歯車の製作方法
【課題】歯車の歩留まりを高めつつも、歯車を低コストに製作する。
【解決手段】本発明に係る歯車の製作方法は、円盤状のベース部材2と、ベース部材2と別体に形成され、ベース部材2の外周に固定された複数の歯部材とを具備する歯車を製作する方法であって、ベース部材2の端面11,12の外周領域に設けた複数の軸方向穴5に素材10を挿入し、ベース部材2の端面11,12から軸方向に突出した素材10の一部を押し潰すことで、ベース部材2を素材10で挟持すると共に、隣接する素材10同士を円周方向で当接させ、素材10の外径側に膨出した部分17に歯面を成形することで歯部材を形成する。
【解決手段】本発明に係る歯車の製作方法は、円盤状のベース部材2と、ベース部材2と別体に形成され、ベース部材2の外周に固定された複数の歯部材とを具備する歯車を製作する方法であって、ベース部材2の端面11,12の外周領域に設けた複数の軸方向穴5に素材10を挿入し、ベース部材2の端面11,12から軸方向に突出した素材10の一部を押し潰すことで、ベース部材2を素材10で挟持すると共に、隣接する素材10同士を円周方向で当接させ、素材10の外径側に膨出した部分17に歯面を成形することで歯部材を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車をはじめとして種々の動力伝達装置に組み込まれて使用される歯車には多種多様のものが用いられている。また、これら歯車は上述のように様々な用途で用いられるために、要求される特性や仕様も用途に応じて異なる。そのため、歯車の製造方法についても様々なものが提案され、実施されているのが現状である。
【0003】
ここで、例えば下記特許文献1には、外周に複数の歯を備えたドライブプレートの製造方法として、ドライブプレート本体と、歯を有するリングギヤとを別体に形成した後、リングギヤを溶接によりドライブプレート本体に接合することで一体化を図る方法が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、軽量化と歯面の高強度化との両立を目的として、円盤状の平板に絞り加工を施して、平板の外周端部に周壁を形成した後、この周壁を歯形状に対応した金型内で鍛造成形することで、周壁の外周部に複数の歯を形成する板金製歯車の製造方法が記載されている。また、鍛造成形の際、周壁の内周と外周にそれぞれ配置される金型(上パンチ、ダイ)の歯形部の位置を円周方向にずらした状態で周壁を先端から押し潰すことで、周壁を座屈させて周壁に歯を成形すると共に、歯の円周方向一方の歯面を形成する壁部の厚み寸法を、円周方向他方の歯面を形成する壁部の厚み寸法より大きくなるようにした(部分的に増肉を図るようにした)方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−240801号公報
【特許文献2】特開平9−222158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法だと、2つの部品を溶接で組み付けるために、製作コストが高く付く。また、固定手段に溶接を採用した場合、固定強度は確保できるものの、加工精度の面から歩留まりが悪い、との問題があった。一方、上記特許文献2に記載の増肉加工は、プレス成形により素材を座屈させて肉の移動(塑性流動)を図るものであるから、加工できる形状に制限があり、また金型だけでなく素材にも高い寸法精度が要求されるために、加工自体が難しく、この場合も歩留まりの面、あるいは製作コストの面で問題があった。
【0007】
以上の事情に鑑み、本明細書では、歯車の歩留まりを高めつつも、歯車を低コストに製作することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係る歯車の製作方法により達成される。すなわち、この製作方法は、円盤状のベース部材と、ベース部材と別体に形成され、ベース部材の外周に固定された複数の歯部材とを具備する歯車を製作する方法であって、ベース部材の端面の外周領域に設けた複数の軸方向穴に素材を挿入し、ベース部材の端面から軸方向に突出した素材の一部を押し潰すことで、ベース部材を素材で挟持すると共に、隣接する素材同士を円周方向で当接させ、素材の外径側に膨出した部分に歯面を成形することで歯部材を形成する点をもって特徴付けられる。
【0009】
このように、本発明では、歯面を有する歯部材の成形に際して、最終的に歯部材に成形される素材をベース部材の端面の外周領域に設けた軸方向穴にそれぞれ挿入し、挿入した素材のうちベース部材の端面から軸方向に突出した一部を押し潰すことで、ベース部材を素材の押し潰した部分で挟持すると共に、隣接する素材同士を円周方向で当接させるようにした。これにより、各歯部材とベース部材との間で強固な結合状態を得ることができ、かつ隣接する歯部材間でも高い固定力を得ることができる。そのため、従来のように、それぞれ別体に形成した歯車のベース部材と歯部材とを溶接で固定する必要はなく、歯車の素材を押し潰すだけの簡便な手法で歯部材をベース部材に固定できるので、歩留まりの向上と共に、製作コストの低減化を図ることが可能となる。また、押し潰した素材のうちベース部材の外径側に膨出した部分に歯面を成形するようにしたので、例えばプレス成形等の簡便な手法を利用して歯部材を成形することができる。また、素材は、ベース部材の軸方向穴に挿入可能な形状であればよく、例えば円柱状等の単純な形状とすることができるため、容易に高精度な加工を行うことができる。従って、複数の歯部材の重量バランスを均等にすることができ、歯車の回転安定性を高めることができる。たとえ、素材の寸法精度に多少のばらつきが生じた場合でも、押し潰した素材のうちベース部材の内径側に膨出した部分は他の方向に膨出した部分と比べてそれほど高い精度は要求されない。そのため、内径側に膨出した部分に素材の寸法のばらつきを吸収する役割を持たせることができ、その分外径側に膨出した部分(歯面となる部分)を精度良く成形することができる。以上より、歯部材(歯面)を精度よく成形できつつも歩留まりを高めることができ、かつ製作コストの低減化を図ることが可能となる。
【0010】
また、ベース部材に、軸方向穴とつながりベース部材の外周面に開口する切欠き部を設けるようにしてもよい。軸方向穴に挿入された素材の押し潰しにより素材は主にベース部材の半径方向、特に外周側に向けて塑性流動を生じる。よって、この際、ベース部材に、素材の挿入穴(軸方向穴)とつながりベース部材の外周面に開口する切欠き部を設けておくことで、素材の塑性流動が切欠き部を埋める方向にも進展する。これにより、ベース部材の外周面よりも外径側の領域に素材の肉を行き届かせることができ、歯面を含む歯部材の外周をより高精度に成形することができる。あるいは、素材の押し潰し量を減らしつつも歯部材を精度良く成形することができるので、割れなどの不具合の発生を確実に回避して歩留まりの一層の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係る歯車の製作方法によれば、歯車の歩留まりを高めつつも歯車を低コストに製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る歯車の正面図である。
【図2】図1に示す歯車の要部断面図である。
【図3】図1に示す歯車を構成するベース部材の平面図である。
【図4】図1に示す歯車を構成する歯部材の素材の斜視図である。
【図5】図1に係る歯車の製作方法の一例を示すもので、(a)はベース部材に設けた軸方向穴に歯車の素材を挿入する様子を示す要部斜視図、(b)は軸方向穴に挿入した素材を軸方向に押し潰す様子を示す要部斜視図、(c)は押し潰した後の素材の形態を示す要部斜視図、(d)は素材のうち外径側に膨出した部分に歯面を成形した後の形態を示す要部斜視図である。
【図6】ベース部材の軸方向穴に挿入した素材を押し潰す工程に使用される金型の一例を示す断面図である。
【図7】素材を押し潰した際の変形態様を説明するための要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るベース部材の要部正面図である。
【図9】図8に示すベース部材を用いて素材を押し潰した際の変形態様を説明するための要部断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るベース部材の要部正面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る歯車の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る歯車の製作方法の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明における軸方向は、歯車の軸方向を意味する。また、上下方向は軸方向に沿った向きを意味するものであって、以下の説明における内容の理解を容易にするために便宜的に設定したものに過ぎない。よって、実際の製作態様、使用態様を特定するものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る歯車1の正面図を示している。同図に示すように、この歯車1は、円盤状をなすベース部材2と、ベース部材2と別体に形成され、ベース部材2の外周に固定された複数の歯部材3とを具備する。各歯部材3の外周には歯面4がそれぞれ形成されており、隣接する歯部材3同士は円周方向で当接した状態にある。また、歯部材3の一部は、図2に示すように、ベース部材2の端面11,12の外周領域に設けた軸方向穴5に挿通され、この挿通された部分(挿通部6)の周辺部分でベース部材2を挟持している。ベース部材2及び歯部材3は、例えば双方を金属で形成することができる。この他、ベース部材2及び歯部材3の一方を金属、他方を樹脂で形成したり、双方を樹脂で形成したりすることもできる。
【0015】
この実施形態では、図1に示すように、1個の歯部材3につき1つの歯先7が形成されている。また、歯底8を円周方向に分割する位置に、隣接する歯部材3間の境界面9が形成されている。歯部材3の特に歯面4を設けた部分の厚み寸法(軸方向寸法)は、ベース部材2の厚み寸法に比べて大きい。
【0016】
このように、図1に示す歯車1は、円盤状のベース部材2と、歯面4を有する歯部材3とを別体に形成したので、歯部材3の厚み寸法をベース部材2の厚み寸法よりも容易に大きくすることができる。また、歯部材3の一部でベース部材2を挟持すると共に、隣接する歯部材3同士が円周方向で当接するようにしたので、歯面4を有する歯部材3の固定強度を高めることができる。以上より、歯部材3に設けた歯面4及びその近傍領域の高強度化を図りつつも、それほど強度が必要ないベース部材2の厚み寸法を比較的小さくすることで、歯車1全体の軽量化を図りつつも強度が必要な部分の高強度化を図ることができる。
【0017】
以下、上述した歯車1の製作方法の一例を図3〜図7に基づき説明する。
【0018】
本実施形態に係る歯車1の製作方法は、ベース部材2の端面11,12の外周領域に設けた複数の軸方向穴5に歯部材3の素材10を挿入して位置決めを図る位置決め工程と、ベース部材2に対して位置決めした状態の素材10を軸方向に押し潰すことで、ベース部材2を素材10で挟持すると共に、隣接する素材10同士を円周方向で当接させる押し潰し工程と、押し潰しにより素材10の外径側に膨出した部分に歯面4を成形することで歯部材を形成する歯部材形成工程とを具備する。
【0019】
まず、図3に示すように、円板状をなし、端面11,12の外周領域に複数の軸方向穴5を形成したベース部材2を用意する。このような形状のベース部材2は例えばプレス加工の一種である打ち抜き加工により形成することができる。そして、上述のようにして形成されたベース部材2の軸方向穴5に、例えば図4に示すように、外径一定の円柱状をなす歯部材3の素材10を挿入して(図5(a)を参照)、ベース部材2に対する素材10の位置決めを行う(位置決め工程)。なお、ここでいう位置決めとは、各素材10が歯部材3の軸方向穴5にセットされる程度の意味であり、挿入後に素材10の軸方向の移動が制限される程度の厳しいすき間嵌合を意図したものではない。むしろ、複数の素材10をなるべく短時間で軸方向穴5に挿入することを考えると、嵌合すき間を比較的大きくとってもよい。この場合の素材10の挿入手段の一例として、例えばベース部材2上に複数の素材10を投入し、ベース部材2外への移動を規制(例えば囲いを設ける等して)した状態で、ベース部材2を揺動することで、篩にかけるかの如く、各素材10を軸方向穴5に挿入する手段が挙げられる。また、素材10には、リベットなど棒状の金属製素材が使用でき、焼入れ等の熱処理を施すことを考慮すると、S35Cなどの炭素鋼が好適である。
【0020】
このようにして、ベース部材2に対する素材10の位置決めを行った状態で、図5(b)に示すように、素材10のうちベース部材2の両端面11,12からそれぞれ軸方向に突出した部分を押し潰す(押し潰し工程)。図6は、この押し潰し動作を行うための装置の断面図を示す。この押し潰し装置13は、型締め可能な上型14及び下型15と、下型15に弾性支持され、金型(上型14、下型15)内に供給されたベース部材2を載置する載置台16とを有する。上型14及び下型15には、型締め動作に伴い素材10の軸方向両側を押し潰すと共に、押し潰した部分を所定の形状に成形するための成形面がそれぞれ設けられている。
【0021】
上記構成の押し潰し装置13において、図6に示すように、上下の金型14,15内に、複数の素材10を所定位置(軸方向穴5)に挿入した状態のベース部材2を供給する。この時点では、素材10は下型15に当接している。そしてこの状態から、上型14を降下させ、上型14でベース部材2を下方に押込むと共に、素材10のベース部材2の上端面11から軸方向に突出した部分を下方に押込む。これにより、既に下型15に当接してる素材10は上型14と下型15とで上下両方向から軸方向に押圧され、押し潰される。また、ベース部材2の押込みに伴い、ベース部材2を載置する載置台16も弾性支持力に抗して下方に押し込まれる。これにより、ベース部材2を支持しつつ、素材10の軸方向両側を押し潰すことが可能となる。
【0022】
図7は、図6に示す押し潰し装置13を用いて上型14を所定の軸方向位置(図6中、二点鎖線で示す位置)まで押下げた場合の、素材10の変形後の形態を示す断面図を示している。同図に示すように、この実施形態では、押し潰し後の素材10の軸方向中央位置がベース部材2の軸方向中央位置と一致するように、上下同量ずつ押し潰されている。そして、上下の押し潰された部分でベース部材2の軸方向穴5周辺を挟持すると共に、互いに隣接する素材10の円周方向に膨出した部分同士でもって、隣接する素材10同士が円周方向に当接する(図5(c)を参照)。このようにして素材10がベース部材2に固定されると共に、円周方向に隣接する素材10同士が連結した状態となる。
【0023】
上述のようにして、素材10をベース部材2よりも外径側に膨出させた後、当該膨出させた部分(外径側膨出部17)の外周面に歯面4を成形する。この成形工程は、例えば図示は省略するが、下型で素材10とベース部材2との一体品を支持した状態で、外周に歯面4形状にならった成形面を設けた上型を素材10の外径側膨出部17に軸方向に押し込むことで行うことができる。これにより、図5(d)に示すように、歯面4を外周に形成した歯部材3が形成される(歯部材形成工程)。
【0024】
そして、この後、必要に応じて、焼入れ等の熱処理、洗浄処理を施すことで、図1に示す歯車1が完成する。
【0025】
このように、本発明では、複数の歯部材3の素材10をベース部材2の端面11,12の外周領域に設けた軸方向穴5にそれぞれ挿入し、挿入した素材10のうちベース部材2の両端面11,12から軸方向に突出した一部を押し潰すこととし、素材10の押し潰した部分でもってベース部材2を挟持すると共に、隣接する素材10同士を円周方向で当接させることで、歯部材3をベース部材2に固定し、かつ歯部材3同士を連結固定するようにした。このように、歯部材3の素材10を押し潰すだけの簡便な手法で歯部材3をベース部材2に固定できるので、歩留まりも良好であり、かつ低コストで製作することができる。また、素材10の外径側膨出部17に歯面4を成形するようにしたので、図6に示す如く簡便な構造の装置(プレス装置)で歯部材3を形成することができる。また、図7に示すように、押し潰した素材10のうちベース部材2の内径側に膨出した部分(内径側膨出部18)については、特に成形精度を要しない部分であり、かつ、他の箇所に比べて多少の寸法のばらつきが許される。そのため、素材10の寸法に多少のばらつきがあったとしても、当該ばらつきを内径側膨出部18で吸収して、歯部材3の厚み寸法や歯面4の形状精度など、他の箇所の精度を容易に確保することができる。以上より、歯部材3を精度よく成形できつつも歩留まりを高めることができ、かつ製作コストの低減化を図ることが可能となる。
【0026】
また、本実施形態では、断面真円状を成す円柱状の素材10(図4を参照)を使用するようにしたので、比較的小さい荷重で素材10を周囲に均等に押し広げ易い。また、円柱状をなす素材10であれば、どのような向きに軸方向穴5に挿入されたとしても、変形態様は均一である。よって、各歯部材3をばらつきのない均一な形状に成形することができる。加えて、本実施形態では、ベース部材2の軸方向中央位置に対して上下対称となるように(図7を参照)素材10の押し潰し変形を図るようにしたので、歯面4を含む歯部材3の強度も高い。
【0027】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る歯車の製作方法は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
【0028】
例えばベース部材2に設けられる軸方向穴5に関し、図8に示すように、この軸方向穴5とつながりベース部材2の外周面に開口する切欠き部19を設けるようにしてもよい。このように、軸方向穴5と切欠き部19とを設けたベース部材2を用いて歯部材3を成形するようにした場合、素材10の押し潰しにより、切欠き部19を介して素材10の肉が外径側に膨出する向きに変形する。これにより、ベース部材2の外周面よりも外径側の領域に素材10の肉を行き届かせ易くすることができ、歯面4を含む歯部材3の外周を精度よく成形することができる。また、図7に示すように、歯面4が成形される外径側膨出部17に水平方向に延びる境界面20が発生することはなく、図9に示すように、上下方向に連続した外径側膨出部17を得ることができるので、この点においても歯面4を精度良く成形することができる。
【0029】
また、軸方向穴5の形状についても特に限定されることはなく、例えば図10に示すような六角形状や四角形状などの多角形状とすることも可能である。真円形状以外にすることで、軸方向穴5に挿入された歯部材3に回り止めとしての抵抗力を付与することができる。
【0030】
また、上記実施形態では、1個の歯部材3につき1つの歯先7が設けられる場合を例示したが、もちろん、複数個の歯先7を1個の歯部材3に成形することも可能である。図11はその一例を示すもので、同図に示す歯部材3は、2つの歯先7を有する。この場合、歯部材3の円周方向寸法が半径方向寸法に比べて大きくなり易いため、押し潰し時の変形性を考慮して、例えば円周方向に延びる長穴形状の軸方向穴5をベース部材2に設けると共に、この軸方向穴5と嵌り合う断面長穴形状の素材(図示は省略)を挿入することも可能である。
【0031】
また、上記実施形態では、ベース部材2の軸方向中央位置に対して軸方向対称となるように素材10を押し潰した場合を説明したが(図7を参照)、もちろん軸方向非対称となるように素材10を押し潰して歯部材3を成形してもよい。あるいは、図示は省略するが、ベース部材2の軸方向一方側にのみ素材10を突出させて、この一方のみの突出部分を押し潰すことで外径側膨出部17及び歯面4を成形するようにしてもよい。この場合、押し潰し後の素材10がベース部材2を軸方向に挟持するように、これも図示は省略するが、軸方向穴5の軸方向一端をテーパ状に拡径させ、この拡径部分に嵌り合うテーパ状の大径部を軸方向一端に設けた素材10を挿入するようにしてもよい。この場合、素材10の軸方向一端に設けたテーパ状の大径部が軸方向穴5のテーパ状拡径部に嵌り合い、ベース部材2から突出した素材10の軸方向他端側のみが押し潰される。よって、素材10の押し潰された部分とテーパ状の大径部とでベース部材2を挟持することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 歯車
2 ベース部材
3 歯部材
4 歯面
5 軸方向穴
6 挿通部
7 歯先
8 歯底
9 境界面(歯部材間)
10 素材
11,12 端面(ベース部材)
13 押し潰し装置
14,15 金型
16 載置台
17 外径側膨出部
18 内径側膨出部
19 切欠き部
20 境界面(外径側膨出部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や自動二輪車をはじめとして種々の動力伝達装置に組み込まれて使用される歯車には多種多様のものが用いられている。また、これら歯車は上述のように様々な用途で用いられるために、要求される特性や仕様も用途に応じて異なる。そのため、歯車の製造方法についても様々なものが提案され、実施されているのが現状である。
【0003】
ここで、例えば下記特許文献1には、外周に複数の歯を備えたドライブプレートの製造方法として、ドライブプレート本体と、歯を有するリングギヤとを別体に形成した後、リングギヤを溶接によりドライブプレート本体に接合することで一体化を図る方法が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、軽量化と歯面の高強度化との両立を目的として、円盤状の平板に絞り加工を施して、平板の外周端部に周壁を形成した後、この周壁を歯形状に対応した金型内で鍛造成形することで、周壁の外周部に複数の歯を形成する板金製歯車の製造方法が記載されている。また、鍛造成形の際、周壁の内周と外周にそれぞれ配置される金型(上パンチ、ダイ)の歯形部の位置を円周方向にずらした状態で周壁を先端から押し潰すことで、周壁を座屈させて周壁に歯を成形すると共に、歯の円周方向一方の歯面を形成する壁部の厚み寸法を、円周方向他方の歯面を形成する壁部の厚み寸法より大きくなるようにした(部分的に増肉を図るようにした)方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−240801号公報
【特許文献2】特開平9−222158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法だと、2つの部品を溶接で組み付けるために、製作コストが高く付く。また、固定手段に溶接を採用した場合、固定強度は確保できるものの、加工精度の面から歩留まりが悪い、との問題があった。一方、上記特許文献2に記載の増肉加工は、プレス成形により素材を座屈させて肉の移動(塑性流動)を図るものであるから、加工できる形状に制限があり、また金型だけでなく素材にも高い寸法精度が要求されるために、加工自体が難しく、この場合も歩留まりの面、あるいは製作コストの面で問題があった。
【0007】
以上の事情に鑑み、本明細書では、歯車の歩留まりを高めつつも、歯車を低コストに製作することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決は、本発明に係る歯車の製作方法により達成される。すなわち、この製作方法は、円盤状のベース部材と、ベース部材と別体に形成され、ベース部材の外周に固定された複数の歯部材とを具備する歯車を製作する方法であって、ベース部材の端面の外周領域に設けた複数の軸方向穴に素材を挿入し、ベース部材の端面から軸方向に突出した素材の一部を押し潰すことで、ベース部材を素材で挟持すると共に、隣接する素材同士を円周方向で当接させ、素材の外径側に膨出した部分に歯面を成形することで歯部材を形成する点をもって特徴付けられる。
【0009】
このように、本発明では、歯面を有する歯部材の成形に際して、最終的に歯部材に成形される素材をベース部材の端面の外周領域に設けた軸方向穴にそれぞれ挿入し、挿入した素材のうちベース部材の端面から軸方向に突出した一部を押し潰すことで、ベース部材を素材の押し潰した部分で挟持すると共に、隣接する素材同士を円周方向で当接させるようにした。これにより、各歯部材とベース部材との間で強固な結合状態を得ることができ、かつ隣接する歯部材間でも高い固定力を得ることができる。そのため、従来のように、それぞれ別体に形成した歯車のベース部材と歯部材とを溶接で固定する必要はなく、歯車の素材を押し潰すだけの簡便な手法で歯部材をベース部材に固定できるので、歩留まりの向上と共に、製作コストの低減化を図ることが可能となる。また、押し潰した素材のうちベース部材の外径側に膨出した部分に歯面を成形するようにしたので、例えばプレス成形等の簡便な手法を利用して歯部材を成形することができる。また、素材は、ベース部材の軸方向穴に挿入可能な形状であればよく、例えば円柱状等の単純な形状とすることができるため、容易に高精度な加工を行うことができる。従って、複数の歯部材の重量バランスを均等にすることができ、歯車の回転安定性を高めることができる。たとえ、素材の寸法精度に多少のばらつきが生じた場合でも、押し潰した素材のうちベース部材の内径側に膨出した部分は他の方向に膨出した部分と比べてそれほど高い精度は要求されない。そのため、内径側に膨出した部分に素材の寸法のばらつきを吸収する役割を持たせることができ、その分外径側に膨出した部分(歯面となる部分)を精度良く成形することができる。以上より、歯部材(歯面)を精度よく成形できつつも歩留まりを高めることができ、かつ製作コストの低減化を図ることが可能となる。
【0010】
また、ベース部材に、軸方向穴とつながりベース部材の外周面に開口する切欠き部を設けるようにしてもよい。軸方向穴に挿入された素材の押し潰しにより素材は主にベース部材の半径方向、特に外周側に向けて塑性流動を生じる。よって、この際、ベース部材に、素材の挿入穴(軸方向穴)とつながりベース部材の外周面に開口する切欠き部を設けておくことで、素材の塑性流動が切欠き部を埋める方向にも進展する。これにより、ベース部材の外周面よりも外径側の領域に素材の肉を行き届かせることができ、歯面を含む歯部材の外周をより高精度に成形することができる。あるいは、素材の押し潰し量を減らしつつも歯部材を精度良く成形することができるので、割れなどの不具合の発生を確実に回避して歩留まりの一層の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係る歯車の製作方法によれば、歯車の歩留まりを高めつつも歯車を低コストに製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る歯車の正面図である。
【図2】図1に示す歯車の要部断面図である。
【図3】図1に示す歯車を構成するベース部材の平面図である。
【図4】図1に示す歯車を構成する歯部材の素材の斜視図である。
【図5】図1に係る歯車の製作方法の一例を示すもので、(a)はベース部材に設けた軸方向穴に歯車の素材を挿入する様子を示す要部斜視図、(b)は軸方向穴に挿入した素材を軸方向に押し潰す様子を示す要部斜視図、(c)は押し潰した後の素材の形態を示す要部斜視図、(d)は素材のうち外径側に膨出した部分に歯面を成形した後の形態を示す要部斜視図である。
【図6】ベース部材の軸方向穴に挿入した素材を押し潰す工程に使用される金型の一例を示す断面図である。
【図7】素材を押し潰した際の変形態様を説明するための要部断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るベース部材の要部正面図である。
【図9】図8に示すベース部材を用いて素材を押し潰した際の変形態様を説明するための要部断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るベース部材の要部正面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る歯車の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る歯車の製作方法の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、以下の説明における軸方向は、歯車の軸方向を意味する。また、上下方向は軸方向に沿った向きを意味するものであって、以下の説明における内容の理解を容易にするために便宜的に設定したものに過ぎない。よって、実際の製作態様、使用態様を特定するものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る歯車1の正面図を示している。同図に示すように、この歯車1は、円盤状をなすベース部材2と、ベース部材2と別体に形成され、ベース部材2の外周に固定された複数の歯部材3とを具備する。各歯部材3の外周には歯面4がそれぞれ形成されており、隣接する歯部材3同士は円周方向で当接した状態にある。また、歯部材3の一部は、図2に示すように、ベース部材2の端面11,12の外周領域に設けた軸方向穴5に挿通され、この挿通された部分(挿通部6)の周辺部分でベース部材2を挟持している。ベース部材2及び歯部材3は、例えば双方を金属で形成することができる。この他、ベース部材2及び歯部材3の一方を金属、他方を樹脂で形成したり、双方を樹脂で形成したりすることもできる。
【0015】
この実施形態では、図1に示すように、1個の歯部材3につき1つの歯先7が形成されている。また、歯底8を円周方向に分割する位置に、隣接する歯部材3間の境界面9が形成されている。歯部材3の特に歯面4を設けた部分の厚み寸法(軸方向寸法)は、ベース部材2の厚み寸法に比べて大きい。
【0016】
このように、図1に示す歯車1は、円盤状のベース部材2と、歯面4を有する歯部材3とを別体に形成したので、歯部材3の厚み寸法をベース部材2の厚み寸法よりも容易に大きくすることができる。また、歯部材3の一部でベース部材2を挟持すると共に、隣接する歯部材3同士が円周方向で当接するようにしたので、歯面4を有する歯部材3の固定強度を高めることができる。以上より、歯部材3に設けた歯面4及びその近傍領域の高強度化を図りつつも、それほど強度が必要ないベース部材2の厚み寸法を比較的小さくすることで、歯車1全体の軽量化を図りつつも強度が必要な部分の高強度化を図ることができる。
【0017】
以下、上述した歯車1の製作方法の一例を図3〜図7に基づき説明する。
【0018】
本実施形態に係る歯車1の製作方法は、ベース部材2の端面11,12の外周領域に設けた複数の軸方向穴5に歯部材3の素材10を挿入して位置決めを図る位置決め工程と、ベース部材2に対して位置決めした状態の素材10を軸方向に押し潰すことで、ベース部材2を素材10で挟持すると共に、隣接する素材10同士を円周方向で当接させる押し潰し工程と、押し潰しにより素材10の外径側に膨出した部分に歯面4を成形することで歯部材を形成する歯部材形成工程とを具備する。
【0019】
まず、図3に示すように、円板状をなし、端面11,12の外周領域に複数の軸方向穴5を形成したベース部材2を用意する。このような形状のベース部材2は例えばプレス加工の一種である打ち抜き加工により形成することができる。そして、上述のようにして形成されたベース部材2の軸方向穴5に、例えば図4に示すように、外径一定の円柱状をなす歯部材3の素材10を挿入して(図5(a)を参照)、ベース部材2に対する素材10の位置決めを行う(位置決め工程)。なお、ここでいう位置決めとは、各素材10が歯部材3の軸方向穴5にセットされる程度の意味であり、挿入後に素材10の軸方向の移動が制限される程度の厳しいすき間嵌合を意図したものではない。むしろ、複数の素材10をなるべく短時間で軸方向穴5に挿入することを考えると、嵌合すき間を比較的大きくとってもよい。この場合の素材10の挿入手段の一例として、例えばベース部材2上に複数の素材10を投入し、ベース部材2外への移動を規制(例えば囲いを設ける等して)した状態で、ベース部材2を揺動することで、篩にかけるかの如く、各素材10を軸方向穴5に挿入する手段が挙げられる。また、素材10には、リベットなど棒状の金属製素材が使用でき、焼入れ等の熱処理を施すことを考慮すると、S35Cなどの炭素鋼が好適である。
【0020】
このようにして、ベース部材2に対する素材10の位置決めを行った状態で、図5(b)に示すように、素材10のうちベース部材2の両端面11,12からそれぞれ軸方向に突出した部分を押し潰す(押し潰し工程)。図6は、この押し潰し動作を行うための装置の断面図を示す。この押し潰し装置13は、型締め可能な上型14及び下型15と、下型15に弾性支持され、金型(上型14、下型15)内に供給されたベース部材2を載置する載置台16とを有する。上型14及び下型15には、型締め動作に伴い素材10の軸方向両側を押し潰すと共に、押し潰した部分を所定の形状に成形するための成形面がそれぞれ設けられている。
【0021】
上記構成の押し潰し装置13において、図6に示すように、上下の金型14,15内に、複数の素材10を所定位置(軸方向穴5)に挿入した状態のベース部材2を供給する。この時点では、素材10は下型15に当接している。そしてこの状態から、上型14を降下させ、上型14でベース部材2を下方に押込むと共に、素材10のベース部材2の上端面11から軸方向に突出した部分を下方に押込む。これにより、既に下型15に当接してる素材10は上型14と下型15とで上下両方向から軸方向に押圧され、押し潰される。また、ベース部材2の押込みに伴い、ベース部材2を載置する載置台16も弾性支持力に抗して下方に押し込まれる。これにより、ベース部材2を支持しつつ、素材10の軸方向両側を押し潰すことが可能となる。
【0022】
図7は、図6に示す押し潰し装置13を用いて上型14を所定の軸方向位置(図6中、二点鎖線で示す位置)まで押下げた場合の、素材10の変形後の形態を示す断面図を示している。同図に示すように、この実施形態では、押し潰し後の素材10の軸方向中央位置がベース部材2の軸方向中央位置と一致するように、上下同量ずつ押し潰されている。そして、上下の押し潰された部分でベース部材2の軸方向穴5周辺を挟持すると共に、互いに隣接する素材10の円周方向に膨出した部分同士でもって、隣接する素材10同士が円周方向に当接する(図5(c)を参照)。このようにして素材10がベース部材2に固定されると共に、円周方向に隣接する素材10同士が連結した状態となる。
【0023】
上述のようにして、素材10をベース部材2よりも外径側に膨出させた後、当該膨出させた部分(外径側膨出部17)の外周面に歯面4を成形する。この成形工程は、例えば図示は省略するが、下型で素材10とベース部材2との一体品を支持した状態で、外周に歯面4形状にならった成形面を設けた上型を素材10の外径側膨出部17に軸方向に押し込むことで行うことができる。これにより、図5(d)に示すように、歯面4を外周に形成した歯部材3が形成される(歯部材形成工程)。
【0024】
そして、この後、必要に応じて、焼入れ等の熱処理、洗浄処理を施すことで、図1に示す歯車1が完成する。
【0025】
このように、本発明では、複数の歯部材3の素材10をベース部材2の端面11,12の外周領域に設けた軸方向穴5にそれぞれ挿入し、挿入した素材10のうちベース部材2の両端面11,12から軸方向に突出した一部を押し潰すこととし、素材10の押し潰した部分でもってベース部材2を挟持すると共に、隣接する素材10同士を円周方向で当接させることで、歯部材3をベース部材2に固定し、かつ歯部材3同士を連結固定するようにした。このように、歯部材3の素材10を押し潰すだけの簡便な手法で歯部材3をベース部材2に固定できるので、歩留まりも良好であり、かつ低コストで製作することができる。また、素材10の外径側膨出部17に歯面4を成形するようにしたので、図6に示す如く簡便な構造の装置(プレス装置)で歯部材3を形成することができる。また、図7に示すように、押し潰した素材10のうちベース部材2の内径側に膨出した部分(内径側膨出部18)については、特に成形精度を要しない部分であり、かつ、他の箇所に比べて多少の寸法のばらつきが許される。そのため、素材10の寸法に多少のばらつきがあったとしても、当該ばらつきを内径側膨出部18で吸収して、歯部材3の厚み寸法や歯面4の形状精度など、他の箇所の精度を容易に確保することができる。以上より、歯部材3を精度よく成形できつつも歩留まりを高めることができ、かつ製作コストの低減化を図ることが可能となる。
【0026】
また、本実施形態では、断面真円状を成す円柱状の素材10(図4を参照)を使用するようにしたので、比較的小さい荷重で素材10を周囲に均等に押し広げ易い。また、円柱状をなす素材10であれば、どのような向きに軸方向穴5に挿入されたとしても、変形態様は均一である。よって、各歯部材3をばらつきのない均一な形状に成形することができる。加えて、本実施形態では、ベース部材2の軸方向中央位置に対して上下対称となるように(図7を参照)素材10の押し潰し変形を図るようにしたので、歯面4を含む歯部材3の強度も高い。
【0027】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る歯車の製作方法は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
【0028】
例えばベース部材2に設けられる軸方向穴5に関し、図8に示すように、この軸方向穴5とつながりベース部材2の外周面に開口する切欠き部19を設けるようにしてもよい。このように、軸方向穴5と切欠き部19とを設けたベース部材2を用いて歯部材3を成形するようにした場合、素材10の押し潰しにより、切欠き部19を介して素材10の肉が外径側に膨出する向きに変形する。これにより、ベース部材2の外周面よりも外径側の領域に素材10の肉を行き届かせ易くすることができ、歯面4を含む歯部材3の外周を精度よく成形することができる。また、図7に示すように、歯面4が成形される外径側膨出部17に水平方向に延びる境界面20が発生することはなく、図9に示すように、上下方向に連続した外径側膨出部17を得ることができるので、この点においても歯面4を精度良く成形することができる。
【0029】
また、軸方向穴5の形状についても特に限定されることはなく、例えば図10に示すような六角形状や四角形状などの多角形状とすることも可能である。真円形状以外にすることで、軸方向穴5に挿入された歯部材3に回り止めとしての抵抗力を付与することができる。
【0030】
また、上記実施形態では、1個の歯部材3につき1つの歯先7が設けられる場合を例示したが、もちろん、複数個の歯先7を1個の歯部材3に成形することも可能である。図11はその一例を示すもので、同図に示す歯部材3は、2つの歯先7を有する。この場合、歯部材3の円周方向寸法が半径方向寸法に比べて大きくなり易いため、押し潰し時の変形性を考慮して、例えば円周方向に延びる長穴形状の軸方向穴5をベース部材2に設けると共に、この軸方向穴5と嵌り合う断面長穴形状の素材(図示は省略)を挿入することも可能である。
【0031】
また、上記実施形態では、ベース部材2の軸方向中央位置に対して軸方向対称となるように素材10を押し潰した場合を説明したが(図7を参照)、もちろん軸方向非対称となるように素材10を押し潰して歯部材3を成形してもよい。あるいは、図示は省略するが、ベース部材2の軸方向一方側にのみ素材10を突出させて、この一方のみの突出部分を押し潰すことで外径側膨出部17及び歯面4を成形するようにしてもよい。この場合、押し潰し後の素材10がベース部材2を軸方向に挟持するように、これも図示は省略するが、軸方向穴5の軸方向一端をテーパ状に拡径させ、この拡径部分に嵌り合うテーパ状の大径部を軸方向一端に設けた素材10を挿入するようにしてもよい。この場合、素材10の軸方向一端に設けたテーパ状の大径部が軸方向穴5のテーパ状拡径部に嵌り合い、ベース部材2から突出した素材10の軸方向他端側のみが押し潰される。よって、素材10の押し潰された部分とテーパ状の大径部とでベース部材2を挟持することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 歯車
2 ベース部材
3 歯部材
4 歯面
5 軸方向穴
6 挿通部
7 歯先
8 歯底
9 境界面(歯部材間)
10 素材
11,12 端面(ベース部材)
13 押し潰し装置
14,15 金型
16 載置台
17 外径側膨出部
18 内径側膨出部
19 切欠き部
20 境界面(外径側膨出部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状のベース部材と、該ベース部材と別体に形成され、前記ベース部材の外周に固定された複数の歯部材とを具備する歯車を製作する方法であって、
前記ベース部材の端面の外周領域に設けた複数の軸方向穴に素材を挿入し、
前記ベース部材の端面から軸方向に突出した前記素材の一部を押し潰すことで、前記ベース部材を前記素材で挟持すると共に、隣接する前記素材同士を円周方向で当接させ、
前記素材の外径側に膨出した部分に歯面を成形することで前記歯部材を形成することを特徴とする歯車の製作方法。
【請求項1】
円盤状のベース部材と、該ベース部材と別体に形成され、前記ベース部材の外周に固定された複数の歯部材とを具備する歯車を製作する方法であって、
前記ベース部材の端面の外周領域に設けた複数の軸方向穴に素材を挿入し、
前記ベース部材の端面から軸方向に突出した前記素材の一部を押し潰すことで、前記ベース部材を前記素材で挟持すると共に、隣接する前記素材同士を円周方向で当接させ、
前記素材の外径側に膨出した部分に歯面を成形することで前記歯部材を形成することを特徴とする歯車の製作方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−49080(P2013−49080A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188683(P2011−188683)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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