52は第二アーム45の回動(図2、図3に矢印IIbで示した回動)に追随して回動することができる。また、当該第二回転子52の回動により、ここに掛けられている伝達ベルト53が回動する。
このような第一回転子51、第二回転子52、及び伝達ベルト53の具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば第一回転子51、第二回転子52がプーリであり、伝達ベルト53がベルトにより構成される例を挙げることができる。
【0034】
停止位置決め部材55は、被検知手段として機能する部材であり、後述する検知手段56により検出される部材である。従って、停止位置決め部材55が検知手段56に検知されることにより、後述する停止指令装置57が作動する。停止位置決め部材55は、伝達ベルト53に備えられ、当該伝達ベルト53の動作に応じて回動(移動)することができるように構成されている。すなわち、停止位置決め部材55の回動量(移動量)の積算値として物理量である座標位置(移動量)を変化させることが可能である。
そして、停止位置決め部材55が配置される位置は、ドクターユニット30の少なくとも一部が患者用椅子10の昇降、傾倒起立の可動範囲内に入る可能性がある姿勢となった時に、検知手段56に検知される位置である。これにより、第一アーム40、第二アーム45、及び作業台31の全ての移動(回動)によるドクターユニット30の姿勢に対して、1つの検知手段56により、患者用椅子10の可動範囲とドクターユニット30の可動範囲との重なりの有無の判断をすることができる。実際にどのように検知されるかについては後で詳しく説明する。
【0035】
検知手段56は、上記した被検知手段としての停止位置決め部材55を検知して、後述する停止指令装置57に信号を送る手段である。検知手段56は停止位置決め部材55を検知することができれば、その具体的態様は限定されることはないが、これには例えばマイクロスイッチや光学センサ等を挙げることができる。
【0036】
停止指令装置57は、検知手段56からの信号を受信して、患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する旨の信号を出力する装置である。かかる装置であれば、その態様は限定されるものではないが、例えば、検知手段56からの入力情報を受け入れる入力ポート、演算式やデータ情報等が記憶されたROM、演算の作業領域としてのRAM、演算が行われる中央演算子、及び演算結果として患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する信号を出力する出力ポートを備える演算装置を挙げることができる。
【0037】
上記したような歯科ユニット1により、簡易な構成で確実にドクターユニット30と患者用椅子10との衝突を未然に防ぐことができる。詳しくは次の通りである。ドクターユニットが複数のアーム(40、45)の連結により構成され、該アームのそれぞれが回動可能である場合には、作業台の移動(回動)の自由度が高く、利便性に優れる。このようなドクターユニット対し、複数のアームの各回動軸に対して回転検出器等のセンサを取り付けてこれを電気的に集計演算してドクターユニットの姿勢を把握することは可能である。しかしながら、この場合には各回転軸に検出手段が必要であり、その演算も複雑となる傾向にあり、信頼性も低下する。これに対して、歯科ユニット1では、1つの被検知手段55及び1つの検知手段56によりこれを行うことが可能であり、構成が簡易であるとともに、信頼性も高い。また被検知手段55においてその変化は座標の変化という物理量であり、かかる観点からも信頼性が高い。
また、検知手段56がアームの内側に隠蔽されているので、外観への影響も少なく、人の動き等の外乱も受け難いことから、さらに作動の信頼性を向上させることができる。
【0038】
次に、第一アーム40、第二アーム45の回動に対してどのように干渉検知装置50が作動するかについて具体例を挙げて説明する。図4〜図6に説明のための図を示した。
前提として、予め次のような設定をする。すなわち、ドクターユニット30の作業台31自体の回動可能範囲の少なくとも一部が、患者用椅子10の昇降、傾倒起立の軌道の範囲に重なる可能性があるときに、干渉検知装置50の検知手段56が停止位置決め部材55を検知できるように、該停止位置決め部材55を配置する位置を決めて配置する。これにより以下に説明する場面で、適切に患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止することができる。
【0039】
図3に示したドクターユニット30の姿勢では、ドクターユニット30(作業台31)は患者用椅子10の可動範囲内に侵入する可能性はなく、検知手段56は停止位置決め部材55を検知していない。
図3に示した姿勢から図4のように第一アーム40を矢印IVaで示した方向に回動させる。すると、直線の一点鎖線で示した患者用椅子10の可動範囲に作業台31の一部が重なる。かかる場合には患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する必要がある。これに対して、第一アーム40の矢印IVaで示した回動にともなって、第二回転子52が一点鎖線の円で示した位置から矢印IVbで示した回動をする。すると、伝達ベルト53も同様にその角度を変え、ここに備えられる停止位置決め部材55が検知手段56に検知可能な位置にまで回動する。ここで第一回転子51は上記したように回動自在であるから、第一回転子51は、矢印IVcに示したように回動し、第二回転子52、伝達ベルト53、及び停止位置決め部材55の上記回動を円滑に行わせることができる。以上より、停止位置決め部材55が検知手段56に検知される位置にまで回動されて検知され、患者用椅子10の昇降、傾倒起立が禁止される。
【0040】
他の例として、図3に示した姿勢から図5のように第二アーム45を矢印Vaで示した方向に回動させることを考える。すると、直線の一点鎖線で示した患者用椅子10の可動範囲に作業台31の一部が重なる。かかる場合にも患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する必要がある。これに対して、上記したように第二回転子52は、第二アーム45の回動に追随して矢印Vbで示した回動をする。そして当該第二回転子52の回動により伝達ベルト53が矢印Vcで示したように回動し、これにより停止位置決め部材55が回動する。ここで、第一回転子51は上記したように回動自在であるから、第一回転子51は、矢印Vdに示したように回動し、第二回転子52、伝達ベルト53、及び停止位置決め部材55の上記回動を円滑に行わせることができる。以上より、停止位置決め部材55が検知手段56に検知される位置にまで回動されて検知され、患者用椅子10の昇降、傾倒起立が禁止される。
【0041】
さらに、他の例として図3に示した姿勢から図6のように第一アーム40、第二アーム45を同時に矢印VIa、VIbで示した方向に回動させることを考える。すると、この場合にも直線の一点鎖線で示した患者用椅子10の可動範囲に作業台31の一部が重なる。かかる場合にも患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する必要がある。これに対して干渉検知装置50では、図4、図5で説明した各動作を合わせた動作により停止位置決め部材55が回動する。すなわち、第一アーム40の回動に対しては、該第一アーム40の矢印VIaで示した回動にともなって、第二回転子52が一点鎖線の円で示した位置から矢印VIcで示した回動をする。すると、伝達ベルト53も同様にその角度を変え、ここに備えられる停止位置決め部材55が検知手段56に近づくように回動する。ここで第一回転子51は上記したように回動自在であるから、第一回転子51は、矢印VIfに示した方向に回動し、第二回転子52、伝達ベルト53、及び停止位置決め部材55の上記回動を円滑に行わせることができる。
一方、第二アーム45の回動に対しては、第二回転子52は、第二アーム45の回動に追随して矢印VIdで示した回動をする。そして当該第二回転子52の回動により伝達ベルト53が矢印VIeで示したように回動し、これにより停止位置決め部材55が回動する。ここで、第一回転子51は上記したように回動自在であるから、第一回転子51は、矢印VIfに示した方向に回動し、第二回転子52、伝達ベルト53、及び停止位置決め部材55の上記回動を円滑に行わせることができる。
以上より、停止位置決め部材55が検知手段56に検知される位置にまで回動されて検知され、患者用椅子10の昇降、傾倒起立が禁止される。
本例では、第一アーム40、第二アーム45のそれぞれの回動量は小さいが、両者の回動量を合わせると作業台31が患者用椅子10の可動範囲内に入ることになる。干渉検知装置50ではこのような場合にも停止位置決め部材55が検知手段56により検知される状態になり、患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止することができる。
【0042】
また、逆に患者用椅子10の昇降、傾倒起立が禁止された図4〜図6の姿勢から、第一アーム40、第二アーム45を回動させ、ドクターユニット30が患者用椅子10の可動範囲から外れるようにした場合には、再度患者用椅子10の昇降、傾倒起立を許容する必要がある。このときには、干渉検知装置50では、上記を遡るように停止位置決め部材55が回動する。これにより停止位置決め部材55は検知手段56により検知されなくなり、患者用椅子10の昇降、傾倒起立を許容することができる。
【0043】
本実施形態の歯科ユニット1における干渉検知装置50では、第一アーム40及び第二アーム45の回動を1つの被検知手段55、及び検知手段56により検知することとし、作業台31自体の回動は、停止位置決め部材55を配置する位置を予め考慮することで、作業台31の回動自体は検知することなしに、可動範囲の重なりの可能性を判断する。しかしながら、さらに作業台31の回動を伝達させて、停止位置決め部材を移動(回動)させる機構を用いて可動範囲の重なり位置を検知させてもよい。これによれば、干渉検知装置50よりも、若干機構が複雑になるものの、実際に作業台31が患者用椅子10の可動範囲に侵入する姿勢か否かで判断することができ、作業台31を移動(回動)させることのできる自由度を高くすることが可能となる。
具体的には、作業台31の回動軸に同軸でこれに連動する第三回転子を設け、該第三回転子と上記第二回転子52とをかけ渡すように第二の伝達ベルトを配置することを挙げることができる。
【0044】
図7は、第二実施形態に係る歯科ユニット101のうち、干渉検知装置150を概念的に示した図であり、図3に相当する図である。歯科ユニット101の干渉検知装置150以外の構成は、上記した歯科ユニット1と共通なのでここでは説明を省略する。
【0045】
干渉検知装置150は、第一回転子151、第二回転子152、第三回転子153、ワイヤ154、155、156、及びタンクユニット160、及び停止指令装置166を備えている。
第一回転子151は、第一アーム40の回動軸うち、基台20側の回動軸と同軸の回転子で、第一アーム40の回動(図2に矢印IIaで示した回動)に追随して回動することができる。
第二回転子152は、第一アーム40と第二アーム45とが回動可能に連結された回動軸と同軸の回転子で、第二アーム45の回動(図2に矢印IIbで示した回動)に追随して回動することができる。
第三回転子153は、第二アーム45と作業台31とが回動可能に連結された回動軸と同軸の回転子で、作業台31の回動(図2に矢印IIcで示した回動)に追随して回動することができる。
【0046】
ワイヤ154は、第一回転子151の回転をタンクユニット160に伝達する部材である。ワイヤ154は、第一回転子151、すなわち第一アーム40の回転によって巻き取られ、及び巻き戻される構成とされている。図7では見易さのため、ワイヤ154及びこれをガイドするプーリは第一アーム40の外側に記載しているが、実際には、いずれも第一アーム40の内側に配置されている。他のワイヤ155、156も第二回転子152、第三回転子153について同じである。
【0047】
タンクユニット160は、ドクターユニット30が患者用椅子10の可動範囲内に存在するかに関して被検知手段と検知手段とを有する装置である。タンクユニット160は、タンク161、被検知手段として機能する作動流体である作動気体161a、シリンダ162、163、164、及び検知手段としての圧力センサ165を備えている。
タンク161は、箱状の部材であり、その内側には被検知手段として機能する作動流体である作動気体161aが充填されている。作動気体として用いられる気体の種類は特に限定されることはないが、負圧とされた空気や負圧とされたガス等を挙げることができる。また、作動流体は気体であることが好ましいが、液体でも可能である。
シリンダ162、163、164は、シリンダ状の部材であり、図7に直線矢印で示したように、その一端側がタンク161の内部に対して突没できるように取り付けられている。シリンダ162、163、164は、上記したワイヤ154、155、156にそれぞれ連結されている。従って、シリンダ162、163、164の突没のうち、タンク161から退避する方向(「没」に相当する方向)への移動は、ワイヤ154、155、156が巻き取られて引っ張られることにより行われる。一方、タンク161内へ侵入する方向(「突」に相当する方向)への移動は、作動流体161aの負圧による引っ張り力により行われる。
圧力センサ165は、作動気体161aの圧力を検知する検知手段としてのセンサである。
【0048】
停止指令装置166は、圧力センサ165からの信号を受信して、所定の圧力以下の圧力が検知されたときに、患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する旨の信号を出力する装置である。かかる装置であれば、その態様は限定されるものではないが、例えば、圧力センサ165からの入力情報を受け入れる入力ポート、演算式やデータ情報等が記憶されたROM、演算の作業領域としてのRAM、演算が行われる中央演算子、及び演算結果として患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する信号を出力する出力ポートを備える演算装置を挙げることができる。
【0049】
このような干渉検知装置150により、どのように患者用椅子10の昇降、傾倒起立が禁止されるかについて例により説明する。図8、図9に説明図を示した。
前提として、予め次のような設定をする。すなわち、ドクターユニット30の作業台31の少なくとも一部が、患者用椅子10の昇降、傾倒起立の可動の範囲に重なるときにおけるタンク161内の作動気体161aの圧力を閾値とする。この圧力以下の圧力が検出されたときに患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する。これにより、次のような場面で、適切に患者用椅子の昇降、傾倒起立を許容・禁止することができる。
【0050】
図7に示したドクターユニット30の姿勢では、患者用椅子10が昇降、傾倒起立してもドクターユニット30に衝突することはなく、この時の作動気体161a内の圧力は閾値より高い。図7に示した姿勢から図8(a)のように第一アーム40を矢印VIIIaで示した方向に回動させる。しかし、この回動によってはまだ、患者用椅子10が昇降、傾倒起立してもドクターユニット30に衝突することはない。このとき、第一回転子151の回動によりワイヤ154が引っ張られ、シリンダ162も合わせて引っ張られるので、シリンダ162がタンク161から退避する方向へ移動する(図8(a)の直線矢印参照)。これにより作動気体161aの圧力は減少し、これを圧力センサ165は検知しているが、閾値を超えていないため、停止指令装置166は患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止しない。
【0051】
一方、図7に示した姿勢から図8(b)のように第一アーム40を矢印VIIIbで示した方向に回動させる。この回動によれば、患者用椅子10の可能範囲内にドクターユニット30が侵入していることになるので、患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する必要がある。これに対し、第一回転子151の回動によりワイヤ154が引っ張られ、シリンダ162も合わせて引っ張られるので、シリンダ162がタンク161内から退避する方向へ大きく移動する(図8(b)の直線矢印参照)。これにより作動気体161aの圧力は減少し、これを圧力センサ165が検知する。この圧力は、閾値を超えているので、停止指令装置166は患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する。これにより患者用椅子10の昇降、傾倒起立が適切に禁止される。
【0052】
図7に示した姿勢から図9のように第一アーム40を矢印IXa、第二アーム45を矢印IXb、作業台31を矢印IXcで示した方向にそれぞれ回動させる。この回動によれば、それぞれの回動量は小さいが、最終的に患者用椅子10の可能範囲内にドクターユニット30が侵入していることになるので、患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する必要がある。これに対し、第一回転子151の回動によりワイヤ154が引っ張られ、合わせてシリンダ162も引っ張られる。また、第二回転子152の回動によりワイヤ155が引っ張られ、合わせてシリンダ163が引っ張られ、第三回転子153の回動によりワイヤ156が引っ張られ、合わせてシリンダ164が引っ張られる。これにより、各シリンダ162、163、164がタンク161から退避する方向に移動する(図9の直線矢印参照)。当該シリンダ162、163、164の移動により、作動気体161aの圧力はシリンダ162、163、164の退避(移動)量に応じた積算値として減少し、これを圧力センサ165が検知する。この圧力は、閾値を超えているので、停止指令装置166は患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する。これにより患者用椅子10の昇降、傾倒起立が適切に禁止される。
逆に作業台31を患者用椅子10の可動範囲から遠ざけるように移動すれば、ワイヤ154、155、156は巻き戻されて、シリンダ162、163、164は、作動流体161aの負圧力によりタンクに侵入する側に移動する。これにより、作動流体の圧力も高くなり、患者用椅子10の昇降、傾倒起立が許容される。
【0053】
以上のような干渉検知装置150によっても、1つの検知手段165により干渉の有無の検知を行うことが可能となり、構成が簡易であるとともに、信頼性も高い。また被検知手段である作動気体161aにおいてその変化は圧力の変化という物理量であり、かかる観点からも信頼性が高いと言える。
また、タンクユニット160を歯科ユニット101の内側に隠蔽して配置できるので、外観への影響も少なく、人の動き等の外乱も受け難いことから、さらに信頼性を向上させることも可能である。
【0054】
本実施形態では、タンクユニット160の各シリンダ162、163、164の太さを同じとしたが、アームや作業台の回動量がドクターユニット全体の移動量に与える影響の大小に合わせて各シリンダの太さを変えてもよい。または、アームや作業台の回動量がドクターユニット全体の移動量に与える影響の大小に合わせて、ワイヤ154、155、156の巻き取り比を調整してもよい。
【0055】
図10は、参考例にかかる歯科ユニット201のうち、干渉検知装置250を模式的に表わした図であり、図3に相当する図である。歯科ユニット201の干渉検知装置250以外の構成は、上記した歯科ユニット1と共通なのでここでは説明を省略する。
【0056】
干渉検知装置250は、発光受光装置251、反射部材252、253、及び停止指令装置254を備えている。
発光受光装置251は、検知手段として機能し、光を出射するとともに反射光を受光することができる装置であり、図10に一点鎖線で示したように、患者用椅子10の側面のうちドクターユニット30が備えられた側の側面に沿って光を出射している。
反射部材252、253は、該反射部材252、253の傾き角度によらず光を正反対の方向に反射することができる部材であり、いわゆる楕円反射板である。反射部材252、253は平面視略矩形である作業台31の4隅のうち、患者用椅子10に近い側の2つの隅のそれぞれに設置されている。
停止指令装置254は、発光受光装置251からの信号を受信して、患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する旨の信号を出力する装置である。かかる装置であれば、その態様は限定されるものではないが、例えば、発光受光装置251からの入力情報を受け入れる入力ポート、演算式やデータ情報等が記憶されたROM、演算の作業領域としてのRAM、演算が行われる中央演算子、及び演算結果として患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する信号を出力する出力ポートを備える演算装置を挙げることができる。
【0057】
干渉検知装置250では、ドクターユニット30の作業台31が、患者用椅子10に近づくと、図10に一点鎖線で示した発光受光装置251が出射する光が、反射部材252、253に当たり、反射する。発光受光装置251は、この反射光を受光して、その旨の信号を停止指令装置254に送信し、信号を受けた停止指令装置254は、患者用椅子10にその昇降、傾倒起立を禁止する指令を出す。これにより患者用椅子10の昇降、傾倒起立が適切に禁止される。
【0058】
このような干渉検知装置250を有する歯科ユニット201によっても、1つの検知手段により干渉の有無の検知を行うことが可能となり、構成が簡易であるとともに、信頼性も高い歯科ユニットを提供することができる。
【0059】
図11は、他の参考例に係る歯科ユニット301のうち、干渉検知装置350を模式的に示した図であり、図3に対応する図である。歯科ユニット301の干渉検知装置350以外の構成は、上記した歯科ユニット1と共通なのでここでは説明を省略する。
【0060】
干渉検知装置350は、光電センサ351、及び停止指令装置352を備えている。
光電センサ351は、検出手段として機能し、光を出射するとともに反射光を受光することができる装置である。光電センサ351は患者用椅子10の側面のうち、背もたれ12のドクターユニット30が備えられた側の側面に取り付けられている。そして、上下に向かって光を出射し、反射光を受光することができるように構成されている。
停止指令装置352は、光電センサ351からの信号を受信して、患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する旨の信号を出力する装置である。かかる装置であれば、その態様は限定されるものではないが、例えば、光電センサ351からの入力情報を受け入れる入力ポート、演算式やデータ情報等が記憶されたROM、演算の作業領域としてのRAM、演算が行われる中央演算子、及び演算結果として患者用椅子10の昇降、傾倒起立を禁止する信号を出力する出力ポートを備える演算装置を挙げることができる。
【0061】
干渉検知装置350では、ドクターユニット30の作業台31が、患者用椅子10の上方、又は下方に入ったときには、光電センサ351が出射する光が、作業台31に反射する。光電センサ351は、この反射光を受光して、その旨の信号を停止指令装置352に送信し、信号を受けた停止指令装置352は、患者用椅子10にその昇降、傾倒起立を禁止する指令を出す。これにより患者用椅子10の昇降、傾倒起立が適切に禁止される。
【0062】
このような干渉位置検出手段350を有する歯科ユニット301によっても、1つの検知手段により干渉の有無の検知を行うことが可能となり、構成が簡易であるとともに、信頼性も高い歯科ユニットを提供することができる。
【0063】
以上、現時点において実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う歯科ユニットもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0064】
1 歯科ユニット
2 歯科用照明
3 アーム
4 アシスタントユニット
5 アシスタントハンガー
5a ハンガー部
5b ハンガー支柱
6 スピットン
7 給水装置
10 患者用椅子
11 着座部
13 ヘッドレスト
14 レッグレスト
15 フットレスト
20 基台
21 フットスイッチ
30 ドクターユニット
31 作業台
31a 作業面
32 ハンドピース群
33 操作パネル
40 第一アーム
45 第二アーム
50 干渉検知装置
51 第一回転子
52 第二回転子
53 伝達ベルト
55 停止位置決め部材(被検知手段)
56 検知手段
57 停止指令装置
101 歯科ユニット
150 干渉検知装置
151 第一回転子
152 第二回転子
153 第三回転子
154、155、156 ワイヤ
160 タンクユニット
161 タンク
161a 作動気体(被検知手段)
162、163、164 シリンダ
165 圧力センサ(検知手段)
166 停止指令装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台の上方に昇降動可能に設けられた着座部、前記着座部に対して回動して傾倒起立可能である背もたれ、及び該背もたれの端部に設けられるヘッドレストを備える患者用椅子と、
前記基台及び前記患者用椅子に近接して配置され、前記基台側に配置された一端側を軸に回動可能に設けられた第一アーム、前記第一アームの他端側に一端側を軸として回動可能に配置された第二アーム、及び前記第二アームの他端側を軸に回動可能に具備され、治療に用いられる器具が配置された作業台を有するドクターユニットと、
前記患者用椅子の昇降及び傾倒起立の可動範囲内に前記ドクターユニットの少なくとも一部が侵入する可能性があるときに、前記患者用椅子の昇降及び傾倒起立を禁止する干渉検知装置と、を備え、
前記干渉検知装置は、前記第一アームの回動量と前記第二アームの回動量とを積算値として物理量を変化させる1つの被検知手段と、該被検知手段の前記物理量を検知する1つの検知手段と、前記検知手段に接続されて該検知手段からの情報に基づいて前記患者用椅子の昇降及び傾倒起立を禁止可能に設けられる停止指令手段と、を具備する歯科ユニット。
【請求項2】
前記干渉検知装置は、
前記ドクターユニットの前記第一アームの回動軸と同軸に回動自在に設けられた第一回転子と、
前記第二アームに連動して回動する第二回転子と、
前記第一回転子及び前記第二回転子に掛け渡され、前記被検知手段が具備された伝達ベルトと、を備え、
前記被検知手段は、前記第一アーム、及び前記第二アームの回動による前記伝達ベルトの回動に追随してその位置を変更可能であり、
前記検知手段は、前記被検知手段が所定の位置に達したときに前記検知手段が前記被検知手段を検知する位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の歯科ユニット。
【請求項3】
前記干渉検知装置は、
前記ドクターユニットの前記第一アームに連動して回動する第一回転子と、
前記第二アームに連動して回動する第二回転子と、
前記第一回転子及び前記第二回転子のそれぞれに設けられたワイヤと、を備え、
前記被検知手段は箱体の内側に充填された作動流体であるとともに、前記検知手段が圧力センサであり、
前記第一回転子の回動、及び前記第二回転子の回動に基づいて前記ワイヤが前記作動流体の圧力を変更することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の歯科ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−72418(P2011−72418A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225221(P2009−225221)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】