説明

殺菌性の空気フィルタ

空気通路と共に使用される殺菌性の空気フィルタであって、該殺菌性の空気フィルタは、繊維の構造の中に取入れられかつ分子的に結合され、該空気通路を通って動くある容積の空気中に浮遊する病原菌を実質的に固定化し、保持し、かつ少なくとも病原菌の成長を抑制し、または通常は殺すために十分なある量の少なくとも1つの抗病原菌剤を有する複数の繊維(20)を含む固定化網状組織(12)を含む、殺菌性の空気フィルタ(10)。該固定化網状組織(12)は、空気に対して実質的に透過性がある。固定化網状組織(12)を使用する殺菌性のフェースマスク(24)および空気循環システム(40)において使用される殺菌性の空気フィルタ(10)が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、空気フィルタ、さらに詳細には、殺菌性の空気フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
空気で運ばれる病原菌および環境アレルゲンを除去することは、高いレベルの空気清浄を必要とする環境、例えば病院および前記のアレルゲンに対する深刻なアレルギー性反応に苦しむ人々の家においては、非常に重要である。通常、マスクまたは空気中ダクトフィルタの形式のデバイスは、空気循環中かまたはフェースマスクの場合には吸入および吐き出しの間中に微粒子物質を濾過する。フェースマスクおよび空気ダクトフィルタは、病原菌およびアレルゲン、ならびにほこりのような微粒子物質を、濾過材料の表面で一時的に捕捉する。いったんフィルタが、閾値限界に達するか、または1回使用された後は、それらは通常、廃棄されるかまたは一部の場合には、洗浄され再使用される。濾過デバイスには多くの設計が存在に、それらの例は次のとおりである。
【0003】
・1919年10月28日、「Air filter for wall registers」に対して、Drewに発行された特許文献1
・1973年1月16日、「Self−sustaining pocket type filter」に対して、Sextonに発行された特許文献2
・1973年12月18日、「Disposable face respirator」に対して、Weeksに発行された特許文献3
・1974年4月9日、「Surgical face mask」に対して、Birdに発行された特許文献4
・1980年4月8日、「Filtering member for filters」に対して、Hausheerに発行された特許文献5
・1989年1月17日、「Low pressure drop bacterial filter and method」に対して、Matkovichに発行された特許文献6
・1996年6月11日、「Gasketed multi−media air cleaner」に対して、Rosenに発行された特許文献7
・1998年5月5日、「Antiviral filter air cleaner impregnated with tea extract」に対して、Nashimotoに発行された特許文献8
・1999年5月25日、「Electrostatic supercharger screen」に対して、Dudleyに発行された特許文献9
・2000年3月14日、「Disinfecting gas filters」に対して、Shandromに発行された特許文献10
・2003年2月4日、「Anti−microbial fibrous media」に対して、Rohrbachらに発行された特許文献11
前記設計は、多くの重要な欠点に苦しむ。不利なことに、上に述べられた設計においては、使用後に汚れたフィルタまたはフェースマスクを除去すると、固定化が失われた病原菌、または微粒子がユーザのすぐ周囲で空気中に飛散し得、これは吸入されるとユーザにとって危険である。さらに、上記設計は空気で運ばれる病原菌を固定化し得ず、かつそれらをその場で殺し得ない。上記設計のうちの一部は、粘着性の物質をフィルタ材料の中に取入れ、微粒子物質を捕捉する。一部の設計は、カートリッジの内側にフィルタの複雑な配置を取入れているが、これは空気ダクトまたはフェースマスクにおける使用に対しては非実用的であり得る。一部の場合では、繊維ガラスが、フィルタ媒質の一部として使用されているが、これは、鼻および口の近くに位置する場合人にとって有害であり得る。1つの設計においては、脱脂綿に浸された消毒剤が空気ダクトの中に位置することにより、部屋の中にエーロゾル化し、湿度を維持しているようである。そのような湿った消毒剤の使用は、消毒剤の間近にいる人にとって有害であり得、フェースマスクにおける使用に対しては適切ではあり得ない。別のフィルタ媒質は、ゆっくりとそこから解放されるように抗菌剤に満ちた空洞を有する繊維を使用する。別の設計は、繊維の使用と同時に繊維から自由に分離する抗菌剤を内に含んで製造される繊維を開示している。これらの繊維設計は、洗浄またはウォッシングと同時に速やかに抗菌作用を失うという問題を有している。
【0004】
従って、改善された殺菌性の空気フィルタに対する必要性がある。
【特許文献1】米国特許第1,319,763号明細書
【特許文献2】米国特許第3,710,948号明細書
【特許文献3】米国特許第3,779,244号明細書
【特許文献4】米国特許第3,802,429号明細書
【特許文献5】米国特許第4,197,100号明細書
【特許文献6】米国特許第4,798,676号明細書
【特許文献7】米国特許第5,525,136号明細書
【特許文献8】米国特許第5,747,053号明細書
【特許文献9】米国特許第5,906,677号明細書
【特許文献10】米国特許第6,036,738号明細書
【特許文献11】米国特許第6,514,306号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、殺菌性の空気フィルタを提供することによって、従来技術の問題の難しさおよび不利を減じ、かつ解決する。該殺菌性の空気フィルタは、繊維の新規な固定化網状組織で病原性微生物を捕捉し、かつ殺す。これを達成するためには、繊維は、繊維の製造中にその構造の中に取入れられた抗病原菌剤を含み、これによって繊維はその近くの微生物を実質的に殺す。抗菌剤は、強い分子結合で繊維の構造の内部および外部に固定される。これによって、使用後および処分中に、フィルタから微生物がさらに解放されることに関連する問題を減じ、または本質的に解消する。有利にも、フィルタは、フェースマスクとしてまたは空気循環ダクト中において使用され得、通常は、後フィルタとして、または濾過の下流で使用され得、広く様々な微生物を捕捉しかつ殺し得る。繊維は、例えばしかしながら限定されず、ポリ塩化ビニール(PVC)を基礎とする材料で作られ得、この材料は、繊維が、抗菌剤と繊維の構造との間の分子結合により、抗菌作用を大きく失うことなく、ほとんど際限なく、洗われかつ再使用され得ることを可能にする。
【0006】
本発明の一局面に従って、空気通路に使用される殺菌性の空気フィルタが提供され、該空気フィルタは、繊維の構造の中に取入れられかつ分子的に結合され、該空気通路を通って動くある容積の空気中に浮遊する病原菌を実質的に固定化し、保持し、かつ少なくとも病原菌の成長を抑制し、または通常は殺すために十分なある量の少なくとも1つの抗病原菌剤を有する複数の繊維を含む固定化網状組織であって、該空気に対して実質的に透過性がある、該固定化網状組織を含む。
【0007】
一実施形態においては、固定化網状組織は、後フィルタであることにより、空気は空気通路に到達する前に前もって濾過される。
【0008】
一実施形態においては、空気フィルタは、ユーザの鼻および口の上に適合し、その周囲に固定されるように構成され、かつサイズが決められるフェースマスクである。
【0009】
一実施形態においては、空気フィルタは、空気通路を形成する空気ダクトシステムに適合するように構成され、かつサイズが決められる空気ダクトフィルタである。
【0010】
通常、空気フィルタは、それぞれの周辺エッジに沿って一緒に固定可能である、第1および第2の空気透過性のスクリーン要素であって、該スクリーン要素は、空気ダクトシステムに適合し、かつそこに固定されるように構成されかつサイズが決められる、スクリーン要素をさらに含み、前記空気透過性の固定化網状組織は、該第1と第2のスクリーン要素間に実質的に位置する。
【0011】
好都合にも、締め部材が、前記第1および第2の空気透過性スクリーン要素を一緒に接続し、前記固定化網状組織をその間に挟む。
【0012】
通常、前記締め部材はフレームを含むことにより、前記第1および第2のスクリーン要素を一緒に接続する。
【0013】
好都合にも、前記締め部材は、前記固定化網状組織の全体にわたって位置し、該固定化網状組織を小区画に分ける複数のステッチ(stitches)をさらに含む。
【0014】
本発明の別の局面に従って、殺菌性のフェースマスクであって、該殺菌性のフェースマスクは、それぞれの周辺エッジに沿って一緒に固定される第1および第2の空気透過性のスクリーン要素であって、その間に空隙を定め、ユーザの口および鼻の上に適合し、かつそこに固定されるように構成されかつサイズが決められる、スクリーン要素と、該空隙に位置しかつ該空隙を実質的に満たす空気透過性の固定化網状組織であって、繊維の構造の中に取入れられかつ分子的に結合され、該網状組織を通って動くある容積の空気中に浮遊する微生物を実質的に固定化し、保持し、かつ少なくとも成長を抑制し、または通常は殺すために十分なある量の少なくとも1つの抗菌剤を有する複数の繊維を含む、固定化網状組織とを含む、殺菌性のフェースマスクを提供する。
【0015】
一実施形態において、第1の空気透過性のスクリーン要素は、その中に位置し、十分のサイズのスリットを含み、前記固定化網状組織が前記空隙に配置されることを可能にする。
【0016】
本発明のさらなる利点および目的が、添付された図面の検査、および次の記述の注意深い考慮から一部明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
添付の図面において、全体を通して、同様な参照文字は同様な要素を示す。
【0018】
(好ましい実施形態の詳細な記述)
添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態は、例示的な目的で本明細書に記述され、決して制限の目的では記述されていない。
【0019】
(定義)
本明細書に使用されている場合、用語「病原菌」または「病原菌の」は、細菌、原生動物、ウイルス、カビなどを含むが限定されない微生物を意味するように意図されている。さらに、この定義に含まれているものにイエダニがある。
【0020】
本明細書に使用されているように、用語「抗病原菌剤」は、例えば細菌、原生動物、ウイルス、カビなどの成長または増殖を抑制し、防止し、または破壊する化合物を意味するように意図されている。本明細書に使用されているような抗病原菌剤の例は、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗カビ剤、抗酵母菌剤、および抗イエダニ剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0021】
本明細書に使用されているように、用語「抗細菌剤」、「殺菌剤」および「静菌剤」は、細菌の成長を抑制し、防止し、かつ細菌を/殺す化合物を意味するように意図されている。
【0022】
本明細書に使用されているように、用語「抗ウイルス剤」は、ウイルスの成長を抑制し、防止し、またはウイルスを殺す化合物を意味するように意図されている。
【0023】
本明細書に使用されているように、用語「抗カビ剤」は、カビの成長を抑制し、防止し、またはカビを殺す化合物を意味するように意図されている。
【0024】
本明細書に使用されているように、用語「抗酵母菌剤」は、酵母菌の成長を抑制し、防止し、または酵母菌を殺す化合物を意味するように意図されている。
【0025】
本明細書に使用されているように、用語「抗イエダニ剤」は、イエダニの成長を抑制し、防止し、またはイエダニを殺す化合物を意味するように意図されている。
【0026】
本明細書に使用されているように、用語「殺菌性の」、「生物破壊の」および「無菌の」は、単独にかまたは互いに組み合わせられて使用される、前記「剤」のうちの任意のものの抑制、成長防止または殺菌の特性を指すように意図されている。
【0027】
(好ましい実施形態)
ここで図1を参照して、殺菌性の空気フィルタの第1の実施形態が、一般的に10で示されている。概括的に言って、フィルタ10は、空気透過性の固定化網状組織(12)と、空気透過性の第1のスクリーン14と、空気透過性の第2のスクリーン16とを含む。第1のスクリーン14および第2のスクリーン16は、網状組織12を支持するために、およびワーク区域18を定義するためにのみ作用している。当業者は、固定化網状組織(12)は、スクリーン14および16から独立して使用され得ることを認識する。
【0028】
網状組織12は、繊維20のメッシュを含み、繊維20のメッシュは、柔らかいかまたは固い(硬い)網状組織が望みに応じて、織られ得ないかまたは織られ得る。網状組織12は、繊維20が撚られた綿のような糸も含み得る。各繊維20は、少なくとも1つの抗病原菌剤の或る量を含み、該抗菌剤は、繊維20の全寿命を通じて広い表面積にわたって抗菌剤の大きく永久的な集中を提供する、実質的に強い分子結合を介して、繊維20の構造に取り入れられ、かつ固定される。換言すれば、抗菌剤は、繊維20の中心内にあり、結合して混ぜられ、それに沿って、その上に、かつその中に広がる。繊維20は、通常、フレーク状のメッシュなどのいわゆるエンジェルのヘアの細かい層として、全メッシュにわたって空気に対して透過性があるように配置される。
【0029】
好ましくは、網状組織は繊維質の材料である。さらに好ましくは、繊維質の材料は、商業的に入手可能な、RHOVYL’AS+TM、RHOVYL’ASTM(「AS」は「無菌」を指す)、THERMOVYL−L9BTM、THERMOVYL−ZCBTM、THERMOVYL−MXBTM(「B」は、「殺菌性」を指す)またはTRICLOSANTM処理されたポリ塩化ビニール(PVC)などを主成分とする有機繊維である。
【0030】
RHOVYL’AS+TM、RHOVYL’ASTM、THERMOVYL−L9BTM、THERMOVYL−MXBTMとTHERMOVYL−ZCBTMとの両方は、RHOVYLTM,SAによって製造された、内在的なおよび/または殺菌性の作用を有する繊維質の材料である。特に、RHOVYL’ASTM繊維、THERMOVYL−L9BTM繊維およびTHERMOVYL−ZCBTM繊維は、抗菌剤を取り入れ、この抗菌剤は、分子的に繊維の構造に結合され、一方RHOVYL’ASTM繊維殺菌剤、RHOVYL’AS+TM繊維、およびTHERMOVYL−MXBTM繊維も、ダニ駆除剤、抗イエダニ剤を含む。
【0031】
TRICLOSANTMは周知の抗病原菌剤であり、この抗菌剤は、例えばバクテリア、酵母菌およびカビのような病原菌の成長を少なくとも低減し、通常は殺しさえする。
【0032】
繊維質の材料は純粋(100%)に、または織もしくは不織のタイプの繊維であって、個人の防護器具(IPE)の要求を満たす他のタイプの繊維と共に、少なくとも30容積%の割合で、混合状態で使用される。繊維質の材料は、防火性、化学製品に対する抵抗、発火抑制、断熱、および湿気管理を含む他の特性も有するが、それらに限定されない。
【0033】
好ましくは、抗病原菌剤は、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗イエダニ剤、抗カビ剤、および抗酵母菌剤を含む。
【0034】
好ましくは、抗菌剤はTRICLOSANTMである。
【0035】
好ましくは、抗イエダニ剤は安息香酸ベンジルである。
【0036】
通常は、繊維質の材料は、約0.1μm〜約3μmの範囲で多孔性を有するが、これは、保持される病原菌のサイズに依存する。
【0037】
通常は、繊維質の材料は、1平方フット当たり2グラム(2gr/ft)〜1平方フット当たり30グラム(30gr/ft)の間の密度を有している。より好ましくは、密度は、1平方フット当たり約10グラム(10gr/ft)である。
【0038】
図2に最もよく示されるように、フィルタ10は、普通病院の職員などによって使用され、拡大可能(柔らかいマスク)か、または拡大可能ではないか(硬いマスク)であり得、予め濾過された空気を有する区域で時々使用されるタイプのフェースマスク24の一部分であり得る。スクリーン14および16は通常、周辺エッジ22の周囲で接続され、その間に空隙23を定義する。網状組織12は、前記のスクリーンのうちの1つに取り付けられ得、微粒子物質と、さらに重要なことには病原菌との両方に対して物理的な障害を提供する。網状組織12は、VELCROTMタイプの締め具、ステッチ、ボンディングなどを使用して、スクリーン14または16に取り付けられ得、または個人の鼻/口区域の前に装着される個人携帯用マスク24の内側に取り付けられ得る。マスク24のフロントマスクスクリーン25は、網状組織12の上流に位置する最初のフィルタとして作用し、矢印で示されるように空気通路に沿ってそこを通る空気から、微粒子物質および微生物を除去することによって空気を予め濾過する。
【0039】
あるいは、図2aに最もよく示されているように、網状組織12は、商業的に入手可なフィルタマスクのように、フェースマスク24の空隙23において、フロントスクリーン25とリアスクリーン27との間に位置し得、矢印で示されるように、双方向システムの濾過を作成する。フロントスクリーン25は、スリット29を含み、網状組織12が、空隙23の中に挿入されることを可能にする。このタイプのフェースマスク24は、呼吸器感染に苦しみ、それでも働くことを望み、病原菌で汚染された吐く息によって他人を感染させたくない人々に有用であり得る。
【0040】
スクリーン要素14、16は異なるサイズおよび形状を有し得、アルミニウム、ナイロン、熱可塑性の物質、(普通はマスクへの適用には認可されていない)繊維ガラスタイプの物質、織られたタイプの布などから作られた、図1に示されているような簡単な通常は柔軟な、またはやや柔軟なタイプのスクリーンであり得る。図3に示されるように、スクリーン要素14、16および網状組織12は、2つの部分28、30に分けられ、それぞれスクリーン要素14、16と一体構造である標準的なアルミニウムスクリーンフレームのような硬いフレーム26によって支持され得、硬さおよび設置の容易さを確実にする。締め部材32は、スクリーン要素14、16を共に解放可能に接続するために使用され得、網状組織12はその間に挟まれ、かつそこを流れる空気によって移動させられないように圧縮される。締め部材32は、部分28、30のうちの1つの上で旋回して他の部分を同部に対して保持するピボット保持器であり得る。あるいは、図4に最もよく示されているように、任意の既存の空気フィルタ36の硬いスクリーン34も使用され得る。
【0041】
ここで図5および図6を参照して、フィルタ10は空気ダクト38の内側で、空気フィルタ36の下流かつ、空気加熱システム40の上流に設置されることにより(図5の矢印は空気の通路を示す)、網状組織12を通る空気は予め濾過され得、これによって、網状組織12は後フィルタとして作用し、それによってより効率的である。なぜならば、空気に含まれた微粒子物質または汚れのほとんどは、網状組織に到着する前に除去されているからである。フレーム26はスクリーン要素14、16を概ね取り囲むが、スクリーン要素14、16を複数のより小さな小区画44に再分割して網状組織12を拘束し、2つの要素14、16の間に正しくとどまるように使用される中間補強ロッド42も含む。あるいは、図6に最もよく見られるように、フレーム26は、スクリーン14、16が取り付けられている細い金属ロッドであり、補強ロッド42はスクリーン要素14、16および網状組織12に追加的な支持を提供し、前記小区画44を提供する。
【0042】
ここで図5、図7、図8および図9を参照して、他のタイプの締め部材32が示されている。1つの好ましいタイプの締め部材32は、例えば波打つ線または直線など様々なパターンに配列され得る複数のステッチ46を含む。前に記述されたように、ステッチ46は網状組織12の中を通り、網状組織を小区画44に分割する。あるいは、図8に最もよく示されているように、締め部材32は、網状組織12の中を通るリベット48も含む。
【実施例】
【0043】
本発明は、次の非限定的な実施例によって、さらに詳細に記述される。
【0044】
(実施例1)
硬いおよび柔らかいフェースマスクの殺菌および濾過能力の評価
表1に示されるように、本発明の2つのフェースマスクが、様々なサイズ4,5,6,7のバクテリアおよびカビのパネルに対する抗病原菌および保持能力に関して、商業的に入手可能なフェースマスク1,2,3と比較された。実施例1および実施例2で使用されたNB硬いマスクおよび柔らかいマスクは両方とも、分子的に結合されたTRILOSANTMを含むPVCを主成分とする有機繊維の網状組織12が備わっていた。NB柔らかいマスクは、網状組織12がその内側に位置する(上の図2aを参照)周辺で互いに縫い合わせられた、76重量%THERMOVYL−ZCBTM繊維および24重量%ポリエステルを含む織られたタイプの布(例えば綿など任意の他の織られたタイプの布が使用され得たであろうが)の2重被覆から構成された。NB硬いマスクは、2つの従来の商業的に入手可能な抗塵埃マスクから作られ、この2つのマスクは一方が他方の内側に挿入され、2つマスクの間にはTRILOSANTMを含む、PVCを主成分とする有機繊維の網状組織を位置させた。
【0045】
空気汚染チャンバ5,8,9は、網状組織を含むマスクの濾過能力を測定するために使用された。チャンバは、凍結乾燥された微生物の所定の量を含む穴のあいたボトル(perforated bottle)を含む。チャンバは、微生物学的空気サンプラーに設置されている。試験マスクは、汚染された空気チャンバと空気サンプラーとの間の境界面に設置された。負の圧力が空気チャンバの中に生成され、これが減圧下で凍結乾燥された微生物をマスクの方に動かした。培養媒体は、マスクを通り抜けたすべてのものを検出するためにマスクの下流に配置された。
【0046】
【表1】

(実施例2)
小さな粒子の濾過の評価
実施例1の3つのマスクの濾過能力は、実施例1におけるものと本質的に同じ装置を使用して0.3μm粒子サイズの2つの微粒子材料に対して試験された。この場合、空気ポンプから下流に位置するカートリッジ捕捉膜は、通り抜けた粒子を捕捉した。空気ポンプは、マスクの下流に負の圧力を作成した。選択された2つの微粒子材料は塩化ナトリウムおよびフタル酸ジオクチルであった。
【0047】
【表2】

(実施例3)
換気システムフィルタの殺菌および濾過能力の評価
RHOVYL’AS+TM繊維を用いた図3の実施形態のフィルタの抗病原菌能力は、筐体の中の換気システムの中に設置後0、7、14、および21日目に評価された。結果は、下の表3〜表6に示されている。
【0048】
フィルタは、前記の時間後に取り出され、Samson方法10を使用して、分析された。各フィルタの繊維質材料(1g)は、鉱物質が取り除かれ殺菌された水(9mL)で希釈され、その場合逐次的に希釈された。
【0049】
バクテリア、酵母菌、およびカビの合計量の計算が、血球計を使用してなされた。生菌バクテリア、酵母菌およびカビの合計量の計算は、適正な媒体に対する希釈の培養後、決定された。好気性があり、生菌バクテリアが、ダイズ寒天(TSA、Quelab)で培養され、一方酵母菌およびカビは、バクテリアの成長を制限するために、ゲンタマイシン(0.005%p/v)およびオキシテトラサイクリン(0.01%p/v)で補足されたHEAで培養された。4.8+/−0.2のHEAのpHは、胞子の発芽および菌糸の発育を可能にする。培養期間の後、病原菌のコロニーの計算は、コロニーメータ(Accu−LiteTM,Fisher)を使用して実行された。バクテリアのコロニーの形態型は、グラム染色法(表5を参照)によって識別された。
【0050】
酵母菌およびカビの計算に関して、巨視的に明瞭な各カビコロニーが、顕微鏡による検査を使用して、ジェンダーおよび/または種によって識別された。
【0051】
カビのスライドは、接着テープ方法11を使用して調製された。この技術は、テープの接着側にカビを固定化することによってカビの構造の完全性を維持する。いったん収集されると、カビは、ラクトフェノールで染色され、10xおよび40xの拡大で観察された。識別キー12,13,14,15を使用して、カビは識別された。この実験において、胞子を生み出したコロニーだけが識別された。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

(実施例4)
織られた繊維サンプルの、広範囲にわたる抗細菌ウォッシング後の抗病原菌作用の評価
本発明の抗病原菌性の繊維が、複数の洗浄およびウォッシングの後、抗病原菌作用を保持することを確実にするために、分子的に結合されたTRICLOSANTM剤を有する織られたTHERMOVYL−L9BTMおよびTHERMOVYL−ZCBTM繊維のそれぞれのサンプルが試験された。各繊維タイプの3つのサンプルが、複数の逐次的な洗浄を受け、かつ5回、10回、および100回のウォッシングそれぞれの後、2つのバクテリア、すなわち黄色ブドウ菌および大腸菌に対する抗菌作用に対する試験を受けた。いかなる抗病原菌剤も有さない、各繊維タイプの1つの証明用の参照標本も同様に、5回のウォッシュの後に試験された。結果は下の表7に概括されている。
【0056】
【表7】

(論議)
今日まで、商業的に入手可能なマスクは、微生物の95%を超過して捕捉し、殺すことを阻まれてきた。本発明の殺菌性の網状組織研究は、フェースマスクおよび換気システムにおけるフィルタの形式で、捕捉および殺菌効率(表1〜6)において、有意な改善を実証した。
【0057】
表1および表2は、微粒子フィルタ、抗細菌かつ抗カビフィルタとして、TRICLOSANTMを含むPVCを主成分とする有機ファイバの有効性を示した。柔らかいフェースマスクおよび硬いフェースマスク両方に対して、抗病原菌および微粒子濾過能力は、商業的に入手可能なマスクに対する対応する能力(95〜96%)と比較して、100%であった。
【0058】
表3〜表7は、本発明のフィルタの抗病原菌および濾過能力の非常に効率的なレベルを示す。特に、本発明者は、表3および表4において、結合された抗細菌能力、抗真菌能力および保持能力は、各々100%であることを証明している。
【0059】
さらに、本発明者は、表5に示されているように、異なる細菌の形態型は、ゼロ日後、フィルタの繊維上に存在する細菌の全体の数の96.6%(グラム陽性球菌およびグラム陰性桿菌タイプ細菌それぞれの78.8%および21.6%)がフィルタ上で捕捉された。21日後、98.1%(グラム陽性球菌およびグラム陰性桿菌タイプ細菌それぞれの88.9%および11.1%)が、フィルタの繊維上に存在した。これは、フィルタの効率が、延長された期間後も残存することを実証している。表6に示されるように、様々な病原性のカビが、21日後まで、本発明のフィルタ上に識別された。
【0060】
望まれる場合は、表7に示されるように、フィルタは洗浄され得、ウォッシュされ得、かつ他の処理に抵抗し得、前記の能力の有意な損失なく再使用され得、または表7に示されるようにウォッシュの回数が増加すると共に前記能力が増加さえした。
【0061】
フィルタ10のキーとなる特徴は、それが、前記のフェースマスクの中にあろうと、または循環システムダクトフィルタの中にあろうと、繊維20の網状組織12と接触する広く様々な病原菌を固定化し、保持し、殺し、または成長を抑制するその能力である。循環システムの場合におけるように、前もってフィルタされたか、またはユーザによってフェースマスクを通して吸入され/吐き出された空気はしばしば、最初のフィルタを通過したか、またはフィルタが固定することができなかった残った病原菌を含む。本発明のフェースマスクを使用する者、および呼吸器系最上部の感染、例えばインフルエンザ、結核、炭疽病、重度の急性呼吸器系症候群(SARS)などを有する者の場合、他の人々へのさらなる感染を有意に減じ、または本質的になくし得る。同様に、病原菌で汚染された空気は、ユーザの鼻および口の中に入る前にフィルタされ得る。空気の流れは、図2、図2a、および図5において矢印によって示され、そこでは、病原菌で汚染された空気は斜線として示され、斜線のない矢印は、清浄な濾過された空気を示す。
【0062】
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、フィルタの実施形態の簡略化された分解図である。
【図2】図2は、フィルタを有するフェースマスクの簡略化された部分的切断図である。
【図2a】図2aは、フェースマスクの代替実施形態の簡略化された部分的切断図である。
【図3】図3は、フレームの中のフィルタの実施形態の簡略化された分解図である。
【図4】図4は、最初のフィルタを有するフィルタの簡略化された分解図である。
【図5】図5は、フィルタを有する空気循環システムの簡略化された分解図である。
【図6】図6は、図5のシステムに使用されるための代替フィルタの簡略化された正面図である。
【図7】図7は、図5のシステムと共に使用されるための代替フィルタの簡略化された正面図であり、締め部材としてステッチを示している。
【図8】図8は、図5のシステムと共に使用されるための代替フィルタの簡略化された正面図であり、締め部材としてリベットを示している。
【図9】図9は、図7のライン9−9に沿った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路と共に使用される殺菌性の空気フィルタ(10)であって、該空気フィルタ(10)は、
繊維の構造の中に取入れられかつ分子的に結合され、該空気通路を通って動くある容積の空気中に浮遊する病原菌の成長を実質的に固定化し、保持し、かつ少なくとも実質的に抑制するために十分なある量の少なくとも1つの抗病原菌剤を有する複数の該繊維(20)を含む固定化網状組織(12)であって、該空気に対して実質的に透過性がある、固定化網状組織(12)、を備えている、空気フィルタ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの抗病原菌剤は、前記容積の空気中に浮遊する病原菌を殺す、請求項1に記載のフィルタ(10)。
【請求項3】
前記複数の繊維(20)は、メッシュに配列され、該メッシュは、該繊維(20)間に複数の空気スペースを定める、請求項1に記載のフィルタ(10)。
【請求項4】
前記繊維(20)は、きつく織られるか、またはゆるく織られる、請求項3に記載のフィルタ(10)。
【請求項5】
前記繊維は(20)は、処理された、PVCを主成分とする有機繊維である、請求項4に記載のフィルタ(10)。
【請求項6】
前記抗病原菌剤は、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗イエダニ剤、抗カビ剤および抗酵母菌剤からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルタ(10)。
【請求項7】
前記抗病原菌剤は、TRICLOSANTMまたは安息香酸ベンジルである、請求項6に記載のフィルタ(10)。
【請求項8】
前記固定化網状組織(12)は、後フィルタであることにより、前記空気は前記空気通路に到着する前に予め濾過される、請求項1に記載のフィルタ(10)。
【請求項9】
前記空気フィルタ(10)は、ユーザの鼻および口の上に適合し、その周囲に固定されるように構成され、かつサイズが決められたフェースマスク(24)である、請求項1に記載のフィルタ(10)。
【請求項10】
前記空気フィルタ(10)は、前記空気通路を形成する空気ダクトシステム(40)に適合するように構成され、かつサイズが決められた空気ダクトフィルタである、請求項1に記載のフィルタ(10)。
【請求項11】
前記空気フィルタ(10)は、
それぞれの周辺エッジ(22)に沿って一緒に固定可能である、第1の空気透過性のスクリーン要素および第2の空気透過性のスクリーン要素(14、16)であって、該スクリーン要素(14、16)は、前記空気ダクトシステム(40)に適合し、かつそこに固定されるように構成されかつサイズが決められた、第1の空気透過性のスクリーン要素および第2の空気透過性のスクリーン要素(14、16)をさらに含み、
前記空気透過性の固定化網状組織(12)は、該第1のスクリーン要素と該第2のスクリーン要素(14、16)間に実質的に位置する、請求項10に記載のフィルタ(10)。
【請求項12】
締め部材(32)が、前記第1の空気透過性のスクリーン要素および前記第2の空気透過性のスクリーン要素(14、16)を一緒に接続し、前記固定化網状組織(12)をその間に挟む、請求項11に記載のフィルタ(10)。
【請求項13】
前記締め部材(32)は、前記第1のスクリーン要素および前記第2のスクリーン要素(14、16)を一緒に接続するためのフレーム(26)を含む、請求項12に記載のフィルタ(10)。
【請求項14】
前記締め部材(32)は、前記固定化網状組織(12)の全体にわたって位置し、該固定化網状組織(12)を小区画(44)に分ける複数のステッチ(46)をさらに含む、請求項13に記載のフィルタ(10)。
【請求項15】
殺菌性のフェースマスク(24)であって、
それぞれの周辺エッジ(22)に沿って一緒に固定された、第1の空気透過性のスクリーン要素および第2の空気透過性のスクリーン要素(14、16)であって、該スクリーン要素(14、16)は、その間に空隙(23)を定め、該スクリーン要素(14、16)は、ユーザの口および鼻の上に適合し、そこに固定されるように構成され、かつサイズが決められた、第1の空気透過性のスクリーン要素および第2の空気透過性のスクリーン要素(14、16)と、
該空隙(23)に位置しかつ該空隙を実質的に満たす空気透過性の固定化網状組織(12)であって、該固定化網状組織(12)は、繊維の構造の中に取入れられかつ分子的に結合され、該網状組織(12)を通って動くある容積の空気中に浮遊する病原菌の成長を実質的に固定化し、保持し、かつ少なくとも実質的に抑制するために十分なある量の少なくとも1つの抗病原菌剤を有する複数の該繊維(20)を含む、空気透過性の固定化網状組織(12)と
を備えている、殺菌性のフェースマスク。
【請求項16】
前記少なくとも1つの抗病原菌剤は、前記容積の空気中に浮遊する病原菌を殺す、請求項15に記載のフェースマスク(24)。
【請求項17】
前記固定化網状組織(12)はメッシュに配列された複数の繊維(20)を含み、該メッシュは、該繊維(20)間に複数の空気スペースを定める、請求項15に記載のフェースマスク(24)。
【請求項18】
前記繊維(20)は、きつく織られるか、またはゆるく織られる、請求項17に記載のフェースマスク(24)。
【請求項19】
前記繊維は(20)は、処理された、PVCを主成分とする有機繊維である、請求項18に記載のフェースマスク(24)。
【請求項20】
前記抗病原菌剤は、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗イエダニ剤、抗カビ剤および抗酵母菌剤からなる群から選択される、請求項15に記載のフェースマスク(24)。
【請求項21】
前記抗病原菌剤は、TRICLOSANTMまたは安息香酸ベンジルである、請求項15に記載のフェースマスク(24)。
【請求項22】
前記固定化網状組織(12)は、後フィルタであることにより、前記空気は前記空気通路に到着する前に予め濾過される、請求項15に記載のフェースマスク(24)。
【請求項23】
前記第1の空気透過性のスクリーン要素(14)は、その中に位置し、十分のサイズのスリット(29)を含み、前記固定化網状組織(12)が前記空隙(23)に配置されることを可能にする、請求項15に記載のフェースマスク(24)。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−544838(P2008−544838A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518582(P2008−518582)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001092
【国際公開番号】WO2007/003047
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508123308)ノヴェコ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】