説明

毛髪処理剤

【課題】適度な滑らかさを有し、手で延ばしやすく、良好なハンドリング性を有すると共に、油相分離を生じることなく、安定した分散状態を保持することが可能な毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、[A]高級アルコール、[B]カチオン界面活性剤、及び[C]ヒドロキシプロピルデンプンリン酸が配合された水中油型エマルション形態の毛髪処理剤であって、毛髪処理剤の総量に対する[A]高級アルコールの配合量が、3質量%未満であることを特徴とする毛髪処理剤である。上記高級アルコールとしては、炭素数が16以上22以下の飽和アルコールを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたハンドリング性を有すると共に、安定したエマルションの形態である毛髪処理剤、この毛髪処理剤を備える毛髪処理料、及び毛髪処理剤を用いた毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン界面活性剤は、毛髪のタンパク質が損傷して、遊離のカルボキシル基が存在する箇所に選択的に吸着し、このような損傷部位を被覆し修復する作用があると考えられている。このような性質を有することから、カチオン界面活性剤は、水中油型エマルション(O/Wエマルション)の形態の毛髪処理剤中に毛髪の保護成分として配合されている。
【0003】
一方、塗布後に湯水で洗浄することを前提とした洗髪用すなわちインバストリートメント用ではなく、洗髪及びタオルドライが完了した状態で塗布し、洗浄を行わないことを前提とした未洗式、すなわちアウトバストリートメント用の毛髪処理剤の開発が、近年進められている。
【0004】
毛髪の損傷に対する修復作用を持たせるために、上述のようなカチオン界面活性剤を配合した毛髪処理剤を、洗浄を行わないアウトバストリートメント用の水中油型エマルション形態の毛髪処理剤として使用する場合においては、エマルションの安定化すなわち油相分離の抑制のため、ある程度多量の高級アルコールを配合する必要がある。しかし、このような水中油型エマルション形態の毛髪処理剤に多量の高級アルコールを配合した場合には、毛髪処理剤が硬くなり、手で延ばしにくく、ハンドリング性が悪化するという不都合がある。従って、適度な滑らかさ(柔らかさ)を有し、手で延ばしやすく、良好なハンドリング性を有すると同時に、油相分離を生じることなく、安定した分散状態を保持することが可能な、水中油型エマルション形態のアウトバストリートメント用毛髪処理剤の開発が、強く求められている。
【0005】
なお、特開2005−255644号公報には、カチオン界面活性剤と、糖のリン酸エステル及び/又はその塩とを含有する、洗い流さない態様で使用される化粧料が開示されている。また、当該公報には、この化粧料において、糖のリン酸エステル及び/又はその塩を、カチオン界面活性剤と組み合わせて用いることによって、この界面活性剤による皮膚又は粘膜への刺激を低減する作用が得られることが記載されている。しかし、当該公報には、アウトバストリートメント用の水中油型エマルション形態の毛髪処理剤において、適度な滑らかさを付与することで良好なハンドリング性を得ると同時に、安定した分散状態のエマルションを得るという目的・課題については、何ら言及されていない。さらに、当該公報の実施例では、比較的多量の高級アルコールが用いられた化粧料のみが開示されている。このような化粧料は、エマルションの安定化作用は得られるものの、手で延ばしやすい程度の滑らかさが損なわれており、良好なハンドリング性は得られないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−255644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、適度な滑らかさ(柔らかさ)を有し、手で延ばしやすく、良好なハンドリング性を有すると共に、油相分離を生じることなく、安定した分散状態を保持することが可能な、水中油型エマルション形態の毛髪処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、配合成分として、高級アルコール及びカチオン界面活性剤に加えて、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を用いることによって、この高級アルコールを所定の少ない配合量で用いた場合であっても、良好なハンドリング性とエマルションの安定した分散状態とを両立することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る毛髪処理剤は、
[A]高級アルコール、
[B]カチオン界面活性剤、及び
[C]ヒドロキシプロピルデンプンリン酸又はその塩
が配合された水中油型エマルション形態の毛髪処理剤であって、上記[A]高級アルコールの配合量が3質量%未満であることを特徴とする。
【0010】
この水中油型エマルション形態の毛髪処理剤は、カチオン界面活性剤を含むため、毛髪の損傷部位に対する被覆・保護効果を発現する。加えて、当該毛髪処理剤は、高級アルコールの配合量を3質量%未満と比較的少量に設定しているため、適度な滑らかさを有し、手で延ばしやすく、良好なハンドリング性が得られる。また、当該毛髪処理剤は、このように高級アルコールを比較的少量としていても、高級アルコールと共にヒドロキシプロピルデンプンリン酸を配合することによって、油相分離を生じることなく、安定した分散状態を保持することが可能である。すなわち、当該毛髪処理剤によれば、良好なハンドリング性とエマルションの安定した分散状態とを同時に得ることができる。
【0011】
当該毛髪処理剤においては、[A]高級アルコールとして、炭素数が16以上22以下の飽和アルコールを用いることが好ましい。当該毛髪処理剤に、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸又はその塩と共に、所定量のこれらの高級アルコールを配合することによって、十分なハンドリング性及びエマルションの分散安定性が得られる。
【0012】
当該毛髪処理剤においては、[B]カチオン界面活性剤として、モノ長鎖アルキルアンモニウム、ジ長鎖アルキルアンモニウム又はそれらの混合物を用いることが好ましい。このように、[B]カチオン界面活性剤として、モノ長鎖アルキルアンモニウムを用いることによって、毛髪処理剤のハンドリング性をさらに向上させると共に、常温におけるエマルションの分散安定性を一層改善することができる。さらには、[B]カチオン界面活性剤として、ジ長鎖アルキルアンモニウムを用いることによって、常温だけではなく低温におけるエマルションの分散安定性をより向上させることができる。
【0013】
当該毛髪処理剤の剤型としては、クリーム状が好ましい。当該毛髪処理剤を、このように、十分な水分を包含すると同時にある程度の粘性を有するクリーム状の剤型とすることによって、洗浄を行わないことを前提としたアウトバストリートメント用として好適に使用することができる。
【0014】
当該毛髪処理剤は、−10℃で凍結させ、次いで常温で解凍する操作を2回繰り返した後においても、油相分離することなくエマルションの分散状態が保持されることが好ましい。このような常温〜低温サイクルを2回繰り返した後においても、エマルションの分散状態を保つことができる程度の十分な安定性を有することによって、分散安定性についての当該毛髪処理剤の商品価値がさらに向上する。
【0015】
公知のポンプ式の吐出容器に当該毛髪処理剤を収容することにより、毛髪処理料を構成することができる。このようにポンプ式の吐出容器を用いることによって、使用場所・時間に関するフレキシビリティーが高まり、アウトバストリートメント用として好適な当該毛髪処理剤の利便性をさらに向上させることができる。
【0016】
また、本発明の毛髪処理方法は、
(1)当該毛髪処理剤を毛髪の表面に塗布する工程、及び
(2)この表面に毛髪処理剤が塗布された毛髪を洗浄せずに乾燥させる工程
を含んでいる。
【0017】
このように、当該毛髪処理剤を用いることによって、湯水によって毛髪の洗浄を行わないことを前提とした、アウトバストリートメント方式による毛髪処理が可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る毛髪処理剤は、カチオン界面活性剤及びヒドロキシプロピルデンプンリン酸並びに所定量の高級アルコールが配合されていることから、適度な滑らかさを有し、手で延ばしやすく、良好なハンドリング性が得られると共に、油相分離を生じることなく、安定した分散状態を保持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の毛髪処理剤は、[A]高級アルコール、[B]カチオン界面活性剤、及び[C]ヒドロキシプロピルデンプンリン酸が配合されたものである。以下、これらの成分について順次説明する。
【0020】
[A]成分:高級アルコール
ここでの「高級アルコール」とは、炭素数6以上のアルコールを意味する。当該毛髪処理剤に使用可能な高級アルコールは、直鎖アルコール、分枝アルコール、不飽和アルコール、飽和アルコール等、特に限定されるものではないが、炭素数が16以上22以下の飽和アルコールが良い。この高級アルコールは、例えばセチルアルコール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール等を用いることができる。本発明の毛髪処理剤において用いられる高級アルコールは、1種類のみであってもよいし、複数種類のものを混合して用いてもよい。これらの高級アルコールの中でも、良好なハンドリング性及びエマルションの分散安定性のバランスの観点から、セチルアルコール及びステアリルアルコールが好ましい。
【0021】
当該毛髪処理剤における[A]成分の高級アルコールの配合量は、3質量%未満である。従来の水中油型エマルション形態の毛髪処理剤においては、エマルションの分散安定性を保持するため、通常、高級アルコールは3質量%よりかなり上回る量で配合される。それに対して、当該毛髪処理剤においては、高級アルコールの配合量を3質量%未満と比較的少量にしても、そのような高級アルコールと共に後述の[C]ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を配合していることによって、エマルションの分散安定性を良好なレベルに維持することができると同時に、毛髪処理剤の十分な滑らかさ、すなわち優れたハンドリング性を得ることができる。また、当該毛髪処理剤において、[A]成分の高級アルコールの配合量の下限としては、0.3質量%が良く、0.5質量%が好ましく、1質量%が特に好ましい。一方、[A]成分の高級アルコールの配合量の上限としては、2質量%が好ましい。
【0022】
[B]成分:カチオン界面活性剤
[B]成分のカチオン界面活性剤としては、毛髪処理剤で使用される4級アンモニウム等の公知のカチオン界面活性剤である限り、特に限定されない。このようなカチオン界面活性剤の例としては、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等のモノ長鎖アルキルアンモニウム類、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジココイルジメチルアンモニウムクロリド等のジ長鎖アルキルアンモニウム類、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド類、N−ヤシ油脂肪酸アシルL−アルギニンエチル・DL−ピロリドンカルボン酸塩等のヤシ油脂肪酸エステル類などが挙げられる。これらのカチオン界面活性剤は、単独で用いてもよいし、複数種のものを併用してもよい。なお、ここでの「長鎖アルキル」とは、炭素数が8以上の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、この炭素数は16以上22以下が好ましい。
【0023】
上記のカチオン界面活性剤の中でも、モノ長鎖アルキルアンモニウム、ジ長鎖アルキルアンモニウム又はそれらの混合物が特に好ましい。カチオン界面活性剤として、モノ長鎖アルキルアンモニウムを用いることによって、毛髪処理剤に適度な滑らかさが付与され、ハンドリング性をさらに向上させると共に、常温におけるエマルションの分散安定性(油相分離に対する耐性)を更に改善することができる。また、カチオン界面活性剤として、ジ長鎖アルキルアンモニウムを用いることによって、常温だけではなく低温における毛髪処理剤のエマルションの分散安定性を一層向上させることができる。ジ長鎖アルキルアンモニウムとして炭素数16の長鎖アルキル基を備えるもの(ジセチルジメチルアンモニウム等)を用いた本発明の毛髪処理剤によれば、これをアウトバストリートメントとして毛髪の処理を行うことによって、処理後の毛髪に、優れた素髪様すべり感(以後、「素髪様すべり感」とも称することもある。)及び柔らかさを付与することができる。これらの諸効果の最適化の観点から、当該毛髪処理剤において、モノ長鎖アルキルアンモニウム及び炭素数16の長鎖アルキル基を備えるジ長鎖アルキルアンモニウムを併用することが最も好ましい。
【0024】
当該毛髪処理剤における[B]成分のカチオン界面活性剤の配合量の下限としては、0.05質量%が好ましく、0.1質量%が特に好ましい。一方、[B]成分のカチオン界面活性剤の配合量の上限としては、5質量%が好ましく、2質量%が特に好ましい。当該毛髪処理剤におけるカチオン界面活性剤の配合量を上記下限以上とすることによって、毛髪や皮膚のタンパクの損傷部位に対する吸着によるカチオン界面活性剤の被覆・保護作用を有効に発揮させることができる。また、カチオン界面活性剤の配合量を上記上限以下とすることによって、このような界面活性剤による皮膚又は粘膜への刺激を抑制することができる。
【0025】
[C]成分:ヒドロキシプロピルデンプンリン酸
当該毛髪処理剤において[C]成分のヒドロキシプロピルデンプンリン酸又はその塩を用いることによって、エマルションの分散安定性に寄与する高級アルコールの配合量を3質量%未満と比較的少量に設定しているにも関わらず、良好な分散安定性を達成することが可能となる。このようなヒドロキシプロピルデンプンリン酸又はその塩は、当該酸と塩が併用されても良い。その塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等を挙げることができる。ヒドロキシプロピルデンプンリン酸としては、例えば、日澱化学株式会社製の「デリカE−7」、日本エヌエスシー株式会社製の「ストラクチャーXL」などの市販品を用いることができる。
【0026】
当該毛髪処理剤における[C]成分のヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量の下限としては、0.05質量%が好ましく、0.1質量%が特に好ましい。一方、[C]成分のヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量の上限としては、5質量%が好ましく、2質量%が特に好ましい。当該毛髪処理剤におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量を上記下限以上とすることによって、エマルションの分散安定性を高め、油相分離を効果的に防止することができる。また、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量を上記上限以下とすることによって、ベタツキなどの発生を抑制し、快適な使用感を保つことができる。
【0027】
毛髪処理剤
本発明の「毛髪処理剤」は、毛髪の手入れや手当てを行うための処理剤である。特に、当該毛髪処理剤に含まれる界面活性剤の上記作用により、損傷を受けた毛髪が被覆・保護される。当該毛髪処理剤の使用態様は、特に限定されない。当該毛髪処理剤を用い、これを毛髪の表面に塗布する工程と、続いてこの表面に毛髪処理剤が塗布された毛髪を、洗浄せずに乾燥させる工程を行うことによって、毛髪を処理しても良い。
【0028】
当該毛髪処理剤の使用時の剤型としては、クリーム状、乳液状、軟膏状、ゲル状、又はフォーム状とすることができる。これらの剤型は、十分な水分を包含すると同時に、ある程度の粘性を有するため、このような剤型の当該毛髪処理剤は、洗浄を行わないことを前提としたアウトバストリートメント用として好適に使用することが可能である。上記剤型の中でも、上述の作用が効果的に奏されるクリーム状が特に好ましい。
【0029】
当該毛髪処理剤は、−10℃で凍結させ、次いで常温で解凍する操作を2回繰り返した後においても、油相分離することなくエマルションの分散状態が保持されることが好ましい。当該毛髪処理剤は、このように周囲条件の大きな変化を受けた場合においても、エマルションの分散状態を保持(油相分離状態になることを阻止)することが可能な程度の分散安定性を有することによって、商品価値としての信頼性をより高めることができる。
【0030】
当該毛髪処理剤を公知のポンプ式の吐出容器に収容することによって、毛髪処理料を構成することができる。このように、当該毛髪処理剤をポンプ式の吐出容器と組み合わせることによって、容器に収容した状態で持ち運びが容易となり、所望の場所及び時間に使用することができる。従って、このような毛髪処理料は、毛髪の洗浄を必要としないアウトバストリートメント用としての利便性が、さらに高いものとなる。ポンプ式の吐出容器としては、特に限定されず、公知のいずれのものも使用することができる。例えば、ポンプ式の吐出容器は、容器の上部に上下方向に摺動可能な押圧具を備え、さらに容器の内容物中から容器外部に至る排出管を有し、押圧具を下方向に移動することによって、容器内部の圧力を高め、それによって排出管から容器外部に内容物が排出される構成のものを使用することができる。このようなポンプ式の吐出容器の主要部材の材質としては、代表的には合成樹脂を用いることができる。このような合成樹脂は、透明又は半透明とすることによって、容器中の内容物の量を目視により確認することができる。
【0031】
当該毛髪処理剤には、本発明によって意図される上記効果を阻害しない限りは、所望の特性を付与するために、[A]、[B]及び[C]成分以外の適量の任意成分を添加することができる。そのような任意成分としては、特に限定されないが、例えば多価アルコール([A]成分の高級アルコールを除く)、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー、非イオン性界面活性剤、シリコーン類、加水分解ヒアルロン酸、その他の加水分解物などを挙げることができる。
【0032】
上記多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。
【0033】
上記(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマーの例としては、グリセリル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバメートとステアリルメタクリレートからなるコポリマーが挙げられる。
【0034】
上記非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの一般的な例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(2E.O.)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル等が挙げられる。
【0035】
上記シリコーン類との例としては、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)などのアミノ変性シリコーン、その他、ジメチコン、シクロメチコン、低粘度ジメチルポリシロキサン、高粘度ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シリコーンゴム、カチオン変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0036】
加水分解ヒアルロン酸としては、主に、平均分子量が1万以下の低分子ヒアルロン酸が用いられる。このような加水分解ヒアルロン酸は、例えば、高分子ヒアルロン酸を緩衝液に溶解させた後、ヒアルロニダーゼを加えて数日間インキュベートすることで酵素を失活させる方法などによって製造することができる。加水分解ヒアルロン酸は、塩の形態で用いることができる。このような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
【0037】
その他の加水分解物の例としては、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン等が挙げられる。
【0038】
毛髪処理方法
本発明の毛髪処理剤を用いた毛髪の処理方法は、典型的には、当該毛髪処理剤を毛髪の表面に塗布する工程、及びこの表面に毛髪処理剤が塗布された毛髪を、洗浄せずに乾燥させる工程を含む。ここでの乾燥は、自然乾燥でも通風乾燥でもよいし、また必要に応じて熱を加えることもできる。このような毛髪処理の前後において、公知の他の処理を毛髪に対して行ってもよい。
【0039】
上述のように、当該毛髪処理剤は、適度な滑らかさを有し、手で延ばしやすく、良好なハンドリング性を有し、かつ油相分離を生じることなく、安定した分散状態を保持することが可能であることから、この毛髪処理剤を用いる上記毛髪処理方法は、毛髪を洗い流さないアウトバストリートメントのために好適に適用される。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
毛髪処理剤の調製
[実施例1]
水中に、高級アルコールとしてセタノール1質量%とステアリルアルコール1質量%、モノ長鎖カチオン界面活性剤としてステアリルトリメチルアンモニウムクロリド0.2質量%、ジ長鎖カチオン界面活性剤としてジセチルジメチルアンモニウムクロリド0.8質量%、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸0.4質量%、1,3−ブチレングリコール2質量%、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー0.005質量%、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(2E.O.)0.05質量%、アミノプロピルジメチコン0.5質量%、ジメチコン20質量%、シクロメチコン5質量%、加水分解ヒアルロン酸0.001質量%、及び加水分解コラーゲン0.001質量%を混合し、分散させることによって、水中油型エマルション形態のクリーム状毛髪処理剤を調製した。
【0042】
[実施例2〜7、比較例1〜5]
これらの例においても、表1に記載されているとおり成分及び量を変更した以外は実施例1と同様にして、毛髪処理剤の調製を行った。
【0043】
毛髪処理剤の特性評価
〔ハンドリング性の評価〕
上記のように調製した毛髪処理剤を用いて、専門パネラー3人が、ハンドリング性(手で延ばす時の滑らかさ・延ばし易さの感触)を以下の基準に従って評価し、多数決により評価を決定した。評価結果を表1に示す。
◎:滑らかで、非常に延ばし易い。
○:ある程度の滑らか感がある。
△:ベタツキを感じる。
×:硬さを感じる。
【0044】
〔調製時の外観評価〕
上記のように調製した毛髪処理剤を、調製後1時間、常温で放置した際の油相分離の有無を観察し、以下のように評価した。評価結果を表1に示す。
◎:油相分離していない。
×:油相分離している。
【0045】
〔エマルションの経時安定性評価〕
上記の〔調製時の外観評価〕で油相分離していないことが確認された毛髪処理剤を、常温から−10℃まで冷却して凍結させ、次いで常温で解凍する操作を繰り返した。この常温〜低温サイクルの繰り返しにおいて、いずれの時点で油相分離が生じるかを観察し、以下のように評価した。評価結果を表1に示す。
◎:常温〜低温サイクルを3回繰り返した後も、油相分離しなかった。
○:常温〜低温サイクルを2回繰り返した後では油相分離しなかったが、同サイクルを3回繰り返した後には油相分離した。
△:常温〜低温サイクルを1回行った後では油相分離しなかったが、同サイクルを2回繰り返した後には油相分離した。
×:常温〜低温サイクルを1回行った後に、油相分離した。
【0046】
〔処理毛髪のすべり感の評価〕
まず、カラーリング処理され、かつ損傷を受けた試料毛髪を準備し、この試料毛髪に対しシャンプー及びリンスによる洗髪を行った。洗髪後、試料毛髪をタオルドライした状態で、毛髪表面に、上記の毛髪処理剤を塗布し、洗浄せずに温風により乾燥させた。この処理済み毛髪について、専門のパネラー3人が、すべり感の有無(特に素髪のようなすべり感の有無)を、以下の基準に従って評価し、多数決により評価を決定した。評価結果を表1に示す。
◎:素髪のようなすべり感がある。
○:すべり感が少し物足りない。
△:毛髪処理剤の塗布・乾燥の前後で、すべり感の変化がない。
×:毛髪処理剤の塗布・乾燥の前よりも、すべり感が悪化した。
【0047】
〔処理毛髪の柔らかさの評価〕
上記の〔処理毛髪のすべり感の評価〕と同様に、カラーリング処理され、かつ損傷を受けた試料毛髪に対して洗髪を行い、タオルドライした状態で、毛髪表面に上記の毛髪処理剤を塗布・乾燥させた。この処理済み毛髪について、専門のパネラー3人が、柔らかさを以下の基準に従って評価し、多数決によって評価を決定した。評価結果を表1に示す。
◎:強い柔らかさを感じる。
○:やや柔らかさを感じる。
△:毛髪処理剤の塗布・乾燥の前後で、柔らかさの変化がない。
×:毛髪処理剤の塗布・乾燥の前よりも、柔らかさが悪化した。
【0048】
【表1】

【0049】
一般から募集したパネラー47名に、実施例1の毛髪処理剤を用いて、上記〔処理毛髪のすべり感の評価〕と同じ要領にて毛髪処理を行ってもらい、アンケート評価を行った。アンケート評価の項目と評価結果(良好であると回答した人の割合)は、以下のとおりであった。
塗布時のハンドリング性(滑らかさ・延ばし易さ):75%
処理後毛髪の指通りの滑らかさ(素髪のようなすべり感):93%
処理後の毛髪の自然な潤い感:82%
処理後の毛髪の自然なツヤ感:76%
【0050】
表1の結果、及び一般パネラーによる評価から明らかなように、本発明による毛髪処理剤によれば、高級アルコールを3質量%未満という少量の配合にも関わらず、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を組み合わせて用いることによって、良好なハンドリング性及びエマルションの安定した分散状態を共に得ることが可能であることが分かった。また、当該毛髪処理剤によって処理した毛髪は、素髪のようなすべり感及び柔らかさを有していた。一方、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を配合しなかった各比較例の毛髪処理剤については、ハンドリング性及びエマルションの安定性のいずれかが劣っており、また、毛髪に上記のような優れた効果を付与することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明の毛髪処理剤は、手で延ばしやすく、良好なハンドリング性が得られると共に、油相分離を生じることなく、安定した分散状態を保持することが可能であるため、アウトバストリートメント方式の毛髪処理用として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]高級アルコール、
[B]カチオン界面活性剤、及び
[C]ヒドロキシプロピルデンプンリン酸又はその塩
が配合された水中油型エマルション形態の毛髪処理剤であって、
上記[A]高級アルコールの配合量が、3質量%未満であることを特徴とする毛髪処理剤。
【請求項2】
[A]高級アルコールとして、炭素数が16以上22以下の飽和アルコールが用いられる請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
[B]カチオン界面活性剤として、モノ長鎖アルキルアンモニウム、ジ長鎖アルキルアンモニウム又はそれらの混合物が用いられる請求項1又は請求項2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
剤型がクリーム状である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
−10℃で凍結させ、次いで常温で解凍する操作を2回繰り返した後においても、油相分離することなくエマルションの分散状態が保持される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の毛髪処理剤。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の毛髪処理剤と、この毛髪処理剤を収容するポンプ式の吐出容器とを備える毛髪処理料。
【請求項7】
(1)請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の毛髪処理剤を毛髪の表面に塗布する工程、及び
(2)この表面に毛髪処理剤が塗布された毛髪を洗浄せずに乾燥させる工程
を含む毛髪処理方法。

【公開番号】特開2011−93832(P2011−93832A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248297(P2009−248297)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】