説明

歯科用治療椅子

【課題】フットレストを前後方向に調整可能にすることで、背の高い(足の長い)患者でも足先をフットレストの上に置くことができるようにして、患者の疲労感を軽減する。
【解決手段】歯科用治療椅子10は、フットレスト移動用のスイッチ(リモコン17)を備え、リモコン17のスイッチ操作により、フットレスト15を前後方向に調整可能にした。或いは、安頭台11の引き出し長さを検知し、その引き出し長さに応じて、フットレスト15の引き出し長さを調整可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用治療椅子、より詳細には、安頭台と、バックレストと、コンターシートと、レッグレストと、フットレストを有し、前記バックレスト、前記コンターシート、前記レッグレスト、前記フットレストを床面に対して平行な倒状態とし、患者を寝状態にして歯科治療を行う歯科用治療椅子において、歯科用治療椅子を倒状態にした時、フットレストを前後方向に調整可能にすることで、患者を寝状態にして治療をする際に、背の高い(足の長い)患者でも、フット(足先)がフットレストからはみ出すことなくフットレストの上に置くことができるようにした歯科用治療椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、本発明が適用される歯科用治療椅子の一例を説明するための要部概略構成図で、図中、10は歯科用治療椅子、11は安頭台、12はバックレスト、13はコンターシート、14はレッグレスト、15はフットレスト(フットステップ)、16は基台で、周知のように、常時は、歯科用治療椅子10は、起状態にあり、この状態で患者は、フットレスト15の上に乗って、その後、コンターシート13に腰掛ける。
【0003】
図7は、歯科用治療椅子10の側面概略図である。図7(A)は、起状態の歯科用治療椅子10のコンターシート13に患者が腰掛けた状態を示し、図7(B)は、倒状態の歯科用治療椅子10において患者が寝状態にあることを示す。
【0004】
歯科治療に当たり、図7(A)に示すように、患者が歯科用治療椅子10に座ると、アシスタント、術者(ドクター)は、安頭台11を引き出し或いは縮めて、安頭台11の位置を患者の頭の位置に合わせる。
【0005】
そして、術者は、歯科用治療椅子10を上下動させて歯科治療を行ったり、或いは、図7(B)に示すように、治療椅子10を倒状態にして患者を寝状態にして歯科治療を行う。なお、治療椅子10を倒状態にすると、バックレスト12が矢印A方向に動くと共に、レッグレスト14が矢印B方向に動き、更に、フットレスト15が矢印C方向に動き、バックレスト12、コンターシート13、レッグレスト14、フットレスト15が床面に対して平行な倒状態となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、起状態の治療椅子10に背の高い患者が腰掛けた状態(図7(A)参照)から、治療椅子10を倒状態にすると(図7(B)参照)、背の高い患者は一般に足が長いので、図7(B)の符号Dに示すように、患者の足先がフットレスト15からはみ出してしまう。このように、患者の足先がフットレスト15によってサポート(保持)されないと、患者の疲労感が増す。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、安頭台と、バックレストと、コンターシートと、レッグレストと、フットレストを有し、前記バックレスト、前記コンターシート、前記レッグレスト、前記フットレストを床面に対して平行な倒状態とし、患者を寝状態にして歯科治療を行う歯科用治療椅子において、歯科用治療椅子を倒状態にした時、フットレストを前後方向に調整可能にすることで、背の高い(足の長い)患者でも足先をフットレストの上に置くことができるようにして、患者の疲労感を軽減することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、バックレストと、コンターシートと、レッグレストと、フットレストを有し、前記バックレスト、前記コンターシート、前記レッグレスト、前記フットレストを床面に対して平行な倒状態とし、患者を寝状態にして歯科治療を行う歯科用治療椅子において、前記フットレストを前後方向に移動するフットレスト移動手段と、フットレスト移動用のスイッチとを備え、前記歯科用治療椅子を倒状態にした時、前記スイッチの操作により、前記フットレストを前後方向に調整可能にしたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、バックレストと、該バックレストに設けられた安頭台と、前記バックレストに対する前記安頭台の引き出し長さを調整する安頭台引き出し長さ調整手段と、コンターシートと、レッグレストと、フットレストを有し、前記バックレスト、前記コンターシート、前記レッグレスト、前記フットレストを床面に対して平行な倒状態とし、患者を寝状態にして歯科治療を行う歯科用治療椅子において、前記安頭台の引き出し長さを検知する安頭台引き出し長さ検知手段と、前記フットレストを前後方向に移動するフットレスト移動手段とを備え、前記歯科用治療椅子を倒状態にした時、前記安頭台引き出し長さ検知手段が検知した前記安頭台の引き出し長さに応じて、前記フットレストの引き出し長さを調整可能にしたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記フットレスト移動手段は、前記フットレストと一体のフットレスト基板と、該フットレスト基板を前後方向に摺動可能に支持するレールと、前記フットレスト基板を前記レールに沿って前後に移動するシリンダを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、歯科用治療椅子を倒状態にした時、背の高い患者でも足先がフットレストからはみ出すことなく、フットレストの上に置くことができる(患者の足先がサポートされる)ので、患者の疲労感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による歯科用治療椅子の動作例を説明するための要部概略構成図である。
【図2】フットレスト移動手段を説明するための概略構成図である。
【図3】フットレスト基板の移動制御を説明するための機能ブロック図である。
【図4】歯科用治療椅子の操作スイッチの例を示す図である。
【図5】安頭台引き出し長さ調整手段を説明するための概略構成図である。
【図6】本発明が適用される歯科用治療椅子の一例を説明するための要部概略構成図である。
【図7】従来の歯科用治療椅子の側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明による歯科用治療椅子の動作例を説明するための要部概略構成図で、本発明の歯科用治療椅子10は、フットレスト移動用のスイッチを備える。前記スイッチは、前方移動用スイッチ(ボタン式)、後方移動用スイッチから構成され、例えば、リモコン17に設けられている。治療椅子10を倒状態にした時、患者、術者、アシスタントにより、リモコン17の前方移動用スイッチが操作されると、フットレスト15を前方(矢印E方向)に移動(調整)し、リモコン17の後方移動用スイッチが操作されると、フットレスト15を後方(矢印E方向とは逆方向)に移動する。
【0014】
図1では、リモコン17にフットレスト移動用のスイッチが設けられている例を示しているが、治療椅子10に患者用肘掛けがある場合には、前記スイッチを前記患者用肘掛けに設けてもよい。また、前記スイッチを、図4に示す術者用に設けられた治療椅子10の操作スイッチパネルに設けてもよい。前記スイッチは、例えば、ボタン式でもよいし、スライド式でもよい。
【0015】
このようにすることで、歯科用治療椅子を倒状態にした時、背の高い患者でも足先がフットレストからはみ出すことなく、足先をフットレストの上に置くことができる。その結果、患者の疲労感を大幅に軽減できる。
【0016】
図2は、フットレスト15を前後方向に移動するフットレスト移動手段を説明するための概略構成図(全体構成は、図1と同じ)で、図中、20はレッグレスト14の最下端に設けられたレッグレスト基板、30はフットレスト15と一体のフットレスト基板である。起状態の歯科用治療椅子10においては、レッグレスト14は、図2(A)に示す状態であり、倒状態の治療椅子10においては、レッグレスト14は、図2(B)に示す状態である。
【0017】
レッグレスト基板20には、フットレスト基板30を摺動案内するレール21が設けられており、フットレスト基板30にはレール21と係合して該レールに沿って移動する摺動部31が設けられており、図2(A)に示す状態(フットレスト15が前方に移動していない状態)と、図2(B)に示す状態(フットレスト15が前方に最大移動している状態)との間で、移動可能となっている。
【0018】
レッグレスト基板20は、後方に延長する延長部(好ましくは、患者や術者から構造が見えにくいスピットン設置側に設けられる)22を有し、この延長部22上にシリンダ40のシリンダ部41の一端が回動可能に固定され、シリンダ40のピストン部42の一端がフットレスト基板30に回動可能に固定されている。
【0019】
従って、ピストン部42を矢印F方向に駆動(伸長駆動)することによって、フットレスト基板30をレッグレストの前方(矢印E方向)に移動することができる。また、ピストン部42を矢印F方向とは逆方向に駆動(収縮駆動)することによって、フットレスト基板30をレッグレストの後方(矢印E方向とは逆方向)に移動することができる。シリンダ40として、例えば、エアーシリンダ、電動シリンダを使用することができる。
【0020】
図3は、本発明による歯科用治療椅子において実行されるフットレスト基板30を前後方向に調整(移動)する制御を説明するための機能ブロック図で、図中、51は操作手段、52は制御手段である。なお、安頭台11、バックレスト12等の歯科用治療椅子10の構成部品については省略している。
【0021】
操作手段51は、図1に示したリモコン17や、歯科用治療椅子10のバックレスト12の起倒等を指示する図4に示すような術者用の操作スイッチパネルから構成される。図4のスイッチS,Sは、治療椅子10を起状態,倒状態にするものである。スイッチS,Sは、フットレスト基板30(フットレスト15)を前後方向に移動させるものである。スイッチS,Sは治療椅子10を上下動させるものであり、スイッチS,Sは治療椅子10を傾動させるものである。
【0022】
制御手段52は、操作手段51の制御を実行すると共に、歯科用治療椅子10を倒状態にした時、スイッチSが押されている時間に応じて、シリンダ40のピストン部42を伸長駆動(図2に示す矢印F方向にピストン部を伸長)して、フットレスト基板30を前方に移動する。また、歯科用治療椅子10を倒状態にした時、スイッチSが押されている時間に応じて、シリンダ40のピストン部42を収縮駆動(図2に示す矢印F方向とは逆方向にピストン部を収縮)して、フットレスト基板30を後方に移動する。
【0023】
本発明によると、歯科用治療椅子を倒状態にした時、フットレスト移動用のスイッチを操作することにより、フットレストが前後方向に移動するので、背の高い患者でも足先がフットレストからはみ出すことがなく、足先をフットレストの上に置くことができる。その結果、患者の疲労感を大幅に軽減できる。
【実施例2】
【0024】
実施例1で説明した歯科用治療椅子10は、倒状態の時、スイッチ操作により、フットレスト15を前後方向に調整可能にしたが、安頭台11の引き出し長さに応じて、フットレスト15の引き出し長さを調整可能(フットレスト15を前後方向に調整可能)にしてもよい。
【0025】
背の高い患者が治療椅子10に腰掛けると、術者やアシスタントが、標準身長の患者用にセットされている位置(通常状態位置)から安頭台11を引き出し、安頭台11の位置を患者の頭の位置に合わせる。また、背の高い患者は、足が長い。そこで、実施例2で説明する治療椅子10は、倒状態の時、安頭台11の引き出し長さに応じて、フットレスト基板30(フットレスト15)の引き出し長さ(前後方向の移動量)を制御する。
【0026】
図5は、バックレスト12に設けられた安頭台11の引き出し長さを調整する安頭台引き出し長さ調整手段を説明するための概略構成図である。安頭台11は、基台61に取り付けられスライド部62に沿って矢印G方向に移動可能であり、例えば、術者やアシスタントが安頭台11を矢印G方向に移動させ安頭台11の引き出し長さを調整する。なお、操作スイッチ(図示しない)を操作することにより自動的に安頭台11を矢印G方向に移動させてもよい。
【0027】
また、スライド部62に、コンプリング63と共にエンコーダ64が取り付けられている。そして、安頭台11の基台61には、コンプリング63のバネ63aの端部が取り付けられている。コンプリング63は、安頭台11の引き出し長さを調整した状態を保持(維持)する機能を備えている。
安頭台11が矢印G方向に移動すると、コンプリング63におけるバネ63aの巻き取り量が変化する。エンコーダ64は、この巻き取り量の変化を検知することにより、安頭台11の引き出し長さを検知する手段(安頭台引き出し長さ検知手段)として機能する。
【0028】
以下の説明では、安頭台11は、バックレスト12に対して通常の状態(標準身長の患者用)にセットされているとする。
術者等が安頭台11を引き出すと、エンコーダ64が検知した安頭台11の引き出し長さに応じて、図3の制御手段52は、歯科用治療椅子10を倒状態にした時、フットレスト基板30(フットレスト15)の引き出し長さを調整する。
【0029】
例えば、制御手段52は、歯科用治療椅子10を倒状態にした時、エンコーダ64が検知した安頭台11の引き出し長さが所定値以上になったことを検知すると、前記引き出し長さが長くなるに従って、フットレスト基板30の引き出し長さ(前方移動量)を大きく制御する。前記所定値としては、例えば、安頭台11が通常の状態にセットされているときの引き出し長さとすることができる。
【0030】
なお、安頭台11が通常の状態又は該通常の状態よりも縮んでセットされている場合には、制御手段52は、図2(A)に示す状態(フットレスト15が前方に移動していない状態)になるように、フットレスト基板30引き出し長さを調整する。
【0031】
本発明によると、歯科用治療椅子を倒状態にした時、安頭台の引き出し長さ(患者の身長)に応じて、フットレストの引き出し長さが自動調整されるので、背の高い患者でも足先をフットレストの上に置くことができる。その結果、患者の疲労感を大幅に軽減できる。
【符号の説明】
【0032】
10…歯科用治療椅子、11…安頭台、12…バックレスト、13…コンターシート、14…レッグレスト、15…フットレスト、16…基台、17…リモコン、21…基台、22…スライド部、23…コンプリング、23a…バネ、24…エンコーダ、20…レッグレスト基板、21…レール、22…延長部、30…フットレスト基板、31…摺動部、40…シリンダ、41…シリンダ部、42…ピストン部、51…操作手段、52…制御手段、61…基台、62…スライド部、63…コンプリング、63a…バネ、64…エンコーダ、S〜S…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックレストと、コンターシートと、レッグレストと、フットレストを有し、前記バックレスト、前記コンターシート、前記レッグレスト、前記フットレストを床面に対して平行な倒状態とし、患者を寝状態にして歯科治療を行う歯科用治療椅子において、
前記フットレストを前後方向に移動するフットレスト移動手段と、
フットレスト移動用のスイッチとを備え、
前記歯科用治療椅子を倒状態にした時、前記スイッチの操作により、前記フットレストを前後方向に調整可能にしたことを特徴とする歯科用治療椅子。
【請求項2】
バックレストと、該バックレストに設けられた安頭台と、前記バックレストに対する前記安頭台の引き出し長さを調整する安頭台引き出し長さ調整手段と、コンターシートと、レッグレストと、フットレストを有し、前記バックレスト、前記コンターシート、前記レッグレスト、前記フットレストを床面に対して平行な倒状態とし、患者を寝状態にして歯科治療を行う歯科用治療椅子において、
前記安頭台の引き出し長さを検知する安頭台引き出し長さ検知手段と、
前記フットレストを前後方向に移動するフットレスト移動手段とを備え、
前記歯科用治療椅子を倒状態にした時、前記安頭台引き出し長さ検知手段が検知した前記安頭台の引き出し長さに応じて、前記フットレストの引き出し長さを調整可能にしたことを特徴とする歯科用治療椅子。
【請求項3】
前記フットレスト移動手段は、前記フットレストと一体のフットレスト基板と、該フットレスト基板を前後方向に摺動可能に支持するレールと、前記フットレスト基板を前記レールに沿って前後に移動するシリンダを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科治療椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−229715(P2011−229715A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103218(P2010−103218)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】