説明

歯車装置

【課題】アルミニウム合金製歯車箱による高速鉄道用歯車装置は、小歯車軸と歯車箱の材質の違いにより、低温時に軸受の軸方向遊隙が減少し、焼付きが発生しやすいため、軸受が低温時の遊隙減少によって焼付かない構造を提供すること
【解決手段】、アルミニウム合金製歯車箱の小歯車軸受蓋を固定するボルトを締結する部分に鋼製の棒状部を構成することにより、小歯車軸受蓋締結部と小歯車軸との低温時の熱収縮量の差が無くなり、軸受の軸方向遊隙の減少が低減して軸受の焼付きの防止がはかられる。また、高温時においても、熱膨張率の相違によって温度差による小歯車軸受の軸方向遊隙変化が低減され、がたつき等に起因する振動や騒音抑制に効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の動力伝達機構として車軸に設けられる歯車装置の小歯車軸受部の構造に関するものである。

【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両用歯車装置の小歯車軸受部の構造は図2に示される。図2において、小歯車軸1は2個の円錐ころ軸受2により各々軸受蓋3、4を介して歯車箱5に回転自在に取付けられる。軸受蓋3、4はボルト6により歯車箱5に固定される。(たとえば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−183342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高速車両においては軽量化のために歯車箱の材質にアルミニウム合金を使用する場合があり、線膨張率の差異により、低温時に軸受の軸方向の遊隙値が無くなり、軸受が焼付きに至ることがある。本発明は上述した点に鑑みて創案されたもので、その目的とするところは、軸受が低温時の遊隙減少によって焼付かない構造を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1の発明によれば、鉄道車両用歯車装置において、アルミニウム合金製歯車箱の小歯車軸受蓋をボルト締結している該アルミニウム合金製歯車箱のボルト締結部の一部に、熱膨張率の相違によって温度差による小歯車軸受の軸方向遊隙変化の低減を図るために、鋼製の棒状部を配設したことを特徴とする。
【0006】
すなわち、歯車箱の、軸受蓋を固定するボルトを締結する部分に鋼製の棒状部品を構成したものである。

【発明の効果】
【0007】
本発明による歯車装置は、歯車箱の、軸受蓋をボルトで締結している部分が小歯車軸と同じ鋼製であるため、低温時においても小歯車軸と歯車箱の軸方向の遊隙値が変化せず、軸受が低温時の遊隙減少によって焼付くことを防止する効果がある。
また、高温時においても、熱膨張率の相違によって温度差による小歯車軸受の軸方向遊隙変化が低減され、がたつき等に起因する振動や騒音抑制に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を示す鉄道車両用歯車装置の小歯車軸受部構造の断面である。
【図2】従来の鉄道車両用歯車装置の小歯車軸受部構造の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の一実施例を示す、歯車装置側面図および断面図である。
本発明の一実施例を示す鉄道車両用歯車装置の小歯車軸受部構造である。
【0010】
図1において、円錐ころ軸受2の軸方向寸法を決定するアルミニウム合金製の歯車箱5のボルト締結部分に小歯車と同じ材質である鋼製の棒7を構成する。棒7は歯車箱に対して締め代を設けて固定させる。低温時に、アルミニウム合金製の歯車箱5は線膨張係数の差により、軸方向に小歯車軸1よりも大きく収縮するが、軸受蓋3,4は棒7を介してボルト6により締結されており、軸受蓋3,4の軸方向における温度変化の影響による変位は小歯車軸1と等しくなる。

【符号の説明】
【0011】
1 小歯車軸
2 円錐ころ軸受
3 軸受蓋
4 軸受蓋
5 歯車箱
6 ボルト
7 棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用歯車装置において、アルミニウム合金製歯車箱の小歯車軸受蓋をボルト締結している該アルミニウム合金製歯車箱のボルト締結部に、鋼製の棒状部を配設したことを特徴とする歯車装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−102819(P2012−102819A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252698(P2010−252698)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】