説明

毛髪処理剤

【課題】毛髪に、第1剤を塗布した後、ポリアクリル酸アミドを配合した第2剤を塗布した際に、粒子析出の程度を抑制できる多剤式毛髪処理剤の提供。
【解決手段】4級アンモニウム塩を配合した第1剤と、ポリアクリル酸アミドを配合した第2剤とを備える多剤式毛髪処理剤であって、第2剤には更に疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の毛髪処理剤を備える多剤式毛髪処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマネント処理、染毛処理等の化学的毛髪処理や、日々のブラッシング、ブロー処理等の物理的毛髪処理が毛髪に対して行われると、毛髪にダメージが蓄積される。このようなダメージが蓄積した毛髪の補修等を目的として、二種以上の毛髪処理剤で構成された多剤式毛髪処理剤が開発されている。例えば、特許文献1には、アミノ変性シリコーンを配合した第1剤と、アニオン界面活性剤及びカチオン性ポリマーを配合した第2剤とを備えた多剤式毛髪処理剤が開示されている。また、特許文献2には、アミノ変性シリコーンを含有する第1剤と、メチル水素ポリシロキサンを含有する第2剤とを備える多剤式毛髪処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−215541号公報
【特許文献2】特開2001−226236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリアクリル酸アミドは、安定剤、乳化剤、又は増粘剤等として用いられていることが知られており、本発明者等も第1剤の後に用いる第2剤にポリアクリル酸アミドを配合した多剤式毛髪処理剤の開発を進めていた。この開発の中、第1剤を塗布した毛髪に第2剤を塗布すると、目視確認できる粒子が生じることがあった。この粒子は、多剤式毛髪処理剤の使用感に悪い印象を与えかねないため、粒子の析出を阻止するか、粒子析出の程度を抑えることが望まれる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、第1剤を塗布した後にポリアクリル酸アミド配合の第2剤を塗布した際に、粒子析出を阻止するか、粒子析出の程度を抑制可能な多剤式毛髪処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、ポリアクリル酸アミド配合の第2剤の前に毛髪に塗布する第1剤が4級アンモニウム塩を配合したものであれば、第2剤を塗布したときに粒子が形成することで粒子が生じる知見を得た。また、その粒子形成の程度を、第2剤に疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースを更に配合することで抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る多剤式毛髪処理剤は、第1剤と、当該第1剤が塗布された後の毛髪に塗布される第2剤とを備えるものであって、前記第1剤が4級アンモニウム塩(I)を配合したものであり、前記第2剤が疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリアクリル酸アミドを配合したものであることを特徴とする。
【0008】
前記第1剤における4級アンモニウム塩(I)の配合濃度は、7.0質量%以下が好ましい。前記第2剤を塗布したときに生じる粒子は、4級アンモニウム塩(I)とポリアクリル酸アミドとにより生じるものであり、前記第1剤における4級アンモニウム塩(I)の配合濃度は、少ない程に粒子析出の程度を抑制可能であるから、7.0質量%以下が好ましい。
【0009】
前記第2剤における4級アンモニウム塩(II)の配合濃度は、1.0質量%以下(無配合を含む。)が好ましい。同一相内のポリアクリル酸アミドと4級アンモニウム塩の併存が粒子析出の原因になるところ、前記第2剤における4級アンモニウム塩(II)の配合濃度は、少ないほど粒子析出の程度を抑制可能であるから、1.0質量%以下(無配合を含む。)が好ましい。
【0010】
前記第2剤における疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合濃度は、例えば1.0質量%以下である。
【0011】
前記第2剤におけるポリアクリル酸アミドの配合濃度は、3.0質量%以下が良い。この配合濃度であれば、前記第2剤を手で延ばすことが容易である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多剤式毛髪処理剤によれば、ポリアクリル酸アミドと共に疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースが第2剤に配合されたものなので、第1剤に4級アンモニウム塩(I)が配合されていても、第2剤塗布による粒子析出の程度を抑制可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の多剤式毛髪処理剤に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の多剤式毛髪処理剤は、毛髪に塗布される毛髪処理剤である第1剤と、この第1剤の後に毛髪に塗布される毛髪処理剤である第2剤とを備える。また、本実施形態の多剤式毛髪処理剤は、他の毛髪処理剤を備えていても良く、例えば第2剤の後に毛髪に適用する後処理剤を備えていても良い。
【0014】
(第1剤)
本実施形態における第1剤は、水と共に、4級アンモニウム塩(I)が配合されたものである(第1剤における水の配合濃度は、例えば60質量%以上95質量%以下。)。また、この第1剤には、任意原料として公知の毛髪処理剤原料が適宜配合される。
【0015】
第1剤に配合される4級アンモニウム塩(I)は、公知の4級アンモニウム塩から選択した一種又は二種以上である。
【0016】
4級アンモニウム塩(I)としては、例えば、下記式(Ia)で表されるモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩(Ia)、下記式(Ib)で表されるジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩(Ib)、長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。
【0017】
【化1】

[上記式(Ia)において、R1は炭素数12以上22以下(通常16以上22以下)のアルキル基を表し、Xは塩素、臭素、ヨウ素などを表す。]
【0018】
【化2】

[上記式(Ib)において、Rは炭素数12〜22(通常16以上22以下)のアルキル基を表わし、Rは炭素数12〜22(通常16以上22以下)のアルキル基を表し、Xは塩素、臭素、ヨウ素などを表す。]
【0019】
モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩(Ia)としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェートが挙げられる。ジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩(Ib)としては、例えば、ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジココイルジメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、例えば、ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0020】
本実施形態の第1剤における4級アンモニウム塩(I)の配合濃度は、適宜設定されるものであるが、第2剤を塗布した際の粒子析出の程度を抑制するには、7.0質量%以下が良く、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましい。また、この配合濃度の下限は、例えば0.1質量%であり、通常1.0質量%である。
【0021】
第1剤の任意原料は、公知の毛髪処理剤原料から適宜選択される。その任意原料は、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等である。
【0022】
任意原料の中でも、高級アルコールは、粘度調整や乳化の安定性を高めたいときに汎用性があり、低級アルコールは、4級アンモニウム塩(I)の水への溶解性を高めたいときに汎用性があり、シリコーンは、毛髪の手触り等を改善したいときに汎用性がある。
【0023】
高級アルコールを第1剤に配合する場合、この高級アルコールとしては、例えば、セタノール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコールが挙げられ、炭素数16〜22の直鎖状飽和アルコールが好ましい。一種又は二種以上の高級アルコールを本実施形態の第1剤に配合すると良く、高級アルコールの配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば3.0質量%以上12.0質量%以下である。
【0024】
低級アルコールを第1剤に配合する場合、この低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。一種又は二種以上の低級アルコールを本実施形態の第1剤に配合すると良く、低級アルコールの配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば0.5質量%以上3.0質量%以下である。
【0025】
また、シリコーンを第1剤に配合する場合、このシリコーンとしては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシクロメチコン;ジメチコノール;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチコン;アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアモジメチコン;が挙げられる。一種又は二種以上のシリコーンを本実施形態の第1剤に配合すると良く、その配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば1.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0026】
本実施形態の第1剤は、O/Wエマルションであると良く、このエマルションは市販のポンプ型容器から吐出可能なクリーム状のものであると良い。このようなクリーム状である第1剤の粘度は、例えば、B型粘度計を使用して25℃、ローターNo.4、12rpmで計測した60秒後の値が6000mPa・s以上13000mPa・s以下である。
【0027】
また、本実施形態の第1剤におけるpHをアルカリ性にすれば、毛髪が膨潤し易くなって、第1剤成分又は第2剤成分の毛髪内部への浸透性が高まる。25℃におけるそのpHとしては、例えば8.0以上11.0以下であり、通常9.0以上10.0以下である。なお、第1剤のpHをアルカリ性に調整するためには、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いると良い。
【0028】
(第2剤)
本実施形態における第2剤は、水と共に、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリアクリル酸アミドが配合されたものである(第2剤における水の配合濃度は、例えば60質量%以上95質量%以下。)。また、この第2剤には、第1剤と同様、任意原料として公知の毛髪処理剤原料が適宜配合される。
【0029】
第2剤に配合される疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースとは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと長鎖アルキルグリシジルエーテルとが、その長鎖アルキルグリシジルエーテルにおけるグリシジル基の開環反応を経由して生じるものである。なお、前記長鎖アルキルグリシジルエーテルにおける長鎖アルキル基の炭素数は、例えば16以上22以下である。
【0030】
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、例えば、3−ヘキサデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピル2−ヒドロキシプロピルメチルセルロース、3−オクタデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピル2−ヒドロキシプロピルメチルセルロース、3−ドコシルオキシ−2−ヒドロキシプロピル2−ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0031】
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの市販品の一例を挙げれば、3−オクタデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピル2−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(表示名称:ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース)が大同化成工業株式会社から「サンジェロース」の商品名で販売されている。
【0032】
本実施形態の第2剤における疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合濃度は、特に限定されないが、1.0質量%以下が良く、0.5質量%以下が好ましい。1.0質量%以下にすることで、毛髪への塗布が容易な粘度を維持できる。また、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合濃度が0.2質量%未満であれば、本実施形態の多剤式毛髪処理剤で処理した毛髪のすべり感のある指通りの低下を抑制可能である。その配合濃度の下限は、低濃度に過ぎれば粒子析出抑制の程度が小さくなるので、例えば0.1質量%である。
【0033】
本実施形態の第2剤に配合されるポリアクリル酸アミドは、アクリル酸アミドの共重合体である。
【0034】
ポリアクリル酸アミドの第2剤における配合濃度は、特に限定されない。第2剤を毛髪に塗布したときの粒子形成を抑制するには、ポリアクリル酸アミドの配合濃度は、3.0質量%以下が良く、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。一方で、ポリアクリル酸アミドの配合濃度の下限は、特に限定されないが、例えば0.1質量%である。
【0035】
第2剤の任意原料は、公知の毛髪処理剤原料から適宜選択される。その任意原料は、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、エステル油、シリコーン、低級アルコール、多価アルコール、高級アルコール、糖類、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等である。
【0036】
カチオン界面活性等のカチオンイオンとなる化合物を第2剤の任意原料とする場合、このような化合物とポリアクリル酸アミドとで粒子を形成することになる。そのため、カチオンイオンとなる化合物を任意原料とする場合、この化合物の配合濃度を低くするほど好ましい。
【0037】
公知の4級アンモニウム塩から選択した一種又は二種以上の4級アンモニウム塩(II)を任意原料とする場合、第2剤における4級アンモニウム塩(II)の配合濃度は、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。
【0038】
ノニオン界面活性剤は、第2剤をエマルションとするときに当該エマルションを安定化させたいときに汎用性がある。ノニオン活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。一種又は二種以上のノニオン界面活性剤を本実施形態の第2剤に配合すると良く、ノニオン界面活性剤の配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上5.0質量%以下である。
【0039】
エステル油を第2剤に配合する場合、このエステル油としては、例えば、ネオペンタン酸2−エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル、2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸イソノニル、2−エチルヘキサン酸イソデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸エチル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、ジメチルオクタン酸2−オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチルが挙げられる。一種又は二種以上のエステル油を本実施形態の第2剤に配合すると良く、エステル油の配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば0.5質量%以上12質量%以下である。
【0040】
シリコーンを本実施形態の第2剤に配合する場合、このシリコーンとしては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシクロメチコン;ジメチコノール;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチコン;アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアモジメチコン;が挙げられる。一種又は二種以上のシリコーンを本実施形態の第2剤に配合すると良く、その配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば1.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0041】
第2剤にメチルポリシロキサンを配合する場合、メチルポリシロキサンの分散性を高めるには、エステル油である分枝状の低級脂肪酸及び分枝状の低級アルコールのエステル(II)を配合すると良い。
【0042】
エステル(II)と共に配合するメチルポリシロキサンは、平均重合度が3以上650未満のものである。このメチルポリシロキサンは、化粧品原料基準一般試験法第一法により確認される25℃の動粘度が10mm/s以上100mm/s以下のものが良く、15mm/s以上70mm/s以下のものが好ましい。また、本実施形態の第2剤におけるメチルポリシロキサンの配合濃度は、1.0質量%以上であれば、本実施形態の多剤式毛髪処理剤で処理した毛髪のすべり感のある指通りに有利である。その配合濃度の上限は、例えば5.0質量%である。
【0043】
上記エステル(II)を構成するための分枝状低級脂肪酸は、モノカルボン酸であり、炭素数5以上10以下の飽和のものであると良い。この分枝状低級脂肪酸としては、例えば、ネオペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸が挙げられる。また、エステル(II)を構成するための分枝状低級アルコールは、一価アルコールであり、炭素数6以上10以下の飽和のものであると良い。この分枝状低級アルコールとしては、例えば、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコールが挙げられる。本実施形態の第2剤におけるエステル(II)の配合濃度は、例えば1.0質量%以上15質量%以下である。エステル(II)の配合量は、ポリメチルシロキサンの分散性を高めるためにはポリメチルシロキサンよりも多量にするほど好ましく、「メチルポリシロキサンの配合濃度/エステル(II)の配合濃度」は、例えば0.70以下が良い。
【0044】
低級アルコールを本実施形態の第2剤に配合する場合、この低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。一種又は二種以上の低級アルコールを本実施形態の第2剤に配合すると良く、低級アルコールの配合濃度は、例えば0.1質量%以上3.0質量%以下である。
【0045】
また、多価アルコールを本実施形態の第2剤に配合する場合、この多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが挙げられる。一種又は二種以上の多価アルコールを本実施形態の第2剤に配合すると良く、多価アルコールの配合濃度は、例えば0.01質量%以上1.0質量%以下である。
【0046】
本実施形態の第2剤は、O/Wエマルションであると良く、このエマルションは市販のポンプ型容器から吐出可能なクリーム状のものであると良い。このようなクリーム状である第2剤の粘度は、例えば、B型粘度計を使用して25℃、ローターNo.4、12rpmで計測した60秒後の値が6000mPa・s以上13000mPa・s以下である。
【0047】
また、本実施形態の第2剤におけるpHは、酸性乃至中性であると良い。25℃におけるそのpHは、例えば5.0以上7.5以下である。
【0048】
(後処理剤)
本実施形態における後処理剤は、水(後処理剤における水の配合濃度は、例えば65質量%以上90質量%以下。)と共に、公知の毛髪処理剤原料を配合したものである。この毛髪処理剤原料は、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、エステル油、シリコーン、低級アルコール、多価アルコール、高級アルコール、糖類、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤等である。
【0049】
水に配合する後処理剤の原料の組合せとしては、例えば、4級アンモニウム塩、高級アルコール、低級アルコール、及びシリコーンである。
【0050】
後処理剤に4級アンモニウム塩を配合する場合、この4級アンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;ジセチルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジココイルジメチルアンモニウムクロリド等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩;が挙げられる。一種又は二種以上の4級アンモニウム塩を後処理剤に配合すると良く、4級アンモニウム塩の配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば0.1質量%以上7.0質量%以下である。
【0051】
高級アルコールを後処理剤に配合する場合、この高級アルコールとしては、例えば、セタノール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコールが挙げられる。一種又は二種以上の高級アルコールを後処理剤に配合すると良く、高級アルコールの配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば3.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0052】
低級アルコールを後処理剤に配合する場合、この低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。一種又は二種以上の低級アルコールを後処理剤に配合すると良く、低級アルコールの配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば0.5質量%以上3.0質量%以下である。
【0053】
また、シリコーンを後処理剤に配合する場合、このシリコーンとしては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシクロメチコン;ジメチコノール;メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチコン;アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアモジメチコン;が挙げられる。一種又は二種以上のシリコーンを後処理剤に配合すると良く、その配合濃度は、適宜設定されるものであるが、例えば1.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0054】
上記後処理剤は、O/Wエマルションであると良く、このエマルションは市販のポンプ型容器から吐出可能なクリーム状のものであると良い。このようなクリーム状である第2剤の粘度は、例えば、B型粘度計を使用して25℃、ローターNo.4、12rpmで計測した60秒後の値が10000mPa・s以上25000mPa・s以下である。
【0055】
また、本実施形態の第2剤におけるpHは、酸性であると良い。25℃におけるそのpHは、例えば4.5以上6.5以下である。
【0056】
(使用方法)
本実施形態の多剤式毛髪処理剤は、第1剤を毛髪に塗布し、第1剤が残留した状態の毛髪に第2剤を塗布することで用いられる。後処理剤を用いる場合には、第2剤を塗布した毛髪を水洗し又は水洗せずに、後処理剤を毛髪に塗布することで用いられる。本実施形態の多剤式毛髪処理剤は、最終的に水で洗い流されるものである。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(毛髪処理剤)
第1剤:
実施例1〜8及び比較例の第1剤として、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド2.5質量%、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド0.2質量%、ジココイルジメチルアンモニウムクロリド0.3質量%、セタノール3.0質量%、イソプロピルアルコール1.1質量%、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体4.0質量%、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体0.4質量%、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール0.4質量%、アルギニン0.01質量%を配合したアルカリ性のクリーム状O/Wエマルションを調製した。
【0059】
第2剤:
下記表1又は2に示す原料を水に配合することにより、酸性のクリーム状O/Wエマルションである実施例1〜8及び比較例の第2剤を調製した。
【0060】
後処理剤:
実施例1〜8及び比較例の後処理として、セチルトリメチルアンモニウムブロミド2.1質量%、セタノール3.5質量%、ステアリルアルコール1.5質量%、エタノール0.9質量%、ポリ(トリペプチド−6)0.0001質量%、メチルポリシロキサン2.0質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン3.4質量%、高重合メチルポリシロキサン(1)0.6質量%、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体0.5質量%を配合した酸性のクリーム状O/Wエマルションを調製した。
【0061】
(毛髪処理)
カラーリング処理履歴のある頭髪をシャンプーで洗髪した後、適量の上記第1剤を頭髪に塗布し、揉み込んだ。次に、第1剤が塗布された頭髪に、適量の上記実施例1〜8又は比較例の第2剤を塗布し(頭髪の左半分に塗布した第2剤と右半分に塗布した第2剤は、異なるものとした)、揉み込んだ。その後、温水で濯いだ頭髪に、適量の上記後処理剤を塗布・揉み込み、温水で洗い流し、頭髪をドライヤーで乾燥させた。
【0062】
(評価)
「粒子析出」、「毛先のおさまり」、「毛先までの油性感」、「柔らかさ」、「すべり感のある指通り」、「製造直後の分離」について、以下の基準で評価した。
【0063】
粒子析出
頭髪に第2剤を塗布し、揉み込んだときに目視確認できる粒子が析出したかより評価した。評価基準は、次の通りとした。
無し:粒子の析出が確認されなかった。
有り:粒子の析出が確認された。
【0064】
毛先のおさまり
実施例1〜4及び比較例では比較例を基準とし、実施例5〜8では実施例6を基準とし、毛髪処理後の頭髪を外観視して、毛先のおさまりを相対比較することで評価した。評価は5名の評価者の多数決で決し、評価基準は次の通りとした。
○:基準よりもおさまりが良かった。
―:基準と同等であった。
△:基準よりもややおさまりが悪かった。
×:基準よりもおさまりが悪かった。
【0065】
柔らかさ
実施例1〜4及び比較例では比較例を基準とし、実施例5〜8では実施例6を基準とし、毛髪処理後の頭髪を触ったときに感じる毛髪の柔らかさを相対比較することで評価した。評価は5名の評価者の多数決で決し、評価基準は次の通りとした。
○:基準よりも柔らかさを感じた。
―:基準と同等であった。
△:基準よりもやや柔らかくないと感じた。
×:基準よりも柔らかくないと感じた。
【0066】
すべり感のある指通り
実施例1〜4及び比較例では比較例を基準とし、実施例5〜8では実施例6を基準とし、毛髪処理後の頭髪の毛先までの指通りと当該指通りがすべる感じがするかを相対比較することで評価した。評価は5名の評価者の多数決で決し、評価基準は次の通りとした。
○:毛先までの指通りが良く、基準よりすべる感じの指通りであった。
―:基準と同等であった。
△:毛先までの指通りは良かったが、基準よりすべる感じの指通りがやや悪かった。
×:毛先までの指通り、指通りがすべる感じ共に基準より悪かった。
【0067】
毛先までの油性感
実施例5〜8において実施例6を基準とし、毛髪処理後の頭髪を触ったときに感じる毛先までの油性感を相対比較することで評価した。ここで、「油性感」とは、毛髪表面が油分で薄くコーティングされているような感触を意味する。評価は5名の評価者の多数決で決し、評価基準は次の通りとした。
○:基準よりも毛先までの油性感が均一であった。
―:基準と同等であった。
△:基準よりも毛先の油性感がやや悪かった。
×:基準よりも毛先の油性感が悪かった。
【0068】
製造直後の分離
調製後の第2剤を目視確認し、油相分離の有無により評価した。評価基準は次の通りとした。
無し:油相の分離が認められなかった。
有り:油相の分離が認められた。
【0069】
下記表1に、実施例1〜4及び比較例の第2剤に配合した原料及び配合濃度、並びに評価結果を示す。
【表1】

【0070】
上記表1から次の(A)〜(B)を確認できる。(A)第2剤に疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース)を配合した実施例1〜4では、粒子析出を確認できなかった。(B)実施例3と実施例4との対比から、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合濃度が0.2質量%未満であれば、柔らかさとすべり感のある指通りが悪化することを抑止できる傾向であること。
【0071】
下記表2に、実施例5〜8の第2剤に配合した原料及び配合濃度、並びに評価結果を示す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤と、当該第1剤が塗布された後の毛髪に塗布される第2剤とを備える多剤式毛髪処理剤であって、
前記第1剤が4級アンモニウム塩(I)を配合したものであり、
前記第2剤が疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリアクリル酸アミドを配合したものであることを特徴とする多剤式毛髪処理剤。
【請求項2】
前記第1剤における4級アンモニウム塩(I)の配合濃度が、7.0質量%以下である請求項1に記載の多剤式毛髪処理剤。
【請求項3】
前記第2剤における4級アンモニウム塩(II)の配合濃度が、1.0質量%以下(無配合を含む。)である請求項1又は2に記載の多剤式毛髪処理剤。
【請求項4】
前記第2剤における疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合濃度が、1.0質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の多剤式毛髪処理剤。
【請求項5】
前記第2剤におけるポリアクリル酸アミドの配合濃度が、3.0質量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の多剤式毛髪処理剤。

【公開番号】特開2012−87075(P2012−87075A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233187(P2010−233187)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】