説明

毛髪着色料

【課題】顔料と共に特定量の有機高分子粉体を配合する油性毛髪着色料油性の提供。
【解決手段】油性毛髪着色料に顔料と共に特定量の有機高分子粉体を配合する油性の系にする。有機高分子粉体の含有量は5〜40重量%が好ましく、10〜25重量%がより好ましい。有機高分子粉体の種類としてはアクリル酸系またはシリコーン系が好ましい。気温の変化による油性毛髪着色料の硬さの変化の度合いが小さく、その結果実際の使用時に油性毛髪着色料が常に均一にとれ、仕上がりが自然である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪着色料に関し、更に詳しくは、テンポラリーカラーあるいは毛髪一時着色料とも呼ばれ、顔料を毛髪に染着させることなく専ら毛髪に対する顔料被覆によって着色する油性毛髪着色料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪着色料は、ヘアダイなどと呼ばれる酸化染毛剤や、酸性ヘアカラーもしくはヘアマニキュアなどとして上市されている酸性染毛料とは異なり、単に毛髪を顔料被覆によって着色するだけである。そして毛髪に対して手軽に任意の着色を施せる点、シャンプーで洗い落とせる点等から、例えば白髪を隠したい場合や、黒髪を好みの色に着色したい場合等に広く使用されている。
【0003】
このような毛髪着色料は樹脂を水やエタノールに溶解した形態やワックスと液状油に顔料を分散したもの等がある。後者は硬度の調整が困難であったり、気温によって毛髪着色料の硬さが変化しやすく、そのために実際の使用時に毛髪着色料がとれすぎたり、とれなかったりしその結果仕上がりが不自然になるという欠点があった。
【0004】
従来の毛髪着色料は、上記の多様な性能要求に対応するため、樹脂成分及び/又は油成分を顔料のビークルとして配合している。このような樹脂成分としては、ポリビニルピロリドン系樹脂,酢酸ビニルエーテル系樹脂,酸性ポリ酢酸ビニル系樹脂,酸性又は両性アクリル系樹脂等が例示される。又、油成分としては、メチルポリシロキサン,メチルフェニルポリシロキサン,ヒマシ油,流動パラフィン,スクワラン,ラノリン,ワセリン,カルナウバロウ,ミツロウ等が例示される。
【0005】
【特許文献1】特開2003−95898
【特許文献2】特開2003−95899
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の樹脂成分や油成分はそれぞれ一長一短があり、全体として満足できる性能は必ずしも示さなかった。例えば、油成分量を多くすると、テカリが出て風合いが不自然になったり毛髪着色料が多くとれすぎる不具合があった。一方樹脂成分は溶解するため溶媒が必要になり、乾燥するまでの時間を要すると言う不具合があった。さらに雨や汗等で再び服に付着するという欠点もあった。
【0007】
そこで本発明は、気温の変化によって毛髪着色料の硬さの変化の度合いが小さく、その結果実際の使用時に毛髪着色料が常に均一にとれ、仕上がりが自然であるという新規な毛髪着色料を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、上記課題の解決手段を試行錯誤により模索する過程で、毛髪着色料に顔料と共に特定量の有機高分子粉体を配合する油性の系にすると、気温の変化による毛髪着色料の硬さの変化の度合いが小さく、その結果実際の使用時に毛髪着色料が常に均一にとれ、仕上がりが自然であるということを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば有機高分子粉体の特性を生かし、使用時に毛髪着色料が常に均一にとれ、仕上がりが自然にできる有用なものである。
【0010】
本発明の油性毛髪着色料は、テンポラリーカラーとも呼ばれる毛髪一時着色料であって、少なくとも顔料と液状油と固形油と共に有機高分子粉体とを必須の成分として含有することを、基本的な特徴とする。本願発明の油性毛髪着色料はスティックや流し込み皿タイプで適応できる。
本発明に用いられる油性毛髪着色料はスティックであれば直接髪の毛に塗布することができる。また流し込み皿タイプであれば、パフ等に付けて塗布することができる。また指の腹に直接付けて髪の毛に塗布することも可能である。
【0011】
本発明に用いられる有機高分子粉体は特に限定されないが、好ましくは球状の方がすべりが良く好ましい。また分子量による効果の増減はない。
【0012】
本発明に用いられる有機高分子粉体は粉体であれば問題なく使用できるが、例えば酢酸ビニルを主成分とする酢酸ビニル系、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの共重合あるいはアクリル酸エステルとスチレンの共重合などによるアクリル酸系、ブタジエン共重合よりなる合成ゴム系、シリコーン系等がある。
【0013】
また酢酸ビニル系にはアクリル酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、バーサチック酸ビニルエステル、エチレンなどと共重合させたものを使用することが出来る。
【0014】
アクリル酸系にはメチルメタクリレート、スチレン系等がある。
【0015】
合成ゴム系ではスチレン−ブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン、メタクリル酸−ブタジエンなどが代表的なものである。
【0016】
シリコーン系にはメチルポリシロキサン網目状重合体等がある。
【0017】
その他に塩化ビニル−塩化ビニリデン等もある。
有機高分子粉体は特に限定されないが、好ましくはアクリル酸系、シリコーン系である。
【0018】
油性毛髪着色料における有機高分子粉体の含有量は5〜40重量%が好ましく、特に10〜25重量%が好ましい。5%以下では温度による影響を回避できず、40%以上では毛髪着色料が固すぎて成型がしづらい。
【0019】
油性毛髪着色料に配合する顔料の量は望む色の濃さにもよるので特に限定されないが、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%の顔料を配合する。顔料の配合量が過少であると毛髪の着色効果が不十分となる恐れがあり、顔料の配合量が過剰であるとその分散性が懸念される場合もある。
【0020】
顔料の種類には特段の限定がなく、例えば、無機着色顔料,有機着色顔料,染料樹脂固溶体,昼光蛍光顔料又は天然顔料から選ばれる1種又は2種以上の顔料を任意に限定なく配合できる。
【0021】
上記無機顔料としては、ベンガラ,酸化クロム,酸化コバルト,黒酸化鉄,黄酸化鉄,水酸化クロム,水酸化アルミニウム,紺青,硫酸バリウム,カルミン,雲母,炭酸マグネシウム,ベントナイト,群青,マンガンバイオレット,カーボンブラック,アルミニウム,銅,金,雲母チタン等を例示できる。
タルク、カオリン等の体質顔料以外の顔料を使用すると白ぐすみが無くなり、所望の色を髪の毛に着色する事が可能である。特に白髪隠しの場合には体質顔料を配合すると体質顔料の白さが白髪隠しの効果を減じてしまうので避けるべきである。
【0022】
上記有機顔料としては、赤色202,203,204,205,206,207,208,219,220,221,228,404,405の各号、だいだい色203,204,401の各号、黄色205,401の各号、青色404号等を例示できる。
【0023】
上記天然顔料としては、クレー等の鉱物顔料,マダーレーキやコチニールレーキ等の天然染料レーキ,アゾ顔料,フタロシアニン顔料等を例示できる。
【0024】
更に、油性毛髪着色料には、液状油、固形油、香料,防腐剤,殺菌剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,動物抽出成分,植物抽出成分等を必要に応じて配合することができる。
【0025】
毛髪着色料に顔料と共に特定量の有機高分子粉体を配合する油性の系にすると、実際の使用時にベースが常に均一にとれ、伸びも良く仕上がりが自然であるということを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、本発明の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量は重量%を示す。
【0027】
次に実験及び実施例により、本願発明を詳しく説明するが、本願発明は実施例に限定されるものではない。
【0028】
実験1
表1に示す実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例3に係る組成の流し込み皿タイプの油性毛髪着色料を常法に従って調製し、塗布時の伸び、塗布した後の色について下記の基準で評価すると共に、各例に係る油性毛髪着色料を人毛の毛束に対して各例同一の要領で塗布して評価した。これらの評価結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
塗布時の伸び
◎ →非常に良い。
○ →良い。
△ →比較的良い。
× →あまり良くなく重い。
【0031】
塗布した後の色
◎ →非常に良い。
○ →良い。
△ →比較的良い。
× →白くすみがあり所望の色が出ず良くない。
【0032】
実験2
表2に示す実施例4〜8、比較例4,5に係る組成のスティックタイプの油性毛髪着色料を定法に従って調製し、本発明のポリメタクリル酸メチルの配合量を変化させることによりブラシによる毛髪着色料のとれ、人毛の毛束に対しての塗布時の伸びについて下記の基準で評価した。これらの結果を表2に示す。表2から判るようにポリメタクリル酸メチルの量が5〜40重量%の範囲で良好な油性毛髪着色料が得られ、特に10〜25重量%では非常に良い結果であった。
【0033】
毛髪着色料のとれ
◎ →非常に良い。
○ →良い。
△ →比較的良い。
× →あまり良くなく重い。
【0034】
塗布時の伸び
◎ →非常に良い。
○ →良い。
△ →比較的良い。
× →白浮きがあり所望の色が出ず良くない。
【0035】
【表2】

【0036】
実験3
表3に示す実施例9〜13、比較例6,7に係る組成の流し込み皿タイプの油性毛髪着色料を定法に従って調製し、本発明のナイロン粉末の配合量を変化させることによりパフによる毛髪着色料のとれ、人毛の毛束に対しての塗布時の伸びについて下記の基準で評価した。これらの結果を表3示す。表3から判るようにナイロン粉末の量が5〜40重量%の範囲で良好な油性毛髪着色料が得られ、特に10〜25重量%では非常に良い結果であった。
【0037】
毛髪着色料のとれ
◎ →非常に良い。
○ →良い。
△ →比較的良い。
× →あまり良くなく重い。
【0038】
塗布時の伸び
◎ →非常に良い。
○ →良い。
△ →比較的良い。
× →白浮きがあり所望の色が出ず良くない。
【0039】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本願発明者は、油性毛髪着色料に顔料と共に特定量の有機高分子粉体を配合する油性の系にすると、気温の変化による毛髪着色料の硬さの変化の度合いが小さく、その結果実際の使用時に毛髪着色料が常に均一にとれ、仕上がりが自然であるということを見出した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機高分子粉体を5〜40重量%及び顔料を含有することを特徴とする油性毛髪着色料。
【請求項2】
有機高分子粉体の含有量が10〜25重量%であることを特徴とする請求項1に記載の油性毛髪着色料。
【請求項3】
剤形がスティック状または流し込み皿タイプであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の油性毛髪着色料。
【請求項4】
体質顔料を含有しない白髪隠し用であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の油性毛髪着色料。
【請求項5】
有機高分子粉体の形状が球状であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の油性毛髪着色料。
【請求項6】
有機高分子粉体がアクリル酸系またはシリコーン系であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の油性毛髪着色料。

【公開番号】特開2008−115124(P2008−115124A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301057(P2006−301057)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】