説明

歯車部品の歯当たり状態検査方法および検査装置

【課題】ドライブギアなどの歯車部品を製品に組み付けた後においても、精度良く歯当たりを検査できる歯当たり検査方法を提供する。
【解決手段】 歯車部品の歯当たり状態検査方法は、ディファレンシャルギアなどの製品に組み付けられ、歯が互いに噛み合った2つのドライブギアおよびピニオンギアを回転させる工程(ステップS21)と、ドライブギアおよびピニオンギアのうち少なくとも一方の歯面に予め塗布された光明丹の状態を検出する工程(ステップS22〜25)と、検出された歯面の塗料の状態から所定の部位を除いて、ドライブギアおよびピニオンギアの歯当たり状態を検査する検査工程(ステップS26〜28)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車部品の歯当たり状態検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のディファレンシャルギアには、通常、ドライブギアやドライブピニオンなどの歯車部品が含まれる。これらの歯車部品の良否を判定するために、ディファレンシャルギアの組立前には、歯当たり検査が実行されている。
【0003】
歯当たり検査とは、一方の歯車部品、たとえば、ドライブギアに塗料(光明丹)を塗布した後、ドライブピニオンと噛み合わせて回転させ、光明丹の剥がれを調べて、噛み合わせの良否を判定する検査である(たとえば、特許文献1参照)。これにより、歯車部品が、不均一に加工されていないか検査できる。
【0004】
上記歯当たり検査においては、ディファレンシャルギアの組立工程とは別に、検査工程として、ドライブギアとドライブピニオンとの歯当たりを検査している。したがって、検査工程では、ドライブギアおよびドライブピニオンは、治具により保持されているだけで、実際にねじ等により組み付けられていない。
【0005】
近年では、作業領域の縮小や、工数および作業時間の削減などのために、検査工程と組立工程とを併合することが考えられている。併合した場合、実際にディファレンシャルギアを組み立てつつ、ドライブギアおよびピニオンギアの歯当たり検査をする。
【特許文献1】特開平1−136008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、たとえば、ドライブギアを実際に締結した場合、締結箇所においてドライブギアが若干変形する。それにも関わらず、上記のような歯当たり検査を実行すると、締結による変形まで考慮して検査されてしまい、ドライブギアおよびピニオンギアの歯当たりを精度良く検査できない。すなわち、ドライブギアを締結するとその部分において噛み合わせが若干浮き、通常許容されているボルト締結による歪みまでドライブギアの不均一な加工によるものとみなされてしまう。これでは、本来目的とするドライブギアおよびピニオンギアの加工精度の検査ができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、歯車部品を製品に組み付けた後においても、精度良く歯当たりを検査できる歯当たり検査方法および歯当たり検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歯車部品の歯当たり状態検査方法は、製品に組み付けられ、歯が互いに噛み合った2つの歯車部品を回転させる工程と、前記2つの歯車部品のうち少なくとも一方の歯面に予め塗布された塗料の状態を検出する工程と、検出された前記歯面の塗料の状態から所定の部位を除いて、前記歯車部品の歯当たり状態を検査する検査工程と、を含む。
【0009】
本発明の歯車部品の歯当たり状態検査装置は、製品に組み付けられ、歯が互いに噛み合った2つの歯車部品を回転させる回転手段と、前記2つの歯車部品のうち少なくとも一方の歯面に予め塗布された塗料の状態を検出する塗料状態検出手段と、検出された前記歯面の塗料の状態から所定の部位を除いて、前記歯車部品の歯当たり状態を検査する検査手段と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯車部品の歯当たり状態検査方法によれば、歯面の塗料の状態から所定の部位を除いて、歯当たり状態を検査するので、歯車部品を製品に組み付けることによる歯面の歪みに影響されずに、精度良く歯車の歯当たり状態を検査できる。
【0011】
本発明の歯車部品の歯当たり状態検査装置によれば、歯面の塗料の状態から所定の部位を除いて、歯当たり状態を検査するので、歯車部品を製品に組み付けることによる歯面の歪みに影響されずに、精度良く歯車の歯当たり状態を検査できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1はディファレンシャルギアの斜視図、図2は図1の2−2線に沿って見たディファレンシャルギアの断面図、図3はドライブギアを示す平面図および背面図である。なお、図3において、(A)はドライブギアの一面を示し、(B)は(A)の裏面を示す。
【0014】
本実施形態の歯車部品の歯当たり状態検査方法および検査装置では、製品に含まれる歯車部品の歯当たりを検査する。検査の手順を説明する前に、歯車部品を含む製品の一例として、ディファレンシャルギアについて説明する。
【0015】
ディファレンシャルギアは、車が旋回する際に内輪と外輪に生じる回転差を吸収する装置である。ディファレンシャルギアは、図2に示すように、ケース内に、2方向の軸を含む。ディファレンシャルギアが車両に搭載される際には、一方の軸は左右の車輪のドライブシャフトに接続され、他方の軸はプロペラシャフトに接続される。
【0016】
各軸は、それぞれ、ドライブギア10およびピニオンギア20により相互に接続され、連動して回転できる。ドライブギア10およびピニオンギア20は、いずれも傘歯車であり、略直角に噛み合っている。
【0017】
ドライブギア10は、リング状の歯車であり、図3(A)に示すように、平板の一面に複数の歯が形成され、図3(B)に示すように、裏面には、ボルト締結用の複数のネジ穴14が形成されている。以下では、複数の歯が形成された面を、歯面12という。
【0018】
ドライブギア10は、図2に示すように、ボルト(固定部材)16によりディファレンシャルギアに固定されている。なお、図2においては、ドライブギア10およびピニオンギア20から延びるシャフトは、図示を省略しているが、いずれもベアリングなどにより回転自在に保持されている。
【0019】
図4はディファレンシャルギアを検査する様子を正面から見た図、図5はディファレンシャルギアを検査する様子を上面から見た図、図6はディファレンシャルギアを検査する様子を右側面から見た図である。
【0020】
歯当たり状態検査装置30は、組立ラインの一部に設置されている。組立ラインにおいて上記ドライブギア10やピニオンギア20が組み付けられたディファレンシャルギアは、歯当たり状態検査装置30が設置された工程まで流れ着き、歯当たり検査される。歯当たり検査とは、ドライブギア10およびピニオンギア20の歯が適切に形成されているか、すなわち、相互の歯の当たり具合が適切かを調べる検査である。なお、ディファレンシャルギアは、搬送装置50によりケースが保持された状態で、組立ラインを流れる。ディファレンシャルギアは、歯当たり検査工程に搬入される際には、まだケース全体の組立が終わっておらず、図4〜6に示すように、ドライブギア10がケースの上方から露出している。
【0021】
歯当たり状態検査装置30は、モータ(回転手段)32と、1組のカメラ(塗料状態検出手段)34a、bと、一組の照明装置(照射手段)36a、bと、製品位置検出センサ(製品位置検出手段)38と、歯位置検出センサ(歯位置検出手段)40と、ボルト位置検出センサ(固定部材検出手段)42と、制御装置(検査手段)44とを有する。
【0022】
モータ32は、ピニオンギア20と着脱可能な回転軸33を有する。モータ32は、図示しないシリンダ機構により、図中上下に移動可能である。ディファレンシャルギアが歯当たり検査工程に運ばれてきたときに、モータ32がピニオンギア20側に移動され、ピニオンギア20とモータ32の回転軸が接続される。検査工程が終了すると、モータ32の回転軸がディファレンシャルギアから取り外される。モータ32の回転により、ピニオンギア20が回転され、連動して、ドライブギア10が1回転分以上回転される。
【0023】
一組のカメラ34a、bは、ドライブギア10の歯面12を撮影する。カメラ34a、bとしては、たとえば、CCDカメラや、C−mosカメラなどの各種アナログ、デジタルカメラを使用できる。2つのカメラ34a、bは、上下左右可動式のステージに取り付けられており、適宜、位置や姿勢が変更可能である。
【0024】
検査時には、カメラ34a、bは、図4および図5に示すように、それぞれ、ドライブギア10が車両前進時にピニオンギア20と歯当たりする面と、車両後退時にピニオンギア20と歯当たりする面とを撮影できる位置に配置される。すなわち、組立ライン上を流れるディファレンシャルギアにおいて、ドライブギア10の歯面12は斜め上方を向いているので、歯面12をなるべく正面から撮影できる位置に、カメラ34a、bが配置されている。
【0025】
たとえば、カメラ34aが車両前進時にピニオンギア20と当たる歯の片面を撮影し、カメラ34bが車両後退時にピニオンギア20と当たる歯の他面を撮影する。カメラ34a、bは、ドライブギア10の歯面12全体に塗布された光明丹(塗料)が、ピニオンギア20との噛み合いにより剥離した様子を撮影する。
【0026】
一組の照明装置36a、bは、それぞれ、所定の単一波長の光を照射できる装置であり、上記カメラ34a、bに取り付けられている。照明装置36a、bとしては、たとえば、フォトダイオード式LED照明、波長選択式フィルター付の蛍光灯、直流点灯インバータ付き蛍光灯、またはキセノンランプなどの放電式照明を使用できる。
【0027】
照明装置36a、bは、ドライブギア10の歯面12に光を照射し、反射光によってカメラ34a、bがドライブギア10の歯面12を撮影できるようにする。照明装置36a、bが照射する光の波長は、光明丹の色、すなわち、光明丹が反射する光の波長によって異なる。たとえば、照明装置36a、bは、光明丹が赤色の場合、赤色光と略同等の波長の光を照射し、光明丹が白色の場合、青色光と略同等の波長または青色光よりも短い波長の光を歯面12に照射する。これにより、ピニオンギア20の歯面12の塗料が残っている部分と、剥離した部分との明暗の差が顕著になり、カメラ34a、bによる認識が容易になる。
【0028】
製品位置検出センサ38は、搬入されたディファレンシャルギア(製品)の上方に位置し、製品の位置を検出する。製品の位置検出は、製品の形状の特徴点、たとえば、ノックピン穴などの位置に基づいて実行される。センサには、たとえば、レーザ変位計や、画像を撮影するカメラが使用される。
【0029】
歯位置検出センサ40は、ドライブギア10の歯面12が見えるように、ディファレンシャルギアの上方に配置され、ドライブギア10の歯を検出する。歯位置検出センサ40としては、光電管、レーザ変位計、接触式センサなどを使用できる。これらのセンサにより、回転するドライブギア10の歯の有無を、アナログ信号のON/OFFにより判断でき、検出した時間と関連付けて歯の位置を特定できる。歯の位置の情報は、制御装置44に送信される。
【0030】
ボルト位置検出センサ42は、ドライブギア10を歯面12の反対側から締結するボルト16の位置を検出するセンサである。ボルト位置検出センサ42は、回転するドライブギア10に合わせてボルト16を検出する。ボルト16の位置の情報は、制御装置44に送信される。歯位置検出センサ40により検出した歯の位置と、ボルト位置検出センサ42によって検出したボルト16の位置とによって、ドライブギア10におけるボルト締結位置が認識される。
【0031】
ボルト位置検出センサ42としては、光電管、レーザ変位計、またはカメラなどを使用できる。光電管やレーザ変位計を使用する場合、ボルト16の通過によるアナログ信号のON/OFFを検出する。カメラを使用する場合、撮像した画像を解析して、ボルト位置を特定する。
【0032】
制御装置44は、上記各構成と接続され、歯当たり状態検査装置30の全体を制御する。制御装置44には、一般的なコンピュータを使用できる。制御装置44には、ディスプレイが接続されており、歯当たり状態の良否判定結果などを表示できる。また、制御装置44は、組立ラインの他の制御装置44と共にネットワークに接続されており、搬送されてくる製品の情報などが入力されたり、工程の進行具合を出力したりする。
【0033】
次に、歯当たり状態検査装置30による、歯当たり状態検査手順について説明する。
【0034】
図7は歯当たり状態検査方法の流れを示すフローチャートである。以下の状態検出方法は、制御装置44により実行される。なお、歯当たり状態検査工程の前に、予めドライブギア10の歯面12には光明丹が塗布されているものとする。
【0035】
まず、制御装置44は、組立ラインを流れるディファレンシャルギアの製品情報を取得する(ステップS1)。製品情報とは、ディファレンシャルギアが適用される車種である。
【0036】
制御装置44は、取得した製品情報に基づいて、カメラ34a、bを適当な位置および姿勢に制御する(ステップS2)。これにより、製品によって異なるドライブギア10の歯面12の位置や向きに合わせて、カメラ34a、bの位置を調整でき、ドライブギア10の歯面12を確実に撮影できる。なお、製品情報と、カメラ34a、bの最適な位置および姿勢とは、予め対応付けて制御装置44に記憶されている。
【0037】
続けて、製品位置検出センサ38により、ディファレンシャルギアの特徴点の位置が検出され、ディファレンシャルギアの位置が検出される(ステップS3)。
【0038】
制御装置44は、ディファレンシャルギアの位置に基づいて、カメラ34a、bの位置および姿勢を補正する(ステップS4)。これにより、搬送装置50による搬送のバラツキに関わらず、カメラ34a、bを最適な位置に配置し、ドライブギア10の歯面12を確実に撮影できる。
【0039】
そして、制御装置44の指令により、モータ32の回転軸が、ディファレンシャルギアのピニオンギア20に装着される(ステップS5)。
【0040】
歯当たり検査が実行される(ステップS6)。歯当たり検査の詳細については、後述する。
【0041】
歯当たり検査の結果がOKか否かが判断され(ステップS7)、OKの場合(ステップS7:YES)、制御装置44のディスプレイに良品である旨が表示される(ステップS8)。また、NGである場合(ステップS7:NO)、制御装置44のディスプレイに不良品である旨が表示される(ステップS9)。なお、良否判定の結果は、作業者にわかりやすいように、現場のランプの点灯などにより示してもよい。判定結果は、制御装置44に記憶される(ステップS10)。
【0042】
制御装置44は、組立ラインの停止スイッチが押されたか否かにより判断し(ステップS11)、停止スイッチが押されない場合(ステップS11:NO)には、次の製品に対して、ステップS1からの処理を繰り返す。停止スイッチが押された場合(ステップS11:YES)、歯当たり状態検査工程を終了する。
【0043】
(歯当たり検査)
次に、ステップS6の歯当たり検査について、詳細に説明する。
【0044】
図8は歯当たり検査の流れを示すフローチャートである。
【0045】
歯当たり検査では、まず、制御装置44によってモータ32が制御され、回転させられる(ステップS1)。ここで、車両前進時のドライブギア10とピニオンギア20との歯当たりを検査する場合、モータ32は、車両前進時にピニオンギア20が回転する方向に回転させられる。逆の歯当たりを検査する場合、逆方向に回転させられる。モータ32の回転により、ピニオンギア20が回転され、連動して、ドライブギア10も回転される。ドライブギア10とピニオンギア20とが噛み合って回転するうちに、ドライブギア10表面で歯当たりしている部分の光明丹が剥離する。
【0046】
続けて、ドライブギア10の歯の位置が、歯位置検出センサ40により検出され(ステップS22)、さらに、ドライブギア10を締結するボルト16の位置が、ボルト位置検出センサ42により検出される(ステップS23)。検出されたドライブギア10の歯の位置およびボルト16の位置の情報は、制御装置44に送信される。これらの情報に基づいて、制御装置44は、ドライブギア10におけるボルトの締結位置を認識する。
【0047】
照明装置36a、bにより、ドライブギア10の歯面12が照射される。車両前進方向にドライブギア10が回転している場合には、照明装置36aにより照射され、後退方向に回転している場合には、照明装置36bにより照射される(ステップS24)。
【0048】
照明装置36a、bにより照射された歯面12の画像が、カメラ34a、bにより撮影され、制御装置44に送信される(ステップS25)。制御装置44は、ドライブギア10の歯当たり面の画像から、ステップS22において受信したボルト16の位置に対応する部位を除外して、歯当たり面の画像を認識する(ステップS26)。ボルト16の位置に対応する部位とは、ボルト16が固定されている部位と反対面の歯面12上の部位である。
【0049】
制御装置44は、ボルト16により変位する歯面12上の所定部位を除いた残りの歯面12の画像を、濃度処理し、光明丹が残っている場所と、剥離している場所を認識する(ステップS27)。歯面12上では、光明丹が完全に剥離せずに薄く削れている部位もある。光明丹の削れ具合の差は、濃度処理により濃さに比例した数値に変換される。したがって、光明丹が剥離したかどうかを判別する数値を予め設定しておけば、一意的に歯面12上の光明丹の剥離部分と非剥離部分を認識できる。
【0050】
制御装置44は、光明丹の剥離部分と非剥離部分との分布に基づいて、歯当たりの良否を判定する(ステップS28)。制御装置44には、ドライブギア10とピニオンギア20の噛み合わせが良好な場合の歯当たり部分、すなわち、光明丹の剥離部分が記憶されている。制御装置44は、この剥離部分の形状が所定の誤差範囲内で一致するか否かにより、歯当たりの良否を判定できる。
【0051】
なお、上記ステップS21〜28の工程を一通り終わったあと、モータ32の回転方向を逆転することによって、車両前進時または後退時の歯当たり検査も連続して実行できる。
【0052】
以上のように、歯当たり状態検査方法および装置によれば、カメラ34a、bにより撮影した歯面12の塗料の状態から、ボルト16の位置に対応する部位を除いて、歯当たり状態を検査する。したがって、歯当たり状態検査の精度を低下させる部位を除いて、精度良く歯当たり状態を検査できる。特に、ドライブギア10はディファレンシャルギアにボルト締結される際に、歯面12に若干歪みが生じる。しかし、歯当たり状態検査方法および装置によれば、ボルト16による歯面12の歪みを除外して、歯面上の塗料の剥離を検査するので、ボルト締結に影響されずに、精度良く歯当たり状態を検査できる。結果として、組立ラインにおいてドライブギア10およびピニオンギア20をディファレンシャルギアに組み付けた後でも、歯当たり状態を検査できる。
【0053】
また、ボルト位置検出センサ42が設けてられている。したがって、ボルト16の位置に基づいて、容易にドライブギア10の歯面12で歪みができる部位を特定できる。
【0054】
さらに、赤色の光明丹をドライブギア10の歯面12に塗布した場合には、照明装置36a、bにより赤色光と略同等の波長の光を照射し、また、白色の光明丹を塗布した場合には、青色光と略同等または青色光より短い波長の光を照射する。したがって、カメラ34a、bで歯面12を撮影してから濃度処理する際の、濃度変化を明確にできる。結果として、光明丹の剥離、非剥離をより明確に検知して、歯辺り状態の検査精度を向上できる。
【0055】
制御装置44は、工程に搬入されたディファレンシャルギアの種類、すなわち、適用車種の情報に合わせて、カメラ34a、bの位置を変更するので、車種ごとに適当にドライブギア10の歯面12を撮影できる。加えて、製品位置検出センサ38により、工程に搬入されたディファレンシャルギアの位置を検出し、カメラ34a、bの位置を補正するので、より確実に歯面12を撮影できる。
【0056】
なお、上記実施形態では、歯車部品を含む製品としてディファレンシャルギアを例示して説明している。しかし、歯当たりを検査する製品であれば、いかなる製品にも本実施形態の歯当たり状態検査方法および装置を適用できる。
【0057】
また、上記実施形態では、ドライブギア10に光明丹を塗布して、歯面12の画像を撮影して、歯当たりを検査している。しかし、これに限定されない。ピニオンギア20に光明丹を塗布して、ピニオンギアの歯面の画像により歯当たり検査してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、制御装置44が一台で各構成を制御したり、検査結果を記録したりしている。しかし、これに限定されない。制御装置44の機能は、異なる装置に分散できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ディファレンシャルギアの斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って見たディファレンシャルギアの断面図である。
【図3】ドライブギアを示す平面図および背面図である。
【図4】ディファレンシャルギアを検査する様子を正面から見た図である。
【図5】ディファレンシャルギアを検査する様子を上面から見た図である。
【図6】ディファレンシャルギアを検査する様子を右側面から見た図である。
【図7】歯当たり状態検査方法の流れを示すフローチャートである。
【図8】歯当たり検査の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
10…ドライブギア、
12…歯面、
14…ネジ穴、
16…ボルト、
20…ピニオンギア、
30…歯当たり状態検査装置、
32…モータ、
33…回転軸、
34a、34b…カメラ、
36a、36b…照明装置、
38…製品位置検出センサ、
40…歯位置検出センサ、
42…ボルト位置検出センサ、
44…制御装置、
50…搬送装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品に組み付けられ、歯が互いに噛み合った2つの歯車部品を回転させる工程と、
前記2つの歯車部品のうち少なくとも一方の歯面に予め塗布された塗料の状態を検出する工程と、
検出された前記歯面の塗料の状態から所定の部位を除いて、前記歯車部品の歯当たり状態を検査する検査工程と、
を含む歯車部品の歯当たり状態検査方法。
【請求項2】
前記所定の部位は、塗料が塗布された前記歯車部品が前記製品に組み付けられる際に、固定部材により変位される部位である請求項1記載の歯当たり状態検査方法。
【請求項3】
前記検査工程は、前記固定部材の位置を検出して、前記所定の部位を特定する工程をさらに含む請求項2記載の歯当たり状態検査方法。
【請求項4】
前記検査工程は、
塗料が塗布された歯面に対して単一波長の光を照射する工程と、
歯面からの反射光に基づいて、前記塗料の剥離状態を解析し、前記歯車部品の歯当たり状態を検査する請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯当たり状態検査方法。
【請求項5】
前記塗料は赤色の光明丹であり、前記検査工程において、赤色光と略同等の波長の光を歯面に照射する請求項4に記載の歯当たり状態検査方法。
【請求項6】
前記塗料は白色の光明丹であり、前記検査工程において、青色光と略同等の波長または青色光よりも短い波長の光を歯面に照射する請求項4に記載の歯当たり状態検査方法。
【請求項7】
組立ラインを搬送されてきた製品に合わせて、前記歯車部品の歯面上の塗料の状態を検出する検出装置の位置を変更する工程をさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の歯当たり状態検査方法。
【請求項8】
組立ラインを搬送されてきた製品の位置を検出する工程と、
製品の位置に基づいて、前記検出装置の位置を補正する工程と、
をさらに含む請求項7に記載の歯当たり状態検査方法。
【請求項9】
製品に組み付けられ、歯が互いに噛み合った2つの歯車部品を回転させる回転手段と、
前記2つの歯車部品のうち少なくとも一方の歯面に予め塗布された塗料の状態を検出する塗料状態検出手段と、
検出された前記歯面の塗料の状態から所定の部位を除いて、前記歯車部品の歯当たり状態を検査する検査手段と、
を有する歯車部品の歯当たり状態検査装置。
【請求項10】
前記所定の部位は、塗料が塗布された前記歯車部品が前記製品に組み付けられる際に、固定部材により変位される部位である請求項9記載の歯当たり状態検査装置。
【請求項11】
前記検査装置は、前記歯面の裏面に固定される前記固定部材の位置を検出する固定部材検出手段を含み、該固定部材検出手段により検出された固定部材の位置に対応する前記歯面上の所定の部位を除いて、歯当たり状態を検査する請求項10記載の歯当たり状態検査装置。
【請求項12】
前記検査装置は、
塗料が塗布された歯面に対して単一波長の光を照射する照射手段をさらに含み、
歯面からの反射光に基づいて、前記塗料の剥離状態を解析し、前記歯車部品の歯当たり状態を検査する請求項9〜11のいずれか一項に記載の歯当たり状態検査装置。
【請求項13】
前記塗料は赤色の光明丹であり、前記照射手段は、赤色光と略同等の波長の光を歯面に照射する請求項12に記載の歯当たり状態検査装置。
【請求項14】
前記塗料は白色の光明丹であり、前記照射手段は、青色光と略同等の波長または青色光よりも短い波長の光を歯面に照射する請求項12に記載の歯当たり状態検査装置。
【請求項15】
前記歯面状態検出手段は、組立ラインを搬送されてきた製品に合わせて、前記歯車部品の歯面上の塗料の状態を検出する位置および姿勢を変更する請求項9〜14のいずれか一項に記載の歯当たり状態検査装置。
【請求項16】
組立ラインを搬送されてきた製品の位置を検出する製品位置検出手段と、
前記製品の位置に基づいて、前記歯面状態検出手段の位置を補正する補正手段と、
をさらに有する請求項9〜15のいずれか一項に記載の歯当たり状態検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−24597(P2007−24597A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204796(P2005−204796)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】