説明

毛髪用組成物

【課題】ダメージヘアに対しても湿潤時から乾燥後まで良好な滑り性、柔軟性、並びに乾燥後の滑り性、柔軟性、纏まり感の付与に優れる毛髪用組成物を開発すること。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される3級アミン化合物と、尿素、尿素誘導体、グアニジン塩及びグアニジン誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上とを反応させることによって得られる反応混合物と、(B)無機酸及び/又は有機酸を含有する毛髪用組成物。


(Rは直鎖又は分岐した炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基で表され、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、nは0又は1、mは1〜5の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用組成物に関し、更に詳しくはダメージヘアに対しても湿潤時から乾燥後まで良好な滑り性、柔軟性、並びに乾燥後の滑り性、柔軟性、纏まり感の付与に優れる毛髪用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪をシャンプー等で洗髪すると毛髪の汚れのみならず、毛髪表面を保護している油分も同時に除去されてしまい、毛髪の柔軟性が失われ、艶のないくし通りの悪い髪となり、毛髪の損傷、枝毛、切れ毛が発生し易くなる。そこで毛髪にコンディショニング効果(柔軟性、滑り性、サラサラ感、潤い感)を付与する目的で、カチオン界面活性剤である第4級アンモニウム塩を主成分とする毛髪用組成物で処理するが、乾燥後の滑り性、柔軟性、潤い感が十分でない場合があり、乾燥後の滑り性を向上させるためにシリコーン油等を配合する方法が知られている。しかしながら、シリコーン油等を配合する場合、配合量により系の安定性等に影響を及ぼすことがあり配合量の制約を受けることもある。
【0003】
そこで、第4級アンモニウム塩の代わりにビスアミドカチオンを配合し、毛髪のコンディショニング効果(滑り性、サラサラ感)に優れ、低刺激で生分解性が良好な毛髪用組成物(特許文献1)やビスカチオンを配合した毛髪用組成物(特許文献2)が提案されている。しかしながら、これらの提案では染毛剤やパーマ剤等の化学的損傷、洗髪後のドライヤーによる熱やブラッシング等の摩擦による物理的損傷により発生するダメージヘアに対して、十分満足のいく湿潤時から乾燥後までの良好な滑り性、柔軟性、並びに乾燥後の滑り性、柔軟性、纏まり感の付与に優れる毛髪用組成物は得られていない。
【特許文献1】特開2003−113045号公報(1−7頁)
【特許文献2】特開2006−199636号公報(1−9頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダメージヘアは、毛髪表面が親水化している上、内部のタンパク質や脂質などが溶出しているため、十分なコンディショニング効果が得られる毛髪用組成物を得るのはこれまで以上に困難である。本発明は、ダメージヘアに対しても湿潤時から乾燥後まで良好な滑り性、柔軟性、並びに乾燥後の滑り性、柔軟性、纏まり感の付与に優れる毛髪用組成物を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、
(A)下記一般式(1)

(Rは直鎖又は分岐した炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基で表され、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、nは0又は1、mは1〜5の整数を表す。)で表される3級アミン化合物と、尿素、尿素誘導体、グアニジン塩及びグアニジン誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上とを反応させることによって得られる反応混合物と、(B)無機酸及び/又は有機酸を含有することにより、上記要件を満たす毛髪用組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明によれば(A)特定のビス3級アミン化合物と(B)有機酸及び/又は無機酸を含有する毛髪用組成物が、ダメージヘアに対しても湿潤時から乾燥後まで良好な滑り性、柔軟性、並びに乾燥後の滑り性、柔軟性、纏まり感を付与することができる。
【0007】
本発明の好ましい態様として、前記反応混合物が、下記一般式(2)で表されるビス3級アミン化合物を含有するものである前記の毛髪用組成物がある。

(Rは直鎖又は分岐した炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基で表され、R〜Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、nは0又は1、mは1〜5の整数、Aは下記のいずれかの置換基を表す。)

(Xは酸素原子又は硫黄原子を示し、q、rは0又は1〜6の整数を表す。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の毛髪用組成物について詳述する。
前記一般式(1)及び(2)において、Rは直鎖又は分岐した炭素数8〜24、好ましくは炭素数12〜24、更に好ましくは炭素数14〜22のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基であり、R〜Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、特に好ましくはメチル基、ヒドロキシエチル基、nは0又は1、mは1〜5の整数であり1〜3が特に好ましい。Aは前記のいずれかの置換基を表し、q、rは0又は1〜6整数であり、0又は1〜4が特に好ましい。
【0009】
本発明に使用される(A)成分としての反応混合物の製造方法としては特に限定はないが、高級アルコールにエピハロヒドリンを付加させ、次にアルカリによりエポキシを閉環し製造したアルキルグリシジルエーテルか、1,2−エポキシアルカンをジアミンと反応させ、次に尿素、尿素誘導体、グアニジン塩及びグアニジン誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上と反応させることで製造可能である。
【0010】
具体的には、高級アルコール(1モル)とBFエーテル錯体(BF純分対高級アルコール0.5%)を仕込み、50〜90℃に加熱撹拌しながらエピクロルヒドリン1〜1.5モル)を1〜2時間かけて滴下し、更にそのままの温度で約5時間熟成を行い、1−クロロ−3−アルコキシ−2−ヒドロキシプロパンを得る。また、得られた1−クロロ−3−アルコキシ−2−ヒドロキシプロパンは減圧蒸留等を行い精製することもできる。次に、1−クロロ−3−アルコキシ−2−ヒドロキシプロパン(1モル)と25%NaOH(1.5〜2モル)を仕込み50〜90℃で8時間熟成を行い、熟成後撹拌を止め2層分離し、水層をカット後必要であれば更に温水で洗浄し、脱水後してアルキルグリシジルエーテルを得る。また、得られたアルキルグリシジルエーテルは減圧蒸留等を行い精製することもできる。
【0011】
次に、ジアミン(1〜10モル)にアルキルグリシジルエーテル又は1,2−エポキシアルカン(1モル)を常温〜120℃で2〜5時間かけて添加し、同温度で5時間〜20時間熟成する。本反応にはアセトン等のケトン類或いはエタノール、イソプロパノール等の低級アルコールなどの溶剤或いは水混合溶媒を用いても良い。更に、同温〜150℃で過剰のジアミン及び溶剤、水を用いた場合はそれらを減圧留去或いは水洗等により除去し中間体の3級アミン化合物を得る。また、得られた3級アミン化合物は減圧蒸留等で精製することもできる。
【0012】
更に、3級アミン化合物に70〜200℃で尿素、尿素誘導体、グアニジン塩及びグアニジン誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上(1〜5モル)を添加し、120〜200℃で5〜10時間かけて脱アンモニアを行い、目的の反応混合物が得られる。得られた反応混合物は、そのまま本発明品の配合成分として用いることもできるが、通常の精製方法により前記一般式(2)で表されるビス3級アミン化合物が残るように精製して用いることもできる。ビス3級アミン化合物は他の方法でも製造できるが製造方法としては特に限定はない。
【0013】
本反応に用いられるアルキルグリシジルエーテルの具体的な例としては、飽和又は不飽和の天然又は合成高級アルコールとエピクロロヒドリンを反応させることにより得られる、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等が挙げられ、単一組成でも2種以上の任意の割合の混合物でも良い。工業的に入手可能なアルキルグリシジルエーテルとしては、日本油脂(株)製のエピオールL−41(デシルグリシジルエーテル)、エピオールSK(ステアリルグリシジルエーテル)、エイ・シー・アイ・ジャパン・リミテッド製のへロキシ8(デシルグリシジルエーテル及びテトラデシルグリシジルエーテルとの混合物)、ナガセ化成工業(株)製のデナコールEX−192(ドデシルグリシジルエーテル及びテトラデシルグリシジルエーテルとの混合物)、阪本薬品工業(株)製のSY−25L(ドデシルグリシジルエーテル及びドデシルグリシジルエーテルとの混合物)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0014】
また1,2−エポキシアルカンの具体的な例としては、ダイセル化学工業(株)製「AOEX」シリーズ、(株)ADEKA製「アデカオレフィンオキサイド」シリーズなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0015】
本反応に用いられるジアミンの具体的な例としては、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0016】
本反応に用いられる尿素、尿素誘導体、グアニジン塩及びグアニジン誘導体としては、尿素、ビュレット、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素等の尿素化合物、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン等のグアニジン塩、塩酸アミノグアニジン、硝酸アミノグアニジン、重炭酸アミノグアニジン等のアミノグアニジン塩などが挙げられ、これらの中で尿素、炭酸グアニジンが特に好適に用いられる。本発明ではこれらの尿素、尿素誘導体、グアニジン塩及びグアニジン誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上を任意に用いることができる。
【0017】
(A)成分の毛髪用組成物中の配合量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。(A)成分の配合量が少なすぎると毛髪に十分なコンディショニング効果が得られず、多すぎても効果が向上せず好ましくない。
【0018】
本発明に使用される(B)無機酸としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられ、有機酸としては酢酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、グルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸等が挙げられ、これらの中で乳酸、リンゴ酸が特に好適に用いられる。本発明ではこれらの無機酸/有機酸の中から1種または2種以上を任意に用いることができる。
【0019】
(B)成分の毛髪用組成物中の配合量は、(A)成分1モルに対して0.3〜5モル倍が好ましく、0.5〜3モル倍がより好ましい。本毛髪用組成物は毛髪の感触、製品の安定性よりpH2〜8、特に3〜6に調整されるのが好ましい。
【0020】
本発明の毛髪用組成物には、(C)高級アルコールを配合することができる。具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、イソステアリルアルコール等が挙げられ、これらの中でもセトステアリルアルコール、ステアリルアルコールが特に好適に用いられる。本発明では、これらの高級アルコ−ルの中から1種又は2種以上を任意に用いることができる。
【0021】
(C)成分の毛髪用組成物中の配合量は、優れたコンディショニング効果や使用後の感触が得られる点で0.1〜20質量%が好ましく、特に3〜8質量%がより好ましい。
【0022】
更に、本発明の毛髪用組成物には、(D)成分のシリコーンおよび/又はシリコーン誘導体を配合することができる。具体的には、ジメチコン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサン、3次元網目構造を有するシリコーン樹脂、シリコーンゴム、アミノ変性シリコーン、脂肪酸変性ポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、脂肪族変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン誘導体が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0023】
(D)成分の毛髪用組成物中の配合量は、優れたコンディショニング効果や安定性が得られる点で0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。
【0024】
更に、本発明の毛髪用組成物には、(E)多価アルコールを配合することができる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0025】
(E)成分の毛髪用組成物全量中の配合量は、優れたコンディショニング効果が得られ、かつべとつきが生じない点で0.01〜10質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。
【0026】
本発明に使用される(F)成分の芳香族アルコールとしては、具体的にはフェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、クレゾール、p-クロロ−m−キシレノール、フェネチルアルコール、フェネチルプロピルアルコール、p−tert−ブチルフェノール、カテコール、ヒドロキシキノン、フェニルエチルアルコール、レゾルシノール、フェノールなどが挙げられ、これらの中で、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノールが特に好適に用いられる。本発明ではこれらの芳香族アルコールの中から1種または2種以上を任意に用いることができる。
【0027】
(F)成分の毛髪用組成物中の配合量は、十分なコンディショニング効果や防腐効果が得られる点で0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.1〜2質量%が特に好ましい。
【0028】
更に、本発明の毛髪用組成物には、(G)下記一般式(3)で表されるジアルキル3級アミン化合物を配合することができる。

(Rは直鎖又は分岐した炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基で表され、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、nは0又は1、mは1〜5の整数を表す。)
【0029】
上記一般式(3)において、Rは直鎖又は分岐した炭素数8〜24、好ましくは炭素数12〜24、更に好ましくは炭素数14〜22のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基であり、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、特に好ましくはメチル基、ヒドロキシエチル基、nは0又は1、mは1〜5の整数であり1〜3が特に好ましい。
【0030】
(G)成分のジアルキル3級アミン化合物としては、本発明の(A)成分の製造中間体として得られる3級アミン化合物と同様の製造方法によって、アルキルグリシジルエーテル或いは1,2−エポキシアルカン(2モル)を用い、ジアミン(0.9〜1.1モル)と反応させて得られるジアルキル3級アミン化合物の中から1種又は2種以上を任意に用いることができる。
【0031】
(G)成分の毛髪用組成物中の含有量は、十分なコンディショニング効果を得る点で0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。
【0032】
本発明は、以上の各成分を特定の配合組成で混合することによって製造される。その配合組成は、開発担当者が通常行っている配合試験によって決定することができる。
【0033】
本発明の毛髪用組成物には、さらに化粧料、医薬品などに通常使用される界面活性剤、薬効剤、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機および無機粉体、粘度調整剤、色素などを必要に応じて配合することができる。また、発明の効果を損なわない範囲で固形油分、半固形油分を加えることができる。具体的には、化粧料などで通常使用されるものでよく、使用目的や要求機能などにより適宜選択され、例えば、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素類、イソプロピルパルミテート、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル等のエステル油、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、トリオクタン酸グリセリル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、ツバキ油、オリーブ油、アボガド油、ホホバ油等の動植物油脂類等、カチオン化セルロース、カチオン化グアガム、ジアリルジメチルアンモニウム系高分子等の陽イオン変性水溶性高分子類、香料などが挙げられる。
【0034】
本発明の毛髪用組成物は、毛髪に使用する任意の組成物に適用可能であり、シャンプー等の毛髪洗浄剤、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアスプレー、スタイリング剤等の毛髪処理剤等が挙げられ、使用形態も毛髪に塗布し全体になじませた後すすぎ流すものや、洗い流さないもの等いずれも含まれるが、本発明の毛髪用組成物は塗布後すすぎ流して使用するヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメントに特に好適である。
【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例及び製造例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例及び製造例に限定されるものではない。なお、表1に本明細書記載の方法で合成したジアルキル3級アミン化合物1〜3を示し、比較に用いたビスカチオン化合物を表2に示した。また、実施例1〜15及び比較例1〜10に係るヘアリンス剤を常法により調製し、効果の測定を実施し、結果を表3〜7に示した。含有量は質量%である。
【0036】
製造例1
2L容の4つ口丸底フラスコに、ジメチルアミノプロピルアミン816g(8mol)を入れ、撹拌しながらドデシルグリシジルエーテル193.6g(0.8mol)を必要に応じて冷却しながら90℃以下を維持し5時間かけて滴下し、更に10時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーによりグリシジルエーテルがなくなったことを確認した後、同温で水を加えて洗浄を行い過剰のアミンが除去できるまで洗浄操作を繰り返し、その後110℃で減圧脱水を行い中間体の粗3級アミンを得た。粗3級アミンをカラムクロマトグラフ法(充填剤;ワコーシルC−200(和光純薬工業(株)),溶離液;クロロホルム/メタノール=7/3(v/v))により精製し、中間体3級アミン180g(収率17.8%)を得た。得られた中間体3級アミンは液体高速クロマトグラフィー(カラム;TSKgelG1000HHR、溶離液;THF)により単一物であることを確認した。
【0037】
次に500mL容の4つ口丸底フラスコに、中間体3級アミン172g(0.5mol)を入れ加温溶解し、撹拌下、窒素を流しながら100℃で尿素18g(0.3mol)を加え、150℃まで3時間かけて昇温し、アンモニアを留去しながら5時間反応させ、粗ビス3級アミンを得た。粗ビス3級アミンをカラムクロマトグラフ法(充填剤;ワコーシルC−200(和光純薬工業(株)),溶離液;クロロホルム/メタノール=7/3(v/v))により精製しビス3級アミン144g(収率75.8%)を得た。得られた中間体アミンは液体高速クロマトグラフィー(カラム;TSKgelG1000HHR、溶離液;THF)により単一物であることを確認した。
【0038】
製造例2
原料アミンをジエチルアミノエチルアミン928g(8mol)に代え、オクタデシルグリシジルエーテル326g(1mol)と製造例1と同様の方法で反応、精製し、中間体3級アミン296g(収率23.6%)を得た。中間体3級アミン221g(0.5mol)に尿素31.8g(0.53mol)を加え、製造例1と同様の方法で反応、精製し、ビス3級アミン197g(収率77.9%)を得た。
【0039】
製造例3
原料アミンをジエチルアミノプロピルアミン910g(7mol)に代え、1,2−エポキシオクタデカン(ADEKA製アデカオレフィンオキサイドC18)268g(1mol)と製造例1と同様の方法で反応し、精製中間体3級アミン259g(収率22.0%)を得た。中間体3級アミン199g(0.5mol)にビウレット62.4g(0.3mol)を加え、製造例1と同様の方法で反応し、精製ビス3級アミン183g(収率70.0%)を得た。
【0040】
製造例4
原料アミンをジエチルアミノプロピルアミン910g(7mol)に代え、C12,C14エポキシ(ダイセル化学製AOEX−24)157.4g(0.8mol)と製造例1と同様の方法で反応し、精製中間体3級アミン183g(収率17.1%)を得た。中間体3級アミン163.4g(0.5mol)にビウレット62.4g(0.6mol)を加え、製造例1と同様の方法で反応し、精製ビス3級アミン165g(収率73.1%)を得た。
【0041】
製造例5
原料アミンをジメチルアミノプロピルアミン816g(8mol)に代え、ドデシルグリシジルエーテル242g(1mol)と製造例1と同様の方法で反応し、精製中間体3級アミン212g(収率20.0%)を得た。中間体3級アミン172.0g(0.5mol)に炭酸グアニジン108g(0.6mol)を加え、反応温度を180℃とした以外は製造例1と同様の方法で反応し、精製ビス3級アミン170g(収率60.7%)を得た。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
本実施例中で用いた試験方法は下記の通りである。
【0045】
(柔軟性、滑り性、纏まり感と総合評価)
ブリーチ処理等施していない健康黒髪(健常毛)20g(長さ20cm)を束ねて、アニオン界面活性剤を主成分とする市販のシャンプーで洗浄した。続いて表3〜6に示す処方により調整したヘアリンス剤1.0gを均一に塗布し、30秒間40℃の流水ですすいだ。塗布時〜(すすぎ時)〜タオルドライまでの湿潤時の柔軟性、滑り性、並びに乾燥後の柔軟性、滑り性、纏まり感を10名の専門パネラーにて、官能的に比較し、下記基準で評価した。また健康黒髪にブリーチ処理を30分行った損傷毛髪束(20g×20cm)についても同様の処理を施し、塗布時〜(すすぎ時)〜タオルドライまでの湿潤時の柔軟性、滑り性、並びに乾燥後の柔軟性、滑り性、纏まり感を10名の専門パネラーにて、同様の評価を行った。
◎:良いと答えた人が9人以上の場合
○:良いと答えた人が6〜8人の場合
△:良いと答えた人が3〜5人の場合
×:良いと答えた人が2人以下の場合
また総合評価については、官能評価の結果をポイント制(◎:3ポイント、○:2ポイント、△:1ポイント、×:0ポイント)にしてその合計より、下記基準で評価した。
◎:13ポイント以上
○:9〜12ポイント
△:5〜8ポイント
×:4ポイント以下
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
実施例1〜15及び比較例1〜5より明らかなように、 本発明の毛髪用組成物は、毛髪に対して塗布からすすぎ、乾燥までの湿潤時の滑り性、柔軟性、並びに乾燥後の滑り性、柔軟性、纏まり感及び総合評価で、いずれも優れた性能を示した。
【0051】
本発明の毛髪用組成物はまた、毛髪のコンディショニング効果に優れ、特にダメージヘアに対しても湿潤時から乾燥後まで良好な滑り性、柔軟性、並びに乾燥後の滑り性、柔軟性、纏まり感を与えることは明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される3級アミン化合物と、尿素、尿素誘導体、グアニジン塩及びグアニジン誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上とを反応させることによって得られる反応混合物と、(B)無機酸及び/又は有機酸を含有する毛髪用組成物。

(Rは直鎖又は分岐した炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基で表され、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、nは0又は1、mは1〜5の整数を表す。)
【請求項2】
前記反応混合物が、下記一般式(2)で表されるビス3級アミン化合物を含有するものである請求項1に記載の毛髪用組成物。

(Rは直鎖又は分岐した炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基で表され、R〜Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、nは0又は1、mは1〜5の整数、Aは下記のいずれかの置換基を表す。)

(Xは酸素原子又は硫黄原子を示し、q、rは0又は1〜6の整数を表す。)
【請求項3】
毛髪用組成物全量中に、(A)成分を0.1〜10質量%、(B)成分を(A)成分1モルに対して0.3〜10モル倍を配合してなる請求項1又は2に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
更に、(C)高級アルコールを0.1〜10質量%配合してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項5】
更に、(D)シリコーンおよび/又はシリコーン誘導体を0.1〜20質量%配合してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項6】
更に、(E)多価アルコールを0.01〜10質量%配合してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項7】
更に、(F)芳香族アルコールを0.01〜10質量%配合してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項8】
成分(F)の芳香族アルコールがフェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノールから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜7のいずれか1項にのいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項9】
更に、(G)下記一般式(3)で表されるジアルキル3級アミン化合物を0.01〜10質量%配合してなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。

(Rは直鎖又は分岐した炭素数4〜24のアルキル基、アルケニル基もしくはヒドロキシアルキル基で表され、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、nは0又は1、mは1〜5の整数を表す。)

【公開番号】特開2009−102229(P2009−102229A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272836(P2007−272836)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】