説明

気体の分析

医療目的の気体分析システム(100、700、800)および技法を記載する。一態様では、システムは、個人と関連付けられた物理的サンプルを採取し、かつ分析のために気体サンプルを供給するためのサンプルコレクタ(105)と、気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度を決定するために、サンプルコレクタ(105)により供給された気体サンプルを分析するための気体分析装置(115)と、気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度と疾患状態との間の相関を反映する情報を含むデータ記憶装置と、気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度および情報に基づいて、個人の医学的状態を決定するためのデータ分析装置(120)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に気体の分析に関し、より詳細には、医療モニタリングおよび診断のための気体分析に関する。
【0002】
この出願は、2005年12月6日に出願された米国特許仮出願第60/742580号の優先権を主張するものであり、その内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
医療モニタリングおよび診断のための気体分析方法およびシステムが必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医療モニタリングおよび診断のための気体分析方法およびシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、個人と関連付けられた物理的サンプルを採取するとともに、分析のために気体サンプルを供給するためのサンプルコレクタと、
前記気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度を決定するために、前記サンプルコレクタにより供給された前記気体サンプルを分析する気体分析器と、
前記気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度と、疾患状態との間の相関を反映する情報を含むデータ記憶装置と、
前記気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度に基づいて、前記個人の疾患状態を識別するためのデータ分析器とを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明の一実施形態による気体分析のためのシステムを概略的に示した図である。
図2は、図1のシステムに含まれ得る気体分析器を概略的に示した図である。
図3は、図1のシステムに含まれ得る他の気体分析器を概略的に示した図である。
図4は、図3の気体分析器のシステム電子回路の一実施形態を示している。
図5は、1つの気体濃度における様々な気体の赤外(IR)吸収スペクトルのグラフである。
図6は、医療パラメータを特徴付けるための濃度測定結果と共に使用され得る分析情報を概略的に示した図である。
図7は、気体の医療分析のためのプロセスの流れ図である。
図8は、気体の医療分析のためのプロセスの流れ図である。
図9は、個人の医療情報を記録するデータアセンブリを概略的に示した図である。
図10は、本発明の代替的な実施形態による気体分析のためのシステムを概略的に示した図である。
様々な図面における同様の参照記号は、同様の要素を示す。
【0007】
図1は、医療分析用などのような気体分析のためのシステム100を概略的に示した図である。システム100は、医療モニタリングおよび診断などのような医療目的のための気体分析において協動するサンプルコレクタ105、気体サンプル準備装置110、気体分析器115、データ分析器120、および出力125を含む。
【0008】
サンプルコレクタ105は、気体分析に関連するサンプルを採取するためのデバイスである。サンプルは、固体サンプル、液体サンプル、または気体サンプルとすることができる。サンプルコレクタ105の設計および構造は、採取するサンプルの性質を反映することができる。例えば、呼気などのような気体サンプルを採取する場合、サンプルコレクタ105は、バルーンまたは他のコンセントレータを含んでもよい。他の例として、尿、血液、汗、または唾液などのような液体サンプルを採取する場合、サンプルコレクタ105は、ボール(bowl)、毛細管、または液体を採取するのに適した他の容器を含んでもよい。さらに他の例として、便または組織などのような固体サンプルを採取する場合、サンプルコレクタ105は、プレート、シート、または固体を採取するのに適した他の容器を含んでもよい。
【0009】
サンプルコレクタ105は、気体サンプル準備装置110に、採取されたサンプルを移送するための1つまたは複数の装置を同様に含んでもよい。このような移送装置の設計および構造は、採取するサンプルの性質を反映することができる。移送装置の例は、ポンプ、弁、およびコンベアベルトなどを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、サンプルコレクタ105は、システム100の他の構成要素と情報を交換するための1つまたは複数のデータ出力および入力を同様に含むことができる。例えば、サンプルコレクタ105は、ある量のサンプルが採取されたことを、システム100中の他の構成要素に知らせるために使用されるレベル指示出力を含むことができる。他の例として、サンプルコレクタ105は、システム100中の他の構成要素から制御信号を受け取る制御信号入力を含むことができる。制御信号は、サンプル採取パラメータの変更などを行うことができる(例えば、サンプル採取の開始または終了をトリガする)。さらに他の例として、サンプルコレクタ105は、サンプルコレクタ105によるサンプルの採取を特徴付ける情報を出力する測定出力を含むことができる。例えば、測定出力は、採取された、個人による呼吸数を特徴付けることができる。
【0011】
気体サンプル準備装置110は、コレクタ105によって採取されたサンプルからの気体サンプルを準備するためのデバイスである。サンプル準備装置110により行われる準備は、液体サンプルの気化、微粒子除去、除湿、およびサンプル濃縮などを含むことができる。したがって、サンプル準備装置110は、1つまたは複数の蒸発器(加熱器または減圧チャンバなど)、微粒子除去デバイス(エアロゾルフィルタ、インパクタ、静電集塵器など)、1つまたは複数の除湿要素(凝縮器、湿気除去器など)、あるいは1つまたは複数のコンセントレータ(活性炭、冷却された物理吸着要素など)を含むことができる。
【0012】
気体サンプル準備装置110の設計および構造は、サンプルコレクタ105により採取されたサンプルの性質を反映することができる。例えば、固体および液体サンプルが採取される場合、気体サンプル準備装置110は、固体または液体サンプルを気化するための吸収器、加熱器、または他のデバイスを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、サンプル準備装置110は、システム100の他の構成要素と情報を交換するための1つまたは複数のデータ出力および入力を同様に含むことができる。例えば、サンプル準備装置110は、ある量のサンプルが準備されたことをシステム100中の他の構成要素に知らせるために使用され得るレベル指示出力を含むことができる。他の例として、サンプル準備装置110は、システム100の他の構成要素から制御信号を受け取る制御信号入力を含むことができる。制御信号は、サンプル準備パラメータを変更することなどを行うことができる(例えば、サンプル準備の開始または終了をトリガする)。さらに他の例として、サンプル準備装置110は、サンプル準備装置110によるサンプルの準備を特徴付ける情報を出力する測定出力を含むことができる。例えば、測定出力は、サンプルから除去された湿気の量、凝縮器など能動要素の動作パラメータを特徴付けることができる。さらに他の例として、サンプル準備装置110は、システム100中の他の構成要素に対する制御信号を生成する制御信号出力を含むことができる。制御信号は、サンプル採取パラメータを変更することなどを行うことができる(例えば、サンプル採取の開始または終了をトリガする)。
【0014】
気体分析器115は、気体サンプルを特徴付ける1つまたは複数の信号を生成するために、気体サンプル準備装置110により準備された気体サンプルを分析するためのデバイスである。気体分析器115は、サンプルの物理的、光学的、および化学的性質を含む気体サンプルの1つまたは複数の特徴を測定することにより、気体サンプルを分析することができる。例えば、気体分析器は、気体サンプル中の1つまたは複数の気体成分種の濃度を決定することができる。気体成分種は、水以外の種を含むことができる、すなわち、その種は非水性とすることができる。例えば、気体サンプルが呼気である場合、気体成分種は、呼気微量化合物とすることができる。
【0015】
気体分析器115は、赤外線分光デバイスなどのような1つまたは複数の光学分光デバイスを含むことができる。一実施形態では、気体分析器115は、さらに以下で論ずる光音響分光計を含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、気体分析器115は、システム100の他の構成要素と情報を交換するための1つまたは複数のデータ出力および入力を同様に含むことができる。例えば、気体分析器115は、システム100中の他の構成要素から制御信号を受け取る制御信号入力を含むことができる。制御信号は、気体分析パラメータの変更などを行うことができる(例えば、気体分析の開始または終了をトリガする)。さらに他の例として、気体分析器115は、気体サンプルを特徴付ける測定情報を出力する測定出力を含むことができる。このような測定情報は、システム100中の複数の構成要素に対して(すなわち、データ分析器120への出力に加えて)出力され得ることに留意されたい。このような測定情報は、他の構成要素によってそれらの動作を制御する際に使用され得る。代替として、気体分析器115は、1つまたは複数の制御信号を、1つまたは複数の他の構成要素に直接供給する1つまたは複数の制御信号出力を含むことができる。
【0017】
データ分析器120は、(例えば、特徴付けられた気体サンプルに関連付けられた個人の医学的状態を特徴付けるためなど)気体分析器115による気体サンプルの特徴付けを分析するためのデバイスである。医学的状態の特徴付けは、医療モニタリングおよび診断などの目的に対して使用することができる。いくつかの実施形態では、特徴付けの分析は、環境モニタリングなど、他の目的のために使用され得る。データ分析器120は、1組のマシン可読命令の論理に従ってデータ処理活動を実施するデータ処理装置を含むことができる。このような命令は、(ASICおよび/または他の回路など)ハードウェア、および/または(ハードドライブ、コンパクトディスク、メモリカードなどのデバイスに記憶された)ソフトウェアを含む様々な情報キャリアで有形に実施され得る。
【0018】
データ分析器120により実施されるデータ処理活動は、気体サンプル中の種の濃度が変化した尤度の統計解析を含むことができる。いくつかの実施形態では、このような変化は疾患状態が個人に存在する尤度の分析と同様に関連付けることができる。統計解析は、従来の統計的試験、パターン認識、ファジー論理、ルールベースのエキスパートシステムなどを含む、いくつかの異なる統計手法のいずれかを含むことができる。データ分析器120は、したがって、ニューラルネットワーク、主要な成分分析モデルを実施する活動を行うデータ処理装置などを含むことができる。
【0019】
データ分析器120により実施される統計解析は、データ分析器120にとってアクセス可能な1組の分析情報130に基づくことができる。分析情報130は、気体分析器115による気体サンプルの特徴付けと疾患状態との間の相関を決定するために使用され得る1群の情報である。分析情報130は、ソフトウェア内に、またはハードウェア内に、ローカルまたは遠隔で記憶することができる。いくつかの実施形態では、分析情報130は、個人および/またはシステム100の構成要素の性質についての最新の理解を反映するように、動的に変更可能なものとすることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、データ分析器120はまた、システム100の他の構成要素と情報を交換するための1つまたは複数のデータ出力および入力を含むことができる。例えば、データ分析器120は、システム100中の他の構成要素から制御信号を受け取る制御信号入力を含むことができる。制御信号は、データ分析パラメータを変更することなどを行うことができる(例えば、データ分析の開始または終了をトリガする)。さらに、他の例として、データ分析器120は、医療パラメータの特徴付けを出力する分析出力を含むことができる。このような医療パラメータの特徴付けは、システム100中の複数の構成要素に出力され得る(すなわち、医療情報出力125への出力に加えて)ことに留意されたい。このような医療パラメータの特徴付けは、他の構成要素における制御信号として使用することができる。代替として、データ分析器120は、1つまたは複数の制御信号を1つまたは複数の他の構成要素に供給する1つまたは複数の制御信号出力を含むことができる。
【0021】
システム100の構成要素は異なる方法で配置することもできるとともに、さらに気体分析で協動することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、システム100は、個人により運ぶことの可能なハンドヘルド型または他の患者可搬型装置とすることができる。他の実施形態では、システム100の構成要素は、互いに遠隔にあり、インターネットなどのデータ通信ネットワークを用いて接続することができる。
【0022】
図2は、システム100(図1)に含まれ得る気体分析器115を概略的に示す。気体分析器115は、電磁放射源205、電磁放射コレクタ210、タイミングデバイス215、波長選択デバイス220、および分析チャンバ225を含む。
【0023】
電磁放射源205は、赤外線などの電磁放射源である。電磁放射源205により生成される電磁放射の少なくともいくらかは、分析される気体の可能性のある1つまたは複数の成分と相互作用することのできる波長からなる。例えば、電磁放射源205は、近赤外線、中赤外線、遠赤外線またはテラヘルツ(THz)周波数赤外線を放出することができる。電磁放射源205は、白熱電球の熱線フィラメントなど、比較的広帯域の放射源とすることができる。他の実施形態では、電磁放射源205は、発光ダイオードまたはレーザ源(図示せず)など、比較的狭帯域の放射源とすることができる。いくつかの実施形態では、電磁放射源205は、複数の個別の要素を含むことができる。例えば、電磁放射源205は、例えば、4.3、4.7、3.4、および2.7マイクロメートルの赤外線を放出するLEDのアレイを含むことができる。
【0024】
電磁放射コレクタ210は、電磁放射源205により生成される電磁放射の少なくともいくらかを採取するための装置である。コレクタ210は、放物線状の、または球面のミラーとすることができる。コレクタ210はまた、レンズまたはその組合せ、および他の光学要素とすることもできる。例えば、コレクタ210は、コリメータ、セレン化亜鉛(ZnSe)レンズなどを含むことができる。
【0025】
タイミングデバイス215は、分析チャンバ225に対する電磁放射の入射を時間と共に変化させるデバイスである。例えば、タイミングデバイス215は図示したように、チョッパホイール(chopper wheel)とすることができる。他の実施形態では、タイミングデバイス215は、(回転ミラーまたはシャッタなどの)異なる機械的デバイス、または(電磁放射源205による電磁放射の生成を変化させる発振器またはスイッチなどの)電気的なデバイスとすることもできる。いくつかの実施形態では、タイミングデバイス215は、電磁放射源205がパルスレーザ源である場合など、電磁放射源205の一態様とすることができる。
【0026】
波長選択デバイス220は、分析チャンバ225に入射する電磁放射の波長を変化させるデバイスである。例えば、波長選択デバイス220は、選択された波長の電磁放射をそれぞれが通す1群のフィルタウィンドウ235を含むホイール230とすることができる。ホイール230は、軸Aを中心として回転可能であり、コレクタ210から分析チャンバ225へと電磁放射を送るための光路240と交差するように配置される。フィルタウィンドウ235は、軸Aの回りに円で配置され、したがって、ホイール230が軸Aを中心に回転することにより、異なるフィルタウィンドウ235が、ホイール230と光路240の交差部を横切って、順次移動することができる。回転中、光路240がこの一連のウィンドウ235と交差すると、分析チャンバ225に入射する放射の波長がウィンドウ235の透過スペクトルに従って変化することになる。
【0027】
波長選択デバイス220は、他の方法で実施することもできる。例えば、透過フィルタに代えてミラーを使用することができるとともに、光路240中への挿入機構を変更することもできる。いくつかの実施形態では、波長選択デバイス220は、電磁放射源205が波長可変レーザ源である場合など、電磁放射源205の一態様とすることができる。
【0028】
分析チャンバ225は、気体サンプルを含み、電磁放射源205により生成された電磁放射の少なくともいくらかと相互作用させるために気体サンプルを供給する密閉容器である。図示したように、分析チャンバ225は、サンプル入口245、サンプル出口250、電磁放射入口255、電磁放射シンク260、および1つまたは複数の変換器265を含む。
【0029】
サンプル入口245は、気体サンプルの移送のために、気体サンプル準備装置110(図1)から分析チャンバ225へと流体流れの経路を生み出す管を含むことができる。サンプル入口245は、分析チャンバ225への気体サンプルの移送を制御するための弁270または他の流れ調整器を含むことができる。サンプル出口250は、分析チャンバ225から気体サンプルを放出するための流体流れの経路を生み出す。サンプル出口250は、分析チャンバ225からの気体サンプルの移送を制御するために、弁275または他の流れ調整器を含むことができる。いくつかの実施形態では、弁270、275は、分析チャンバ225中のサンプルの滞留時間を自動的に制御するように動作され得る。
【0030】
電磁放射入口255は、電磁放射源205により生成された電磁放射の少なくともいくらかを分析チャンバ225へと通すが、さらに気体サンプルの格納を支援するウィンドウである。例えば、電磁放射入口255はゲルマニウムウィンドウとすることができる。電磁放射シンク260は、分析チャンバ225中の電磁放射の量を減少させるが、なお、気体サンプルの格納を支援するデバイスである。例えば、電磁放射シンク260は、図示したように、電磁放射を分析チャンバ225から外に通過させることのできるゲルマニウムウィンドウとすることができる。他の実施形態では、電磁放射シンク260は、黒体または他の電磁放射の吸収体とすることができる。
【0031】
変換器265は、電磁放射と、分析チャンバ225中の気体サンプルとの相互作用を電気信号に変換する1つまたは複数のデバイスである。例えば、変換器265は、図示したように、光音響分光法を実施するために、赤外電磁放射と気体サンプルとの相互作用により生成された音を感知する(マイクロフォン、カンチレバー要素、または他の音響検出器などの)音響変換器とすることができる。例えば、変換器265は、ゼンハイザー社製1/2インチコンデンサ型自由音場用マイクロフォン(ME66、ゼンハイザー・エレクトロニック・コーポレーション、米国コネチカット州オールドライム)とすることができる。
【0032】
他の実施形態では、変換器265は、電磁放射と気体サンプルとの相互作用を他の方法で検知することが出来る。例えば、変換器265は、分析チャンバ225を横断する電磁放射の透過スペクトルを測定する光検出器とすることができる。
【0033】
図3は、システム100(図1)に含まれ得る代替の気体分析器115を概略的に示している。気体分析器115は、電磁放射源305、測定チャンバ310、参照チャンバ315、および1群のシステム電子回路320を含む。
【0034】
電磁放射源305は、図示したように、パルスダイオードレーザなど、電磁放射の電磁放射源である。パルスダイオードレーザは、測定チャンバ310への経路330に沿って伝播する電磁放射のパルスビーム325を生成することができる。いくつかの実施形態では、経路330は導波管とすることができる。いくつかの実施形態では、電磁放射源305は、様々な波長の電磁放射を生成するように可変波長とすることができる。
【0035】
測定チャンバ310は、気体サンプルを含むことができ、電磁放射源205により生成される電磁放射の少なくともいくらかと相互作用させるために、気体サンプルを供給することのできる密閉容器である。図示したように、測定チャンバ310は、サンプル入口335、サンプル出口340、電磁放射入口345、電磁放射シンク350、および1つまたは複数の変換器355を含む。サンプル入口335は、気体サンプルを移送するために、気体サンプル準備装置110(図1)から測定チャンバ310への流体流れの経路を生み出す管を含むことができる。サンプル入口335は、気体サンプルと共に、測定チャンバ310中に音が送られるのを妨げるか、または阻止するための音響緩衝装置360または他の機構を含むことができる。サンプル出口340は、測定チャンバ310から気体サンプルを解放するための流体流れの経路を生み出す。サンプル出口340は、サンプル出口340の流体流れの経路に沿って、測定チャンバ310中に音が伝わるのを妨げる、または阻止するための音響緩衝装置365または他の機構を含むことができる。
【0036】
電磁放射入口345は、電磁放出源305により生成された電磁放射の少なくともいくらかを測定チャンバ310に通すが、さらに気体サンプルの格納を支援するウィンドウである。例えば、電磁放射入口345は、ゲルマニウムウィンドウとすることができる。電磁放射シンク350は、測定チャンバ310中の電磁放射の量を減少させるが、なお、気体サンプルの格納を支援するデバイスである。例えば、電磁放射シンク350は、ビームダンプ(beam dump)とすることができる。
【0037】
変換器355は、赤外電磁放射と、測定チャンバ310中の気体サンプルとの相互作用から得られる音響エネルギーを電気信号に変換する1つまたは複数のデバイスである。例えば、変換器355は、光音響分光法を実施するための1つまたは複数のマイクロフォン、カンチレバー要素などとすることができる。
【0038】
参照チャンバ315は、測定チャンバ310中の気体サンプルの性質の少なくともいくつかに近似させた参照気体サンプルを含む密閉容器である。参照チャンバ315中の参照サンプルは、測定チャンバ310中の気体サンプルの予測されるものと比較可能な圧力、温度、またはさらに組成を有することにより、測定チャンバ310中の気体サンプルに近似させることができる。このような近似は、能動および/または受動要素を用いて取得することができる。例えば、比較可能な温度は、参照チャンバ315と測定チャンバ310の受動的な熱的結合により取得され得る。他の例として、参照チャンバ315および/または測定チャンバ310は、比較可能な温度を維持するために、加熱器または冷却器などの能動要素を含むことができる。いずれの場合も、参照チャンバ315および測定チャンバ310の温度および/または圧力に関する情報は、システム電子回路320に測定結果または他の情報を供給する1つまたは複数のセンサ370を用いて取得することができる。
【0039】
測定チャンバ310とは対照的に、参照チャンバ315は、電磁放射源305により生成された電磁放射との相互作用から参照気体サンプルを隔離する。参照チャンバ315はまた、参照チャンバ315中の気体サンプルの背景音響エネルギーを電気信号へと変換する1つまたは複数の変換器375を含むことができる。参照チャンバ315は、電磁放射源205により生成された電磁放射との相互作用から参照サンプルを隔離するので、このような背景音響エネルギーは、この電磁放射との相互作用から得られたものではない。むしろ、このような背景音響エネルギーは雑音を表す。したがって、参照チャンバ315は、差動計測法(differential measurement)を行うことを可能にし、また測定チャンバ310中の気体サンプルと電磁放射との間の相互作用の結果をより容易に決定することができる。
【0040】
システム電子回路320は、気体分析器115により、気体サンプルの分析を制御し、かつ分析するための1群の回路である。例えば、システム電子回路320は、変換器355、375およびセンサ370からの測定結果を受け取るための入力を含むことができる。システム電子回路320はまた、電磁放射源305により生成された光のパルス発生(pulsing)および/または波長を制御する信号出力など、1つまたは複数の制御信号出力を含むことができる。他の例として、システム電子回路320はまた、入口335および出口340の弁、チャンバ310、315と関連付けられた能動的な温度および圧力制御要素などを制御する信号出力を含むこともできる。
【0041】
図4は、システム電子回路320の一実施形態をより詳細に示す。システム電子回路320の図示した実施形態は、アナログ雑音除去回路405、アナログ-デジタル変換器410、デジタル信号処理回路415、コントローラ回路420、および1つまたは複数の入力/出力デバイス425、430を含む。
【0042】
アナログ雑音除去回路405は、変換器355、375により出力されたアナログ測定信号から雑音を除去するための回路である。雑音除去回路405は、図示したように、差動増幅器を含むことができる。他の実施形態では、雑音除去回路405は、高域、低域、または帯域フィルタを含む他のアナログ処理回路を含むことができる。いくつかの実施形態では、アナログ雑音除去回路405はまた、通過帯域またはロックイン増幅器などの増幅器を含むことができる。いくつかの実施形態では、アナログ雑音除去回路405のすべて、または一部が、変換器355、375で物理的に収容され得る。
【0043】
アナログ−デジタル変換器410は、雑音除去回路405から出力された雑音が除去されたはずの信号など、アナログ信号を1つまたは複数のデジタル信号に変換するためのデバイスである。いくつかの実施形態では、アナログ−デジタル変換器410は、複数のチャネルを有し、比較的高速な/高解像度のデバイスとすることができる。例えば、アナログ−デジタル変換器410は、100kHzのサンプリング周波数および20ビットで動作することが可能である。
【0044】
デジタル信号処理回路415は、デジタル信号による、分析される気体サンプルの性質の表現を改善するために、1つまたは複数のデジタル信号を処理するためのデバイスである。例えば、デジタル信号処理回路415は、アナログ−デジタル変換器410により出力されたデジタル信号の信号対雑音比を改善するために1つまたは複数の適応型雑音除去アルゴリズムを実施することができる。このようなアルゴリズムの諸例は、最小二乗法(LMS:Least Mean Squares)アルゴリズム、正規化LMS(NLMS:Normalized LMS)アルゴリズム、再帰的最小二乗法(RLS:Recursive Least Squares)アルゴリズム、およびアフィン射影アルゴリズム(APA:Affine Projection Algorithms)を含む。さらに他の実施形態として、デジタル信号処理回路415は、積分器などを含むデジタルフィルタリングおよび/または増幅回路を含むことができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、デジタル信号処理回路415は、1つまたは複数のセンサ370により行われた温度および/または圧力測定など、気体サンプルの性質の1つまたは複数の測定結果に少なくとも部分的に基づいて、分析される気体サンプルの性質の表現を改善することができる。
【0046】
コントローラ回路420は、気体分析器による気体サンプルの分析を制御するためのデバイスである。コントローラ回路420は、1組のマシン可読命令の論理に従って、データを処理することにより、このような動作を実施するデータ処理装置とすることができる。命令は、例えば、ハードウェアで、ソフトウェアで、またはその組合せで有形に実施することができる。制御活動は、例えば、分析を開始すること、分析パラメータを変更すること、分析および/または参照チャンバ中の気体の移動、温度、および圧力を制御することなどを含むことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、コントローラ回路420はまた、1つまたは複数の測定結果を生成することができる。測定結果は、生データまたは処理されたデータとすることができる。生の測定データは、様々な波長における吸収係数など、直接の測定結果を示すデータを含む。処理された測定データは、例えば、気体サンプルの1つまたは複数の成分種の濃度の定量化、成分気体種の濃度と個人の健康の間の相関、生データと既知の気体の間の比較、および特定の疾患状態が存在する可能性の指示を含むことができる。しかし、上記で論じたように、処理された測定結果はどこか他で(例えばデータ分析器120 (図1)で)、生成することもできる。
【0048】
いくつかの実施形態では、データ分析の結果は、気体分析器による気体サンプルの分析を制御するのに使用され得る。例えば、分析のための波長は、他の波長に対して行われた測定結果に基づいて選択することができるが、あるいはデータ収集パラメータ(例えば、収集時間)を他の測定結果に基づいて変更することができる。
【0049】
入力/出力デバイス425、430は、ヒトと直接および/または間接に対話するための1つまたは複数のデバイスである。ヒトとの直接対話は、システム電子回路320が、液晶表示(LCD)画面430を介して、生の測定結果を、または分析が完了したことを示す信号を出力した場合など、ヒトとシステム電子回路320との間で情報が交換されるときに生ずる。ヒトとの間接的な対話は、システム電子回路320が、図示したようにRS−232ポートもしくはUSBポート425などのデータポートを介して、コンピュータから分析パラメータへの変更を受け取った場合など、ヒトと情報を交換する第2のデバイスに対して情報が供給されたときに生ずる。したがって、入力/出力デバイス425、430を介するヒトとの対話は、気体分析器115による分析の制御、および/または気体分析器115により取得された測定結果の供給を含むことができる。
【0050】
前記したように、生の測定結果は、様々な波長における吸収係数を示すデータを含むことができる。生の測定データは、測定値の連続スペクトルまたは離散的な波長での測定値の集まりを含むことができる。生の吸収測定値は、様々な気体の吸収係数と濃度の積の線形加算として分析することができ、様々な気体の濃度を決定することが出来る。
【0051】
図5は、1つの気体の濃度における様々な例の気体の赤外(IR)吸収スペクトルのグラフ500である。グラフ500は、エタン505のIR吸収スペクトル、メタン510のIR吸収スペクトル、アセチレン515のIR吸収スペクトル、エチレン520のIR吸収スペクトル、水525のIR吸収スペクトル、一酸化炭素530のIR吸収スペクトル、二酸化炭素535のIR吸収スペクトル、フルフラール540のIR吸収スペクトル、およびヘキサン545のIR吸収スペクトルを含む。図示さているように、スペクトル505、510、515、520、525、530、535、540、545のスペクトル指紋(fingerprint)の相互間にいくらかの重複がある。しかし、分析サンプルが様々な気体を含む場合であっても、正確な測定を可能にするための十分な一意の領域がある。
【0052】
前記したように、様々な気体の濃度は、気体分析器115におけるデータ処理活動の一部として、またはデータ分析器120におけるデータ処理活動の一部として決定することができる。濃度の決定がどこで行われるかにかかわらず、濃度測定は、個人の医学的状態を特徴付けるために使用することができる。
【0053】
図6は、個人の医学的状態を特徴付けるために、濃度測定結果と共に使用できる分析情報130を概略的に示している。分析情報130は、一般情報605および個人情報610を含む。一般情報605は、個人の母集団と関連付けられた気体サンプルの特徴と、その母集団の医学的状態との間の相関を反映する。例えば、一般情報605は、ある母集団から取り出された気体サンプル中の気体種の濃度と、その母集団における疾患状態との間の相関を反映することができる。個人の母集団は、共通の特徴を共用するヒト全体、またはヒトのサブグループとすることができる。例えば、共通の特徴は、人口統計的なまた身体的な特徴(例えば、年齢、人種、性別、体重、身長、活動レベルなど)、健康状態(例えば、特有の疾患状態、妊娠など)、および/または個人の環境の特徴(例えば、食事、投薬、標高など)を含むことができる。いくつかの実施形態では、一般情報605は、これらの特徴に対して、分析された個人の変化した性質を反映させるように動的に更新することができる。例えば、個人が年を取り、または食事を変更すると、一般情報605はこのような変化を反映するために変更され得る。
【0054】
個人情報610は、特定の個人と関連付けられた気体サンプルの特徴と、その特定の個人の医学的状態との間の相関を反映する。例えば、個人情報610は、特定の個人から取り出された気体サンプル中の気体種の濃度と、疾患状態の間の相関を反映することができる。個人情報610は、特定の個人と関連付けられた気体サンプルの分析結果の履歴記録に基づくことができる。したがって、いくつかの実施形態では、個人情報610は、例えば、追加の履歴記録が蓄積されると、個人の個人的な特徴についての最新の理解を反映するように、動的に変更可能にすることができる。
【0055】
図7は、医療目的などのための気体分析のためのプロセス700の流れ図である。プロセス700は、1組のマシン可読命令の論理に従って、データ処理活動を実施するデータ処理装置により実施することが出来る。例えば、プロセス700は、システム100 (図1)のデータ分析器120により実施することが出来る。
【0056】
705で、システム実施プロセス700は、気体サンプルに対して実施された1つまたは複数の測定の結果を受け取ることができる。その結果は、気体サンプルの物理的、光学的、および/または化学的性質を反映することができる。例えば、その結果は、光音響分光法を用いて取得されるものなど、気体サンプルの光学的性質を反映することができる。測定情報は、したがって、気体サンプル中の様々な種の濃度を反映することができる。
【0057】
710で、システム実施プロセス700は、受け取った測定結果を一般情報と比較することができる。その比較は、気体サンプルと関連付けられた個人に1つまたは複数の疾患状態が存在する尤度の判定など、医療目的のために実施され得る。
【0058】
715で、システム実施プロセス700は、受け取った測定結果を個人情報と比較することができる。その比較は、気体サンプルと関連付けられた個人に1つまたは複数の疾患状態が存在する尤度の判定など、医療目的のために実施することができ、長時間にわたる疾患状態の進行をモニタし、かつ/または治療計画の有効性をモニタする。
【0059】
いくつかの実施形態では、710における一般情報との比較は、715における個人情報との比較の数ヶ月前に行うことが出来る。例えば、一般情報との比較は、特定の個人に対する統計的に有益なデータベースが組み立てられるまでに行うことができる。このようなデータベースが組み立てられると、個人情報との比較を実施することが出来る。
【0060】
いくつかの実施形態では、710における一般化情報との比較結果、および715における個人情報との比較結果は、単一のパラメータを決定するために併せて使用することができる。例えば、比較結果は共に、個人に疾患状態が存在する尤度を判定するために使用され得る。
【0061】
図8は、気体の医療分析のためのプロセス800の流れ図である。プロセス800は、1組のマシン可読命令の論理に従って、データ処理活動を実施するデータ処理装置により実施することができる。例えば、プロセス800は、システム100 (図1)のデータ分析器120により実施することが出来る。
【0062】
さらに以下に記載するように、プロセス800は、受け取った測定結果と一般情報との比較、および受け取った測定結果と個人情報との比較を含む。プロセス800は、したがって、プロセス700 (図7)と共に実施することができる。プロセス800は同様に分離して実施することも出来る。
【0063】
805で、システム実施プロセス800は、気体サンプル中に何らかの「既知の」分析対象物質(analyte)が存在するかどうか識別することができる。既知の分析対象物質は、データ処理システムにより気体サンプル中に存在することが予測されるものである。このような予測は、生の測定結果を分析するためにデータ処理システムにより使用されたアルゴリズムまたは他のデータ分析中に反映され得る。
【0064】
既知の分析対象物質の識別は、1つまたは複数の成分の濃度を決定するための、IR吸収測定値とIR吸収係数との比較を含むことができる。例えば、ホルムアルデヒドは、約3.56ミクロン(C−H結合)および5.64〜5.82ミクロン(C=O結合)の2つの吸収領域を有する。したがって、ホルムアルデヒドは、メタン(約3.39ミクロンの吸収領域を有する)、アセトアルデヒド、メタノール(約3.3〜3.5ミクロンの吸収領域を有する)、ジメチルエーテル(約3.4〜3.5ミクロンの吸収領域を有する)、および水(約5〜6ミクロンの吸収領域を有する)に対して何らかの交差感度(cross-sensitivity)を有する。一酸化炭素、二酸化炭素、エタン、エチレン、アセチレンは、ホルムアルデヒドに対して交差感度を有しない。したがって、水だけを気体サンプルから除去すると、5.6〜5.8ミクロン領域における吸収が、ホルムアルデヒドを検出するために使用することができる。
【0065】
810で、システム実施プロセス800は、同様に気体サンプル中に、何らかの「未知の」分析対象物質が存在するかどうか識別することができる。未知の分析対象物質は、データ処理システムにより、気体サンプル中に存在することが予測されないものである。未知の分析対象物質の識別は、生の測定結果から、既知の成分の影響を減算することを含むことができる。例えば、既知の成分に属することができるIR吸収が生の測定結果から減算されて、1組の属さないIR吸収を生成することができる。属さないIR吸収は、次いで、未知のものを識別するために、追加のIRスペクトルと比較され得る。いくつかの実施形態では、このような未知のもの(IR吸収係数など)に関する情報は、後に、関連する個人に対する既知の分析対象物質の識別で使用することができる。
【0066】
815で、システム実施プロセス800は、既知の分析対象物質および未知の分析対象物質の濃度と、個人の医学的状態とを相関させることができる。医学的状態は、疾患状態が存在する尤度、任意のこのような疾患状態の重篤度、任意の治療プロトコルの有効性などを含むことができる。相関は、長時間にわたる個人に対する分析対象物質濃度の変化をモニタすること、およびこのような分析対象物質濃度を分析対象物質の概して許容可能なレベルと比較することを含むことができる。その比較は、例えば、1組の濃度測定が、いくつかの身体的特徴を有する、いくつかの医学的状態を有する、いくつかの環境条件を受けるなど、特定の人口統計群の個人に対する許容可能なレベルに含まれているかどうかを判定することができる。その相関は、したがって、分析対象物質濃度、一般情報、および/または個人情報に基づいて、1つまたは複数の疾患状態を識別することができる。
【0067】
820で、システム実施プロセス800は、個人記録に医療情報を記録することができる。医療情報は、生の測定結果、分析対象物質の識別結果、分析対象物質と医学的状態との相関結果などを含むことができる。このような個人記録はそれ自体を、後の気体分析で使用することができる。例えば、単一の個人に対する個人医療情報は、毎日または他の基準で記録することができる。この個人化されたベースラインに対する変更は記録されるとともに、医学的状態を識別するために使用され得る。デバイスが、異なる個人により後に使用される場合、デバイスは、一般化された設定に再較正され得る。したがって、デバイスは、複数の個人に対して、または単一の個人に対して個人化されたモニタとして使用することができる。
【0068】
825で、システム実施プロセス800は、個人の医学的状態の記述を出力することができる。その記述は、例えば、生の測定結果、分析対象物質の識別、任意の疾患状態の識別などを含むことができる。例えば、その記述は、その個人が特定の疾患を有する可能性が高いかどうかを示す単純な可否出力を含むことができる。医学的状態の記述は、入力/出力デバイス425、430 (図4)など、1つまたは複数の出力デバイスを介して出力することができる。
【0069】
図9は、気体分析に関係する個人医療情報610 (図6)を記録するデータアセンブリ900の一実施形態を概略的に示す。したがって、データアセンブリ900は、プロセス800 (図8)の825でデータを取り込み、815でアクセスされ得る。
【0070】
データアセンブリ900は、データテーブルとして示されているが、データアセンブリの他のクラス(例えば、記録、リスト、配列、オブジェクト、ファイル、文書など)も可能である。データアセンブリ900は、個人の識別子905、成分欄910、および1つまたは複数の特徴欄915、920を含む。識別子905は、データアセンブリ900が関連付けられている個人を識別する。識別子905は、名前、数字、またはその他の形で個人を識別することができる。成分欄910は、個人と関連付けられた気体サンプルの、可能性のある成分種、または成分種の群を識別する情報を含む。成分欄910は、名前、数字、またはその他の形で可能性のある成分種または成分種群を識別することができる。
【0071】
特徴欄915、920は、識別子905により識別された個人に対する成分欄910中で識別された成分種の1つまたは複数の特徴を表す情報を含む。例えば、特徴欄915、920は、(濃度などの)測定結果、(例えば、測定時間および日付、測定パラメータなどの)測定情報、および気体の医療分析に関連すると考えられる追加の情報を含むことができる。追加の情報は、例えば、食事情報、投薬情報、活動レベル情報などを含むことができる。
【0072】
欄910、915、920の内容は、成分種を表す情報が、それらの成分種の特徴を表す情報と関連付けられるように、一群の欄925で関連付けられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、データアセンブリ900中の情報は、他の医療情報と関連付けられて記憶され得る。他の医療情報は、他の手段、すなわち、個人に関連付けられた気体サンプルの分析以外の他の手段により、取得される個人の医学的状態の記述を含むことができる。例えば、妊娠からの時間、または疾患状態の重篤度は、データアセンブリ900中に気体分析情報と関連付けて記録され得る。
【0074】
表1は、成分欄910中で識別され得る成分種群の例を一覧表示する。前記したように、識別子905により識別された個人に対して、データアセンブリ900は、これらの成分種群を識別する情報と関連付けられたこれらの成分種群の特徴(濃度など)を表す情報を記憶することができる。
【0075】
【表1】

【0076】
表2は、成分欄910中で識別され得る成分種の例を一覧表示する。上記で論じたように、識別子905により識別された個人に対して、データアセンブリ900は、これらの成分種を識別する情報と関連付けられた、これらの成分種の特徴(濃度など)を表す情報を記憶することができる。
【0077】
【表2】

【0078】
図10は、医療目的などの気体分析のためのシステム100の代替的な実施形態を概略的に示している。サンプルコレクタ105、気体サンプル準備装置110、第1の気体分析器115、データ分析器120、および出力125に加えて、システム100のこの実施形態はまた、第2の気体分析器1005を含む。
【0079】
第2の気体分析器1005は、気体サンプルを特徴付ける1つまたは複数の信号を生成するために、気体サンプル準備装置110により準備された気体サンプルを分析するための装置である。気体分析器1005は、サンプルの物理的、光学的、および化学的性質を含む、気体サンプルの1つまたは複数の特徴を測定することにより、気体サンプルを分析することができる。例えば、気体分析器1005は、その内容を参照により本明細書に組み込む、(2004年5月26日に出願された)米国特許出願公開第2004/0261500号明細書に記載された水素センサなどの導電率センサを含むことができる。この導電率センサは、パラジウムのナノ粒子の集合体の導電率の変化を検出することにより動作する。
【0080】
いくつかの実施形態では、気体分析器1005は、同様にシステム100の他の構成要素と情報を交換するための1つまたは複数のデータ出力および入力を含むことができる。例えば、気体分析器1005は、気体サンプルを特徴付ける測定情報を出力する測定出力を含むことができる。このような測定情報は、第1の気体分析器115を含む、システム100中の複数の構成要素に対して出力され得ることに留意されたい。
【0081】
システム100中の構成要素への測定情報出力は、第1の気体分析器115から出力された測定情報と同様に、それらの構成要素により処理され得る。
【0082】
本明細書で述べたシステムおよび技法は、いくつかの異なるシナリオで使用することができる。例えば、本システムおよび技法は、以下のものを識別するために使用することができる。すなわち、
・尿毒症性口臭:尿毒症性口臭は、腎臓機能不全、歯科的不健康、および/または胃腸問題と関連付けられる。ジメチルアミンおよびトリメチルアミンを含む、毒性のある揮発性代謝生成物が識別され得る。http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/297/3/132を参照のこと。
・ピロリ菌試験:ピロリ菌に対する陽性試験は、胃腸の痛みがバクテリアにより引き起こされ得ることを示す。例えば、ピロリ菌は、ウレアーゼ酵素を生成し、その検出は、尿素呼気試験として知られる同位体トレーサ試験の基礎を形成する。例えば、http://www.labtestsonline.org/understanding/analytes/h_pylori/test.htmlを参照のこと。
・膵臓機能不全:膵外分泌機能不全を伴う患者中のバクテリア全面成長は、グルコースを用いた水素ガス呼気試験を用いて識別できることが示唆されている。例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=9598808&itool=iconabstr&query_hl=2を参照のこと。
・喘息:呼出された酸化窒素濃度における減少は、抗炎症性治療が、喘息に関連する肺の炎症を減少させている可能性のあることを示唆する。 30 ppb(十億分率)を超える酸化窒素レベルは、重篤な喘息の緩和と相関があることを研究が示している。例えば、http://www. labtestsonline.org/ncws/fdaasthma030509.htmlを参照のこと。
・エタン濃度:呼気中のエタン濃度は、酸化ストレスおよび代謝障害の重篤度と相関があり得る。エタン濃度はまた、長期間の血液透析における患者の病理学的状態と相関があり得る。例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12826252&dopt=Abstractを参照のこと。
・過酸化脂質: 過酸化脂質は、呼出される空気中のエチレン、エタン、およびペンタンの濃度を増加する可能性がある。例えば、http://www.tracegasfac.science.ru.nl/respiratl.htmを参照のこと。
・肺癌:以下のものの濃度増加(1〜5ppmの程度)は、肺癌と明確に相関があり得る。すなわち、アセトン、アセトフェノン、酸化窒素(NO)、プロペナール、フェノール、ベンズアルデヒド、2−ブタノン、プロピオン酸エチル、イソブテン酸メチル(methylisobutenoate)、およびノナナールである。
・揮発性種と健康障害の間の相関:様々な揮発性化学種が、様々な障害と関連付けられる。このような障害の診断は、このような種が識別されたときに可能となり得る。表3はこのような関連の諸例を一覧表示する。
【0083】
【表3】

【0084】
いくつかの実施形態を記載してきたが、様々な変更を行うことが可能であることは自明である。例えば、多くの前述のシステムおよび技法は、環境モニタリングのために使用することができる。このような環境モニタリングは、潜水艦または飛行機のコックピットなど、閉じた環境で実施され得る。このような環境モニタリングは、曝露されるのを米国労働安全衛生局(OSHA)により制限されているものなど、環境汚染物質の検出を含むことができる。このような汚染物質の例は、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化窒素、アルカン、芳香属化合物、および水を含む。プロセス活動は、異なる順番で、または削除して実施することもできるとともに、重要な結果を達成することができる。システム構成要素は、削除され、および/または変更され得るとともに、有益な機能を保持することができる。したがって、他の実施形態も添付の特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態による気体分析のためのシステムを概略的に示した図である。
【図2】図1のシステムに含まれ得る気体分析器を概略的に示した図である。
【図3】図1のシステムに含まれ得る他の気体分析器を概略的に示した図である。
【図4】図3の気体分析器のシステム電子回路の一実施形態を示した図である。
【図5】1つの気体の濃度における様々な気体の赤外(IR)吸収スペクトルのグラフを示す図である。
【図6】医療パラメータを特徴付けるために、濃度測定結果と共に使用され得る分析情報を概略的に示す図である。
【図7】気体の医療分析のためのプロセスの流れ図である。
【図8】気体の医療分析のためのプロセスの流れ図である。
【図9】個人化医療情報を記録するデータアセンブリを概略的に示した図である。
【図10】本発明の代替的な実施形態による気体分析のためのシステムを概略的に示した図である。
【符号の説明】
【0086】
100 システム
105 サンプルコレクタ
110 気体サンプル準備装置
115、1005 気体分析器
120 データ分析器
125 出力
130 分析情報
205 電磁放射源
210 電磁放射コレクタ
215 タイミングデバイス
220 波長選択デバイス
225 分析チャンバ
230 ホイール
235 フィルタウィンドウ
240 光路
245 サンプル入口
250 サンプル出口
255 電磁放射入口
260 電磁放射シンク
265 変換器
270、275 弁
305 電磁放射源
310 測定チャンバ
315 参照チャンバ
320 システム電子回路
325 パルスビーム
330 経路
335 サンプル入口
340 サンプル出口
345 電磁放射入口
350 電磁放射シンク
355、375 変換器
360、365 音響緩衝装置
370 センサ
405 アナログ雑音除去回路
410 アナログ-デジタル変換器
415 デジタル信号処理回路
420 コントローラ回路
425、430 入力/出力デバイス
605 一般情報
610 個人情報
900 データアセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人と関連付けられた物理的サンプルを採取するとともに、分析のために気体サンプルを供給するためのサンプルコレクタと、
前記気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度を決定するために、前記サンプルコレクタにより供給された前記気体サンプルを分析する気体分析器と、
前記気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度と、疾患状態との間の相関を反映する情報を含むデータ記憶装置と、
前記気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度に基づいて、前記個人の疾患状態を識別するためのデータ分析器と
を備えることを特徴とする気体分析システム。
【請求項2】
前記情報が、
前記気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度と、
前記個人の医学的状態との間の相関を反映する個人情報と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の気体分析システム。
【請求項3】
前記個人情報が、1つまたは複数の非水性の気体の濃度の履歴記録を含むことを特徴とする請求項2に記載の気体分析システム。
【請求項4】
前記個人情報が、前記個人の医学的状態を表す他の医療情報を含むことを特徴とする請求項2に記載の気体分析システム。
【請求項5】
前記情報が、
個人の母集団と関連付けられた気体サンプル中の前記1つまたは複数の非水性の気体の濃度と、
前記母集団の医学的状態との間の相関を反映する一般化情報と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の気体分析システム。
【請求項6】
前記気体分析器が、光学分光計を備えることを特徴とする請求項1に記載の気体分析システム。
【請求項7】
前記光学分光計が、光音響分光計を備えることを特徴とする請求項6に記載の気体分析システム。
【請求項8】
前記光音響分光計が、
赤外電磁放射を生成するための赤外線源と、
前記赤外電磁放射と相互作用をさせるように気体サンプルを供給するための測定セルと、
前記測定セルにより供給された気体サンプルに対する赤外電磁放射の入射を変化させるためのタイミングデバイスと、
前記入射する赤外電磁放射と、前記測定セルにより供給された前記気体サンプルとの間の時間で変化する相互作用の結果を変換する音響変換器と
を備えることを特徴とする請求項7に記載の気体分析システム。
【請求項9】
前記赤外線源がダイオードを備えることを特徴とする請求項8に記載の気体分析システム。
【請求項10】
前記サンプルコレクタが、バルーンコンセントレータを備えることを特徴とする請求項1に記載の気体分析システム。
【請求項11】
前記サンプルコレクタが、個人と関連付けられた液体サンプルから気体サンプルを生成するための蒸発器を備えることを特徴とする請求項1に記載の気体分析システム。
【請求項12】
第2の気体分析器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の気体分析システム。
【請求項13】
前記第2の気体分析器が、導電率水素センサを備えることを特徴とする請求項12に記載の気体分析システム。
【請求項14】
個人と関連付けられた気体サンプル中の非水性種の濃度の測定値を受け取るステップと、
前記個人と関連付けられた気体サンプル中の種の濃度の履歴記録に基づいて、濃度測定値と個人の医学的状態とを相関させるステップと、
前記相関の結果を、出力デバイスを介して利用可能にするステップと
を含むことを特徴とする気体分析方法。
【請求項15】
前記濃度測定値を表す情報で、
前記履歴記録を補足するステップと、
前記補足された履歴記録に基づいて、後の濃度測定値と前記医学的状態とを相関させるステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の気体分析方法。
【請求項16】
前記濃度測定値を受け取る前記ステップがさらに、
1群の波長における気体サンプルの赤外吸収を表すデータを受け取るステップと、
前記赤外吸収を表す前記データに基づいて、前記濃度測定値を決定するステップと
を含むことを特徴とする請求項14に記載の気体分析方法。
【請求項17】
前記濃度測定値を受け取る前記ステップがさらに、
前記気体サンプルの赤外吸収を表す前記データを決定するために光音響分光法を使用するステップを含むことを特徴とする請求項16に記載の気体分析方法。
【請求項18】
個人と関連付けられたサンプルを採取するとともに、分析のために気体サンプルを供給するためのサンプルコレクタと、
光音響分光計であって、
赤外電磁放射を生成するための赤外線源と、
前記赤外電磁放射と相互作用をさせるように気体サンプルを供給するための測定セルと、
前記測定セルにより供給された気体サンプルに対する赤外電磁放射の入射を変化させるためのタイミングデバイスと、
前記入射する赤外電磁放射と、前記測定セルにより供給された気体サンプルとの間の時間で変化する相互作用の結果を変換する音響変換器とを備える光音響分光計と、
気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度と個人の医学的状態との間の相関を反映する個人化情報、ならびに個人の母集団と関連付けられた気体サンプル中の前記1つまたは複数の非水性の気体の濃度と前記母集団の医学的状態との間の相関を反映する一般化情報を含む1つまたは複数のデータ記憶装置と、
前記気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度、個人情報、および一般情報に基づいて、前記個人の疾患状態を識別するためのデータ分析器と
を備える気体分析システム。
【請求項19】
水素ガス濃度の測定値を生成するための導電率水素センサをさらに備え、
前記データ分析器が、気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度、個人情報、一般情報、および水素ガス濃度測定値に基づいて、前記個人の疾患状態を識別することを特徴とする請求項18に記載の気体分析システム。
【請求項20】
個人に関連付けられた第1の気体サンプルの赤外吸収を決定するステップと、
個人の母集団と関連付けられた気体サンプルの特徴と、母集団の医学的状態との間の相関を反映する情報に基づいて、前記第1の気体サンプルの赤外吸収と個人の医学的状態とを相関させるステップと、
前記個人と関連付けられた気体サンプルの特徴と、個人の医学的状態との間の相関を反映する1群の個人化情報に、赤外吸収を表す情報を追加するステップと、
前記個人と関連付けられた第2の気体サンプルの赤外吸収を決定するステップと、
その後に、前記1群の個人情報に基づいて、前記第2の気体サンプルの赤外吸収と個人の医学的状態とを相関させるステップと
を含むことを特徴とする気体分析方法。
【請求項21】
前記第1の気体サンプルの赤外吸収を決定するステップが、呼気微量化合物の濃度を決定するステップをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の気体分析方法。
【請求項22】
気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度を決定するために、動物に由来する現在の気体サンプルを分析するための気体分析器と、
前記動物からあらかじめ採取した気体サンプル中の1つまたは複数の非水性の気体の濃度を反映する情報を含むデータ記憶装置と、
前記あらかじめ採取した気体中の前記1つまたは複数の非水性の気体の濃度と、現在の気体サンプルとの比較に基づいて、前記動物の疾患状態を識別するためのデータ分析器と
を備えることを特徴とする気体分析システム。
【請求項23】
前記気体分析デバイスが光学分光計を備えることを特徴とする請求項22に記載のシステム気体分析システム。
【請求項24】
前記光学分光計が光音響分光計を備えるとともに、
前記光音響分光計が、
赤外電磁放射を生成するための赤外線源と、
前記赤外電磁放射と相互作用をさせるように前記気体サンプルを供給するための測定セルと、
前記測定セルにより供給された気体サンプルに対する前記赤外電磁放射の入射を変化させるためのタイミングデバイスと、
前記入射する赤外電磁放射と、前記測定セルにより供給された気体サンプルとの間の時間で変化する相互作用の結果を変換する音響変換器と
を備えることを特徴とする請求項23に記載の気体分析システム。
【請求項25】
個人と関連付けられた第1の気体サンプル中の非水性種の濃度の第1の測定値を受け取るステップと、
前記第1の濃度測定値と、前記個人と関連付けられた第2の気体サンプル中の非水性種の濃度の第2の測定値とを比較するステップと、
前記比較の結果を、出力デバイスを介して利用可能にするステップと
を含むことを特徴とする気体分析方法。
【請求項26】
前記第1の濃度測定値を受け取るステップがさらに、
1群の波長における前記気体サンプルの赤外吸収を表すデータを受け取るステップと、
前記赤外吸収を表す前記データに基づいて第1の濃度測定値を決定するステップと
を含むことを特徴とする請求項25に記載の気体分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−518654(P2009−518654A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544640(P2008−544640)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/061674
【国際公開番号】WO2007/067922
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】