説明

段ボールケース

【課題】比較的簡易な構成であって組立て容易であり、しかも各パック容器の短尺側両側辺を確固と安定状態に支持することができ、以て、パック容器の底が直接段ボールケースに触れることに起因する青果物等の荷傷みを確実に防止し得る段ボールケースを提供することを課題とする。
【解決手段】箱状に組立てられる容体と、容体内に嵌め込まれる十字形仕切りとから成り、容体の短尺壁形成部は、底壁1に連設された短尺外側面形成部10と、短尺外側面形成部10を両側に延長し且つ該両側延長部を外方に延長して形成した折込片形成部と、短尺外側面形成部10から適宜間隔を置いて折込片形成部の外方延長部間に連設される支持壁形成部14とから成り、支持壁形成部14の両側には折曲線28が形成され、折曲線28の作用で容体組立時に支持壁形成部14と短尺外側面形成部10とが離隔される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は段ボールケース、より詳細には、イチゴ等の青果物その他の製品を入れたパック容器を複数収納するケースであって、その収納に際し、当該パック容器の縁を引っ掛けて所謂宙吊り状態にする段ボールケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、いちご、いちじく、ぶとう等の青果物は、直接段ボールケースに収納されることはなく、パック容器に入れられた上で、複数パック(通例2又は4パック)ごとに段ボールケースに収納されて流通に供せられる。
【0003】
従来用いられてきたパック容器使用の段ボールケースは、パック容器の底部が直接段ボールケースに触れる方法で収納するものであった。しかし、その方法の場合は、流通時の荷傷みが発生しやすく、荷傷みは、青果物の市場価格の低下、廃棄処分などの原因となるため、青果物出荷用包材においても検討せざるを得ない課題となっていた。
【0004】
この対策のために、パック容器が直接段ボールケースに触れることの無いようにケース内でパック容器を浮かす、所謂宙吊り構造が考えられている。また、使用者の負担が増えないよう、容易な手法でのパック容器宙吊り構造が要求されている。例えば、特開2005−15046号公報記載のものがこれに当たる。しかし、そこに記載のものは、パック容器の縁を引掛けるために側壁から舌片を出すものであるが、この舌片ではパック容器の支持が不安定となり、パック容器の底面がケース底面に接触するおそれがある。
【0005】
特開2004−292054号公報記載のものは、パック容器の断面半円形の縁を引掛ける部分が平坦面であるために滑りやすいだけでなく、四周壁のすべてが二重構造であって、材料使用量が多くて複雑になり、組立てにも手間がかかるという問題がある。
【0006】
特開2005−35612号公報記載のものは、ケースの短尺側側壁に形成されてパック容器の短尺側側辺を引掛ける支持片の支持が十分とは言えず(特に両端部)、内方に傾きやすいだけでなく、四周壁が二重壁であって、上記特開2004−292054号と同様の問題がある。
【0007】
更に特開2005−112448号公報記載のものにおいては、その第一実施例では、パック容器の短尺側はケースの角部に配備される支持片に引掛けられるために安定せず、また、その第二実施例においては、パック容器の短尺側が引掛けられる支持片は、両側壁から折曲され、内端突合わせ部が縦仕切片にて咬合されるが、その咬合は必ずしも十分とは言えず、衝撃で外れるおそれがあり、パック容器の支持が十分に行われないおそれがある。
【0008】
なお、特開2005−29257号公報記載のものもあるが、これは、ケース底面に、両側から傾斜面にてパック容器を支持してケース底面から浮上させる添当部を設けるものであるが、これはパック容器の底面を下から受けて支持するものであって、本願発明において企図する宙吊り状態とは異なる。
【0009】
【特許文献1】特開2005−15046号公報
【特許文献2】特開2004−292054号公報
【特許文献3】特開2005−35612号公報
【特許文献4】特開2005−112448号公報
【特許文献5】特開2005−29257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来提唱されているパック容器宙吊り構造の段ボールケースには、パック容器を安定状態に支持し得ない、段ボール紙材使用量が多いためにコスト高となり、構造が複雑で、組立てに手間がかかるといった問題があったので、本願発明はそのような問題のない、即ち、比較的簡易な構成であって組立て容易であり、しかも各パック容器の短尺側両側辺を確固と安定状態に支持することができ、以て、パック容器の底が直接段ボールケースに触れることに起因する青果物等の荷傷みを確実に防止し得る段ボールケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、段ボール材を折曲して箱状に組立てられる容体と、前記容体内に嵌め込まれて前記容体内を4つに区画する十字形仕切りとから成り、前記容体の長尺壁は、長尺壁内側面形成部を底壁に連設される長尺外側面形成部上に折り畳んだ後起立させることにより形成され、前記容体の短尺壁形成部は、前記底壁に連設された短尺外側面形成部と、前記短尺外側面形成部を両側に延長し且つ該両側延長部を外方に延長して形成した折込片形成部と、前記短尺外側面形成部から適宜間隔を置いて前記折込片形成部の前記外方延長部間に連設される支持壁形成部とから成り、前記支持壁形成部の両側には折曲線が形成され、前記折曲線の作用で前記容体組立時に前記支持壁形成部と前記短尺外側面形成部とが離隔されることを特徴とする段ボールケースである。
【0012】
好ましくは、前記仕切りは横仕切りと縦仕切りとから成る十字形仕切りであり、前記横仕切りは、両端部及び中間部に配設される連結面を介して断面コ字状に組立てられ、その両側面上端は、前記端部と中間部に存する連結面間において上方に延出してパック容器の支持壁を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る段ボールケースは上記構成のため、比較的簡易な構成であって組立て容易であり、しかも各パック容器の短尺側両側辺を確固と安定状態に浮上させて支持することができ、以て、パック容器の底が直接段ボールケースに触れることに起因する青果物等の荷傷みを確実に防止し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る段ボールケースは、容体Aと、容体A内に組み込まれて容体A内を仕切る、例えば、十字形の仕切りBとから成る。図1は、それを形成するための、段ボール材を打ち抜いて形成した台紙を示すものである。それはパック容器4個収納用で、容体形成部と十字形仕切り形成部とを含んでいる。台紙中の実線は切線を、破線は折曲線を示している。
【0015】
先ず、容体形成部について説明するに、図中1は容体の底壁であり、その両長辺側(図1において左右側辺。以下の説明で左右、上下とあるのは、図1を基準とする。)に二重壁である長尺壁4a、4aが設置される。この長尺壁4a、4a形成のために、底壁1の両長辺に連続して長尺壁外側面形成部2、2が設けられ、その外側に、額縁形成部3、3を介して長尺壁内側面形成部4、4が連設される。また、底壁1と長尺壁外側面形成部2、2との間の折曲線5、5に沿って、上下2つずつ差込口6、7が穿設される。中寄りの各差込口6には、組立時にそれぞれ、長尺壁内側面形成部4、4の外側辺に突設された差込突部8が差込まれる。
【0016】
底壁1の両短辺には、パック容器の短尺側上縁を引掛けるための支持壁14aが設置される。そのために、底壁1の両短辺に連続して短尺壁外側面形成部10、10が設けられ、その両側に、折込片形成部11、12が延設される。折込片形成部11、12の長さ(左右方向)は、長尺壁外側面形成部2、2の長さの約2分の1とされ、その幅(上下方向)は、短尺壁外側面形成部10、10の約2倍とされ、その中間横方向に折曲線13、13が刻設される。
【0017】
折込片形成部11、12の外方向延長部(折曲線13、13の外側)間に、支持壁形成部14、14が渡される。支持壁形成部14、14の両側には折曲線28、28が刻設され、また、各支持壁形成部14、14と短尺壁外側面形成部10、10との間には、両者を離隔するための打抜き穴15、15が設けられる。この打抜き穴15、15の上下方向幅によって支持壁形成部14、14の幅、換言すれば、支持壁14aの高さが決まるので、支持壁形成部14、14の幅は、収納するパック容器の高さよりも少し大となるように設定する必要がある。
【0018】
一方の長尺壁内側面形成部4の外側に、十字形仕切りBを形成するための縦仕切り形成部16と横仕切り形成部17とが、それぞれ切り取り可能に連設されている。これらの縦仕切り形成部16と横仕切り形成部17は、組立時に切り離される(図2参照)。
【0019】
縦仕切り形成部16には、両端部と中央部2個所に切込み18、19が形成され、そのまま縦仕切り26として利用される。横仕切り形成部17は、両端部と中央部に、それぞれ所定幅の平行折曲線20、21が短く刻設され、また、中央長さ方向に延びて、平行折曲線20と平行折曲線21に続く切線22が入れられる。
【0020】
横仕切り形成部17において、両側部を平行折曲線20,21に沿って直角に折曲すると、両端部の平行折曲線20、20間及び中央部の平行折曲線21、21間にそれぞれ連結面23、24が残り、この連結面23、24を上面とする断面倒コ字形の横仕切り25が組み上がる(図3参照)。この横仕切り25の両側板は、その上端面にパック容器の一方の短尺辺を引掛ける支持壁17aとなる。縦仕切り26は、上方よりその中央部の切込み19、19を、横仕切り25の連結面24から支持壁17aにかけて形成されるスリット28に咬合させて組み付け、以て十字形仕切りBを構成する。
【0021】
上記台紙を折曲して容体Aを組み立てるには、先ず、上下の折込片形成部11、12を、それぞれ折曲線13、13から二つ折りにする(図4参照)。その際、支持壁形成部14、14も翻転して、短尺壁外側面形成部10、10上に重なる。次いで、二つ折りした折込片形成部11、12をそれぞれ折曲線31、31a、32、32aから直角に折曲して折込片11a、12aを形成し、更に、短尺壁外側面形成部10、10を折曲線33、33から折曲して直角に起立させ、短尺壁10a、10aを形成する(図5)。
【0022】
上記折込片11a、12aの折曲に伴い、支持壁形成部14、14が短尺壁外側面形成部10から離隔する。即ち、折曲線31、32と折曲線31a、32aは、図1に示すように同一線上に刻設されるため、重ねて折曲すると、段ボールの厚みの関係で、内側の折曲線31a、32a間の支持壁形成部14、14が両側から圧縮力を受ける(図9参照)。しかるに、支持壁形成部14、14の両側には折曲線28、28が刻設されているので、上記圧縮力は、支持壁形成部14、14が折曲線28、28から折曲することで逃がすことができる。その結果、支持壁形成部14、14は短尺壁外側面形成部10、10から浮上して離隔する。
【0023】
上記のように、短尺壁外側面形成部10、10を折曲線33、33から折曲して起立させることにより、外側に短尺壁10a、10aが形成されると同時に、内側に支持壁14a、14aが構成される。その際、両側の折込片11a、11a(12a、12a)がそれぞれ折曲線5、5上に位置するので(図5参照)、各折込片を、長尺壁外側面形成部2、2を折曲線5、5から折曲すると共に、長尺壁内側面形成部4、4を額縁形成部3、3に沿って折曲することによってくるみ、以て、各折込片11a、12aを包持した長尺壁4a、4aが構成される(図6、図7参照)。なお、その際、各差込突部8が、それぞれ対応する差込口6に差し込まれる。
【0024】
このようにして容体Aを組立てた後、容体A内に十字形仕切りBを差し込み、縦仕切り26の切込み18、18に支持壁14a、14aの中間部を嵌め入れることにより組立て完成となる(図8参照)。
【0025】
このように本発明に係る段ボールケースは、短尺壁10aと支持壁14aとの同時立上げ工程、折込片11a、12aをくるみながらの長尺壁4a構成工程、十字形仕切りBの組み付け工程という単純且つ簡易な方法で、何人も容易且つ迅速に組立てることができる。
【0026】
そして、組立てられた段ボールケースにおいては、支持壁14a、14aは両側から固定され且つ中央部が縦仕切り26によって保持されるので、揺動することなく確固としたものとなる。また、横仕切り25は、連結面23、24を介して倒コ字形に形成され且つ縦仕切り26に保持されるので、やはり揺動することなく確固としたものとなる。かくして、収納されたパック容器40は、その短尺辺側上縁が、その凹部に支持壁14aと横仕切り25の支持壁17aとが入り込むことによって、その全長近くに亘って確実に掛止支持されるので、パック容器40は段ボールケース内において安定した宙吊り状態を維持する。
【0027】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る段ボールケースを形成するための台紙の展開図である。
【図2】図1に示す台紙から縦仕切り形成部及び横仕切り形成部を切り離した状態を示す図である。
【図3】本発明に係る段ボールケースにおける十字形仕切りの組立方法を示す図である。
【図4】本発明に係る段ボールケースにおける容体の第1組立工程を示す図である。
【図5】本発明に係る段ボールケースにおける容体の第2組立工程を示す図である。
【図6】本発明に係る段ボールケースにおける容体の第3組立工程を示す図である。
【図7】本発明に係る段ボールケースにおける容体の第4組立工程を示す図である。
【図8】本発明に係る段ボールケースにおける容体の第5組立工程を示す図である。
【図9】本発明に係る段ボールケースにおける短尺壁側支持壁の形成方法を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 底壁
2 長尺壁外側面形成部
3 額縁形成部
4 長尺壁内側面形成部
4a 長尺壁
5 折曲線
6、7 差込口
8 差込突部
10 短尺壁外側面形成部
10a 短尺壁
11、12 折込片形成部
11a、12a 折込片
13 折曲線
14 支持壁形成部
14a 支持壁
15 打抜き穴
16 縦仕切り形成部
16 横仕切り形成部
17a 支持壁
18、19 切込み
20、21 平行折曲線
22 切線
23、24 連結面
25 横仕切り
26 縦仕切り
28 スリット
31、31a、32、32a、33 折曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール材を折曲して箱状に組立てられる容体と、前記容体内に嵌め込まれて前記容体内を区画する仕切りとから成り、前記容体の長尺壁は、長尺壁内側面形成部を底壁に連設される長尺壁外側面形成部上に折り畳んだ後起立させることにより形成され、前記容体の短尺壁形成部は、前記底壁に連設された短尺壁外側面形成部と、前記短尺壁外側面形成部を両側に延長し且つ該両側延長部を外方に延長して形成した折込片形成部と、前記短尺壁外側面形成部から適宜間隔を置いて前記折込片形成部の前記外方延長部間に連設される支持壁形成部とから成り、前記支持壁形成部の両側には折曲線が形成され、前記折曲線の作用で前記容体組立時に前記支持壁形成部と前記短尺壁外側面形成部とが離隔されることを特徴とする段ボールケース。
【請求項2】
前記仕切りは横仕切りと縦仕切りとから成る十字形仕切りであり、前記横仕切りは、両端部及び中間部に配設される連結面を介して断面コ字状に組立てられ、その両側面上端は、前記端部と中間部に存する連結面間において上方に延出してパック容器の支持壁を構成する請求項1に記載の段ボールケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−161305(P2007−161305A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360666(P2005−360666)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(300067952)アサヒ紙工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】