説明

残芯接地用圧着端子

【課題】1種類の工具で容易に残芯線を接地することができる残芯接地用圧着端子を提供する。
【解決手段】本実施形態の残芯接地用圧着端子4は、端子台10上の複数の端子に多芯ケーブル12の芯線を接続した後に余った残芯線13をアース線14と接続する残芯接地用圧着端子4であって、棒状端子(被接続部)1a、及び残芯線13を一本ずつ圧着固定する圧着部1bを備えた残芯線圧着用端子(第1の圧着端子片)1と、残芯線圧着用端子1の棒状端子1aに圧着固定される隣接芯線接続用スリーブ(以下、単にスリーブと呼ぶ)(第2の圧着端子片)3と、残芯線圧着用端子1とスリーブ3とを電気的に接続するリード線(接続部材)2と、を備えて残芯接地用圧着端子4を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残芯接地用圧着端子に関し、さらに詳しくは、多芯ケーブルを配線した後に、未使用の残芯ケーブルをアース線に接続する残芯接地用圧着端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多芯線により構成された外部ケーブルを引き込んで、端子台を中継して内部配線と接続する場合には、図6に示すように端子台41上の各端子に多芯線43の各心線を接続することにより行われている。そのとき、多芯線の中で使用しない余剰心線44が発生する場合は、可能な限りその未使用の余剰心線44を端子台41の端子を介してアース42に落とす処理を行うが、端子数が足りない場合は、余剰心線44をどこにも固定せずに放置する、所謂浮かしたままの状態にする場合がある。このような場合、浮かしたままの余剰芯線を伝播したサージ電圧により、内部の電子回路を破壊するといった問題がある。そこで、図7に示すように、外部導体52を有するシースなし多芯線50を使用して、図8に示すように、外部導体52の部分をアース板45により挟み込んで、アース線42で接地する方法がとられている。しかし、外部導体52を有する多芯線50の場合は、アース板45を用意して、複数の多芯線50をアース板で挟み込んで接地する工事が必要となり、ケーブルの交換が容易ではないといった問題がある。
また、上記多芯ケーブルの接地方法として、特許文献1には、ケーブルシースの上から金属製の筒状のクランプを装着すると共に、ケーブルシールドとクランプに夫々アースを接続して、高周波に対する多点接地をとるケーブルシールドの接地装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−131229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている従来技術は、シールド付のシースケーブルの他にクランプを装着する必要があり、ケーブルのコストが上昇するといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、棒状端子を有し残芯線を1本ずつ圧着する圧着部と、隣接する圧着部の棒状端子と圧着されるスリーブとをリード線により接続して1対の残芯設置用圧着端子を構成し、この残芯設置用圧着端子を全ての残芯線に圧着固定することにより、1種類の工具で容易に残芯線を接地することができる残芯接地用圧着端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、端子台上の複数の端子に多芯ケーブルの芯線を接続した後に余った残芯線をアース線と接続する残芯接地用圧着端子であって、被接続部、及び前記残芯線を一本ずつ圧着固定する圧着部を備えた第1の圧着端子片と、該第1の圧着端子片の被接続部に圧着固定される第2の圧着端子片と、前記第1の圧着端子片と前記第2の圧着端子片とを電気的機械的に接続する接続部材と、を備えたことを特徴とする。
多芯ケーブルは、芯線の本数が標準的に決められているのが一般的である。従って、使用する信号線の本数に近い多芯ケーブルを使用して端子台の端子に接続する。このとき、使用しないケーブルが余ってしまうことがある。この余ったケーブルを残芯線と呼ぶが、残芯線を浮いたままにしておくと、そこからサージ電圧が伝播して内部の電子回路を破壊する虞があるため、残芯線をアースに接続する必要がある。そこで本発明では、被接続部、及び残芯線を一本ずつ圧着固定する圧着部を備えた第1の圧着端子片と、第1の圧着端子片の被接続部に圧着固定される第2の圧着端子片と、を接続部材により接続した残芯接地用圧着端子を、多芯ケーブルの全ての残芯線に圧着固定する。これにより、1種類の工具で容易に残芯線を接地することができる。
【0006】
請求項2は、前記接続部材は、リード線であることを特徴とする。
第1の圧着端子片と第2の圧着端子片とを接続する接続部材は、電気的に接続される導体であればどのような部材でも構わない。そこで本発明では、接続部材を最も一般的なリード線とする。これにより、第1の圧着端子片と第2の圧着端子片の位置関係を、ある程度自由に決定することができる。
【0007】
請求項3は、前記接続部材は、前記第1の圧着端子片と前記第2の圧着端子片とを所定の位置関係にて固定一体化する一体化部材であることを特徴とする。
第1の圧着端子片と第2の圧着端子片とを接続する接続部材は、電気的に接続される導体であればどのような部材でも構わない。そこで本発明では、接続部材を第1の圧着端子片と第2の圧着端子片とを所定の位置関係にて固定一体化する一体化部材とする。これにより、圧着端子片を金型で形成することができ、大量生産が可能となる。
【0008】
請求項4は、端子台上の複数の端子に多芯ケーブルの芯線を接続した後に余った残芯線をアース線と接続する残芯接地用圧着端子であって、前記残芯線を一本ずつ圧着固定するスリーブ状の圧着部と、前記圧着部の外面に設けられた接続部及び被接続部と、を備え、前記接続部は、前記被接続部と結合可能な形状を備えていることを特徴とする。
圧着端子片をリード線により電気的に接続する場合、リード線を所定の長さに切断し、その両端を芯線が出るように外皮を剥き、そのように加工したリード線を圧着端子片の適所に圧着或いは半田付けする必要がある。このような工程は大量生産には向かない。そこで本発明では、残芯線を一本ずつ圧着固定するスリーブ状の圧着部を備え、圧着部の外面には、被接続部と、この被接続部と結合可能な形状を備えた接続部を備える。これにより、1種類の形状の圧着部により、多数の残芯線を容易に電気的に接続することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被接続部、及び残芯線を一本ずつ圧着固定する圧着部を備えた第1の圧着端子片と、第1の圧着端子片の被接続部に圧着固定される第2の圧着端子片と、を接続部材により接続した残芯接地用圧着端子を、多芯ケーブルの全ての残芯線に圧着固定するので、1種類の工具で容易に残芯線を接地することができる。
また、接続部材を最も一般的なリード線とするので、第1の圧着端子片と第2の圧着端子片の位置関係を、ある程度自由に決定することができる。
また、接続部材を第1の圧着端子片と第2の圧着端子片とを所定の位置関係にて固定一体化する一体化部材とするので、圧着端子片を金型で形成することができ、大量生産が可能となる。
また、残芯線を一本ずつ圧着固定するスリーブ状の圧着部を備え、圧着部の外面には、被接続部と、この被接続部と結合可能な形状を備えた接続部を備えるので、1種類の形状の圧着部により、多数の残芯線を容易に電気的に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図であり、(b)は本実施形態の残芯接地用圧着端子を使用したときの接続イメージを示す図であり、(c)は多芯ケーブルを端子台に接続したときに、残芯線に本実施形態の残芯接地用圧着端子を使用したときの接続イメージを示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。
【図5】本発明の第5の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。
【図6】従来の多芯ケーブルを端子台に接続したときの接続イメージを示す図である。
【図7】外部導体を有するシースなし多芯線の構成を説明する図である。
【図8】図7の外部導体を有するシースなし多芯線をアース板で接地する様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0012】
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。本実施形態の残芯接地用圧着端子4は、端子台10上の複数の端子に多芯ケーブル12の芯線を接続した後に余った残芯線13をアース線14と接続する残芯接地用圧着端子4であって、棒状端子(被接続部)1a、及び残芯線13を一本ずつ圧着固定する圧着部1bを備えた残芯線圧着用端子(第1の圧着端子片)1と、残芯線圧着用端子1の棒状端子1aに圧着固定される隣接芯線接続用スリーブ(以下、単にスリーブと呼ぶ)(第2の圧着端子片)3と、残芯線圧着用端子1とスリーブ3とを電気的に接続するリード線(接続部材)2と、を備えて残芯接地用圧着端子4を構成する。
【0013】
図1(b)は本実施形態の残芯接地用圧着端子を使用したときの接続イメージを示す図である。例えば、3本の残芯線5、6、7をアース線8と接続する場合について説明する。残芯接地用圧着端子4を3組用意し、夫々の残芯線圧着用端子1の圧着部1bを残芯線5、6、7の芯線部に夫々挿着する。この状態では、夫々のスリーブ3はどこにも接続されていない状態である。次に、リード線2で接続されたスリーブ3を隣接する夫々の残芯線圧着用端子1の棒状端子1aに挿着する。即ち、残芯線5のスリーブ3は残芯線6の棒状端子1aに、残芯線6のスリーブ3は残芯線7の棒状端子1aに夫々挿着する。その結果、残芯線7のスリーブ3だけが、どこにも接続されていない状態となる。そして残芯線7のスリーブ3をアース線8の芯線に挿着する。最後に、全ての残芯線圧着用端子1とスリーブ3を圧着する。これにより、残芯線5、6、7とアース線8が電気的に接続される。
【0014】
図1(c)は多芯ケーブルを端子台に接続したときに、残芯線に本実施形態の残芯接地用圧着端子を使用したときの接続イメージを示す図である。端子台10は、盤内の電子回路に接続される信号線9を接続する端子と、残芯線をアース11に接続する端子15がある。本実施形態では、複数の多芯ケーブル12(本実施形態では6本)があり、説明を簡略化するために、各多芯ケーブルには、4本の芯線が内包され、そのうちの3本を信号線として使用し、1本を不使用とする。その結果、残芯線13が6本となり、端子台10の端子は1つだけ余り、端子15にアース線14を接続することになる。本実施形態では、図1(b)で説明した手順で、6本の残芯線13を残芯接地用圧着端子4を使用してアース線14に接続する。
【0015】
即ち、多芯ケーブル12は、芯線の本数が標準的に決められているのが一般的である。従って、使用する信号線の本数に近い多芯ケーブルを使用して端子台10の端子に接続する。このとき、使用しないケーブルが余ってしまうことがある。この余ったケーブルを残芯線13と呼ぶが、残芯線13を浮いたままにしておくと、そこからサージ電圧が伝播して内部の電子回路を破壊する虞があるため、残芯線13をアース線14に接続する必要がある。そこで本実施形態では、棒状端子1a、及び残芯線13を一本ずつ圧着固定する圧着部1bを備えた残芯線圧着用端子1と、残芯線圧着用端子1の棒状端子1aに圧着固定されるスリーブ3と、残芯線圧着用端子1とスリーブ3と、をリード線2により接続した残芯接地用圧着端子4を、多芯ケーブル12の全ての残芯線13に圧着固定する。これにより、1種類の工具で容易に残芯線13を接地することができる。
また、残芯線圧着用端子1とスリーブ3とを接続する接続部材は、電気的に接続される導体であればどのような部材でも構わない。そこで本実施形態では、接続部材を最も一般的なリード線2とする。これにより、残芯線圧着用端子1とスリーブ3の位置関係を、ある程度自由に決定することができる。
【0016】
図2は本発明の第2の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。同じ構成要素には図1と同じ参照番号を付して説明する。本実施形態の残芯接地用圧着端子20は、残芯線圧着用端子1とスリーブ3とを所定の位置関係にて固定一体化する一体化部材25により構成されている。即ち、本実施形態では、スリーブ3の位置を、棒状端子1aと同じ位置になるようにした。こうすることにより、隣接する残芯線圧着用端子1との高さが同じとすることができる。また、残芯線圧着用端子1とスリーブ3とを接続する接続部材は、電気的に接続される導体であればどのような部材でも構わない。そこで本実施形態では、接続部材を残芯線圧着用端子1とスリーブ3とを所定の位置関係にて固定一体化する一体化部材25とする。これにより、残芯線圧着用端子1を金型で形成することができ、大量生産が可能となる。
【0017】
図3は本発明の第3の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。本実施形態の残芯接地用圧着端子21は、端子台上の複数の端子に多芯ケーブルの芯線を接続した後に余った残芯線をアース線と接続する残芯接地用圧着端子21であって、残芯線を一本ずつ圧着固定するスリーブ状の圧着部23aと、圧着部23aの上部23の外面に設けられた接続部22及び被接続部24と、を備え、接続部22は、被接続部23と結合可能な形状を備えている。即ち、残芯線圧着用端子1をリード線2により電気的に接続する場合、リード線2を所定の長さに切断し、その両端を芯線が出るように外皮を剥き、そのように加工したリード線を残芯線圧着用端子1とスリーブ3との適所に圧着或いは半田付けする必要がある。このような工程は大量生産には向かない。そこで本実施形態では、残芯線を一本ずつ圧着固定するスリーブ状の圧着部23aを備え、圧着部23aの上部23の外面には、被接続部24と、この被接続部24と結合可能な形状を備えた接続部22を備える。これにより、1種類の形状の圧着部23により、多数の残芯線を容易に電気的に接続することができる。
【0018】
図4は本発明の第4の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。本実施形態の残芯接地用圧着端子22は、既存の差込端子30を利用したものである。差込端子は、端子本体に複数の挿入口があり、各挿入口は図示しない部分で電気的に接続されている。従って、芯線32を挿入口31に差し込むと、中でロックされる機構があり、他の挿入口から差し込まれた芯線33と電気的に接続される。この機能を利用して、本発明の残芯接地用圧着端子として使用することが可能である。即ち、残芯を挿入口に差込み、アース線を別の挿入口に差し込むことにより、図1〜図3と同じ機能を果たすことができる。
【0019】
図5は本発明の第5の実施形態に係る残芯接地用圧着端子の構成を示す図である。本実施形態の残芯接地用圧着端子26は、導体で構成された2枚の圧着板34、36に、残芯線38の芯線部39を挿着して圧着する溝部35、37を形成する。尚、圧着板34、36は穴27にボルトを通して固定した後、溝部35、37を圧着する。これにより、多数の残芯線を同時に圧着することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 残芯線圧着用端子、2 リード線、3 隣接芯線接続用スリーブ、4 第1の実施形態の残芯接地用圧着端子、5、6、7 残芯線、8 アース線、9 信号線、10 端子台、11 接地、12 多芯ケーブル、13 残芯線、14 アース線、15 アース端子、20 第2の実施形態の残芯接地用圧着端子、21 第3の実施形態の残芯接地用圧着端子、22 接続部、23a 圧着部、24 被接続部、25 一体化部材、26 第5の実施形態の残芯接地用圧着端子、30 差込み端子、31 挿入口、32、33 芯線、34、36 圧着板、35、37 溝部、38 残芯線、39 芯線部、40 信号線、41 端子台、42 接地、43 多芯線、44 残芯線、45 アース板、50 外部導体を有する多芯線、51 芯線、52 外部導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子台上の複数の端子に多芯ケーブルの芯線を接続した後に余った残芯線をアース線と接続する残芯接地用圧着端子であって、
被接続部、及び前記残芯線を一本ずつ圧着固定する圧着部を備えた第1の圧着端子片と、該第1の圧着端子片の被接続部に圧着固定される第2の圧着端子片と、前記第1の圧着端子片と前記第2の圧着端子片とを電気的機械的に接続する接続部材と、を備えたことを特徴とする残芯接地用圧着端子。
【請求項2】
前記接続部材は、リード線であることを特徴とする請求項1に記載の残芯接地用圧着端子。
【請求項3】
前記接続部材は、前記第1の圧着端子片と前記第2の圧着端子片とを所定の位置関係にて固定一体化する一体化部材であることを特徴とする請求項1に記載の残芯接地用圧着端子。
【請求項4】
端子台上の複数の端子に多芯ケーブルの芯線を接続した後に余った残芯線をアース線と接続する残芯接地用圧着端子であって、
前記残芯線を一本ずつ圧着固定するスリーブ状の圧着部と、前記圧着部の外面に設けられた接続部及び被接続部と、を備え、
前記接続部は、前記被接続部と結合可能な形状を備えていることを特徴とする残芯接地用圧着端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−129055(P2012−129055A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279062(P2010−279062)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】