説明

毛髪用化粧料

【課題】透明な状態の経時安定性に優れ、かつ毛髪に良好なやわらかさを付与し得る毛髪用化粧料の提供。
【解決手段】少なくとも、(a)成分:非イオン性界面活性剤、(b)成分:ラノリン脂肪酸残基を含む特定なカチオン性界面活性剤、(c)成分:(b)成分以外のカチオン性界面活性剤、(d)成分:植物油、ロウ、炭化水素、エステル油および脂肪酸よりなる群から選択される少なくとも1種の油性成分、(e)成分:2〜4価のアルコール、および(f)成分:水が配合されており、上記(a)成分、上記(b)成分および上記(c)成分の配合量の合計をX(質量%)とし、上記(d)成分の配合量をY(質量%)としたとき、X:Y=20:1〜5:1である毛髪用化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な状態の経時安定性に優れ、かつ毛髪に良好なやわらかさを付与し得る毛髪用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪用化粧料を始めとする各種化粧料においては、その製品外観が良好であることが求められる場合が多く、例えば製品容器にデザインを施すなど、その形態や色彩などが多岐にわたっている。こうした中で、化粧料製品に透明(無色透明や有色透明)であることが求められることもある。
【0003】
水を媒体とし、各種油性成分を有効成分として含む化粧料においては、透明性を確保するために、可溶化溶液とすることが知られている。例えば、特許文献1には、多量の低級アルコールと、特定構造の可溶化剤とを配合した可溶化型化粧料が提案されている。また、特許文献2には、アルキル変性カルボキシビニルポリマーおよびヒドロキシアルキル化シクロデキストリンを配合して、水に難溶性の成分を可溶化した可溶化化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−56323号公報
【特許文献2】特開平10−194922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の技術を毛髪用化粧料に適用すると、例えば、染毛処理を施した毛髪に上記毛髪用化粧料を塗布した場合、多量の低級アルコールの作用によって退色が生じる虞がある。また、毛髪用化粧料に求められる機能の一つとして、例えば、毛髪にやわらかさを付与することが挙げられるが、特許文献2に記載の技術では、毛髪にやわらかさを付与し得るような油性成分を多量に配合した場合に、透明状態が長期にわたって維持し得ない虞がある。
【0006】
このようなことから、毛髪にやわらかさを付与し得る油性成分の配合量を高めつつ、透明状態が比較的長期にわたって維持される毛髪用化粧料の開発が求められる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明な状態の経時安定性に優れ、かつ毛髪に良好なやわらかさを付与し得る毛髪用化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成し得た本発明の毛髪用化粧料は、少なくとも、(a)成分:非イオン性界面活性剤、(b)成分:下記一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤、
【化1】

[上記一般式(1)中、Rはラノリン脂肪酸残基である。]
(c)成分:(b)成分以外のカチオン性界面活性剤、(d)成分:植物油、ロウ、炭化水素、エステル油および脂肪酸よりなる群から選択される少なくとも1種の油性成分、(e)成分:2〜4価のアルコール、および(f)成分:水が配合されており、上記(a)成分、上記(b)成分および上記(c)成分の配合量の合計をX(質量%)とし、上記(d)成分の配合量をY(質量%)としたとき、X:Y=20:1〜5:1であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の毛髪用化粧料は、上記の組成とすることで透明な溶液とすることができ、上記(d)成分の配合量を高めて毛髪用化粧料に良好なやわらかさ付与機能を持たせても、透明な状態の経時安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明な状態の経時安定性に優れ、かつ毛髪に良好なやわらかさを付与し得る毛髪用化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の毛髪用化粧料に係る(a)成分である非イオン性界面活性剤[以下、単に「(a)成分」という場合がある。]としては、例えば、水添レシチン、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレン還元ラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ラノリン誘導体(ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレン還元ラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール)が好ましい。ラノリン誘導体は、後記の(b)成分との相性がよく、これらを使用することで、毛髪用化粧料の透明状態の経時安定性をより高めることができる。これは、毛髪用化粧料の可溶化状態をより良好に維持できるためであると考えられる。
【0012】
また、非イオン性界面活性剤には、上記例示のものの中から、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値の異なる複数のものを選択して使用することが好ましく、これにより、毛髪用化粧料における透明状態の経時安定性が更に向上する。具体的には、例えば、HLB値が3以上15未満の非イオン性界面活性剤と、HLB値が15以上20以下の非イオン性界面活性剤とを併用することがより好ましい。また、HLB値が3以上15未満の非イオン性界面活性剤と、HLB値が15以上20以下の非イオン性界面活性剤とを併用する場合、これらの好適配合比率は、例えば、後記の(d)成分の種類や配合量によって異なるが、HLB値が15以上20以下の非イオン性界面活性剤の配合量(質量基準)が、HLB値が3以上15未満の非イオン性界面活性剤の配合量よりも多い方が、毛髪用化粧料の透明状態の経時安定性をより高め得る点で好ましい。なお、各非イオン性界面活性剤のHLB値は、通常、これらを提供しているメーカーから提示されているため、かかる値に基づいて好適なHLB値のものを選択すればよい。
【0013】
毛髪用化粧料における(a)成分の配合量は、その使用による効果をより良好に確保する観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。ただし、(a)成分量が多すぎると、毛髪の感触が硬くなる傾向があることから、毛髪用化粧料における(a)成分の配合量は、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0014】
本発明の毛髪用化粧料に係る(b)成分は、上記一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤である[以下、単に「(b)成分」という場合がある。]。(b)成分の具体例としては、例えば、日本精化社製の「カチオンNH(商品名)」、クローダジャパン社製の「インクロクアット ベヘニル 18−MEA(商品名)」などが挙げられる。
【0015】
毛髪用化粧料における(b)成分の配合量は、その使用による効果をより良好に確保する観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。ただし、(b)成分量が多すぎると、毛髪のまとまりが低下する傾向があることから、毛髪用化粧料における(b)成分の配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明の毛髪用化粧料に係る(c)成分である(b)成分以外のカチオン性界面活性剤[以下、単に「(c)成分」という場合がある。]としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムなど)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム(臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ベヘニルトリメチルアンモニウムなど)などのハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム;塩化ジアルキルジメチルアンモニウム[塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジヤシ油アルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(C12−18)ジメチルアンモニウム(アルキルの後の括弧内の数値は、アルキル基の炭素数を意味している)]などのハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム;セチルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェートなどのアルキルトリメチルアンモニウムメトサルフェート;などが挙げられる。
【0017】
毛髪用化粧料における(c)成分の配合量は、その使用による効果をより良好に確保する観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。ただし、(c)成分量が多すぎると、本発明により奏される効果が小さくなる虞があることから、毛髪用化粧料における(c)成分の配合量は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0018】
本発明の毛髪用化粧料に係る(d)成分は、植物油、ロウ、炭化水素、エステル油および脂肪酸よりなる群から選択される少なくとも1種の油性成分であり[以下、単に「(d)成分」という場合がある。]、毛髪にやわらかさを付与する作用を有するものである。これらの中でも、毛髪にやわらかさを付与する作用がより良好であることから、植物油、ロウまたは脂肪酸が好ましい。
【0019】
また、(d)成分は、不揮発性の油性成分および常温(25℃)で固体の油性成分であることが好ましい。このような油性成分は、毛髪にやわらかさを付与する作用が良好である。なお、不揮発性の油性成分や常温で固体の油性成分は、媒体である水中に微分散させ難く、透明な毛髪用化粧料を構成することが困難であるが、本発明であれば、このような油性成分を使用して高いやわらかさ付与機能を確保しつつ、透明性の良好な毛髪用化粧料とすることができる。
【0020】
(d)成分のうち、植物油の具体例としては、例えば、メドウフォーム油、マカダミアナッツ油、アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーム油、ヒマシ油、グレープシード油、ヤシ油、硬化油などが挙げられる。また、ロウの具体例としては、例えば、オレンジラフィー油、ホホバ油、カルナウバロウ、コメヌカロウ、ラノリン、セラックなどが挙げられる。炭化水素としては、例えば、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリンなどが挙げられる。
【0021】
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸イソステアリル、オレイン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸ヘキシル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、コハク酸ジオクチル、イソステアリン酸フィトステリル、ラノリン脂肪酸コレステリルなどが挙げられる。脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、ラノリン酸(ラノリン脂肪酸)などが挙げられる。
【0022】
上記の各種油性成分は、毛髪用化粧料の用途に応じて適宜選択すればよいが、毛髪へのやわらかさ付与作用を重視すると、かかる作用がより強い点でラノリンが好ましく、また、ラノリンを使用する場合には、毛髪のやわらかさをより高め得る点で、脂肪酸(ラノリン脂肪酸など)や、植物油(メドウフォーム油、マカダミアナッツ油など)、ラノリン以外のロウ(オレンジラフィー油、ホホバ油など)なども共に使用することがより好ましい。
【0023】
毛髪用化粧料における(d)成分の配合量は、その使用による効果をより良好に確保する観点から、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。ただし、(d)成分量が多すぎると、毛髪の感触が重くなる傾向があり、また、本発明により奏される効果が小さくなる虞があることから、毛髪用化粧料における(d)成分の配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
また、本発明の毛髪用化粧料では、(a)成分、(b)成分および(c)成分の配合量の合計をX(質量%)とし、(d)成分の配合量をY(質量%)としたとき、X:Y=20:1〜5:1とする。(a)成分、(b)成分および(c)成分の配合量の合計と、(d)成分の配合量とを上記の比率とすることで、透明性(無色透明または有色透明)が良好であり、しかも、その透明状態の経時安定性の高い毛髪用化粧料とすることができる。なお、上記Xと上記Yとの比率は、X:Y=10:1〜6:1であることが好ましく、この場合には、毛髪用化粧料の透明状態の経時安定性および毛髪の感触がより良好となる。
【0025】
本発明の毛髪用化粧料における(e)成分である2〜4価のアルコール[以下、単に「(e)成分」という場合がある。]も、毛髪用化粧料の透明状態の経時安定性の向上に寄与する成分である。(e)成分の具体例としては、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、分子量が1000以下のポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0026】
毛髪用化粧料における(e)成分の配合量は、その使用による効果をより良好に確保する観点から、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。ただし、(e)成分量が多すぎると、毛髪の感触が軽くなる傾向があることから、毛髪用化粧料における(e)成分の配合量は、6質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明の毛髪用化粧料には、媒体として、(f)成分である水を使用する。なお、毛髪用化粧料に配合される各種成分は、媒体である水に溶解していてもよく、分散していてもよい。毛髪用化粧料における水の好適配合量は、毛髪用化粧料の用途に応じて変動するが、通常、60〜99質量%である。
【0028】
本発明の毛髪用化粧料は、パーマネントウェーブ用剤などの毛髪変形剤、ヘアトリートメント、毛髪変形処理の前処理剤や後処理剤、整髪料などの各種毛髪用途に使用でき、それぞれの用途に応じて必要とされる各種成分を、本発明の効果を損なわない範囲で更に配合することができる。また、本発明の毛髪用化粧料は、毛髪に塗布後、洗い流して使用する用途にも、洗い流さずに使用する用途にも用いることができる。
【0029】
例えば、本発明の毛髪用化粧料を、2剤式のパーマネントウェーブ用剤の第1剤に使用する場合には、還元剤、アルカリ剤、反応調整剤、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、紫外線吸収剤、低級アルコール、シリコーン、香料などを更に配合することができる。
【0030】
還元剤としては、例えば、チオグリコール酸やその誘導体およびそれらの塩(アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩など)、システインやその誘導体およびそれらの塩(塩酸塩など)、システアミン、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、2−メルカプト−4−ブタノリドなど、メルカプト基を有する種々の還元剤が挙げられる。第1剤における還元剤の配合量は、チオグリコール酸換算値で、例えば、1〜20質量%とすることが好ましい。なお、ここでいう第1剤における還元剤の配合量に係る「チオグリコール酸換算値」は、パーマネント・ウェーブ工業組合から発行されている「パーマネント・ウェーブ用剤製造(輸入)承認基準」の「[別添]パーマネント・ウェーブ用剤品質規格」の「1.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とするコールド二溶式パーマネント・ウェーブ溶剤」における「(1)第1剤」に記載の「(ウ)酸性煮沸後の還元性物質」に定められている手法によって求められる「酸性煮沸後の還元性物質の含有率(チオグリコール酸として)(%)」である。
【0031】
アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、アミン類、中性塩タイプのアルカリ剤、塩基性アミノ酸などが挙げられる。アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどが挙げられる。また、中性塩タイプのアルカリ剤としては、例えば、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素アンモニウムなどが挙げられる。塩基性アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リシンが挙げられる。第1剤におけるアルカリ剤の配合量は、例えば、0.01〜20質量%であることが好ましい。
【0032】
反応調整剤としては、例えば、ジチオジグリコール酸類[ジチオジグリコール酸や、ジチオジグリコール酸の塩(ジアンモニウム塩、ジモノエタノールアミン塩、ジトリエタノールアミン塩など)]などが挙げられる。第1剤における反応調整剤の配合量は、例えば、0.1〜4質量%であることが好ましい。
【0033】
キレート剤としては、例えば、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、クエン酸、酒石酸、サリチル酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムなどが挙げられる。抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、カルベノキソロン二ナトリウムなどが挙げられる。防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、フェノキシエタノール、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノンなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸などが挙げられる。
【0034】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が6以下のアルコールが挙げられる。なお、毛髪用化粧料に低級アルコールを配合する場合には、頭皮への刺激を抑えたり、染毛処理を施した毛髪に適用した場合に、退色を抑制する観点から、媒体である水との合計100質量部中、5質量部以下とすることが好ましい(パーマネントウェーブ用第1剤以外の用途に使用する場合についても同様である。)。
【0035】
また、本発明の毛髪用化粧料をパーマネントウェーブ用剤の第2剤に使用する場合には、酸化剤、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、低級アルコール、シリコーン、香料などを配合することができる。これらのうち、キレート剤、抗炎症剤、防腐剤、紫外線吸収剤および低級アルコールについては、毛髪用化粧料をパーマネントウェーブ用剤の第1剤に使用する場合に配合可能なものとして先に例示した各種材料と同じものを使用することができる。
【0036】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、臭素酸ナトリウムなどが挙げられる。第2剤における酸化剤の配合量は、過酸化水素の場合には、例えば、1〜2.5質量%であることが好ましく、また、臭素酸ナトリウムの場合には、例えば、5〜15質量%以上であることが好ましい。
【0037】
pH調整剤としては、例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウムなどが挙げられる。
【0038】
なお、本発明の毛髪用化粧料をパーマネントウェーブ用第1剤に使用する場合、これと組み合わせる第2剤は、本発明の毛髪用化粧料であってもよく、上記(a)成分から(e)成分のうちの1つ以上が配合されていない第2剤(例えば、公知の第2剤)であってもよい。また、本発明の毛髪用化粧料をパーマネントウェーブ用第2剤に使用する場合、これと組み合わせる第1剤は、本発明の毛髪用化粧料であってもよく、上記(a)成分から(e)成分のうちの1つ以上が配合されていない第1剤(例えば、公知の第1剤)であってもよい。
【0039】
本発明の毛髪用化粧料は、上記の通り可溶化溶液であると考えられ、粘度が比較的小さいため、公知のローション状の毛髪用化粧料と同様の容器に入れ、常法に従って毛髪に塗布する方法で使用することができる他、噴射剤と共にスプレー容器に入れてスプレーとして毛髪に塗布する方法で使用したり、噴射剤を用いずにスプレー容器に入れてミストとして毛髪に塗布する方法で使用したりすることもできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、以下の実施例などにおいて、「%」は「質量%」を意味している。また、毛髪用化粧料の配合量としては、全体で100%となるように各成分の配合量を%で示し、後記の表1、表2、表4、表6、表7、表9および表10中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0041】
実施例1〜7および比較例1〜6
実施例1〜7および比較例1〜6に係る毛髪用化粧料を、表1および表2に示す組成で調製した。なお、実施例1〜7および比較例1〜6の毛髪用化粧料は、ヘアトリートメントや、パーマネントウェーブ処理などの毛髪変形処理の前処理剤または後処理剤としての用途を想定したものである。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
表1および表2における水の欄の「計100とする」とは、毛髪用化粧料を構成する水以外の各成分の合計量に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、表1および表2に記載の「塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(80%)」とは、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムを80%含む材料を用いたことを意味している。
【0045】
更に、表1および表2に記載の「カチオンNH」とは、日本精化製のカチオン性界面活性剤の商品名であり、上記一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤を65%含んでいる。また、表1および表2に記載の「防腐剤(1)」とは、東邦化学工業社製の「ハイソルブEPH(商品名)」(フェノキシエタノール)である。更に、表1および表2に記載の「POE(20)ラノリンアルコール」、「POE(5)ラノリンアルコール」および「POE(30)ベヘニルエーテル」におけるPOEは「ポリオキシエチレン」の略であり、POEの後の括弧内の数値は、酸化エチレンの平均付加モル数である。
【0046】
表1および表2に関する上記の各注釈は、後記の表4、表6、表7、表9および表10においても同様である。
【0047】
実施例1〜7および比較例1〜6の毛髪用化粧料について、下記の方法によって透明度と毛髪へのやわらかさ付与効果とを評価した。これらの結果を表3に示す。
【0048】
(透明度の評価)
実施例1〜7および比較例1〜6の毛髪用化粧料のそれぞれを、100mLのスクリュー管に、その8割を満たす程度に入れ、10名の評価者が目視で各毛髪用化粧料の透明度を評価した。その後、上記の各スクリュー管を25℃で1週間静置し、その後の各毛髪用化粧料の透明度を、上記10名の評価者が目視で評価した。なお、各毛髪用化粧料の透明度は、各評価者が下記基準に従って点数付けし、全評価者の点数を合計することで総合的に評価した。すなわち、毛髪用化粧料をスクリュー管に入れた直後の透明度(表3では「透明度(直後)」と記載)と、1週間静置した後の透明度(表3では「透明度(経時)」と記載)との差が小さい場合には、透明状態の経時安定性が優れていると評価できる。
【0049】
<透明度の評価基準>
透明である・・・+1点。
やや白濁している・・・0点。
白濁している・・・−1点。
【0050】
(毛髪へのやわらかさ付与効果の評価)
まず、評価用毛束として、長さ20cmの毛髪:2.5gを纏めて1つの毛束とし、これを複数用意した。なお、毛束に用いた毛髪は同一人のものであり、過去にパーマネントウェーブ処理などの化学処理を繰り返し施した経験がある。
【0051】
実施例1〜7および比較例1〜6の毛髪用化粧料各3gを、スポイトでそれぞれ別の毛束に塗布し、しっかりと馴染ませた後、各毛束を水洗し、ドライヤーで乾燥させた。その後、各毛束のやわらかさを、10名の評価者のそれぞれが、いずれの毛髪用化粧料も塗布していない未処理の毛束のやわらかさと対比し、下記評価基準に従って点数付けした。そして、全評価者の点数を合計して、各毛髪用化粧料を塗布した毛髪のやわらかさの評価とした。
【0052】
<毛髪のやわらかさの評価基準>
未処理毛よりも、やわらかい・・・5点。
未処理毛よりも、やややわらかい・・・4点。
未処理毛と、やわらかさが同程度・・・3点。
未処理毛よりも、ややかたい・・・2点。
未処理毛よりも、かたい・・・1点。
【0053】
【表3】

【0054】
表3に示す通り、上記の(a)成分〜(f)成分を配合した実施例1〜7の毛髪用化粧料は、調製直後および調製から1週間後の透明度が高く、透明状態の経時安定性が良好である。また、実施例1〜7の毛髪用化粧料は、これらを塗布した毛髪のやわらかさが良好であり、毛髪へのやわらかさの付与効果が優れている。
【0055】
これに対し、(a)成分、(b)成分および(c)成分の配合量の合計に対する(d)成分の配合量が適正でないか、または(b)成分、(d)成分若しくは(e)成分を欠いている比較例1〜6の毛髪用化粧料は、透明性、透明状態の経時安定性または毛髪へのやわらかさの付与効果が劣っている。
【0056】
実施例8および比較例7
実施例8および比較例7に係る毛髪用化粧料を、表4に示す組成で調製した。なお、実施例8および比較例7の毛髪用化粧料は、洗い流さないタイプのトリートメント(ミスト状で使用するトリートメント)としての用途を想定したものである。
【0057】
【表4】

【0058】
実施例8および比較例7の毛髪用化粧料について、上記10名の評価者が、実施例1などの毛髪用化粧料と同じ方法で透明度を評価した。
【0059】
また、実施例8および比較例7のそれぞれを、毛髪用化粧料をミスト状に噴射できるスプレー容器に入れた。評価用ウィッグを用意し、その左半分の毛髪に比較例7の毛髪用化粧料のミスト(2ml)を塗布し、右半分の毛髪には、実施例8の毛髪用化粧料のミスト(2ml)を塗布し、よく馴染ませた後乾燥させた。乾燥後のウィッグにおける実施例8の毛髪用化粧料を塗布した右半分の毛髪のやわらかさについて、比較例7の毛髪用化粧料を塗布した左半分の毛髪のやわらかさを基準として、上記10名の評価者のそれぞれが、下記評価基準に従って点数付けし、全評価者の点数を合計して評価した。これらの結果を表5に示す。
【0060】
<毛髪のやわらかさの評価基準>
比較例7の毛髪用化粧料で処理した場合よりも、やわらかさがある・・・+1点。
どちらともいえない・・・0点。
比較例7の毛髪用化粧料で処理した場合よりも、やわらかさがない・・・−1点。
【0061】
【表5】

【0062】
表5に示す通り、実施例8の毛髪用化粧料は、調製直後および調製から1週間後の透明度が高く、透明状態の経時安定性が良好である。また、実施例8の毛髪用化粧料は、これを塗布した毛髪のやわらかさが、(b)成分を欠いている比較例7の毛髪用化粧料を塗布した毛髪よりも良好であり、毛髪へのやわらかさの付与効果が優れている。なお、(b)成分を欠いている比較例7の毛髪用化粧料は、透明状態の経時安定性も劣っている。
【0063】
実施例9および比較例8
実施例9および比較例8の毛髪用化粧料を表6に示す組成で調製した。なお、実施例9および比較例8の毛髪用化粧料は、パーマネントウェーブ用第1剤としての用途を想定したものである。
【0064】
【表6】

【0065】
表6中、「キレート剤(1)」とは、キレスト社製の「キレストPS(商品名)」であり、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを40%含んでいる(後記の表10も同様である)。
【0066】
実施例9および比較例8の毛髪用化粧料を用いて処理した毛髪のやわらかさを評価した。まず、評価用毛束として、長さ20cmの毛髪:2.5gを纏めて1つの毛束とし、これを2つ用意した。なお、毛束に用いた毛髪は同一人のものであり、過去にパーマネントウェーブ処理などの化学処理を繰り返し施した経験がある。
【0067】
これらの毛束のそれぞれを17号のロッドに巻き、各パーマネントウェーブ用第1剤(実施例9および比較例8の毛髪用化粧料):3gをそれぞれ別の毛束に塗布して10分放置後、水で中間洗浄を行った。その後、洗浄した各毛束に表7に示す組成で調製したパーマネントウェーブ用第2剤:3gを塗布して10分放置した。その後、各毛束を水で十分にすすぎ、トリートメント[ミルボン社製「ディーセス アウフェBトリートメント(商品名)」]:3gを塗布後、洗い流し、ドライヤーで乾燥させて変形処理を終えた。
【0068】
【表7】

【0069】
表7中、「キレート剤(2)」とは、キレスト社製の「キレストPH−210SD(商品名)」であり、ヒドロキシエタンジホスホン酸を60%含んでおり、「防腐剤(2)」とは、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製の「ケーソンCG(商品名)」であり、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液を1.5%含むものである(後記の表9も同様である)。
【0070】
実施例9の毛髪用化粧料を第1剤として使用してパーマネントウェーブ処理を施した後の毛髪のやわらかさについて、比較例8の毛髪用化粧料を用いた場合を基準とした以外は、実施例8および比較例7の毛髪用化粧料を塗布した毛髪と同様にして、上記10名の評価者が評価した。また、実施例9および比較例8の毛髪用化粧料について、上記10名の評価者が、実施例1などの毛髪用化粧料と同じ方法で透明度を評価した。これらの結果を表8に示す。
【0071】
【表8】

【0072】
表8に示す通り、実施例9の毛髪用化粧料は、調製直後および調製から1週間後の透明度が高く、透明状態の経時安定性が良好である。また、実施例9の毛髪用化粧料は、これを第1剤としてパーマネントウェーブ処理した毛髪のやわらかさが、(b)成分を欠いている比較例8の毛髪用化粧料を用いて処理した毛髪よりも良好であり、毛髪へのやわらかさの付与効果が優れている。なお、(b)成分を欠いている比較例8の毛髪用化粧料は、透明状態の経時安定性も劣っている。
【0073】
実施例10および比較例9
実施例10および比較例9の毛髪用化粧料を表9に示す組成で調製した。なお、実施例10および比較例9の毛髪用化粧料は、パーマネントウェーブ用第2剤としての用途を想定したものである。
【0074】
【表9】

【0075】
実施例10および比較例9の毛髪用化粧料をパーマネントウェーブ用第2剤として使用し、また、パーマネントウェーブ用第1剤に、表10で示す組成で調製したものを用いた以外は、実施例9と同様にして毛髪にパーマネントウェーブ処理を施した。
【0076】
【表10】

【0077】
そして、実施例10の毛髪化粧料を用いて処理した毛髪のやわらかさを、比較例9の毛髪用化粧料を用いて処理した毛髪を基準とした以外は、実施例8および比較例7の毛髪用化粧料を塗布した毛髪と同様にして、上記10名の評価者が評価した。また、実施例10および比較例9の毛髪用化粧料について、上記10名の評価者が、実施例1などの毛髪用化粧料と同じ方法で透明度を評価した。これらの結果を表11に示す。
【0078】
【表11】

【0079】
表11に示す通り、実施例10の毛髪用化粧料は、調製直後および調製から1週間後の透明度が高く、透明状態の経時安定性が良好である。また、実施例10の毛髪用化粧料は、これを第2剤としてパーマネントウェーブ処理した毛髪のやわらかさが、(b)成分を欠いている比較例9の毛髪用化粧料を用いて処理した毛髪よりも良好であり、毛髪へのやわらかさの付与効果が優れている。なお、(b)成分を欠いている比較例9の毛髪用化粧料は、透明状態の経時安定性も劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(a)成分:非イオン性界面活性剤、
(b)成分:下記一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤、
【化1】

[前記一般式(1)中、Rはラノリン脂肪酸残基である。]
(c)成分:(b)成分以外のカチオン性界面活性剤、
(d)成分:植物油、ロウ、炭化水素、エステル油および脂肪酸よりなる群から選択される少なくとも1種の油性成分、
(e)成分:2〜4価のアルコール、および
(f)成分:水
が配合されており、上記(a)成分、上記(b)成分および上記(c)成分の配合量の合計をX(質量%)とし、上記(d)成分の配合量をY(質量%)としたとき、X:Y=20:1〜5:1であることを特徴とする毛髪用化粧料。
【請求項2】
上記Xと上記Yとの比が、X:Y=10:1〜6:1である請求項1に記載の毛髪用化粧料。
【請求項3】
(d)成分が、植物油、ロウまたは脂肪酸である請求項1または2に記載の毛髪用化粧料。
【請求項4】
(a)成分として、HLB値の異なる複数の非イオン性界面活性剤が配合された請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪用化粧料。


【公開番号】特開2011−6368(P2011−6368A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153148(P2009−153148)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】