説明

歯科治療装置

本発明は、互いに至近に配置される歯科治療ユニット4及び患者用椅子5を備え、少なくとも歯科治療器具9用の処置アーム7、及び/又は表示画面3等の歯科環境で用いられる他の何らかの機器又はデバイスを保持するアームが構造的に接続される、歯科治療装置であって、該歯科治療装置はさらに、前記歯科治療ユニット4の至近に配置される少なくとも1つのアーム部11を備え、該アーム部に、撮像手段であるX線源14及び画像情報受信機15の少なくとも一方が配置され、該歯科治療装置2において、前記アーム部11及び前記患者用椅子5の相互位置は、前記アーム部11が前記患者用椅子5の実質的に上方に位置付けられるか又は位置決め可能であるようになっており、該歯科治療装置において、前記撮像手段14、15の少なくとも一方を担持する前記アーム部11及び/又は前記患者用椅子は、アクチュエータによって回転可能に配置される、歯科医療装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の歯科治療装置であって、互いに至近に配置される歯科治療ユニット及び患者用椅子を備え、歯科治療器具用の処置アーム及び/又は歯科環境で用いられる表示画面等の他の何らかの機器やデバイス用のアームが構造的に接続される歯科治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科治療装置は、特に異なる歯科医文化ごとに異なる構造体として実現されてきた。歯科治療ユニット自体は、歯科処置に関連して用いられるデバイスであり、その本質的な従来の機能は、歯科医が用いる歯科治療器具に電気、圧縮空気、及び/又は水等の歯科医の業務に必要な物理量を供給することである。他方では、歯科処置は、血液、唾液、及び歯石を患者の口から吸引する手段の使用も伴う。
【0003】
多くの歯科医院は、歯科処置に関する診断に関連して用いられるように特別に設計されたX線デバイスも入手している。この範疇の典型的なデバイスは、撮像のために患者の口内にフィルム、センサー、又は同等物を位置決めすることによって画像を撮影するために用いられる、口腔内X線デバイスと、例えば、特に頭蓋領域の解剖学的構造の様々な層画像(断層写真)を撮影するために少なくとも高性能の方が用いられ得る、口腔外撮像用に設計されたパノラマ撮像デバイス及び複合パノラマ/頭蓋撮像デバイスとである。パノラマX線デバイスは、例えば、診察中の患者の一連の歯、顎骨及び顎関節、並びに口腔及び上顎洞の撮像に用いられる。また、今日では、3DX線撮像が歯科X線撮影とも関連して適用される。
【0004】
器具を手元に置いておくために、通常は、歯科治療ユニットに様々なホルダ及び/又はアームが設けられる。他方では、無影灯用及び今日では例えば表示画面用のアーム等、複数の種々のアームが歯科治療ユニットに接続される場合さえある。一部の構造体には、患者用椅子を上昇させる機構、及び場合によってはその制御システムも、歯科治療ユニットに関連して配置される。
【0005】
従来技術の慣例は、歯科治療ユニットの付近の歯科処置空間に口腔内X線デバイスを配設することを含むが、より大きな空間を必要とするはるかに大型の口腔外X線デバイスは、別個の撮像室又は空間に通常は配設され、これは実際の歯科処置空間から遠く離れて位置付けられる場合さえある。医院がX線デバイスを全く所有していない可能性さえある。円滑な歯科治療プロセスを考慮すると、患者が撮影のために立ち寄る必要があるために、処置作業又はプロセスが中断されるとすると、当然厄介である。さらに、空間要件に加えて、口腔外X線デバイスは、それ自体が常に、ユーザーインタフェース、資源及び情報の伝送用の接続部、並びに必要であり得る他の付属品も固有に必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明及びその好適な実施の形態の目的は、上述の従来技術の問題を考慮して、通常の歯科作業及び歯科用口腔外X線撮像の両方に用いることができる歯科治療装置の形態で、新規解決手段を提供することである。本発明の種々の実施の形態の目的は、患者が歯科処置セッション中に患者用椅子を離れる必要なく患者の歯科用口腔外X線画像を撮影することを可能にする装置を提供することである。他方では、本発明の実施の形態のいくつかは、歯科処置空間内に配設される少なくとも2つの歯科治療ユニットに関連して同じX線撮像資源が利用されるようになっている、歯科処置空間構成を提供することを目指している。本発明は、以下に示す請求項1の特徴部分に開示されているものを特徴とする。添付の従属請求項には、本発明のいくつかの好適な実施の形態が記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その種々の実施の形態と共に、歯科医院における空間を節約する可能性を提供する。本発明の様々な実施の形態は、通常の歯科処置セッションに関連して柔軟な方法で多くの種類のX線画像を撮影することも可能にして、X線撮像のための予約を別に入れる必要をなくす。さらに、本発明の様々な実施の形態は、同じ資源が歯科治療ユニット及びX線撮像装置で利用されることを可能にする。本発明の好適な実施の形態では、撮像手段を支持する構造は、撮像ステーションの高さ位置を調整する手段を構造体から省くことによって、多くの従来技術の口腔外X線撮像デバイスよりも軽量で単純な形態で実施することができるが、この調整は、装置に備わっている患者用椅子の高さ調整構造を用いて行うことができる。
【0008】
以下で、添付図も参照することによって、本発明のいくつかの実施形態をより詳細に説明する。図は、本発明の種々の実施形態を簡略化した形態で示しており、寸法入り図面とはみなされないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】撮像手段を支持するアームが歯科治療ユニットに設けられている垂直アームに関連して配置される、本発明による装置の第1の構造体の側面図を示す。
【図2】図1による構造体の上面図を示す。
【図3】撮像手段を支持するアームが歯科治療ユニットから離れて配設されている垂直アームに関連して配置される、本発明による装置の第2の構造体の側面図を示す。
【図4】図3による装置の構造体の原理を上面図で示す。
【図5】本発明による装置がいずれも歯科治療ユニット及び患者用椅子から成る2つの組立体と撮像手段を支持する1つのアームシステムとを備え、これらの構造が実質的に互いに連携して配設される、本発明による歯科治療空間の解決手段の側面図を示す。
【図6】上から見た図5による解決手段を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、横及び上から見た本発明による1つの歯科治療装置2の基本構造を示す。図1及び図2の歯科治療装置2は、歯科治療業務に関連して用いられるように設計された歯科治療ユニット4と、歯科治療ユニット4から実質的に水平方向に延びるアーム部6によって支持されるように配置される患者用椅子5とを備える。歯科治療ユニット4から実質的に垂直方向に延びる支持柱1が、水平方向に延びるアーム部12によって、撮像手段(X線源14及び画像情報受信機15)を担持するように設計された実質的に水平方向に延びるアーム部11を支持するように配置されている。さらに、撮像業務のために患者を実質的に静止させて位置決めするための患者支持手段10、並びに表示画面3及び処置アーム7が、支持柱1に接続され、処置アーム7は、そこに配置される器具台8及び器具9を支持する。実質的に垂直方向に延びる支持柱1は、例えばライト用のアーム等の他のアーム及び付属品を支持するように配置されることもできる。
【0011】
撮像手段14、15を担持するアーム部11の据え付けは、アーム部11の移動を可能にするようになっている。好ましくは、アーム部11は、図示されていない少なくとも1つのアクチュエータによって実質的に垂直な軸13に関して少なくとも回動可能であるように配置される。この垂直軸13は、これに関連して示す図において、撮像手段14と15との間の領域に位置付けられるように配置されているが、他の場所にも位置付けることができる。アーム部11の回転を可能にするこの構造体は、物理的な軸であり得るが、対応する移動を可能にする他の何らかの構造体であってもよい。回動可能であるように配置されるのに加えて、撮像手段14、15を担持するアーム部11は、好ましくは1つ又は複数のアクチュエータによって、上記垂直軸13の場所を水平面内で変えることができるように可動に配置されることも好ましい。他方では、上記アーム部11の直線移動の自由のみを提供することも可能である。撮像手段14、15を担持するアーム部11を支持する実質的に水平方向に延びるアーム部12の支持柱1への据え付けは、回動可能になっていることができる。アーム部12は、互いに対して回動可能な2つ以上のアーム部から成るように構成することもできる。X線画像の撮影のために、撮像手段14、15を担持するアーム部11は、患者用椅子5の上方の適当な点に、実質的には患者が座位にあるときの患者の頭部の点に位置決めされるように又は位置決め可能であるように配置される。それに応じて、患者支持手段10は、実質的に座位にある患者の頭部の点に位置決め可能であるように配置される。
【0012】
図1によって示される実施形態では、患者用椅子5は、患者用椅子5が歯科治療ユニット4から延びるアーム部6によって支持されるように種々の高さに調整可能であるように配置されているが、患者用椅子5を昇降させる手段は、歯科治療ユニット4に配置されている。しかしながら、患者用椅子5は、異なる構造体によって昇降させられるように配置されることもでき、歯科治療ユニット4とは物理的に完全に別個かつ/又は少なくとも外から見える部分に関して歯科治療ユニット4とは別個である構造として実施されて、完全に固有の昇降デバイス構造体が設けられることさえできる。この場合、患者用椅子5の支持及びその高さ位置の変更は、例えばレバーアームタイプの構造体によって床から直接実施することができる。
【0013】
処置アーム7は、2つ以上のアームセクションを有して1つ又は複数のジョイントが設けられているアームであり得る。通常、処置アーム7は、種々の方向に容易に可動であるように配置される一方で、器具台8をその設定位置で安定させて保持するように配置される。器具9の操作に必要な物理量は、歯科治療ユニット4から受け取られ、歯科治療ユニット4は、器具9の制御と、処置アーム7内に配置されているホース、ケーブル、又は同等物を介した器具9への電気及び圧縮空気等の動作パワーの供給とを担うようになっている。
【0014】
本発明の好適な一実施形態によれば、撮像手段14、15及びそれらを移動させる手段並びに関連の接続部が必要とする資源は、歯科治療ユニット4及び/又は患者用椅子5の対応する手段によって少なくとも部分的に共有されるようにするためにも、歯科治療ユニット4に関連して配設され得る。装置2に備わっている表示画面3は、ユーザーインタフェースとしても機能するように構成され得ると共に、歯科治療ユニット4及び患者用椅子5の機能の制御に加えて、X線源14及び撮像センサー15の動作及び/又はそれらを移動させる1つ又は複数のアクチュエータの動作を制御するように構成され得る。他方では、表示画面3は、歯科処置、患者、及び歯科用器具に関するデータを表示する手段として機能し得るが、例えば装置の撮像手段によって撮影された画像を表示する手段としても機能し得る。
【0015】
図3及び図4は、本発明による第2の歯科治療装置2の基本構造体の側面図及び上面図を示す。明確にするために、装置2を上面図で示す図4は、図3に示す装置2の部分のいくつかを省くことによって若干簡略化させてある。
【0016】
図3による実施形態では、装置は、歯科治療ユニット4に関連して配置される実質的に垂直な支持柱1を備えるが、この場合、撮像手段14、15を担持するアーム部11は、この支持柱に接続されるように配置されるのではなく、歯科治療ユニット4から離れて配置されている垂直方向に延びる支持柱16に接続されるように配置される。図3及び図4による実施形態では、当該支持柱16は、患者用椅子5がこの支持柱16と歯科治療ユニット4との間に位置決めされるように配設される。支持柱16と、撮像手段14、15を担持するアーム部11、12と、患者支持10とは、患者用椅子5のヘッドレスト端における歯科医の通常の処置作業を妨げることがないように患者用椅子5に対して配設される。図3及び図4による実施形態では、支持柱16及び歯科治療ユニット4は、共通の下部構造上に置かれ、この構成は、撮像手段14、15及び歯科治療ユニット4への共有資源の提供を容易にし得る。しかしながら、原理上、歯科治療ユニット4及び支持柱16は、独立した支持及び接続構造を用いて実施することもできる。さらに、構造体が本発明に従って患者用椅子5に対する撮像手段14、15の位置決めを可能にすることが重要な点であるため、支持柱16が必ずしも床上に据え付けられる必要はない。
【0017】
図3による解決手段では、患者用椅子5の上方に位置決めされるように設計された患者支持手段10は、撮像手段14、15と共に同じ支持柱16に配置されるが、例えば、歯科治療ユニット4から垂直方向に延びる支持柱1に、又は他の何らかの適当な構造に、例えば患者用椅子自体に取り付けられるように配置することもできる。
【0018】
図3による実施形態では、ユーザーインタフェース18が支持柱16に配置されている。このユーザーインタフェースは、撮像手段14、15の制御及び撮像手段14、15を担持するアーム部11又は複数のアーム部の1つ又は複数のアクチュエータの制御に用いられるように構成され得るが、付加的又は代替的に、歯科治療業務に用いられる歯科用器具9の制御及び/又は患者用椅子5の制御に用いられるように構成され得る。ユーザーインタフェース18は、撮像手段14、15を担持するアーム部11又は複数のアーム部の1つ又は複数のアクチュエータ、線源14、画像情報受信機15、の少なくとも1つと信号を伝送し合うように構成され得る。
【0019】
より一般的には、本発明の装置2には、種々の目的ごとに別個のユーザーインタフェース18が設けられる必要は必ずしもなく、装置の制御は、単一のユーザーインタフェース18から行われるようになっていてもよい。そのようなユーザーインタフェース18は、図5及び図6に示すように、例えば歯科治療ユニット4の器具台8に関連して配置され得る。
【0020】
図5及び図6は、装置2がこの場合、歯科治療ユニット4及び患者用椅子5を備える2つの組立体と、互いに機能的に関連して配置される撮像手段14、15を担持する上述のような1つのアームシステム11、12及び患者支持手段10とを有することを除いて、上述のものと同じ基本解決手段を備える本発明の一実施形態を示す。本発明のこの実施形態では、撮像手段14、15を支持するアームシステム11、12の支持柱16は、歯科治療ユニット4及び患者用椅子5から成る上記組立体間に設けられる壁又はパネル17の一部を形成するように配置される。全体として、撮像手段14、15を担持するアームシステム11、12は、撮像手段14、15を担持するアーム部11及び患者支持10の両方が各患者用椅子5の実質的に上方に位置決め可能であるように配置されるように実施される。図5及び図6による解決手段では、各患者用椅子5は、歯科治療ユニット4から延びる支持アーム6によって支持される。そのような解決手段では、患者用椅子5の高さ位置を調整する手段は、上述のように歯科治療ユニット4に設けられ得る。
【0021】
明確にするために、図6に示す構造のいくつかは図5に示されておらず、またその逆もある。したがって、例えば、図5は、支持柱16に配置されているユーザーインタフェース18を示しているが、図6は、歯科治療ユニット4の器具台8と共に配置されているユーザーインタフェース18のみを示している。上述のように、一般的には、本発明による装置2は、ユーザーインタフェースを1つだけ備えるものとして実現され得る。すなわち、例えば歯科治療ユニット4及び撮像手段14、15用(また、撮像手段14、15を支持する1つ又は複数のアーム部を移動させるアクチュエータ用)に別個のユーザーインタフェース18を配置する必要は必ずしもない。
【0022】
装置は、歯科治療ユニット4及び患者用椅子5から成る3つ以上の、例えば4つの組立体を備えることもでき、その場合、可動に配置されている撮像手段14、15を担持するアーム部11は、各患者用椅子5の上方に位置決め可能であるように配置される。図5及び図6を考慮すると、支持柱16に取り付けられている患者支持10と撮像手段14、15を担持するアームシステム11、12とは、この場合、患者用椅子5の上で座位にある患者のX線画像を撮影することを可能にするように、例えばヘッドレスト端を互いに対向させて2列で配置される4つの患者用椅子5のそれぞれ1つの上方の位置に回動可能となる。
【0023】
したがって、より一般的には、本発明のこのタイプの実施形態は、互いに実質的に近接して配置される歯科治療ユニット4及び患者用椅子5から成る少なくとも2つの組立体と、1つの支持柱16とを備え、支持柱16には、アクチュエータによって移動させられるように配置される少なくとも1つの実質的に水平方向に延びるアーム部11が接続され、このアーム部11には、X線源14及び画像情報受信機15が互いに離れて配置され、上記アーム部11は、少なくともこれら2つの患者用椅子5の実質的に上方に位置決め可能であるように配置される。
【0024】
一般的に、本発明の様々な実施形態は、互いに至近に配置される歯科治療ユニット4及び患者用椅子5を備える歯科治療装置2であり、この装置2には、歯科治療器具9用の処置アーム7、表示画面3等の歯科環境で用いられる他の何らかの機器又はデバイスを保持するアーム、の少なくとも一方が構造的に接続され、この歯科治療装置2は、歯科治療ユニット4の少なくとも物理的に至近に配置されてアクチュエータによって移動させられるように配置される少なくとも1つのアーム部11を備え、このアーム部11には、X線源14及び画像情報受信機15が互いに離れて配置され、この装置2では、撮像手段14、15を担持するように配置される上記アーム部11と患者用椅子5とは、アーム部11が上記患者用椅子5の実質的に上方にあるか又は位置決め可能であるように互いに対して配設される。
【0025】
本発明のいくつかの好適な実施形態では、歯科治療装置2に、歯科治療ユニット4及び/又は患者用椅子5と、可動であるように配置されるアーム部11のアクチュエータ、線源14、画像情報受信機15、の少なくとも1つとの両方に、制御コマンドを送信するように構成されるユーザーインタフェース18が設けられる。装置2は、一方では撮像手段14、15を担持するアーム部11の1つ又は複数のアクチュエータ、放射線源14、及び画像情報受信機15を制御し、他方では少なくとも歯科治療ユニット4を制御する制御ルーチン及び制御手段18を備える制御システムをさらに備える場合があり、上記制御システムは、部分的に又は完全に歯科治療ユニット4の制御システムの一部として配置される。
【0026】
本発明の様々な実施形態は、例えば、回転可能であるように配置されるアーム部11のアクチュエータ、放射線源14、画像情報受信機15、の少なくとも1つと電力及び/又は情報を伝送し合う手段の少なくともいくつかを、歯科治療ユニット4の対応する手段と機能的に関連して統合又は配置させる。
【0027】
上記放射線源14及び画像情報受信機15と、可動でありそれらを担持するように配置されるアーム部11とは、該アーム部11が座位にある患者の頭蓋の実質的に上方に位置して、上記放射線源14及び画像情報受信機15が頭蓋の実質的に両側にあるように位置するように又は位置決め可能であるように配置されているため、患者が撮像のために患者用椅子5から離れる必要なく患者にX線照射を行うことができる。患者用椅子5のヘッドレストは、患者の頭部の異なる側にある撮像手段14、15の可能な回転運動又は他の運動を妨げることがないように実施され得る。患者は、照射中に患者用椅子5の背もたれを座位に上昇させることなく座位で撮像を受けることもできる。
【0028】
装置2には、可動に配置されたアーム部11(撮像手段14、15を担持する)の高さ位置を調整する手段が設けられ得る。高さ調整は、例えば支持柱1、16にその長さを変える手段を設けることによって実施することができ、この手段を用いて、撮像アームシステム11、12全体の高さ位置を各患者で個々に調整することができる。患者支持手段10は、この調整移動と共に移動するように配置され得る。しかしながら、装置の好適な実施形態では、撮像手段を支持する柱1、16及びアームシステム11、12は、そのようなエレベーター構造体を完全に省くことによって比較的軽量に実施され、個々の患者の高さ位置の調整は、装置2に設けられた、患者用椅子5の高さ位置を調整する手段を用いて実現される。
【0029】
支持柱1、16に配置される上記表示画面3は、少なくとも、一方では上記歯科治療ユニット4に、他方では画像構成を受信するための前記の手段14に機能的に関連するように配置され得る。装置に2つ以上の表示画面3を設けることもできる。
【0030】
装置2は、例えば制御システムを設けることによってX線撮像を可能にするように構成することができ、この制御システムは、撮像手段14、15を備える1つの可動に据え付けられたアーム部11が座位にある患者の頭蓋の実質的に上方に位置決めされるように位置決めされており、かつ上記アーム部11が実質的に垂直な軸を中心として回転可能であると共に実質的に水平な面内での上記垂直回転軸の位置を変えることができるようにこの水平面内で可動でもあるように配置されている場合、制御システムの制御下で、患者支持手段10に位置決めされている患者の頭蓋に対して撮像手段14、15の所与の移動を行わせること、及び上記移動の実行中に放射線源14によってX線放射を生成させることの両方が可能であり、撮像方法に応じて必要な場合は画像情報受信手段15を制御することも可能であるようなものである。この種の構成は、歯科用X線撮像に通常は関連するパノラマX線撮像等の幅広い撮像を可能にする。本発明の種々の実施形態では、撮像手段14、15を支持するアーム部11の動きは、例えばアーム部11の回動又は直線移動のみを許す単純な構造体を用いて、また他方で最も幅広いのは、可能となる動作範囲内でのアーム部11の自由な位置決め及び動きを可能にする構造体を用いて実施され得る。
【0031】
本発明の種々の実施形態では、装置2に、回転可能であるように配置されるアーム部11のアクチュエータ、放射線源14、画像情報受信機15、の少なくとも1つと電力及び/又は情報を伝送し合う手段が設けられ、これらの手段の少なくともいくつかが、歯科治療ユニット4及び/又は患者用椅子5の対応する手段と統合されるように配置されている。放射線源14、画像情報受信手段15、及びそれらを担持するアーム部11は、アーム部11が患者用椅子5に座っている患者の頭蓋の実質的に上方に位置して上記放射線源15及び画像情報受信手段16が頭蓋の実質的に両側にあるように位置決めされるように配置される。したがって、装置には、患者用椅子5の高さ位置を調整する上記手段等の、患者用椅子5の相対高さ位置及び/又は回転可能であるように配置される上記アーム部11の相対高さ位置を調整する手段6も設けられることが好ましい。
【0032】
撮像手段14、15の支持に関して、装置は、好ましくは実質的に垂直な支持柱又は対応する構造1、16を備え、撮像手段14、15を担持するアーム部11は、実質的に水平方向に延びる少なくとも1つの他のアーム部12を介してこの支持柱1、16に取り付けられる。このような支持柱1、16は、歯科治療ユニット4に、又は歯科治療ユニット4に実質的に近接して、例えば患者用椅子5のすぐ反対側に配設することができ、又は患者用椅子5に取り付けられるように配置することさえできる。患者支持手段10は、互いに離れて配置されている上記X線源14と画像情報受信機15との間で患者用椅子5の実質的に上方に位置決めされるように又は位置決め可能であるように配置される。
【0033】
さらに、撮像手段14、15を担持する少なくとも1つのアーム部11と、互いに離れてこのアーム部11に配置される放射線源14及び画像情報受信機15とは、このアーム部11が座位にある患者の頭蓋の実質的に上方に位置決めされるか又は位置決め可能であるように、装置に配置され得る。また、装置は、このアーム部11を実質的に垂直な軸13に対して回動させることができると共に実質的に水平な面内でのこの垂直回転軸13の位置が変わるようにこの水平面5内で移動させることができるように実施されること、及び装置2が制御下で上記アーム部11を回動及び/又は移動させることができると共に該移動と同時に放射線源14からX線を生成させることができるような制御システムを備えるように実施されることが好ましい。
【0034】
本発明の好適な一実施形態は、患者用椅子5が垂直軸を中心として回転可能に配置されている構造体を含む。この場合、図1の構造体を考慮すると、撮像手段14、15の両方を担持するアーム部11を装置に配置する必要はなく、撮像手段の第1のものが例えば歯科治療ユニット4から垂直方向に延びる支持アーム1又は他の何らかの適用可能な構造に取り付け配置されて、撮像手段14、15の第2のものだけがアーム部11に取り付け配置されてもよい。これにより、支持すべき質量が小さくなるため、撮像手段14、15の少なくとも他方を担持する装置のアーム構造体11、12を構造的により軽量かつ単純なものとして実現することが可能である。さらに、装置が例えば特に頭蓋CT撮像に用いられるように構成される場合、患者及び撮像手段の相互位置の必要な変更は、撮像手段14、15を動かさずに患者用椅子5を回動させることによって実現することができる。この場合、患者の頭蓋を中心として撮像手段を回動させるアクチュエータ又は他の手段を装置に配置する必要がない。
【0035】
本発明が上述の実施形態に限定されないことは、当業者には自明である。例えば、本発明の装置では、画像情報受信機として、特に従来のフィルム、歯科用パノラマ撮像に適用可能なナローデジタルセンサー、又はコーンビーム断層撮影法に適用可能なよりワイドなデジタルセンサーを用いることが可能であることがここで明らかとなろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに至近に配置される歯科治療ユニット(4)及び患者用椅子(5)を備え、歯科治療器具(9)用の処置アーム(7)、歯科環境で用いられる表示画面(3)等の他の何らかの機器又はデバイス用のアームの少なくとも一方が構造的に接続される歯科治療装置であって、
該歯科治療装置(2)は、前記歯科治療ユニット(4)の至近に配置される少なくとも1つのアーム部(11)を備え、該アーム部(11)に、撮像手段であるX線源(14)及び画像情報受信機(15)の少なくとも一方が配置され、該歯科治療装置(2)において、前記アーム部(11)及び前記患者用椅子(5)の相互位置は、前記アーム部(11)が前記患者用椅子(5)の実質的に上方に位置決めされるか又は位置決め可能であるようになっており、該歯科治療装置において、前記撮像手段(14、15)の少なくとも一方を担持する前記アーム部(11)及び/又は前記患者用椅子(5)は、アクチュエータによって回転可能に配置されることを特徴とする歯科医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯科治療装置であって、
前記撮像手段(14、15)の少なくとも一方を担持する前記アーム部(11)は、アクチュエータによって回転可能に、また患者の頭蓋の両側で互いに離れて、一方では前記X線源(14)を、他方では前記画像情報受信機(15)を担持するように配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項3】
請求項1に記載の歯科治療装置であって、
前記患者用椅子(5)は、アクチュエータによって回転可能に配置され、第1の前記撮像手段である前記X線源(14)及び前記画像情報受信機(15)は前記撮像手段(14、15)の少なくとも一方を担持する前記アーム部(11)に取り付け配置され、第2の前記X線源(14)及び前記画像情報受信機(15)は該歯科治療ユニット(4)から延びる支持アーム(1)、又は該歯科治療装置における前記第1の撮像手段(14、15)を担持する前記アーム部(11)以外の場所に取り付け配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
前記歯科治療装置(2)に、前記歯科治療ユニット(4)及び/又は前記患者用椅子(5)と、可動であるように配置される前記アーム部(11)の前記アクチュエータ、前記X線源(14)、前記画像情報受信機(15)、の少なくとも1つとの両方に制御コマンドを送信するように構成されるユーザーインタフェース(18)が設けられることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
前記歯科治療装置は、一方では回転可能であるように配置される前記アーム部(11)のアクチュエータ又は前記患者用椅子(5)のアクチュエータ、前記X線源(14)、及び前記画像情報受信機(15)を制御し、他方では少なくとも前記歯科治療ユニット(4)を制御する制御ルーチン及び制御手段(18)を備える制御システムを備え、該制御システムは、前記歯科治療ユニット(4)の制御システムの一部を形成するように少なくとも部分的に配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
前記歯科治療装置は、回転可能であるように配置される前記アーム部(11)の前記アクチュエータ、前記X線源(14)、前記画像情報受信機(15)、の少なくとも1つと電力及び/又は情報を伝送し合う手段を備え、該手段の少なくともいくつかは、前記歯科治療ユニット(4)及び/又は前記患者用椅子(5)の対応する手段と統合及び/又は機能的に接続されるように配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
前記X線源(14)及び前記画像情報受信機(15)と、それらの少なくとも一方を担持する前記アーム部(11)とは、該アーム部(11)が前記患者用椅子(5)で座位にある患者の頭蓋の実質的に上方に位置して、前記X線源(15)及び画像情報受信機(16)が頭蓋の実質的に両側にあるように位置決めされるように配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
前記患者用椅子(5)の高さ位置を調整する手段等の、該患者用椅子(5)及び/又は回転可能であるように配置される前記アーム部(11)の相対高さ位置を調整する手段(6)が設けられることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項9】
請求項8に記載の歯科治療装置であって、
前記患者用御椅子(5)の高さ位置を調整する手段は、前記歯科治療ユニット(4)に関連して配置されることを特徴とする、請求項8に記載の歯科治療装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
前記撮像手段の少なくとも一方を担持するように配置される前記アーム部(11)を支持する実質的に垂直な支持柱又は対応する構造(1、16)が、前記歯科治療装置に配置され、前記アーム部(11)は、実質的に水平方向に延びる少なくとも1つの他のアーム部(12)を介して前記支持柱(1、16)に取り付けられることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項11】
請求項1から11のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
実質的に垂直な支持柱又は対応する構造(1)が、前記歯科治療ユニット(4)に配置され、前記歯科用器具(9)のために配置される前記処置アーム(7)及び前記撮像手段(14、15)の少なくとも一方を担持する前記アーム部(11)はいずれも、直接又は他の構造を介して前記支持構造(1)に取り付けられることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の歯科治療装置であって、
前記実質的に垂直な支持柱又は対応する構造(1、16)は、例えば、前記歯科治療ユニット(4)に関して前記患者用椅子(5)の反対側に、又は該患者用椅子(5)上に、前記歯科治療ユニット(4)に実質的に近接して配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
互いに離れて配置される前記X線源(14)と前記画像情報受信機(15)との間で前記患者用椅子(5)の実質的に上方に位置決めされるように又は位置決め可能であるように配置される患者支持手段(10)が配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項14】
請求項1に記載の歯科治療装置であって、
前記X線源(14)及び前記画像情報受信機(15)は、該撮像手段(14、15)の少なくとも一方を担持する前記アーム部(11)に配置され、該アーム部(11)は、座位にある患者の頭蓋の実質的に上方に位置するか又は位置決め可能であるように、また実質的に垂直な軸に対して回動させることができると共に実質的に水平な面内での前記アーム部(11)の前記垂直回転軸(13)の位置が変わるように前記水平面内で移動させることもできるように、前記歯科治療装置に配置され、該歯科治療装置(2)は、制御下で前記アーム部(11)を回動及び/又は移動させることができると共に該移動と同時に前記X線源(14)からX線を生成させることができるような制御システムを備えることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の歯科治療装置であって、
前記歯科治療装置は、互いに実質的に近接して配置される歯科治療ユニット(4)及び患者用椅子(5)から成る少なくとも2つの組立体と、支持柱(1、16)又は同等物と、関連して設けられるアクチュエータによって移動させられるように配置される少なくとも1つの実質的に水平方向に延びるアーム部(11)とを含み、該アーム部(11)に、前記撮像手段である前記X線源(14)及び前記画像情報受信機(15)の少なくとも一方が配置され、前記歯科治療装置(2)に、前記アーム部(11)が少なくとも2つの前記患者用椅子(5)の両方の実質的に上方に位置決め可能であるように配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項16】
請求項15に記載の歯科治療装置であって、
前記患者用椅子(5)のそれぞれの高さ位置を調整する手段が配置されることを特徴とする歯科治療装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載の歯科治療装置であって、
患者用椅子(5)及び歯科治療ユニット(4)から成る4つの組立体があり、可動であるように配置される前記アーム部(11)は、前記患者用椅子(5)それぞれの上方に位置決め可能であるように配置されることを特徴とする歯科治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−525822(P2011−525822A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515503(P2011−515503)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050568
【国際公開番号】WO2009/156591
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(591036309)
【Fターム(参考)】