説明

歯車オーバードライブを伴う軌道トランスミッション

トランスミッションは可変液圧ポンプ及びモータと組み合わせた軌道歯車複合体を有する。トランスミッションへの入力速度は、ポンプ及びモータが作動していないときに、軌道素子(オービター)が静止状態となり、軌道伝動装置がオーバードライブ状態を生じさせるように、軌道伝動装置により増大される。歯車減速は、ウエブ回転装置によってウエブを回転させて高い歯車減速を提供することにより、達成される。ポンプ及びモータは好ましくは無限可変斜板を備えた長ピストン式の液圧機械である。液圧機械は好ましくは全ジンバルにより安定させられる揺動体と、斜板がその傾斜の最大角度か又はその近傍にあるときに押さえ板と長いピストンのヘッド端部との間の可能な衝突を排除するような、長いピストンのための細長い穴を備えた押さえ板と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【関連する出願に対するリファレンス】
【0001】
この出願は「歯車オーバードライブを伴う軌道トランスミッション」という名称の2005年6月15日に出願された継続中の米国出願番号第11/153,112号に対する優先権をも主張する。その出願は参照としてここに組み込む。
【0002】
この出願はまた、現在放棄されている「長ピストン液圧機械」という名称の2002年8月28日に出願された親特許出願番号第10/229,407号の一部継続出願である現在放棄されている「長ピストン液圧機械」という名称の2003年8月25日に出願された出願番号第10/647,557号の一部継続出願である「長ピストン液圧機械」という名称の2006年1月10日に発行された米国特許第6,983,680号の一部継続出願である「二重液圧機械トランスミッション」という名称の2005年6月15日に出願された継続中の米国出願第11/153,111号に対する優先権を主張する。上記の特許及び特許出願は参照としてここに組み込む。
【技術分野】
【0003】
本発明は車両のトランスミッションの分野に関する。特に、本発明は軌道伝動装置及び可変ウエブ回転装置を備えたトランスミッションに関する。
【背景技術】
【0004】
調整可能な斜板を備えた液圧ポンプ及びモータは数十年にわたって自動車のトランスミッションに使用するために検討されてきたが、自動車に使用するのに必要な速度及び圧力において十分に強力で軽量な液圧ポンプ及びモータを製造する際に困難が存在した。伝統的には、調整可能な斜板を備えた液圧ポンプ/モータは固定の斜板及び回転するシリンダブロックを有する。この構成はゴルフカートや機械類のような応用のためのポンプ/モータにとっては十分に働くが、自動車における高圧で高速の使用に対しては、回転シリンダブロックは大型過ぎ、重過ぎ、非効率的過ぎる。液圧機械に関連する従来技術はほぼ一世紀にわたって静止のシリンダブロック及び分割型斜板を開示してきたが、自動車駆動に必要な高速及び高圧の組み合わせで使用するためのデザインは商業的に成功することが証明されていなかった。問題は主として十分に安定したピストン/斜板インターフェイスを提供する困難性であった。
【0005】
1995年月15日に発行された「可変液圧機械」という名称の米国特許第5,440,878号明細書においては、ピストン/斜板インターフェイスを扱っている。長いドッグボーンはピストン及び斜板を相互接続し、回転応力の下でのドッグボーンの収縮を阻止するため、斜板の揺動体はジンバル構造体により支持される。全ジンバル構造体はモータに使用される固定角度の斜板と一緒に使用できるが、半ジンバルは可変角度のポンプに使用される。このような機械のプロトタイプは、液圧機械が改善できたことを示す、望ましくない振動及び脈動を発生させた。
【特許文献1】米国特許第5,440,878号明細書
【0006】
1996年5月7日に発行された「歯車装着斜板を備えた液圧機械」という名称の米国特許第5,513,553号明細書においては、ジンバルの変形例が記載されている。球状の歯車歯を備えた球状歯車は半ジンバルに比べて付加的な接触地点を提供することによりドッグボーン及び揺動体を安定させるように揺動体上の歯車歯と噛み合う。しかし、このデザインは製造が複雑であることが分かった。
【特許文献2】米国特許第5,513,553号明細書
【0007】
2004年9月2日に公告された「長ピストン液圧機械」という名称の米国公告特許出願第2004/0168567号明細書においては、ドッグボーンの代わりに長いピストンを使用し、ジンバル及び球状の伝動装置は排除される。バネ圧力「押さえ」は揺動体に対して長いピストンのシューを接触維持させるために使用される。収縮を阻止するための拘束は必要ではない。その理由は、長いピストンが回転応力の下で又は液圧圧力が存在しない状態において収縮しないからである。しかし、ロータの高速回転速度により揺動体上に作用する回転応力が存在し、この応力の効果が揺動体の望ましくない慣性回転を生じさせる。
【特許文献3】米国公告特許出願第2004/0168567号明細書
【0008】
当業界において、自動車のトランスミッションの使用に適するのに十分強力で、効率的で、軽量で、小型の可変液圧ポンプ及びモータの要求がある。
【0009】
2004年6月15日に発行された「最小軌道素子(オービター)を備えたトランスミッション」という名称の米国特許第6,748,817号明細書においては、無限可変トランスミッションを形成するように可変ポンプ及びモータが歯車軌道素子(オービター)と組み合わされる。このトランスミッションでは、液圧モータの速度が増大すると、出力シャフトの速度が増大し、車両の速度が増大する。
【特許文献4】米国特許第6,748,817号明細書
【0010】
内燃エンジンは米国における自動車のための産業規格であるが、いくつかの大手の自動車製造業者は均等な給気/圧縮/点火(HCCI)エンジンを探求している。従来のガソリンエンジンにおいては、空気/燃料混合物は動力を発生させるために点火プラグにより点火される。HCCIエンジンにおいては、ディーゼルエンジンと同様に、ピストンが空気/燃料混合物を圧縮して、その温度を点火するまで増大させる。HCCIエンジンは標準のガソリン内燃エンジンについて燃料経済性を30%増大させることができるものと見積もられる。自動車においてHCCI技術を履行するための主要な障害は低速及び高速のエンジン速度での燃焼の制御が困難なことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
当業界において、HCCIエンジンにおける燃焼を一層容易に制御できるような比較的狭い低ないし適度(中)レンジにそのエンジン速度を維持するのを許容しながら、自動車を運転するのに必要な動力を提供するトランスミッションの要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
トランスミッションは既知の自動車のトランスミッションとは異なった方法で作動する可変液圧ポンプ及びモータを備えた軌道歯車複合体を有する。従来のトランスミッションとは異なり:ウエブ回転装置がその最高速度でエンジンと同じ方向にウエブを回転させたとき、トランスミッションはその最高速度において逆転出力を生じさせ;次いで、ウエブが僅かに低い速度で移動するとき、トランスミッションの出力がニュートラル即ち中立(出力無し)を生じさせ;その後、エンジンの方向へのウエブの回転が更に低下すると、トランスミッションは連続的に減少する歯車減速を生じさせる。ウエブが休止状態にあるときは、トランスミッションはオーバードライブ状態を提供する。ウエブがエンジンとは反対の方向に回転したとき、トランスミッションは連続的に一層高いオーバードライブ比を提供する。ポンプ及びモータは好ましくは無限可変斜板を備えた長ピストン式の液圧機械である。液圧機械は好ましくは全ジンバルにより安定化された揺動体と、長いピストンのための細長い穴を備えた押さえ板とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係るトランスミッションは歯車比を変更するためのウエブ回転装置と組み合わされた軌道ウエブを備えた歯車複合体を有する。好ましくは、ウエブ回転装置は可変液圧ポンプ及びモータである。トランスミッションへの入力の速度は、ポンプ及びモータが作動しておらず、軌道素子(オービター)が静止しているときに、軌道伝動装置がオーバードライブ状態を生じさせるように、軌道伝動装置により増大される。歯車減速は、ウエブ回転装置によってウエブを回転させて、高い歯車減速を提供することにより、達成される。
【0014】
トランスミッションは自動車の使用に適する。本発明の軌道歯車複合体は上記米国特許第6,748,817号明細書に開示された複合体と同様に見えるが、差違は実質的に異なる効果を提供する。入力歯車及びこれと番い合うクラスタ歯車の相対寸法は逆になっている。従来の入力減速の代わりに、入力速度は軌道伝動装置により増大される。入力速度の減少は液圧手段により制御され、オーバードライブは純粋に軌道伝動装置により達成される。この変更は付加的な歯車減速の必要性を排除し、オーバードライブ構造を簡単にする。換言すれば、液圧ポンプが「ゼロ」斜板角度にあるために、液圧モータが停止したとき、トランスミッションの出力シャフトは入力シャフトよりも速く回転する。
【0015】
本発明のトランスミッションの連続的で無限漸進的な歯車比変化は、車両のエンジンの速度のいかなる大きな変化をも伴わずに、生じ、この連続的で無限の漸進は所定の低歯車比(例えば22:1)から延長したオーバードライブ(例えば0.62:1のような比)までの著しく広い範囲にわたって延びる。停止からオーバードライブまでの加速の全体にわたって、エンジンは比較的低い有効な作動レベル(例えば500RPM)に維持することができる。この特徴は燃料節約を生じさせるのみならず、一層重要なことには、汚染物質の大幅な減少をも生じさせる。これはディーゼルエンジンに対して特に真実である。その理由は、性能を最大化する「スイートスポット」においてエンジンの選択された作動速度を予め決定することができるからである。周知のように、ディーゼルエンジンが一定速度で作動している場合、たとえあったとしても微量しか汚染物質を放出しない。
【0016】
この同じ特徴は、エンジンが従来のトランスミッションのために設計された「スイートスポット」よりもかなり低い状態で運転するという事実にも拘らず、大幅な燃料節約を提供できる。エンジンのスイートスポットは従来の最適の効率のエンジン速度であり、これは、エンジンが機械的な動力への燃料の変換時に最も効率的であるような効率マップの区域である。大半の自動車エンジンに対しては、スイートスポットは1500RPMの区域(大半の従来の自動車トランスミッションのトルクコンバータの最大効率の区域)において見られる。本発明のトランスミッションは、エンジンが最適効率で運転しないような速度にエンジンを維持できるという事実にも拘らず、燃料経済性を改善する。この効率の損失は一層低速(例えば1500RPMではなく500RPM)での運転時の減少した燃料要求により補償されるものよりも一層大きい。このような低エンジン速度での運転の更なる利点は液圧ポンプ及びモータに対する減少した圧力要求であり、それによって、液圧手段のデューティサイクルを減少させ、その耐久性を更に改善する。
【0017】
燃料経済性に関して、本発明の軌道トランスミッションは市街運転効率を高速道路運転効率までもたらす。市街運転はすべての運転の約60%を占めるので、自動車への本発明のトランスミッションの組み込みは大幅な燃料節約を提供できる。もちろん、今日のエンジンは1500RPMの範囲で最も効率的に運転するように設計されているので、500RPM前後で最も効率的に運転するように設計された自動車エンジンを本発明のトランスミッションと組み合わせることにより、一層更なる燃料節約を達成できる。
【0018】
本発明のトランスミッションはエンジン速度の最小の変化で駆動シャフトの速度を変化させることができる。従って、本発明は、最近提案されたHCCIエンジンにおける燃焼を最も容易に制御できるような比較的狭い低ないし適度(中程度)レンジ内にエンジン速度を維持するのを許容する。本発明のトランスミッションはガソリン動力車両での一層燃料効率のよいHCCIエンジンの履行と十分に両立できる。
【0019】
本発明のポンプ及びモータは好ましくは無限可変斜板を備えた長ピストン式の液圧機械である。両方の液圧機械は好ましくは、入力軸により駆動される回転及び転頭運動を行う「ロータ」と、軸受を介してロータの表面上に乗る転頭運動のみを行う「揺動体」とを備えた分割型斜板を有する。本発明の1つの実施の形態においては、軸受はニードル軸受である。長いピストンのヘッド上の摺動シューは転頭運動を行う揺動体の表面上で「8の字」経路内で移動する。しかし、揺動体上での摺動シューの相対運動中、この「8の字」は、実際は、斜板角度の増大につれて減少する直径を有する仮想の球体の表面上での三次元のレムニスケートである。
【0020】
本発明の長ピストン式の液圧機械においては、揺動体は全ジンバルにより安定される。揺動体が転頭運動すると、各サイクル中に個々のピストンが方向を変えるときに、揺動体上のピストンシューの圧力分布は変化する。この変化する圧力は転頭運動する揺動体の運動において望ましくない振動を生じさせる傾向を有する。全ジンバルは揺動体の転頭のみの運動を維持し、望ましくない振動を減少させる補助を行う。シューのスリップの速度はジンバル装着揺動体により抑制される。
【0021】
本発明の別の実施の形態においては、ジンバル装着斜板の揺動体に接するようにピストンシューを維持する補助を行うために、押さえ(hold-down) 板を使用する。押さえ板の穴は円形ではなく、細長い。コンピュータによる模型は、押さえ板のピストン穴、特に2つのジンバル係留地点から最も離れた穴の細長化を増大させると、ピストンシューと押さえ板の穴の縁部との間の衝突が回避されることを示している。
【0022】
本発明の液圧ポンプ及びモータは自立のトランスミッションとして組み合わせて使用することができるが、軌道歯車複合体の付加はポンプ及びモータの寸法の大幅な減少を許容する。本発明の軌道トランスミッションにおいては、液圧ポンプ及びモータは100%の仕事を行うことはない。伝動装置の結果としての液圧手段における負荷の減少はまたポンプ及びモータの耐久性を増大させる。
【0023】
軌道歯車複合体は最小の軌道素子(オービター)を形成するように可変ウエブ回転装置と組み合わされる。可変ウエブ回転装置は可変出力を生じさせることのできる任意の装置とすることができる。電気モータと組み合わせた発電機はウエブ回転装置として使用することができる。可変ブレーキもまたウエブ回転装置として使用することができる。好ましい実施の形態においては、可変液圧モータを備えた可変液圧ポンプはウエブ回転装置として作用する。ウエブが静止しているとき、軌道伝動装置はオーバードライブ状態を発生させる。歯車減速はウエブ回転装置によってウエブを回転させることにより達成され、これは大きな歯車減速を許容する。好ましい実施の形態においては、ポンプ及びモータは一層好ましくは、全ジンバル及び押さえ板の細長い穴を伴う無限可変斜板を備えた長ピストン式の液圧機械である。好ましい実施の形態においては、最小の軌道素子(オービター)を備えたトランスミッションを形成するために、軌道伝動装置システムと組み合わせた一対の液圧機械を使用する。液圧手段は歯車減速を行い、オーバードライブは軌道伝動装置により純粋に達成することができる。
長ピストン式の液圧機械
図1を参照すると、可変液圧機械110はモジュラー式の固定シリンダブロック112を有する。シリンダブロック112は複数のシリンダ114(1つのみを示す)を有し、その中で、対応する複数の適合するピストン116はピストン116の引き戻された(後退)位置と可変の伸長位置(最大の伸長はピストン116´の位置として示す)との間で往復運動する。各ピストンは各それぞれのシリンダ114の長さと実質上同じ長さの細長い軸方向の円筒状本体部分122の端部におけるネック部120に装着された球状ヘッド118を有する。各球状のピストンヘッド118はロータ128の表面に形成された平坦な面126上で摺動するそれぞれのシュー124内に嵌合し、ロータはシリンダブロック112の中心におけるボア内で軸受により支持された駆動素子即ちシャフト130に枢着される。
【0024】
1つの実施の形態においては、液圧機械110は好ましくはモジュラー弁組立体133を具備し、この組立体はモジュラーシリンダブロック112の左端にキャップとしてボルト止めされ、シリンダ114に対しての流体の出入り送給を規制する複数のスプール弁134(1つのみを示す)を有する。別の実施の形態においては、代わりに、複数の逆止め弁が使用される。
【0025】
機械110はポンプ又はモータとして作動できる。モータとしての作動に対しては、駆動シャフト130の各1回転の第1の半分中、入口136からの高圧流体はポート137を通して各それぞれのシリンダ114の弁端部へ入り、各それぞれのピストンをその引き戻し位置からその完全に伸長した位置へ駆動する。各1回転の第2の半分中、各ピストンがその完全に引き戻された位置へ戻るときに、低圧流体はポート137及び流体出口139を通って各それぞれのシリンダから戻される。
【0026】
ポンプとしての作動に対しては、駆動シャフト130の各1回転の半分中、各ピストン116が伸長位置へ移動するときに、低圧流体は入口136を通して循環液圧流体の「閉ループ」からポート137へ入り、各それぞれのシリンダ114内へ引き込まれる。各1回転の次の半分中、その完全に後退とた位置へ戻る各それぞれのピストン116の駆動が、出口139を通してポート137から液圧閉ループ内へ高圧流体を導く。次いで、高圧流体は適当な閉ループパイプ(図示せず)を通して上述の適合する液圧機械例えば液圧機械110へ送給され、適合する機械のピストンを、当業界で周知の方法で送給される高圧流体の容積(毎分ガロン)に応じて変化する速度で移動させる。
【0027】
モジュラーシリンダブロック112における各シリンダ114の円筒状の壁はその中で円周方向に形成されたそれぞれの潤滑チャンネル140により半径方向で横断される。複数の通路142はシリンダブロック112内に連続的な潤滑経路を形成するようにすべての潤滑チャンネル140を相互接続する。
【0028】
各それぞれの潤滑チャンネル140は各ピストンの全ストローク中各それぞれのピストン116の軸方向の円筒状本体122により実質上閉じられる。すなわち、各円筒状本体122の外側周辺部は各それぞれの潤滑チャンネル140を常に囲む壁として作用する。従って、ピストン116が最大ストロークにわたって往復運動しているときさえ、すべての潤滑チャンネル140を相互接続する連続的な潤滑通路は実質上閉じたままである。連続的な潤滑通路140、142はシリンダブロック112内で簡単かつ経済的に形成される。
【0029】
液圧機械110の作動中、すべての相互接続された潤滑チャンネル140は、ポート137を通して各シリンダ114へ入りシリンダの壁と各ピストン116の外側周辺部との間で強制送給される、入口136からの高圧流体の最小流れによりほぼ瞬間的に満たされる。各潤滑チャンネル140からの潤滑流体の損失は各シリンダ114の開いた端部の近傍に位置する取り巻きシール144により制限される。それにも拘らず、潤滑チャンネル140のこの閉じた連続的な潤滑通路内の潤滑流体は、ピストン往復運動時のピストンの運動及び駆動シャフト130の回転の各半サイクルにおける変化する圧力に応答しての各シリンダの各それぞれの円筒状の壁と各それぞれのピストンの軸方向の円筒状本体との間の流体の連続的な最小流れの結果、適度ではあるが連続的に流れる。各シリンダ114内の圧力が各ピストン116の帰還ストロークにおいて低圧へ減少すると、閉じた潤滑通路140、142内の高圧流体は各シリンダ114の壁と各ピストン116の本体部分122の外側周辺部との間で再度駆動されて、このような圧力減少を体験している各シリンダ114の弁端部へ入る。
【0030】
閉じた連続的な潤滑通路140、142内の潤滑流体の流れは適度のものであるが、ピストンの運動及び、ピストンの往復運動時の駆動シャフト130の回転の各半サイクルにおいて変化する圧力に応答した補助的な最小流体流れの結果、連続的となる。
【0031】
ポンプ110のロータ128は軸線132に垂直な軸線129のまわりで駆動シャフト130に枢着される。それ故、ロータ128が駆動シャフト130と一緒に回転している間、軸線130に関するその傾斜角度は好ましくは0°(即ち垂直)から±25°まで変化できる。図1においては、ロータ128は+25°で傾斜している。この可変の傾斜は次のように制御される:軸線129のまわりでのロータ128の枢動が、駆動シャフト130を取り囲みこれに関して軸方向に移動できる摺動カラー180の位置により決定される。制御リンク182は、駆動シャフト130の表面上でのカラー180の軸方向の運動が軸線129のまわりでロータ128を枢動させるように、カラー180をロータ128に接続する。例えば、カラー180が図1で右に移動すると、ロータ128の傾斜は、図示の+25°の傾斜から0°(即ち垂直)に戻り、次いで−25°まで、連続的に全体にわたって変化する。
【0032】
カラー180の軸方向の運動は、ヨーク186がヨーク制御アーム188の関節運動によりヨークシャフト190の軸線のまわりで回転するときに、ヨーク186のフィンガ184により制御される。ヨーク186はヨークアーム188の底部に接続された普通のリニアサーボ機構(図示せず)により作動される。ヨーク186の残りの素子はすべてモジュラー斜板ハウジング192内に収容され、ヨークシャフト190はハウジング192に固定された軸受内で支持されるが、ヨーク制御アーム188はハウジング192の外部に位置する。斜板ロータ128は、制御リンク182と実質上同じであってカラー180に同様に接続されるがカラー180の全く反対側の位置にあるシャドウリンク194により、平衡される。
【0033】
図1及び図2の双方を参照すると、各シリンダ114の円筒状の壁はその中で円周方向に形成されたそれぞれの潤滑チャンネル140により半径方向で横断される。複数の通路142はシリンダブロック112内に連続的な潤滑通路を形成するようにすべての潤滑チャンネル140を相互接続する。各それぞれの潤滑チャンネル140は、各ピストンの全ストローク中、各それぞれのピストン116の軸方向の円筒状本体122により実質上閉じられる。すなわち、各円筒状本体122の外側周辺部は各それぞれの潤滑チャンネル140を常に包囲する壁として作用する。従って、ピストン116が最大ストロークにわたって往復運動する場合でさえ、すべての潤滑チャンネル140を相互接続する連続的な潤滑通路は実質上閉じた状態を維持する。連続的な潤滑通路140、142は、流体チャンネル及び接続通路の相対寸法を明瞭のために誇張して示した図2の概略図から最良に認識できるように、シリンダブロック112内に簡単かつ安価に製造される。
【0034】
液圧機械110の作動中、すべての相互接続された潤滑チャンネル140は、ポート137を通って各シリンダ114に入りかつシリンダの壁と各ピストン116の外側周辺部との間で強制される、入口136からの高圧流体の最小の流れによりほぼ瞬時に満たされる。各潤滑チャンネル140からの潤滑流体の損失は各シリンダ114の開いた端部の近傍に位置する取り巻きシール144により制限される。それにも拘らず、潤滑チャンネル140のこの閉じた連続的な潤滑通路内の潤滑流体は適度に流れるが、ピストンの運動及び、ピストンの往復運動時の駆動シャフト130の回転の各半サイクルにおいて変化する圧力に応答した、各シリンダのそれぞれの円筒状の壁の各々と各それぞれのピストンの軸方向の円筒状本体との間の流体の連続的な最小流れの結果、連続的に流れる。各シリンダ114内の圧力が各ピストン116の帰還ストローク時に低圧へ減少すると、閉じた潤滑通路140、142内の高圧流体は各シリンダ114の壁と各ピストン116の本体部分122の外側周辺部との間で駆動されて、このような圧力減少を体験している各シリンダ114の弁端部へ入る。
【0035】
図3A、3Bを参照すると、液圧機械のための押さえ組立体は複数の円形開口160を備えた押さえ素子154を有し、各開口はそれぞれのピストン116のネック部120を取り囲む。斜板は図3A、3Bにおいては+25°の角度にある。図3Aはロータ128のシャフトを見下ろした斜視図からの又は図1の面3A−3Aからの押さえ板154を示す。複数の特殊なワッシャ156はそれぞれ押さえ素子154と各ピストンシュー124との間に位置する。各ワッシャ156はシューをロータ128の平坦な面126に常に接触維持させるようにそれぞれのシュー124の外側周辺部に接触する延長部158を有する。各それぞれのシュー空洞は適当なシューチャンネル162及びピストンチャンネル164を介して接続され、シュー/ロータの対面に存在する流体圧力が各ピストン116のヘッドにおける流体圧力と常に等価になることを保証する。
【0036】
流体圧力はロータ128の方向にピストン116を絶えず偏倚し、その負荷を支えるために図示のスラスト板組立体を設ける。しかし、自動車用途に必要な作動速度(例えば4000rpm)においては、ピストンシュー124とロータ128の平坦な面126との間の常時の接触を保証するために、付加的な偏倚負荷が必要になる。可変液圧機械は3つの簡単なバネ偏倚押さえ組立体の1つを使用することによりこのような付加的な偏倚を提供する。
【0037】
液圧機械110のための第1の押さえ組立体は、シャフト130のまわりに位置し、軸線132のまわりで円周方向にシリンダブロック112内に形成された適当な裂け目152内に受け入れられたコイルバネ150を有する。コイルバネ150は、これまたシャフト130及び軸線132のまわりで円周方向に位置する押さえ素子154を偏倚する。押さえ素子154は複数の円形開口160を具備し、各開口はそれぞれのピストン116のネック部120を取り囲む。複数の特殊なワッシャ156はそれぞれ押さえ素子154と各ピストンシュー124との間に位置する。各ワッシャ156はシューをロータ128の平坦な面126に常に接触維持させるようにそれぞれのシュー124の外側周辺部に接触する延長部158を有する。
【0038】
ロータ128の傾斜が機械の作動中に変化したとき、斜板及びピストンシュー押さえ組立体の位置は互いに関して変化する。0°の傾斜でのこれらの部品の相対位置を参照すると、各ピストンチャンネル164は押さえ素子154の各それぞれの円形開口160に関して同じ半径方向の位置を有する。0°以外のすべての傾斜においては、各ピストンチャンネル164の相対的な半径方向位置は各開口160に対して異なり、各特殊なワッシャ156の相対位置も異なる。9個の開口160の各々における異なった相対位置は、ロータ128が各傾斜において完全な1回転にわたって回転及び転頭運動を行うときに、それ自体絶えず変化する。例えば、図3Aに示す25°の傾斜において、ロータ128の各1回転中に、押さえ素子154の頂部(即ち12時位置)での開口160のみを通して生じる運動を観察した場合、頂部開口160内で見える部品の相対位置は他の8個の開口160の各々内で見える相対位置と適合するように連続的に変化する。
【0039】
0°以外の傾斜においては、ロータ128の各1回転中、同時に各シュー124がロータ128の平坦な面126上をスリップするときに、各特殊なワッシャ156は押さえ素子154の表面上でスリップする。これらの部品の各々は他の8個の開口160の各々において見ることのできる種々の位置の各々にわたってそれ自身の開口160に関して変化する。これらの部品の各々は斜板ロータ128の角度傾斜及び固定のシリンダブロック112内の各ピストン116の水平位置に従って寸法を変化させる(レムニスケート即ち「8の字」を辿ると思われる)周期的な経路を追従する。各それぞれのシュー124とロータ128の平坦な表面126との間の適正な接触を保証するため、寸法は好ましくは、開口160の縁がロータ128のすべての傾斜に対して各1回転中各特殊なワッシャ156の表面の半分以上と常に接触維持するように、各開口160の境界に対して選択される。
【0040】
第2の押さえ組立体は、液圧機械210の単一のピストンの拡大部分断面図として図4に概略的に示す。各ピストン216はモジュラー固定シリンダブロック212においてシリンダ214内に位置し、シリンダはその中で円周方向に形成されたそれぞれの潤滑チャンネル240により半径方向で横断される。既に詳述した他の液圧機械に関して説明したような方法と同じ方法で、各潤滑チャンネル240はシリンダブロック212内に連続的な潤滑通路を形成するように機械の他のシリンダ内の同様のチャンネルと相互接続する。各潤滑チャンネル240からの潤滑流体の損失を更に最少にするために、随意の取り巻きシール244を各シリンダ214の開いた端部の近傍に配置することができる。
【0041】
固定シリンダブロック212は大きな軸方向における円周方向のコイルバネも、これを保持するための軸方向における円周方向の裂け目をも有しない。液圧機械210のモジュラー固定シリンダブロック212はモジュラー固定角度斜板組立体又はモジュラー可変角度斜板組立体のいずれかに接続することができるが、いずれの場合も、液圧機械210は一層簡単な押さえ組立体を提供する。すなわち、この実施の形態の押さえ組立体はそれぞれのコイルバネ250のみと組み合わせた各ピストン216のためのそれぞれの普通のピストンシュー224のみを有し、コイルバネはまた各それぞれのピストン216に関連する。
【0042】
各ピストンシュー224は第1の押さえ組立体における普通のシューと同様であり、機械の斜板ロータ228の表面に形成された平坦な面226上で摺動するようにピストン216の球状ヘッド218上に装着される。各コイルバネ250はそれぞれ各それぞれのシリンダ214の弁端部における液圧弁ポート237のまわりにおいて円周方向で着座し、各それぞれのピストン216の本体部分内に位置する。
【0043】
各シュー224は、各ピストン216の水平位置及び軸線232に関するロータ228の傾斜に応じて寸法を変化させるレムニスケート運動で、ロータ228の平坦な面226上でスリップする。液圧機械210の通常の作動中、シュー224は液圧圧力により斜板の平坦な面226に接触維持される。それ故、コイルバネ250により提供されるバネ偏倚は最小となるが、各それぞれのシリンダ214の弁端部での液圧圧力が存在しない場合でも各シュー224と平坦な面226との間の有効な摺動接触を維持するのに十分なものとなる。バネ250の最小偏倚は組立てを容易にするのみならず、組立て中に生じ、磨耗により発生する小さなほこりや金属屑の滞留をも阻止する。
【0044】
図5を参照すると、液圧機械310のための第3の押さえ組立体は改善された普通の分割型斜板構成を有する。それぞれの摺動シュー324を有する複数のピストン316はシリンダブロック112と同じシリンダブロック312に形成されたそれぞれのシリンダ314内で往復運動する。各シュー324は揺動体327に形成された平坦な面326上で摺動し、この揺動体は、ロータ328が当業界において周知の方法で回転及び転頭運動の双方を行う間に揺動体327が回転せずに転頭運動できるようにする適当な軸受372、374により対応するロータ328に装着される。軸線329のまわりでの揺動体327及びロータ328の傾斜は摺動カラー380、制御リンク382及び平衡シャドウリンク394の位置により制御される。
【0045】
シュー324は第1の押さえ組立体と実質上同じ押さえ組立体により押さえられるが、大きな単一のコイルバネ150の代わりに、複数の小さな個々のコイルバネを使用する。
押さえ板354は揺動体327に固定される。各シュー324はそれぞれの特殊なワッシャ356の円周方向の延長部を受け入れ、各ピストン316のネック部は押さえ板354を通って形成された対応する複数のそれぞれの開口360の1つ内に位置する。揺動体327がロータ328と一緒に回転しないので、揺動体327の転頭運動はロータ328の転頭運動と同一となり、それ故、シュー324と揺動体327の平坦な表面326との間の相対運動も第1の押さえ組立体における相対運動と同一となる。
【0046】
複数の個々のコイルバネ350は、各シリンダ314の弁端部において液圧圧力が存在しない場合に、各シュー324と揺動体327の平坦な面326との間の有効な摺動接触を維持するための最小のバネ偏倚を提供する。各コイルバネ350は各シュー324のまわりで円周方向に位置し、各特殊なワッシャ456と各シュー324の底部のすぐ上に形成されたカラーとの間で捕捉される。
【0047】
図6を参照すると、モータ又はポンプであっても、各液圧機械は好ましくは、周知の「閉ループ」構成として、対応するポンプ又はモータである別の液圧機械と対をなす。たとえば、液圧機械110の出口139から出る高圧流体は対応する液圧機械110´の入力136´に直接送給され、一方、液圧機械110´の出口139´から出る低圧流体は対応する液圧機械110の入力136に直接送給される。液圧機械110及び液圧機械110´は、液圧機械110がポンプとして使用され、液圧機械110´がモータとして使用される点を除いて、構造上同一とすることができる。この閉ループシステム内の流体の一部は「ブローバイ」のため連続的に失われ、サンプに収集され、流体は閉ループ内で所定の容積の流体を常に維持するためにサンプから閉ループへ戻るように自動的に送給される。
全ジンバルを備えた液圧機械
長ピストン式の液圧機械についての最近の開発作業中、高速及び高圧での振動が注目された。長いピストンのヘッドと押さえ板との間のある干渉はまたピストン上の青銅製のシューを緩ませた。青銅製のシューと押さえ板との間の繰り返しの衝突はこれらの液圧機械の作動ノイズを増大させる。このような液圧機械は従来の液圧ポンプ及びモータに比べて潤滑液圧流体の顕著に低いブローバイを示すが、かなりの量のブローバイは経時的な青銅製のシューの緩みから由来する。繰り返しの衝突を排除すると、このような機械の性能を大幅に改善する。この望ましくない干渉は、ピストンシューが分割型斜板の揺動体の表面上で摺動するときにピストンシューにより分担される相対レムニスケート運動中に、生じる。
【0048】
上記米国特許出願第2004/0168567号明細書に記載の液圧機械の性能を改善するため、揺動体は更に安定させられ、これは全ジンバルにより達成される。各ピストンの摺動シューにより揺動体上に加えられる力は軸方向の成分及び半径方向の成分を有する。斜板の角度が増大すると、半径方向の力成分が増大し、全ジンバルは、この力に対抗し、揺動体の転頭運動を維持するための構造上の支持を提供する。
【0049】
長ピストン式の液圧機械の分割型斜板は入力軸により駆動される回転及び転頭運動を行う「ロータ」と、軸受を介してロータの表面上に乗る転頭運動のみを行う「揺動体」とを有する。長いピストンのヘッド上の摺動シューは転頭運動を行う揺動体の表面上で「8の字」経路を移動する。しかし、揺動体上での摺動シューの相対運動中、この「8の字」は実際斜板角度の増大に従って減少する直径を有する仮想球体の表面上の三次元のレムニスケートである。
【0050】
本発明の実施の形態においては、揺動体は全ジンバルにより安定させられる。揺動体が転頭運動すると、各サイクル中に個々のピストンが方向を変えたときに、揺動体上のピストンシューの圧力分布が変化する。この変化する圧力は転頭運動する揺動体の運動において望ましくない振動を生じさせる傾向を有する。全ジンバルは揺動体の転頭のみの運動を維持し、望ましくない振動を減少させる補助を行う。シューのスリップの速度はジンバル装着揺動体により抑制される。
【0051】
図7を参照すると、ジンバルを備えた長ピストン式の液圧機械330を示す。各々それぞれの摺動シューを有する複数のピストン316はシリンダブロック312内に形成されたそれぞれのシリンダ314内で往復運動する。各シュー324は適当な軸受により対応するロータ328に装着された揺動体327上に形成された平坦な面上で摺動し、これらの軸受は、ロータ328が当業界において周知の方法で回転及び転頭運動の双方を行っている間、回転を伴わずに揺動体327を転頭運動させることができる。軸線329のまわりでの揺動体327及びロータ328の傾斜は摺動カラー380、制御リンク382及び平衡シャドウリンク394の位置により制御される。シューは第1の押さえ組立体と実質上同じ押さえ組立体により押さえられるが、大きな単一のコイルバネ150の代りに、複数の小さな個々のコイルバネを使用する。
【0052】
ジンバルはヨーク332と、ヨーク332を斜板ハウジング392に接続する第1の対のジンバルピン334と、ヨーク332を揺動体327に接続する第2の対のジンバルピン336とを有する。ヨーク332は揺動体のまわりで完全な環体を形成する。ジンバルピン334は互いに180°離間して位置する。ジンバルピン336は互いに180°離間し、ジンバルピン334に対して90°離間して位置する。ジンバル構造体は揺動体327の転頭運動を許容するが、揺動体327の回転運動は禁止する。
【0053】
押さえ板338は揺動体327に固定される。各シューはそれぞれの特殊なワッシャの円周方向の延長部を受け入れ、各ピストン316のネック部は押さえ板338を通って形成された対応する複数のそれぞれの開口の1つ内に位置する。揺動体327がロータ328と一緒に回転しないので、揺動体327の転頭運動はロータ328の転頭運動と同一となり、それ故、シューと揺動体327の平坦な表面との間の相対運動も第1の押さえ組立体における相対運動と同一となる。
【0054】
複数の個々のコイルバネは、各シリンダ314の弁端部において液圧圧力が存在しない場合に、各シューと揺動体327の平坦な面との間の有効な摺動接触を維持するための最小のバネ偏倚を提供する。各コイルバネは各シューのまわりで円周方向に位置し、各特殊なワッシャと各シューの底部のすぐ上に形成されたカラーとの間で捕捉される。
【0055】
本発明の別の実施の形態においては、押さえ板の穴は円形ではなく、細長い。全ジンバルは揺動体のまわりにおいて2つの地点で係留される。コンピュータによる模型は、押さえ板の穴、特に2つの係留地点から最も離れた穴の細長化が増大したとき、ピストンシューと押さえ板の穴の縁部との間の衝突を排除することを示す。
【0056】
図8を参照すると、押さえ板338は好ましくはヨーク332を揺動体327に接続する2つのジンバルピン336の1つと直接整合する1つの開口340を有する。押さえ板338に関するジンバルピン334、336の相対位置は図8に概略的に示す。開口340はほぼ円形である。開口340、342、344、346、348の形状は、開口がジンバルピン336から遠くなるほど、一層細長くなる。
【0057】
この新しいデザインのコンピュータによる模型は、今日の車両の多くのモデルのための無限可変トランスミッションのような液圧閉ループ内において、一方はポンプとして他方はモータとして、2つの液圧機械の組み合わせのみを使用することを可能にすることを示す。しかし、本発明者等は、上述した軌道歯車複合体の付加が単独で作用するこのような液圧機械よりも一層効率的なトランスミッションを提供するものと確信する。この液圧/軌道トランスミッションは幅広い範囲の重量及び寸法要求を満たすように拡大又は縮小できる大幅に改善された自動車トランスミッションを提供する。
軌道トランスミッション
液圧ポンプ及びモータは自立のトランスミッションとして組み合わせて使用することができるが、軌道素子(オービター)の付加はポンプ及びモータの寸法の大幅な減少を許容する。本発明の軌道トランスミッションにおいては、液圧ポンプ及びモータは100%の仕事を行うことはない。伝動装置の結果としての液圧手段における負荷の減少はまたポンプ及びモータの耐久性を増大させる。
【0058】
本発明の実施の形態としてトランスミッション400を図9に示す。エンジン402は最小の軌道素子(オービター)404及び可変ウエブ回転装置403のみを含む本発明のトランスミッションに接続された状態で示す。1つの実施の形態においては、可変ウエブ回転装置403は発電機408と組み合わされた電気モータ406を有し、発電機と電気モータとの間に電気接続部440を設ける。別の実施の形態においては、可変ウエブ回転装置403は可変液圧ポンプ408と組み合わされた可変液圧モータ406を有し、ポンプとモータとの間に液圧接続部440を設ける。好ましいウエブ回転装置としての液圧ポンプ及び液圧モータについて、トランスミッションを以下に説明する。
【0059】
軌道素子(オービター)404は、共に第1の軸線414のまわりで回転するように装着された入力歯車410及び出力歯車412と、第1の軸線414に平行な第2の軸線418のまわりで回転するように装着されたクラスタ歯車416とのみを含む。入力歯車410はエンジン402の駆動シャフト420と一緒に回転するように固定され、一方、出力歯車412は出力シャフト422と一緒に回転するように固定される。クラスタ歯車416はウエブ426内で回転するように支持された軌道シャフト424に固定され、ウエブ426はそれ自体第1の軸線414のまわりで回転するように装着され、それによって、軌道シャフト424及びクラスタ歯車416がそれぞれ第1の軸線414のまわりで及び入力歯車410及び出力歯車412のまわりで軌道運動するのを許容する。クラスタ歯車416は入力歯車410及び出力歯車412の歯とそれぞれ噛み合う2組の歯車歯428、430を有する。
【0060】
入力歯車410とクラスタ歯車428との間及びクラスタ歯車430と出力歯車412との間の歯車歯比は、ウエブ426の回転が阻止されたとき、出力歯車412が入力歯車410の回転の所定のオーバードライブで回転するように、選択される。これは、上記米国特許第6,748,817号明細書の軌道伝動装置におけるように、歯車減速が教示されているような従来の教示とは対比するものである。例えば、本発明の好ましい実施の形態においては、歯車歯比は表1に示すように選択される。
【0061】
表1
歯車 歯の数
入力歯車410 36
クラスタ歯車428 27
クラスタ歯車430 36
出力歯車412 27
この伝動装置の例では、ウエブ426の回転が阻止されたとき、出力歯車412は入力歯車410の回転のほぼ0.6:1のオーバードライブで回転する。
【0062】
ウエブ426の外側に固定された歯車432はモータシャフト436に接続されたモータ歯車434と噛み合う。モータシャフト436は随意の第1のクラッチ438により接続解除できるように作ることができ、このクラッチは好ましくは簡単なジョークラッチであるが、任意の形式のクラッチとすることができる。クラッチ438は、可変ウエブ回転装置403の出力に関係なく、特に始動時に重要である、車両がニュートラルにあることを保証することにより、実ニュートラル(true-neutral) 安全特性を提供する。図示の目的で、モータシャフト436は液圧制御モータ406により駆動され、1:1の関係でモータ歯車434及びウエブ歯車432を回転させる。モータ歯車434とウエブ歯車432との間の比は本発明の精神から逸脱することなくある範囲内に入ることができる。この比は、歯車歯比と共に、可変ウエブ回転装置403の特定の設定のための特定の入力/出力トランスミッション歯車比を提供するように変更することができる。一方、制御モータ406は「閉ループ」液圧回路440を通して液圧ポンプ408から送給される流体により作動される。エンジン駆動シャフト420に固定された補助の駆動歯車442は1:1の関係での第1の対応する歯車444及びポンプシャフト446の回転を生じさせる。
【0063】
液圧ポンプ/モータ組み合わせ体の作動は当業界で周知であるが、このトランスミッションに特に適したポンプ/モータの作動はこの開示において詳細に説明する。エンジン駆動シャフト420によるポンプシャフト446の補助の回転は、液圧ポンプ409がポンプ408の斜板(図示せず)の調整された傾斜に従って制御モータ406のための液圧流体の流れを生じさせるのを許容する。
IVTの前進作動
本発明のトランスミッションの作動の例示として、上述の軌道歯車歯比はここでは表2で与えられる値を計算するために使用される。表2は、後進からニュートラルを経てのオーバードライブまでの、ポンプ及びモータの斜板の状態、結果としてのウエブ回転比率、出力シャフト回転比率及びトランスミッション比を示す。しかし、無限可変トランスミッションはこの全体の範囲にわたってトランスミッション比の連続体を通過することを理解すべきである。500RPMのアイドリング速度がサンプル計算のために使用される。
【0064】
表2
車両 エンジン ポンプ モータ ウエブ 出力 トランスミッション
速度 RPM 斜板 斜板 RPM RPM
R 500 25° 10° 1250 −83 −6:1
N 500 25° 10.9° 1143 0 1:0
L1 500 25° 13.5° 929 167 3:1
L2 500 25° 15.2° 821 250 2:1
D 500 25° 25° 500 500 1:1
OD1 500 12.5° 25° 250 694 0.7:1
OD2 500 0° 25° 0 889 0.6:1
OD3 500 −7.1° 25° −143 1000 0.5:1
(注:Rは後進、Nはニュートラル、Lはロー、Dはドライブ、ODはオーバードラ イブである。)
表2を参照すると、モータ406の斜板の角度が正方向において連続的に増大すると、モータシャフト436の回転率は徐々に低下し、それによって、ウエブ426の回転を低下させ、出力シャフト422の回転率をゆっくり増大させる。
【0065】
制御モータ406をウエブ426に接続し、ポンプ408の斜板をその最大傾斜(即ち25°)に設定し、モータ406の斜板角度を10.9°へ設定すると、出力シャフト422を停止即ち実際は「歯車中立」状態に至らせるような速度でウエブ426を回転させる。
【0066】
「ニュートラルN」状態から「ドライブD」へ変更するためには、ポンプ408の斜板角度は25°に保たれ、一方、モータ406の斜板角度は、トランスミッション比が1:1に等しくなるような25°へ連続的に増大する。「ドライブD」から所定の「オーバードライブ2」への変更については、モータ406の斜板角度は25°に保たれ、一方、ポンプ408の斜板角度は0°へと連続的に減少する。ポンプ408の斜板角度が0°に達したとき、ウエブ426は停止し、出力歯車412及び出力駆動シャフト422の回転速度は、上述した基本的な歯車複合体により予め決定されたオーバードライブだけ、エンジン駆動シャフト420及び入力歯車410よりも大きくなる。
【0067】
本発明の重要な付加的な特徴として、ポンプ408の斜板角度は僅かに負の角度へ減少することができ、それによって、「オーバードライブ2」を越える範囲全体にわたって本発明の「無限オーバードライブ」を延長させるようにモータシャフト436の方向を逆転させる。
【0068】
それ故、モータ406及びウエブ426の回転速度が連続的に減少すると、出力シャフト422の前進回転速度は、いかなる歯車シフト、クラッチシフト又はいかなる大きなエンジン速度変動をも伴わずに、(3:1よりも顕著に大きい)高歯車減速から1:1へ、次いで延長した連続的なオーバードライブにわたる歯車比の無限範囲にわたって、連続的に増大する。
【0069】
制動のような任意の必要な減速中、斜板角度は適当な歯車減速を達成するために歯車中立位置に向かって反対方向で調整される。同様に、登坂又はパッシングのような、車両が完全オーバードライブ状態にあるときに付加的な動力が必要な場合、適当な歯車減速を提供するようにポンプの斜板角度を増大させることができるか、または、もちろん、エンジン速度を増大させることができる。
【0070】
すぐ前に述べたこの連続的で無限漸進的な(始動からオーバードライブまでの)歯車比変更は、エンジン402の速度のいかなる大きな変化をも伴わずに、生じるという事実に特に注意されたい。エンジンは停止からオーバードライブまでの加速の全体にわたって比較的低い効率的な作動レベルに維持することができる。この目覚しい特徴は燃料の節約をもたらすのみならず、一層重要なことには、汚染物質の大幅な減少をもたらす。これは、ディーゼルエンジン車両にとって特に真実である。その理由は、エンジンの選択された作動速度を、性能を最適化する「スイートスポット」で予め決定できるからである。周知のように、ディーゼルエンジンが一定の速度で作動するとき、たとえあったとしても極小量しか汚染物質を放出しない。
【0071】
本発明の更なる特徴は、車両が重い荷重を運搬し、トレーラを牽引し、又は、急峻な地面上を高速道路速度で走行している場合に、一層大きな燃料効率を達成し、液圧素子のデューティサイクルを減少させるための牽引/運搬モードを提供する。この特徴は液圧システムをバイパス即ち回避し、車両のエンジンに対して1:1の歯車比で駆動を固定する。これは、ポンプシャフト446に別の歯車435を係合させるために使用される第2のクラッチ439を付加することにより、達成される。歯車435は、歯車列において、補助の駆動歯車442、第1の適合歯車444及びウエブ歯車432と相互接続し、これらの歯車と同じ寸法を有する。それ故、第1のクラッチ438がモータ406をモータ歯車434から係合解除し、第2のクラッチ439が歯車435をポンプシャフト446に係合させたとき、歯車442、444、435、432を通るエンジン402からの直接の歯車列は、エンジン402が入力歯車410を回転させている速度と同じ速度で、ウエブ426を回転させる。これは、エンジン402に対して1:1の関係での出力歯車312及び出力駆動シャフト422の双方の直接歯車駆動を生じさせる。
IVTの「停止」及び後進作動
制御モータ406がウエブ426に接続され、ポンプ408の斜板がその最大傾斜(即ち25°)で設定されたとき、モータ406の斜板は「ニュートラル」(即ち先に与えられた歯車比に対しては10.9°)を達成するように設定される。このような状態の下においては、出力シャフト422は静止している。上述のように、これは実際、ウエブ426が始動のため一定のトルクにより停止位置に保持され、交通における始動時のような「歯車中立」を提供する。しかし、このような状態の下ではいつでも、クラッチ438を係合解除でき、車両の車輪から駆動を完全に切り離すために「実ニュートラル」を達成できることに留意すべきである。
【0072】
モータ406の斜板角度がその歯車中立設定から(例えば1−3°だけ)僅かに負の方向に移動した場合、制御モータ406はウエブ426を同じ方向に回転させ続けて、「歯車中立」を達成させるが、ウエブ426は僅かに一層速い速度で回転する。正味の効果は、ここでは、出力シャフト422が比較的大きな歯車減速で後方方向即ち「後進」方向に回転することである。
【0073】
モータ406の斜板の設定が負の方向に(即ち出力歯車412を停止させるために使用される設定を越えて)連続的に増大するとき、ウエブ426、出力歯車412及び出力シャフト422の回転は全て前進方向において連続的に増大する。制御モータ406が(例えばクラッチ438を係合解除することにより)「ニュートラル」にされた場合、入力歯車410のアイドリング速度回転により、自動的に、クラスタ歯車416は、出力歯車412を完全な停止に至らせるような精確な速度で、後進方向にウエブ426を回転させる。すなわち、ウエブの回転制御がニュートラル化されたとき、本発明の最小の軌道素子(オービター)は最小トルクの位置を自動的に求める。
【0074】
それ故、車両を停止させるときにトランスミッションをゼロ速度にするためのウェブの必要な所定の速度逆転を生じさせるために、モータ406の斜板の調整を精確にプログラムする必要がないことがある。本発明者等は、入力歯車410の速度がアイドリングエンジン速度に減少したときにはいつでも、第1のクラッチ438無しに、車両の完全な停止を許容するように制御モータ406を適当に調整できるようにする本発明のための好ましい液圧ポンプ/モータの実施の形態を開発した。
動力取り出し
当業界で周知のように、動力取り出しシャフトはしばしば車両のエンジンによる補助の器具の作動を許容するためにトラクタ及びトラックに設けられる。それ故、トランスミッションの1つの他の特徴はクラッチ456により接続された動力取り出しシャフト452及び動力取り出し歯車454を有する動力取り出し組立体450である。
【0075】
動力取り出し歯車454は補助の駆動歯車442により駆動される。動力取り出し歯車454は普通「惰走し」、常時には係合解除されているクラッチ456により動力取り出しシャフト452から切り離されている。しかし、クラッチ456が係合したとき、動力取り出しシャフト452はまた補助の器具を作動させるように回転する。
液圧バイパス回路
弁で規制される「バイパス」組立体が好ましくは液圧ポンプ408及びモータ406により分担される閉ループ液圧回路440内に組み込まれる。(このようなバイパス構成は上記米国特許第6,748,817号明細書に開示されている。)一対の「バイパス」通路は閉ループの両側を接続し、スプール弁のピストン部分により遮断されるシリンダを通って延びている。一対のステムは、スプール弁が一方向に移動したときに、ステムがバイパス通路を通る液圧流体の流れを許容するように、スプール弁上に位置する。センサは車両の作動の選択されたパラメータ(例えば、車両速度及び(又は)閉ループ内の液圧圧力)における上下のレベルに応答できる。このような選択されたパラメータの第1のレベルを感知したとき(例えば、車両速度が減少し、停止状態に近づくときにはいつでも)、スプール弁は一方向に移動して通路を開き、一方、第2のレベルを感知したとき、弁を反対の位置に回復し、閉ループ液圧回路をその通常の状態に戻す。
【0076】
バイパス回路を開くようなスプール弁の作動により、ポンプ408の斜板が駆動されているか又は0°で停止保持されている場合でさえ、制御モータ406のシャフト436は独立に移動することができる。それ故、バイパス組立体はエンジン始動中のトランスミッションの負荷を減少させるために使用することができ、そのため、車両のはずみ車クラッチと交換できる。これに関し、閉ループ液圧回路440内の流体圧力の大きな変化を感知するためにセンサを使用できるので、バイパス組立体はまた、液圧システムのいかなる例外的なオーバーロードをも阻止する安全装置として作用できる。
【0077】
本発明の軌道トランスミッションの別の特徴として、軌道伝動装置と組み合わせた液圧ポンプ及びモータの効率は、エンジン速度が500RPM前後に維持されている間に、十分な動力を車輪に伝達することを許容する。この特徴は、エンジンが従来のトランスミッションのために設計された「スイートスポット」よりもかなり低い状態で運転するという事実にも拘らず、大幅な燃料節約を提供できる。エンジンのスイートスポットは、エンジンが機械的な動力への燃料の変換時に最も効率的であるような効率マップの区域である。大半の自動車エンジンに対しては、スイートスポットは1500RPMの範囲において見られる。本発明のトランスミッションは、減少した効率での速度にエンジンを維持するにも拘らず、燃料経済性を改善する。この効率の損失は500RPMでの運転時の減少した燃料要求により補償されるものよりも一層大きい。このような低エンジン速度での運転の更なる利点は液圧ポンプ及びモータに対する減少した圧力要求であり、それによって、液圧手段のデューティサイクルを減少させ、その耐久性を更に改善する。
【0078】
燃料経済性に関して、本発明の軌道トランスミッションは市街運転効率を高速道路運転効率までもたらす。市街運転はすべての運転の約60%を占めるので、自動車への本発明のトランスミッションの組み込みは大幅な燃料節約を提供する。今日のエンジンは1500RPMの範囲で最も効率的に運転するように設計されている。もちろん、500RPM前後で最も効率的に運転するように設計された自動車エンジンを本発明のトランスミッションと組み合わせることにより、一層更なる燃料節約を達成できる。
【0079】
本発明のトランスミッションはエンジン速度の最小の変化で駆動シャフトの速度を変化させることができる。従って、本発明は、HCCIエンジンにおける燃焼を最も容易に制御できるような比較的狭い低ないし適度(中)レンジ内にエンジン速度を維持するのを許容する。好適な例では、エンジン402はHCCIエンジンである。本発明のトランスミッションはガソリン動力車両での一層燃料効率のよいHCCIエンジンの履行と十分に両立できる。
【0080】
標準の自動車エンジン402の背後の適所における本発明のモジュラー流体機械的なトランスミッションを概略的に示す図10A、10Bを参照して、本発明の最後の特徴をここで説明する。すぐ前で述べた同じ一般構成においては、本発明の単一の軌道素子(オービター)404の出力シャフト414の回転はエンジン402により駆動されるモータ406及びポンプ408の液圧手段により規制される。図示のように、軌道素子(オービター)404はエンジン402の後部ではずみ車ハウジング502にボルト止めされた板404a上にモジュラー的に装着される。同様に、モータ406及びポンプ408は板408a上にモジュラー的に装着される。
【0081】
ある車両に対しては、モータ406及びポンプ408のモジュラー的な組み合わせは車両の完全な駆動要求を満たすことができる。このような状況においては、モジュラー軌道素子(オービター)404は省略することができ、小さな修正で、モータ406、ポンプ408及び板408aはエンジン402の後部ではずみ車ハウジング502に直接モジュラー的にボルト止めすることができる。
【0082】
従って、ここで述べた本発明の実施の形態は本発明の原理の適用の単なる例示であることを理解すべきである。ここでの図示の実施の形態の詳細の参照は、本発明にとって本質的であるものと思われるこのような特徴をそれ自体列挙する特許請求の範囲の要旨を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】可変斜板角度を備えた、本発明のための好ましいポンプ及び好ましいモータの双方として使用される液圧機械の部分概略断面図である。
【図2】図を明瞭にするために一部を図示省略した状態での、面2−2における図1の液圧機械の部分概略断面図である。
【図3】図3Aは図1の面3A−3Aから見たような、斜板が+25°で傾斜した場合の、押さえ板の部分概略図であり、図3Bは図3Aの面3B−3Bにおける斜板及びピストン押さえ組立体の部分断面図である。
【図4】長いバネを備えた単一のシリンダの断面図である。
【図5】分割型斜板を備えた液圧機械の部分概略断面図である。
【図6】従来既知のような2つの液圧機械の「閉ループ」構成を示す図である。
【図7】全ジンバルを備えた本発明の液圧機械を示す図である。
【図8】図7の面8−8における、細長い穴を備えた本発明の押さえ板を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における軌道トランスミッションを示す図である。
【図10】図10Aは標準の自動車エンジンの背後の適所における本発明のモジュラー流体機械的なトランスミッションのほぼ縮尺したレイアウトの概略図であり、図10Bは図10Aに示すモジュラートランスミッションの端面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要エンジンのためのトランスミッションにおいて、
第1の軸線上に装着され、上記主要エンジンにより提供される入力駆動に応答する入力歯車と、上記第1の軸線上に装着された出力歯車と、上記入力及び出力歯車とのみ噛み合い、上記第1の軸線に平行に位置する軌道シャフト上で回転するように装着された少なくとも1つのクラスタ歯車とを備えた軌道素子(オービター);及び
上記軌道シャフトを支持し、当該軌道シャフト及び上記クラスタ歯車が上記第1の軸線と上記入力及び出力歯車とをそれぞれ軌道運動させるのを許容するように、当該第1の軸線のまわりで回転するように装着された軌道素子(オービター)ウエブ;
を有し、
上記クラスタ歯車と上記入力及び出力歯車との間の歯車歯比は、上記ウエブの回転が阻止されたときに、当該入力歯車の回転が上記入力駆動の所定のオーバードライブにおいて当該出力歯車の回転を生じさせるように、選択されることを特徴とするトランスミッション。
【請求項2】
上記ウエブの回転を制御するための、上記軌道素子(オービター)ウエブに作動的に接続できる可変ウエブ回転装置を更に有し、当該ウエブが第1の方向に回転した場合に、該ウエブの回転速度が増大したときに、上記入力駆動の上記所定のオーバードライブが、1:1の比に、その後、該ウエブの上記回転速度に関して増大する当該入力駆動の歯車減速に減少することを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション。
【請求項3】
所定の速度での上記第1の方向への上記ウエブの回転が上記出力歯車の回転を停止させることを特徴とする請求項2に記載のトランスミッション。
【請求項4】
上記所定の速度より大きな速度での上記第1の方向への上記ウエブの回転が上記出力歯車の回転方向を逆転させることを特徴とする請求項3に記載のトランスミッション。
【請求項5】
上記第1の方向とは反対の第2の方向への上記ウエブの回転が上記所定のオーバードライブよりも大きな無限に変化するオーバードライブを提供することを特徴とする請求項2に記載のトランスミッション。
【請求項6】
上記可変ウエブ回転装置及び上記軌道素子(オービター)ウエブを選択的に接続するための第1のクラッチを更に有することを特徴とする請求項2に記載のトランスミッション。
【請求項7】
上記軌道素子(オービター)とは別個に歯車列を形成するように連続して相互接続された複数の歯車と;
上記主要エンジンにより提供された上記入力駆動を上記軌道素子(オービター)ウエブに選択的に接続するための第2のクラッチと;
を更に有し、
上記第1のクラッチが上記可変ウエブ回転装置及び上記軌道素子(オービター)ウエブを接続解除したとき及び上記第2のクラッチが上記入力駆動及び当該軌道素子(オービター)ウエブを接続したとき、上記出力歯車及び該軌道素子(オービター)ウエブの双方が当該入力駆動に対して1:1で回転することを特徴とする請求項6に記載のトランスミッション。
【請求項8】
上記可変ウエブ回転装置が上記エンジンにより駆動される発電機と組み合わされた電気モータを有することを特徴とする請求項2に記載のトランスミッション。
【請求項9】
上記可変ウエブ回転装置が上記エンジンにより駆動される可変液圧ポンプによって駆動される可変液圧モータを有することを特徴とする請求項2に記載のトランスミッション。
【請求項10】
上記可変液圧モータ及び上記可変液圧ポンプが各々それぞれのハウジング内に収容されており、
複数のシリンダを有するシリンダブロックであって、上記シリンダが上記シリンダブロック内に形成され、駆動素子の回転軸線のまわりにおいて第1の半径方向の距離で円周方向に位置するようなシリンダブロックと;
上記シリンダ内で往復運動自在に装着された複数のそれぞれのピストンであって、各ピストンがピストン本体及び狭いネック部により上記ピストン本体に接続された球状ヘッドを有し、各それぞれのシリンダがそこを越えて上記ピストンヘッドを常に延びさせる開いたヘッド部分を有するような複数のピストンと;
上記駆動素子により駆動され、回転及び転頭運動を行う可変傾斜ロータ及び転頭運動のみを行う平坦な面を備えた揺動体を有する分割型斜板であって、各ピストンのストロークが上記斜板の傾斜に応じて所定の最大値まで変化するようになった分割型斜板と;
いかなる中間のドッグボーンをも伴わずに各ピストンヘッドに枢着され直接取り付けられたそれぞれの摺動シューであって、各それぞれの摺動シューが上記ピストンと上記平坦な面との間のすべての相対回転運動中当該平坦な面との直接の摺動接触を維持するようになった摺動シューと;
を有することを特徴とする請求項9に記載のトランスミッション。
【請求項11】
各液圧機械が更に180°離間した第1の対のジンバルピンにより上記ハウジングに接続され、第2の対のこれまた180°離間した第2の対のジンバルピンにより上記分割型斜板の上記揺動体に接続された環状のヨークを備えたジンバルを更に有し、上記第1の対の各ジンバルピンが上記第2の対の各ジンバルピンから90°離間して位置することを特徴とする請求項10に記載のトランスミッション。
【請求項12】
(a)上記単一の軌道素子(オービター)及び(b)上記可変液圧ポンプにより駆動される上記可変液圧モータが別個のモジュールとして構成されることを特徴とする請求項11に記載のトランスミッション。
【請求項13】
主要エンジンの駆動シャフトから出力シャフトへの車両のトランスミッションの速度及びトルクを無限的に変更する方法において、
a)上記駆動シャフトに関する上記出力シャフトの所定のオーバードライブを生じさせるための伝動装置を提供する工程と;
b)上記出力シャフトの回転を生じさせないように所定の速度で第1の方向に軌道素子(オービター)ウエブを回転させる工程と;
c)上記ウエブの回転速度を減少させることにより上記駆動シャフトに関する上記出力シャフトの速度を増大させる工程と;
を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
入力シャフトに関する上記出力シャフトの回転速度を所定のオーバードライブ以上に増大させるように上記第1の方向とは反対の第2の方向に上記ウエブを回転させる工程を更に有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記出力シャフトの回転方向を逆転させるように上記所定の速度よりも速く上記ウエブを回転させる工程を更に有することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
主要エンジンのための流体機械的なトランスミッションにおいて、
上記エンジンの駆動シャフトにより駆動され、液圧出力を生じさせる可変液圧素子と;
上記駆動シャフトにより駆動され、機械的な出力を生じさせる機械的素子と;
を有し、
上記液圧出力及び上記機械的出力は、上記液圧素子の速度の増大が上記駆動シャフトに対する車両駆動用出力シャフトの速度の比率を減少させるように、上記車両駆動用出力シャフトを駆動すべく組み合わされることを特徴とするトランスミッション。
【請求項17】
上記トランスミッションは、上記エンジンが従来の最適効率のエンジン速度よりも十分に低い速度で運転している状態で、上記出力シャフトに動力を提供することを特徴とする請求項16に記載のトランスミッション。
【請求項18】
主要駆動シャフト及び補助駆動シャフトを有する主要エンジンのための流体機械的なトランスミッションにおいて、
上記補助駆動シャフトにより駆動され、液圧出力を生じさせる可変液圧素子と;
上記主要駆動シャフトにより駆動され、機械的な出力を生じさせる機械的素子と;
を有し、
上記液圧出力及び上記機械的出力が車両を駆動するための出力シャフトを駆動するように組み合わされ、
上記トランスミッションは、上記エンジンが従来の最適効率のエンジン速度よりも十分に低い速度で運転している状態で、上記駆動シャフトに動力を提供することを特徴とするトランスミッション。
【請求項19】
液圧機械において、
ハウジングと;
上記ハウジング内に形成され、駆動素子の回転軸線のまわりにおいて第1の半径方向の距離で円周方向に位置する複数のシリンダを有するシリンダブロックと;
上記シリンダ内で往復運動自在に装着された複数のそれぞれのピストンであって、各ピストンがピストン本体及び狭いネック部により上記ピストン本体に接続された球状のヘッドを有し、各それぞれのシリンダがそこを越えて上記ピストンヘッドを常に延びさせる開いたヘッド部分を有するような複数のピストンと;
上記駆動素子により駆動され、回転及び転頭運動を行う可変傾斜ロータ及び転頭運動のみを行う平坦な面を備えた揺動体を有する分割型斜板であって、各ピストンのストロークが上記斜板の傾斜に応じて所定の最大値まで変化するようになった分割型斜板と;
180°離間した第1の対のジンバルピンにより上記ハウジングに接続され、180°離間した第2の対のジンバルピンにより上記揺動体に接続された環状のヨークを有するジンバルであって、上記第1の対の各ジンバルピンが上記第2の対の各ジンバルピンから90°離間して位置するようなジンバルと;
を有することを特徴とする液圧機械。
【請求項20】
各ピストンヘッドに枢着され直接取り付けられたそれぞれの摺動シューであって、各それぞれの摺動シューが上記ピストンと上記平坦な面との間のすべての相対回転運動中当該平坦な面との直接の摺動接触を維持するようになった摺動シューを更に有することを特徴とする請求項19に記載の液圧機械。
【請求項21】
各摺動シューを上記平坦な面の方へ偏倚するための押さえ組立体を更に有することを特徴とする請求項20に記載の液圧機械。
【請求項22】
各ピストン本体は、上記ピストンのストローク中上記シューが上記平坦な面と常に相対摺動接触するときに上記ピストンヘッドの最小の横方向変位を保証するように、上記それぞれのシリンダ内で支持されるのに十分な細長い軸方向の円筒状長さを有することを特徴とする請求項21に記載の液圧機械。
【請求項23】
上記分割型斜板が上記ロータ上で上記揺動体を支持するための軸受を更に有することを特徴とする請求項19に記載の液圧機械。
【請求項24】
上記シリンダブロックの各シリンダの円筒状の壁内に形成された加圧流体を保持するそれぞれの潤滑チャンネルを更に有し;
上記それぞれの潤滑チャンネルの全てが上記シリンダブロック内に連続的な潤滑通路を形成するように相互接続され;
各ピストンの全ストローク中各それぞれのピストンの上記軸方向の円筒状本体の外側表面による各それぞれの潤滑チャンネルの実質的な閉鎖により、加圧流体が上記連続的な潤滑通路内に保持され、当該連続的な潤滑通路により受け入れられた加圧流体の唯一の源が各それぞれの円筒状の壁と各それぞれのピストンの当該軸方向の円筒状本体との間の最小流れであり;
上記連続的な潤滑通路が上記シリンダブロック内で全体的に形成され、各シリンダを横断し、上記シリンダが上記駆動素子の回転軸線のまわりでセンタリングされるときに、実質上同じ半径方向の距離で円周方向においてセンタリングされる;
ことを特徴とする請求項19に記載の液圧機械。
【請求項25】
上記押さえ組立体が、
複数のそれぞれの開口を有する押さえ素子であって、各上記それぞれの開口の境界が各それぞれのピストンの上記狭いネック部の近傍に位置するような押さえ素子と;
押さえ板と上記それぞれの摺動シューとの間で各ピストンの上記狭いネック部のまわりに取り付けられ、各々上記各それぞれの摺動シューと円周方向で接触するように円筒状に整合する延長部を有するそれぞれのワッシャと;
を有し、
上記ワッシャは、上記平坦な面が上記駆動素子の回転軸線に関して傾斜するときに上記摺動シューの相対位置の変化に応答して、それに関して運動するように上記押さえ板と摺動接触する;
ことを特徴とする請求項21に記載の液圧機械。
【請求項26】
上記押さえ板の各それぞれの開口の境界が、上記相対運動中各それぞれのワッシャの外側周辺部の半分以上と常に接触するように設計されることを特徴とする請求項25に記載の液圧機械。
【請求項27】
上記押さえ板の上記それぞれの開口が細長く、その細長さは、各それぞれの穴が上記ジンバルを支持する上記第1の対のジンバルピンから遠くに位置するほど、相対的に一層大きくなることを特徴とする請求項25に記載の液圧機械。
【請求項28】
各それぞれのシリンダの弁端部に液圧圧力が存在しない場合、各それぞれのシューと上記平坦な面との間の有効な摺動接触を維持するのに十分な最小バネ偏倚を更に有することを特徴とする請求項25に記載の液圧機械。
【請求項29】
上記最小バネ偏倚が複数のバネにより提供され、各バネが上記押さえ板と上記それぞれのワッシャの1つとの間にそれぞれ位置することを特徴とする請求項28に記載の液圧機械。
【請求項30】
液圧機械において、
シリンダブロックであって、同シリンダブロック内に形成され、かつ、駆動素子の回転軸線のまわりにおいて第1の半径方向の距離で円周方向に位置する複数のシリンダを有するようなシリンダブロックと;
上記シリンダ内に往復運動自在に装着された複数のそれぞれのピストンであって、各ピストンがピストン本体と、狭いネック部により上記ピストン本体に接続された球状のヘッドとを有し、各それぞれのシリンダがそこを越えて上記ピストンヘッドを常に延びさせる開いたヘッド部分を有するような複数のピストンと;
上記駆動素子の上記回転軸線に関して傾斜を備えた平坦な面を有する斜板であって、各ピストンヘッドが上記ピストンと上記斜板との間の全ての相対運動中上記平坦な面との有効な摺動接触状態に維持され、ピストンストロークが当該斜板の傾斜に従って決定され、所定の最大値まで変化するような斜板と;
各ピストンヘッドに枢着され、上記平坦な面上で接触摺動するように位置決めされたそれぞれの摺動シューと;
上記摺動シューの方へ偏倚され、複数のそれぞれの開口を有する押さえ素子であって、上記それぞれの開口の1つが各ピストンの上記狭いネック部の近傍に位置するような押さえ素子と;
押さえ板と各摺動シュートの間で各狭いネック部のまわりに取り付けられ、各それぞれの摺動シューと接触するように整合された延長部を各々有するそれぞれのワッシャと;
を有し、
上記ワッシャは、上記ロータの上記平坦な面が上記駆動素子の回転軸線に関して傾斜するときに上記摺動シューの相対位置の変化に応答して、それに関して運動するように上記押さえ板と摺動接触し;
上記それぞれの開口の少なくとも1つが非円形形状を有する;
ことを特徴とする液圧機械。
【請求項31】
上記非円形形状が上記斜板の最大傾斜における上記それぞれの狭いネック部の運動の形状よりも僅かに大きいことを特徴とする請求項30に記載の液圧機械。
【請求項32】
各延長部が各それぞれの摺動シューと円周方向で接触するように円筒状に整合することを特徴とする請求項30に記載の液圧機械。
【請求項33】
上記押さえ板の各それぞれの開口の境界が、上記相対運動中各それぞれのワッシャの外側周辺部の半分以上と常に接触するように設計されることを特徴とする請求項30に記載の液圧機械。
【請求項34】
上記ワッシャに対して上記押さえ板を偏倚するため上記第1の半径方向の距離よりも短い状態で、上記駆動素子の上記回転軸線のまわりにおいて円周方向に位置するコイルバネを更に有することを特徴とする請求項30に記載の液圧機械。
【請求項35】
上記斜板が斜板ハウジング内に収容され、回転及び転頭運動を行う可変傾斜ロータと、平坦な面を備え、転頭運動のみを行う揺動体とを有し、上記液圧機械が更に、
180°離間した第1の対のジンバルピンにより上記ハウジングに接続され、第2の対のこれまた180°離間した第2の対のジンバルピンにより上記揺動体に接続された環状のヨークを備えたジンバルを更に有し、上記第1の対の各ジンバルピンが上記第2の対の各ジンバルピンから90°離間して位置する;
ことを特徴とする請求項30に記載の液圧機械。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2008−546959(P2008−546959A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517109(P2008−517109)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/023335
【国際公開番号】WO2006/138474
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(501050955)トーヴェック・インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】