説明

気体圧縮機

【課題】気体圧縮機において、ベーンのチャタリングを防止する。
【解決手段】回転軸10と一体的に回転するロータ20と、ロータ20の外周面21の外方を取り囲むシリンダ50と、ロータ20の両端面にそれぞれ対向して配設された2つのサイドブロック30,40と、ロータ20に埋設された、ロータ20の回転にしたがって、その先端部61がシリンダ50の内周面51に沿うようにロータ20の外周面21からの突出量が可変とされた板状のベーン60とを備え、サイドブロック30,40に、シリンダ50の内周面51の輪郭形状に対応したカム面32,42が形成され、ベーン60とカム面32,42との間に、カム面32,42に沿って案内されるピン71(従動部材)と、ピン71とベーン60との間の間隔を弾性力に応じて保持する板バネ72(弾性部材)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンロータリー形式の気体圧縮機に関し、詳細には、ロータに設けられたベーンを突出させる構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調装置等における冷凍サイクルは、冷媒ガスを圧縮してシステムに冷媒ガスを循環させるために気体圧縮機が用いられている。
【0003】
この気体圧縮機は、作動方式として往復動式や回転式などが実用化されているが、回転式の一形式であるベーンロータリー形式の気体圧縮機は、回転軸と一体的に回転する略円柱状のロータと、ロータの外周面の外方を略楕円形状の輪郭の内周面で取り囲むシリンダと、ロータの両端面側にそれぞれ配設されたサイドブロック(フロントサイドブロックおよびリヤサイドブロック)と、ロータに埋設され、ロータの回転にしたがって、その先端部がシリンダの内周面に沿うようにロータの外周面からの突出量が可変とされた板状のベーンとを備えている。
【0004】
そして、ロータの外周面とシリンダの内周面と両サイドブロックの面とロータの回転方向について相前後する2つのベーンとによって圧縮室が画成され、ロータの回転にしたがって個々の圧縮室の容積が変化し、圧縮室の容積が大きくなる行程で外部から気体(冷媒ガス等)を吸入し、圧縮室の容積が小さくなる行程で外部との通気を封じたうえで、内部に封じ込められた気体を圧縮し、その後、この圧縮された気体を外部に吐出することで、高圧の圧縮気体を外部に供給している。
【0005】
ここで、圧縮室から吐出された高圧の気体は、一時的に気体圧縮機内の吐出室に充満するが、この気体の圧力によって、吐出室内に溜まった冷凍機油が、リヤサイドブロックに形成された凹部(以下、サライ溝という。)やフロントサイドブロックに形成されたサライ溝に供給される。
【0006】
そして、これらサライ溝は、ロータに形成されてベーンを突出可能に埋設したベーンガイド溝のうち、ベーンの背圧空間(ベーンの埋設側端面の側の空間)に連通しているため、サライ溝を介して背圧空間に供給された冷凍機油が、ベーンの埋設側端を押圧し、この押圧力(背圧)によって、ベーンの突出側先端部は、シリンダの内周面に当接することになる。
【0007】
ところで、圧縮行程の終期では圧縮室内の圧力が非常に高くなるため、その圧縮室を画成するベーンに作用する背圧(冷凍機油による圧力)が圧縮室の内圧に負けて、ベーンの突出側先端部がシリンダの内周面から瞬間的に離れ、瞬間的に圧縮室の内圧が相前後する圧縮室に逃げ、その後、ベーンの先端部がシリンダの内周面に再度接触し、この離接を繰り返す、いわゆるチャタリングが発生することがある。
【0008】
そして、このチャタリングは、ベーンの先端部がシリンダの内周面に再び接触するときに接触音を発し雑音となる。
【0009】
上述したチャタリングの発生を防止するために、ベーンとロータのベーン溝との間にコイルバネを介在させ、このコイルバネが縮んだときに生じる弾性力を、冷凍機油による背圧に付加し、ベーンの先端部がシリンダの内周面から離れるのを防止する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−156088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した先行技術文献に開示された技術は、ベーンとコイルバネとの離接による別の雑音発生を防止する上で、ベーンの突出量が最大となる行程(主として吸入行程)においてもベーンとコイルバネとが接触している必要がある。そして、当然ながら、ベーンの突出量が最小となる行程においてもベーンとコイルバネとは接触している。
【0012】
したがって、コイルバネは、ベーンの突出変化量(最大突出量と最小突出量との差分)と等しい量の伸縮を繰り返すことになる。
【0013】
一方、このコイルバネは、ベーンの厚さよりも狭い空間内に収容されるものであるため、線径を極めて細いものとする必要があり、線径に比して大きな量の伸縮変化の繰り返しは、コイルバネの耐久性を低下させる大きな要因となる。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ベーンを突出方向に押圧する弾性部材の耐久性を向上させることができる気体圧縮機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る気体圧縮機は、ロータの端面に対向するサイドブロックの面に、シリンダの内周面に対応したカム面を形成して、このカム面とベーンとの間に従動部材と弾性部材とを介在させることで、ベーンの突出量の変化の大部分を、サイドブロックのカム面の輪郭形状によって形成し、さらに弾性部材の弾性変形によって、ベーンの突出量の変化の残り部分を、弾性部材の弾性変形によって吸収させることで、ベーンのチャタリングを防止しつつ、弾性部材の弾性変形量(ストローク)を小さくし、弾性部材の耐久性を向上させたものである。
【0016】
すなわち、本発明に係る気体圧縮機は、回転軸と一体的に回転するロータと、前記ロータの外周面の外方を取り囲むシリンダと、前記ロータの両端面にそれぞれ対向して配設された2つのサイドブロックと、前記ロータに埋設された、前記ロータの回転にしたがって、その先端部が前記シリンダの内周面に沿うように前記ロータの外周面からの突出量が可変とされた板状のベーンとを備えたベーンロータリー形式の気体圧縮機において、前記サイドブロックに、前記シリンダの内周面の輪郭形状に対応したカム面が形成され、前記ベーンと前記カム面との間に、前記カム面に沿って案内される従動部材と、前記従動部材と前記ベーンとの間の間隔を弾性力に応じて保持する弾性部材とを備えたことを特徴とする。
【0017】
ここで、カム面は、ロータの端面に向かって突出した短柱状あるいは短筒状の凸部の外周面として形成されたもの(この場合、ロータの端面には、カム面が形成された凸部を内部に受容する凹部が形成されていることを要する)であってもよいし、従動部材がロータの端面側から突出するものである場合は、サイドブロックに凹状に形成された溝の側壁面として形成されたものであってもよい。
【0018】
また、弾性部材は、ベーンの突出方向に沿って弾性変形可能なものであればよく、ゴムやバネ(例えば、コイルバネ、板バネ等)など公知の種々のものを適用することができる。
【0019】
従動部材は、弾性部材と一体的に構成されていてもよく、さらには弾性部材自体の一部が従動部材として機能するものであってもよい。
【0020】
ベーンの突出量変化はシリンダの内周面の輪郭形状に対応したものとなっているが、本発明に係る気体圧縮機は、サイドブロックの面に、シリンダの内周面の輪郭形状に対応した輪郭形状のカム面が形成されているため、このカム面に沿って案内される従動部材の、ベーンの突出方向に沿った移動量は、ベーンの突出量変化に対応したものとなる。
【0021】
さらに、本発明に係る気体圧縮機は、従動部材とベーンとの間に弾性部材が介在されているが、従動部材がベーンの突出量変化に対応しているため、従動部材とベーンとの間の弾性部材はベーンの突出量変化に拘わらず略一定長を維持することになり、弾性部材の弾性変形量は極めて小さく、弾性部材の耐久性は先行技術のものに比べて著しく向上する。
【0022】
しかも、弾性部材は、ベーンがシリンダの内周面から離されるような大きな荷重(圧縮室の高い内圧)が作用したときには、この荷重に抗する向き(ベーンの先端部をシリンダの内周面に接させる方向)に、弾性力を発生するため、ベーンがシリンダの内周面から離れるのを阻止し、ベーンのチャタリングを防止することができる。
【0023】
なお、サイドブロックの面に形成されたカム面の輪郭形状が、シリンダの内周面の輪郭形状に正確に対応していない場合であっても、そのようなシリンダの内周面の輪郭形状との差異は、弾性部材の弾性変形によって、ある程度吸収されるため、カム面の輪郭形状の精度を厳密に管理する必要がなく、過度な製造コストアップを招くことがない。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る気体圧縮機によれば、ベーンを突出方向に押圧する弾性部材の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る気体圧縮機の一実施形態であるベーンロータリ形式の電動コンプレッサの縦断面を示す断面図である。
【図2】図1に示した電動コンプレッサの要部斜視図(矢視Aによる)を示す図である。
【図3】図1におけるB−B線に沿った断面を示す図である。
【図4】図3におけるC−C線に沿った断面を示す図である。
【図5】他の実施形態(その1)を示す図4相当の断面図である。
【図6】他の実施形態(その2)を示す図4相当の断面図である。
【図7】他の実施形態(その3)を示す図4相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の気体圧縮機に係る最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態であるベーンロータリ形式の電動コンプレッサ100を示す縦断面図、図2はその要部斜視図を示す図、図3は図1におけるB−B線に沿った断面を示す図、図4は図3におけるC−C線に沿った断面を示す図であり、この電動コンプレッサ100は、圧縮機本体80と、この圧縮機本体80を駆動する電動モータ90と、電動モータ90を制御するインバータ95とを備えている。
【0028】
圧縮機本体80は、電動モータ90によって回転駆動される回転軸10と、この回転軸10と一体的に軸回りに回転する略円柱状のロータ20と、ロータ20の外周面の外方を取り囲む断面輪郭形状が略楕円の内周面51を有するシリンダ50と、ロータ20の両端面にそれぞれ対向して配設された2つのサイドブロック(フロントサイドブロック30、リヤサイドブロック40)と、ロータ20に埋設された、ロータ20の回転にしたがってその先端部61がシリンダ50の内周面51に沿うようにロータ20の外周面21からの突出量が可変とされた5つの板状のベーン60とを備えている。
【0029】
ロータ20には、図3に示すように、ロータ20の軸を中心として等角度間隔でベーン溝22が形成されていて、上記5つのベーン60はロータ20の各ベーン溝22にそれぞれ、ベーン溝22の深さ方向に沿って摺動可能に挿入されている。
【0030】
このベーン溝22には冷凍機油が流入しており、この冷凍機油がベーン60とベーン溝22との間の潤滑を行うとともに、ベーン60をシリンダ50の内周面51に向けて突出させる背圧としても作用する。
【0031】
そして、ロータ20の回転方向について相前後する2つのベーン60,60と、ロータ20の外周面21と、シリンダ50の内周面51と、各サイドブロック30,40の、ロータ20の両端面にそれぞれ対向する面(以下、対向面という。)30a,40aとによって、閉空間で圧縮室Sが、ロータ20の周囲に画成される。
【0032】
これら圧縮室Sは、ロータ20の軸回りの回転にしたがって、それぞれ容積が変化し、容積が拡大する行程において、冷媒ガス(気体の一例)を内部に吸入し、容積が縮小する行程において、内部の冷媒ガスを圧縮し、この圧縮された高圧の冷媒ガスを圧縮機本体80の外部に吐出することで、高圧の冷媒ガスを外部に供給する。
【0033】
ここで、各サイドブロック30,40の対向面30a,40aには、図2,3に示すように、シリンダ50の内周面51の輪郭形状に対応したカム面としての側壁面32,42(以下、カム面32,42という。)を有するカム溝31,41がそれぞれ形成されている。
【0034】
ここで、カム面32,42は、シリンダ50の内周面51の輪郭形状に対応しているが、この対応関係は、具体的には、シリンダ50の内周面51の輪郭形状を単純に縮小したものではなく、長径と短径との差が、ベーン60の先端部をシリンダ50の内周面51に接触させた状態を維持しつつロータ20を回転させたときの、ベーン60のベーン溝22に沿った突出量の最大値と最小値との差となるように形成された略楕円の形状である。
【0035】
ただし、対応関係としてはこのような対応関係に限定されるものではなく、シリンダ50の内周面51の輪郭形状を単純に縮小した楕円形状であってもよい。
【0036】
また、ベーン溝22の深さ方向が、ロータ20の軸から偏心しているため、上述したカム面32,42の輪郭形状における長径の延びた方向は、シリンダ50の内周面51の輪郭形状における長径の延びた方向とは異なり、カム面32,42の輪郭形状における短径の延びた方向は、シリンダ50の内周面51の輪郭形状における短径の延びた方向とは異なる。
【0037】
すなわち、カム面32,42の輪郭形状における長径の延びた方向は、ロータの回転方向(図3において時計回り方向)を基準としたとき、シリンダ50の内周面51の輪郭形状における長径の延びた方向よりも進んだ位相にあり、カム面32,42の輪郭形状における短径の延びた方向は、ロータの回転方向(図3において時計回り方向)を基準としたとき、シリンダ50の内周面51の輪郭形状における短径の延びた方向よりも進んだ位相にある。
【0038】
また、ベーン60の先端部61とは反対側の端部(埋設側端部)には、ベーン60の幅方向(ロータ20の軸に沿った方向)に沿った溝62が形成されており、この溝62には、溝62の延びた方向に沿って配設された、この溝62の深さ方向に撓む板バネ72(弾性部材)と、ベーン60の幅より長く形成された、円柱状のピン71(従動部材)とが備えられている。
【0039】
この円柱状のピン71のうち、ベーン60の幅方向の両側面から突出した部分は、前述した各サイドブロック30,40の対向面30a,40aに形成されたカム溝31,41に係合し、その外周面がカム溝31,41のカム面32,42に接して、ピン71はこのカム面32,42に沿って案内される。
【0040】
また、図4の断面図に示すとおり、板バネ72は、その延びた方向に沿った略中央部72cが、ピン71に接することで連結され、かつ略中央部72cを挟んだ2箇所の部分である両端部72a,72bが、ベーン60に形成された溝62の底面63に接し、ベーン60とカム面32,42との間に、ピン71と板バネ72とが介在し、かつ、ピン71とベーン60との間の間隔を板バネ72の弾性力に応じて保持するように構成されている。
【0041】
なお、板バネ72とピン71とは接するのではなく連結部材等によって連結されていてもよいし、例えば、ろう付けや溶着、接着等によって、連結部材さえも介さずに一体的に形成されていてもよい。
【0042】
このように構成された電動コンプレッサ100におけるベーン60の突出量の変化は、シリンダ50の内周面51の輪郭形状に対応したものとなっており、また、各サイドブロック30,40の対向面30a,40aに形成されているカム溝31,41のカム面32,42の輪郭形状も、シリンダ50の内周面51の輪郭形状に対応したものとなっているため、カム面32,42に沿って案内されるピン71の、ベーン60の突出方向(ベーン溝22の深さ方向)に沿った移動量は、ベーン60の突出量の変化に対応したものとなる。
【0043】
さらに、この電動コンプレッサ100は、ピン71とベーン60との間に板バネ72が介在されているが、ピン71がベーン60の突出量の変化に対応しているため、ピン71とベーン60との間の板バネ72は、ロータ20の1回転中におけるベーン60の突出量の変化に拘わらず略一定長(板バネ72の撓み方向(ベーン溝22の深さ方向)に沿った長さ)を維持することになり、板バネ72の弾性変形量は極微小であるため、弾性変形量が極めて大きい先行技術の弾性部材(コイルバネ)に比べて疲労度合いを低減することができ、板バネ72の耐久性を先行技術文献に記載されているものよりも著しく向上させることができる。
【0044】
しかも、板バネ72は、ベーン60がシリンダ50の内周面51から離されるような大きな荷重(圧縮室Sの高い内圧)が作用したときには、この荷重に抗する向き(ベーン60の先端部61をシリンダ50の内周面51に接させる方向)に、弾性力を発生するため、ベーン60がシリンダ50の内周面51から離れるのを有効に阻止し、ベーン60のチャタリングを防止することができる。
【0045】
なお、両サイドブロック30,40の対向面に形成されたカム溝31,41のカム面32,42の輪郭形状が、シリンダ50の内周面51の輪郭形状に正確に対応していない場合であっても、そのようなシリンダ50の内周面51の輪郭形状との対応関係の差異は、板バネ72の弾性変形によってある程度吸収されるため、カム面32,42の輪郭形状の精度を厳密に管理する必要がなく、したがって、前述したように、シリンダ50の内周面51の輪郭形状を単純に縮小した楕円形状であってもよく、精度を厳密に管理することによって生じる過度の製造コストアップを招くことがない。
【0046】
また、本実施形態に係る電動コンプレッサ100は、弾性部材として、ベーン60の幅方向に延びる板バネ72を適用しているため、先行技術におけるコイルバネのように、コイルバネの倒れを防止するための下孔をロータ20やベーン60に形成したり、ガイド棒を追加するなどの複雑な構成を採ることがなく、製造コストを低減することができる。
【0047】
本実施形態の電動コンプレッサ100は、ベーン60とカム面32,42との間に介在する弾性部材として板バネ72を適用したものであるが、本発明に係る気体圧縮機における弾性部材は、実施形態のような板バネ72に限定されるものではなく、ベーン60の突出方向に沿って弾性変形可能なものであればよく、ゴムやバネ(例えば、コイルバネ等)など公知の種々のものを適用することができる。
【0048】
同様に、本実施形態の電動コンプレッサ100は、カム面32,42に沿って案内される従動部材として、円柱状のピン71を適用したものであるが、本発明に係る気体圧縮機における従動部材は、実施形態のようなピン71に限定されるものではなく、弾性部材としての板バネ72の一部をそのまま従動部材としたものであってもよい。
【0049】
すなわち、図5に示すように、ベーン60の埋設側端部に形成された溝64に、溝64の延びた方向に沿ってベーン60の幅より長く形成された、この溝64の深さ方向に撓む板バネ73(弾性部材)を、図4に示した板バネ72とは上下反対に配設したものであって、この板バネ73の略中央部73cが溝64の底面63に接し、ベーン60の幅方向の両側面から突出した板バネ73の両端部73a,73bがそれぞれ、各サイドブロック30,40に形成されたカム溝31,41に係合して、これらカム溝31,41のカム面32,42に接しカム面32,42に沿って案内される構成を適用することにより、弾性部材であり板バネ73の一部(両端部73a,73b)を従動部材とすることができる。
【0050】
そして、このように構成されたものであっても、上述した実施形態の電動コンプレッサ100と同じ作用、効果を得ることができる。
【0051】
さらに、上述した実施形態の電動コンプレッサ100は、各サイドブロック30,40の対向面30a,40aにカム溝31,41が形成されて、そのカム溝31,41の側壁面をカム面32,42としたものであるが、カム面を構成する形態としてはこの実施形態に限るものではなく、図6に示すように、各サイドブロック30,40の対向面30a,40aから、ロータ20の端面に向かって突出した短柱状(あるいは短筒状)の凸部33,43の外周面をカム面32,42として適用したものであってもよい。
【0052】
なお、この形態の場合は、ロータ20の端面(サイドブロック30,40の対向面30a,40aに向いた面)には、カム面32,42が形成された凸部33,43を内部に受容する凹部25,26が形成されている。
【0053】
そして、このように構成されたものであっても、上述した実施形態の電動コンプレッサ100と同じ作用、効果を得ることができる。
【0054】
本実施形態の電動コンプレッサ100は、図4の断面図に示すとおり、板バネ72の略中央部72cがピン71に接し、両端部72a,72bが、ベーン60に形成された溝62の底面63に接するものであったが、溝62の底面63に接する板バネ72の部分は、その両端部72a,72bに限定されるものではなく、例えば図7に示すように、中央部72cを挟んだ2箇所の部分72a′,72b′またはそれ以上の数の部分が、溝62の底面63に接するように構成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 回転軸
20 ロータ
21 外周面
30 フロントサイドブロック
32,42 カム面
40 リヤサイドブロック
50 シリンダ
51 内周面
60 ベーン
61 先端部
71 ピン(従動部材)
72 板バネ(弾性部材)
100 電動コンプレッサ(気体圧縮機)
S 圧縮室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と一体的に回転するロータと、前記ロータの外周面の外方を取り囲むシリンダと、前記ロータの両端面にそれぞれ対向して配設された2つのサイドブロックと、前記ロータに埋設された、前記ロータの回転にしたがって、その先端部が前記シリンダの内周面に沿うように前記ロータの外周面からの突出量が可変とされた板状のベーンとを備えたベーンロータリー形式の気体圧縮機において、
前記サイドブロックに、前記シリンダの内周面の輪郭形状に対応したカム面が形成され、
前記ベーンと前記カム面との間に、前記カム面に沿って案内される従動部材と、前記従動部材と前記ベーンとの間の間隔を弾性力に応じて保持する弾性部材とを備えたことを特徴とする気体圧縮機。
【請求項2】
前記従動部材は前記ベーンの幅方向に延びた柱状の部材であり、その柱状の部材の両端部の外周面が、前記カム面に接し、
前記弾性部材は、前記ベーンの幅方向に延びて、その延びた方向に沿った略中央部が、前記柱状の部材に連結され、かつ前記中央部を挟んだ2箇所以上の部分が、前記ベーンの底部の面若しくは前記ベーンの底部に溝が形成されたものでは前記溝の底面に接するように形成された板バネ、またはその2箇所以上の部分が、前記柱状の部材に連結され、かつ前記略中央部が、前記ベーンの底部の面若しくは前記ベーンの底部に溝が形成されたものでは前記溝の底面に接するように形成された板バネ、であることを特徴とする請求項1に記載の気体圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−196241(P2011−196241A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63565(P2010−63565)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】