説明

毛髪化粧料

【課題】 毛髪に対して保湿性の付与だけでなく、はり、艶、なめらかさを付与し、損傷した毛髪の強度を回復させる効果が高く、しかもそれらの効果は動物タンパク加水分解ペプチド、特に加水分解ケラチンを含有する毛髪化粧料に匹敵する毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】 エンドウ豆タンパク加水分解物、エンドウ豆タンパク加水分解物のN−第4級アンモニウム誘導体、エンドウ豆タンパク加水分解物のN−シリル化誘導体およびエンドウ豆タンパク加水分解物のN−アシル化誘導体またはその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させて毛髪化粧料を構成する。エンドウ豆タンパク加水分解物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量は毛髪化粧料中0.05〜30質量%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、シャンプー、毛髪セット剤、整髪料、ヘアクリーム、パーマネントウェーブ用剤、染毛剤、染毛料などの毛髪化粧料に関し、さらに詳しくは、毛髪への収着性に優れ、毛髪に優れたはり、艶および潤い感を付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、かつ毛髪をなめらかな感触に仕上げることができる毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コラーゲン、ケラチン、絹、カゼイン、大豆、小麦などの天然物由来の蛋白質を加水分解することによって得られる加水分解ペプチドやその誘導体を毛髪化粧料に配合することは行われている。これは、それらの加水分解ペプチドやその誘導体が毛髪への収着性がよく、毛髪の損傷を防止し、損傷した毛髪を回復させたり、毛髪に保湿性を付与する作用を有し、しかも、それらの加水分解ペプチドやその誘導体が天然蛋白質由来であって、毛髪に対する刺激が少なく、安全性が高いという理由によるものである。
【0003】
上記の加水分解ペプチドやその誘導体の中で、加水分解コラーゲンや加水分解ケラチンおよびそれらの誘導体は、毛髪への収着性に優れ、損傷した毛髪の強度を回復し、はりや艶を付与する効果に優れるが、動物由来蛋白質加水分解物特有の動物臭がある上に、動物愛護の風潮や牛伝達性海綿状脳症の発生から、消費者動向は哺乳動物由来原料を忌避する傾向にある。そのため、近年では、それらのタンパク源に代えて海産生物由来のコラーゲンや、大豆や小麦などの植物由来蛋白質の利用が多くなってきている。
【0004】
しかしながら、海産生物由来のコラーゲンは、一定した原料の大量確保が難しいため、生産量が少なく高価格であるという問題がある。また、植物タンパクは、酸性アミノ酸を多く含み、その加水分解物を毛髪化粧料に配合すると、毛髪に保湿作用を付与する効果が高いという利点を有するが、損傷した毛髪の強度を回復させたり、はり、艶、滑らかさを付与する効果においては、動物タンパク由来の加水分解コラーゲンや加水分解ケラチンに比べて劣るという問題があった。
【特許文献1】特開平4−139113号公報
【特許文献2】特開2002−226330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、植物タンパク加水分解物が有する保湿性の付与作用だけでなく、動物由来タンパク加水分解物と同程度あるいはそれ以上の毛髪へのはり、艶、滑らかさを付与する効果や損傷した毛髪の強度を回復させる効果の高い植物タンパク加水分解物および/またはその誘導体を含有する毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、エンドウ豆タンパク加水分解物(加水分解エンドウ豆タンパク)および/またはその誘導体を含有させた毛髪化粧料は、損傷した毛髪の強度を回復させる効果が高く、しかも毛髪に優れたはり、艶、潤い感を付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、かつ毛髪をなめらかな感触に仕上げることができ、しかもそのはり、艶、滑らかさは従来の加水分解コラーゲンや加水分解ケラチンと遜色はなく、さらに植物タンパク加水分解物の有する優れた保湿性の付与作用も有していることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【発明の効果】
【0007】
毛髪に対して保湿性の付与だけでなく、はり、艶、滑らかさを付与し、損傷した毛髪の強度を回復させる効果の高く、しかもそれらの効果は動物由来のタンパク質の加水分解ペプチド、特に加水分解ケラチンに匹敵する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の毛髪化粧料に使用するエンドウ豆タンパク加水分解物およびその誘導体の原料は、エンドウ豆(Pisum Sativum L.)から大豆タンパクと同様の方法で分離されたタンパク質で、オルガノ社からPP−CSの商品名で市販されているものを利用することができる。
【0009】
エンドウ豆タンパクのアミノ酸組成を、大豆タンパク、小麦タンパク、羊毛由来ケラチンおよび豚皮由来コラーゲンと比較して表1に示すが、アミノ酸組成は、大豆タンパクに似ていて、酸性アミノ酸、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸のバランスが良い。ただ、大豆より塩基性アミノ酸が若干多く、その分、酸性アミノ酸が少ないようである。なお、アミノ酸分析においては、分析前にタンパク質を塩酸で加水分解するので、アスパラギンやグルタミンはアスパラギン酸およびグルタミン酸に変換されるため、それぞれ、アスパラギン酸およびグルタミン酸に合算されている。また、シスチンはシステインに分解されるため、システインを含めたハーフシスチンとして記してある。さらに、トリプトファンは塩酸分解で分解されてしまうため表には記していない。
【0010】
【表1】

【0011】
本発明の毛髪化粧料には、エンドウ豆タンパクの加水分解物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させるが、そのエンドウ豆タンパクの加水分解物としては、エンドウ豆タンパクを部分的に加水分解して得られる加水分解エンドウ豆タンパクが挙げられ、エンドウ豆タンパク加水分解物の誘導体としては、加水分解エンドウ豆タンパクのN−シリル化誘導体、加水分解エンドウ豆タンパクのN−第4級アンモニウム誘導体および加水分解エンドウ豆タンパクのN−アシル化誘導体またはその塩が挙げられる。そして、これらの加水分解エンドウ豆タンパクやその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよいし、また2種以上併用してもよい。
【0012】
加水分解エンドウ豆タンパクは、エンドウ豆タンパクを酸、アルカリ、酵素およびそれらの併用により加水分解したもので、加水分解の方法は、動植物由来のタンパク質加水分解物を得る公知の方法がそのまま適用できる。加水分解時の酸、アルカリ、酵素の量や加熱温度、分解時間などを変化させることにより、生成する加水分解エンドウ豆タンパクの分子量をコントロールすることができるが、本発明の毛髪化粧料に含有する加水分解エンドウ豆タンパクとしては、数平均分子量が約200〜約5,000のものが好ましく、約250〜約3,000のものがより好ましい。
【0013】
これは、加水分解エンドウ豆タンパクの数平均分子量が上記範囲以下では毛髪への収着性が低くなる上、加水分解エンドウ豆タンパクの有する造膜作用、艶、なめらかさの付与作用が充分に発揮できないおそれがあり、加水分解エンドウ豆タンパクの数平均分子量が上記範囲以上になると、毛髪がごわついたり、高湿度下ではべたついたりするおそれがあるからである。なお、本明細書で用いる数平均分子量とは、タンパク質の加水分解物の総窒素量とアミノ態窒素量より求めたアミノ酸重合度に、タンパク質の平均アミノ酸分子量を掛けて求めた計算値で、エンドウ豆タンパクの平均アミノ酸分子量を130としている。
【0014】
上記加水分解エンドウ豆タンパクのN−シリル化誘導体としては、例えば、下記一般式(I)
【0015】
【化1】

【0016】
〔式中、R、R、Rのうち少なくとも2個は水酸基を示し、残りは炭素数1〜3のアルキル基を示す。Rは側鎖の末端にアミノ基を有するエンドウ豆タンパク由来の塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く残基を示し、RはR以外のエンドウ豆タンパク由来のアミノ酸側鎖を示す。Aは結合手で、メチレン、プロピレン、−CHOCHCH(OH)CH−または−(CHOCHCH(OH)CH−で示される基であり、aは0〜20、bは1〜50、a+bは2〜50である(ただし、aおよびbはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表される加水分解エンドウ豆タンパクのアミノ酸側鎖のアミノ基を含むアミノ基にケイ素原子をただ一つ含む官能基が結合したN−シリル化加水分解エンドウ豆タンパクが挙げられ、このような加水分解エンドウ豆タンパクのN−シリル化誘導体は、例えば、特開平8−59424号公報、特開平8−607608号公報などに記載の方法で製造することができる。
【0017】
そして、この加水分解エンドウ豆タンパクのシリル化誘導体においても、そのペプチド部分の数平均分子量は、上記加水分解エンドウ豆タンパクと同様の理由で、約200〜約5,000であることが好ましく、約250〜約3,000であることがより好ましい。
【0018】
上記加水分解エンドウ豆タンパクのN−第4級アンモニウム誘導体としては、例えば、下記の一般式(II)
【0019】
【化2】

【0020】
〔式中、R、R、Rは同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜22のアルキル基または炭素数1〜22のアルケニル基、あるいはR〜Rのうち1個または2個が炭素数1〜22のアルキル基または炭素数1〜22のアルケニル基で、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基またはベンジル基を示す。Rは側鎖の末端にアミノ基を有するエンドウ豆タンパク由来の塩基性アミノ酸の末端アミノ基を除く残基を示し、R10はR以外のエンドウ豆タンパク由来のアミノ酸側鎖を示す。Bは炭素数2〜3の飽和炭化水素または炭素数2〜3の水酸基を有する飽和炭化水素を示し、Xはハロゲン原子を示す。cは0〜20、dは1〜50、c+dは2〜50である(ただし、cおよびdはアミノ酸の数を示すのみで、アミノ酸配列の順序を示すものではない)〕
で表されるものが挙げられ、この加水分解エンドウ豆タンパクのN−第4級アンモニウム誘導体は、アルカリ条件下で加水分解エンドウ豆タンパクと第4級アンモニウム化合物とを反応させることによって得られる。
【0021】
上記第4級アンモニウム化合物の具体例としては、例えば、グリシジルステアリルジメチルアンモニウムクロリド、グリシジルヤシ油アルキルジメチルアンモニウムクロリド、グリシジルラウリルジメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドなどのグリシジルアンモニウム塩、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルステアリルジメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルヤシ油アルキルジメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルラウリルジメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルエチルジメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどの3−ハロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩、2−クロロエチルトリメチルアンモニウムクロリドなどの2−ハロゲンエチルアンモニウム塩、3−クロロプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどの3−ハロゲンプロピルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0022】
そして、この加水分解エンドウ豆タンパクのN−第4級アンモニウム誘導体においても、そのペプチド部分の数平均分子量は、上記エンドウ豆タンパクと同様の理由で、約200〜約5,000であることが好ましく、約250〜約3,000であることがより好ましい。
【0023】
上記加水分解エンドウ豆タンパクのN−アシル化誘導体またはその塩としては、例えば、加水分解エンドウ豆タンパクのN末端アミノ基および/または塩基性アミノ酸の側鎖のアミノ基に、炭素数8〜32の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和の脂肪酸や樹脂酸などを縮合させたN−アシル化加水分解エンドウ豆タンパクまたはその塩が挙げられる。
【0024】
N−アシル化加水分解エンドウ豆タンパクとしては、例えば、加水分解エンドウ豆タンパクのラウリン酸縮合物、ミリスチン酸縮合物、ヤシ油脂肪酸縮合物、イソステアリン酸縮合物、ウンデシレン酸縮合物、ラノリン脂肪酸縮合物、樹脂酸縮合物、水素添加樹脂酸縮合物などが挙げられる。そして、それら酸縮合物の塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール塩、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩などが挙げられる。
【0025】
そして、この加水分解エンドウ豆タンパクのN−アシル化誘導体またはその塩においても、そのペプチド部分の数平均分子量は、上記加水分解エンドウ豆タンパクと同様の理由で、約200〜約5,000であることが好ましく、約250〜約3,000であることがより好ましい。
【0026】
本発明の毛髪化粧料は、加水分解エンドウ豆タンパクおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を各種の毛髪化粧料に含有させることによって構成されるが、対象となる毛髪化粧料としては、例えば、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、シャンプー、毛髪セット剤、整髪料、ヘアクリーム、パーマネントウェーブ用剤、染毛剤、染毛料などが挙げられる。
【0027】
そして、加水分解エンドウ豆タンパクおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の毛髪化粧料中での含有量(毛髪化粧料中への配合量)としては、毛髪化粧料の種類によっても異なるが、0.05〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。ただし、パーマネントウェーブ処理や染毛処理などの化学処理を毛髪に施す際の中間処理剤や後処理剤として使用されるPPTトリートメント(ポリペプチドトリートメント)では、一般に加水分解ペプチドやその誘導体は高濃度に配合されていて、加水分解エンドウ豆タンパクやその誘導体を配合する場合も、含有量が30質量%を超える場合もある。
【0028】
加水分解エンドウ豆タンパクおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の毛髪化粧料中での含有量を上記のように規定しているのは、加水分解エンドウ豆タンパクおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の毛髪化粧料中での含有量が上記範囲より少ない場合は、損傷した毛髪の強度を回復させたり、はり、艶、潤い感を付与し、毛髪の櫛通り性を改善し、かつ毛髪を滑らかな感触に仕上げる作用が充分に発揮されないおそれがあり、また逆に、加水分解エンドウ豆タンパクおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の毛髪化粧料中での含有量が上記範囲より多くなると、毛髪にゴワツキ感やべたつき感を与えるおそれがあるためである。
【0029】
本発明の毛髪化粧料は、加水分解エンドウ豆タンパクおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を毛髪化粧料中に含有させることによって構成されるが、加水分解エンドウ豆タンパクおよびその誘導体を2種以上含有させる場合は、異なった種類のものを2種以上含有させてもよいし、同種でペプチドの分子量が異なるものを2種以上含有させてもよい。
【0030】
そして、本発明の毛髪化粧料中に、加水分解エンドウ豆タンパクおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種と併用して配合できる成分としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、アニオン性ポリマーなどの合成ポリマー、半合成ポリマー類、動植物油、炭化水素類、エステル油、高級アルコール類、シリコーン油などの油剤、天然多糖類、保湿剤、低級アルコール類、アミノ酸類、増粘剤、動植物抽出物、シリコーン類、防腐剤、香料、エンドウ豆タンパク以外の動植物由来および微生物由来の蛋白質を加水分解した加水分解ペプチドおよびそれらのペプチドエステル誘導体、第4級アンモニウム誘導体、シリル化誘導体、アシル化誘導体およびその塩などが挙げられるが、それら以外にも本発明の毛髪化粧料の特性を損なわない範囲で適宜他の成分を添加することができる。
【実施例】
【0031】
つぎに、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例の説明に先立ち、実施例中で行う毛髪のはりの評価、毛髪表面のなめらかさの評価、毛髪の水分保持能の測定などの方法について説明する。
【0032】
〔毛髪のはりの評価法〕
一定の長さの毛髪のほぼ中央部位に図1のように軽く結び目(ノット)を作り、毛根側を上にし、毛先側に10gの錘をつけて室温で相対湿度58%の恒湿槽中に1分間吊す。その後、毛先側の錘を外し、さらに1時間上記恒湿槽中に吊した後、毛髪上に作製したノットを走査型電子顕微鏡で撮影し、その撮影画像をもとに毛髪のノットの大きさ(長径)を画像処理装置で測定する〔走査型電子顕微鏡には日本電子(株)製、JSM−5800LVを用い、画像処理は同社製、SemAfore(商品名)を使用した〕。一試料につき14本の毛髪のノットの大きさを測定し、測定結果の最も大きいものから2つと最も小さいものから2つの4試料についての結果は除外し、試料ごとに10本の毛髪の結果について平均値を求め、その平均値で評価結果を示す。なお、評価結果を示す数値の大きい(ノットが大きい)ほど、毛髪に「はり」があることを意味する。
【0033】
〔毛髪の断面積および引っ張り強度測定法〕
毛髪の断面積は、カトーテック(株)製の毛髪直径計測機を用いて、1本の毛髪につき5mm間隔で5cm分の長径と短径を測定し、毛髪断面を楕円形として断面積を算出し、その平均値をその毛髪の断面積とした。実施例で使用する毛束を作製する際には、毛髪断面積の合計値がほぼ一定になるように毛髪を組み合わせて毛束とした。
【0034】
毛髪の引っ張り強度は、カトーテック(株)製の高感度毛髪引っ張り試験機KES−G1−SH(商品名)を用いて、毛髪試料長50mmで、延伸速度1.0mm/秒で引っ張り、毛髪切断時の強度を求めた。試験では、1試料で処理した毛髪40本の毛髪の引っ張り強度を測定し、その平均値を毛髪1本当たりの強度(N;ニュートン)として表した。なお、毛髪の毛髪断面積および引っ張り強度測定は、毛髪を湿度40%の恒湿槽に一昼夜保存した後行った。
【0035】
〔毛髪の水分保持能(保湿性)の試験法〕
各試料で処理した毛束を、相対湿度82%の恒湿槽に一昼夜吊して保存した後、長さ約1cmに裁断し、約300mgを電子水分計〔(株)島津製作所製、EB−340MC〕の秤量皿に載せ、精秤の後、65℃で40分間、次いで180℃で30分間加熱し、その間の相対質量変化を測定した。65℃は一般に用いられるヘアドライヤーを想定した温度で、65℃で40分間の加熱での質量の減量は毛髪表面に付着あるいは結合している水分によるもので、毛髪表面の水分量とした。180℃の加熱は、毛髪に含まれる全水分が蒸散するとされる温度で、180℃で30分間の加熱での減量分を毛髪中の水分量とし、毛髪の水分含有率を下記の式より求めた。
【0036】
毛髪の水分含有率(%)=〔(毛髪中の水分量)/(毛髪全量−毛髪表面の水分量)〕×100
【0037】
毛髪中の水分含有率が高いほど毛髪中に水分が保持される(水分保持能が高い)、すなわち、保湿性が高いことを意味する。
【0038】
〔毛髪表面のなめらかさ(滑り性能)の評価法〕
毛髪表面のなめらかさは、カトーテック(株)製の摩擦感テスターKES−SEを用いて測定した。この装置においては、なめらかさ(あるいは、ざらつき)は、毛髪表面の一定距離を移動する摩擦子が感じる摩擦係数の平均偏差値で表され、単位は無次元であり、値が小さいほど「なめらかである」、すなわち「滑り性がよい」ことを示している。試験では、各試料の毛髪表面を摩擦子が2cm移動したときの摩擦係数の平均偏差値で試験結果を表し、その試験結果を示す数値は各試料10回ずつの測定値の平均値である。
【0039】
実施例1および比較例1〜2
表2に示す組成の3種類のヘアリンスを調製し、それぞれのヘアリンスを毛髪に使用して、毛髪のはり、引っ張り強度、水分保持能および毛髪表面のなめらかさを前記の方法で測定し評価した。なお、表2中の各成分の配合量はいずれも質量部によるものであり、配合量が固形分量でないものについては、成分名のあとに括弧書きで固形分濃度を示している。これらは、以降の組成を示す表4、表6、表8、表10、表12、表13などにおいても同様である。
【0040】
実施例1では、ペプチド部分の数平均分子量が520の加水分解エンドウ豆タンパクを用い、比較例1では加水分解エンドウ豆タンパクに代えて数平均分子量が約500の加水分解ケラチンを用い、比較例2では数平均分子量約500の加水分解大豆タンパクを用いている。
【0041】
【表2】

【0042】
上記ヘアリンスによる処理に先立ち、長さ15cmで重さ1.5gの毛束を3本用意し、毛髪の損傷度を一定にするため、3%過酸化水素水と1%のアンモニアを含む水溶液に30℃で30分間浸漬してブリーチ処理を行い、水道水流水で洗浄後、さらにイオン交換水でゆすいだ。このブリーチ処理工程を5回行った毛束に対して、上記実施例1および比較例1〜2のヘアリンスをそれぞれ2gずつ用いて処理し、お湯でゆすいだ。このヘアリンス処理を5度行ったそれぞれの毛束を、上記のはり、引っ張り強度、水分保持能および毛髪表面のなめらかさの評価試験に供した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3に示したように、加水分解エンドウ豆タンパクを含有する実施例1のヘアリンスで処理した毛髪は、はりや引っ張り強度が加水分解ケラチンを含有する比較例1のヘアリンスで処理した毛髪と測定値はほぼ同じであった。すなわち、加水分解エンドウ豆タンパクは植物タンパク由来であるが、毛髪に、はりや引っ張り強度を付与する効果が最も高いと言われている加水分解ケラチンと遜色のないはりや引っ張り強度を付与する効果を有することが明らかであった。
【0045】
また、水分保持能を表す毛髪の水分含有率では、実施例1のヘアリンスで処理した毛髪は、大豆タンパク加水分解物を含有する比較例2のヘアリンスで処理した毛髪よりやや低かったが、加水分解ケラチンを含有する比較例1のヘアリンスで処理した毛髪より2.4%も多かった。加水分解エンドウ豆タンパクは保湿能の付与作用が大きく、毛髪への保湿能付与効果が非常に高い加水分解大豆タンパクと同等近くの保湿能付与効果を有することが明らかであった。
【0046】
さらに、毛髪表面のなめらかさを表す摩擦係数の平均偏差は、加水分解エンドウ豆タンパクを含有する実施例1のヘアリンスで処理した毛髪が最も小さく、加水分解エンドウ豆タンパクは、毛髪表面をなめらかにする効果が高いことも明らかであった。
【0047】
実施例2および比較例3〜4
表4に示す組成の3種類の毛髪セット剤を調製し、毛髪に適用したときの毛髪の艶、潤い感、なめらかさおよび櫛通り性を官能評価し、毛髪のはりを前記の毛髪のはりの評価法で評価した。
【0048】
実施例2ではペプチド部分の数平均分子量が680のエンドウ豆タンパク加水分解物のN−シリル化誘導体であるN−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクを用い、比較例3ではN−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクに代えて、ペプチド部分の数平均分子量が650のN−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解ケラチンを用い、比較例4ではペプチド部分の数平均分子量が約700のN−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解小麦タンパクを用いている。
【0049】
【表4】

【0050】
上記毛髪セット剤による毛髪の処理は下記のように行った。すなわち、長さ20cmで重さ1gの毛束を3本用意し、2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水でゆすいで室温で風乾し、それらをそれぞれ直径1cmのロッドに巻き付けた。そのロッドに巻き付けた毛束に、実施例2および比較例3〜4の毛髪セット剤をそれぞれ2mlずつ塗布し、90℃の熱風乾燥機中で乾燥した。乾燥後の毛髪をロッドからはずし、艶、潤い感、滑らかさおよび櫛通り性を10人の女性パネラーに最も良いものを2点とし、2番目に良いものを1点とし、悪いものを0点として評価させた。つぎに、それぞれの毛束から14ずつの毛髪を抜き取り、毛髪のはりの評価試験に供した。それらの結果を表5に平均値で示す。
【0051】
【表5】

【0052】
表5に示したように、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクを含有する実施例2の毛髪セット剤で処理した毛髪は、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解ケラチンを含有する比較例3の毛髪セット剤やN−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解小麦タンパクを含有する比較例4の毛髪セット剤で処理した毛髪に比べて、官能評価ではいずれの評価項目でも評価値が高く、加水分解エンドウ豆タンパクのN−シリル化誘導体であるN−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクは、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解ケラチンやN−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解小麦タンパクより優れた毛髪に対する艶、潤い感、なめらかさおよび良好な櫛通り性を付与する作用を有することが明らかであった。
【0053】
また、毛髪のはりを表すノットの大きさは、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクを含有する実施例2の毛髪セット剤で処理した毛髪は、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解ケラチンを含有する比較例3の毛髪セット剤で処理した毛髪に比べると約1.01倍とやや大きい程度であったが、N−〔2−ヒドロキシ−3−(3−ジヒドロキシメチルシリルプロポキシ)プロピル〕加水分解小麦タンパクを含有する比較例4の毛髪セット剤で処理した毛髪の1.03倍あった。すなわち、毛髪へのはりの付与作用の強いといわれる加水分解ケラチンのN−シリル化誘導体と比べても、はりの付与作用はほぼ同じで、加水分解エンドウ豆タンパクのN−シリル化誘導体は、加水分解ケラチンのN−シリル化誘導体と遜色のない毛髪へのはりの付与作用を有していることが明らかであった。
【0054】
実施例3および比較例5〜6
表6に示す組成の3種類の毛髪スタイリングジェルを調製し、それぞれの毛髪スタイリングジェルを洗浄した毛束に使用して、処理後の毛髪の艶、潤い感、はり、なめらかさおよび櫛通り性を官能評価し、また、毛髪のはりを前記の毛髪のはりの評価法で評価した。
【0055】
実施例3ではペプチド部分の数平均分子量が1008のエンドウ豆タンパク加水分解物のN−第4級アンモニウム誘導体である塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクを用い、比較例5では塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクに代えて数平均分子量が約1000の加水分解コラーゲンのN−第4級アンモニウム誘導体である塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解コラーゲンを用い、比較例6は数平均分子量が約800の加水分解大豆タンパクのN−第4級アンモニウム誘導体である塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解大豆タンパクを用いている。
【0056】
【表6】

【0057】
上記毛髪スタイリングジェルによる処理に先立ち、長さ30cmで重さ2.5gの毛束を3本用意し、それらの毛束を2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾した。この毛束を直径25mmのカール用ロッドに巻き付け、そのロッドに巻き付けた毛束に実施例3および比較例5〜6の毛髪スタイリングジェルをそれぞれ2gずつ塗布し、ヘアドライヤーで乾燥した。乾燥後、毛束をロッドから外し、毛髪の艶、潤い感、なめらかさ、櫛通り性およびウェーブの感触を10人の女性パネラーに、実施例2と同様の評価基準で評価させた。つぎに、それぞれの毛束より毛髪を14本ずつ抜き取り、毛髪のはりの評価試験に供して毛髪のはりを評価した。これらの結果を表7に平均値で示す。
【0058】
【表7】

【0059】
表7に示したように、塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクを含有する実施例3の毛髪スタイリングジェルで処理した毛髪は、塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解コラーゲンを含有する比較例5の毛髪スタイリングジェルで処理した毛髪や塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解大豆タンパクを含有する比較例6の毛髪スタイリングジェルで処理した毛髪に比べて、艶、潤い感、なめらかさ、櫛通り性およびウェーブの感触のいずれの評価項目でも評価値が高く、塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクは、毛髪スタイリングジェルに含有させた場合、塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解コラーゲンや塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解大豆タンパクより、毛髪に艶、潤い感、なめらかさ、櫛通り性および良好なウェーブの感触を付与する効果が高いことが明らかであった。
【0060】
毛髪のはりを示すノットの大きさは、実施例3の毛髪スタイリングジェルで処理した毛髪は、比較例5の毛髪スタイリングジェルで処理した毛髪の約1.03倍、比較例6の毛髪スタイリングジェルで処理した毛髪の約1.09倍あり、塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解エンドウ豆タンパクは、塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解コラーゲンや塩化N−〔2−ヒドロキシ−3−(ヤシ油アルキルジメチルアンモニオ)プロピル〕加水分解大豆タンパクより毛髪にはりを付与する効果が高いことが明らかであった。
【0061】
実施例4および比較例7〜8
表8に示す組成の3種類のシャンプーを調製し、それぞれのシャンプーで毛髪に使用して、毛髪のはり、引っ張り強度、水分保持能および毛髪表面のなめらかさを上記の方法で測定し評価した。
【0062】
実施例4においては、数平均分子量が400のエンドウ豆タンパク加水分解物のN−アシル化誘導体であるN−ヤシ油脂肪酸加水分解エンドウ豆タンパクのカリウム塩を用い、比較例7ではN−ヤシ油脂肪酸加水分解エンドウ豆タンパクのカリウム塩に代えて数平均分子量が400の加水分解コラーゲンのN−アシル化誘導体であるN−ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンのカリウム塩を用い、比較例8では数平均分子量が約400の加水分解大豆タンパクのN−アシル化誘導体であるN−ヤシ油脂肪酸加水分解大豆タンパクのカリウム塩を用いている。
【0063】
【表8】

【0064】
上記シャンプーによる毛髪の処理に先立ち、長さ15cmで重さ1.5gの毛束を3本用意し、毛髪の損傷度を一定にするため、3%過酸化水素水と1%のアンモニアを含む水溶液に30℃で30分間浸漬してブリーチ処理を行い、水道水流水で洗浄後、さらにイオン交換水でゆすいだ。このブリーチ処理工程を5回行った毛束に対して、実施例4および比較例7〜8のシャンプーをそれぞれ2g用いて毛束を洗浄し、お湯の流水中でゆすぎ、ヘアドライヤーで乾燥した。この洗浄、ゆすぎ、ヘアドライヤーによる乾燥処理を10回繰り返した毛髪を、毛髪のはり、引っ張り強度、水分保持能および毛髪表面のなめらかさの評価試験に供した。それらの評価試験の結果を表9に平均値で示す。
【0065】
【表9】

【0066】
表9に示したように、エンドウ豆タンパク加水分解物のN−アシル化誘導体の塩であるN−ヤシ油脂肪酸加水分解エンドウ豆タンパクカリウムを含有する実施例4のシャンプーで処理した毛髪は、加水分解コラーゲンのN−アシル化誘導体の塩であるN−ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンカリウムを含有する比較例7のシャンプーで処理した毛髪や大豆タンパク加水分解物のN−アシル化誘導体の塩であるN−ヤシ油脂肪酸加水分解大豆タンパクカリウムを含有する比較例8のシャンプーで処理した毛髪と比べて、毛髪のはりを表すノットの大きさや引っ張り強度は最も大きく、エンドウ豆タンパク加水分解物のN−アシル化誘導体の塩は毛髪にはりや引っ張り強度を付与する効果を有することが明らかであった。
【0067】
また、水分保持能を表す毛髪の水分含有率では、実施例4のシャンプーで処理した毛髪は、比較例7や比較例8のシャンプーで処理した毛髪より高く、エンドウ豆タンパク加水分解物のN−アシル化誘導体の塩は、毛髪に保湿性を付与する効果が高いといわれる加水分解大豆タンパクのN−アシル化誘導体の塩とほぼ同程度かやや高い保湿性の付与効果があることが明らかであった。
【0068】
さらに、毛髪表面のなめらかさを表す摩擦係数の平均偏差は、実施例4のシャンプーで処理した毛髪が最も小さく、エンドウ豆タンパク加水分解物のN−アシル化誘導体の塩は、毛髪表面をなめらかにする効果も高いことが明らかであった。
【0069】
実施例5および比較例9〜10
表10に示す組成の3種類のパーマネントウェーブ用第1剤を調製し、それぞれのパーマネントウェーブ用第1剤と、6%臭素酸ナトリウム水溶液からなるパーマネントウェーブ第2剤を用いて毛束にパーマネントウェーブ処理を施し、毛髪の艶、はり、潤い感およびなめらかさを官能評価評価し、毛髪の引っ張り強度を調べた。
【0070】
実施例5では数平均分子量880の加水分解エンドウ豆タンパクを用い、比較例9では加水分解エンドウ豆タンパクに代えて数平均分子量約1000の加水分解ケラチンを用い、比較例10には数平均分子量850の加水分解小麦タンパクを用いている。
【0071】
【表10】

【0072】
上記パーマネントウェーブ用第1剤による毛髪の処理は下記のように行った。すなわち、長さ20cmに揃えた毛髪をあらかじめ2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水流水中でゆすいで室温で風乾し、これらの毛髪50本からなる毛束を3本作製し、それらをそれぞれ長さ10cmで直径1cmのロッドに巻き付けた。そのロッドに巻き付けた毛束に、実施例5および比較例9〜10のパーマネントウェーブ用第1剤をそれぞれ2mlずつ塗布し、それらの毛束をラップで覆い、15分間放置後、流水で静かに10秒間洗浄し、ついでパーマネントウェーブ用第2剤を2mlずつ塗布し、ラップで覆い、15分間放置した後、毛束をロッドからはずし、流水中で30秒間静かに洗浄した。各毛束は60℃の熱風乾燥機中で乾燥し、乾燥後、毛髪の艶、はり、潤い感およびなめらかさを10人のパネラーに実施例2と同じ評価基準で評価させた。つぎに、それぞれの毛束より40本の毛髪を抜き取り、引っ張り強度試験に供した。それらの結果を表11に平均値で示す。
【0073】
【表11】

【0074】
表11に示したように、加水分解エンドウ豆タンパクを含有する実施例5のパーマネントウェーブ用第1剤で処理した毛髪は、加水分解ケラチンを含有する比較例9のパーマネントウェーブ用第1剤で処理した毛髪や加水分解小麦タンパクを含有する比較例10のパーマネントウェーブ用第1剤で処理した毛髪に比べて、毛髪の艶、はり、潤い感、なめらかさのいずれの評価項目においても評価値が高く、パーマネントウェーブ用第1剤に含有させた場合、加水分解エンドウ豆タンパクは加水分解ケラチンや加水分解小麦タンパク以上の効果を毛髪に付与することが明らかであった。
【0075】
また、毛髪の引っ張り強度は、加水分解エンドウ豆タンパクを含有する実施例5のパーマネントウェーブ用第1剤で処理した毛髪は、加水分解小麦タンパクを含有する比較例10のパーマネントウェーブ用第1剤で処理した毛髪の約1.03倍の強度を有し、毛髪の強度を高める効果の高いと言われる加水分解ケラチンを含有する比較例9のパーマネントウェーブ用第1剤で処理した毛髪と比べてもほぼ同等の値であり、エンドウ豆タンパク加水分解物は植物タンパク由来にもかかわらず毛髪の引っ張り強度を高める効果が高いことが明らかであった。
【0076】
実施例6および比較例11〜12
表12に示す組成の3種類の酸化型染毛剤第1剤を調製し、それぞれの酸化型染毛剤第1剤と下記表13に示す酸化型染毛剤第2剤とを混合し、毛髪を染毛後、毛髪の艶、はり、潤い感、なめらかさおよび櫛通り性を評価した。
【0077】
実施例6ではペプチド部分の数平均分子量が400のエンドウ豆タンパク加水分解物のN−第4級アンモニウム誘導体であるN−トリメチルアンモニオ加水分解エンドウ豆タンパクを用い、比較例11ではN−トリメチルアンモニオ加水分解エンドウ豆タンパクに代えてペプチド部分の数平均分子量が400の加水分解ケラチンのN−第4級アンモニウム誘導体であるN−トリメチルアンモニオ加水分解ケラチンを用い、比較例12ではペプチド部分の数平均分子量が400の加水分解大豆タンパクのN−第4級アンモニウム誘導体であるN−トリメチルアンモニオ加水分解大豆タンパクを用いている。
【0078】
【表12】

【0079】
酸化型染毛剤第2剤は、実施例6および比較例11〜12に共通で、表13に示す通りである。
【0080】
【表13】

【0081】
上記酸化型染毛剤による毛髪の処理は下記のように行った。すなわち、長さ15cmで重さ1gの毛束を3本用意し、それらの毛束を2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水道水の流水中でゆすいだ後、風乾した。これらの毛束に、実施例6の酸化型染毛剤第1剤と上記第2剤を同量ずつ混合した酸化型染毛剤および比較例11〜12の酸化型染毛剤第1剤と上記第2剤を同量ずつ混合した酸化型染毛剤をそれぞれ2gずつを均一に塗布した後、30分間放置し、お湯でゆすぎ、ついで2%ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、さらに水道水の流水中でゆすぎ、ヘアドライヤーで熱風乾燥した。乾燥後の毛束の艶、はり、潤い感、なめらかさおよび櫛通り性を10人のパネラーに実施例2と同様の評価基準で評価させた。その結果を表14に10人の平均値で示す。
【0082】
【表14】

【0083】
表14に示したように、N−トリメチルアンモニオ加水分解エンドウ豆タンパクを含有する実施例6の酸化型染毛剤で染毛処理した毛髪は、N−トリメチルアンモニオ加水分解ケラチンを含有する比較例11の酸化型染毛剤で染毛処理した毛髪やN−トリメチルアンモニオ加水分解大豆タンパクを含有する比較例12の酸化型染毛剤で染毛処理した毛髪に比べて、潤い感についてはN−トリメチルアンモニオ加水分解大豆タンパクを含有する比較例12とほぼ同じ評価であったが、その他の評価項目ではいずれにおいても評価値が高く、N−トリメチルアンモニオ加水分解エンドウ豆タンパクは、酸化型染毛剤に含有させた場合、毛髪に対して、加水分解ケラチンのN−第4級アンモニウム誘導体や加水分解大豆タンパクのN−第4級アンモニウム誘導体以上の優れた効果を付与することが明らかであった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】毛髪のはりの評価を行う際の毛髪のノット(結び目)を模式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドウ豆タンパク加水分解物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】
エンドウ豆タンパク加水分解物およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の含有量が0.05〜30質量%である請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
エンドウ豆タンパク加水分解物の誘導体が、エンドウ豆タンパク加水分解物のN−シリル化誘導体、エンドウ豆タンパク加水分解物のN−第4級アンモニウム誘導体およびエンドウ豆タンパク加水分解物のN−アシル化誘導体またはその塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の毛髪化粧料。


【図1】
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【公開番号】特開2007−302615(P2007−302615A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133260(P2006−133260)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000147213)株式会社成和化成 (45)
【Fターム(参考)】