歯車の表面計測装置
【課題】内歯歯車についても全数検査を行うことができる、歯車の表面計測装置の提供。
【解決手段】ベース12と、水平移動可能に取り付けられる第1スライダ13と、鉛直軸53廻りに回転可能に設けられる回転軸50と、歯車18を支える歯車支持部材20と、第1スライダ13を移動させる第1スライダ移動機構17と、支柱23と、昇降可能に設けられる第2スライダ24と、アーム25と、アーム25を昇降させる第2スライダ昇降機構31と、歯車18の表面の硬度を検出するセンサ機構26と、検出された情報を表示し記録する表示記録機構32とからなる。
【効果】内歯歯車18の上方からアーム25を降下させることで、センサ機構26を内歯歯車18の表面に臨ませることができる。センサ機構26を内歯歯車18の表面に臨ませることで、内歯歯車18の硬さを測定することができる。
【解決手段】ベース12と、水平移動可能に取り付けられる第1スライダ13と、鉛直軸53廻りに回転可能に設けられる回転軸50と、歯車18を支える歯車支持部材20と、第1スライダ13を移動させる第1スライダ移動機構17と、支柱23と、昇降可能に設けられる第2スライダ24と、アーム25と、アーム25を昇降させる第2スライダ昇降機構31と、歯車18の表面の硬度を検出するセンサ機構26と、検出された情報を表示し記録する表示記録機構32とからなる。
【効果】内歯歯車18の上方からアーム25を降下させることで、センサ機構26を内歯歯車18の表面に臨ませることができる。センサ機構26を内歯歯車18の表面に臨ませることで、内歯歯車18の硬さを測定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の表面硬度を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車の機械的性質を改善するために、歯車の表面に処理を施すことがある。処理を施した後に、歯車の表面が十分に処理されたかを確認すべく、計測を行うことがある。歯車の表面を計測する装置として歯底計測装置が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図20に示すように、計測装置200は、基台201と、この基台201の上面に設けられるレール202と、このレール202上を移動可能に設けられるスライダ203と、このスライダ203に支持されるインデックスモータ204と、このインデックスモータ204の上部で歯車205を支持する支軸206と、基台201に支持されるブラケット207と、このブラケット207で支持され歯車205を励磁する励磁コイル208、208と、これらの励磁コイル208、208の間に設けられ渦電流による磁界の変化を検出する検出コイル209とからなる。
【0004】
渦電流で発生する磁界の変化で、歯車205の表面の硬さを検出する。即ち、歯車205を破壊することなく、歯車の表面の硬さを計測する。歯車205を破壊しないため、製造した歯車の全数検査を行うことができる。全数検査を行うことで、歯車205の強度に対する信頼性が高まる。
【0005】
ところで、一般的に用いられる歯車の中には、特許文献1に示されるような外歯歯車の他に、内歯歯車も存在する。
しかし、この計測装置200では内歯歯車を支持することができず、内歯歯車の検査を行うことはできない。
【0006】
内歯歯車についても、検査を行うことができる表面計測装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−236755公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、内歯歯車についても検査を行うことができる、歯車の表面計測装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ベースと、このベースに水平移動可能に取り付けられる第1スライダと、この第1スライダに鉛直軸廻りに回転可能に設けられる回転軸と、この回転軸の上端に着脱自在に設けられ歯車を支える歯車支持部材と、ベースに設けられ第1スライダを移動させる第1スライダ移動機構と、ベースから上へ延びる支柱と、この支柱に昇降可能に設けられる第2スライダと、この第2スライダに設けられるアームと、支柱に設けられアームを昇降させる第2スライダ昇降機構と、アームの先端に設けられ歯車の表面の硬度を検出するセンサ機構と、このセンサ機構に繋がれセンサ機構で検出された情報を表示し記録する表示記録機構とからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、センサ機構は、アームの先端に固定される略コの字形状の鉄芯と、このコの字形状の鉄芯の先端にそれぞれ設けられ歯車を励磁する励磁コイルと、これらの励磁コイルの間に鉄芯から歯車の歯底に向かって延ばされ先端が楔形断面形状を呈する検出コイル支持体と、この検出コイル支持体の先端で支持され渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルとからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、検出コイルの中心を通る水平軸廻りに回転可能となるようにして、アームは第2スライダに設けられると共に、検出コイルの中心を通る水平軸と、回転軸から延ばされる鉛直軸とが交差されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、支柱に第2スライダの高さを示す目盛りが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、ベース部の上面に、第1スライダの水平方向への移動を規制するストッパが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、センサ機構は、複数個がアームに鉛直方向に並べられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、昇降可能に支持されたアームの先端にセンサ機構が設けられる。アームに支持されることで、センサ機構も昇降可能に支持される。内歯歯車の上方からアームを降下させることで、センサ機構を内歯歯車の表面に臨ませることができる。センサ機構を内歯歯車の表面に臨ませることで、内歯歯車の硬さを測定することができる。 歯車を破壊することなく硬さを測定することができるため、製造した歯車の全数検査を行うことができる。全数検査を行うことで、歯車の強度に対する信頼性が高まる。
【0016】
センサ機構が昇降可能であることと、歯車支持部材で支持される歯車が歯車支持部材とともに水平方向に移動可能であるため、本発明の表面計測装置で内歯歯車だけでなく外歯歯車をも計測することができる。
内歯歯車専用の計測装置と外歯歯車専用の計測装置を準備する場合に比べて、本発明によれば、計測装置は1台で済み、計測装置の調達コストを半減することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、渦電流で発生する磁界の変化で、歯車の歯底の硬さを検出する。歯車の歯底は、歯車の表面の中で最も表面処理を施すことが困難な場所である。表面処理を施すのが困難なため、歯車の歯底の硬さが所定の硬さよりも硬ければ、歯車全体として十分な強度を有すると考えられる。即ち、歯底の硬さを計測することで、歯車が所定の強度を有するか検査することができる。歯底の硬さを計測するだけであるため、短時間で計測作業を行うことができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、アームは、検出コイルの中心を通る水平軸廻りに回転可能とされる。即ち、検出コイルの中心がアームの回転軸に一致する。歯車にはすば歯車を用いた場合は、検出コイルを鉛直軸に対して傾ける必要がある。検出コイルは、アームを回転させることで傾けることができる。検出コイルの中心がアームの回転軸に一致するため、第1スライダの移動方向を前後方向とした場合に、左右方向にアームの移動をする必要がない。左右方向へのアームの移動を不要とすることで、少ない部品点数で種類の異なる歯車に対応することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、支柱に第2スライダの高さを示す目盛りが設けられている。目盛りを見ながら、センサ機構の昇降を行う。外部から視認するのが困難な、センサ機構の高さ方向の調整を、支柱に設けられた目盛りを見ながら行う。支柱の目盛りであれば容易に視認することができるため、計測作業を容易に行うことができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、ベース部の上面に、第1スライダの水平方向への移動を規制するストッパが設けられている。ストッパを基準に歯車の進退を調整する。歯車を進退させることで、センサ機構に対して歯車を出没させる。外部から視認し難い歯車の水平方向(前後方向)への調整を、ストッパを基準にして行う。所定の位置まで移動すると、ストッパにより第1スライダの移動が規制される。即ち、ストッパに接触するまで第1スライダを移動させればいいので、第1スライダの移動を容易に行うことができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、センサ機構は、複数個がアームに鉛直方向に並べられている。歯車を段積みすることで一度に複数の歯車について計測を行うことができる。計測時間の短縮化に寄与し、有益である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る歯車の表面計測装置の正面図である。
【図2】本発明に係る歯車の表面計測装置の要部断面図である。
【図3】図1の3矢視図である。
【図4】図2の4線断面図である。
【図5】図2の5線断面図である。
【図6】測定で得られた硬さを表したグラフである。
【図7】X電圧と浸炭深さの相関図である。
【図8】周波数と相関係数の関係を示すグラフである。
【図9】内歯歯車の歯底の計測手順を説明する図である。
【図10】クリック機構を説明する図である。
【図11】過回転警報機構を説明する図である。
【図12】過回転警報機構の作用を説明するフロー図である。
【図13】センサ回転機構の作用図である。
【図14】表面計測装置の作動フロー図である。
【図15】表面計測装置に外歯歯車をセットした形態を示す要部断面図である。
【図16】表面計測装置に外歯歯車をセットした形態を示す正面図である。
【図17】クリック機構の変更例を説明する図である。
【図18】センサ機構の変更例を説明する図である。
【図19】ストッパの変更例を説明する図である。
【図20】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、歯車の表面計測装置10は、作業台11の上面に設けられたベース12と、このベース12の上部に設けられ水平方向に移動する第1スライダ13と、この第1スライダ13を挟むようにして設けられ第1スライダ13の前端(図面左側)及び後端を規制する第1及び第2のストッパ15、16と、第1スライダ13を前後方向(図面左右方向)に移動させる第1スライダ移動機構17と、この第1スライダ移動機構17の上方に設けられ歯車としての内歯歯車18が支持される歯車支持部材としての内歯歯車支持部材20と、ベース12から上へ延び目盛り22が記された支柱23と、この支柱23に昇降可能に設けられる第2スライダ24と、この第2スライダ24から延ばされるアーム25と、このアーム25の先端に設けられ内歯歯車18の表面の硬度を検出するセンサ機構26と、このセンサ機構26を水平軸27廻りに回転させるために衝撃吸収部材34を介してアーム25を支持するセンサ回転機構28と、支柱23に設けられアーム25を昇降させる第2スライダ昇降機構31と、センサ機構26に繋がれセンサ機構26で検出された情報を表示し記録する表示記録機構32と、アーム25に設けられ内歯歯車18が一歯分を超えて回されたときに警報を発する過回転警報機構33とからなる。
【0025】
第1スライダ移動機構17は、作業員の手で回されるハンドル35と、このハンドル35に一体に取付けられ回転することで第1スライダ13を前後方向に移動させる雄ねじ部36とからなる。この他、第1スライダ移動機構は、蝶ボルト(図16、符号125参照)で固定可能なガイドとレールよりなる構造でもよい。多数計測する場合はこちらの方が効率的である。
【0026】
第2スライダ昇降機構31も基本的な構造は同様である。即ち、ハンドル37と、ハンドル37に一体的に取付けられ第2スライダ24を昇降させる雄ねじ部38とからなる。
【0027】
表示記録機構32は、センサ機構26から検出情報を取得して、例えば浸炭深さに換算する換算装置41と、得られた浸炭深さを合格基準深さと比較して合否を判定し記録する合否判定記録部42と、得られた合否判定に基づいて、合格、不合格を表示するモニタ部43とからなる。
【0028】
衝撃吸収部材34は、ベース部39と、このベース部39に取り付けられるガイド筒45、45と、これらのガイド筒45、45内を摺動可能に設けられアーム部25に支持されるシャフト49、49と、ベース部39からアーム部25まで設けられる衝撃吸収材としての弾性部材54とからなる。仮にセンサ機構26が衝撃を受けた場合に、衝撃を吸収することができる。
【0029】
計測は、センサ機構26を内歯歯車18の表面に臨ませて行う。センサ機構26を内歯歯車18内まで降下することで、センサ機構26は外部から視認するのが困難になる。外部から視認するのが困難な、センサ機構26の高さ方向の調整を、支柱23に設けられた目盛り22を見ながら行う。
【0030】
具体的には、センサ機構26がある高さにある場合に、第2スライダ24の下端部44の高さを支柱23に刻んでおく。再度、先程の高さに第2スライダ24を昇降させたい場合は、第2スライダ24の下端部44を先程刻んだ目盛りの高さまで昇降させる。合わせたい高さごとに、目盛り22を刻んでおく。
【0031】
下端部44と、目盛り22を見ながら昇降させる。支柱23の目盛り22であれば容易に視認することができる。センサ機構26が内歯歯車18に隠れて見えない場合であっても、容易にセンサ機構26の高さを調節することができ、計測作業を容易に行うことができる。
歯車の表面計測装置10の要部について次図で詳細を説明する。
【0032】
図2に示すように、第1スライダ13は、第1スライダ移動機構17の上面に設けられるスライド部46と、このスライド部46の上面に設けられる基部47と、この基部47に段部48aが嵌合されることで支持される筒部48とからなる。
【0033】
第1スライダ13の筒部48の内周面側に回転軸50が設けらる。回転軸50は、軸受51、52を介して第1スライダ13の筒部48に支持されることで、鉛直軸53廻りに回転可能とされる。この鉛直軸53は、回転軸50の中心に一致する。
雄ねじ状に切られた下端部55にカラー56をはめ込み、カラー56の下部からナット57を取付けることで、軸受51の落下を防止する。
【0034】
回転軸50は、下端部55を含む小径部59と、この小径部59の上部で小径部59よりも径が大きい中径部61と、この中径部61の上部で中径部61よりも径が大きく上面に複数のピン62が設けられる大径部63と、この大径部63の上部で小径部59よりも径が小さく上面から下方に向かって雌ねじ穴64が切られる上端部65とからなる。
【0035】
中径部61と小径部59との径の差で生ずる段差部67が軸受52に支持される。
大径部63に立てられたピン62に、内歯歯車支持部材20の穴部68が嵌合される。穴部68に嵌合した後に、上から抑え板69を配置し、ボルト71を雌ねじ穴64に通す。
【0036】
ボルト71及び抑え板69で内歯歯車支持部材20を回転軸50上に固定する。即ち、内歯歯車支持部材20は回転軸50の上端に着脱自在に且つ回転可能に設けられる。着脱自在とすることで、異なる大きさの内歯歯車支持部材を複数準備し、様々な大きさの内歯歯車を支持することができる。
【0037】
詳細は後述するが、内歯歯車支持部材20(歯車支持部材)を外歯歯車支持部材に取り替えることで、外歯歯車を支持することもできる。即ち、歯車支持部材は、予め内歯歯車支持部材20と、外歯歯車支持部材とが準備されており、任意の一方を取り付けることができる。
【0038】
内歯歯車支持部材20は、下部に設けられ内歯歯車18と同形状のダミー歯車73が嵌合されるダミー歯車嵌合部74と、このダミー歯車嵌合部74の下面に取付けられダミー歯車73の落下を防止する落下防止部材75と、この落下防止部材75が取付けられるボルト76、76と、回転軸50のピン62が嵌合される穴部68と、内歯歯車18が嵌合される内歯歯車嵌合部77と、この内歯歯車嵌合部77の側部に設けられ雌ねじ穴78にボルト79を通すことで内歯歯車18を固定する内歯歯車固定部81とからなる樹脂製の部材である。
【0039】
センサ機構26は、アーム25に支持されるコ字状の鉄芯83と、この鉄芯83に支持され内歯歯車18に向かって延ばされる検出コイル支持体84と、鉄芯83の先端から内歯歯車18に向かって延びている鋼球85と、鉄芯83の先端に巻かれた励磁コイル86と、これらの励磁コイル86に交流電圧を印加する交流電源87と、検出コイル支持体84の先端に設けられ楔形断面が歯底に臨む例えば樹脂製の構造体88と、この構造体88の先端に埋設された検出コイル89とからなる。
【0040】
第1スライダ13の上面にクリック機構92が設けられる。このクリック機構92は、第1スライダ13の上部に設けられる筒体93と、この筒体93を塞ぎ中央に穴94が開けられる蓋体95と、この蓋体95の穴94に対して先端部が出没自在に設けられるロッド96と、このロッド96をダミー歯車73の歯底97に向かって付勢する弾性部材99と、この弾性部材99を筒体93内に収納するねじ状の底蓋101とからなる
【0041】
クリック機構92は、ダミー歯車73に接し、ダミー歯車73の歯底97に嵌合することでダミー歯車73の回転を抑える。
【0042】
過回転警報機構33は、アーム25に支持され内歯歯車18の回転を検出する検出部103と、この検出部103で検出された情報を受け取る制御部104と、この制御部104が受け取った情報で作動され内歯歯車18が回転したことを知らせる告知部としてのブザー105とからなる。
【0043】
昇降可能に支持されたアーム25の先端にセンサ機構26が設けられる。アーム25に支持されることで、センサ機構26も昇降可能に支持される。内歯歯車18の上方からアーム25を降下させることで、センサ機構26を内歯歯車18の表面(歯底107)に臨ませることができる。センサ機構26を内歯歯車18の表面に臨ませることで、内歯歯車18の硬さを測定することができる。歯車を破壊することなく硬さを測定することができるため、製造した歯車の全数検査を行うことができる。全数検査を行うことで、歯車の強度に対する信頼性が高まる。
【0044】
第1スライダ13の前進端は、第1ストッパ15で規制される。第1ストッパ15に第1スライダ13が接触したとき、検出コイル89は内歯歯車18の歯底107に臨む。
第1スライダ13の後退端は、着脱自在とされた第2ストッパ16で規制される。第2ストッパ16に第1スライダ13が接触したとき、検出部103の先端の球体108が内歯歯車18の歯底107に臨む。
【0045】
検出コイル89が内歯歯車18の歯底107に臨んだ状態で、歯底の計測を行う。計測後は、第1スライダ13を後退させ、検出コイル89から離し、内歯歯車18を一歯分回転させる。第1スライダ13を後退させたときに、検出部103の先端の球体108が内歯歯車18の歯底107に臨む。詳細は後述するが、検出部103の先端の球体108が歯底に臨むことで、一歯分を超えて内歯歯車18が回転することを防ぎやすくなる。
【0046】
ストッパ15、16を基準に内歯歯車18の進退を調整する。内歯歯車18を進退させることで、センサ機構26に対して内歯歯車18を出没させる。外部から視認し難い内歯歯車18の水平方向(前後方向)への調整を、ストッパ15、16を基準にして行う。所定の位置まで移動すると、ストッパ15、16により第1スライダ13の移動が規制される。即ち、ストッパに接触するまで第1スライダ13を移動させればいいので、第1スライダ13の移動を容易に行うことができる。検出部103に対しても同様である。
【0047】
第1ストッパ15及び第2ストッパ16は、下部にピン111が設けられ、このピン111がベース12に設けられた穴112に差し込まれることで、着脱自在に設けられる。また、穴112は、複数設けられる。複数の穴112に対して着脱自在に設けられる。即ち、第1・第2ストッパ15、16は移動可能に設けられる。内歯歯車18の種類や大きさによって、第1・第2ストッパ15、16は、決められた穴112に差し込まれる。移動可能とすることで、内歯歯車18の種類を変えた場合であっても、第1・第2ストッパ15、16により第1スライダ13の移動量を規制することができる。
【0048】
なお、ダミー歯車73は、ダミー歯車専用の歯車を用いてもよいし、これから検査が行われる歯車、既に検査が行われ不合格であった歯車等任意のものを用いることができる。
内歯歯車支持部材20の詳細について次図で説明する。
【0049】
図3に示すように、内歯歯車支持部材20の上面114には、内歯歯車18の歯底107に対応した位置に数字115が記される。
歯車の表面の計測は、内歯歯車18の一歯ずつについて行う。記された数字115に沿って検査を行うことで、計測漏れを防止することができる。
【0050】
図4に示すように、検出コイル89は、絶縁性に富む楔形断面のナイロンなどの構造体88を介して検出コイル支持体84に支持されている。構造体88が楔形断面であるため、検出コイル89を内歯歯車18の歯底107に接近させることができる。
【0051】
渦電流で発生する磁界の変化で、内歯歯車18(歯車)の歯底107の硬さを検出する。内歯歯車18の歯底107は、内歯歯車18の表面の中で最も表面処理を施すことが困難な場所である。表面処理を施すのが困難なため、内歯歯車18の歯底107の硬さが所定の硬さよりも硬ければ、内歯歯車18全体として十分な強度を有するとみなすことができる。即ち、歯底107の硬さを計測することで、内歯歯車18が所定の強度を有するか検査することができる。歯底107の硬さを計測するだけであるため、短時間で計測作業を行うことができる。
【0052】
図5に示すように、鋼球85の球径は、隣合う歯先117と歯先117との間を通過するが、歯底107に到達する前に歯部118、118の面に接触する外径に設定されている。すなわち、接触点119、119に接触しているため、鋼球85の図左右方向及び上下方向の位置が規定される。併せて、鋼球85の中心は歯底107の中心に合致する。
この結果、歯底107からの検出コイル(図2、符号89)の距離や励磁コイル(図2、符号86)の距離を一定化することができる。この結果、測定の信頼性を高めることができる。
【0053】
ところで、図1で説明した換算装置41には、測定で得られたX電圧を浸炭深さに換算する換算表を記憶させる必要がある。そこで、図1の歯車の表面計測装置10を用いて、周波数を1kHzに設定し、真空浸炭済みの歯車の「X電圧」を測定した。この測定は非破壊検査に相当する。
次に、この歯車を切断し、切断面を磨いてから「浸炭深さ」を測定した。この測定は破壊検査に相当する。
【0054】
図6(a)に示すように、横軸が表面からの深さで、縦軸がビッカース硬さであるグラフに、生のデータをプロットしたものである。
【0055】
先ず、歯車の表面計測装置10を用いて、周波数を1kHzに設定し、真空浸炭済みの歯車の「X電圧」を測定したところ、X電圧は−67mVであった。次に、切断し、切断面を磨き、この切断面を測定対象として、表面から0.1mm毎に、1.0mmまで、マイクロビッカース硬さ計で、ビッカース硬さ(Hv)を測った。
【0056】
ところで、この種の歯車では、「表面から○○mmの深さで、ロックウエルCスケール硬さが50以上であること」と言った要求仕様が出されることが多い。ロックウエルCスケール硬さ50は、換算表によれば、ビッカース硬さ(Hv)513に相当する。
そこで、(a)にプロットした複数の点を滑らかな曲線で繋ぐ。
【0057】
結果、(b)に示すグラフが得られる。そこで、縦軸の513から横線を引き、曲線に交わったところから、縦線を降ろし、この縦線が横軸と交わったところの距離を読む。表面からの距離は0.64mmであった。
【0058】
図7に示すように、横軸が浸炭深さ(表面からの距離に相当。)で、縦軸がX電圧であるグラフに、1個のデータ(0.64mm、−67mV)を●でプロットした。
浸炭条件を変えて得られたサンプルを21個作製し、これらのサンプルについても図5(a)、(b)での手順を踏んで、浸炭深さとX電圧を定めた。21個のサンプルについては○で、グラフにプロットした。
【0059】
1個の●と21個の○は右下りの直線に沿って分散している。縦軸のX電圧が測定で得られれば、この相関図により、得られたX電圧に対応する浸炭深さを求めることができる。
また、詳細な計算法は省略するが、この分散における相関係数(r2)は0.92であった。
【0060】
以上の説明から明らかなように、本発明は次の点にも特徴がある。すなわち、図6(a)、(b)で説明したように、得られた硬さと深さは、測定で得られた硬さを、歯車の表面から中心に向かってプロットした点を結んでなる曲線から得る。点を結んで曲線を得るようにしたので、測定点の数を少なく設定することができ、測定時間が短縮でき、測定コストの低減を図ることができる。
【0061】
又、図6で求めた硬さという定量的データに基づいて、浸炭深さが決められる。すなわち、図6で説明したように、破壊検査による硬さデータと、非破壊検査によるX電圧との突き合わせが行われる。この後は、非破壊検査によりX電圧を求め、図7に基づいて、浸炭深さに換算する。非破壊検査であるにも拘わらず、破壊検査での裏付けがなされているので、非破壊検査で求めた浸炭深さの信頼性が飛躍的に高まる。
【0062】
次に、好適な周波数を特定することを目的に、700Hzから4kHzまで周波数を変えて、各周波数当たり22個のサンプルを準備し、図7と同様の相関図を作成し、相関係数を求めた。その結果を次図に示す。
図8に示すように、1kHzが最大で、2kHz以上では相関係数が小さくなった。一方、700〜1kHzでは、変化は小さい。
真空浸炭された歯車の歯底の浸炭深さを調べるには、周波数は700〜1kHzの範囲に設定することが望ましいことが分かった。
【0063】
図9(a)に示すように、静止状態にある検出コイル89へ、内歯歯車18を矢印(1)のように前進させる。(b)に示すように、検出コイル89に任意の歯底107を臨ませ、歯底107の浸炭深さを検出し、この浸炭深さの合否を判定させる。終わったら、矢印(2)のように内歯歯車18を後退させる。
【0064】
次に、(c)に示すように、内歯歯車18を1ピッチ(歯一枚分)だけ回す(矢印(3))。すると(d)に示すように、隣の歯底107が検出コイル89に臨む。以降、(a)に戻って作業を継続する。
内歯歯車18を1ピッチだけ確実に回すための機構について、詳細を次図で説明する。
【0065】
図10(a)に示すように、内歯歯車(図2符号内歯歯車18)を回すことで、ダミー歯車73も矢印(4)で示すように回る。(b)に示すように、さらにダミー歯車73が回ると、歯部122にロッド96が接触する。
【0066】
歯部122にロッド96が接触した状態でさらに回すには、矢印(5)で示すように、弾性部材99の力に抗してダミー歯車73を回す必要がある。即ち、ダミー歯車73の回転を抑える力に抗してダミー歯車73を回す必要がある。
【0067】
ダミー歯車73をさらに回すことで、(c)に示すようにロッド96がダミー歯車73の歯先123に達する。(d)に示すように歯先123を越えることで、ダミー歯車73の回転を抑える力が働かなくなる。
【0068】
ダミー歯車73の歯先123がクリック機構92を超えるときに最も抵抗が大きくなり、ダミー歯車73の歯先123を超えた瞬間にクリック機構92の抵抗が最も小さくなる。抵抗が変わるため、ダミー歯車73の歯先123を超える前後でダミー歯車73の回転する速さが変わり、ダミー歯車73の歯先123を超えたことを外部から視認しやすい。
【0069】
また、仮に、ダミー歯車73を手で回転させた場合は、抵抗が変わることで、ダミー歯車73の歯先123を超えた感触が手に伝わりやすい。
ダミー歯車73と内歯歯車とは同じ形状であり、同時に回転するから、ダミー歯車73がクリック機構92を乗り越えたことで、内歯歯車も一歯分移動されたことが分かる。
【0070】
歯車の表面の計測は、一歯ずつ行う。内部を視認するのが困難な内歯歯車の回転を、外部から確認することができる。一歯ずつ正確に計測を行うのに、有益である。
【0071】
ロッド96は、ロッド96の軸方向に向かって直線的に移動される。直線的に移動されることで、筒体93の穴94近傍に係る負荷を軽減することができ、クリック機構の長寿命化に資する。
このようなクリック機構92に加え、さらに次図で説明するような機構を設けることで、さらに確実に一歯ずつ回すことができる。
【0072】
図11(a)に示すように、測定が終わり第1スライダ(図2、符号第1スライダ13)を後退させることで、内歯歯車18の歯底107が球体108に接近する。
次に(b)に示すように、内歯歯車18を回転させる(矢印(6))と、内歯歯車18の歯部118が球体108に接触する。
【0073】
内歯歯車18が回転する力で、球体108は支点127を中心に回転し、接触端部128が被接触部129に接触する。さらに回転することで、(c)に示すように球体108は歯先117を超え、元の位置に戻る。同時に、接触端部128が被接触部129から離れる。
接触及び離間の情報を受け取った制御部104は、短音132のブザー105を鳴らす。
【0074】
(d)に示すように、一歯分を越えて内歯歯車18が回転した場合(この場合は二歯分)に、制御部104は長音133のブザー105を鳴らす。
【0075】
一歯分を超えて回されたときに、警報を発する過回転警報機構33が備えられている。一歯分を超えて回すと、警報が発せられる。警報が発せられることで、計測漏れを防ぐことができる。
【0076】
過回転警報機構33は、検出部103と、制御部104と、告知部(ブザー105)とからなる。共に汎用品である、検出部103、制御部104、告知部を用いることで、過回転警報機構33を廉価に製造することができる。
この仕組みについて詳細を次図で説明する。
【0077】
図12に示すように、ステップ(以下「ST」と記す。)10で、所定時間Tを決定する。所定時間Tは、例えば、歯車の表面を計測するのに最低限必要な時間である。
【0078】
次に、非接触部に接触端部が接触したかを確認し(ST11、図11参照)、接触した場合は、離間した後に制御部が短音のブザーを鳴らす(ST12)。
接触していない場合は、ST11に戻る。
【0079】
短音のブザーを鳴らした後、制御部はストップウォッチを作動させ、時間tの計測を開始する(ST13)。計測開始後に、制御部はtがTと同じか又は超えたか(t≧Tであるか)を確認する(ST14)。
t≧Tである場合は、制御部はストップウォッチをリセットし(ST15)、終了する。
【0080】
t<Tである場合は、非接触部に接触端部が接触したかを確認する(ST16)。
接触した場合は、制御部は長音のブザーを鳴らす(ST17)。Tが計測に最低限必要な時間であるとした場合、t<Tで2度目の接触を計測したことは、計測が終わる前に一歯分を超えて歯車が回転したことを表す。
【0081】
長音のブザーを鳴らした後は、ストップウォッチをリセット(ST18)し、終了する。
ST16で接触端部が非接触部に接触していない場合は、ST14に戻る。
【0082】
図13(a)に示すように、参考例に係る検出コイル135は、検出コイル135の中心136と、この検出コイル135を回転させる回転機構の水平軸137とが重ならない。
【0083】
用いられる歯車138が平歯歯車であれば、この歯車138の回転の中心である鉛直軸139と検出コイル135の中心136とは重なる。
【0084】
重なっていることで、(a)のb矢視図である(b)に示すように、検出コイル135を歯車138の歯底141に臨ませることができる。
【0085】
一方、(c)に示すように、歯車142がはすば歯車である場合、歯車142の歯の角度に合わせて、検出コイル135を傾ける。傾けることで、鉛直軸139に対して検出コイル135の中心136が外れる。
【0086】
中心136が鉛直軸139から外れた状態で、検出コイル135に歯車142を近づける。(c)のd矢視図である(d)に示すように、検出コイル135が歯車142の歯部143に接触し、歯底144に臨ませることができない。
【0087】
歯底144に臨ませるためには、(e)に示すように、水平軸137を左右方向(矢印(7))に移動させる必要がある。移動させ、中心136が鉛直軸139に重なることで、(e)のf矢視図である(f)に示すように、歯底144に検出コイル135を臨ませることができる。
【0088】
(a)〜(f)までの参考例で明らかなように、検出コイル135の中心136が水平軸137に重ならない場合、異なる種類の歯車に対応するためには、水平軸137を左右方向(幅方向)に移動させるための機構が必要である。
本発明の好適な実施例について(g)〜(j)で説明する。
【0089】
(g)に示すように、検出コイル146の中心147が回転の中心である水平軸148に重なる。この水平軸148は、歯車の回転の中心である鉛直軸149に重なる。平歯歯車である歯車138を用いた場合は、(g)のh矢視図である(h)に示すように、当然検出コイル146を歯車138の歯底141に臨ませることができる。
【0090】
加えて、(i)に示すように、はすば歯車である歯車142を用いる。検出コイル146の中心147を水平軸148が通る。水平軸148と重なることで、回転させた後も中心147が、鉛直軸149に重なった状態を保つことができる。
【0091】
このため、(i)のj矢視図である(j)に示すように、歯車142の歯底144に、検出コイル146を臨ませることができる。
【0092】
以上を、図2に戻り説明する。
検出コイル89の中心89cを通る水平軸27廻りに回転可能となるようにして、アーム25は第2スライダ(図1符号、24)に設けられると共に、検出コイル89の中心89cを通る水平軸27と、回転軸50の中心から延長された鉛直軸53とが交差される。
【0093】
検出コイル89の中心89cがアーム25の回転軸(水平軸27)に一致する。歯車にはすば歯車を用いた場合は、検出コイルを傾ける必要がある。検出コイル89は、アーム25を回転させることで傾けることができる。検出コイル89の中心89cがアーム25の回転軸に一致するため、第1スライダ13の移動方向を前後方向(長手方向)とした場合に、左右方向(幅方向)にアーム25の移動をする必要がない。左右方向へのアーム25の移動を不要とすることで、少ない部品点数で種類の異なる歯車に対応することができる。
【0094】
なお、少ない部品点数で種類の異なる歯車に対応することができることは、外歯歯車についても同様である。即ち、検出コイルの中心に水平軸を重ね、この水平軸が鉛直軸に交わることで、外歯歯車であっても、平歯歯車やはすば歯車に対応することができる。
【0095】
以上で説明した計測装置の使用方法について以下説明する。
図14に示すように、検査を行う場合は、まず、図2に示す第1スライダ13が後端位置にあるかを確認する(ST30)。
【0096】
後端位置にない場合は、図1に示すハンドル35を操作して、第1スライダ13を後退させる(ST31)。このとき、第1スライダ13が図2に示す第2ストッパ16に接触するまで後退させることで、素早く、正確に後端位置まで後退させることができる。
【0097】
第1スライダ13が後端位置にある状態で、歯車(内歯歯車18)を歯車支持部材(内歯歯車支持部材20)にセットする(ST32)。
歯車の歯数Nをインプットし(ST33)、計測回数nを1にする(ST34)。
【0098】
次に、図1に示すハンドル37を操作してセンサ機構26を下降させる(ST35)。センサ機構26を下降させる場合は、目盛り22を見ながら行うことで、正確な位置に素早くセンサ機構26を下降させることができる。
【0099】
図2を参照して、歯車を前進させ(ST36)、検出コイル89を歯底107に臨ませ、計測を開始する(ST37)。計測が終了したら、歯車を後退させる(ST38)。
【0100】
計測で得られたデータから、合否を判定する(ST39)。合格であれば、今までの計測回数nが、歯車の歯数Nと同じになったかを調べる(ST40)。
このとき、図3に示すように、内歯歯車支持部材20上面114の内歯歯車18の歯底107に対応した位置に数字115が記されていると、計測回数N及びnを素早く、確実に検出することができる。
【0101】
計測回数nが設定計測回数N以上となったところで、センサ機構26を上昇させる(ST42)(図1参照。)。センサ機構26を上昇させた後に、歯車を取り外し(ST43)、終了する。
【0102】
ST39に戻り、不合格であった場合は、以降その歯車については計測を行わない。即ち、センサ機構26を上昇し(ST44)、歯車を交換して(ST45)終了する。
【0103】
ST40に戻り、計測回数nが設定回数N未満の場合は、歯車を一歯分回転させ(ST46)、計測回数nに1を足し(ST47)、ST36に戻る。
図10及び図11で説明したとおり、クリック機構92及び過回転警報機構33を備えることで、一歯分ずつ確実に回転させることができる。
【0104】
なお、本計測装置を用いて外歯歯車の計測を行う場合も、手順は同じである。
外歯歯車を用いた場合の状態について図15及び図16で詳細に説明する。
【0105】
図15に示すように、歯車支持部材としての外歯歯車支持部材150を用いて外歯歯車151を支持し、計測する。
【0106】
外歯歯車支持部材150は、ピン62が嵌合される穴部152が備えられた基部153と、この基部153から立上げられ窓部154が備えられた柱状部155と、この柱状部155の上部で上面に外歯歯車151が配置される歯車支持板156と、この歯車支持板156の中央に立てられ外歯歯車151を支持する支持軸157とからなる。
【0107】
歯車支持部材は、内歯歯車を支持する内歯歯車支持部材(図2参照)と、外歯歯車151を支持する外歯歯車支持部材150とが準備され、任意の歯車支持部材を用いることができる。歯車支持部材を着脱自在にし、取り替えることで、様々な種類の歯車の計測を1台の計測装置で行うことができる。作業場の省スペース化を図ることができると共に、歯車の検査のためのコストを抑えることができる。
【0108】
過回転警報機構158を以下のように構成することもできる。即ち、検出部159に非接触式のセンサを用い、ランプ161、162を光らせることで警報を発する告知部163を用いた。
例えば、ランプは一歯超えたときに左のランプ161が光り、一歯を超えて回転したときに右のランプ162が光るようにすることができる。
【0109】
このままでは、外歯歯車151に用いることができないので、外歯歯車151の計測をする場合は、次図で説明するような過回転警報機構160やクリック機構157を用いる。
なお、この他、異なる色にランプを光らせるもの等、告知部は、音、光、その他作業者が過回転を認識することができる手段であれば、これらのものに限られない。
【0110】
図16に示すように、外歯歯車151の計測を行う場合は、ボルト131で支持部材134を取付け、この支持部材134でクリック機構157及び検出部164を支持する。
加えて、外歯歯車151の上面には、外歯歯車151の歯底に対応した位置に数字が記された数字板145が取付けられる。
クリック機構157、検出部164、数字板145は、未回転認識機構として、又、過回転認識機構として、単独でも効果があるので、単独設定又は複数設備のいずれでもよい。
【0111】
外歯歯車151の計測時は、第1スライダ13を大きく後退させる必要がある。第1スライダ13を後退させるために、第2ストッパ16を予め移動させておく。
【0112】
長穴124を開けられた第1スライダ13は、手で移動される。所定の場所に移動させたところで蝶ボルト125を固定穴126に嵌合させ、第1スライダ13を固定することができる。
【0113】
センサ機構26が昇降可能であることと、歯車支持部材(外歯歯車支持部材150)で支持される歯車(外歯歯車151)が歯車支持部材とともに水平方向に移動可能であるため、本発明の表面計測装置10で内歯歯車(図1、符号18)だけでなく外歯歯車151をも計測することができる。
【0114】
内歯歯車専用の計測装置と外歯歯車専用の計測装置を準備する場合に比べて、本発明によれば、計測装置は1台で済み、計測装置の調達コストを半減することができる。
【0115】
また、内歯歯車の計測の場合と同様、クリック機構134及び過回転防止機構160を有することで歯車の乗り越えに気づきやすく、数字板145に記された数字に沿って検査を行うことで、計測漏れを防止することができる。
【0116】
図17に示すように、本体部165と、この本体部165に差し込まれるゴム製の弾性部166とからなるクリック機構167を用いた。
このようなクリック機構167も、計測後の一歯回転を確実に把握できる。
【0117】
この他、弾性部に金属板やプラスチック製板を用いる等、クリック機構は任意の構成を採用することができる。即ち、本実施例に示したものに限られない。
【0118】
図18に示すように、アーム169に、センサ機構171、171が鉛直方向に複数(この例では2つ)設けられている。
歯車を段積みすることで一度に複数の歯車について計測を行うことができる。計測時間の短縮化に寄与し、有益である。
【0119】
図19に示すように、ストッパ機構173は、鉛直軸53を中心に雄ねじを切る方向が変えられたねじ状部材174と、このねじ状部材174を回転させるハンドル175と、ねじ状部材174を回転させることで互いに反対の方向に移動される支持台176、176と、これらの支持台176、176に支持される第1ストッパ177及び第2ストッパ178とからなる。
【0120】
ねじが逆に切られることで、第1ストッパ177が左に移動する場合は第2ストッパ178は右に移動する。また、第2ストッパ178が右に移動する場合は第1ストッパ177は左に移動する。
このようなストッパ機構173を用いた場合も、大きさの異なる複数種類の内歯歯車に対応することができる。
【0121】
外歯歯車の計測を行う場合は、第2ストッパ178を支持台176から外す。支持台176の上面は、第1スライダ(図1、符号13)の下端よりも低くされる。
なお、鉛直軸53に内歯歯車の回転軸を一致させるため、内歯歯車支持部材は、内歯歯車の外径毎に、複数種類のものを用いることが望ましい。
【0122】
尚、本発明に係る歯車は、真空浸炭処理のなされた歯車を例に説明したが、この他の処理がなされたもの等であっても用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の歯車の表面計測装置は、真空浸炭された内歯歯車の計測に好適である。
【符号の説明】
【0124】
10…歯車の表面計測装置、12…ベース、13…第1スライダ、15、177…第1ストッパ(ストッパ)、16、178…第2ストッパ(ストッパ)、17…第1スライダ移動機構、18…内歯歯車(歯車)、20…内歯歯車支持部材(歯車支持部材)、22…目盛り、23…支柱、24…第2スライダ、25、169…アーム、26、171…センサ機構、27…水平軸、31…第2スライダ昇降機構、32…表示記録機構、33、158…過回転警報機構、50…回転軸、53…鉛直軸、73…ダミー歯車、83…鉄芯、86…励磁コイル、89…検出コイル、89c…(検出コイルの)中心、92、167…クリック機構、93…筒体、94…穴、95…蓋体、96…ロッド、97…(ダミー歯車の)歯底、99…弾性部材、103、159…検出部、104…制御部、105…ブザー(告知部)、107…(内歯歯車の)歯底、114…上面、115…数字、150…外歯歯車支持部材(歯車支持部材)、151…外歯歯車(歯車)、163…告知部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の表面硬度を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車の機械的性質を改善するために、歯車の表面に処理を施すことがある。処理を施した後に、歯車の表面が十分に処理されたかを確認すべく、計測を行うことがある。歯車の表面を計測する装置として歯底計測装置が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図20に示すように、計測装置200は、基台201と、この基台201の上面に設けられるレール202と、このレール202上を移動可能に設けられるスライダ203と、このスライダ203に支持されるインデックスモータ204と、このインデックスモータ204の上部で歯車205を支持する支軸206と、基台201に支持されるブラケット207と、このブラケット207で支持され歯車205を励磁する励磁コイル208、208と、これらの励磁コイル208、208の間に設けられ渦電流による磁界の変化を検出する検出コイル209とからなる。
【0004】
渦電流で発生する磁界の変化で、歯車205の表面の硬さを検出する。即ち、歯車205を破壊することなく、歯車の表面の硬さを計測する。歯車205を破壊しないため、製造した歯車の全数検査を行うことができる。全数検査を行うことで、歯車205の強度に対する信頼性が高まる。
【0005】
ところで、一般的に用いられる歯車の中には、特許文献1に示されるような外歯歯車の他に、内歯歯車も存在する。
しかし、この計測装置200では内歯歯車を支持することができず、内歯歯車の検査を行うことはできない。
【0006】
内歯歯車についても、検査を行うことができる表面計測装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−236755公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、内歯歯車についても検査を行うことができる、歯車の表面計測装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ベースと、このベースに水平移動可能に取り付けられる第1スライダと、この第1スライダに鉛直軸廻りに回転可能に設けられる回転軸と、この回転軸の上端に着脱自在に設けられ歯車を支える歯車支持部材と、ベースに設けられ第1スライダを移動させる第1スライダ移動機構と、ベースから上へ延びる支柱と、この支柱に昇降可能に設けられる第2スライダと、この第2スライダに設けられるアームと、支柱に設けられアームを昇降させる第2スライダ昇降機構と、アームの先端に設けられ歯車の表面の硬度を検出するセンサ機構と、このセンサ機構に繋がれセンサ機構で検出された情報を表示し記録する表示記録機構とからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、センサ機構は、アームの先端に固定される略コの字形状の鉄芯と、このコの字形状の鉄芯の先端にそれぞれ設けられ歯車を励磁する励磁コイルと、これらの励磁コイルの間に鉄芯から歯車の歯底に向かって延ばされ先端が楔形断面形状を呈する検出コイル支持体と、この検出コイル支持体の先端で支持され渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルとからなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、検出コイルの中心を通る水平軸廻りに回転可能となるようにして、アームは第2スライダに設けられると共に、検出コイルの中心を通る水平軸と、回転軸から延ばされる鉛直軸とが交差されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、支柱に第2スライダの高さを示す目盛りが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、ベース部の上面に、第1スライダの水平方向への移動を規制するストッパが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、センサ機構は、複数個がアームに鉛直方向に並べられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、昇降可能に支持されたアームの先端にセンサ機構が設けられる。アームに支持されることで、センサ機構も昇降可能に支持される。内歯歯車の上方からアームを降下させることで、センサ機構を内歯歯車の表面に臨ませることができる。センサ機構を内歯歯車の表面に臨ませることで、内歯歯車の硬さを測定することができる。 歯車を破壊することなく硬さを測定することができるため、製造した歯車の全数検査を行うことができる。全数検査を行うことで、歯車の強度に対する信頼性が高まる。
【0016】
センサ機構が昇降可能であることと、歯車支持部材で支持される歯車が歯車支持部材とともに水平方向に移動可能であるため、本発明の表面計測装置で内歯歯車だけでなく外歯歯車をも計測することができる。
内歯歯車専用の計測装置と外歯歯車専用の計測装置を準備する場合に比べて、本発明によれば、計測装置は1台で済み、計測装置の調達コストを半減することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、渦電流で発生する磁界の変化で、歯車の歯底の硬さを検出する。歯車の歯底は、歯車の表面の中で最も表面処理を施すことが困難な場所である。表面処理を施すのが困難なため、歯車の歯底の硬さが所定の硬さよりも硬ければ、歯車全体として十分な強度を有すると考えられる。即ち、歯底の硬さを計測することで、歯車が所定の強度を有するか検査することができる。歯底の硬さを計測するだけであるため、短時間で計測作業を行うことができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、アームは、検出コイルの中心を通る水平軸廻りに回転可能とされる。即ち、検出コイルの中心がアームの回転軸に一致する。歯車にはすば歯車を用いた場合は、検出コイルを鉛直軸に対して傾ける必要がある。検出コイルは、アームを回転させることで傾けることができる。検出コイルの中心がアームの回転軸に一致するため、第1スライダの移動方向を前後方向とした場合に、左右方向にアームの移動をする必要がない。左右方向へのアームの移動を不要とすることで、少ない部品点数で種類の異なる歯車に対応することができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、支柱に第2スライダの高さを示す目盛りが設けられている。目盛りを見ながら、センサ機構の昇降を行う。外部から視認するのが困難な、センサ機構の高さ方向の調整を、支柱に設けられた目盛りを見ながら行う。支柱の目盛りであれば容易に視認することができるため、計測作業を容易に行うことができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、ベース部の上面に、第1スライダの水平方向への移動を規制するストッパが設けられている。ストッパを基準に歯車の進退を調整する。歯車を進退させることで、センサ機構に対して歯車を出没させる。外部から視認し難い歯車の水平方向(前後方向)への調整を、ストッパを基準にして行う。所定の位置まで移動すると、ストッパにより第1スライダの移動が規制される。即ち、ストッパに接触するまで第1スライダを移動させればいいので、第1スライダの移動を容易に行うことができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、センサ機構は、複数個がアームに鉛直方向に並べられている。歯車を段積みすることで一度に複数の歯車について計測を行うことができる。計測時間の短縮化に寄与し、有益である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る歯車の表面計測装置の正面図である。
【図2】本発明に係る歯車の表面計測装置の要部断面図である。
【図3】図1の3矢視図である。
【図4】図2の4線断面図である。
【図5】図2の5線断面図である。
【図6】測定で得られた硬さを表したグラフである。
【図7】X電圧と浸炭深さの相関図である。
【図8】周波数と相関係数の関係を示すグラフである。
【図9】内歯歯車の歯底の計測手順を説明する図である。
【図10】クリック機構を説明する図である。
【図11】過回転警報機構を説明する図である。
【図12】過回転警報機構の作用を説明するフロー図である。
【図13】センサ回転機構の作用図である。
【図14】表面計測装置の作動フロー図である。
【図15】表面計測装置に外歯歯車をセットした形態を示す要部断面図である。
【図16】表面計測装置に外歯歯車をセットした形態を示す正面図である。
【図17】クリック機構の変更例を説明する図である。
【図18】センサ機構の変更例を説明する図である。
【図19】ストッパの変更例を説明する図である。
【図20】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、歯車の表面計測装置10は、作業台11の上面に設けられたベース12と、このベース12の上部に設けられ水平方向に移動する第1スライダ13と、この第1スライダ13を挟むようにして設けられ第1スライダ13の前端(図面左側)及び後端を規制する第1及び第2のストッパ15、16と、第1スライダ13を前後方向(図面左右方向)に移動させる第1スライダ移動機構17と、この第1スライダ移動機構17の上方に設けられ歯車としての内歯歯車18が支持される歯車支持部材としての内歯歯車支持部材20と、ベース12から上へ延び目盛り22が記された支柱23と、この支柱23に昇降可能に設けられる第2スライダ24と、この第2スライダ24から延ばされるアーム25と、このアーム25の先端に設けられ内歯歯車18の表面の硬度を検出するセンサ機構26と、このセンサ機構26を水平軸27廻りに回転させるために衝撃吸収部材34を介してアーム25を支持するセンサ回転機構28と、支柱23に設けられアーム25を昇降させる第2スライダ昇降機構31と、センサ機構26に繋がれセンサ機構26で検出された情報を表示し記録する表示記録機構32と、アーム25に設けられ内歯歯車18が一歯分を超えて回されたときに警報を発する過回転警報機構33とからなる。
【0025】
第1スライダ移動機構17は、作業員の手で回されるハンドル35と、このハンドル35に一体に取付けられ回転することで第1スライダ13を前後方向に移動させる雄ねじ部36とからなる。この他、第1スライダ移動機構は、蝶ボルト(図16、符号125参照)で固定可能なガイドとレールよりなる構造でもよい。多数計測する場合はこちらの方が効率的である。
【0026】
第2スライダ昇降機構31も基本的な構造は同様である。即ち、ハンドル37と、ハンドル37に一体的に取付けられ第2スライダ24を昇降させる雄ねじ部38とからなる。
【0027】
表示記録機構32は、センサ機構26から検出情報を取得して、例えば浸炭深さに換算する換算装置41と、得られた浸炭深さを合格基準深さと比較して合否を判定し記録する合否判定記録部42と、得られた合否判定に基づいて、合格、不合格を表示するモニタ部43とからなる。
【0028】
衝撃吸収部材34は、ベース部39と、このベース部39に取り付けられるガイド筒45、45と、これらのガイド筒45、45内を摺動可能に設けられアーム部25に支持されるシャフト49、49と、ベース部39からアーム部25まで設けられる衝撃吸収材としての弾性部材54とからなる。仮にセンサ機構26が衝撃を受けた場合に、衝撃を吸収することができる。
【0029】
計測は、センサ機構26を内歯歯車18の表面に臨ませて行う。センサ機構26を内歯歯車18内まで降下することで、センサ機構26は外部から視認するのが困難になる。外部から視認するのが困難な、センサ機構26の高さ方向の調整を、支柱23に設けられた目盛り22を見ながら行う。
【0030】
具体的には、センサ機構26がある高さにある場合に、第2スライダ24の下端部44の高さを支柱23に刻んでおく。再度、先程の高さに第2スライダ24を昇降させたい場合は、第2スライダ24の下端部44を先程刻んだ目盛りの高さまで昇降させる。合わせたい高さごとに、目盛り22を刻んでおく。
【0031】
下端部44と、目盛り22を見ながら昇降させる。支柱23の目盛り22であれば容易に視認することができる。センサ機構26が内歯歯車18に隠れて見えない場合であっても、容易にセンサ機構26の高さを調節することができ、計測作業を容易に行うことができる。
歯車の表面計測装置10の要部について次図で詳細を説明する。
【0032】
図2に示すように、第1スライダ13は、第1スライダ移動機構17の上面に設けられるスライド部46と、このスライド部46の上面に設けられる基部47と、この基部47に段部48aが嵌合されることで支持される筒部48とからなる。
【0033】
第1スライダ13の筒部48の内周面側に回転軸50が設けらる。回転軸50は、軸受51、52を介して第1スライダ13の筒部48に支持されることで、鉛直軸53廻りに回転可能とされる。この鉛直軸53は、回転軸50の中心に一致する。
雄ねじ状に切られた下端部55にカラー56をはめ込み、カラー56の下部からナット57を取付けることで、軸受51の落下を防止する。
【0034】
回転軸50は、下端部55を含む小径部59と、この小径部59の上部で小径部59よりも径が大きい中径部61と、この中径部61の上部で中径部61よりも径が大きく上面に複数のピン62が設けられる大径部63と、この大径部63の上部で小径部59よりも径が小さく上面から下方に向かって雌ねじ穴64が切られる上端部65とからなる。
【0035】
中径部61と小径部59との径の差で生ずる段差部67が軸受52に支持される。
大径部63に立てられたピン62に、内歯歯車支持部材20の穴部68が嵌合される。穴部68に嵌合した後に、上から抑え板69を配置し、ボルト71を雌ねじ穴64に通す。
【0036】
ボルト71及び抑え板69で内歯歯車支持部材20を回転軸50上に固定する。即ち、内歯歯車支持部材20は回転軸50の上端に着脱自在に且つ回転可能に設けられる。着脱自在とすることで、異なる大きさの内歯歯車支持部材を複数準備し、様々な大きさの内歯歯車を支持することができる。
【0037】
詳細は後述するが、内歯歯車支持部材20(歯車支持部材)を外歯歯車支持部材に取り替えることで、外歯歯車を支持することもできる。即ち、歯車支持部材は、予め内歯歯車支持部材20と、外歯歯車支持部材とが準備されており、任意の一方を取り付けることができる。
【0038】
内歯歯車支持部材20は、下部に設けられ内歯歯車18と同形状のダミー歯車73が嵌合されるダミー歯車嵌合部74と、このダミー歯車嵌合部74の下面に取付けられダミー歯車73の落下を防止する落下防止部材75と、この落下防止部材75が取付けられるボルト76、76と、回転軸50のピン62が嵌合される穴部68と、内歯歯車18が嵌合される内歯歯車嵌合部77と、この内歯歯車嵌合部77の側部に設けられ雌ねじ穴78にボルト79を通すことで内歯歯車18を固定する内歯歯車固定部81とからなる樹脂製の部材である。
【0039】
センサ機構26は、アーム25に支持されるコ字状の鉄芯83と、この鉄芯83に支持され内歯歯車18に向かって延ばされる検出コイル支持体84と、鉄芯83の先端から内歯歯車18に向かって延びている鋼球85と、鉄芯83の先端に巻かれた励磁コイル86と、これらの励磁コイル86に交流電圧を印加する交流電源87と、検出コイル支持体84の先端に設けられ楔形断面が歯底に臨む例えば樹脂製の構造体88と、この構造体88の先端に埋設された検出コイル89とからなる。
【0040】
第1スライダ13の上面にクリック機構92が設けられる。このクリック機構92は、第1スライダ13の上部に設けられる筒体93と、この筒体93を塞ぎ中央に穴94が開けられる蓋体95と、この蓋体95の穴94に対して先端部が出没自在に設けられるロッド96と、このロッド96をダミー歯車73の歯底97に向かって付勢する弾性部材99と、この弾性部材99を筒体93内に収納するねじ状の底蓋101とからなる
【0041】
クリック機構92は、ダミー歯車73に接し、ダミー歯車73の歯底97に嵌合することでダミー歯車73の回転を抑える。
【0042】
過回転警報機構33は、アーム25に支持され内歯歯車18の回転を検出する検出部103と、この検出部103で検出された情報を受け取る制御部104と、この制御部104が受け取った情報で作動され内歯歯車18が回転したことを知らせる告知部としてのブザー105とからなる。
【0043】
昇降可能に支持されたアーム25の先端にセンサ機構26が設けられる。アーム25に支持されることで、センサ機構26も昇降可能に支持される。内歯歯車18の上方からアーム25を降下させることで、センサ機構26を内歯歯車18の表面(歯底107)に臨ませることができる。センサ機構26を内歯歯車18の表面に臨ませることで、内歯歯車18の硬さを測定することができる。歯車を破壊することなく硬さを測定することができるため、製造した歯車の全数検査を行うことができる。全数検査を行うことで、歯車の強度に対する信頼性が高まる。
【0044】
第1スライダ13の前進端は、第1ストッパ15で規制される。第1ストッパ15に第1スライダ13が接触したとき、検出コイル89は内歯歯車18の歯底107に臨む。
第1スライダ13の後退端は、着脱自在とされた第2ストッパ16で規制される。第2ストッパ16に第1スライダ13が接触したとき、検出部103の先端の球体108が内歯歯車18の歯底107に臨む。
【0045】
検出コイル89が内歯歯車18の歯底107に臨んだ状態で、歯底の計測を行う。計測後は、第1スライダ13を後退させ、検出コイル89から離し、内歯歯車18を一歯分回転させる。第1スライダ13を後退させたときに、検出部103の先端の球体108が内歯歯車18の歯底107に臨む。詳細は後述するが、検出部103の先端の球体108が歯底に臨むことで、一歯分を超えて内歯歯車18が回転することを防ぎやすくなる。
【0046】
ストッパ15、16を基準に内歯歯車18の進退を調整する。内歯歯車18を進退させることで、センサ機構26に対して内歯歯車18を出没させる。外部から視認し難い内歯歯車18の水平方向(前後方向)への調整を、ストッパ15、16を基準にして行う。所定の位置まで移動すると、ストッパ15、16により第1スライダ13の移動が規制される。即ち、ストッパに接触するまで第1スライダ13を移動させればいいので、第1スライダ13の移動を容易に行うことができる。検出部103に対しても同様である。
【0047】
第1ストッパ15及び第2ストッパ16は、下部にピン111が設けられ、このピン111がベース12に設けられた穴112に差し込まれることで、着脱自在に設けられる。また、穴112は、複数設けられる。複数の穴112に対して着脱自在に設けられる。即ち、第1・第2ストッパ15、16は移動可能に設けられる。内歯歯車18の種類や大きさによって、第1・第2ストッパ15、16は、決められた穴112に差し込まれる。移動可能とすることで、内歯歯車18の種類を変えた場合であっても、第1・第2ストッパ15、16により第1スライダ13の移動量を規制することができる。
【0048】
なお、ダミー歯車73は、ダミー歯車専用の歯車を用いてもよいし、これから検査が行われる歯車、既に検査が行われ不合格であった歯車等任意のものを用いることができる。
内歯歯車支持部材20の詳細について次図で説明する。
【0049】
図3に示すように、内歯歯車支持部材20の上面114には、内歯歯車18の歯底107に対応した位置に数字115が記される。
歯車の表面の計測は、内歯歯車18の一歯ずつについて行う。記された数字115に沿って検査を行うことで、計測漏れを防止することができる。
【0050】
図4に示すように、検出コイル89は、絶縁性に富む楔形断面のナイロンなどの構造体88を介して検出コイル支持体84に支持されている。構造体88が楔形断面であるため、検出コイル89を内歯歯車18の歯底107に接近させることができる。
【0051】
渦電流で発生する磁界の変化で、内歯歯車18(歯車)の歯底107の硬さを検出する。内歯歯車18の歯底107は、内歯歯車18の表面の中で最も表面処理を施すことが困難な場所である。表面処理を施すのが困難なため、内歯歯車18の歯底107の硬さが所定の硬さよりも硬ければ、内歯歯車18全体として十分な強度を有するとみなすことができる。即ち、歯底107の硬さを計測することで、内歯歯車18が所定の強度を有するか検査することができる。歯底107の硬さを計測するだけであるため、短時間で計測作業を行うことができる。
【0052】
図5に示すように、鋼球85の球径は、隣合う歯先117と歯先117との間を通過するが、歯底107に到達する前に歯部118、118の面に接触する外径に設定されている。すなわち、接触点119、119に接触しているため、鋼球85の図左右方向及び上下方向の位置が規定される。併せて、鋼球85の中心は歯底107の中心に合致する。
この結果、歯底107からの検出コイル(図2、符号89)の距離や励磁コイル(図2、符号86)の距離を一定化することができる。この結果、測定の信頼性を高めることができる。
【0053】
ところで、図1で説明した換算装置41には、測定で得られたX電圧を浸炭深さに換算する換算表を記憶させる必要がある。そこで、図1の歯車の表面計測装置10を用いて、周波数を1kHzに設定し、真空浸炭済みの歯車の「X電圧」を測定した。この測定は非破壊検査に相当する。
次に、この歯車を切断し、切断面を磨いてから「浸炭深さ」を測定した。この測定は破壊検査に相当する。
【0054】
図6(a)に示すように、横軸が表面からの深さで、縦軸がビッカース硬さであるグラフに、生のデータをプロットしたものである。
【0055】
先ず、歯車の表面計測装置10を用いて、周波数を1kHzに設定し、真空浸炭済みの歯車の「X電圧」を測定したところ、X電圧は−67mVであった。次に、切断し、切断面を磨き、この切断面を測定対象として、表面から0.1mm毎に、1.0mmまで、マイクロビッカース硬さ計で、ビッカース硬さ(Hv)を測った。
【0056】
ところで、この種の歯車では、「表面から○○mmの深さで、ロックウエルCスケール硬さが50以上であること」と言った要求仕様が出されることが多い。ロックウエルCスケール硬さ50は、換算表によれば、ビッカース硬さ(Hv)513に相当する。
そこで、(a)にプロットした複数の点を滑らかな曲線で繋ぐ。
【0057】
結果、(b)に示すグラフが得られる。そこで、縦軸の513から横線を引き、曲線に交わったところから、縦線を降ろし、この縦線が横軸と交わったところの距離を読む。表面からの距離は0.64mmであった。
【0058】
図7に示すように、横軸が浸炭深さ(表面からの距離に相当。)で、縦軸がX電圧であるグラフに、1個のデータ(0.64mm、−67mV)を●でプロットした。
浸炭条件を変えて得られたサンプルを21個作製し、これらのサンプルについても図5(a)、(b)での手順を踏んで、浸炭深さとX電圧を定めた。21個のサンプルについては○で、グラフにプロットした。
【0059】
1個の●と21個の○は右下りの直線に沿って分散している。縦軸のX電圧が測定で得られれば、この相関図により、得られたX電圧に対応する浸炭深さを求めることができる。
また、詳細な計算法は省略するが、この分散における相関係数(r2)は0.92であった。
【0060】
以上の説明から明らかなように、本発明は次の点にも特徴がある。すなわち、図6(a)、(b)で説明したように、得られた硬さと深さは、測定で得られた硬さを、歯車の表面から中心に向かってプロットした点を結んでなる曲線から得る。点を結んで曲線を得るようにしたので、測定点の数を少なく設定することができ、測定時間が短縮でき、測定コストの低減を図ることができる。
【0061】
又、図6で求めた硬さという定量的データに基づいて、浸炭深さが決められる。すなわち、図6で説明したように、破壊検査による硬さデータと、非破壊検査によるX電圧との突き合わせが行われる。この後は、非破壊検査によりX電圧を求め、図7に基づいて、浸炭深さに換算する。非破壊検査であるにも拘わらず、破壊検査での裏付けがなされているので、非破壊検査で求めた浸炭深さの信頼性が飛躍的に高まる。
【0062】
次に、好適な周波数を特定することを目的に、700Hzから4kHzまで周波数を変えて、各周波数当たり22個のサンプルを準備し、図7と同様の相関図を作成し、相関係数を求めた。その結果を次図に示す。
図8に示すように、1kHzが最大で、2kHz以上では相関係数が小さくなった。一方、700〜1kHzでは、変化は小さい。
真空浸炭された歯車の歯底の浸炭深さを調べるには、周波数は700〜1kHzの範囲に設定することが望ましいことが分かった。
【0063】
図9(a)に示すように、静止状態にある検出コイル89へ、内歯歯車18を矢印(1)のように前進させる。(b)に示すように、検出コイル89に任意の歯底107を臨ませ、歯底107の浸炭深さを検出し、この浸炭深さの合否を判定させる。終わったら、矢印(2)のように内歯歯車18を後退させる。
【0064】
次に、(c)に示すように、内歯歯車18を1ピッチ(歯一枚分)だけ回す(矢印(3))。すると(d)に示すように、隣の歯底107が検出コイル89に臨む。以降、(a)に戻って作業を継続する。
内歯歯車18を1ピッチだけ確実に回すための機構について、詳細を次図で説明する。
【0065】
図10(a)に示すように、内歯歯車(図2符号内歯歯車18)を回すことで、ダミー歯車73も矢印(4)で示すように回る。(b)に示すように、さらにダミー歯車73が回ると、歯部122にロッド96が接触する。
【0066】
歯部122にロッド96が接触した状態でさらに回すには、矢印(5)で示すように、弾性部材99の力に抗してダミー歯車73を回す必要がある。即ち、ダミー歯車73の回転を抑える力に抗してダミー歯車73を回す必要がある。
【0067】
ダミー歯車73をさらに回すことで、(c)に示すようにロッド96がダミー歯車73の歯先123に達する。(d)に示すように歯先123を越えることで、ダミー歯車73の回転を抑える力が働かなくなる。
【0068】
ダミー歯車73の歯先123がクリック機構92を超えるときに最も抵抗が大きくなり、ダミー歯車73の歯先123を超えた瞬間にクリック機構92の抵抗が最も小さくなる。抵抗が変わるため、ダミー歯車73の歯先123を超える前後でダミー歯車73の回転する速さが変わり、ダミー歯車73の歯先123を超えたことを外部から視認しやすい。
【0069】
また、仮に、ダミー歯車73を手で回転させた場合は、抵抗が変わることで、ダミー歯車73の歯先123を超えた感触が手に伝わりやすい。
ダミー歯車73と内歯歯車とは同じ形状であり、同時に回転するから、ダミー歯車73がクリック機構92を乗り越えたことで、内歯歯車も一歯分移動されたことが分かる。
【0070】
歯車の表面の計測は、一歯ずつ行う。内部を視認するのが困難な内歯歯車の回転を、外部から確認することができる。一歯ずつ正確に計測を行うのに、有益である。
【0071】
ロッド96は、ロッド96の軸方向に向かって直線的に移動される。直線的に移動されることで、筒体93の穴94近傍に係る負荷を軽減することができ、クリック機構の長寿命化に資する。
このようなクリック機構92に加え、さらに次図で説明するような機構を設けることで、さらに確実に一歯ずつ回すことができる。
【0072】
図11(a)に示すように、測定が終わり第1スライダ(図2、符号第1スライダ13)を後退させることで、内歯歯車18の歯底107が球体108に接近する。
次に(b)に示すように、内歯歯車18を回転させる(矢印(6))と、内歯歯車18の歯部118が球体108に接触する。
【0073】
内歯歯車18が回転する力で、球体108は支点127を中心に回転し、接触端部128が被接触部129に接触する。さらに回転することで、(c)に示すように球体108は歯先117を超え、元の位置に戻る。同時に、接触端部128が被接触部129から離れる。
接触及び離間の情報を受け取った制御部104は、短音132のブザー105を鳴らす。
【0074】
(d)に示すように、一歯分を越えて内歯歯車18が回転した場合(この場合は二歯分)に、制御部104は長音133のブザー105を鳴らす。
【0075】
一歯分を超えて回されたときに、警報を発する過回転警報機構33が備えられている。一歯分を超えて回すと、警報が発せられる。警報が発せられることで、計測漏れを防ぐことができる。
【0076】
過回転警報機構33は、検出部103と、制御部104と、告知部(ブザー105)とからなる。共に汎用品である、検出部103、制御部104、告知部を用いることで、過回転警報機構33を廉価に製造することができる。
この仕組みについて詳細を次図で説明する。
【0077】
図12に示すように、ステップ(以下「ST」と記す。)10で、所定時間Tを決定する。所定時間Tは、例えば、歯車の表面を計測するのに最低限必要な時間である。
【0078】
次に、非接触部に接触端部が接触したかを確認し(ST11、図11参照)、接触した場合は、離間した後に制御部が短音のブザーを鳴らす(ST12)。
接触していない場合は、ST11に戻る。
【0079】
短音のブザーを鳴らした後、制御部はストップウォッチを作動させ、時間tの計測を開始する(ST13)。計測開始後に、制御部はtがTと同じか又は超えたか(t≧Tであるか)を確認する(ST14)。
t≧Tである場合は、制御部はストップウォッチをリセットし(ST15)、終了する。
【0080】
t<Tである場合は、非接触部に接触端部が接触したかを確認する(ST16)。
接触した場合は、制御部は長音のブザーを鳴らす(ST17)。Tが計測に最低限必要な時間であるとした場合、t<Tで2度目の接触を計測したことは、計測が終わる前に一歯分を超えて歯車が回転したことを表す。
【0081】
長音のブザーを鳴らした後は、ストップウォッチをリセット(ST18)し、終了する。
ST16で接触端部が非接触部に接触していない場合は、ST14に戻る。
【0082】
図13(a)に示すように、参考例に係る検出コイル135は、検出コイル135の中心136と、この検出コイル135を回転させる回転機構の水平軸137とが重ならない。
【0083】
用いられる歯車138が平歯歯車であれば、この歯車138の回転の中心である鉛直軸139と検出コイル135の中心136とは重なる。
【0084】
重なっていることで、(a)のb矢視図である(b)に示すように、検出コイル135を歯車138の歯底141に臨ませることができる。
【0085】
一方、(c)に示すように、歯車142がはすば歯車である場合、歯車142の歯の角度に合わせて、検出コイル135を傾ける。傾けることで、鉛直軸139に対して検出コイル135の中心136が外れる。
【0086】
中心136が鉛直軸139から外れた状態で、検出コイル135に歯車142を近づける。(c)のd矢視図である(d)に示すように、検出コイル135が歯車142の歯部143に接触し、歯底144に臨ませることができない。
【0087】
歯底144に臨ませるためには、(e)に示すように、水平軸137を左右方向(矢印(7))に移動させる必要がある。移動させ、中心136が鉛直軸139に重なることで、(e)のf矢視図である(f)に示すように、歯底144に検出コイル135を臨ませることができる。
【0088】
(a)〜(f)までの参考例で明らかなように、検出コイル135の中心136が水平軸137に重ならない場合、異なる種類の歯車に対応するためには、水平軸137を左右方向(幅方向)に移動させるための機構が必要である。
本発明の好適な実施例について(g)〜(j)で説明する。
【0089】
(g)に示すように、検出コイル146の中心147が回転の中心である水平軸148に重なる。この水平軸148は、歯車の回転の中心である鉛直軸149に重なる。平歯歯車である歯車138を用いた場合は、(g)のh矢視図である(h)に示すように、当然検出コイル146を歯車138の歯底141に臨ませることができる。
【0090】
加えて、(i)に示すように、はすば歯車である歯車142を用いる。検出コイル146の中心147を水平軸148が通る。水平軸148と重なることで、回転させた後も中心147が、鉛直軸149に重なった状態を保つことができる。
【0091】
このため、(i)のj矢視図である(j)に示すように、歯車142の歯底144に、検出コイル146を臨ませることができる。
【0092】
以上を、図2に戻り説明する。
検出コイル89の中心89cを通る水平軸27廻りに回転可能となるようにして、アーム25は第2スライダ(図1符号、24)に設けられると共に、検出コイル89の中心89cを通る水平軸27と、回転軸50の中心から延長された鉛直軸53とが交差される。
【0093】
検出コイル89の中心89cがアーム25の回転軸(水平軸27)に一致する。歯車にはすば歯車を用いた場合は、検出コイルを傾ける必要がある。検出コイル89は、アーム25を回転させることで傾けることができる。検出コイル89の中心89cがアーム25の回転軸に一致するため、第1スライダ13の移動方向を前後方向(長手方向)とした場合に、左右方向(幅方向)にアーム25の移動をする必要がない。左右方向へのアーム25の移動を不要とすることで、少ない部品点数で種類の異なる歯車に対応することができる。
【0094】
なお、少ない部品点数で種類の異なる歯車に対応することができることは、外歯歯車についても同様である。即ち、検出コイルの中心に水平軸を重ね、この水平軸が鉛直軸に交わることで、外歯歯車であっても、平歯歯車やはすば歯車に対応することができる。
【0095】
以上で説明した計測装置の使用方法について以下説明する。
図14に示すように、検査を行う場合は、まず、図2に示す第1スライダ13が後端位置にあるかを確認する(ST30)。
【0096】
後端位置にない場合は、図1に示すハンドル35を操作して、第1スライダ13を後退させる(ST31)。このとき、第1スライダ13が図2に示す第2ストッパ16に接触するまで後退させることで、素早く、正確に後端位置まで後退させることができる。
【0097】
第1スライダ13が後端位置にある状態で、歯車(内歯歯車18)を歯車支持部材(内歯歯車支持部材20)にセットする(ST32)。
歯車の歯数Nをインプットし(ST33)、計測回数nを1にする(ST34)。
【0098】
次に、図1に示すハンドル37を操作してセンサ機構26を下降させる(ST35)。センサ機構26を下降させる場合は、目盛り22を見ながら行うことで、正確な位置に素早くセンサ機構26を下降させることができる。
【0099】
図2を参照して、歯車を前進させ(ST36)、検出コイル89を歯底107に臨ませ、計測を開始する(ST37)。計測が終了したら、歯車を後退させる(ST38)。
【0100】
計測で得られたデータから、合否を判定する(ST39)。合格であれば、今までの計測回数nが、歯車の歯数Nと同じになったかを調べる(ST40)。
このとき、図3に示すように、内歯歯車支持部材20上面114の内歯歯車18の歯底107に対応した位置に数字115が記されていると、計測回数N及びnを素早く、確実に検出することができる。
【0101】
計測回数nが設定計測回数N以上となったところで、センサ機構26を上昇させる(ST42)(図1参照。)。センサ機構26を上昇させた後に、歯車を取り外し(ST43)、終了する。
【0102】
ST39に戻り、不合格であった場合は、以降その歯車については計測を行わない。即ち、センサ機構26を上昇し(ST44)、歯車を交換して(ST45)終了する。
【0103】
ST40に戻り、計測回数nが設定回数N未満の場合は、歯車を一歯分回転させ(ST46)、計測回数nに1を足し(ST47)、ST36に戻る。
図10及び図11で説明したとおり、クリック機構92及び過回転警報機構33を備えることで、一歯分ずつ確実に回転させることができる。
【0104】
なお、本計測装置を用いて外歯歯車の計測を行う場合も、手順は同じである。
外歯歯車を用いた場合の状態について図15及び図16で詳細に説明する。
【0105】
図15に示すように、歯車支持部材としての外歯歯車支持部材150を用いて外歯歯車151を支持し、計測する。
【0106】
外歯歯車支持部材150は、ピン62が嵌合される穴部152が備えられた基部153と、この基部153から立上げられ窓部154が備えられた柱状部155と、この柱状部155の上部で上面に外歯歯車151が配置される歯車支持板156と、この歯車支持板156の中央に立てられ外歯歯車151を支持する支持軸157とからなる。
【0107】
歯車支持部材は、内歯歯車を支持する内歯歯車支持部材(図2参照)と、外歯歯車151を支持する外歯歯車支持部材150とが準備され、任意の歯車支持部材を用いることができる。歯車支持部材を着脱自在にし、取り替えることで、様々な種類の歯車の計測を1台の計測装置で行うことができる。作業場の省スペース化を図ることができると共に、歯車の検査のためのコストを抑えることができる。
【0108】
過回転警報機構158を以下のように構成することもできる。即ち、検出部159に非接触式のセンサを用い、ランプ161、162を光らせることで警報を発する告知部163を用いた。
例えば、ランプは一歯超えたときに左のランプ161が光り、一歯を超えて回転したときに右のランプ162が光るようにすることができる。
【0109】
このままでは、外歯歯車151に用いることができないので、外歯歯車151の計測をする場合は、次図で説明するような過回転警報機構160やクリック機構157を用いる。
なお、この他、異なる色にランプを光らせるもの等、告知部は、音、光、その他作業者が過回転を認識することができる手段であれば、これらのものに限られない。
【0110】
図16に示すように、外歯歯車151の計測を行う場合は、ボルト131で支持部材134を取付け、この支持部材134でクリック機構157及び検出部164を支持する。
加えて、外歯歯車151の上面には、外歯歯車151の歯底に対応した位置に数字が記された数字板145が取付けられる。
クリック機構157、検出部164、数字板145は、未回転認識機構として、又、過回転認識機構として、単独でも効果があるので、単独設定又は複数設備のいずれでもよい。
【0111】
外歯歯車151の計測時は、第1スライダ13を大きく後退させる必要がある。第1スライダ13を後退させるために、第2ストッパ16を予め移動させておく。
【0112】
長穴124を開けられた第1スライダ13は、手で移動される。所定の場所に移動させたところで蝶ボルト125を固定穴126に嵌合させ、第1スライダ13を固定することができる。
【0113】
センサ機構26が昇降可能であることと、歯車支持部材(外歯歯車支持部材150)で支持される歯車(外歯歯車151)が歯車支持部材とともに水平方向に移動可能であるため、本発明の表面計測装置10で内歯歯車(図1、符号18)だけでなく外歯歯車151をも計測することができる。
【0114】
内歯歯車専用の計測装置と外歯歯車専用の計測装置を準備する場合に比べて、本発明によれば、計測装置は1台で済み、計測装置の調達コストを半減することができる。
【0115】
また、内歯歯車の計測の場合と同様、クリック機構134及び過回転防止機構160を有することで歯車の乗り越えに気づきやすく、数字板145に記された数字に沿って検査を行うことで、計測漏れを防止することができる。
【0116】
図17に示すように、本体部165と、この本体部165に差し込まれるゴム製の弾性部166とからなるクリック機構167を用いた。
このようなクリック機構167も、計測後の一歯回転を確実に把握できる。
【0117】
この他、弾性部に金属板やプラスチック製板を用いる等、クリック機構は任意の構成を採用することができる。即ち、本実施例に示したものに限られない。
【0118】
図18に示すように、アーム169に、センサ機構171、171が鉛直方向に複数(この例では2つ)設けられている。
歯車を段積みすることで一度に複数の歯車について計測を行うことができる。計測時間の短縮化に寄与し、有益である。
【0119】
図19に示すように、ストッパ機構173は、鉛直軸53を中心に雄ねじを切る方向が変えられたねじ状部材174と、このねじ状部材174を回転させるハンドル175と、ねじ状部材174を回転させることで互いに反対の方向に移動される支持台176、176と、これらの支持台176、176に支持される第1ストッパ177及び第2ストッパ178とからなる。
【0120】
ねじが逆に切られることで、第1ストッパ177が左に移動する場合は第2ストッパ178は右に移動する。また、第2ストッパ178が右に移動する場合は第1ストッパ177は左に移動する。
このようなストッパ機構173を用いた場合も、大きさの異なる複数種類の内歯歯車に対応することができる。
【0121】
外歯歯車の計測を行う場合は、第2ストッパ178を支持台176から外す。支持台176の上面は、第1スライダ(図1、符号13)の下端よりも低くされる。
なお、鉛直軸53に内歯歯車の回転軸を一致させるため、内歯歯車支持部材は、内歯歯車の外径毎に、複数種類のものを用いることが望ましい。
【0122】
尚、本発明に係る歯車は、真空浸炭処理のなされた歯車を例に説明したが、この他の処理がなされたもの等であっても用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の歯車の表面計測装置は、真空浸炭された内歯歯車の計測に好適である。
【符号の説明】
【0124】
10…歯車の表面計測装置、12…ベース、13…第1スライダ、15、177…第1ストッパ(ストッパ)、16、178…第2ストッパ(ストッパ)、17…第1スライダ移動機構、18…内歯歯車(歯車)、20…内歯歯車支持部材(歯車支持部材)、22…目盛り、23…支柱、24…第2スライダ、25、169…アーム、26、171…センサ機構、27…水平軸、31…第2スライダ昇降機構、32…表示記録機構、33、158…過回転警報機構、50…回転軸、53…鉛直軸、73…ダミー歯車、83…鉄芯、86…励磁コイル、89…検出コイル、89c…(検出コイルの)中心、92、167…クリック機構、93…筒体、94…穴、95…蓋体、96…ロッド、97…(ダミー歯車の)歯底、99…弾性部材、103、159…検出部、104…制御部、105…ブザー(告知部)、107…(内歯歯車の)歯底、114…上面、115…数字、150…外歯歯車支持部材(歯車支持部材)、151…外歯歯車(歯車)、163…告知部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、このベースに水平移動可能に取り付けられる第1スライダと、この第1スライダに鉛直軸廻りに回転可能に設けられる回転軸と、この回転軸の上端に着脱自在に設けられ歯車を支える歯車支持部材と、前記ベースに設けられ第1スライダを移動させる第1スライダ移動機構と、前記ベースから上へ延びる支柱と、この支柱に昇降可能に設けられる第2スライダと、この第2スライダに設けられるアームと、前記支柱に設けられ前記アームを昇降させる第2スライダ昇降機構と、前記アームの先端に設けられ前記歯車の表面の硬度を検出するセンサ機構と、このセンサ機構に繋がれ前記センサ機構で検出された情報を表示し記録する表示記録機構とからなることを特徴とする歯車の表面計測装置。
【請求項2】
前記センサ機構は、前記アームの先端に固定される略コの字形状の鉄芯と、このコの字形状の鉄芯の先端にそれぞれ設けられ前記歯車を励磁する励磁コイルと、これらの励磁コイルの間に前記鉄芯から前記歯車の歯底に向かって延ばされ先端が楔形断面形状を呈する検出コイル支持体と、この検出コイル支持体の先端で支持され渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルとからなることを特徴とする請求項1記載の歯車の表面計測装置。
【請求項3】
前記検出コイルの中心を通る水平軸廻りに回転可能となるようにして、前記アームは前記第2スライダに設けられると共に、前記検出コイルの中心を通る水平軸と、前記回転軸から延ばされる鉛直軸とが交差されることを特徴とする請求項2記載の歯車の表面計測装置。
【請求項4】
前記支柱に前記第2スライダの高さを示す目盛りが設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の歯車の表面計測装置。
【請求項5】
前記ベース部の上面に、前記第1スライダの水平方向への移動を規制するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の歯車の表面計測装置。
【請求項6】
前記センサ機構は、複数個が前記アームに鉛直方向に並べられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の歯車の表面計測装置。
【請求項1】
ベースと、このベースに水平移動可能に取り付けられる第1スライダと、この第1スライダに鉛直軸廻りに回転可能に設けられる回転軸と、この回転軸の上端に着脱自在に設けられ歯車を支える歯車支持部材と、前記ベースに設けられ第1スライダを移動させる第1スライダ移動機構と、前記ベースから上へ延びる支柱と、この支柱に昇降可能に設けられる第2スライダと、この第2スライダに設けられるアームと、前記支柱に設けられ前記アームを昇降させる第2スライダ昇降機構と、前記アームの先端に設けられ前記歯車の表面の硬度を検出するセンサ機構と、このセンサ機構に繋がれ前記センサ機構で検出された情報を表示し記録する表示記録機構とからなることを特徴とする歯車の表面計測装置。
【請求項2】
前記センサ機構は、前記アームの先端に固定される略コの字形状の鉄芯と、このコの字形状の鉄芯の先端にそれぞれ設けられ前記歯車を励磁する励磁コイルと、これらの励磁コイルの間に前記鉄芯から前記歯車の歯底に向かって延ばされ先端が楔形断面形状を呈する検出コイル支持体と、この検出コイル支持体の先端で支持され渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルとからなることを特徴とする請求項1記載の歯車の表面計測装置。
【請求項3】
前記検出コイルの中心を通る水平軸廻りに回転可能となるようにして、前記アームは前記第2スライダに設けられると共に、前記検出コイルの中心を通る水平軸と、前記回転軸から延ばされる鉛直軸とが交差されることを特徴とする請求項2記載の歯車の表面計測装置。
【請求項4】
前記支柱に前記第2スライダの高さを示す目盛りが設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の歯車の表面計測装置。
【請求項5】
前記ベース部の上面に、前記第1スライダの水平方向への移動を規制するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の歯車の表面計測装置。
【請求項6】
前記センサ機構は、複数個が前記アームに鉛直方向に並べられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の歯車の表面計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−196949(P2011−196949A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66926(P2010−66926)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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