説明

毛髪成長促進組成物

本明細書は、毛髪の成長を促進する組成物を開示するものであり、当該組成物は毛周期に於ける成長期の優れた誘導を示す細辛抽出物を有効成分として含有する。組成物は、優れた脱毛予防及び発毛促進効果を示すものであり、特に、5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を含む場合には、より優れた脱毛予防及び発毛促進効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱毛防止及び毛髪成長促進組成物に関する。特に、毛周期(hair growth cycle)に於ける休止期から成長期へ移行する期間を短縮させ、成長期への誘導を促進して毛髪の迅速な再生を促す細辛抽出物を、有効成分として含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
健康人の頭皮には約10万〜15万本の毛髪があるが、成長期(anagen)、退行期(catagen)及び休止期(telogen)から成るそれぞれ異なる毛周期を経て、最終的に抜け落ちるのである。このような周期は3〜6年に亘って繰り返され、ヒトは、一日当たり平均50〜100本の毛髪を失っていることになる。
【0003】
一般的に脱毛症というのは、毛周期に於ける成長期の毛髪の割合が相対的に少なく、退行期及び休止期の毛髪の割合が多くなっており、結果的に異常に毛髪を失うことになる疾患のことである。
【0004】
脱毛の主な原因として、多くの仮説が考察されてきたが、例えば、男性ホルモンの過剰分泌、皮脂の過剰な分泌、血行不良、過酸化物や細菌などに起因する頭皮の機能低下、遺伝的要因、老化、ストレスなどが挙げられる。脱毛症の正確な原因は依然として不明であるが、極めて複雑なメカニズムによるものであることは確かである。
【0005】
脱毛症の原因が複雑であるが故に、これまでに開発された製剤は、例えば、血行促進、毛根機能の強化、頭皮の保湿、フケの防止、抗酸化効果、毛周期における成長期の延長、男性ホルモンの活性を阻害するといった、望ましい効果を有する多様な有効成分を含むものであるが、これらの製剤は効能に於いては成功とは言えず、副作用の問題すら提起されている。
【0006】
脱毛防止及び毛髪成長促進のための実験的方法としては、実験動物を用いたインビボ試験並びに毛包細胞(follicle cells)及び組織培養を用いたインビトロ試験などが主に用いられている。1980年代に入って、毛包を構成している主な細胞である毛乳頭細胞(dermal papilla cell)及び外毛根鞘細胞(outer root sheath cell)の培養法の開発が進められてきたのに伴い、毛包に於ける分化メカニズムに関する多くの研究が活発になされており、これまで開発されてきた毛包組織の培養法が、毛髪の成長及び脱毛防止の研究に利用される可能性が広がった。近年、生化学及び分子生物学的実験による毛髪成長に関連する各種成長因子や遺伝子の単離、毛髪成長のメカニズムや薬剤スクリーニングに関する研究が積極的に進められている。しかしながら、毛包組織細胞間の相互作用、毛包組織と毛包組織を取り囲む皮下組織間の相互作用及び血液循環といった毛髪の成長に直接的又は間接的に影響する因子を顧みないインビトロの培養技術はその適用性に限界がある。従って、各種生化学的評価を通じて探索された多くの薬物の実際の効果を検証するために、実験動物を用いた効果の評価及び臨床試験などが主に用いられているのが実情である。
【0007】
毛髪成長促進剤又は脱毛予防剤として市販されている製品には、成長期を誘導する、毛周期における成長期を延長する、5α−リダクターゼ活性を阻害する、血行を促進する、殺菌効果、フケを防止する、保湿効果、抗酸化効果等の効果はあるが、脱毛の防止及び毛髪の成長促進には十分なものとは言えない。これは脱毛症の原因が極めて複雑で難解なものであるためである。従来の製品は、脱毛又は発毛の2〜3の要因にのみに焦点を当てて開発されてきており、複雑且つ難解なメカニズムに基づいた調製は、実際のところ、未だ開発されていない。
【0008】
男性型脱毛症は男性ホルモン依存性で男性ホルモンの量と直接的な関係があるため、男性ホルモンの活性を阻害することにより脱毛を予防及び治療する、多くの研究が報告されている。脱毛症に於ける男性ホルモンの機序を以下に簡単に説明する。男性ホロモンの一つであるテストステロン(testosterone)は5α−リダクターゼという酵素により活性型の男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone)に転換され、受容体と結合して脱毛を引き起こすタンパク質を誘導し、結果的に脱毛症が発症する。また、このような機序により皮脂の生成が過剰になることもあって、ニキビや脂漏性皮膚炎などを引き起こす場合があるが、結果的に頭皮の炎症を伴った脱毛症を引き起こすことになる。即ち、男性型脱毛症は5α−リダクターゼの作用によるジヒドロテストステロンの生成が過剰になることに起因するものであるので、5α−リダクターゼの活性を抑制すれば男性型脱毛症を根本的且つ効果的に予防及び治療することができると言える。このような観点から、男性の前立腺治療剤として使用されてきたフィナステライド(finasteride)という成分を用いた男性型脱毛症の治療剤が開発されたこともあるが、性機能障害などの副作用が報告されているし、また、5α−リダクターゼ活性のみを阻害するだけでは、脱毛症の治療に十分な効果をあげることはできないのである。
【0009】
以上のような問題点を考慮して、本発明者らは毛周期に於ける成長期の誘導を促進する作用を確認するために動物実験を通じて数十種の植物抽出物をスクリーニングし、細辛抽出物が毛周期に於ける成長期誘導を促進する効果に優れていることを発見した。具体的には、本発明者らは脱毛症に対する脱毛防止及び毛髪成長促進の効果を有すると同時に、毒性がなく、人体への安全性も確保しながら数十種の植物抽出物を選択して毛周期の成長期誘導促進効果を評価する研究を行なったところ、ついに、細辛抽出物が休止期から成長期に移行する期間を短縮させ毛周期に於いて優れた成長期誘導をもたらすことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
細辛抽出物を毛髪関連製品に用いた例が、韓国特許出願第2001−0003366号公報に開示されている。当該特許文献には、有蔓荊子、川きゅう、白し、零陵香に添加される胡麻油に溶解させた細辛抽出物が示されているが、技術的課題の解決にはおぼつかず、また、本発明のものとはその作用機序に於いて極めて異なるものである。また、日本国特許出願平10−265347号公報は、毛周期の成長期を延長させるための細辛抽出物の使用について言及しているが、本発明に開示されている細辛抽出物の毛周期に於ける成長期誘導効果とは、その機序に於いて関連性がない。更に、本発明に開示される細辛抽出物と他の有効成分との組み合わせは、より一層優れた脱毛予防及び発毛促進効果をもたらすものである。
【0011】
脱毛症の原因は、非常に複雑で難解であるとういう事実に基づき、本発明者らは、それぞれの原因に効果的な有効成分の最適な組み合わせから、脱毛予防及び発毛促進の組成物を開発するため研究に真摯に取り組み、その結果、5α−リダクターゼ活性を阻害し、毛包細胞を活性化させる成分である細辛抽出物を有効成分として含有する、副作用のない優れた脱毛予防及び発毛促進効果をもたらす組成物を見出したのである。
【0012】
一方、毛包細胞の活性効果を介しての毛周期に於ける成長期の維持及び延長に関する多くの報告があるが、成長期を延長する効果のみでは、発毛促進又は脱毛予防に十分な効果を発揮することはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記問題点を考慮してなされ、発毛の促進及び脱毛の予防に有効であると考えられる成長期の誘導、5α−リダクターゼ活性の阻害及び毛包細胞の活性化といった観点から、脱毛の予防及び発毛の促進に有効で、脱毛症に於ける多くの難解な機序に複合的な作用を及ぼすことができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記、本発明の目的を達成するために、細辛抽出物を有効成分として含む脱毛防止及び毛髪成長促進組成物を提供する。
【0015】
細辛抽出物は、細辛を低級アルコール、n-へキサン又はそれらの混合液で抽出して得ることができるが、本発明の組成物の総量に対して、固形成分で0.01〜10重量%であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の組成物は5α−リダクターゼ活性抑制成分及び毛包細胞活性化作用を有する成分をそれぞれ更に一種以上含むことができ、これらの含量はそれぞれ0.001〜10重量%であることが望ましい。
本発明の組成物は必要に応じて、5α−リダクターゼ活性を阻害する成分(以下、「5α−リダクターゼ活性阻害成分」と称する)及び毛包細胞を活性化する成分(以下、「毛包細胞活性化成分」と称する)から選択されるもののうち少なくとも一つを更に含有する。5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分の各々は、組成物の総量に対して0.001〜10重量%存在するのが好ましい。
【0017】
毛髪の成長を促進する本発明の組成物は、細辛抽出物が毛周期に於ける成長期を誘導し、並びに5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞促進剤が脱毛防止及び毛髪成長促進効果を相乗的に増加させるといった、明確な作用機序を持って毛髪成長促進効果を示す点に於いて従来の技術と比較して遥かに進歩性を有するものである。
【0018】
(発明の詳細な説明)
本発明の組成物を以下により詳細に説明する。
【0019】
本発明の背景を鑑みれば、本発明者らは、毒性がなく人体への安全性も確保しつつ、脱毛防止及び毛髪成長促進の効果を有する数十種の植物抽出物を選択し、毛周期に於ける成長期の誘導について評価する研究を行なったところ、細辛抽出物が毛髪成長期の誘導を促進する効果に極めて優れていること見出し本発明を完成した。脱毛予防及び発毛促進効果を更に向上させるためには、脱毛症の原因のメカニズムについての多角的な研究、及びそれぞれのメカニズムに対して効果を有する有効成分の最適な組み合わせの再検討が必要とされる。このため、先ず、人体への安全性が確認された成分のうち男性ホルモンの活性を調節する成分、血液循環を促進する成分、細胞の活性を促進する成分、抗炎症活性を有する成分などを選択し、優れた脱毛防止及び発毛促進効果を有する最適な組み合わせを探索すべくこれらの成分の組合せを検討した。その結果、本発明者らは、細辛抽出物、5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化剤を有効成分として含む優れた脱毛防止及び発毛促進効果を示す組成物を見出した。本発明者らは更に、これら有効成分の最適な組み合わせを見出し本発明を完成するに至った。
【0020】
従って、本発明は、発毛の促進及び脱毛の予防に有効な作用があるとされる成長期の誘導、毛包細胞の活性化及び5α−リダクターゼ活性の阻害といった観点から、脱毛症の多様な原因に複合的な作用機序をもたらし、優れた脱毛予防及び発毛促進効果を有する組成物を提供するものである。
【0021】
本発明の組成物の原材料として用いられる細辛(Asiasari Radix)は、ウマノスズクサ科(Aristolochiaceae)に属するウスバサイシン(Asiasarum sieboldi)及びオクエゾサイシン(Asiasarum heterotropoides)の地上部を除いた根茎及び地下茎から調製した生薬である。細辛は、不均一に湾曲した紐状であって、直径3〜5mmの黄褐色の節のある根茎に長さ5〜20mm、直径1mm内外の根が多く付いており、根の縦方向に淡褐色の浅い溝を成している。根茎の上部には葉柄、花柄又は芽があり、根及び地下茎は裂けやすく、割れ目は黄白色である。細辛には、特有の臭みがあり、味は辛くて刺激性のものである。細辛の主成分はメチルオイゲノール(methyleugenol 夏枯草カゲソウ)、キネオール(cineol)、サフロール(safrol)、l−asarinを含有し、オクエゾサイシン(Asiasarum heterotropoides)は、l−芝麻素(l-sesamin)、kakuol、asariein、saishinone、オイカルボン(eucarvone)及びその他の同属の生薬成分を含有する。
【0022】
本発明の組成物に含まれる細辛抽出物を調製するために、まず、根茎及び地下茎を洗浄し、細かく挽き、細辛の約10倍量の抽出溶媒中に5日間冷浸した後、抽出原液を濾過、濃縮及び凍結乾燥して細辛抽出物を乾燥粉末として得る。本明細書で用いられる溶媒は、精製水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどの低級アルコール;グリセロール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール;及び酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼン、n-へキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタンなどの炭化水素系溶媒などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら溶媒の中でも、メタノール、エタノール、n-ブタノールなどの低級アルコール及びn-へキサンなどが好ましい。これらの溶媒は、単独又は併用で使用することができる。
【0023】
このようにして得られた細辛抽出物は、本発明の組成物の総量に対して、(固形成分で)0.01〜10重量%存在するのが好ましい。細辛抽出物の含有量が0.01重量%未満では、毛周期の成長期の誘導は十分とはいえず、一方、細辛抽出物の含有量が10重量%を越えても、過量の細辛抽出物が成長期の誘導に更なる改善をもたらすものではない。
【0024】
本発明の組成物は細辛抽出物に加えて、男性型脱毛症と密接な関係があると知られている5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を有効成分として更に含有しており、それにより、本発明の組成物はより優れた脱毛予防及び発毛促進効果を示すのである。
【0025】
本発明の組成物に含まれる5α−リダクターゼ活性阻害成分は、ヒト毛包細胞に於いて5α−リダクターゼの作用を抑制し脱毛防止効果を示す外用薬の配合成分であって、ヒトに対する安全性に於いて問題がない限り、単独又は併用で用いることができる。このような5α−リダクターゼ活性阻害成分としては、例えば苦蔘抽出物、ヨクイニン抽出物、丁香抽出物、浮萍草抽出物、白樺抽出物、五倍子抽出物、羌活抽出物、藁本抽出物、大黄抽出物、桃仁抽出物、白きょう蚕抽出物、白きゅう抽出物、檳榔子抽出物、蘇葉抽出物、欝金抽出物、芍薬抽出物、赤芍薬抽出物、そう角子抽出物、阿仙薬抽出物、茴香抽出物、遠志抽出物、荊芥抽出物、牽牛子抽出物、車前子抽出物、苦錬抽出物などのような植物由来の生薬成分を使用することができる。上記の生薬は一般に、大韓薬典または生薬規格集などの公定書に収載されており、市販されている。これら生薬の抽出物は、通常の溶媒抽出方法により得たもので、抽出溶媒の選択に関しては、特に制限はない。5α−リダクターゼ活性阻害成分の量は、本発明の組成物の総量に対して0.001〜10.0重量%、より好ましくは0.01〜5.0重量%である。
【0026】
本発明の組成物に含まれる毛包細胞活性化成分は、ヒト毛包細胞を活性化させる外用薬の配合成分であり、脱毛予防及び発毛促進効果を示すものである。一つ又はそれ以上の成分は、ヒトに対して安全面で問題がない限り、毛包細胞活性化成分として単独又は併用で使用することができる。毛包細胞活性化成分の具体例としては、ヒノキチオール、ニコチン酸アミド、ビタミンB6類、セファランチン、ビオチン、パントテン酸が挙げられ、それらは単独又は併用で使用することができる。毛包細胞活性化剤の含有量は、好ましくは、本発明の組成物の総量に対して0.001〜10.0重量%、より好ましくは0.01〜5.0重量%である。
【0027】
すなわち、本発明の組成物は、有効成分として毛周期の成長期を優位に誘導する細辛抽出物、5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を含有する。5α−リダクターゼ活性阻害成分の好ましい例としては、苦蔘抽出物、ヨクイニン抽出物、丁香抽出物が挙げられる。毛包細胞活性化成分の好ましい例としては、ヒノキチオール、ニコチン酸アミドが挙げられる。特に、細辛抽出物を固形分として0.01〜10%、5α−リダクターゼ活性阻害成分を固形分として0.001〜10%、そして毛包細胞活性化成分を0.001〜10%含むのが好ましい。
【0028】
脱毛予防及び発毛促進効果に於いて、異なるメカニズムを有するこれらの有効成分が単独で使用された場合は、その効果は十分なものとはいえないが、細辛抽出物、5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を共に含有する組成物は、脱毛予防及び毛髪の成長促進作用に優れた効果を示す。本発明の好ましい一態様に於いて、動物実験及び脱毛症の患者での臨床試験から、当該組成物が脱毛予防及び発毛促進作用に優れた効果を示すことが確認された。
【0029】
有効成分の機能を高めるため、また、患者への使用に適応できるよう、組成物に付加的機能を与えるために、フケ防止剤、深部洗浄剤(deep cleansing agents)、清涼剤及び保湿剤より選択される少なくとも一つの補助成分を本発明の組成物に加えてもよい。この場合、当該組成物は脱毛予防及び発毛促進効果により良い効果を示す。フケ防止剤、深部洗浄剤、清涼剤、保湿剤等の補助成分としては、例えば、トウガラシチンキ、酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ピロクトンオラミン、サリチル酸、l−メントール等が挙げられる。有効成分の本来の効果を妨げず、製剤(formulation)の安定性を保持できれば助剤の量に特に制限はない。人体への安全性及び製剤の安定性を考慮すると、トウガラシチンキ及び酢酸トコフェロールの量は、0.001〜10重量%、ニコチン酸ベンジルは0.001〜0.1重量%、ピロクトンオラミンは、0.001〜1重量%、サリチル酸及びl−メントールは0.01〜1重量%の範囲内が好ましい。
【0030】
本発明の組成物は、脱毛症の頭皮に適用できる、例えば、液状、クリーム状、ペースト状又は固状の一般的な剤形に製剤することがでる。本発明の組成物に通常の添加剤を加えることにより、毛髪の成長を促進するシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアローション、液体養毛剤等の種々の毛髪関連製品に適用可能である。毛髪関連製品には上述の製剤のエアロゾルも含まれる。
【0031】
発明を実施するための最良の形態
以下、好ましい実施例により本発明をさらに詳述する。但し、これらの実施例は本発明を説明するためのものであり、何ら本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
下記試験例に於いて、毛周期の成長期誘導を評価するために、モデル動物としてC57BL/6マウスを使用した。自然脱毛症のC57BL/6マウスは黒い体毛を有しており、C57BL/6マウスのメラニン細胞はメラニンの合成が毛周期と一致する毛包にのみ顕著に示される。C57BL/6マウスにおける毛周期は、皮膚の色の変化を視覚的に観察することによって見極められることから、C57BL/6マウスは毛周期の成長期誘導の研究にモデル動物として広く用いられている。
【0033】
製造例:細辛抽出物の調製
【0034】
細辛抽出物は、次の手順により調製された。
【0035】
先ず、細辛を細かく砕きふるい(10号)にかけ、エタノール(韓国薬局方)約5000mlを加え、その溶液を5日間室温で冷浸した。抽出物をワットマン#2濾紙で濾過し、濾物を減圧濃縮器(rotay evaporator)を用いて減圧下に、45℃で濃縮乾燥し細辛抽出物約20gを得た(収率:約4%)。
【0036】
試験例1:細辛抽出物に於ける成長期誘導効果の評価
【0037】
細辛抽出物の毛周期に於ける成長期誘導効果を評価するために、マウス(C57BL/6、生後42〜56日のオス)を使用した。C67BL/6マウスは毛周期の成長期誘導の研究に広く使用されている動物である。
【0038】
まず、マウスの背中の毛を電気剃刀を用いて除去し、各マウスの体重を計って体重が均一に分散されるように12匹ずつ分けた。環境に適応させる期間を一日設けて、除毛部位に対照の薬剤及び試験薬(細辛抽出物)を塗布した。この際、対照の薬剤として35%エタノールを、試験薬として製造例で得られた細辛抽出物の固形物を35%エタノールで種々の濃度に稀釈して使用した。それぞれのマウス背中に1日1回、100μlずつ30日間塗布して毛周期に於ける成長期誘導を観察した。それぞれのマウスにおける成長期誘導は、毛を除去した面積に対して新生毛が育った面積の比率を求め、その平均値で評価した。様々な濃度に於ける細辛抽出物の成長期誘導効果を評価した。その結果を下記表1で示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示されるように、細辛抽出物は、濃度依存性で毛周期に於ける極めて優れた成長期誘導を示した。試験薬は0.01%未満の濃度では対照薬より優れた成長期誘導を示したが満足すべき水準ではなく、10%より高い濃度では、過剰の細辛抽出物による成長期誘導には著しい改善は見られなかった。
【0041】
実施例1〜8及び比較例1〜6
【0042】
細辛抽出物及び有効成分として苦蔘抽出物、ヨクイニン抽出物、丁香抽出物、ヒノキチオール及びニコチン酸アミドから選択される少なくとも一つ以上の成分を含有する組成物を下記表2の処方により調製した。
【0043】
【表2】

【0044】
試験例2:動物実験による成長期誘導の評価
【0045】
まず、実施例1〜8及び比較例1〜6で調製された組成物の毛周期に於ける成長期誘導効果を、試験例1(成長期誘導効果の評価)と同様な方法で評価した。製造例で得られた濃縮固形抽出物を用いて表2に示される組成物を調製した。表3は、実施例1〜8及び比較例1〜6の組成物の毛周期に於ける成長期の誘導効果の評価結果を示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表3に示されるように、比較例1〜6の5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を含有する組成物は、発毛促進効果を示したが、その効果は満足すべき水準ではなかった。細辛抽出物及び苦蔘抽出物又はヨクイニン抽出物(実施例2及び3)を含有する組成物並びに細辛抽出物及びヒノキチオール又はニコチン酸アミド(実施例4及び5)を含有する組成物は、これらの有効成分の一つを含有する組成物よりも更に優れた発毛促進効果を示した。細辛抽出物、苦蔘抽出物及びヒノキチオール3種を全てを含有する実施例7及び8の組成物は、それぞれの有効成分の一つ又は二つを含有する組成物に較べて極めて優れた発毛促進効果を示した。
【0048】
このような結果は、細辛抽出物による成長期誘導、5α−リダクターゼ活性の阻害及び毛包細胞の活性化の組み合わせは、発毛促進に驚くべき相乗効果を発揮するということを示した。
【0049】
以上の実験結果から分かるように、細辛抽出物、苦蔘抽出物及びヒノキチオールは、それぞれ毛周期の成長期誘導、5α−リダクターゼ活性の阻害及び毛包細胞の活性化により極めて優れた発毛促進効果を示した。それらの全ては脱毛予防及び発毛促進効果に関連するものである。加えて、それぞれの有効成分は、他の有効成分に影響することなく特有の活性作用を示した。従って、細辛抽出物、苦蔘抽出物及びヒノキチオールを適切な割合での組合わせることにより多様で複雑なメカニズムが絡む脱毛症に複合的に作用するので、有効成分のうちの何れか一つを単独で用いるよりも本発明の組み合わせにより、より優れた脱毛防止及び発毛促進効果がもたらされるものと期待される。
【0050】
次いで、有効成分としての細辛抽出物、5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を含有する組成物を補助成分と共に用いて液体ヘアートニック(養毛剤)を調製した。脱毛症の患者に液体ヘアートニックを使用して臨床試験を行った。
【0051】
試験例3:細辛抽出物、苦蔘抽出物及びヒノキチオールを含有した組成物の臨床評価
【0052】
細辛抽出物、苦蔘抽出物、ヒノキチオール及びその他の補助成分を使用し、脱毛症患者に於ける組成物の効果を確認するために臨床試験を行った。
【0053】
臨床試験では、細辛抽出物、苦蔘抽出物及びヒノキチオールを含有する実施例7の組成物、細辛抽出物、苦蔘抽出物、ヒノキチオール及び他の補助成分を含有する実施例8の組成物、並びに有効成分を含有していない比較例6の組成物を使用して脱毛予防及び発毛促進効果を評価した。
【0054】
男性型脱毛症の患者15名(20〜50才までの成人男女)及び一日平均脱毛数が100本以上の患者15名(20〜50才までの成人男女)を対象にして、組成物を脱毛部位に1日2〜3滴(約2ml)を滴下する方式で実施し、効果の程度によって最短1ヶ月から最長4ヶ月間実施した。
【0055】
評価は、洗髪により一日に何本の毛髪が抜けるかを数えること、また、目視により行った。結果を次の5段階(表4)に分類、スコア化した。効果の最終的な評価をスコアの平均値で示した。平均値が3.0又はそれより高ければ、有効と判定した。結果を表5に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
表5からわかるように、比較例6の組成物は若干の改善効果を示すものの、その有効性は十分でなく、全ての有効成分を含有する実施例7の組成物は、軽度又はそれ以上の改善を示し、更に他の補助的成分を含有する実施例8の組成物は、平均的な又はそれ以上の改善を示した。従って、実施例7及び8の組成物は、脱毛予防及び発毛促進効果に極めて優れいることが確認された。更に臨床試験中、試験患者には副作用も観察されず、本発明の組成物は安全であることが証明された。
【0059】
結果として、細辛抽出物は、毛周期に於ける成長期の誘導に優れた効果を有することが動物実験を通して見出された。また、細辛抽出物、5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を共に含む組成物は、有効成分のうちのいずれか一つを単独で用いるよりも、より優れた発毛促進効果示めすことも見出された。更に、三つの有効成分を含有する組成物は、動物実験及び脱毛症患者における臨床試験を通して、極めて優れた脱毛予防及び発毛促進効果を示すことが確認された。従って、これらの有効成分は適切な割合で組み合わせれば多様で難解な脱毛症のメカニズムに複合的な作用を及ぼすので、これらの有効成分のうちのいずれか一つを単独で用いるよりも、本発明の組成物は脱毛防止及び発毛促進効果により優れた効果を示めすことが期待できる。
【0060】
産業上の利用性
上述からも明らかなように、本発明は、発毛促進の有効成分として、毛周期に於ける成長期の優れた誘導を示す細辛抽出物を含有する組成物を提供するものである。本発明の組成物は、毒性がなく、脱毛予防及び発毛促進に優れた効果を有するものである。特に、組成物が、5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を更に含有すると、極めて安全でより優れた脱毛予防及び発毛促進効果を示す。
【0061】
本発明の好ましい態様は、説明の目的で本明細書に開示されているが、添付の特許請求の範囲に開示された当該発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な修正、追加及び置換が可能であることは当業者には認識されるところである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細辛抽出物を有効成分として含む脱毛防止及び毛髪成長促進組成物。
【請求項2】
組成物の総量に対して0.01〜10重量%の前記細辛抽出物を固形成分として含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
低級アルコール、n-へキサン又はそれらの混合溶媒で細辛を抽出して細辛抽出物を得る、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
更に、5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分から選択される少なくとも一つの成分を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
5α−リダクターゼ活性阻害成分が、苦蔘抽出物、ヨクイニン抽出物及び丁香抽出物の少なくとも一つから選択され、毛包細胞活性化成分が、ヒノキチオール及びニコチン酸アミドの少なくとも一つから選択されるものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
5α−リダクターゼ活性阻害成分及び毛包細胞活性化成分を組成物の0.001〜10重量%含有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
更に、トウガラシチンキ、酢酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ピロクトンオラミン、サリチル酸及びl−メントールの少なくとも一つから選択されるものを含有して成る、請求項1又は4に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物を含有して成る、経皮吸収型の局所投与製剤。

【公表番号】特表2007−529506(P2007−529506A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503810(P2007−503810)
【出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000561
【国際公開番号】WO2005/087184
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502178883)エル・ジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミティッド (6)
【Fターム(参考)】