説明

毛髪脱色組成物及び染毛組成物

【課題】 毛髪の脱色力、染色力に優れ、かつ脱色及び染色の処理時及び処理後における、毛髪の損傷、頭皮への刺激が少ない毛髪脱色組成物及び染毛組成物、それらに用いられる毛髪脱色助剤、並びに新規なピロリジン誘導体を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される環状アミン化合物を含む毛髪脱色助剤、それを含有する毛髪脱色組成物及び染毛組成物、並びに新規なピロリジン誘導体である。
【化1】


【化2】


(式中、R1〜R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R4〜R8は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、m及びnは、1又は2を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪の脱色力、染色力に優れ、かつ脱色及び染色の処理時及び処理後における、毛髪の損傷、頭皮への刺激が少ない毛髪脱色組成物及び染毛組成物、それらに用いられる毛髪脱色助剤、並びに新規なピロリジン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の脱色にはアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤型の脱色剤が、また、毛髪の染色には酸化染料中間体、及びアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤型の永久染毛剤が広く利用されている。アルカリ剤は、酸化剤の働きを活性化して脱色効果と染色効果を高めるために第1剤に配合される。また、酸化剤は、毛髪中のメラニン顆粒の酸化分解を進行させて、毛髪を明るい色調に発色させ、同時に酸化染料中間体のカップリング反応による染毛効果を高めるために第2剤に配合される。
毛髪をより明るい色調に脱色したり、他の色に染色する場合、予め毛髪内のメラニンや他の色素を十分に脱色することが必要であるが、毛髪脱色力は一般にアルカリ剤量及び酸化剤量に依存する。このため、染毛する場合には、特に十分なアルカリ剤量及び酸化剤量が必要である。
【0003】
アルカリ剤としては、一般にアンモニアや有機アミン、酸化剤としては一般に過酸化水素が使用されているが、十分な脱色力を得るためにこれらを多量に使用すると、その使用量に依存して毛髪が損傷したり、頭皮に強い刺激を与える可能性がある。
このような問題に対して、従来、脱色助剤として、1,3−プロパンジアミンを用いる方法(例えば、特許文献1参照)、トリアザシクロノナン等を用いる方法(例えば、特許文献2参照)、環状アミン化合物を用いる方法(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。しかしながら、これらは実使用の配合系において性能的に十分満足し得るものではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平5−246827号公報
【特許文献2】特開2002−255763号公報
【特許文献3】国際公開第03/51322号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、毛髪の脱色力、染色力に優れ、かつ脱色及び染色の処理時及び処理後における、毛髪の損傷、頭皮への刺激が少ない毛髪脱色組成物及び染毛組成物、それらに用いられる毛髪脱色助剤、並びに新規なピロリジン誘導体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定の環状アミン化合物が毛髪脱色助剤として有効であること、そしてこの環状アミン化合物を毛髪脱色組成物及び染毛組成物中に含有させることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
〔1〕下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される環状アミン化合物を含む毛髪脱色助剤、
【0007】
【化1】

(式中、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。)
【0008】
【化2】

(式中、R4〜R8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、m及びnは、1又は2を示す。)
【0009】
〔2〕アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とを混合して用いる組成物であって、(A)前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で表される環状アミン化合物を含み、混合後のpHが7.5〜12である毛髪脱色組成物、
〔3〕アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とを混合して用いる組成物であって、(A)前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で表される環状アミン化合物、及び(B)酸化染料中間体又は直接染料を含み、混合後のpHが7.5〜12である染毛組成物、及び
〔4〕上記一般式(1)で表されるピロリジン誘導体、
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた脱色力を有し、また毛髪の色調を明るく良好な色合いに染め上げることができ、しかも脱色及び染色の処理時及び処理後における、毛髪の損傷、頭皮への刺激が少ない毛髪脱色組成物及び染毛組成物、それらに用いられる毛髪脱色助剤、並びに新規なピロリジン誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の毛髪脱色助剤は、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される環状アミン化合物を含む。ここで毛髪脱色助剤とは、その物質単独では毛髪を脱色することはないが、アルカリ剤を含む酸化剤と併用することで、脱色作用を高める化合物のことをいう。
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(1)において、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。
炭素数1〜5のアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、直鎖、分岐鎖のいずれであってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。これらの中では、脱色力、染色力の観点から、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、2−ヒドロキシエチル基、各種ヒドロキシプロピル基が好ましく、特にメチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましい。R1〜R3は、同一でも互いに異なっていてもよい。
【0014】
一般式(2)において、R4〜R8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖、分岐鎖のいずれであってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基等が挙げられる。これらの中では、脱色力、染色力の観点から、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R4〜R8は、同一でも互いに異なっていてもよい。
m及びnは、1又は2を示し、脱色力、染色力の点でm=1、n=1が好ましい。
一般式(1)及び一般式(2)で表される環状アミン化合物は、それぞれ光学異性体(R体又はS体)であってもラセミ体であってもよい。
【0015】
一般式(1)で表される環状アミン化合物の具体例としては、例えば、1−メチル−2−(2’−ピロリジルメチルアミノメチル)ピロリジン、1−メチル−2−〔2’−(1’−メチルピロリジルメチルアミノメチル)〕ピロリジン、1−メチル−[2’−〔1’−メチルピロリジルメチル(N−メチルアミノメチル)〕]ピロリジン、1−メチル−[2’−〔1’−メチルピロリジルメチル(N−エチルアミノメチル)〕]ピロリジン、1−エチル−2−(2’−ピロリジルメチルアミノメチル)ピロリジン、1−エチル−2−〔2’−(1’−メチルピロリジルメチルアミノメチル)〕ピロリジン、1−エチル−2−[2’−〔1’−メチルピロリジルメチル(N−メチルアミノメチル)〕]ピロリジン、1−エチル−2−〔2’−(1’−エチルピロリジルメチルアミノメチル)〕ピロリジン、1−エチル−2−[2’−〔1’−エチルピロリジルメチル(N−メチルアミノメチル)〕]ピロリジン、1−エチル−2−[2’−〔1’−エチルピロリジルメチル(N−エチルアミノメチル)〕]ピロリジン等、及びこれらの光学異性体が挙げられる。
【0016】
一般式(2)で表される環状アミン化合物の具体例としては、1−(2−アミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピロリジン、1−(2−アミノプロピル)−2−ヒドロキシメチルピロリジン、1−(2−ジメチルアミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピロリジン、
1−(2−アミノエチル)−2−(1−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−アミノエチル)−2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピロリジン、1−(2−アミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピペリジン、1−(2−アミノプロピル)−2−ヒドロキシメチルピペリジン、1−(2−ジメチルアミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピペリジン、1−(2−アミノエチル)−2−(1−ヒドロキシエチル)ピペリジン、1−(2−アミノエチル)−2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペリジン等、及びこれらの光学異性体が挙げられる。
【0017】
一般式(1)で表される環状アミン化合物(ピロリジン誘導体)は、例えば、下記の反応式で示される方法により製造することができる。
【0018】
【化4】

(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Phはフェニル基を示し、R2は前記と同じである。)
【0019】
まず、N−カルボベンゾキシプロリン(3)と2−アミノメチル−1−置換又は無置換ピロリジン(4)とをアミド化させて化合物(5)を得、続いて水素雰囲気下で還元・脱保護することにより、ピロリジン誘導体の中間体(6)を製造する。この中間体(6)のアミド基を還元剤で還元することにより、ピロリジン誘導体(7)を得ることができる。
さらに、ピロリジン誘導体(7)にアルキルハライド又はヒドロキシアルキルハライド(8)を反応させれば、目的のピロリジン誘導体(1−a)を得ることができる。
また、一般式(1)で表される環状アミン化合物(ピロリジン誘導体)は、下記の反応式で示される方法により製造することもできる。
【0020】
【化5】

(式中、R1a及びR3aは、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R2及びXは前記と同じである。)
【0021】
前記ピロリジン誘導体の中間体(6)にアルキルハライド又はヒドロキシアルキルハライド(9)を反応させて化合物(10)とし、この化合物(10)のアミド基を還元剤で還元すれば、ピロリジン誘導体(11)を得ることができる。
このピロリジン誘導体(11)にアルキルハライド又はヒドロキシアルキルハライド(12)を反応させれば、目的のピロリジン誘導体(1−b)を得ることができる。
これらのピロリジン誘導体(7)、(11)、(1−a)及び(1−b)は、文献未載の新規化合物である。
【0022】
一方、一般式(2)で表される環状アミン化合物は、例えば、下記の反応式で示される方法により製造することができる。
【0023】
【化6】

(式中、R4、R5、X、m及びnは前記と同じである。)
【0024】
まず、置換又は無置換の2−ヒドロキシメチルピロリジン又はピペリジン(13)をシアノアルキルハライド(14)と反応させて、中間体(15)とし、その中間体(15)のシアノ基を還元すれば、目的の環状アミン化合物(2−a)を得ることができる。
また、一般式(2)で表される環状アミン化合物は、下記の反応式で示される方法により製造することもできる。
【0025】
【化7】

(式中、R6aは炭素数1〜5のアルキル基を示し、R4、R5、X、m及びnは前記と同じである。)
【0026】
前記中間体(15)をグリニヤー試薬(16)と反応させることにより、目的の環状アミン化合物(2−b)を得ることができる。
【0027】
さらに、一般式(2)で表される環状アミン化合物は、下記の反応式で示される方法により製造することもできる。
【0028】
【化8】

(式中、R7aは炭素数1〜5のアルキル基を示し、R4、R5、R6a、X、m及びnは前記と同じである。)
【0029】
前記環状アミン化合物(2−a)又は(2−b)を、アルキルハライド(17)及びホルムアルデヒドを用いてアルキル化することにより、目的の環状アミン化合物(2−c)を得ることができる。
【0030】
本発明で用いられる一般式(1)で表される環状アミン化合物(ピロリジン誘導体)、又は一般式(2)で表される環状アミン化合物は塩として用いてもよく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、メタンスルホン酸、過塩素酸等の無機酸又は有機酸との塩として用いることが好ましい。
本発明の毛髪脱色助剤においては、一般式(1)及び一般式(2)で表される環状アミン化合物の中から単独で又は2種以上を組み合わせて含有してもよい。
【0031】
本発明の毛髪脱色組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とを混合して用いる組成物であって、(A)一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される環状アミン化合物を含み、混合後のpHが7.5〜12である。毛髪脱色組成物の第1剤にはアルカリ剤に加えて、界面活性剤、水溶性溶剤、キレート剤、酸化防止剤、水等を、第2剤には酸化剤に加えて、キレート剤、pH調整剤等を配合することができる。
また、本発明の染毛組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とを混合して用いる組成物であって、(A)一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される環状アミン化合物、及び(B)酸化染料中間体又は直接染料を含み、混合後のpHが7.5〜12である。染毛組成物の第1剤にはアルカリ剤に加えて、界面活性剤、酸化染料中間体又は直接染料、水溶性溶剤、キレート剤、酸化防止剤、水等を、第2剤には酸化剤に加えて、キレート剤、pH調整剤等を配合することができる。
【0032】
本発明の毛髪脱色組成物及び染毛組成物においては、(A)成分として、一般式(1)及び一般式(2)で表される環状アミン化合物の中から単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。該環状アミン化合物は第1剤及び第2剤のいずれにも配合可能であるが、第1剤に配合することが好ましい。
また、その含有量は、特に制限はないが、十分な脱色・染毛効果の観点から、第1剤と第2剤とからなる組成物全量に基づき、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.02〜10質量%、更に好ましくは0.05〜8質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0033】
本発明で用いられる酸化剤としては、過酸化水素、及び過酸化水素発生剤である過酸化尿素、過酸化メラミン、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等が挙げられ、特に過酸化水素が好ましい。その使用量については系中のpHの必要範囲を超えなければ適宜選択できる。例えば、酸化剤の含有量は、十分な脱色・染毛効果、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、過酸化水素換算量として、第1剤と第2剤からなる全組成物全量に基づき、好ましくは0.1〜12質量%、より好ましくは0.5〜9質量%、特に好ましくは1〜6質量%である。
【0034】
本発明のアルカリ剤としては、アンモニア、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノブタノール等のアルカノールアミン、1,3−プロパンジアミン等のアルカンジアミン、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられ、中でもアンモニア、アルカノールアミンが好ましく、アルカノールアミンの中ではモノエタノールアミンが更に好ましい。これらのアルカリ剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。またその含有量は、pHの必要性を満たす範囲内で適宜選択できるが、十分な脱色・染毛効果の観点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、第1剤と第2剤から成る全組成物全量に基づき、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜3質量%である。
【0035】
本発明の毛髪脱色組成物及び染毛組成物において、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤の混合比は、第1剤:第2剤(質量比)が1:0.5〜1:3の範囲が、実用性の点で好ましい。
また、第1剤は、25℃でpHが8〜12、第2剤は、25℃でpHが2〜5が好ましい。第1剤と第2剤を混合した毛髪脱色組成物及び染毛組成物のpHは7.5〜12であるが、脱色・染毛効果と皮膚刺激性の観点から、pH8〜11が好ましい。
pH調整剤としては、前記アルカリ剤のほか、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸、塩化アンモニウム、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等が挙げられる。
【0036】
本発明の毛髪脱色組成物及び染毛組成物は、更に、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1−ヒドロキシエチル−1,1−ジホスホン酸又はこれらの塩の1種以上を含有すると、酸化剤とアルカリ剤が毛髪内でより効率的に作用し好ましい。これらキレート剤の含有量は、十分な脱色・染毛効果の観点から、第1剤と第2剤からなる組成物全量に基づき、0.005〜5質量%の範囲が好ましい。これらキレート剤は、第1剤、第2剤のどちらか一方又はその両方に配合することができる。
【0037】
本発明の毛髪脱色組成物及び染毛組成物には、媒体として、水及び/又は有機溶剤が使用される。有機溶剤としては、エタノール、2−プロパノール等の低級アルカノール類、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンジルセロソルブ等のセロソルブ類、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類が挙げられる。これらの有機溶剤は1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
本発明の染毛組成物は、(B)酸化染料中間体又は直接染料を含有する。
前記酸化染料中間体としては、通常染毛剤に使用されている公知の顕色物質及びカップリング物質を用いることができる。
顕色物質としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、2−クロロ-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、N−フェニルパラフェニレンジアミンとこれらの塩等が挙げられる。
【0039】
また、カップリング物質としては、例えばメタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、メタアミノフェノール、2−メチル−5−アミノフェノール、2−メチル−5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、レゾルシン、1−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ヒロドキノンとこれらの塩等が挙げられる。
顕色物質とカップリング物質は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量は、それぞれ第1剤と第2剤からなる全組成物全量に基づき、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜4質量%である。
【0040】
一方、直接染料としては、染毛剤に利用可能である公知の酸性染料、塩基性染料、分散染料、反応性染料等を用いることができる。
酸性染料としては、例えば青色1号(C.I.42090)、紫色401号(C.I.60730)、黒色401号(C.I.20470)、だいだい色205号(C.I.15510)、赤色227号(C.I.17200)、赤色106号(C.I.45100)、黄色203号(C.I.47005)、アシッドオレンジ3(C.I.10385)等が挙げられる。
【0041】
塩基性染料としては、例えばベーシックブルー99(C.I.56059)、ベーシックブラウン16(C.I.12550)、ベーシックブラウン17(C.I.12251)、ベーシックレッド76(C.I.12245)、ベーシックイエロー57(C.I.12719)、等が挙げられる。
【0042】
酸性染料及び塩基性染料以外の直接染料としては、例えば2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−6−クロロ−4−ニトロフェノール、3−ニトロ−p−ヒドロキシエチルアミノフェノール、4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、4−アミノ−3−ニトロフェノール、4−ヒドロキシプロピルアミノ−3−ニトロフェノール、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、ディスパーズバイオレット1、ディスパーズブルー1、ディスパーズブラック9、HCブルーNo.2、HCオレンジNo.1、HCレッドNo.1、HCレッドNo.3、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5等が挙げられる。
【0043】
これらの直接染料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、またその含有量は、第1剤と第2剤からなる組成物全量に基づき、好ましくは0.001〜5質量%、特に好ましくは0.01〜4質量%である。また、酸化染料と直接染料を併用することもできる。
【0044】
本発明の毛髪脱色組成物及び染毛組成物には、上記成分の他に、通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。
このような任意成分としては、炭化水素類、動植物油脂、高級脂肪酸類、浸透促進剤、カチオン界面活性剤、天然又は合成の高分子、高級アルコール類、エーテル類、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、蛋白誘導体、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、色素、香料、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0045】
本発明の毛髪脱色組成物及び染毛組成物は、現在広く利用されている酸化型毛髪脱色剤又は染色剤と同様に、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤型として提供される。これらの第1剤及び第2剤の剤形は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状等とすることができ、エアゾール形態とすることもできる。
本発明の毛髪脱色組成物及び染毛組成物は、第1剤と第2剤を混合して、毛髪に塗布する際に液だれしにくいような粘度とすることが好ましい。具体的には、25℃でB型回転粘度計を用いて測定した粘度(使用ローターNo.3、12rpm、1分間回転後の値)が、好ましくは2,000〜100,000mPa・s、より好ましくは4,000〜50,000mPa・sである。
【0046】
本発明の毛髪脱色組成物又は染毛組成物を用いて毛髪を脱色又は染色処理するには、例えば、本発明の毛髪脱色組成物又は染毛組成物の第1剤と第2剤を混合した後、15〜45℃の温度で毛髪に適用し、1〜60分間、好ましくは3〜45分間の作用時間をおいて毛髪を洗浄した後、乾燥すればよい。
また、本発明は、前記一般式(1)で表されるピロリドン誘導体を提供する。このピロリドン誘導体は、文献未載の新規化合物である。
【実施例】
【0047】
実施例1
(S)−1−エチル−2−(2’−(S)−ピロリジルメチルアミノメチル)ピロリジン〔化合物(1−1)〕の製造
300mL四つ口フラスコにN−カルボベンゾキシ−L−プロリン9.97g(40.0mmol)、トルエン120mL、トリエチルアミン5.01g(49.5mmol、1.24eq)を仕込み、攪拌し氷冷(−5℃)した。ここに、クロロ炭酸イソブチルエステル5.46g(40.0mmol、1.0eq)を約2分で滴下した。この間系内の温度を3℃以下に保った。滴下後、1時間氷浴下(−5℃)反応させた。1時間後、(S)−2−アミノメチル−1−エチルピロリジン5.13g(40.0mmol、1.0eq)、トリエチルアミン4.45g(44mmol、1.1eq)をクロロホルム80mLで溶解させた溶液(予め氷冷)を添加し、添加後室温に戻し17.5時間反応させた。17.5時間後、濾過して不溶物を除去し、濾液をイオン交換水(200mL×2回)、3質量%炭酸ナトリウム水溶液(250mL×2回)、イオン交換水(200mL×2回)で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後濃縮して粗N−カルボベンゾキシアミド体17.14gを淡黄色固体として得た。これをエタノール/n−ヘキサンから再結晶してN−カルボベンゾキシアミド体を無色固体として得た(収量12.82g:第1晶6.93g、第2晶5.89g)。
500mLオートクレーブにメタノール300mLに溶かしたN−カルボベンゾキシアミド体12.80g(35.6mmol)を仕込み、5質量%Pd/C(含水率52質量%)1.00gを加えて系内を水素置換し、水素圧0.2MPa、室温で約5時間反応させた。5時間後、常圧に戻してメンブランフィルターでろ過して触媒を除去後、濃縮してN−Hアミド体を黄色油として得た(収量7.91g)。
200mL四つ口フラスコにLiAlH43.25g(85.6mmol、5.1eq)を仕込み、系内を窒素置換した。ここに無水テトラヒドロフラン(THF)45mLを加えて氷冷した後、無水THF20mLに溶かしたN−Hアミド体3.80g(16.9mmol)を約30分で滴下した。滴下終了後、一旦室温に戻し、加熱してTHF還流下約18時間反応させた。18時間後、氷冷してイオン交換水を少しずつ加えて反応を停止した。この時増粘したためTHFを加えた。反応停止後、濾過して不溶物を除去し濾液を濃縮後、乾燥させて粗(S)−1−エチル−2−(2’−(S)−ピロリジルメチルアミノメチル)ピロリジン3.45gを淡黄色液体として得た。これをアルミナカラムクロマトグラフィー(100g、展開:CHCl3→CHCl3:MeOH(容量比)=100:1−10:1)により精製し、薄黄色透明液体として得た(収量2.04g)。
以下に得られた(S)−1−エチル−2−(2’−(S)−ピロリジルメチルアミノメチル)ピロリジンの1H−NMRと13C−NMRのスペクトルデータを示す。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ(ppm)
3.3-3.1(2H), 3.0-2.8(3H), 2.75(1H), 2.6-2.4(2H+1H), 2.3-2.0(2H+2H, br), 2.0-1.8(2H), 1.8-1.6(5H), 1.4-1.3(1H), 1.1(3H).
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ(ppm)
64.3, 58.3, 55.6, 53.9, 53.8, 48.9, 46.4, 29.6, 29.3, 25.6, 22.6, 13.8.
【0048】
実施例2〜5及び比較例1、2
常法に従い、表1に示す酸化型毛髪脱色剤を調製した。
【0049】
【表1】

【0050】
第1剤1質量部に対し第2剤1.5質量部を混合した後、30℃で日本人黒髪(1gトレス)に適用し、30分間の作用時間をおいて毛髪を通常のシャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた脱色毛の色調をミノルタ社製色彩色差計で測色し、未処理毛との色相変化を求めた。その結果、実施例2〜6のいずれの毛髪においても、脱色性は比較例1に比べて良好であり、比較例2に匹敵した。一方、毛髪の感触は、比較例2の脱色毛では強い損傷が感じられたが、実施例2〜6のいずれの毛髪でも比較例1程度の弱い損傷しか感じられなかった。
【0051】
なお、実施例で用いた化合物(1−1)、1−(2−アミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピロリジン〔化合物(2−1)〕、1−(2−アミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピペリジン〔化合物(2−2)〕、及び1−(2−アミノプロピル)−2−ヒドロキシメチルピロリジン〔化合物(2−3)〕の構造を以下に示す。
【0052】
【化9】

【0053】
実施例6〜10、11〜15及び比較例3、4
常法に従い、表2及び表3に示す酸化型染毛剤を調製した。
なお、実施例で用いた化合物(2−4)は、1−(2−ジメチルアミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピロリジンである。
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
第1剤1質量部に対し、第2剤1.5質量部を混合した後、30℃で日本人黒髪(1gトレス)に適用し、30分間の作用時間をおいて毛髪を通常のシャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた脱色毛の色調をコニカミノルタホールディングス株式会社製の色彩色差計を用いて、L***表色系(ここで、L*は明度、a*は赤−緑方向の色度、b*は黄−青方向の色度を示す。)の色差量(ΔE*)を測定し、未処理毛との色相変化を求めた。その結果、実施例6〜15のいずれの毛髪においても、比較例3、4と比べて明るく良好な色合いに染め上がった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される環状アミン化合物を含む毛髪脱色助剤。
【化1】

(式中、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。)
【化2】

(式中、R4〜R8は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、m及びnは、1又は2を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される環状アミン化合物が、1−メチル−2−(2’−ピロリジルメチルアミノメチル)ピロリジン又は1−エチル−2−(2’−ピロリジルメチルアミノメチル)ピロリジンであり、前記一般式(2)で表される環状アミン化合物が、1−(2−アミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピロリジン、1−(2−アミノプロピル)−2−ヒドロキシメチルピロリジン、1−(2−ジメチルアミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピロリジン及び1−(2−アミノエチル)−2−ヒドロキシメチルピペリジンから選ばれる1種以上の化合物である請求項1に記載の毛髪脱色助剤。
【請求項3】
アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とを混合して用いる組成物であって、(A)前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で表される環状アミン化合物を含み、混合後のpHが7.5〜12である毛髪脱色組成物。
【請求項4】
アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とを混合して用いる組成物であって、(A)前記一般式(1)及び/又は前記一般式(2)で表される環状アミン化合物、及び(B)酸化染料中間体又は直接染料を含み、混合後のpHが7.5〜12である染毛組成物。
【請求項5】
下記一般式(1)で表されるピロリジン誘導体。
【化3】

(式中、R1〜R3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。)


【公開番号】特開2006−241121(P2006−241121A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62633(P2005−62633)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】