説明

気密性異径チューブ、内張りされた異径筒状織物及び異径筒状織物の内張り方法

【課題】異径筒状織物の内面に、容易に内張りして気密性を付与することのできる、異径チューブを提供する。
【解決手段】大径部2と、小径部3と、大径部2と小径部3とを繋ぐ略円錐台状の異径部4とを有する異径筒状織物1の内面に貼着して、当該異径筒状織物1に気密性を付与するプラスチック製気密性異径チューブにおいて、前記大径部2の内径に等しいか又はそれよりやや小さい径を有する大径チューブと、前記小径部3の内径に等しいか又はそれよりやや小さい径を有する小径チューブとを、大径端が前記大径部2の径にほゞ等しく小径端が前記小径部3の径にほゞ等しく且つ前記異径部4にほぼ等しい長さを有する略円錐台状チューブを介して接続してなる気密性異径チューブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの気密性異径チューブに関するものであって、特に大径部と、小径部と、大径部と小径部とを繋ぐ略円錐台状異径部とを有する異径筒状織物の内面に貼着して、当該異径筒状織物に気密性を付与するプラスチック製気密性異径チューブに関するものであり、さらに当該気密性異径チューブで内張りされた異径筒状織物及び、その異径筒状織物の内張り方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、大径部と小径部とを有しその間で径が連続的に変化する、異径筒状織物が広く知られており、各種の用途に使用されている。また当該異径筒状織物の内面に内張りを施して気密性を付与したものも種々提案されている。
【0003】
図1(a)は異径筒状織物1を示すものであって、筒状の大径部2と当該大径部2の両側に形成された小径部3とを有しており、当該大径部2と小径部3との間が略円錐台状の異径部4によって繋がっており、全体として連続して径が変化する異径筒状織物1を形成している。
【0004】
なおこの例においては、大径部2の両側に異径部4を介して小径部3が形成されており、両端に小径部3を有しているが、かかる形状に限定されるものではなく、用途によっては一端部が大径部2で他端部が小径部3であるものもあり、また大径部2と小径部3とが繰り返す形状のものもあり得る。
【0005】
また図1(b)は、前記異径筒状織物1の内面にプラスチックの内張り5が形成されたものであって、この内張り5は異径筒状織物1の大径部2、小径部3及び異径部4を通して、その内面にプラスチックチューブが貼着されている。
【0006】
一般に消防用ホースなどの分野においては、筒状織物の内面に内張りを施す場合、筒状織物の内側にゴム又はプラスチックのチューブを引き込んで膨らませ、筒状織物の内面に接着する方法や、筒状織物の表面にゴム又はプラスチックの押出成型により皮膜層を形成し、それを内外面反転させて前記皮膜層を内張りとする方法などが行われているが、前述のような異径筒状織物においてはそのいずれの方法も困難である。
【0007】
すなわち異径筒状織物にチューブを引き込んで内張りする場合、チューブは通常押出成型法により径が一定のものとして成型されるため、小径部の径に合わせて成型したチューブでは、大径部の径にまで膨らませるのが困難であり、大径部において内張りが極端に薄くなったり破裂したりする可能性がある。また大径部の径に合わせて成型したチューブを使用した場合には、小径部において内張りに激しいしわが生じる。
【0008】
特開2000−310362号公報には、異径筒状織物を使用した消防用ホースが示されており、消防用ホースのように大径部と小径部との径の比率がそれほど大きくない場合には、前述のような問題点も少なく実施可能であるが、大径部の径が小径部の二倍を超えるような径の変化が大きい異径筒状織物においては、同様の方法を採用することは事実上不可能である。
【0009】
また異径筒状織物の表面に押出成型法により皮膜層を形成しようとしても、径が大小に変化する筒状織物を押出成型機に通すこと自体が不可能であり、その表面に均一厚みの皮膜層を形成することはできない。
【0010】
特開平8−145296号公報には、大径部の両端に小径部を形成した異径の筒状織物の内面に気体遮蔽膜を形成したものが示されているが、その構造は示されているものの、かかる構造を実現する方法が記載されていない。
【0011】
また特開平7−190195号公報や特開平7−238433号公報には、異径筒状織物よりなる補強体をゴムチューブの肉厚内に埋入したベローズが示されている。一般にベローズはモールド成型により成型されるため、その金型内に異径筒状織物を封入して成型することも可能であるが、長尺の異径筒状織物や寸法精度がさほど高くない場合に、異径筒状織物に気密性を付与する方法としては不適切である。
【特許文献1】特開2000−310362号公報
【特許文献2】特開平8−145296号公報
【特許文献3】特開平7−190195号公報
【特許文献4】特開平7−238433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、異径筒状織物の内面に容易に内張りして気密性を付与することのできる、気密性の異径チューブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
而して本発明の気密性異径チューブは、大径部と、小径部と、大径部と小径部とを繋ぐ略円錐台状の異径部とを有する異径筒状織物の内面に貼着して、当該異径筒状織物に気密性を付与するプラスチック製気密性異径チューブにおいて、前記大径部の内径に等しいか又はそれよりやや小さい径を有する大径チューブと、前記小径部の内径に等しいか又はそれよりやや小さい径を有する小径チューブとを、大径端が前記大径部の径にほゞ等しく小径端が前記小径部の径にほゞ等しく且つ前記異径部にほぼ等しい長さを有する略円錐台状チューブを介して接続してなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、前記略円錐台状チューブが、気密性のプラスチックフィルムから前記略円錐台状チューブの展開図形状に切り抜いた、略扇面形状の略円錐台状チューブ部品(15)を、その両側縁において接合して形成したものであることが好ましい。
【0015】
また本発明においては、前記大径チューブ及び小径チューブが、それぞれプラスチックの押出成型により成型されたシームレスチューブであることが好ましいが、気密性のプラスチックフイルムからその展開図形状に切り抜いた略長方形状の大径チューブ部品及び小径チューブ部品を、その両側縁において接合して形成したものとすることもできる。
【0016】
また本発明の内張りされた異径筒状織物は、大径部と、小径部と、大径部と小径部とを繋ぐ略円錐台状の異径部とを有する異径筒状織物であって、その内面に前述の気密性異径チューブを貼着してなることを特徴とするものである。
【0017】
また本発明の異径筒状織物の内張り方法は、大径部と、小径部と、大径部と小径部とを繋ぐ略円錐台状の異径部とを有する異径筒状織物内に、前述の気密性異径チューブを引き込み、当該気密性異径チューブ内に圧力流体を挿入して膨らませ、異径筒状織物の内面に貼着することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、異径筒状織物の内面形状に沿った形状の異径チューブとすることができ、これを異径筒状織物内に引き込んで膨らませることにより、容易に異径筒状織物の内面に貼着し、気密性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図2は本発明の異径チューブ6を示すものであって、7は大径チューブであり8は小径チューブであって、それぞれ前記異径筒状織物1における大径部2及び小径部3の内径に等しいか又はそれよりやや小さい径を有しており、その大径チューブ7と小径チューブ8とは、略円錐台状チューブ9を介して接続されている。
【0020】
前記略円錐台状チューブ9は、その大径端10が前記大径部2の径にほゞ等しく小径端11が前記小径部3の径にほゞ等しく、且つ前記異径部4の長さにほぼ等しい長さを有する略円錐台状をなしており、その大径端10及び小径端11において大径チューブ7及び小径チューブ8に対して接合部12で接合されている。
【0021】
図3は異径チューブ6を製作する工程の一例を示すものであって、プラスチックフィルムから、大径チューブ7、小径チューブ8及び略円錐台状チューブ9のそれぞれを製作するための部品を裁断する。
【0022】
大径チューブ部品13は図3(a)に示すように大径チューブ7の長さに等しい長さと大径チューブ7の周長に等しい幅とを有する略長方形状であって、大径チューブ7の展開図形状をなしており、図3(b)に示すようにその両側縁を接合部12で接合して円筒状の大径チューブ7とする。
【0023】
また小径チューブ部品14は同様に、小径チューブ8の長さ及び周長に等しい長さ及び幅を有する略長方形状であって、小径チューブ8の展開図形状をなしており、その両側縁を接合して円筒状の小径チューブ8とする。
【0024】
また略円錐台状チューブ部品15は、大径チューブ7の周長に等しい外周縁と小径チューブ8の周長に等しい内周縁とを有する略扇面形状であって、略円錐台状チューブ9の展開図形状をなし、その両側縁を接合して略円錐台状チューブ9とする。
【0025】
而してこのようにして製作された大径チューブ7、小径チューブ8及び略円錐台状チューブ9を、それぞれ接合部12において接合して、図3(c)に示すように異径チューブ6を製作するのである。
【0026】
なお大径チューブ7及び小径チューブ8は、その全長に亙って径が一定の円筒状であるので、押出成型により成型されたプラスチックのシームレスチューブを所望の長さに裁断したものを使用することもできる。
【0027】
而してかくして製作された異径チューブ6は、図4に示すようにこれを異径筒状織物1内に引き込み、両端を栓16で閉塞すると共に、一方の栓16に取り付けられた吹き込み管17から空気を挿入して膨らませ、異径筒状織物1の内面に圧接すると共に貼着し、図1(b)に示す内張り5とするのである。
【0028】
本発明によれば、異径チューブ6が異径筒状織物1の内面形状にほゞ一致しているので、この異径チューブ6を異径筒状織物1内に引き込んで貼着することにより、異径筒状織物1の内面に気密性の内張り5を形成し、異径筒状織物1に気密性を付与することができる。
【0029】
そして異径チューブ6が異径筒状織物1の内面形状にほゞ一致しているので、異径チューブ6内に僅かな内圧をかけるだけで容易に異径筒状織物1の内面に密着し、異径チューブ6に過度の歪が生じることなく、また異径チューブ6が内圧により裂けることもなく、スムーズに内張り5を形成することができる。
【0030】
また異径チューブ6はプラスチックフィルムよりなるので、柔軟であって多少の寸法の融通性を有しており、異径筒状織物1に極端に高い寸法安定性が要求されることもなく、異径筒状織物1の寸法にばらつきがあってもその異径筒状織物1に容易に内張り5を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は異径筒状織物の中央縦断面図であり、(b)は内張りを施した異径筒状織物の中央縦断面図である。
【図2】本発明の異径チューブの中央縦断面図
【図3】本発明の異径チューブを製作する手順を示す斜視図
【図4】本発明の異径チューブにより異径筒状織物に内張りを形成する状態を示す中央縦断面図
【符号の説明】
【0032】
1 異径筒状織物
2 大径部
3 小径部
4 異径部
5 内張り
6 異径チューブ
7 大径チューブ
8 小径チューブ
9 略円錐台状チューブ
10 大径端
11 小径端
12 接合部
13 大径チューブ部品
14 小径チューブ部品
15 略円錐台状チューブ部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部(2)と、小径部(3)と、大径部(2)と小径部(3)とを繋ぐ略円錐台状の異径部(4)とを有する異径筒状織物(1)の内面に貼着して、当該異径筒状織物(1)に気密性を付与するプラスチック製気密性異径チューブ(6)において、前記大径部(2)の内径に等しいか又はそれよりやや小さい径を有する大径チューブ(7)と、前記小径部(3)の内径に等しいか又はそれよりやや小さい径を有する小径チューブ(8)とを、大径端(10)が前記大径部(2)の径にほゞ等しく小径端(11)が前記小径部(3)の径にほゞ等しく且つ前記異径部(4)にほぼ等しい長さを有する略円錐台状チューブ(9)を介して接続してなることを特徴とする、気密性異径チューブ
【請求項2】
前記略円錐台状チューブ(9)が、気密性のプラスチックフィルムから前記略円錐台状チューブの展開図形状に切り抜いた、略扇面形状の略円錐台状チューブ部品(15)を、その両側縁において接合して形成したものであることを特徴とする、請求項1に記載の気密性異径チューブ
【請求項3】
前記大径チューブ(7)及び小径チューブ(8)が、それぞれプラスチックの押出成型により成型されたシームレスチューブであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の気密性異径チューブ
【請求項4】
前記大径チューブ(7)及び小径チューブ(8)が、それぞれ、気密性のプラスチックフイルムからその展開図形状に切り抜いた略長方形状の大径チューブ部品(13)及び小径チューブ部品(14)を、その両側縁において接合して形成したものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の気密性異径チューブ
【請求項5】
大径部(2)と、小径部(3)と、大径部(2)と小径部(3)とを繋ぐ略円錐台状の異径部(4)とを有する異径筒状織物(1)であって、その内面に請求項1乃至4のいずれかの気密性異径チューブ(6)を貼着してなることを特徴とする、内張りされた異径筒状織物
【請求項6】
大径部(2)と、小径部(3)と、大径部(2)と小径部(3)とを繋ぐ略円錐台状の異径部(4)とを有する異径筒状織物(1)内に、請求項1乃至4のいずれかの気密性異径チューブ(6)を引き込み、当該気密性異径チューブ(6)内に圧力流体を挿入して膨らませ、異径筒状織物(1)の内面に貼着することを特徴とする、異径筒状織物の内張り方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−172800(P2009−172800A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11924(P2008−11924)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】