説明

気体アンモニアを生成するための蒸発装置

特に車両におけるSCRシステムと関連して、アンモニアを含むガス流(2)を生成するための蒸発装置(1)が提案され、この装置は、少なくとも以下、ハウジング(3)、流入部(5)および流出部(6)を有し、閉じられた壁(7)と隣接した少なくとも1つの蛇行した流路(4)、ならびに、ハウジング(3)と壁(7)との間に、少なくとも1つの流路(4)の第1の蒸発セクション(9)に配置され、かつ同軸上に渡っている少なくとも1つの熱導体(8)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを含むガス流を生成するための蒸発装置(ユニット)に関する。この種の蒸発装置は、特に、液状および/または固体状のアンモニア前駆体から気体アンモニアを提供するために特に用いられる。本発明は、車両における排ガス後処理の関連内においても特に用いられる。
【背景技術】
【0002】
特にディーゼル内燃エンジンにおいて、水溶液中の尿素がエンジンによって生成された排ガスに直接加えられること、または排ガスの外側で加水分解が行われた後にアンモニアがその排ガスに加えられることは好都合であることが証明されている。ここで、公知の方法において、その使用は、アンモニアが尿素から得られる加水分解触媒コンバータでなされる。尿素水溶液は、加水分解触媒コンバータの上流にて加えられ、ガス状に変えられ、この加水分解触媒コンバータと接触するように配置される。ここで生成されたアンモニアは、例えば、排ガス流内のさらに下流にあるいわゆるSCR触媒コンバータを用い、その排ガス流に含まれている窒素酸化物と反応させて、窒素分子および水を形成する。
【0003】
尿素水溶液の蒸発の間の温度制御は特に困難である。このことは、第1に必要とされる尿素水溶液の量および第2に利用可能な温度が車両の用途において著しく変化し得るという事態から、特に考慮されるべきである。不完全な蒸発のみが得られる場合、中間生成物が形成され得、場合によってはこれが蒸発装置を詰まらせてしまう。このような所望されない副産物は、例えば、不水溶性のビウレットであり、これはイソシアン酸および尿素、ならびに、イソシアヌル酸の三量化物であるシアヌル酸から形成される。特に液状の尿素水溶液のアンモニア前駆体の蒸発の間、この所望されない、部分的にはもはや取り除くことのできない化合物の形成を回避するために、臨界温度範囲に亘って、液体への温度の導入を迅速に行わなければならないことが確認されている。
【0004】
排ガスの外側での、尿素水溶液の蒸発のための装置は既に記載したが、これらの装置はこれまで、少なくとも自動車分野での使用には満足のいくものではなかった。ここで、公知の蒸発装置は、あらゆる動作状態での蒸発および/または蒸発されるアンモニア前駆体の量についての所望される完全性を、一部において保証することができない。これは特に、例えばディーゼルエンジン等の、自動車の内燃エンジンの動作状態を考慮して、蒸発装置の高度な動力学的調節の事象に当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このことを出発点とすると、本発明の目的は、先行技術に関して重要視されている問題を少なくとも部分的に解決することである。特に、正確に所定量にて、アンモニアを含むガス流を生成するために、高い動力学的様式において、迅速かつ完全に尿素水溶液の蒸発を提供する蒸発装置を特定することを目的とする。ここで、その蒸発装置は、コンパクトかつシンプルな設計であるべきである。また、この蒸発装置は効率的なコストで製造されることができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、特許請求の範囲の請求項1の特徴に係る蒸発装置により達成される。この蒸発装置の有利な実施形態は従属の特許請求の範囲の請求項において特定される。従属の特許請求の範囲の請求項において各々特定される特徴は、任意の所望される技術的に有意義な方法において互いに組み合わされることができ、本発明のさらなる実施形態を提示することができる。また、本発明は、特に図面を参照し、詳細な説明によって、さらに特徴付けられ、かつより正確になされる。
【0007】
アンモニアを含むガス流を生成するための本発明に係る蒸発装置は、少なくとも:
−ハウジングと、
−流入部および流出部を有し、閉じられた壁によって画定された、少なくとも1つの蛇行したフローダクトと、
−ハウジングと壁との間に、少なくとも1つのフローダクトの第1の蒸発セクションにおいて少なくとも配置され、かつ同軸上に渡っている、少なくとも1つの熱導体と、を備える。
【0008】
この蒸発装置は、好ましくは非常にコンパクトな設計であり、例えば管状の形である。このタイプの蒸発装置の外側寸法は、例えば、長さ約400mmおよび直径が50mmの範囲である。それゆえこの蒸発装置は、移動式の内燃エンジンの排気システムのラインセクションの一部、および/またはこの排気ラインに通じる補助システムのラインセクションの一部に特に適している。
【0009】
ハウジングは概してスチール材から形成される。特に好ましくは、ハウジングはスチール(鋼)の管である。ハウジングについては、高温耐性および/または特に高耐食性は必ずしも必要ではない。なぜならば、蒸発装置は、概して、排ガスが流れ、その結果高温となる排ガスシステムの領域の外側に配置されるからである。
【0010】
フローダクトは「蛇行した」設計である。これは、まず(単に)フローダクトの非直線的な形状が実現されていることを意味する。フローダクトは、フローダクトまたは蒸発装置の中心軸を中心にして、周期的に変化する形状を有することが非常に特に好ましい。この蛇行した形状は、波形の形状として特に記載される。フローダクトの数は、所望の条件に対応して選択されてよく、単一の蛇行したフローダクトを有する実施形態が好ましい。しかしながら、必要に応じて、(例えば必要に応じて作動可能な)少なくとも1つのさらなるフローダクトが、(例えば、比較的多量のアンモニアガスを提供するために)提供されることもまた可能である。
【0011】
流入部に関しては、一般的にはポンプおよび/またはタンクに連結できること、すなわち、アンモニア前駆体(例えば尿素水溶液)を蒸発装置または蛇行したフローダクトに導くことができることに留意されたい。次いで流出部は、一般的にその反対側に提供され、その流出部から(実質的に純粋な)アンモニアガスがフローダクトを出る。フローダクトは、一般的に、単一で、閉じられた、特に別個の壁によって画定される。この壁は、供給されるアンモニア前駆体が完全に蒸発されて、流出部から再び出ることを確保する。
【0012】
さらに、少なくとも1つの熱導体が提供される。熱導体は、特に、迅速に高温に達し、要求に応じる電気的な熱導体である。熱導体は蒸発セクションにおいて(のみ)提供されることが好ましいが、必要に応じて、(特定の領域に対して)さらなる熱導体の配置または複数のさらなる熱導体を提供することもまた可能である。さらに、熱導体は、フローダクトに対して同軸上に渡る。これは、特に、熱導体が環状、コイル状等、フローダクトの周囲に配置されることを意味する。このために、熱導体は、必要に応じて、対応する電流または電圧供給と共に提供されるべきである。従って、電気的接続は、蒸発装置に提供されるべきであり、この電気的接続は、必要に応じて適切な制御器に連結されるべきである。ここで、熱導体は、電流(断続的)が供給されて、かつ、オーム抵抗加熱のために、フローダクトまたはその壁に(間接的に)送られる熱を生成する。少なくとも1つの第1の蒸発セクションにおいて、複数の熱導体を配置構成することによって、このフローダクト内で生成されるために、ガス流の温度を意図的に操作することが可能である。
【0013】
この非常にコンパクトな設計は、熱導体の位置取りによって、熱を迅速に導入することを可能にするので、それゆえ、特に、アンモニア前駆体が導かれる蛇行したフローダクト中で迅速な温度上昇を可能にする。
【0014】
閉じられた壁が、チタニウムを含む管によって形成されることは、この連結において特に好ましい。これは、特に、実質的にチタニウム(例えば、90重量%以上のチタニウム)で構成された小さな管であり、その壁は波形構造で形成されており、この波形構造は内側および/または外側に存在してもよい。ここで、管は、例えば直径6mm未満で提供される。
【0015】
本発明の1つの実施形態によれば、壁は、加水分解コーティングが少なくとも部分的備わっていることが提案される。加水分解コーティングは、アンモニアを生成するために、尿素の加水分解を促進するように形成される。多孔性コーティング(porous coating)、酸化物および/または塩がこのために用いられてもよい。フローダクトの壁がチタニウムで形成される場合、特に酸化チタンが壁に提供されることが提案されており、その結果、この酸化チタンはアンモニア前駆体と接触し、尿素水溶液の変換を促進して、アンモニアを生成する。完全を期すために、加水分解コーティングは第1の蒸発セクションの一部分のみに提供されてもよいことが理解されている。
【0016】
また、少なくとも1つの熱導体は、ハウジングおよび少なくとも第1の蒸発セクションにおける少なくとも1つのフローダクトから距離を置いて配置されることが提案される。これはまた、言い換えれば、この手段が、ハウジングと、少なくとも一つのフローダクトとの両方に対して間隔を有して熱導体を固定して提供されることを意味する。ここで、この間隔はまた、アンモニア前駆体の流れ方向において、蒸発セクション内で可変であってよく、すなわち、熱導体は、例えば、ある箇所においてハウジングに対してより接近し、他の箇所においてフローダクトに対してより接近して配置されてもよい。フローダクトに対する熱導体の間隔によって、フローダクト内の温度プロファイルを意図的に操作することが同様に可能であり、ここで同時に、2つの構成要素のうちの1つへの集中的な連結を回避することができ、これにより、このような熱導体の処理またはメンテナンスに関して利点を生じることができる場合がある。
【0017】
少なくとも、少なくとも1つのフローダクトまたは少なくとも1つの熱導体は、少なくともアルミニウムまたは銅を含む基体へと鋳造されることも提案される。特に、基体(これは必要に応じて、複数のパーツから構成されてもよい)は、ケーシング/ハウジングで形成されてもよく、これらケーシング/ハウジンはその内部に配置されたアルミニウムおよび銅の部品から構成される。好ましくは両方の要素が(単一の)基体内に鋳造される。熱導体およびフローダクト(例えばフローダクトの壁)の鋳造により、特に、熱導体からフローダクトへの十分な熱伝達をもたらす。基体のための材料としてのアルミニウムは、この材料が特に、鋳造し易くかつ優れた熱伝導性を有する点で利点を有する。同時に、蒸発装置の重さは軽く保たれるが、これは常に車両構造における重要な目的である。
【0018】
基体は、特にまた、ハウジングおよびフローダクトから、熱導体を離して間隔を置く手段として役に立ち得る。特に、構造化された、すなわち蛇行したチタニウムの管は、チタニウムよりも低い融点を有するアルミニウム、銅、および/または一部の他の熱伝導性材料を用いて(基体に)密閉することが可能である。このように、「平滑な」外側壁を有する管状体(tube−like body)を再び生成することは可能である。少なくとも1つの熱導体のための経路は次いで、この外側壁へと、例えば、スレッド状等で、形成可能である。熱導体は次いで、この経路内に(例えば溝等で)配置でき、基体と(例えばはんだ付け等で)連結できる。
【0019】
さらなる有利な実施形態によれば、少なくともフローダクト、または少なくとも1つの熱導体は、銅粉を含む基体に配置される。特に、フローダクトおよび少なくとも1つの熱導体は、ハウジング(例えばアルミニウムで構成された)内に配置され、銅粉によって固定される。銅粉は、特に圧縮されているので、少なくとも1つの熱導体とフローダクトの壁との十分な接触が確保され、それに応じて熱交換が生じる。銅粉の圧縮(compaction)はまた、特に、銅粉の均一の分布をもたらし、それにより、熱導体からフローダクトへの均一な熱交換を可能にする。銅粉の使用は、特にエネルギーの使用をより少なくし、かつ基体内の熱導体およびフローダクトの鋳造よりも、処理に関して言えば、よりシンプルに実行可能である。それゆえ、鋳造体(cast body)の孔および他の不均等性をチェックする必要がない。銅粉がここでは基本的に好ましいが、熱導体からフローダクトへの熱の類似する伝達を可能にする他の材料の粉末(例えば、アルミニウム)を追加としておよび/または代替として利用することもまた同様に可能である。
【0020】
蒸発装置の1つの改良によれば、少なくとも1つの断熱部はハウジングと少なくとも1つの熱導体との間に配置されることが提供される。断熱部は、(特に基体に対する熱伝導に関連して)熱導体からハウジングへの熱の伝播を特に回避する材料を含む。ここで適切な材料は、特に、セラミック材料を好ましくは含むコーティングおよび/または別個の構成要素である。これと組み合わせて、または代替として、熱の伝播を同様に回避する真空チャンバが提供されることが提案される。
【0021】
さらに、蒸発装置は、第1の蒸発セクションおよび第2の蒸発セクションで形成され、かつ、以下の要素、すなわち、蛇行したフローダクト、熱導体、壁、基体、および断熱部のうちの少なくとも1つの、少なくとも配置構成、数、または設計が変更可能であることが有利であると想定される。これらの複数の要素、特に、少なくとも3つの要素は、第1の蒸発セクションと第2の蒸発セクションとの間において異なることが非常に特に好ましい。このことは、これらの要素の配置構成、数、または設計に関連した変形が蒸発セクション内に存在することを意味するのみならず、変形が、蒸発セクションの間の中間領域に代替的に、または追加的に提供されてもよいことをも意味する。蛇行したフローダクトに関して、使用されるフローダクトの数、外形、フローダクトを形成する材料、および/またはフローダクトの断面を変更することが特に可能である。熱導体に関して、加熱力、熱導体の数、熱導体とフローダクトおよび/またはハウジングとの間の間隔、ならびに/あるいは熱導体の制御は可変であると想定される。壁に関して、例示として、ここでは材料、コーティング、および/または壁の厚さが必要に応じて変更されてもよいことが記載される。基体は、一つの蒸発セクション内および/または複数の蒸発セクション間において、例えば、空洞、さらなる材料等を有して形成されてもよい。断熱部はまた、例えば、絶縁層の数および/またはこれらに用いられる材料に関して、蒸発セクション自体および/またはその中間領域において変更されてもよい。
【0022】
蒸発装置は、第1の蒸発セクションおよび第2の蒸発セクションを用いて形成され、この第1の蒸発セクションおよび第2の蒸発セクションは互いに平行し、かつターニングセクションを介して互いに連結されることが有利であると想定される。ここで第1の蒸発セクションおよび第2の蒸発セクションを有して提案された変形において、特にコンパクトな配置構成を提供することが目的とされる。この目的のために、フローダクトは、互いに隣接して置かれ、または、少なくとも1つの領域において平行した配置構成で置かれる。ここで、「平行」とは、数学的な意味にて厳密に解釈される必要はなく、実際には、ここでは単に、フローダクトを蒸発装置内でスペースを節約するように配置することができるように、かつ必要に応じて、互いに隣接して配置されたフローダクトの2つの領域間における熱交換を可能にするかまたは促進するために、互いに隣接して置かれることが重要であることに留意されたい。これらの2つの平行した蒸発セクションは、ターニングセクションを介して互いに連結され、このターニングセクションは、例えば、半円状に曲げられたように形成されている。
【0023】
この変形において、異なる熱導体が同時に提供されることが特に好ましい。例えば、自己調節のPTC(正の温度係数)要素が、第1の蒸発セクションにおいて用いられることは有利であると想定される。このPTC要素は、高い温度よりも、低い温度にて電流をより良く伝えることができる導電材料である。電気抵抗は温度上昇と共に増加する。これはまた、言い換えれば、加熱力は、温度上昇と共に同様に低くなることを意味する。これはまた、特に、隣接する第2の蒸発セクションによって影響され得る。フローダクトに対して同軸上に配置された熱導体は、好ましくは、第2の蒸発セクションにおいて提供される。所望の温度をここで得るかまたは維持するために、必要に応じて、ターニングセクションが、この同軸上に配置された熱導体を用いて形成されることもまた可能であってよい。
【0024】
加水分解コーティングを有する少なくとも1つの反応チャンバが、少なくとも1つのフローダクトの流出部に隣接して提供されることもまた提案されている。これは、言い換えれば、少なくとも二段階の加水分解が、蒸発装置内(排ガスの外側)で実行されることが好ましいことを意味する。複数の蒸発セクションが提供される場合、加水分解は、少なくとも1つの蒸発セクションにおいて生じ得るが、好ましくは、全ての蒸発セクションおよび反応チャンバにおいて生じてもよい。このため、反応チャンバはまた、例えば、その中に一体化されたハニカム体を提供した結果として、増加した数のフローダクトを有してもよい。このタイプのハニカム体は、特に、複数の、少なくとも部分的に構造化された金属箔を用いて形成される。この金属箔は、好ましくは、加水分解コーティングが備わっている。これに関連して、再び、チタニウムが主な材料として利用可能である。
【0025】
少なくとも1つのタンク、投与ポンプ、本発明に係るタイプの蒸発セクション、および上述の構成要素を少なくとも部分的に連結する少なくとも1つのラインセクションを備える、装置もまた提案される。特に、尿素水溶液を用いる場合、タンクは液体タンクを構成する。投与ポンプは、好ましくはタンクと蒸発装置との間に配置され、特に短い期間かつ非常に高精度にて、尿素水溶液を蒸発装置に供給することができる。ラインセクションは、好ましくは、アルミニウムおよび/またはスチール管で形成される。この装置は、さらに、センサおよび/または(電気的)制御器および/またはバルブを備えてもよい。
【0026】
内燃エンジンおよび排気システムを有する車両であって、排気システムは少なくとも1つのSCR触媒体および少なくとも1つのポートを有し、本発明に係るタイプの蒸発装置または上述の装置は内燃エンジンと少なくとも1つのSCR触媒体との間に提供された結果、気体アンモニアが少なくとも1つのSCR触媒体へと流れるように、その気体アンモニアは排気システムへと導かれることができる。ここで非常に特に好ましいことは、さらなるバルブが、一方で蛇行したフローダクトの流出部と、他方でポートまたは排気システムとの間には提供されず、または存在したとしても反応チャンバの端部であるということである。適切な場合、ポートはまた、蒸発装置を去り排気システム中の排ガスに供給されるアンモニアを含むガス流を分布するための手段として提供されてもよい。
【0027】
SCR触媒体として、例えばSCRコーティングを有する(セラミックかつ押出の)ハニカム体で従来的に構成されたものが使用される。このタイプのSCRコーティングは、好ましくは、V2O5/WO3/TiO2タイプ(五酸化バナジウム/三酸化タングステン/二酸化チタン)である。
【0028】
本発明および本発明の技術分野は、図面を元にして以下により詳細に説明される。図面に示される実施形態の変形は、本発明を限定することを意図しないことに留意されたい。また、図面において同様の参照符号が同一の対象物に対して用いられる。図面は概略的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明に係る蒸発装置の設計上の変形である。
【図2】図2は蒸発装置のさらなる実施形態の詳細である。
【図3】図3は自動車におけるSCRシステムの概略的な設計である。
【図4】図4は蒸発装置のさらなる設計である。
【図5】図5は銅粉を用いた、蒸発装置のさらなる設計の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、断面図での、蒸発装置1の第1の特に好ましい設計の変形を示す。この蒸発装置1は、鋼でできた管状のハウジング3によって外側に対して区切られている。液体(例えば尿素水溶液)が蒸発する流れ方向31において、蒸発装置1は、特に、第1の蒸発セクション9、第2の蒸発セクション15、および反応チャンバ16の3つの部分的領域に分けることができる。
【0031】
蒸発装置1の中央にある構成要素は、チタニウムでできた管10を備え、壁7で画定され、中央に配置された蛇行したフローダクト4である。蒸発セクション9、15の両方において、フローダクト4の波形形状が、チタニウムでできた管10により実現されている。ここで、尿素水溶液は、液状において特に流入部5に入り、次いで第1の蒸発セクション9を通過する。
【0032】
管10は、特にアルミニウム材料または銅材料で形成された基体13によって囲まれている。チタニウムでできた管10と同様に、熱導体8が、このように基体13へと鋳造される。ここでは円筒形状の設計である基体13は、第1の蒸発セクション9の実質的に全長に延在し、かつセラミック層32により、その外側に対して画定されている。セラミック層32は、特にセラミック粉末で形成されてもよい。さらなるセラミック管33がさらに外側、すなわちセラミック層32とハウジング3との間に提供される。セラミック層32およびセラミック管33は共に、断熱部14を形成する。断熱部14およびハウジング3ならびにチタニウムでできた管10は、第1の蒸発セクション9および第2の蒸発セクション15に亘って一繋がりで形成される一方で、基体13は第1の蒸発セクション9および第2の蒸発セクション15において各々分離して提供される。別々の接続を用いることが適切な場合は、別々の熱導体8がここで同様に形成される。
【0033】
さらに、間隙34が2つの基体13の間に提供され、この間隙34は特に軸方向の断熱をなす。このようにして、第1の蒸発セクション9および第2の蒸発セクション15の温度プロファイルは、必要に応じて、別々に規制または調節可能である。フローダクト4はまた、第1の蒸発セクション9と第2の蒸発セクション15との間の遷移領域においては異なる設計であり、この場合、特に、遷移セクション35では広げられて、直線的である。第1の蒸発セクション9および第2の蒸発セクション15において、熱導体8とフローダクト4との間の間隔12は実質的に等しい。
【0034】
フローダクト4の流出部6の領域において、基体13は、次いで、この部分までに(ほぼ)完全に蒸発された尿素水溶液が広がる拡大部37を有する。この拡大部37に隣接するように反応チャンバ16が形成され、ここにおいて、加水分解コーティング11を有するハニカム体36が提供される。アンモニアを形成するために、完全に変換されたガスは、次いで、蒸発装置1を去り、排気システムへと流れることができる。
【0035】
図2は、部分的な断面図における蒸発装置1のさらなる実施形態の詳細を示す。中心軸38を中心にして周期的に間隔をあけているフローダクト4の通路が図2の底部に示される。ここでフローダクト4は、例えば4mmの直径39を有する。さらに、加水分解コーティング11は、フローダクト4の内部またはその壁7に提供される。しかしながら、フローダクト4は、熱導体8がらせん巻きの形状で提供される基体13へと鋳造される。ここで、左側の領域において、フローダクト4に対して特定の間隔12を有して配置されている熱導体8が示される。右側にはさらに、部分的に重なり、特に、互いにさらに密集した配置構成となっている複数の熱導体8が、ハウジング3に対してまたは断熱部14に対して間隔12を有して提供されており、熱導体8がフローダクト4により接近して提供されるようにここで熱導体8は増加されている。
【0036】
図3は、自動車21、特に、乗用車または公共機関の車両をここで概略的に示す。内燃エンジン22において生成された排ガスは、対応する排気システム23を介して浄化されて、環境へと排出される。ここで排ガスは、さらに下流でSCR触媒体(catalyst body)24に最終的に浸入する前に、まず触媒コンバータ27(例えば、酸化触媒コンバータ)を介して、流れ方向31に流れる。触媒コンバータ27とSCR触媒体24との間には、本発明に係る蒸発装置1のためのポート25が提供されているので、アンモニアを含むガスの流れ2はこのポート25において導かれる。アンモニアを含んだ排ガスの流れは、この混合物がSCR触媒体24に到達する前に、必要に応じて、フローマニピュレータ28(例えば静的ミキサ)に到達する。完全を期すために、SCR触媒コンバータは、例えば、流入領域29において粒子分離機および/または流出領域30において酸化触媒コンバータ等の排ガス処理部品をさらに用いて、流入領域29および/または流出領域30に提供されてもよいことが理解される。同様に、他の排ガス処理装置もまたこの排気システム23に提供されてもよいことが理解される。
【0037】
本発明に係る蒸発装置1は、複数のラインセクション20を介してタンク18に連結される。タンク18には例えば液状の尿素水溶液が提供され、これは次いで、投与ポンプ19によって、時間および/または量に応じて蒸発装置1に供給される。このために、尿素水溶液の調節された混合物を蒸発装置へ、および、アンモニアガスの混合物を排ガスへ各々確保するために、投与ポンプ19、蒸発装置1および/または内燃エンジン22は、制御器26に(データ送信の形式で、および/または動作可能に)連結されてよい。
【0038】
完全を期すために、少なくとも1つのタンク18、ラインセクション20、投与ポンプ19、および蒸発装置1を備える装置17もまた、制御器26の有無にかかわらず、構成要素のセットとして任意の所望される数で別個に用意されてもよいこともまた理解される。
【0039】
図4は、ここで断面で示された基体13を有する蒸発装置1を有する設計の変形を概略的に示す。基体13にはフローダクト4が提供され、このフローダクト4はまず基体13の方向に延在している。流れ方向31において、フローダクト4またはその中を流れるガス/液体混合物を電気的に加熱するための複数のPTC要素がフローダクト4の片側に提供される。この領域は次いで第1の蒸発セクションン9を形成する。この第1の蒸発セクション9に隣接して、流れ方向31が180度転向するターニングセクション40が提供されている。このターニングセクション40に隣接して第2の蒸発セクション15が形成される。同軸の熱導体8はフローダクト4のこの部分の周囲に提供される。ガス流が次いで再びこの蒸発装置を去る前に、アンモニアの生成をさらに促進させるために、このガスは反応チャンバ16をも介して導かれる。ここで提案された配置構成において、第1の蒸発セクション9と第2の蒸発セクション15との間の熱交換効果を得て、それによりエネルギー的に好都合な設計を提供することが特に可能である。
【0040】
図5は断面における蒸発装置1のさらなる実施形態を概略的に示す。蒸発装置1は管状のハウジング2を有し、フローダクト4は中央に配置され、熱導体8はこのフローダクト4に対して同軸に配置されている。フローダクト4および熱導体8は銅粉42で囲まれているので、熱伝達は、一方で銅粉42とフローダクト4、他方で銅粉42と熱導体8との間の対応する接触によって生じることができる。このために、フローダクト4と熱導体8との間に配置された銅粉42は特に圧縮されている。
【符号の説明】
【0041】
1 蒸発装置
2 ガス流
3 ハウジング
4 フローダクト
5 流入部
6 流出部
7 壁
8 熱導体
9 第1の蒸発セクション
10 管
11 加水分解コーティング
12 間隔
13 基体
14 断熱部
15 第2の蒸発セクション
16 反応チャンバ
17 装置
18 タンク
19 計測用ポンプ
20 ラインセクション
21 車両
22 内燃エンジン
23 排気システム
24 SCR触媒体
25 ポート
26 制御器
27 触媒コンバータ
28 フローマニピュレータ
29 流入領域
30 流出領域
31 流れ方向
32 セラミック層
33 セラミック管
34 間隙
35 遷移領域
36 ハニカム体
37 拡大部
38 軸
39 直径
40 ターニングセクション
41 PTC要素
42 銅粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含むガス流(2)を生成するための蒸発装置(1)であって、少なくとも、
ハウジング(3)と、
流入部(5)および流出部(6)を有し、閉じられた壁(7)によって画定された、少なくとも1つの蛇行したフローダクト(4)と、
前記ハウジング(3)と前記壁(7)との間に、前記少なくとも1つのフローダクト(4)の第1の蒸発セクション(9)において少なくとも配置され、かつ同軸上に渡っている、少なくとも1つの熱導体(8)と、
を備える、蒸発装置(1)。
【請求項2】
前記閉じられた壁(7)は、チタニウムを含む管(10)によって形成される、請求項1に記載の蒸発装置(1)。
【請求項3】
前記壁(7)は、加水分解コーティング(11)が少なくとも部分的に備わっている、請求項1または請求項2に記載の蒸発装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの熱導体(8)は、少なくとも前記第1の蒸発セクション(9)において、前記ハウジング(3)および前記少なくとも1つのフローダクト(4)から間隔を置いて配置されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)。
【請求項5】
少なくとも、前記少なくとも1つのフローダクト(4)、または前記少なくとも1つの熱導体(8)は、少なくともアルミニウムまたは銅を含む基体(13)へと鋳造される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)。
【請求項6】
少なくとも、前記少なくとも1つのフローダクト(4)および前記少なくとも1つの熱導体(8)は、銅粉(42)を含む基体(13)に配置される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの断熱部(14)が、前記ハウジング(3)と前記少なくとも1つの熱導体(8)との間に提供される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)。
【請求項8】
前記蒸発装置(1)は、第1の蒸発セクション(9)および第2の蒸発セクション(15)で形成され、かつ、以下の要素、すなわち、蛇行したフローダクト(4)、熱導体(8)、壁(7)、基体(13)、および断熱部(14)のうちの少なくとも1つの、少なくとも配置構成、数、または設計が変更可能である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)。
【請求項9】
前記蒸発装置(1)は、第1の蒸発セクション(9)および第2の蒸発セクション(15)で形成され、前記第1の蒸発セクション(9)および前記第2の蒸発セクション(15)は互いに平行し、かつターニングセクション(40)を介して互いに連結される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)。
【請求項10】
加水分解コーティング(11)を有する少なくとも1つの反応チャンバ(16)が、前記少なくとも1つのフローダクト(4)の前記流出部(6)に隣接して提供される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)。
【請求項11】
少なくとも1つのタンク(18)、投与ポンプ(19)、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)、および上述の構成要素を少なくとも部分的に連結する少なくとも1つのラインセクション(20)を備える、装置(17)。
【請求項12】
内燃エンジン(22)および排気システム(23)を有する車両(21)であって、前記排気システム(23)は少なくとも1つのSCR触媒体(24)、および少なくとも1つのポート(25)を有し、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の蒸発装置(1)または請求項11に記載の装置(17)が、前記内燃エンジン(22)と前記少なくとも1つのSCR触媒体(24)との間に提供された結果、気体アンモニアが前記少なくとも1つのSCR触媒体(24)へと流れるように、前記気体アンモニアが前記排気システム(23)へと導かれることができる、車両(21)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−516769(P2011−516769A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548049(P2010−548049)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050901
【国際公開番号】WO2009/109423
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(500038927)エミテック ゲゼルシヤフト フユア エミツシオンス テクノロギー ミツト ベシユレンクテル ハフツング (156)
【Fターム(参考)】