説明

毒性化合物の分解方法

本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するための細菌、細菌抽出物、前記細菌の培養物から得られた上清、ポリペプチドおよび組成物に関する。特に、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するノカルディオイデス属種の同定に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤(benzimidazole carbamate fungicide)、カルバニラート系殺菌剤(carbanilate fungicide)、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤(thioamide herbicide)および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するための細菌、細菌抽出物、前記細菌の培養物から得られた上清、ポリペプチドおよび組成物に関する。特に、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するノカルディオイデス属種(Nocardioides sp.)の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
化学殺虫剤は、昆虫、植物および真菌の害を制御する上で現代の農業に不可欠となっている。1999年には世界的に400万トンの殺虫剤が作物に適用されたと推定されている。世界の殺虫剤の売上高は、2004年に約330億米ドルに達した。しかし、活性成分の大部分が、標的害虫に達することなく、誤用、流出および浸出により地下水および川に入る。したがって、環境およびヒトの健康の両方への影響による殺虫剤汚染の有害効果について公衆の懸念が高まっている。したがって、残留殺虫剤の除染技術が必要とされる。焼却、埋没または化学分解(酸化、還元および加水分解)を含む毒性化合物の浄化(remediation)の伝統的方法は、費用がかかり過ぎるか、さもなければ残留殺虫剤の浄化には実用的でないことが多いが、これらの問題は、生物学的作用物質およびプロセスが環境汚染物質を解毒するのに利用される処理である、バイオレメディエーションにより改善することができる。バイオレメディエーションは、灌漑放水、地下水および土壌における殺虫剤の浄化に有効に適用されている。
【0003】
汚染土壌への生きた微生物の直接適用は、いくつかの殺虫剤を分解するのに使用されている。微生物レメディエーションの代替は、酵素によるバイオレメディエーションとして知られる比較的新しい技術の使用である。これは、微生物増殖につながらない環境、または迅速な浄化が必要とされる状況に特に適している。これには、灌漑流出水、溢流、農産物の洗浄、農業機械の洗浄および農業労働者の個人的防御のための洗浄が含まれる。酵素ベースのバイオレメディエーションは、触媒タンパク質源として、殺虫剤耐性微生物、昆虫または雑草の分解能を利用することが多い。典型的には、所望の分解特性を保有する生物がひとたび分離されれば、次いで、関与遺伝子(複数可)をクローン化するのに遺伝子技術が使用される。得られた遺伝子産物の酵素特性が判定され、必要であれば現代分子生物学的手法を用いて改善される。これらの酵素は、次いで大量に生成され、殺虫剤負荷を、したがって、毒性を低減するため、被害地(例えば野または排水)に直接適用される。この技術は現在、農業廃水からの残留殺虫剤の浄化に適用されている。
【0004】
カーバメート系殺虫剤はカルバミン酸(HOOC−NH)から得られ、図1Aに示された一般構造を有する。化学的側鎖は、主に該殺虫剤の生物学的活性を支配する。Xで表された原子は酸素または硫黄のいずれかであり、一方、RおよびRはいくつかの異なる有機側鎖であり得るが、メチル基または水素であることがきわめて多い。Rは通常、かさ高い芳香族基またはオキシム部分である。ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤には、ベノミル、カルベンダジム、シペンダゾール(cypendazole)、デバカルブ(debacarb)およびメカルビンジド(mecarbinzid)が含まれる。
【0005】
初期の研究は、度重なる殺虫剤の適用により、カーバメート系化合物の持続性が著しく低下した「攻撃的な(aggressive)」土壌において、微生物がカーバメート分解の増強に関与する証拠を提供した(Karnsら、1986年;Derbyshireら、1987年;Karnsら、1991年;Tomasekら、1989年)。以来、カーバメート分解プロセスでの最初のステップは、カーバメート結合の加水分解であることが多いことが示された(Toppら、1993年)。この単純な反応は、大部分が補因子非依存性プロセスであり、したがってバイオレメディエーションに関して検討されるべき酵素に有利である。該分解に関与するいくつかのカーバメートヒドロラーゼ酵素は、現在様々な生物から単離されている。カーバメートを分解することが示されている酵素の例には、MCD(Tomasekら、1989年)、cahA(Hayatsuら、2001年)、cehA(Bornscheuerら、2002年)およびPCD(Genbank受託番号M94965)が含まれる。
【0006】
土壌中のカルベンダジムおよび他のベンズイミダゾール系化合物の生物分解の増強および非増強に真菌および細菌が関与することが報告されている(Yardenら、1990年)。さらに、2つのカルベンダジム分解細菌、ラルストニア属種(Ralstonia sp.)株1−1およびロドコッカス属種(Rhodococcus sp.)Dj1−6が記載されている(Zhangら、2005年;Jing−Liangら、2006年)。しかし、カルベンダジム加水分解活性に関与する遺伝子−酵素系は、これまでのところ知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤の分解を含む、毒性化合物に汚染された、例えば、土壌、食品および水試料のバイオレメディエーションに使用することができる方法および酵素が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解する細菌を同定した。
【0009】
したがって、第1の態様では、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解する組成物であって、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解する、ノカルディオイデス属種(Nocardioides sp.)、その抽出物またはその培養物から得られた上清を含む組成物を提供する。
【0010】
本発明の組成物を用いて分解することができるベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤の例には、ベノミル、カルベンダジム、シペンダゾール、デバカルブおよびメカルビンジドが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい実施形態では、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤はカルベンダジムである。
【0011】
本発明の組成物を用いて分解することができるカルバニラート系殺菌剤の例は、ジエトフェンカルブである。
【0012】
本発明の組成物を用いて分解することができるスルホンアミド除草剤の例には、アスラム、カルバスラム(carbasulam)、フェナスラム(fenasulam)、オリザリン、ペノキススラムおよびピロキシスラム(pyroxsulam)が含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明の組成物を用いて分解することができるチオアミド除草剤の例には、ベンカルバゾン(bencarbazone)およびクロルチアミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明の組成物を用いて分解することができる合成ピレトロイド系殺虫剤の例には、ペルメトリン、フェンバレラート、エスフェンバレラート、シペルメトリン、アルファ−シペルメトリン、デルタメトリン、フェンプロパトリン、フルバリネート、フルシトリネート、シフルトリン、アクリナトリン、トラロメトリン、シクロプロトリン、ラムダ−シハロトリン、テフルトリン、ビフェントリン、トランスフルトリン、ゼータ−シペルメトリン、およびハルフェンプロックスが含まれるがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、合成ピレトロイド系殺虫剤はmCNMP 1(R)cis−α(S)、mCNMP 1(S)trans−α(S)またはmCNMP 1(R)trans−α(R)である。
【0015】
好ましい実施形態では、ノカルディオイデス属種は、配列番号:4として提供されるヌクレオチド配列、またはこれと少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.5%同一である配列を含む。
【0016】
さらに好ましい実施形態では、ノカルディオイデス属種、その抽出物またはその培養物から得られた上清は、
i)配列番号:1として提供されるアミノ酸配列、または
ii)配列番号:1と少なくとも41%同一であるアミノ酸配列
を含むポリペプチドを含む。
【0017】
さらなる実施形態では、ポリペプチドは
i)配列番号:5および/または配列番号:6として提供されるアミノ酸配列、または
ii)配列番号:5または配列番号:6と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列
を含む。
【0018】
好ましくは、ポリペプチドは分子量約26kDaを有する。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、ポリペプチドは約100μM未満、より好ましくは約20μM未満、より好ましくは約10μM未満である、カルベンダジムに対するKを有する。さらなる実施形態では、ポリペプチドは約6.1μMの、カルベンダジムに対するKを有する。カルベンダジムに対するKは、実施例6に記載の通りに判定することができる。
【0020】
特に好ましい実施形態では、ノカルディオイデス属種は、オーストラリア国家計量標準機関(National Measurement Institute)において2007年6月20日に受託番号V07/015486で寄託された株SG−4Gである。さらに好ましい実施形態では、組成物は、ノカルディオイデス属種SG−4Gの放射線で死滅させた凍結乾燥培養物を含む、またはそれからなる。
【0021】
別の態様では、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するノカルディオイデス属種の分離株を提供する。
【0022】
好ましくは、ノカルディオイデス属種は、オーストラリア国家計量標準機関において2007年6月20日に受託番号V07/015486で寄託された株SG−4Gである。
【0023】
株は、生きていてもまたは死んで(死滅して)いてもよい。特に好ましい実施形態では、株はノカルディオイデス属種SG−4Gの放射線で死滅させた凍結乾燥培養物である。
【0024】
また、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解する本発明の分離株の抽出物も提供される。例えば、抽出物は細胞溶解物であってよく、または核酸および/または細胞壁物質の除去など、当技術分野で知られた1つまたは複数の精製手順に供されている。
【0025】
本発明者らは、所望の活性を有する酵素は、ノカルディオイデス属種の細胞から分泌されることを突き止めた。したがって、さらなる態様では、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解する、本発明の分離株の培養物から得られた上清、またはその画分を提供する。
【0026】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解する新規な酵素が精製されている。したがって、別の態様では、本発明は、配列番号:1として提供される配列を有するアミノ酸、この生物学的に活性なフラグメント、または配列番号:1と少なくとも41%同一であるアミノ酸配列を含む、実質的に精製されたポリペプチドおよび/または組換えポリペプチドを提供し、ポリペプチドは、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解する。
【0027】
1つの実施形態では、ポリペプチドは、
i)配列番号:5および/または配列番号:6として提供されるアミノ酸配列、または
ii)配列番号:5または配列番号:6と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列
を含む。
【0028】
好ましくは、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤はカルベンダジムである。
【0029】
好ましくは、ポリペプチドはノカルディオイデス属種から精製することができる。より好ましくは、ポリペプチドは、オーストラリア国家計量標準機関において2007年6月20日に受託番号V07/015486で寄託されたノカルディオイデス属種株SG−4Gから精製することができる。
【0030】
好ましくは、ポリペプチドは、分子量約26kDaを有する。
【0031】
1つの実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも1つの他のポリペプチド配列に融合される。少なくとも1つの他のポリペプチドは、例えば、本発明のポリペプチドの安定性を増強するポリペプチド、または融合タンパク質の精製を補助するポリペプチドであってよい。
【0032】
また、
i)配列番号:2または配列番号:3で提供されるヌクレオチド配列、
ii)本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
iii)i)と少なくとも41%同一であるヌクレオチド配列、
iv)ストリンジェントな条件下でi)にハイブリダイズするヌクレオチド配列、および/または
v)i)からiv)のいずれか1つに相補的なヌクレオチド配列
を含む単離および/または外因性ポリヌクレオチドも提供される。
【0033】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、細胞でのポリヌクレオチドの発現を誘導することができるプロモーターに作動可能に連結される。
【0034】
別の態様では、本発明は本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよび/または本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0036】
宿主細胞は、細菌、真菌、植物または動物の細胞などいずれの細胞型であってもよい。好ましい実施形態では、細胞は細菌細胞である。
【0037】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドの産生方法であって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で、前記ポリペプチドをコードする本発明の宿主細胞、または前記ポリペプチドをコードする本発明のベクターを培養すること、および発現したポリペプチドを回収することを含む方法を提供する。
【0038】
1つの実施形態では、その方法は細胞発現系を用いて実施される。別の実施形態では、その方法は実施され無細胞発現系である。
【0039】
好ましくは、その方法はポリペプチドを回収することをさらに含む。
【0040】
また、本発明の方法を用いて産生されたポリペプチドも提供される。
【0041】
別の態様では、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解するためのポリマースポンジまたは泡であって、ポリマー多孔性支持体に固定化された本発明のポリペプチドを含む泡またはスポンジを提供する。
【0042】
好ましくは、多孔性支持体はポリウレタンを含む。
【0043】
好ましい実施形態では、スポンジまたは泡はさらに、多孔性支持体上または中に包埋または統合された炭素を含む。
【0044】
別の態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つのポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物を提供する。
【0045】
好ましくは、ポリヌクレオチドは植物のゲノムに安定に組み込まれる。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つのポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、トランスジェニック非ヒト動物を提供する。
【0047】
別の態様では、本発明は、本発明の宿主細胞、本発明のトランスジェニック植物、本発明のトランスジェニック非ヒト動物の抽出物を提供し、その抽出物は本発明のポリペプチドを含む。
【0048】
別の態様では、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解する組成物であって、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明の抽出物、および/または本発明の宿主細胞の培養物から得られた上清もしくはその画分を含む組成物を提供する。
【0049】
好ましくは、組成物は1つまたは複数の許容可能な担体を含む。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤の分解方法であって、本発明の組成物、本発明の分離株、本発明の抽出物、本発明の上清もしくはその画分、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞および/または本発明のスポンジもしくは泡と、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を接触させることを含む方法を提供する。
【0051】
好ましくは、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤は、土壌、水、生物学的物質またはこれらの組合せから選択されるが、これらに限定されない試料中にある。
【0052】
別の態様では、本発明は、試料中のベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤の分解方法であって、本発明のトランスジェニック植物と試料を接触させることを含む方法を提供する。
【0053】
1つの実施形態では、試料は野原(field)の土壌などの土壌である。
【0054】
また、外因性ポリヌクレオチドを含む本発明の植物の部分も提供される。好ましくは、該部分は種子である。
【0055】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する単離抗体を提供する。
【0056】
別の態様では、本発明は、対象におけるベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤により引き起こされる毒性の治療方法であって、本発明の組成物、本発明の分離株、本発明の抽出物、本発明の上清もしくはその画分、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明のスポンジもしくは泡、本発明の植物または本発明のトランスジェニック非ヒトを対象に投与することを含む方法を提供する。
【0057】
また、対象におけるベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤により引き起こされる毒性を治療するための医薬品を製造するための、本発明の組成物、本発明の分離株、本発明の抽出物、本発明の上清もしくはその画分、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明のスポンジもしくは泡、本発明の植物または本発明のトランスジェニック非ヒトの使用も提供される。
【0058】
本発明のポリペプチドは変異させることができ、得られた変異体は、増強した酵素活性など変化した活性についてスクリーニングすることができる。このような変異は、インビトロ突然変異誘発およびDNAシャッフリングを含むがこれらに限定されない当技術分野で知られた任意の手法を用いて実施することができる。したがって、さらなる態様では、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/もしくはチオアミド除草剤を分解する能力が増強した、または異なる種類のベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/もしくはチオアミド除草剤に対する基質特異性が変化したポリペプチドの産生方法であって、
(i)本発明のポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸を変化させることと、
(ii)ステップ(i)から得られた変化したポリペプチドの、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解する能力を判定することと、
(iii)ステップ(i)で使用されるポリペプチドと比較した場合、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/もしくはチオアミド除草剤を分解する能力が増強した、または異なる種類のベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/もしくはチオアミド除草剤に対する基質特異性が変化した、変化したポリペプチドを選択することと
を含む方法を提供する。
【0059】
ステップ(i)は、これらに限定されないが、コードする核酸での部位特異的突然変異誘発、化学的突然変異誘発およびDNAシャッフリングなどの当技術分野で知られている任意の適切な手法を用いて実施することができる。
【0060】
また、本発明の方法により産生されたポリペプチドも提供される。
【0061】
本発明のポリペプチドは、組換え細胞を同定するためのマーカーとして使用することができる。したがって、さらなる態様では、本発明は、宿主細胞を検出および/または選択するための選択マーカーとしての、本発明のポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0062】
また、宿主細胞の検出方法であって、
i)細胞(複数可)によるポリヌクレオチドの取り込みを可能にする条件下で、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと細胞または細胞集団を接触させることと、
ii)ステップi)からの細胞、もしくはその子孫細胞を、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤に曝露することにより宿主細胞を選択することと
を含む方法も提供される。
【0063】
1つの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする第1のオープンリーディングフレーム、および本発明のポリペプチドをコードしない第2のオープンリーディングフレームを含む。
【0064】
1つの実施形態では、第2のオープンリーディングフレームはポリペプチドをコードする。
【0065】
代わりの実施形態では、第2のオープンリーディングフレームは翻訳されないポリヌクレオチドをコードする。例としては、触媒性核酸、dsRNA分子またはアンチセンス分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
細胞は、これらに限定されないが、植物細胞、細菌細胞、真菌細胞または動物細胞などの任意の細胞型であってよい。好ましい実施形態では、細胞は動物細胞である。
【0067】
さらに別の態様では、本発明は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するためのキットであって、本発明の組成物、本発明の分離株、本発明の抽出物、本発明の上清もしくはその画分、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド、本発明のベクター、本発明の宿主細胞、本発明のスポンジもしくは泡、本発明の植物または本発明のトランスジェニック非ヒトを含むキットを提供する。
【0068】
明らかとなるように、本発明の1つの態様の好ましい特徴および特性は、本発明の多くの他の態様に適用可能である。
【0069】
本明細書全体を通じて、語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変形は、記載された1つの要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の包含を意味するが、いずれかの他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されよう。
【0070】
本発明を、以下の非限定的な実施例により、添付図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】カーバメート系殺虫剤(図1A)およびベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤(図1B)の一般構造を示す図である。
【図2】ノカルディオイデス属種SG−4Gにおけるカルベンダジム分解の最初のステップを示す図である。
【図3】カルベンダジム加水分解活性を検出するためのHTPアッセイを示す図である:(Aa)株SG−4G;(Ab、AcおよびAd)陰性対照;(B)SG−4Gを播種した透明なスポットの拡大図;および(C、D)陰性対照の拡大図。
【図4】イオン交換クロマトグラフィーにより生成した画分でのエステラーゼ活性(縦軸)を示す図である。画分30および31は、カルベンダジム加水分解活性も有することに留意されたい。
【図5】酵素精製ステップを示すSDS PAGEを示す図である。Sup:培養上清;50kD R:50kD分子量カットオフ膜の残留物(retentate);IEC:イオン交換クロマトグラフィー後の精製タンパク質;M:分子量マーカー。
【図6−1】既知のまたは予測したタンパク質を有するMheIの配列アラインメントを示す図である。
【図6−2】既知のまたは予測したタンパク質を有するMheIの配列アラインメントを示す図である。
【図6−3】既知のまたは予測したタンパク質を有するMheIの配列アラインメントを示す図である。
【図7】pDEST17−mheIの略図を示す図である。
【図8】組換え発現MheIを示すSDS PAGEを示す図である(左のレーン)。
【図9】カルベンダジムに対するMheIの酵素動態を示す図である。
【図10】合成ピレトロイドに対するSG−4Gの活性を示す図である。
【図11】ノカルディオイデス属種30kD残留物による合成ピレトロイド分解の最初のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
配列表の見出し(KEY TO SEQUENCE LISTING)
配列番号:1−MheI酵素のアミノ酸配列。
配列番号:2−MheI酵素をコードするヌクレオチド配列。
配列番号:3−大腸菌での発現のためのMheI酵素をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列。
配列番号:4−ノカルディオイデス属種SG−4G由来の16S rRNA遺伝子。
配列番号:5および6−MheI酵素の部分配列。
配列番号:7から13−オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号:14−アルファプロテオバクテリウムBAL199推定エステラーゼ(Genbank ZP_02187615.1)。
配列番号:15−キサントバクター・オートトロフィクス(Xanthobacter autotrophicus)Py2推定エステラーゼまたはリパーゼ(Genbank YP_001415909.1)。
配列番号:16−メチロバクテリウム・ノジュランス(Methylobacterium nodulans)ORS 2060推定エステラーゼ(Genbank ZP_02122769.1)。
配列番号:17−メチロバクテリウム属種4−46推定エステラーゼ(Genbank YP_001772634)。
配列番号:18−スフィンゴモナス・ウイッチ(Sphingomonas wittichii)RW1推定エステラーゼ(Genbank YP_001262405.1)。
配列番号:19−ポラロモナス・ナフタレニボランス(Polaromonas naphthalenivorans)CJ2推定エステラーゼ(Genbank YP_980468.1)。
配列番号:20−ボルデテラ・アビウム(Bordetella avium)197Nエステラーゼ(Genbank YP_785170.1)。
配列番号:21−ポラロモナス属種JS666推定エステラーゼ(Genbank YP_547141.1)。
配列番号:22−ストレプトマイセス・セリカラーA3(2)推定エステラーゼ(Genbank NP_628561.1)。
配列番号:23−バークホルデリア・アムビファリア(Burkholderia ambifaria)IOP40−10推定エステラーゼ(Genbank ZP_02892931.1)。
配列番号:24−ブラディリゾビウム・ジャポニカム(Bradyrhizobium japonicum)USDA 110推定エステラーゼ(Genbank NP_773254.1)。
配列番号:25−マイコバクテリウム属種JLS推定エステラーゼ(Genbank YP_001071298.1)。
配列番号:26−マイコバクテリウム属種MCS推定エステラーゼ(Genbank YP_640176.1)。
配列番号:27−バチルス・セレウスATCC10987推定エステラーゼ(Genbank NP_980782)。
配列番号:28−ノカルディア・ファルシニカ(Nocardia farcinica)IFM 10152推定エステラーゼ(Genbank YP_119481)。
配列番号:29−ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)DSM 12444推定エステラーゼ(Genbank YP_498129.1)。
配列番号:30−マイコバクテリウム・バンバアレニイ(Mycobacterium vanbaalenii)PYR−1推定エステラーゼ(Genbank YP_954166.1)。
配列番号:31−バチルス・セレウスAH187推定エステラーゼ(Genbank ZP_02253708.1)。
配列番号:32−バチルス・セレウスE33L推定ヒドロラーゼ(Genbank YP_085728.1)。
配列番号:33−レプトスリックス・チョロドニイ(Leptothrix cholodnii)SP−6推定エステラーゼ(Genbank YP_001793382.1)。
配列番号:34−バチルス・セレウス亜種サイトトキシス(Bacillus cereus subsp. cytotoxis)NVH 391−98推定エステラーゼ(Genbank YP_001376340.1)。
配列番号:35−ロドバクテラルス・バクテリウム(Rhodobacterales bacterium)HTCC2654推定エステラーゼ(Genbank ZP_01014266.1)。
配列番号:36−ブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium sp.)BTAi1推定アルファ/ベータヒドロラーゼ(Genbank YP_001239781.1)。
配列番号:37−ブラディリゾビウム属種ORS278推定アルファ/ベータヒドロラーゼ(Genbank YP_001205313.1)。
配列番号:38−バチルス・セレウスB4264推定アルファ/ベータヒドロラーゼ(Genbank ZP_02581895.1)。
配列番号:39−バークホルデリア・フィトフィルマンス(Burkholderia phytofirmans)PsJN推定エステラーゼ (Genbank YP_001890475.1)。
配列番号:40−マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)株MC2 155推定エステラーゼ(Genbank YP_886169.1)。
配列番号:41−アシネトバクター属種ADP1推定エステラーゼ(Genbank YP_046113.1)。
配列番号:42−ロドバクテラルス・バクテリウムHTCC2654推定エステラーゼ(Genbank ZP_01015348.1)。
配列番号:43−シリシバクター・ポメロイ(Silicibacter pomeroyi)DSS−3推定エステラーゼ(Genbank YP_165260.1)。
【0073】
一般的手法および定義(General Techniques and Definitions)
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的科学的用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、植物生物学および/または化学、トランスジェニック植物を含む組換え細胞生物学、バイオレメディエーション、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学において)当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有するととらえられるべきである。
【0074】
特に指示のない限り、本発明で利用される組換えタンパク質、細胞培養、および免疫学的手法は、当業者によく知られた標準手順である。このような手法は、J.Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons(1984年)、J.Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989年)、T.A.Brown(編者)、Essential Molecular Biology:A Practical Approach、巻1および2、IRL Press(1991年)、D.M.GloverおよびB.D.Hames(編者)、DNA Cloning:A Practical Approach、巻1〜4、IRL Press(1995年および1996年)、およびF.M.Ausubelら(編者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience(1988年、現在までの全改訂を含む)、Ed HarlowおよびDavid Lane(編者)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988年)、およびJ.E.Coliganら(編者)Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons(現在までの全改訂を含む)などのソースにおいて文献全体を通じて記載および説明されている。
【0075】
本明細書では、用語「分解する(degrades)」、「分解(degradation)」およびこれらの変形は、基質よりも毒性の低く、かつ/またはより不安定な酵素活性による産物を指す。特に、産物は、動物細胞、特に魚または哺乳類細胞に対し毒性が低い。特に好ましい実施形態では、酵素活性は基質のエステル結合を加水分解している。好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、カルベンダジムを分解して2−アミノベンズイミダゾールを産生することができる。
【0076】
本明細書では用語「治療する(treating)」、「治療する(treat)」または「治療(treatment)」には、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤により引き起こされる少なくとも1つの毒性症状を低減または排除するのに十分な、本明細書で定義された酵素もしくは組成物、またはこれらをコードするポリヌクレオチドの治療有効量を投与することが含まれる。
【0077】
本明細書では、用語「対象」は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤が毒性となる任意の生物を指す。好ましい実施形態では対象は、動物、例えば、魚、鳥または哺乳類である。1つの実施形態では、対象はヒトである。他の好ましい実施形態には、ネコおよびイヌなどのコンパニオン動物、ならびにウマ、ウシ、ヒツジおよびヤギなどの家畜動物が含まれる。
【0078】
カーバメート(Carbamates)
カーバメートは、カルボニル基がカルボキシルエステル結合も形成する、アミド結合を有する殺虫剤である(図1A)。アミン基またはカルボキシルエステル基のいずれかからの異なる成分が、これらの化合物の標的生物を決定する。アミンおよびカルボキシルエステルの両方からの芳香族基を有するカーバメート(例えばフェンメジファム)は除草性である。カルボキシルエステル基由来の芳香族基およびアミン由来の小さい基(メチル基など)を有するカーバメート(カルバリルなど)は殺虫性である。
【0079】
アミン由来のベンズイミダゾール基およびカルボキシルエステル結合由来の小さいメチル基を有するカーバメートは殺菌性である。このようなカーバメートは、本明細書ではベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤と呼ばれ、ベノミル、カルベンダジム、シペンダゾール、デバカルブおよびメカルビンジドを含むが、これらに限定されない。ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤の一般構造は、図1Bに提供される。
【0080】
ピレトロイド(Pyrethroids)
ピレトロイドは、除虫菊殺虫剤の合成類似体である。例えば、ピレトロイドには、ペルメトリン、フェンバレラート、エスフェンバレラート、シペルメトリン、アルファ−シペルメトリン、デルタメトリン、フェンプロパトリン、フルバリネート、フルシトリネート、シフルトリン、アクリナトリン、トラロメトリン、シクロプロトリン、ラムダ−シハロトリン、テフルトリン、ビフェントリン、トランスフルトリン、ゼータ−シペルメトリン、およびハルフェンプロックスが含まれる(各ケースでThe Pesticide Manual、第12版による一般名)。
【0081】
ピレトロイドは、タイプIまたはタイプIIピレトロイドであり得る。タイプIピレトロイド化合物(例えば、ペルメトリン)は、タイプII化合物がフェノキシベンジル部分のα−炭素原子にシアノ基を有する点でタイプIIピレトロイド化合物とは異なる。タイプIIピレトロイドのいくつかの例は、シペルメトリン、デルタメトリン、およびフェンバレラートである。
【0082】
本発明の方法を用いて加水分解することができるピレトロイド殺虫剤の例には、以下が含まれるがこれらに限定されない;3−フェノキシベンジル(1RS)−cis,trans−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート[ペルメトリン]、α−シアノ−3−フェノキシベンジル−1−(4−エトキシフェニル)−2,2−ジクロロシクロプロパンカルボキシレート[シロプロトリン]、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(RS)−2−(4−クロロフェニル)−3−イソバレレート[フェンバレレート]、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(S)−2−(4−クロロフェニル)イソバレレート[エスフェンバレレート]、α−シアノ−3−フェノキシベンジル(S)−2−(4−ジフルオロメトキシフェニル)イソバレレート[フルシトリネート]、α−シアノ−3−フェノキシベンジル2−(2−クロロ−4−トリフルオロメチルアニリン)イソバレレート[フルバリネート]、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート[フェンプロパトリン]、3−フェノキシベンジル(1R)−cis,trans−クリサンテメート[d−フェノトリン]、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R)−cis,trans−クリサンテメート[シフェノトリン]、(RS)3−アリル−2−メチル−4−オキソシクロペント−2−エニル(1RS)−cis,trans−クリサンテメート[アレトリン]、α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R)−cis,trans−3−フェノキシベンジル(1R)−cis,trans−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート[シペルメトリン]、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R)−cis−3−(2,2−ジブロモビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシレート[デルタメトリン]、(S)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル(1R)−cis−2,2−ジメチル−3−(1,2,2,2−テトラブロモエチル)シクロプロパンカルボキシレート[トラロメトリン]、3,4,5,5−テトラヒドロイミドメチル(1RS)−cis,trans−クリサンテメート[テトラメトリン]、5−ベンジル−3−フリルメチル(1RS)−cis,trans−クリサンテメート[レスメトリン]、α−シアノ−4−フルオロ−3−フェノキシベンジル(1R,trans)−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート[シフルトリン]。
【0083】
ポリペプチド(Polypeptides)
「実質的に精製された」または「精製された」とは、1つまたは複数の脂質、核酸、他のポリペプチド、またはポリペプチドが天然の状態で結合している他の汚染分子から単離されたポリペプチドを意味する。実質的に精製されたポリペプチドは、ポリペプチドが天然に結合する他の成分を少なくとも60%含まない、より好ましくは少なくとも75%含まない、およびより好ましくは少なくとも90%含まないことが好ましい。
【0084】
ポリペプチドとの関係において用語「組換え」は、天然の状態と比べて変化した量または変化した速度で、細胞により、または無細胞発現系において産生される場合のポリペプチドを指す。好ましい実施形態では、組換え(宿主)細胞は、天然にはポリペプチドを産生しない細胞である。代わりの実施形態では、組換え細胞は、産生するポリペプチドの量の変化、好ましくは増加をもたらす外因性遺伝子を含む細胞である。本発明の組換えポリペプチドには、組換え細胞、または組換え細胞が産生される無細胞発現系の他の成分から単離されなかったポリペプチド、およびこの後少なくともいくつかの他の成分から精製される、このような細胞または無細胞系で産生されるポリペプチドが含まれる。
【0085】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、一般に互換使用され、および非アミノ酸基の付加により修飾できるまたはできない単一のポリペプチド鎖を指す。このようなポリペプチド鎖は、他のポリペプチドもしくはタンパク質または補因子などの他の分子と結合できることが理解されるであろう。本明細書では用語「タンパク質」および「ポリペプチド」には、本明細書に記載されたような本発明のポリペプチドのバリアント、変異体、修飾、類似体、フラグメントおよび/または誘導体も含まれる。
【0086】
ポリペプチドの%同一性は、ギャップ生成ペナルティー=5、およびギャップ伸長ペナルティー=0.3によるGAP(NeedlemanおよびWunsch、1970年)分析(GCGプログラム)により判定される。クエリー配列は少なくとも25アミノ酸長であり、GAP分析は少なくとも25アミノ酸領域にわたって2つの配列を整列させる。より好ましくは、クエリー配列は少なくとも50アミノ酸長であり、GAP分析は少なくとも50アミノ酸領域にわたって2つの配列を整列させる。より好ましくは、クエリー配列は少なくとも100アミノ酸長であり、GAP分析は少なくとも100アミノ酸領域にわたって2つの配列を整列させる。さらにより好ましくは、クエリー配列は少なくとも200アミノ酸長であり、GAP分析は少なくとも200アミノ酸領域にわたって2つの配列を整列させる。さらにより好ましくは、GAP分析はこの完全長にわたって2つの配列を整列させる。
【0087】
本明細書では「生物学的に活性なフラグメント」は、完全長ポリペプチドの定義された活性を維持する、本明細書に記載されたようなポリペプチドの部分である。生物学的に活性なフラグメントは、定義された活性を維持する限りいずれのサイズであってもよい。好ましくは、生物学的に活性なフラグメントは、少なくとも100アミノ酸長、より好ましくは少なくとも150アミノ酸長、およびより好ましくは少なくとも200アミノ酸長である。
【0088】
定義されたポリペプチドに関しては、上記に提供されたものより高い%同一性の数字は、好ましい実施形態を包含することが理解されよう。したがって、適用可能な場合、最小%同一性の数字に照らして、ポリペプチドは、関連する指定された配列番号に少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、さらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0089】
本明細書に記載されたポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化を本明細書に定義された核酸に導入して、または所望のポリペプチドのインビトロ合成により調製することができる。このような変異体には、例えば、アミノ酸配列内の残基の欠失、挿入または置換が含まれる。欠失、挿入および置換の組合せは、最終ポリペプチド産物が所望の特性を有することを条件として、最終構築物に到達するように作製することができる。
【0090】
変異体(変化した)ポリペプチドは、当技術分野で知られたいずれかの手法を用いて調製することができる。例えば、本明細書に記載されたポリヌクレオチドは、インビトロ突然変異誘発に供することができる。このようなインビトロ突然変異誘発法には、適切なベクターへのポリヌクレオチドのサブクローニング、大腸菌XL−1レッド(Stratagene社)などの「ミューテーター」株へのベクターの形質転換、および適切な世代数にわたる形質転換細菌の増殖が含まれ得る。別の例では、遺伝子をコードする他のエステラーゼまたはヒドロラーゼ(配列番号:14から43として提供される1つまたは複数のポリペプチドをコードするものなど)と共に、本発明のポリヌクレオチドは、Harayama(1998年)により大まかに記載されているようにDNAシャッフリング法に供される。変異した/変化したDNA由来産物は、増強した活性および/または変化した基質特異性などの所望の表現型を与えることができるかどうかを判定するのに、本明細書に記載された手法を用いて容易にスクリーニングすることができる。
【0091】
アミノ酸配列変異体の設計では、変異部位の位置および変異の性質は、修飾する特性(複数可)により決まるであろう。変異部位は、例えば、(1)最初に保存的アミノ酸選択による、次いで、達成された結果に応じてより過激な(radical)選択による置換、(2)標的残基の欠失、または(3)決められた(located)部位への隣接する他の残基の挿入により、個別にまたは連続して修飾することができる。
【0092】
アミノ酸配列欠失は、一般に約1から15残基、より好ましくは約1から10残基および典型的には約1から5隣接残基に及ぶ。
【0093】
置換変異体は、ポリペプチド分子における少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、異なる残基がこの場所に挿入されている。置換突然変異誘発のための最大の目的部位には、機能にとって重要であると同定された部位が含まれる。他の目的の部位は、様々な他のエステラーゼ(例えば、図6参照)、および/または株もしくは種から得られた特定の残基が同一であるものである。これらの位置は、生物学的活性にとって重要であり得る。これらの部位、特に少なくとも3つの他の同様に保存された部位の配列内にあるものは、好ましくは比較的保存的な方法で置換される。このような保存的置換が表1に示されている。
【0094】
好ましい実施形態では変異体/バリアントポリペプチドは、自然発生のポリペプチドと比較した場合、1つまたは2つまたは3つまたは4つの保存的アミノ酸変化を有する。保存的アミノ酸変化の詳細は、表1に提供される。当業者であれば気づくように、このような小さな変化は、組換え細胞で発現された場合にポリペプチド活性を変化させないことがかなり予測され得る。
【0095】
【表1】

【0096】
さらに、所望であれば、非天然アミノ酸または化学的アミノ酸類似体は、本明細書に記載されたポリペプチドへの置換または付加として導入することができる。このようなアミノ酸には、一般的なアミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、α−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β−アラニン、フルオロ−アミノ酸、デザイナーアミノ酸(designer amino acid)(β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、Nα−メチルアミノ酸など)、および一般的なアミノ酸類似体が含まれるが、これらに制限されない。
【0097】
また、例えば、ビオチン化、ベンジル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、抗体分子との結合または他の細胞結合などによる、合成中または合成後に特異的に修飾される本発明のポリペプチドも本発明の範囲内に含まれる。これらの修飾は、ポリペプチドの安定性および/または生物活性を増大するのに役立つことができる。
【0098】
本明細書に記載されたポリペプチドは、天然ポリペプチドの産生および回収、組換えポリペプチドの産生および回収、ならびにポリペプチドの化学合成を含む種々の方法で産生することができる。1つの実施形態では、本発明の単離ポリペプチドは、ポリペプチドを産生するのに有効な条件下でポリペプチドを発現できる細胞を培養し、ポリペプチドを回収することにより産生される。培養するのに好ましい細胞は、本発明の組換え(宿主)細胞である。有効な培養条件には、ポリペプチド産生を可能にする有効培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれるが、これらに限定されない。有効培地は、細胞が本発明のポリペプチドを産生するように培養される任意の培地を指す。このような培地は典型的には、同化可能な炭素、窒素およびリン酸源、ならびに適切な塩、ミネラル、金属およびビタミンなどの他の栄養素を有する水性培地を含む。本発明の細胞は、従来の発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュ、およびペトリ皿で培養することができる。培養は、組換え(宿主)細胞に適切な温度、pHおよび酸素含量で行うことができる。このような培養条件は、当業者の専門知識内である。
【0099】
ポリヌクレオチド(Polynucleotides)
一本鎖または二本鎖の、センスまたはアンチセンス方向または両方の組合せでのDNA、RNA、またはこれらの組合せ、dsRNAほかを含む「単離ポリヌクレオチド」とは、ポリヌクレオチドが天然の状態で結合または連結したポリヌクレオチド配列から少なくとも部分的に単離されるポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、単離ポリヌクレオチドは、ポリペプチドが天然に結合する他の成分を少なくとも60%含まず、好ましくは少なくとも75%含まず、最も好ましくは少なくとも90%含まない。さらに、用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と本明細書では互換使用される。
【0100】
ポリヌクレオチドとの関係において用語「外因性」は、天然の状態と比べて変化した量で、細胞、または無細胞発現系に存在する場合のポリヌクレオチドを指す。好ましくは、細胞は、該ポリヌクレオチドを天然には含まない細胞である。しかし、細胞は、コードしたポリペプチドの産生量の変化、好ましくは増加をもたらす外因性ポリヌクレオチドを含む細胞であってよい。本発明の外因性ポリヌクレオチドには、組換え細胞、または組換え細胞が存在する無細胞発現系の他の成分から単離されなかったポリヌクレオチド、およびこの後少なくともいくつかの他の成分から精製される、このような細胞または無細胞系で産生されるポリヌクレオチドが含まれる。外因性ポリヌクレオチド(核酸)は、天然に存在するヌクレオチドの隣接ストレッチ(contiguous stretch)であり得、または単一のポリヌクレオチドを形成するように結合された異なるソース(自然発生および/または合成)由来のヌクレオチドの2つ以上の隣接ストレッチを含み得る。典型的にはこのようなキメラポリヌクレオチドは、目的の細胞でのオープンリーディングフレームの転写を促進するのに適切なプロモーターに作動可能に連結される本発明のポリペプチドをコードする、少なくともオープンリーディングフレームを含む。
【0101】
ポリヌクレオチドの%同一性は、ギャップ生成ペナルティー=5、およびギャップ伸長ペナルティー=0.3によるGAP(NeedlemanおよびWunsch、1970年)分析(GCGプログラム)により判定される。特に明記しない限り、クエリー配列は少なくとも45ヌクレオチド長であり、GAP分析は少なくとも45ヌクレオチド領域にわたって2つの配列を整列させる。好ましくは、クエリー配列は少なくとも150ヌクレオチド長であり、GAP分析は少なくとも150ヌクレオチド領域にわたって2つの配列を整列させる。より好ましくは、クエリー配列は少なくとも300ヌクレオチド長であり、GAP分析は少なくとも300ヌクレオチド領域にわたって2つの配列を整列させる。さらにより好ましくは、GAP分析はこの完全長にわたって2つの配列を整列させる。
【0102】
定義されたポリヌクレオチドに関しては、上記に提供されたものより高い%同一性の数字は、好ましい実施形態を包含することが理解されよう。したがって、適用可能な場合、最小%同一性の数字に照らして、本発明のポリヌクレオチドは、関連する指定された配列番号と少なくとも45%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、さらにより好ましくは少なくとも99.9%同一である配列を含むことが好ましい。
【0103】
本発明のポリヌクレオチドには、配列番号:1をコードする核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものが含まれる。
【0104】
本明細書では、用語「ハイブリダイズ」は、水素結合を介して少なくとも部分的に二本鎖の核酸を形成することができる2つの一本鎖核酸分子の能力を指す。
【0105】
本明細書では、語句「ストリンジェントな条件」は、ポリヌクレオチド、プローブ、プライマーおよび/またはオリゴヌクレオチドが標的配列にハイブリダイズするであろう条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる状況では異なるであろう。より長い配列は、より短い配列よりも高温で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、定められたイオン強度およびpHでの特定の配列の熱融点(Tm)より約5℃低くなるように選択される。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(定められたイオン強度、pHおよび核酸濃度下)である。標的配列は一般にTmでは過剰に存在するため、プローブの50%は平衡状態で占有される。典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0から8.3で約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には約0.01から1.0Mナトリウムイオン(または他の塩)、ならびに温度が、短いプローブ、プライマーまたはオリゴヌクレオチド(例えば、10から50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、およびより長いプローブ、プライマーおよびオリゴヌクレオチドについては少なくとも約60℃であるものとなろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定剤の添加により達成することもできる。
【0106】
ストリンジェントな条件は当業者に知られており、Ausubelら(上記参照)、Current Protocols In Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989年)、6.3.1〜6.3.6に見出すことができる。好ましくは、互いに少なくとも約65%、70%、75%、85%、90%、95%、98%、または99%相同な配列が、典型的には互いにハイブリダイズしたままであるような条件である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定例は、65℃、6×SSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.02%PVP、0.02%フィコール、0.02%BSA、および500mg/ml変性サケ精子DNAを含む高塩緩衝液でのハイブリダイゼーション、これに続く50℃、0.2.×SSC、0.01%BSAでの1つまたは複数の洗浄である。
【0107】
本発明のポリヌクレオチドは、自然発生ポリヌクレオチドと比較した場合、ヌクレオチド残基の欠失、挿入、または置換である1つまたは複数の変異を有することができる。変異体は、自然発生(すなわち、天然源から単離された)または合成(例えば、核酸で部位特異的突然変異誘発を行って)のいずれかであってよい。
【0108】
本発明には、例えば、核酸分子を同定するプローブ、または核酸分子を産生するプライマーとして使用することができるオリゴヌクレオチドが含まれる。プローブとして使用される本発明のオリゴヌクレオチドは、典型的には、放射性同位体、酵素、ビオチン、蛍光分子または化学発光分子のような検出可能な標識と結合される。プローブおよび/またはプライマーは、他の種または株から本発明のポリヌクレオチドの相同体をクローン化するのに使用することができる。さらに、当技術分野で知られたハイブリダイゼーション法は、このような相同体のゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするのにも使用することができる。
【0109】
本発明のオリゴヌクレオチドは、RNA、DNAまたはどちらかの誘導体であってよい。用語ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは重複する意味を有するが、オリゴヌクレオチドは典型的には比較的短い一本鎖分子である。このようなオリゴヌクレオチドの最小サイズは、標的核酸分子でオリゴヌクレオチドと相補配列との間の安定したハイブリッドを形成するのに必要なサイズである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは少なくとも15ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも18ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも19ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチド長、さらにより好ましくは少なくとも25ヌクレオチド長である。
【0110】
通常、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの単量体は、リン酸ジエステル結合またはこの類似体により結合される。リン酸ジエステル結合の類似体には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニリデート(phosphoranilidate)およびホスホロアミデートが含まれる。
【0111】
組換えベクター(Recombinant Vectors)
本発明の1つの実施形態には、ポリヌクレオチドを宿主細胞に送達できる任意のベクターに挿入される、本発明の少なくとも1つの単離ポリヌクレオチドを含む組換えベクターが含まれる。このようなベクターは、天然には本発明のポリヌクレオチドに隣接して見出されない、および好ましくは本発明のポリヌクレオチドが由来する種以外の種由来のポリヌクレオチド配列である、異種ポリヌクレオチド配列を含有する。ベクターは、RNAまたはDNAのいずれか、原核生物性または真核生物性のいずれかであってよく、典型的にはトランスポゾン(米国特許第5,792,294号に記載されているような)、ウイルスまたはプラスミドである。
【0112】
組換えベクターの1つのタイプは、発現ベクターに作動可能に連結された本発明のポリヌクレオチドを含む。語句「作動可能に連結された(operably linked)」は、宿主細胞へ形質転換された場合にポリヌクレオチドが発現され得るような方法で発現ベクターへポリヌクレオチドを挿入することを指す。本明細書では、「発現ベクター」は、宿主細胞を形質転換すること、および特定のポリヌクレオチドの発現に影響することができるDNAまたはRNAベクターである。好ましくは、発現ベクターは宿主細胞内で複製することもできる。発現ベクターは、原核生物性または真核生物性のいずれかであってよく、典型的にはウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターには、細菌、真菌、内部寄生虫、節足動物、動物、および植物の細胞を含む、本発明の組換え(宿主)細胞で機能する(すなわち、直接遺伝子発現(direct gene expression))任意のベクターが含まれる。本発明のベクターは、無細胞発現系でポリペプチドを産生するのに使用することもでき、このような系は当技術分野でよく知られている。
【0113】
本明細書では「作動可能に連結された」は、2つ以上の核酸(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、これは、転写配列との転写調節エレメントの機能的関係を指す。例えば、プロモーターは、適切な宿主細胞および/または無細胞発現系においてコード配列の転写を刺激または調節する場合、本明細書で定義されたポリヌクレオチドなどのコード配列に作動可能に連結される。一般に、転写配列に作動可能に連結されるプロモーターの転写調節エレメントは、転写配列に物理的に隣接している。すなわち、該エレメントはシス作用性である。しかし、エンハンサーなどのいくつかの転写調節要素は、これらが転写を高めるコード配列に物理的に隣接しているまたはきわめて近位に位置する必要はない。
【0114】
特に、本発明の発現ベクターは、調節配列、例えば転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点、ならびに組換え細胞と適合し、本発明のポリヌクレオチドの発現を制御する他の調節配列を含有する。特に、本発明の組換え分子には転写制御配列が含まれる。転写制御配列は、転写の開始、伸長、および終結を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列など、転写開始を制御するものである。適切な転写制御配列には、本発明の組換え細胞の少なくとも1つで機能することができる任意の転写制御配列が含まれる。種々のこのような転写制御配列が当業者に知られている。好ましい転写制御配列には、tac、lac、trp、trc、oxy−pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージラムダ、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ−接合因子、ピキアアルコールオキシダーゼ(Pichia alcohol oxidase)、アルファウイルスサブゲノムプロモーター(シンドビスウイルスサブゲノムプロモーターなど)、抗生物質耐性遺伝子、バキュロウイルス、ヘリオディス・ゼア(Heliothis zea)昆虫ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アライグマポックスウイルス、他のポックスウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(中間初期プロモーターなど)、シミアンウイルス40、レトロウイルス、アクチン、レトロウイルス長末端反復配列、ラウス肉腫ウイルス、熱ショック、リン酸および硝酸転写制御配列、ならびに原核生物または真核生物細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列など、細菌、酵母、節足動物、線虫、植物または哺乳類の細胞で機能するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明のポリペプチドのコード配列は、発現を最大化するのに最適化することができ、既知の手法を用いた特定の宿主細胞である。この例は、大腸菌における発現に対し当技術分野での標準的手法を用いて最適化された、配列番号:3として提供されるオープンリーディングフレームである。
【0116】
宿主細胞(Host Cells)
本明細書では、用語「宿主細胞」および「組換え細胞(recombinant cell)」は互換使用され、ならびに外因性ポリヌクレオチドにより形質転換された細胞、および前記ポリヌクレオチドを含むその子孫細胞が含まれる。細胞へのポリヌクレオチドの形質転換は、ポリヌクレオチドを細胞に挿入できる任意の方法により達成することができる。形質転換法には、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合が含まれるが、これらに限定されない。組換え細胞は単細胞のままであってよく、または組織、器官もしくは多細胞生物に成長してもよい。本発明の形質転換されたポリヌクレオチドは、染色体外に留まることができ、または発現される能力が保持されるような方法で形質転換された(すなわち、組換え)細胞の染色体内の1つまたは複数の部位に組込むことができる。
【0117】
形質転換するのに適切な細胞には、本発明のポリヌクレオチドにより形質転換することができるいずれの細胞も含まれる。本発明の宿主細胞は、本発明のポリペプチドを内因的に(すなわち、天然に)産生することが可能であり得、または本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドにより形質転換された後に、このようなポリペプチドを産生することが可能であり得る。本発明の宿主細胞は、本発明の少なくとも1つのタンパク質を産生できる細胞であってよく、および細菌、真菌(酵母を含む)、寄生中、線虫、節足動物、動物および植物の細胞が含まれる。宿主細胞の例には、サルモネラ、エシェリキア、バチルス、リステリア、サッカロミセス、スポドプテラ、マイコバクテリア、トリコプルシア、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞、MDCK細胞、CRFK細胞、CV−1細胞、COS(例えば、COS−7)細胞、およびベロ細胞が含まれる。さらなる宿主細胞の例は、大腸菌K−12誘導体を含む大腸菌、サルモネラ・チフィ、弱毒株を含むサルモネラ・ティフィムリウム、スポドプテラ・フルギペルダ、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)、および非腫瘍原性マウス筋芽細胞G8細胞(例えば、ATCC CRL 1246)である。 特に好ましい宿主細胞は細菌、真菌、動物または植物の細胞である。
【0118】
組換えDNA技術は、例えば、宿主細胞内のポリヌクレオチド分子のコピー数、これらのポリヌクレオチド分子が転写される効率、得られた転写物が翻訳される効率、および翻訳後修飾の効率を操作して外因性ポリヌクレオチドの発現を改善するのに使用することができる。本発明のポリヌクレオチドの発現を増加するのに有用な組換え法には、高コピー数プラスミドへのポリヌクレオチドの作動可能な連結、1つまたは複数の宿主細胞染色体へのポリヌクレオチドの組み込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳制御シグナルの置換または修飾(例えば、リボソーム結合部位、シャインダルガノ(Shine-Dalgarno)配列)、宿主細胞のコドン出現頻度に対応する本発明のポリヌクレオチドの修飾、および転写物を不安定化する配列の欠失が含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
トランスジェニック植物(Transgenic Plants)
用語「植物」は、本明細書では植物全体、および例えば、植物器官(例えば葉、茎、根、花)、単細胞(例えば花粉)、種子、植物細胞などの、植物中に存在する、植物に由来する、または植物に関係するいずれかの物質を指す。
【0120】
本発明の実践で使用するために企図された植物には、単子葉植物および双子葉植物の両方が含まれる。標的植物には以下が含まれるが、これらに限定されない:穀物(例えば、コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、コメ、トウモロコシ、モロコシ、および関連作物);ビート(テンサイ、飼料ビート);梨果、核果、小果実(soft fruit)(リンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー);マメ科植物(マメ、レンズマメ、エンドウマメ、ダイズ);油脂植物(ピーナッツ、セイヨウアブラナ、カラシナ、ケシ、オリーブ、ヒマワリ、ココナッツ、トウゴマ、カカオマメ、アメリカホドイモ);キュウリ植物(cucumber plant)(ペポカボチャ、キュウリ、メロン);繊維植物(綿、アマ、アサ、ジュート);柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、マンダリン);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、パプリカ);クスノキ科(アボカド、シナモン、カンフル);またはタバコ、ナッツ、コーヒー、サトウキビ、茶、ブドウ、ホップ、芝生、バナナおよび天然ゴム植物などの植物、ならびに観賞植物(花、灌木、広葉樹およびコニファーなどの常緑樹)。好ましい実施形態では、植物は、イネ科、キク科、またはマメ科由来、より好ましくは以下の属:オランダイチゴ(Fragaria)、ミヤコグサ(Lotus)、ウマゴヤシ(Medicago)、オノブリキス(Onobrychis)、トリフォリウム(Trifolium)、トリゴネラ(Trigonella)、ビグナ(Vigna)、シトラス(Citrus)、アマ(Linum)、ゲラニウム(Geranium)、キャッサバ(Manihot)、ニンジン(Daucus)、アブラナ(Brassica)、ダイコン(Raphanus)、シナピス(Sinapis)、ベラドンナ(Atropa)、トウガラシ(Capsicum)、ダチュラ(Datura)、ヒヨス(Hyoscyamus)、トマト(Lycopersicon)、タバコ(Nicotiana)、ナス(Solanum)、ペチュニア(Petunia)、ジギタリス(Digitalis)、マジョラナ(Majorana)、キクニガナ(Cichorium)、ヒマワリ(Helianthus)、アキノノゲシ(Lactuca)、ブロムス(Bromus)、アスパラガス(Asparagus)、アンチリナム(Antirrhinum)、ヘテロカリス(Heterocallis)、ネメシア(Nemesia)、ペラルゴニウム(Pelargonium)、キビ(Panicum)、チカラシバ(Pennisetum)、キンポウゲ(Ranunculus)、セネシオ(Senecio)、サルピグロッシス(Salpiglossis)、キュウリ(Cucumis)、ブロワアリア(Browaalia)、ダイズ(Glycine)、ドクムギ(Lolium)、トウモロコシ(Zea)、コムギ(Triticum)、モロコシ(Sorghum)、リンゴ(Malus)、アピウム(Apium)、コヌカグサ(Agrostis)、アワガエリ(Phleum)、ダクチリス(Dactylis)、モロコシ(Sorgum)、エノコログサ(Setaria)、トウモコシ(Zea)、イネ(Oryza)、コムギ(Triticum)、ライムギ(Secale)、カラスムギ(Avena)、オオムギ(Hordeum)、サトウキビ(Saccharum)、イチゴツナギ(Poa)、ウシノケグサ(Festuca)、ステノタフルム(Stenotaphrum)、ギョウギシバ(Cynodon)、コイクス(Coix)、オリレアエ(Olyreae)、ファレアエ(Phareae)、ダイズ(Glycine)、エンドウ(Pisum)、ヒヨコマメ(Cicer)、インゲンマメ(Phaseolus)、ヒラマメ(Lens)、またはラッカセイ(Arachis)由来、さらにより好ましくはトウモロコシ、コメ、ライコムギ、ライムギ、綿、ダイズ、モロコシ、コムギ、カラスムギ、オオムギ、キビ、ヒマワリ、キャノーラ、エンドウマメ、マメ、レンズマメ、ピーナッツ、ヤムビーン、ササゲ、ハッショウマメ、クローバー、アルファルファ、ハウチワマメ、ベッチ、ハス、スイートクローバー、フジ、スイートピーまたは堅果植物(nut plant)由来である。
【0121】
本発明との関係において定義されるようなトランスジェニック植物には、植物(ならびに前記植物の部分および細胞)および所望の植物または植物器官での本発明の少なくとも1つのポリペプチドの産生をもたらす組換え法を用いて遺伝子操作されたこの子孫が含まれる。トランスジェニック植物は、A.Slaterら、Plant Biotechnology−The Genetic Manipulation of Plants、Oxford University Press(2003年)、およびP.ChristouおよびH.Klee、Handbook of Plant Biotechnology、John Wiley and Sons(2004年)に一般的に記載されているものなど、当技術分野で知られた手法を用いて産生することができる。
【0122】
「トランスジェニック植物」は、同じ種、亜種または品種の野生型植物では見出されることのない遺伝子構築物(「トランス遺伝子(transgene)」)を含有する植物を指す。本明細書で言及されるような「トランス遺伝子」は、バイオテクノロジーの技術分野における通常の意味を有し、組換えDNAまたはRNA技術により産生されまたは変化させ、植物細胞に導入された遺伝子配列を含む。トランス遺伝子は、植物細胞由来の遺伝子配列を含み得る。典型的には、トランス遺伝子は、例えば、形質転換などによるヒトの操作により植物に導入されているが、当業者であれば認識するように任意の方法を使用することができる。
【0123】
好ましい実施形態では、トランスジェニック植物は、この子孫が所望の表現型を分離しないように、導入された1つ1つの遺伝子(トランス遺伝子)がホモ接合性である。トランスジェニック植物はまた、例えば、ハイブリッド種子から増殖されたF1子孫でのように、導入されたトランス遺伝子(複数可)がヘテロ接合性であってもよい。このような植物は、当技術分野でよく知られた雑種強勢などの利点を提供することができる。
【0124】
本発明のポリヌクレオチドは、成長の全段階でトランスジェニック植物において構成的に発現され得る。植物または植物器官の使用に応じて、ポリペプチドは段階特異的な方法で発現されてよい。さらに、ポリヌクレオチドは、組織特異的に発現されてよい。
【0125】
植物において目的のポリペプチドをコードする遺伝子の発現をもたらすことが知られているまたは見出されている調節配列は、本発明で使用することができる。使用される調節配列の選択は、目的の標的植物および/または標的器官により決まる。このような調節配列は、植物もしくは植物ウイルス由来であってよく、または化学的に合成されてよい。このような調節配列は、当業者によく知られている。
【0126】
植物細胞の安定なトランスフェクション、またはトランスジェニック植物の確立に適切ないくつかのベクターは、例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual、1985年、補遺1987年;WeissbachおよびWeissbach、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、1989年;およびGelvinら、Plant Molecular Biology Manual、Kluwer Academic Publishers、1990年に記載されている。典型的には、植物発現ベクターは、例えば、5’および3’調節配列の転写制御下の1つまたは複数のクローン化植物遺伝子および優性選択マーカーを含む。このような植物発現ベクターはまた、プロモーター調節領域(例えば、誘導発現もしくは構成的発現、環境的もしくは発生的に調節された発現、または細胞もしくは組織特異的発現を制御する調節領域)、転写開始部位(transcription initiation start site)、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終結部位、および/またはポリアデニル化シグナルも含有することができる。
【0127】
植物細胞において活性ないくつかの構成的プロモーターが記載されている。植物での構成的発現に適切なプロモーターには、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ゴマノハグサモザイク(Figwort mosaic)ウイルス(FMV)35S、サトウキビバシリフォルム(sugarcane bacilliform)ウイルスプロモーター、コメリナイエロー斑(commelina yellow mottle)ウイルスプロモーター、リブロース−1,5−ビス−リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット由来の光誘導プロモーター、イネ細胞質トリオースリン酸イソメラーゼ(rice cytosolic triosephosphate isomerase)プロモーター、シロイヌナズナ属のアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼプロモーター、イネアクチン1遺伝子プロモーター、マンノピン合成酵素およびオクトピン合成酵素プロモーター、Adhプロモーター、スクロース合成酵素プロモーター、R遺伝子複合体プロモーター、およびクロロフィルα,β結合タンパク質遺伝子プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。これらのプロモーターは、植物で発現されているDNAベクターを作製するのに使用されている。例えば、PCT公報WO8402913参照。これらのプロモーターはすべて、様々なタイプの植物発現可能な(plant-expressible)組換えDNAベクターを作製するのに使用されている。
【0128】
葉、種子、根または茎などの植物ソース組織での発現の目的のため、本発明で利用されるプロモーターは、これらの特定の組織において比較的高発現を有することが好ましい。この目的のため、組織もしくは細胞特異的発現または増強した発現を有する遺伝子に対し、いくつかのプロモーターから選択してもよい。文献に報告されたこのようなプロモーターの例には、エンドウマメ由来の葉緑体グルタミン合成酵素GS2プロモーター、コムギ由来の葉緑体フルクトース−1,6−ビホスファターゼプロモーター、ジャガイモ由来の核光合成(nuclear photosynthetic)ST-LS1プロモーター、シロイヌナズナ由来のセリン/スレオニンキナーゼプロモーターおよびグルコアミラーゼ(CHS)プロモーターが含まれる。また、アメリカカラマツ(eastern larch)(Larix laricina)由来のリブロース−1,5−ビス−リン酸カルボキシラーゼプロモーター、マツ由来のCab遺伝子であるCab6に対するプロモーター、コムギ由来のCab−1遺伝子に対するプロモーター、ホウレンソウ由来のCab−1遺伝子に対するプロモーター、イネ由来のCab 1R遺伝子に対するプロモーター、トウモロコシ(Zea mays)由来のピルビン酸オルトリン酸ジキナーゼ(PPDK)プロモーター、タバコLhcbl2遺伝子に対するプロモーター、シロイヌナズナSuc2スクロース−H30共輸送体プロモーター、およびホウレンソウ由来のチラコイド膜タンパク質遺伝子に対するプロモーター(PsaD、PsaF、PsaE、PC、FNR、AtpC、AtpD、Cab、RbcS)は、光合成活性組織において活性であることも報告されている。
【0129】
シロガラシ(Sinapis alba)由来のLhcB遺伝子およびPsbP遺伝子に対するプロモーターなど、クロロフィルα,β結合タンパク質に対する他のプロモーターも、本発明で利用されてよい。環境、ホルモン、化学、および/または発生シグナルに反応して調節される種々の植物遺伝子プロモーター((1)熱、(2)光(例えば、エンドウマメRbcS−3Aプロモーター、トウモロコシRbcSプロモーター)、(3)アブシジン酸などのホルモン、(4)損傷(例えば、WunI)、または(5)ジャスミン酸メチル(methyl jasminate)、サリチル酸、ステロイドホルモン、アルコール、Safener(WO9706269)などの化学物質により調節されるプロモーターを含む)も、植物細胞におけるRNA結合タンパク質遺伝子の発現に使用することができ、または(6)生物特異的プロモーターの使用も有利であり得る。
【0130】
ジャガイモ植物の塊茎、トマト果実、またはダイズ、キャノーラ、綿、トウモロコシ、コムギ、イネ、およびオオムギの種子などの植物シンク組織での発現の目的のため、本発明に利用されるプロモーターは、これらの特定の組織において比較的高発現を有することが好ましい。クラスIパタチンプロモーター、ジャガイモ塊茎ADPGPP遺伝子に対するプロモーター、大および小サブユニットの両方、スクロース合成酵素プロモーター、22kDタンパク質複合体およびプロテイナーゼ阻害剤を含む主な塊茎タンパク質に対するプロモーター、顆粒球結合デンプン合成酵素遺伝子(GBSS)に対するプロモーター、および他のクラスIおよびIIパタチンプロモーターを含む、塊茎特異的発現または増強した発現を有する遺伝子に対するいくつかのプロモーターが知れられている。他のプロモーターも、種子または果実などの特定の組織においてタンパク質を発現するのに使用することができる。β−コングリシニンに対するプロモーター、またはナピンおよびファセオリンプロモーターなどの他の種子特異的プロモーターを使用することができる。トウモロコシ内胚乳発現に対する特に好ましいプロモーターは、イネ由来のグルテリン遺伝子に対するプロモーター、より好ましくはOsgt−1プロモーターである。コムギでの発現に適切なプロモーターの例には、ADPグルコースピロシンターゼ(pyrosynthase)(ADPGPP)サブユニットに対するプロモーター、顆粒球結合および他のデンプン合成酵素、分枝および脱分枝酵素、胚形成大量(embryogenesis-abundant)タンパク質、グリアジン、およびグルテニンに対するこれらのプロモーターが含まれる。イネでのこのようなプロモーターの例には、ADPGPPサブユニット、顆粒球結合および他のデンプン合成酵素、分枝酵素、脱分枝酵素、スクロース合成酵素およびグルテリンに対するこれらのプロモーターが含まれる。特に好ましいプロモーターは、イネグルテリン、Osgt−1遺伝子に対するプロモーターである。オオムギに対するこのようなプロモーターの例には、ADPGPPサブユニット、顆粒球結合および他のデンプン合成酵素、分枝酵素、脱分枝酵素、スクロース合成酵素、ホルデイン、胚グロブリン、およびアリューロン特異的タンパク質に対するこれらのプロモーターが含まれる。
【0131】
根特異的プロモーターも使用することができる。このようなプロモーターの例は、酸性キチナーゼ遺伝子に対するプロモーターである。根組織での発現は、同定されているCaMV 35Sプロモーターの根特異的サブドメインを利用して達成することもできる。
【0132】
5’非翻訳リーダー配列は、本発明のポリヌクレオチドの異種遺伝子配列を発現するのに選択されたプロモーターから得ることができ、および所望であればmRNAの翻訳を増加させるように特異的に修飾することができる。トランス遺伝子発現の最適化の概説については、Kozielら(1996年)を参照されたい。5’非翻訳領域は、植物ウイルスRNA(特に、タバコモザイクウイルス、タバコエッチウイルス、トウモロコシドワーフモザイクウイルス(Maize dwarf mosaic virus)、アルファルファモザイクウイルス)から、適切な真核生物遺伝子、植物遺伝子(コムギおよびトウモロコシクロロフィルα/β結合タンパク質遺伝子リーダー)、または合成遺伝子配列からも得ることができる。本発明は、非翻訳領域が5’非翻訳配列(プロモーター配列を伴う)から得られる構築物に限定されない。リーダー配列は、無関係のプロモーターまたはコード配列から得ることもできる。本発明との関係において有用なリーダー配列は、トウモロコシHsp70リーダー(米国特許第5,362,865号および米国特許第5,859,347号)、およびTMVオメガエレメントを含む。
【0133】
転写の終結は、目的のポリヌクレオチドに対するキメラベクターに作動可能に連結された3’非翻訳DNA配列により達成される。組換えDNA分子の3’非翻訳領域は、植物において、RNAの3’末端へのアデニル酸ヌクレオチドの付加をもたらすのに機能するポリアデニル化シグナルを含有する。3’非翻訳領域は、植物細胞で発現される様々な遺伝子から得ることができる。ノパリン合成酵素3’非翻訳領域、エンドウマメ小サブユニットRubisco遺伝子からの3’非翻訳領域、ダイズ7S種子貯蔵タンパク質遺伝子からの3’非翻訳領域が、通常この能力に使用される。アグロバクテリウム腫瘍誘発(Ti)プラスミド遺伝子のポリアデニル酸シグナルを含有する3’転写、非翻訳領域も適切である。
【0134】
細胞へ遺伝子を直接送達する少なくとも4つの一般的な方法は、既に記載されている:(1)化学的方法(Grahamら、1973年);(2)物理的方法、例えばマイクロインジェクション(Capecchi、1980年)、エレクトロポレーション(例えば、WO87/06614、米国特許第5,472,869号、同第5,384,253号、WO92/09696およびWO93/21335参照)、および遺伝子銃(例えば、米国特許第4,945,050号および米国特許第5,141,131号参照)など;(3)ウイルスベクター(Clapp、1993年;Luら、1993年;Eglitisら、1988年);および(4)受容体媒介メカニズム(Curielら、1992年;Wagnerら、1992年)。
【0135】
使用することのできる加速方法には、例えば、微粒子銃(microprojectile bombardment)などが含まれる。植物細胞に形質転換核酸分子を送達する方法の1つの例は、微粒子銃である。この方法は、Yangら、Particle Bombardment Technology for Gene Transfer、Oxford Press、Oxford、England(1994年)により概説されている。非生物学的粒子(microprojectile)は核酸で被覆し、推進力により細胞に送達される。例示的な粒子には、タングステン、金、白金などからなるものが含まれる。単子葉植物を再現可能に形質転換する有効な手段であることに加え、微粒子銃の特定の利点は、プロトプラストの単離も、アグロバクテリウム感染の感受性も必要ない点である。加速によりDNAをトウモロコシ細胞に送達する方法の例示的な実施形態は、DNAで被覆した粒子を、ステンレススチールまたはNytexスクリーンなどのスクリーンを介して、懸濁液で培養したトウモロコシ細胞で被覆したフィルター表面に推進するのに使用できるバイオリスティクス(biolistics)α−粒子送達系である。本発明による使用に適切な粒子送達系は、Bio−Rad Laboratories社から入手可能なヘリウム加速PDS−1000/He銃である。
【0136】
照射(bombardment)のため、懸濁液中の細胞をフィルター上に濃縮してもよい。照射する細胞を含有するフィルターは、微粒子停止プレート(microprojectile stopping plate)の下に適切な距離をおいて置かれる。所望であれば、1つまたは複数のスクリーンも、銃と照射する細胞との間に置かれる。
【0137】
あるいは、未熟胚または他の標的細胞を固体培養培地に配置してもよい。照射する細胞は、微粒子停止プレートの下に適切な距離をおいて置かれる。所望であれば、1つまたは複数のスクリーンも、加速装置と照射する細胞との間に置かれる。本明細書に記載された手法の使用により、マーカー遺伝子を一時的に発現する細胞の最大1000個以上の増殖巣を得ることができる。照射後48時間で外因性遺伝子産物を発現する焦点部(in a focus)における細胞数は、1個から10個、および平均1個から3個の範囲であることが多い。
【0138】
照射形質転換では、最大数の安定な形質転換体をもたらすように照射前培養条件および照射パラメータを最適化してもよい。照射に関する物理的および生物学的パラメータはいずれも、この技術では重要である。物理的要因は、DNA/微粒子沈降の操作を伴うもの、または微粒子またはマクロ粒子(macro projectile)のいずれかの飛行および速度に影響するものである。生物学的要因には、照射前および直後の細胞操作に関わるすべてのステップ、照射に伴う外傷の軽減を助ける標的細胞の浸透圧調整、およびまた直線化DNAまたはインタクトなスーパーコイル化プラスミドなど、DNAを形質転換する性質が含まれる。照射前操作は、未熟胚の形質転換の成功に特に重要であると考えられる。
【0139】
他の代わりの実施形態で、プラスミドを安定に形質転換することができる。高等植物におけるプラスミド形質転換について開示された方法には、選択マーカーを含有するDNAの粒子銃送達、および相同な組換えを介したプラスミドゲノムに対する該DNAの標的化が含まれる(米国特許第5,451,513号、米国特許第5,545,818号、米国特許第5,877,402号、米国特許第5,932479号、およびWO99/05265)。
【0140】
したがって、条件を十分に最適化するため、小規模試験で照射パラメータの様々な態様の調節を望めることが企図される。特に、ギャップ距離、飛行距離、組織距離、およびヘリウム圧などの物理的パラメータの調節を望むことができる。レシピエント細胞の生理学的状態に影響する、したがって、形質転換および組み込み効率に影響する可能性のある条件を修正して、外傷減少要因を最少化することもできる。例えば、レシピエント細胞の浸透圧状態、組織水和および継代培養段階または細胞周期を、最適な形質転換のために調節することができる。他の日常的な調節の遂行は、本開示に照らして当業者に知られているであろう。
【0141】
アグロバクテリウム媒介導入(Agrobacterium-mediated transfer)は、植物細胞への遺伝子導入に幅広く適用可能な系である。なぜなら、DNAを植物組織全体に導入でき、これによりプロトプラストからインタクトな植物を再生する必要を回避できるためである。DNAを植物細胞に導入するためのベクターを組込んでいるアグロバクテリウムに媒介された植物の使用は、当技術分野でよく知られている(例えば、米国特許第5,177,010号、米国特許第5,104,310号、米国特許第5,004,863号、米国特許第5,159,135号参照)。さらに、T−DNAの組み込みは、結果的に再配列(rearrangement)がほとんどない比較的正確な工程である。導入するDNA領域は境界配列により確定され、介在DNAは通常、植物ゲノムに挿入される。
【0142】
現代のアグロバクテリウム形質転換ベクターは、大腸菌およびアグロバクテリウムで複製することができ、記載されたように簡便な操作を可能にする(Kleeら、Plant DNA Infectious Agents、HohnおよびSchell編、Springer−Verlag、New York、179〜203頁(1985年)。さらに、アグロバクテリウム媒介遺伝子導入用ベクターにおける技術的進歩は、ベクターでの遺伝子および制限部位の配列を改善して遺伝子をコードする様々なポリペプチドを発現できるベクターの構築を容易にした。記載されたベクターは、遺伝子をコードする挿入ポリペプチドの直接発現のためのプロモーターおよびポリアデニル化部位に隣接された簡便なマルチリンカー領域を有し、本目的に適切である。さらに、病原性を有する(armed)および病原性の無い(disarmed)Ti遺伝子の両方を含有するアグロバクテリウムを、形質転換に使用することができる。アグロバクテリウム媒介形質転換が効果的であるような植物種では、これは、遺伝子導入の容易および明確な性質のため最適な方法である。
【0143】
アグロバクテリウム形質転換方法を用いて形成されたトランスジェニック植物は、典型的には1つ染色体に単一の遺伝子座を含有する。このようなトランスジェニック植物は、付加された遺伝子に対して半接合性であると言うことができる。付加された構造遺伝子に対してホモ接合性であるトランスジェニック植物、すなわち、2つの付加された遺伝子を含有し、1つの遺伝子が染色体対の各染色体において同じ座にあるトランスジェニック植物がより好ましい。ホモ接合性トランスジェニック植物は、単一の付加された遺伝子を含有する、独立した分離固体のトランスジェニック植物を有性交配(自殖)させ、産生されたいくつかの種子を発芽させ、得られた植物を目的遺伝子について分析することにより得ることができる。
【0144】
2つの異なるトランスジェニック植物は、2つの独立に分離する外因性遺伝子を含有する子孫を産生するために交配することもできることも理解されるべきである。適切な子孫の自殖は、両方の外因性遺伝子に対してホモ接合性である植物を産生するこができる。親植物の戻し交配および非トランスジェニック植物との異系交配も、栄養繁殖のように企図される。異なる特質および作物に一般に使用される他の繁殖方法の記載は、Fehr、Breeding Methods for Cultivar Development、Wilcox J編、American Society of Agronomy、Madison Wis(1987年)に見出すことができる。
【0145】
植物プロトプラストの形質転換は、リン酸カルシウム沈降、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、およびこれらの処理の組合せに基づく方法を用いて達成することができる。異なる植物種に対するこれらの系の適用は、プロトプラストからこの特定の植物株を再生する能力に依存する。プロトプラストから穀類を再生するための例示的な方法が記載されている(Fujimuraら、1985年;Toriyamaら、1986年;Abdullahら、1986年)。
【0146】
細胞形質転換の他の方法も使用することができ、および花粉への直接DNA導入、植物の生殖器官へのDNAの直接導入、または未熟胚の細胞へのDNA直接注入とこれに続く乾燥胚の再水和による植物への直接DNA導入が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
単一の植物プロトプラスト形質転換体からまたは様々な形質転換外植片からの再生、発生、および栽培は、当技術分野でよく知られている(Weissbachら、Methods for Plant Molecular Biology、Academic Press、San Diego、Calif.、(1988年)。この再生および成長過程は、典型的には形質転換された細胞の選択ステップ、すなわち胚発達の通常の段階から根の付いた小植物段階を通じてこれらの個別化された細胞を培養することが含まれる。トランスジェニック胚および種子は、同様に再生される。得られた根の付いたトランスジェニック芽は、この後、土壌などの適切な植物成長培地に植えられる。
【0148】
外来外因性遺伝子を含有する植物の発生または再生は、当技術分野でよく知られている。好ましくは、再生植物は、ホモ接合性トランスジェニック植物を提供するため自家授粉される。さもなければ、再生植物から得られた花粉は、農学的に重要な系の種子増殖された植物に交配される。反対に、これらの重要な系の植物からの花粉は、再生植物を授粉するのに使用される。所望の外因性核酸を含有する本発明のトランスジェニック植物は、当業者によく知られた方法を用いて栽培される。
【0149】
主にアグロバクテリウム・ツメファシエンスの使用による双子葉植物を形質転換し、トランスジェニック植物を得る方法は、綿(米国特許第5,004,863号、米国特許第5,159,135号、米国特許第5,518,908号);ダイズ(米国特許第5,569,834号、米国特許第5,416,011号);アブラナ属(米国特許第5,463,174号);ピーナッツ(Chengら、1996年);およびエンドウマメ(Grantら、1995年)に関して公表されている。
【0150】
外因性核酸の導入により植物に遺伝的多様性を導入するための、コムギおよびオオムギなどの穀物植物の形質転換方法、ならびにプロトプラストまたは未熟植物胚からの植物の再生方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、カナダ特許出願第2,092,588号、オーストラリア特許出願第61781/94号、オーストラリア特許第667939号、米国特許第6,100,447号、国際特許出願PCT/US97/10621、米国特許第5,589,617号、米国特許第6,541,257号参照、および他の方法は、特許明細書WO99/14314に記載されている。好ましくは、トランスジェニックコムギまたはオオムギ植物は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換手順により産生される。所望の核酸構築物を保有するベクターは、組織培養植物または外植片、またはプロトプラストなどの適切な植物系の再生可能なコムギ細胞に導入することができる。
【0151】
再生可能なコムギ細胞は、好ましくは未熟胚の胚盤、成熟胚、これら由来のカルス、または分裂組織由来である。
【0152】
トランスジェニック細胞および植物中のトランス遺伝子の存在を確認するため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅またはサザンブロット分析を、当業者に知られた方法を用いて実施することができる。トランス遺伝子発現産物は、産物の性質に応じて任意の種々の方法で検出することができ、およびウェスタンブロットおよび酵素アッセイを含む。タンパク質発現を定量し、異なる植物組織における複製を検出するのに、1つの特に有用な方法は、GUSなどのレポーター遺伝子を使用することである。ひとたびトランスジェニック植物が得られると、所望の表現型を有する植物組織または部分を産生するために育成することができる。植物組織または植物部分は収穫することができ、および/または種子は採取することができる。種子は、所望の特性を有する組織または部分を有する別の植物を育成するための供給源として役立ち得る。
【0153】
トランスジェニック非ヒト動物(Transgenic Non-Human Animals)
「トランスジェニック非ヒト動物」は、同じ種または品種の野生型動物では見出されない遺伝子構築物(「トランス遺伝子」)を含有する、ヒト以外の動物を指す。本明細書で言及されるような「トランス遺伝子」は、バイオテクノロジーの技術分野における通常の意味を有し、組換えDNAまたはRNA技術により産生されたまたは変化させた、および動物細胞に導入された遺伝子配列を含む。トランス遺伝子は、動物細胞由来の遺伝子配列を含み得る。典型的には、トランス遺伝子は、例えば、形質転換によるなどヒトの操作により動物に導入されているが、当業者であれば認識するように任意の方法を使用することができる。
【0154】
トランスジェニック動物の産生法は、当技術分野でよく知られている。このテーマに関する有用な一般的教科書は、Houdebine、Transgenic animals−Generation and Use(Harwood Academic、1997年)である。
【0155】
異種DNAは、例えば、受精した哺乳類卵子に導入することができる。例えば、全能性または多能性幹細胞は、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム媒介沈降、リポソーム融合、レトロウイルス感染または他の手段により形質転換することができ、形質転換細胞は次いで胚に導入され、胚は次いでトランスジェニック動物で発生する。きわめて好ましい方法では、発生中の胚は所望のDNAを含有するレトロウイルスに感染され、トランスジェニック動物は感染胚から産生される。しかし、最も好ましい方法では、適切なDNAは、胚の前核(pronucleus)または細胞質に、好ましくは単細胞段階で同時注入され、胚を成熟トランスジェニック動物で発生させる。
【0156】
トランスジェニック動物の産生に使用される他の方法は、標準的方法による前核段階卵子(pro-nuclear stage eggs)への核酸の微量注入を伴う。注入された卵子は、次いで、偽妊娠したレシピエントの欄干に導入する前に培養される。
【0157】
トランスジェニック動物は、核移植技術により産生することもできる。この方法を用いて、ドナー動物由来の線維芽細胞は、調節配列の制御下で、目的の結合ドメインまたは結合パートナーのコード配列を組込んだプラスミドを安定にトランスフェクトされる。安定なトランスフェクタントは、次いで徐核卵母細胞に融合され、培養され、メスのレシピエントに導入される。
【0158】
組成物(Compositions)
本発明の組成物は、本明細書では「許容可能な担体(acceptable carriers)」とも呼ばれる賦形剤(excipients)を含むことができる。賦形剤は、治療される動物、植物、植物もしくは動物材料、または環境(土壌および水試料を含む)が許容できるいずれかの物質であってよい。このような賦形剤の例には、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス液、および他の水性生理学的平衡塩類溶液が含まれる。固定油、ゴマ油、オレイン酸エチル、またはトリグリセリドなどの非水性ビヒクルも使用されてよい。他の有用な製剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの粘度増強剤を含有する懸濁液が含まれる。賦形剤は、等張性および化学的安定性を増強する物質など、微量の添加剤を含有することもできる。緩衝液の例にはリン酸緩衝液、重炭酸緩衝液およびトリス緩衝液が含まれるのに対し、防腐剤の例にはチメロサールまたはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが含まれる。賦形剤は、組成物の半減期を増大するのに使用することもでき、例えば、ポリマー放出制御ビヒクル、生分解性移植、リポソーム、細菌、ウイルス、他の細胞、油、エステル、およびグリコールであるが、これらに限定されない。
【0159】
さらに、本明細書に記載されたポリペプチドは、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/もしくは合成ピレトロイド系殺虫剤の分解速度および/もしくは程度を増強する、またはポリペプチドの安定性を増大する組成物において提供することができる。例えば、ポリペプチドは、ポリウレタンマトリックスに固定化(Gordonら、1999年)、または適切なリポソームに封入(Petrikovicsら、2000年aおよびb)することができる。ポリペプチドは、消火で日常的に使用されるような泡を含む組成物に組込むこともできる(LeJeuneら、1998年)。当業者により理解される通り、本発明のポリペプチドは、WO00/64539に記載されているようなスポンジまたは泡で容易に使用することができるであろう。
【0160】
本発明の1つの実施形態では、本発明の組成物を動物、植物、動物もしくは植物材料、または環境(土壌および水試料を含む)にゆっくり放出することができる放出制御製剤である。本明細書では、放出制御製剤は、放出制御ビヒクル中に本発明の組成物を含む。適切な放出制御ビヒクルには、生適合性ポリマー、他のポリマーマトリックス、 カプセル、マイクロカプセル、マイクロ粒子、巨丸剤、浸透圧ポンプ、分散デバイス、リポソーム、リポスフィア(liposphere)、および経皮送達系が含まれるが、これらに限定されない。好ましい放出制御製剤は生分解性(biodegradable)(すなわち、生体内分解性(bioerodible))である。
【0161】
本発明の好ましい放出制御製剤は、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を含む地域にある土壌または水に、本発明の組成物を放出することができる。製剤は好ましくは、約1から約12カ月の範囲の期間にわたり放出される。本発明の好ましい放出制御製剤は、好ましくは 少なくとも約1カ月、より好ましくは少なくとも約3カ月、さらにより好ましくは少なくとも約6カ月、さらにより好ましくは少なくとも約9カ月、さらにより好ましくは少なくとも約12カ月の間、処置(treatment)を行うことができる。
【0162】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するための有効な組成物を産生するのに必要となる、本発明のポリペプチド、ベクター、細菌、抽出物、上清、宿主細胞などの濃度は、除染される試料の性質、試料中のベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤の濃度、ならびに組成物の処方に依存するであろう。組成物内のポリペプチド、ベクター、または宿主細胞の有効濃度は、当業者により理解されるであろうように、容易に実験的に判定することができる。
【0163】
本発明の酵素、および/またはこれをコードする微生物は、WO2004/112482およびWO2005/26269に一般的に記載されているような被覆組成物において使用することができる。
【0164】
抽出物および上清(Extracts and Supernatants)
抽出物は、所望の活性が消失しない限り、当技術分野で知られた任意の手法を用いて調製することができる。限定のない適切な方法には、長期凍結乾燥、シリカまたはジルコニウムビーズ存在下での粉砕、いわゆる「フレンチプレス」の使用、超音波処理およびガンマ線照射が含まれる。
【0165】
例えば、長期凍結乾燥された細菌製剤は、前記製剤から基本的にすべての水が除去されたことを意味する。したがって、長期凍結乾燥された細菌製剤は、1.5%未満、好ましくは1%未満およびより好ましくは0.5%未満の残留水を含有する。しかし、最適でない凍結乾燥条件では、凍結乾燥された細菌の製剤がより多くの残留水(約10%)を含有する場合、すなわち細菌のすべてが死滅されるわけではない。必要であれば、残留生細菌の死滅は、代わりに、空気(大気圧)と前記製剤を接触させることで得られる。このような製剤は、上述されたような長期凍結乾燥された細菌製剤と同じ特性および活性を有する。長期凍結乾燥された細菌製剤中の残留水は、例えば、カールフィッシャーの電量測定法により判定される。
【0166】
本発明の抽出物は、細胞溶解物であってよい。
【0167】
本発明の上清は、適切な条件下でノカルディオイデス属種を培養して得ることができる。このような条件には、細菌増殖のためのグルコース、細菌増殖に必要とされる水、様々な塩などの炭素供給源、ならびにアミノ酸および窒素供給源(例えば、ウシ、酵母抽出物)を含有する栄養培地(基本または完全培地としても知られる)が含まれる。これは、アミノ酸供給源が未知の組成物そのもの有する種々の化合物を含有するため、未確定な培地である。栄養培地は、ほとんどの細菌が増殖に必要とし、非選択的なすべての要素を含有するため、実験室培養コレクションで保存される細胞の一般的な培養および維持に使用される。特に、NB、LB、TB、または炭素および窒素が添加された最小培地のような任意のリッチ培地を使用することができる。
【0168】
株SG−4Gの増殖用最少培地(MM)は、1リットルの再蒸留水に以下の化合物を溶解して調製することができる:4.0g Na2HPO4、2.0g KH2PO4、0.8g(NH4)2SO4、0.8g MgSO4.7H2O。微量要素液(1ml)は、上述の化合物が完全に溶解された後に溶液に添加される。1リットルの微量要素液は、0.10g Al(OH)3、0.05g SnCl2.2H2O、0.05g KI、0.05g LiCl、0.08g MgSO4、0.05g H3BO3、0.10g ZnSO4.7H2O、0.01g CoCl2、0.01g NiSO4.6H2O、BaCl2 0.05g、0.05g(NH4)6Mo7O24.4H2Oを含有した。MMのpHは、15分間15lbsでオートクレーブする前に、7.0に調整される。
【0169】
細菌は、例えば、150〜300RMP(最大OD600)で振盪するバッフル付き振盪フラスコで、酸素存在下、少なくとも20℃(緩徐な増殖)から37℃(急速な増殖)の範囲の温度で培養することができる。
【0170】
上清は、細胞物質を回収するための遠心分離を用いて、培養後などに標準的手法を用いて調製することができる。
【0171】
本発明の抽出物および/または上清は、少なくとも部分的に精製されたものを含む(本明細書では画分(fractions)とも呼ばれる)。このような精製には、汚染DNAおよび/またはRNA、脂質、炭水化物および所望の活性を有さないタンパク質の除去が含まれる。当技術分野で知られた任意の精製手順を使用することができる。
【0172】
微生物寄託詳細(Micro-organism Deposit Details)
ノカルディオイデス属種SG−4Gは、受託番号V07/015486で、国家計量標準機関(クラークストリート51−65、サウスメルボルン、ビクトリア3205、オーストラリア)に2007年6月20日に寄託された。
【0173】
この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約およびその規則(the Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purpose of Patent Procedure and the Regulations thereunder)の規定の下で行われた。これは、寄託日から30年間の生存可能な培養物の維持を保証する。生物は、関連する特許の発行時に公衆に対し培養物子孫の恒久的および無制限の利用可能性を保証するブダペスト条約の条項の下、国家計量標準機関により利用されるであろう。
【0174】
本出願の承継人は、寄託された培養物が、適切な条件下で培養された場合に、死ぬまたは失われるまたは壊されるならば、通知時に同培養物の生存可能な標本と迅速に交換されることに同意した。寄託された株の利用可能性は、特許法に基づきいずれかの政府当局の下で付与された権利に違反して本発明を実行するための実施権と解釈されるべきではない。
【0175】
抗体(Antibodies)
本発明で使用されるような用語「抗体」には、エピトープ決定基に結合することができるFab、F(ab’)2、およびFvなどのインタクトな分子およびそのフラグメント、ならびに他の抗体様分子を含む、ポリクローナル抗体、モノクローナル 抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、へテロコンジュゲート抗体、キメラ抗体が含まれる。
【0176】
用語「特異的に結合する」は、他の既知のタンパク質ではない本発明の少なくとも1つのポリペプチド、特に配列番号:14から43として提供されるタンパク質に結合する抗体の能力を指す。
【0177】
ポリクローナル抗体が所望される場合、選択された哺乳類(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、本発明の免疫原性ポリペプチドにより免疫化する。免疫化動物由来の血清を採取し、既知の手順により治療する。ポリクローナル抗体含有血清が他の抗原に対する抗体を含有する場合、ポリクローナル抗体は免疫親和性クロマトグラフィーにより精製することができる。ポリクローナル抗血清を産生および処理する手法は、当技術分野で知られている。このような抗体が作製され得るように、本発明は、動物における免疫原として使用するためのもう1つのポリペプチドに対しハプテン化された、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントも提供する。
【0178】
本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体も、当業者により容易に産生することができる。ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を作製する一般的方法論は、よく知られている。不死抗体産生細胞系は、細胞融合により、および腫瘍形成DNAによるBリンパ球の直接形質転換、またはエプスタインバーウイルスによるトランスフェクションなどの他の手法によっても作製することができる。産生されたモノクローナル抗体パネルは、様々な特性、すなわち、アイソタイプおよびエピトープ親和性についてスクリーニングされる。
【0179】
本発明の抗体を産生するための他の手法は、当技術分野で知られている。
【0180】
本発明の抗体は、固体支持体に結合させおよび/または適切な試薬、対照、指示などと共に適切な容器中のキットに詰めることができる。
【0181】
1つの実施形態では、本発明の抗体は検出可能に標識される。抗体結合の直接測定を可能にする例示的な検出可能な標識には、放射性標識、フルオロフォア、色素、電磁ビーズ、化学発光物質(chemiluminescer)、コロイド粒子などが含まれる。結合の直接測定を可能にする標識の例には、基質が着色または蛍光産物を提供し得る酵素が含まれる。別の例示的な検出可能な標識には、適切な基質の添加後に検出可能な産物シグナルを提供できる共有結合された酵素が含まれる。複合体での使用に適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが含まれる。市販されていない場合、このような抗体−酵素複合体は、当業者に知られた手法により容易に産生される。さらに、例示的な検出可能な標識には、高い親和性によりアビジンまたはストレプトアビジンに結合するビオチン;蛍光活性化細胞選別装置と共に使用することができる蛍光色素(例えば、フィコビリタンパク質、フィコエリトリンおよびアロフィコシアニン;フルオレセインおよびテキサスレッド);ハプテンなどが含まれる。好ましくは、検出可能な標識は、プレートルミノメーターでの直接測定を可能にする(例えば、ビオチン)。このような標識抗体は、本発明のポリペプチドを検出するための当技術分野で知られた手法において使用することができる。
【実施例】
【0182】
[実施例1]−材料および方法
LC−MSアッセイ(LC-MS assay)
ベンズイミダゾールカーバメート分解酵素がインビトロで進化または微生物から同定および単離され得る前に、カルベンダジム(MBC)などの代表的な殺虫剤に関する適切な加水分解アッセイを開発する必要があった。カルベンダジムおよびこの代謝物、2−アミノベンズイミダゾールは同じ吸収スペクトルを有するため、本発明者らは、カルベンダジム分解に関する分光学的アッセイを標準化するのが困難であった。このため、カルベンダジム分解に関するLC−MSアッセイを開発した。
【0183】
Agilent TOF Software(バージョンA.01.00)により制御されるAgilentシリーズLCシステムを使用した(Agilent Technologies社)。移動相はアセトニトリル:水(18:82v/v、および両方を含有する0.1% v/vギ酸)で構成された。これは流速0.7mL分-1で注入した。使用したカラムは、Aqua(登録商標)C18、5μm粒径、250×4.60mm(Phenomenex社)であり、25℃で操作した。フォトダイオードアレイ検出器は波長270nmで操作していた。
【0184】
MS分析は、ESIソースによるLC/MSD TOF質量分析計(Agilent Technologies社)を用いて実施した。質量分析計は、DAD検出器後のHPLC流に接続した。走査モードは正イオンモードであった。窒素は乾燥ガスとして12l分-1の速度で流していた。キャピラリー温度は350℃であり、噴霧圧は3kvであった。50〜300m/zの範囲でのMS−TOFスキャンについては、フラグメンター(fragmenter)およびSkimmerをそれぞれ120Vおよび60Vでセットした。
【0185】
カルベンダジム分解に関するハイスループット(HTP)プレート透明化(clearing)アッセイ(High throughput (HTP) plate-clearing assay for carbendazim degradation)
カルベンダジム分解に関するHTPアッセイは、カルベンダジム分解細菌株のコスミドまたはプラスミドライブラリーをスクリーニングするのに使用した。このアッセイでは、0.7%アガロース含有最少培地プレートに、ジエチルエーテルで乳剤として0.1%カルベンダジムを噴霧し、ジエチルエーテルの完全蒸発のため一晩乾燥させた。栄養ブロスで一晩増殖させた細菌培養ドロップ3μlを、カルベンダジムを噴霧したプレートに移した。カルベンダジム加水分解産物は、カルベンダジムと比べて高可溶性であるため(わずか8ppmで溶解)、培養ドロップ周囲の透明化はカルベンダジム加水分解活性を示した。
【0186】
静止細胞アッセイ(Resting cell assays)
大腸菌クローンを、適切な抗生物質とともに15ml LBで一晩増殖させた。細胞を次いで遠心分離により回収し、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で2回洗浄し、最後に、カルベンダジム8ppmを含有する3ml最少培地で再懸濁した。試料を経時的に回収し、LC−MSを用いて培養上清を2−AB産生についてテストした。
【0187】
殺虫剤を分解する混合微生物培養物の単離(Isolation of mixed microbial cultures degrading pesticides)
カルベンダジムのようなベンズイミダゾールカーバメート系殺虫剤を分解する微生物酵素の開発の第1段階は、殺虫剤を分解できる、汚染環境から得られた混合微生物培養物の単離であった。単離は、増殖に必要な炭素または窒素を提供するためカルベンダジムが分解されなければならない培地での、汚染環境由来の接種材料の連続固相および液相集積培養により進めた。
【0188】
殺虫剤を分解する微生物種の精製および同定(Purification and identification of microbial species degrading pesticides)
カルベンダジム分解細菌培養物の精製は、上述のように得られた液相集積物(liquid phase enrichment)からのエンドポイント希釈継代培養により行った。ひとたび純粋な培養物が得られると、細菌を16S rDNA配列決定により同定した。
【0189】
殺虫剤分解に関与する精製培養物における遺伝子/酵素系のキャラクタリゼーション(特徴付け)(Characterisation of gene/enzyme systems in purified cultures responsible for pesticide degradation)
精製培養物の活性を、LC−MSアッセイを用いて、産生代謝物について最初に特性化した。これは当該培養物が、実質的に単一ステップの殺虫剤解毒を達成することを確実にするのに必要であった。次のステップは、カルベンダジム解毒に関与する遺伝子/酵素系が次いでクローン化される、最も効率的な分解菌(degrader)を分離するために株を比較することであった。あるいは、生物自体を、カルベンダジム分解のための放射線で死滅させた細胞産物全体として使用することができる。
【0190】
殺虫剤分解に関与する遺伝子/酵素系のクローニング(Cloning of the gene/enzyme system responsible for pesticide degradation)
細菌ゲノムDNA全体のライブラリーを、大腸菌−マイコバクテリウムコスミドシャトルベクターであるpUC18またはpYUB415のいずれかで調製した。ライブラリーは、上述したアッセイを用いて、大腸菌および/またはマイコバクテリウム・スメグマティスにおける機能獲得(gain-of-function)(2−ABへのカルベンダジム形質転換)についてスクリーニングした。
【0191】
2−ABへのカルベンダジムの形質転換を触媒する純粋な酵素を得るために、分子量カットオフ膜およびイオン交換クロマトグラフィーなどの標準的なタンパク質精製戦略が試みられた。
【0192】
純粋な酵素のN末端および同様に内部ペプチドは、マッコーリー大学、Australian Proteome Analysis Facility(NSW州)から商業的に配列決定した。これらの配列は、完全長遺伝子をクローン化するプローブとして使用される遺伝子の一部を増幅するための、PCRプライマーを設計するのに使用した。
【0193】
[実施例2]−土壌集積物(Soil enrichment)
土壌試料は、殺菌剤としてカルベンダジムを日常的に使用する地元のゴルフコースから採取した。集積培養物を、次いで、好気および嫌気の両方の条件下、炭素または窒素の唯一の供給源としてカルベンダジムを用いてセットした。いくつかの好気性土壌集積物は、カルベンダジム分解活性を有する混合培養物を産生した。純粋なカルベンダジム分解細菌、ノカルディオイデス属種SG−4Gを、次いで異なる集積物から数回分離し、この16S rRNA遺伝子配列に基づいて後で同定した。特性化された16S rRNA遺伝子配列は、配列番号:4として提供されている。
【0194】
この株は、炭素および窒素の唯一の供給源としてカルベンダジムを利用した。静止細胞試験は、わずか3分で8ppmカルベンダジムの完全な消失および無機化を示した。これは、殺虫剤のきわめて急速な代謝を表し、関与酵素が有効なバイオレメディアント(bioremediant)になるというきわめて有望な示唆であった。
【0195】
株SG−4Gは、いくつかのノカルディオイデス属種(ニトロフェノリカス(nitrophenolicus)、パナキテラエ(panaciterrae)、コンジュエンシス(kongjuensis))に99%同一性を有した。同一性のこのレベルは、新規に分離された細菌がノカルディオイデス属に属することを裏付ける。
【0196】
[実施例3]−カルベンダジム異化経路の生化学的特性(Biochemical characterization of the carbendazim catabolic pathway)
静止細胞試験および酵素アッセイの結果は、カルベンダジムが分泌酵素により2−アミノベンズイミダゾール(2−AB)に加水分解され、さらに2−ヒドロキシベンズイミダゾール(2−HB)に分解されることを裏付けた。これらの代謝物は、HPLCでの保持時間およびLC−MSでのm/zに基づいて同定し、信頼できる標準物(authentic standard)のものと正確に一致した。この株によるカルベンダジムの最初の分解に関する経路を図2に示す。
【0197】
[実施例4]−SG−4Gにおけるカルベンダジム分解に関与する遺伝子のクローニング(Cloning the gene responsible for carbendazim degradation in SG-4G)
HTPプレート透明化アッセイ(HTP plate-clearing assay)
カルベンダジム分解に関するHTPプレート透明化アッセイを、活性に関与する遺伝子をクローニングするためのスクリーニングツールとして開発した。アッセイを図3に図示する。
【0198】
活性スクリーニング(Activity screening)
培養上清および細胞全体のカルベンダジム分解活性を比較する予備データは、ノカルディオイデス属種SG−4Gにおける2−ABへのカルベンダジムの転換に関与する酵素は、補因子非依存性であり、増殖培地に分泌されることを示唆した。大きなプラスミド(pSG4G)が株SG−4Gに存在したのに対し、活性が、コードしたプラスミドであるかどうかをテストするため設計されたプラスミド除去(plasmid curing)実験は決定的ではなかった。したがって、大腸菌での(pBluescriptでの)2つの別々のプラスミドライブラリーは、一方はSG−4Gプラスミド(pSG−4G)から、他方は株SG−4Gから単離されたDNA全体から構築した。
【0199】
約2000クローン(挿入サイズ6〜10kb)を、HTPプレート透明化アッセイを用いてスクリーニングした。これらのうち、陽性であることが見出されたものはなかった。ここで、HTPプレート透明化アッセイは、野生型グラム陽性株からのカルベンダジム加水分解酵素の分泌に基づいて開発されたことに注意することが重要である。スクリーニングしたクローン数はゲノムを表すのに十分であったと仮定すれば、グラム陰性大腸菌における遺伝子発現および/または酵素分泌の違いが、陽性結果の欠如に関与した可能性がある。
【0200】
コスミドライブラリー(挿入サイズ約40kb)も、大腸菌−マイコバクテリウムシャトルベクターで調製し、520クローンすべては静止細胞アッセイを用いてスクリーニングした。この場合もやはり、陽性クローンは得られなかった。
【0201】
コスミドライブラリーを、次いでグラム陽性株であるマイコバクテリウム・スメグマティスでスクリーニングした。カルベンダジム分解について、約500コスミドクローンをM.スメグマチスで2回スクリーニングした。陽性クローンは同定されなかった。
【0202】
トランスポゾン突然変異誘発(Transposon mutagenesis)
トランスポゾン突然変異誘発アプローチを用いて、カルベンダジム分解遺伝子−酵素系をクローン化する試みは成功しなかった。トランスポゾン突然変異誘発および機能的クローニングのような実験を実施するのに必要な複雑な分子生物学の観点では、ノカルディオイデス属は十分に特徴付けされていなかった(すなわちトランスポゾンは、この属についてまだ同定されておらず、文献に公表されたエレクトロポレーションプロトコルもない)。しかし、本発明者らは、他のグラム陽性細菌系について確立されたプロトコルを基にトランスポゾン変異体を産生することを試みたが、無駄に終わった。
【0203】
逆遺伝学(Reverse genetics)
本発明者らは、株SG−4G由来のカルベンダジム加水分解酵素を精製するため、2段階のタンパク質精製プロトコルを開発した。第1段階が分子量カットオフ膜(サイズおよび形を基にタンパク質を分離した100kDおよび50kD)の使用を伴ったのに対し、第2段階はイオン交換クロマトグラフィーを伴った。カルベンダジム加水分解活性を示す画分も、ナフチル酢酸を基質に使用した場合にエステラーゼ活性を示した(図4)。イオン交換クロマトグラフィーは、約25kD分子量の実質的に純粋なタンパク質を明らかにした(図5)。
【0204】
精製タンパク質のN末端および1つの内部ペプチド(精製タンパク質のトリプシン消化からの)を配列決定し、それぞれ15(ANFVLVHGAWHGGWC)(配列番号:5)および11(LVYLDAFVPEH)(配列番号:6)アミノ酸残基を明らかにした。これらの配列は、エステラーゼおよびタンパク質のアルファ/ベータヒドロラーゼフォールドスーパーファミリー(hydrolase fold superfamily)の他の膜ときわめてよく整列した(aligned)。配列決定したアミノ酸残基を基に、PCRプライマーは、完全長遺伝子をクローン化するプローブとして使用できる部分遺伝子をクローン化するように設計した。
【0205】
完全遺伝子のクローニング(Cloning of the complete gene)
カルベンダジム分解酵素のN末端および内部ペプチド配列を基に、変性プライマーFl(5’ATGGCCAACTTCGTCCTCGTGC)(配列番号:7)およびR2(5’GACGAAGGCGTCGAGGTAGACC)(配列番号:8)をノカルディオイデス属種のコドン出現頻度を基に設計した。部分遺伝子を、これらのプライマーおよびノカルディオイデス属種SG−4GのゲノムDNA(gDNA)を用いて増幅した。PCR増幅のため、ノカルディオイデス属種SG−4G由来の約375ng gDNA、各プライマー50pmol、MgSOを有する10×PCR緩衝液5μl、およびDeep Vent DNAポリメラーゼ1U(NEB Biolabs社、USA)を添加した。PCRサイクルプロトコルは、5分間98℃での変性、続いて30秒間98℃、30秒間48℃および30秒間75℃の30サイクルずつであった。75℃で5分間の最終伸長ステップも使用した。得られたPCR産物は、Micromon DNA Sequencing Facility(モナシュ大学、ビクトリア3800 オーストラリア)で商業的に配列決定した。PCR産物の1つは、Conserved Domain Database検索でアルファベータヒドロラーゼドメインを示した。DNA配列決定プライマーをこの配列を基に設計した。3つの配列決定プライマー、すなわちF2−214(5’ATCCTCGTCGGCCATTCGTAC)(配列番号:9)、F3−277(5’AAGATCAGGTCGCTGGTCTACCTC)(配列番号:10)およびR−466(5’GTTCACCCAGTCGCGCTTGTC)(配列番号:11)を、ノカルディオイデス属種SG−4GのgDNAを用いた直接配列決定用に設計した。直接gDNA配列決定(direct gDNA sequencing)は、Micromon DNA Sequencing Facilityにより商業的に実施した。配列決定結果は、オープンリーディングフレームが配列番号:2)として提供される完全遺伝子をもたらした。該酵素をMheI(MBC−加水分解酵素)(配列番号:1として提供されるアミノ酸配列)と名付けた。729bp遺伝子(終止コドンを含む)は69.6%のG+C含量を有し、242アミノ酸タンパク質(26.327kDa)をコードする。
【0206】
エステラーゼおよびタンパク質のアルファ/ベータヒドロラーゼフォールドスーパーファミリーの他の膜とのMheIのアライメントを図6に提供する。
【0207】
[実施例5]−MheIの発現(Expression of MheI)
大腸菌での発現のためコドン最適化mheIを、GENEART AG(BioPark社、Josef−Engert−Str.11、D−93053 Regensburg、ドイツ)(配列番号:3)により商業的に合成した。GENEARTはpGA18ベクターにおけるコドン最適化mheIを提供した。コドン最適化遺伝子を、製造者プロトコル(Invitrogen社カタログ番号11824〜026)を用いてInvitrogen Gateway Vector pDEST17にクローン化した。要約すると、コドン最適化mheIをattBl(GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTAATGGCGAACTTTGTGCTG)(配列番号:12)およびattB2(GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTATTATCAGCCCAGCGCGGC)(配列番号:13)プライマーによりPCR増幅した。PCR増幅のため、約20ngプラスミド(コドン最適化mheIを含有するpGA18)、各プライマー0.2uM、10×PCR緩衝液5μl、dNTP 10mM 1μl、およびDeep Vent DNA ポリメラーゼ(NEB Biolabs社、USA)2Uを添加した。PCRサイクルプロトコルは、3分間98℃での最初の変性、続いて20秒間98℃、20秒間48℃および1分間75℃の5サイクルずつ、次いで20秒間98℃、20秒間60℃、1分間75℃で25サイクルずつであった。75℃で5分間の最終伸長ステップも使用した。単位複製配列を、上述したキットプロトコルに記載されているようにBP反応を用いてpDONOR201(Invitrogen社)にクローン化した。最後にmheIを、LR組換え反応によりBP反応産生pDONOR201(mheI含有)をpDEST17に組換えてpDEST17にクローン化した(最終構築物はpDEST17−mheIと名付けた。図7参照)。
【0208】
pDEST17−mheIからのmheI発現のため、Gateway Cloning Kit(Invitrogen社カタログ番号11824〜026)により提供されたプロトコルに従った。唯一の例外は、発現が20℃で生じたことであった。細胞は、アラビノースによる誘導後24時間で遠心分離により回収した。250ml培養物からの細胞ペレット(4.26g)を、40mlのBugbuster溶液(Invitrogen社カタログ番号7091)に再懸濁して溶解し、22℃で30分間ゆっくり回転させた。溶解物を、40℃で20分間16,000gで遠心分離して細胞デブリおよび不溶性タンパク質を除去した。可溶性タンパク質を結合させ、製造者の指示に従いHisカラム(Qiagen社カタログ番号30760)から溶出した。カラムからの溶出後、タンパク質を200mM ナトリウムリン酸緩衝液pH7.2の2つの変化に対して透析し、精製タンパク質を4℃で保管した。タンパク質発現および精製をSDS-PAGEでの約〜29kDaバンドの存在により確認した(図8)。
【0209】
[実施例6]−酵素アッセイおよび速度定数の判定(Enzyme assay and determination of kinetic constants)
酵素アッセイは、22℃で96ウェルマイクロタイタープレート(Agilent社カタログ番号)で実施した。アッセイ混合物は、典型的には、最終容積200μlの200mMナトリウムリン酸緩衝液に20μgウシ血清アルブミン、0.022μg精製MheIおよび1〜40μMカルベンダジムを含有した。酵素反応を、10分後にギ酸5μlを添加して停止し、初期速度をHPLCを用いて測定した。これらのアッセイはすべて3回(triplicate)実施した。
【0210】
カルベンダジムに対するMheIに関する酵素−動的データからのKおよびVmax値を、バージョン1.3Sigma Plot Kinetic Moduleを用いて判定した(図9)。カルベンダジムに対し、MheIは6.1μMのKおよび1秒あたり120の代謝数を有した。
【0211】
[実施例7]−合成ピレトロイドに対するSG−4Gの活性(Activity of SG-4G against synthetic pyrethroids)
半精製タンパク質試料(SG−4G 30kD未透過物)を用いて合成ピレトロイド(SP)基質に対するSG−4G活性をアッセイした。2つの800ml栄養ブロス培養物に1% SG−4Gを播種し、150rpmで振盪しながら36時間37℃でインキュベートした。細胞を、4℃、20mM NaPO緩衝液 pH7.0で3回洗浄し、100ml 20mM NaPO緩衝液 pH7.0(すなわちこれらが「静止細胞」である)で再懸濁した。1ml 10mMグルコース(炭素供給源)および10% NHCl(窒素供給源)を懸濁液に添加し、次いで50rpmで振盪しながら一晩、37℃でインキュベートした。静止細胞培養物を沈殿させ、上清は0.22μmフィルターを通過させた。濾過した上清は、次いでサイズ選択の以下のシリーズおよび濃縮Amicon遠心分離フィルターを通過させた:100kD、50kD、30kDおよび10kD。30kD未透過物(すなわち30〜50kDのサイズ範囲でタンパク質を含有するこの試料)をカルベンダジム分解活性についてアッセイし、活性を有することを示した。試料は必要になるまで4℃で保管した。
【0212】
SG−4G 30kD未透過物は、単一異性体蛍光類似体およびHuangら(2005年)の方法を用いて、SP基質に対する活性についてアッセイした。
【0213】
蛍光SP類似体およびこの略称は以下の通りである:
【0214】
【表2】

【0215】
mCNMP蛍光異性体が様々なシペルメトリン、デルタメトリンおよびシハロトリン殺虫製剤で見出される異性体の類似体であるのに対し、mCNMF蛍光異性体はフェンバレラートまたはエスフェンバレラートで見出される異性体の類似体である。
【0216】
簡潔に言えば、20μM基質溶液は、1容積の2mM基質(DMSO中)を99容積の25mM Tris−HCl、pH8.0に慎重に混合してコップで作製した。100μLの各20μM基質溶液を添加して、白い96ウェルFluoroNUNCプレートと、BMG POLARstar蛍光リーダーで30℃に平衡化したプレートを分けた。細胞抽出物を25mM Tris−HCl、pH8.0、30℃に予熱した50μg/mL BSAに希釈した。反応は、希釈抽出物100μLをアッセイプレートの試料ウェルに添加して開始し、励起波長340nmおよび発光波長460nmで反応をモニターした。
【0217】
SG−4Gタンパク質抽出物が、mCNMP l(R)cis−α(S)、mCNMP 1(S)trans−α(S)およびmCNMP 1(R)trans−α(R)に対する著しい活性、ならびにいくつかの他の異性体に対する測定可能な活性を有したことが図10から見てとれる。mCNMP 1(S)trans−α(R)およびmCNMF 2(R)−α(R)に対する活性は記録されなかった。合成ピレトロイド分解の略図を図11に提供する。
【0218】
おおまかに記載されたような本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく、多くの変形および/または改変を、特定の実施形態で示したような本発明に行い得ることは当業者により理解されよう。したがって、本実施形態は、すべての点で例証としてであって限定的はでないとみなされるべきである。
【0219】
本出願は、いずれも2007年6月29日に出願され、全内容が参照により全体として本明細書に組込まれている、US60/947,147およびAU2007903522からの優先権を主張する。
【0220】
本明細書に記載されおよび/または言及されたすべての出版物は、全体として本明細書に組込まれている。
【0221】
本明細書に含まれている文献、行為、物質、装置、物品などのいずれかの記載は、単に本発明の場面を提供する目的のためである。これらの事柄のいずれかまたはすべてが、従来技術基準の部分を形成する、または本発明に関連した分野における通常の一般的知識であった(該知識が本出願の各請求項の優先日前に存在したことから)ことの承認ととらえるべきではない。
【0222】
(参考文献)
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するための組成物であって、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解する、ノカルディオイデス属種、その抽出物またはその培養物から得られた上清を含む組成物。
【請求項2】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤がカルベンダジムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ノカルディオイデス属種が、配列番号:4として提供されるヌクレオチド配列またはこれと少なくとも99%同一である配列を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ノカルディオイデス属種、その抽出物またはその培養物から得られた上清が、
i)配列番号:1として提供されるアミノ酸配列、または
ii)配列番号:1と少なくとも41%同一であるアミノ酸配列
を含むポリペプチドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ノカルディオイデス属種が、オーストラリア国家計量標準機関において2007年6月20日に受託番号V07/015486で寄託された株SG−4Gである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ノカルディオイデス属種SG−4Gの、放射線で死滅させた凍結乾燥培養物を含む、またはそれからなる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するノカルディオイデス属種の分離株。
【請求項8】
ノカルディオイデス属が、オーストラリア国家計量標準機関において2007年6月20日に受託番号V07/015486で寄託された株SG−4Gである、請求項7に記載の分離株。
【請求項9】
死んでいる、請求項7または8に記載の分離株。
【請求項10】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解する、請求項7から9のいずれか一項に記載の分離株の抽出物。
【請求項11】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解する、請求項7から9のいずれか一項に記載の分離株の培養物から得られた上清、またはその画分。
【請求項12】
配列番号:1として提供される配列を有するアミノ酸、生物学的に活性なそのフラグメント、または配列番号:1と少なくとも41%同一であるアミノ酸配列を含む実質的に精製されたポリペプチドおよび/または組換えポリペプチドであって、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解するポリペプチド。
【請求項13】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤がカルベンダジムである、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号:1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項12または13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
ノカルディオイデス属種から精製することができる、請求項12から14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
ノカルディオイデス属種が、オーストラリア国家計量標準機関において2007年6月20日に受託番号V07/015486で寄託された株SG−4Gである、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
少なくとも1つの他のポリペプチド配列をさらに含む融合タンパク質である、請求項12から16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
i)配列番号:2または配列番号:3で提供されるヌクレオチド配列、
ii)請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
iii)i)と少なくとも41%同一であるヌクレオチド配列、
iv)ストリンジェントな条件下でi)にハイブリダイズするヌクレオチド配列、および/または
v)i)からiv)のいずれか1つに相補的なヌクレオチド配列
を含む単離および/または外因性ポリヌクレオチド。
【請求項19】
細胞でのポリヌクレオチドの発現を誘導することができるプロモーターに作動可能に連結される、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項18または19に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項21】
請求項18もしくは19に記載のポリヌクレオチドおよび/または請求項20に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
細菌細胞である、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドの産生方法であって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下で、前記ポリペプチドをコードする請求項21または22に記載の宿主細胞、または前記ポリペプチドをコードする請求項20に記載のベクターを培養すること、および発現したポリペプチドを回収することを含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法を用いて産生されたポリペプチド。
【請求項25】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解するためのポリマースポンジまたは泡であって、ポリマー多孔性支持体に固定化された請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む泡またはスポンジ。
【請求項26】
請求項12から17のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック植物。
【請求項27】
ポリヌクレオチドが植物のゲノムに安定に組み込まれている、請求項26に記載のトランスジェニック植物。
【請求項28】
請求項12から17のいずれか一項に記載の少なくとも1つのポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを含むトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項29】
請求項21または22に記載の宿主細胞、請求項26または27に記載のトランスジェニック植物、請求項28に記載のトランスジェニック非ヒト動物の抽出物であって、請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む抽出物。
【請求項30】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解する組成物であって、請求項12から17の一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のポリヌクレオチド、請求項20に記載のベクター、請求項21もしくは22に記載の宿主細胞、請求項29に記載の抽出物、および/または請求項21もしくは22に記載の宿主細胞の培養物から得られた上清、もしくはその画分を含む組成物。
【請求項31】
1つまたは複数の許容可能な担体を含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤の分解方法であって、請求項1から6、30もしくは31のいずれか一項に記載の組成物、請求項7から9のいずれか一項に記載の分離株、請求項10もしくは29に記載の抽出物、請求項11に記載の上清もしくはその画分、請求項12から17もしくは24のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のポリヌクレオチド、請求項20に記載のベクター、請求項21もしくは22に記載の宿主細胞および/または請求項25に記載のスポンジもしくは泡と、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を接触させることを含む方法。
【請求項33】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤が、土壌、水、生物学的物質またはこれらの組合せからなる群から選択される試料中にある、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
試料中のベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤の分解方法であって、請求項26または27に記載のトランスジェニック植物と試料を接触させることを含む方法。
【請求項35】
試料が土壌である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
外因性ポリヌクレオチドを含む、請求項26または27に記載の植物の部分。
【請求項37】
種子である、請求項36に記載の植物の部分。
【請求項38】
請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドに特異的に結合する単離抗体。
【請求項39】
対象におけるベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤により引き起こされる毒性の治療方法であって、請求項1から6、30もしくは31のいずれか一項に記載の組成物、請求項7から9のいずれか一項に記載の分離株、請求項10もしくは29に記載の抽出物、請求項11に記載の上清もしくはその画分、請求項12から17もしくは24のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のポリヌクレオチド、請求項20に記載のベクター、請求項21もしくは22に記載の宿主細胞、請求項25に記載のスポンジもしくは泡、請求項26もしくは27に記載の植物または請求項28に記載のトランスジェニック非ヒトを、対象に投与することを含む方法。
【請求項40】
対象におけるベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤により引き起こされる毒性を治療するための医薬品を製造するための、請求項1から6、30もしくは31のいずれか一項に記載の組成物、請求項7から9のいずれか一項に記載の分離株、請求項10もしくは29に記載の抽出物、請求項11に記載の上清もしくはその画分、請求項12から17もしくは24のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のポリヌクレオチド、請求項20に記載のベクター、請求項21もしくは22に記載の宿主細胞、請求項25に記載のスポンジもしくは泡、請求項26もしくは27に記載の植物または請求項28に記載のトランスジェニック非ヒトの使用。
【請求項41】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/もしくはチオアミド除草剤を分解する能力が増強した、または異なる種類のベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/もしくはチオアミド除草剤に対する基質特異性が変化したポリペプチドの産生方法であって、
(i)請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドの1つまたは複数のアミノ酸を変化させることと、
(ii)ステップ(i)から得られた変化したポリペプチドの、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤を分解する能力を判定することと、
(iii)ステップ(i)で使用されるポリペプチドと比較した場合、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/もしくはチオアミド除草剤を分解する能力が増強した、または異なる種類のベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/もしくはチオアミド除草剤に対する基質特異性が変化した、変化したポリペプチドを選択することと
を含む方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法により産生されたポリペプチド。
【請求項43】
宿主細胞を検出および/または選択するための選択マーカーとしての、請求項12から27のいずれか一項に記載のポリペプチド、または前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用。
【請求項44】
宿主細胞の検出方法であって、
i)細胞(複数可)によるポリヌクレオチドの取り込みを可能にする条件下で、請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと細胞または細胞集団を接触させることと、
ii)ステップi)からの細胞、もしくはその子孫細胞を、ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、および/またはチオアミド除草剤に曝露することにより宿主細胞を選択することと
を含む方法。
【請求項45】
ポリヌクレオチドが、請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする第1のオープンリーディングフレーム、および請求項12から17のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードしない第2のオープンリーディングフレームを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
第2のオープンリーディングフレームがポリペプチドをコードする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
第2のオープンリーディングフレームが、翻訳されないポリヌクレオチドをコードする、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
翻訳されないポリヌクレオチドが触媒性核酸、dsRNA分子またはアンチセンス分子をコードする、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
細胞が植物細胞、細菌細胞、真菌細胞または動物細胞である、請求項44から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
ベンズイミダゾールカーバメート系殺菌剤、カルバニラート系殺菌剤、スルホンアミド除草剤、チオアミド除草剤および/または合成ピレトロイド系殺虫剤を分解するためのキットであって、請求項1から6、30もしくは31のいずれか一項に記載の組成物、請求項7から9のいずれか一項に記載の分離株、請求項10もしくは29に記載の抽出物、請求項11に記載の上清もしくはその画分、請求項12から17もしくは24のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項18もしくは19に記載のポリヌクレオチド、請求項20に記載のベクター、請求項21もしくは22に記載の宿主細胞、請求項25に記載のスポンジもしくは泡、請求項26もしくは27に記載の植物または請求項28に記載のトランスジェニック非ヒトを含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−531640(P2010−531640A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513580(P2010−513580)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000948
【国際公開番号】WO2009/003222
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】