説明

気液分離装置及び発電装置

【課題】装置の向きにかかわらず水を回収することができ、小型化することができるようにする。
【解決手段】本体ケース2には内部空間21が形成され、導入孔23、排出孔25及び排水孔27も形成されている。本体ケース2内に電気浸透材6が設けられ、電気浸透材6の両面に第1電極膜5や第2電極膜7が成膜されている。内部空間21のうち第1領域31には液体捕捉部4が配置されている。水蒸気を含むガスが導入孔23を通って第1領域31に導入されると、水が液体捕捉部4で凝縮し、その水が電気浸透材6を電気浸透して反対の第2領域32へ滲み出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離装置及び発電装置に関し、特に水蒸気を含むガスから水を分離させる気液分離装置及びそれを具備する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、腕時計、PDA(Personal Digital Assistance)、電子手帳等といった小型電子機器がめざましい進歩・発展を遂げている。電子機器の電源として用いられる一次電池及び二次電池の代替えのために、高いエネルギー容量を実現できる燃料電池についての研究・開発が盛んに行われている。
【0003】
燃料電池は、燃料と大気中の酸素とを電気化学的に反応させて化学エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電気化学反応が燃料電池に利用されているので、その電気化学反応によって副生成物が生成される。このような副生成物はガス状であり、そのガスには二酸化炭素、未反応の燃料及び酸素等が含まれ、更に燃料電池において生成された水も水蒸気として含まれている。そのガスを放熱フィン、熱回収装置等によって冷却し、ガス中の水を凝縮し、液体状の水を再利用する技術がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−236598号公報
【特許文献2】特開2006−236599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載された技術では、放熱フィンや熱回収装置でガスを冷却することによって水を凝縮させていたので、放熱フィンや熱回収装置を設けるために装置が大型である。
また、特許文献1、特許文献2に記載された技術では、放熱フィンや熱回収装置によって凝縮されて得た水を一定の箇所に送って回収するために、重力を利用している。装置を定置させて用いるのであれば装置に対して重力の向きが一定であるが、装置を電子機器等のような携帯機器に応用するとなれば、装置を定置させることはできず、装置に対する重力の向きが変化する。そのため、凝縮により得られた水は装置の向きの変化によって様々な箇所に流れてしまい、一定の箇所に集めることができない。
そこで、本発明は、装置の向きにかかわらず水を回収することができ、小型化することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、気液分離装置において、内部空間が形成され、その内部空間に通じる導入孔及び排出孔が形成された本体と、前記内部空間に収容され、前記内部空間を前記導入孔及び前記排出孔が通じる第1領域と他の第2領域とに区切る電気浸透材と、前記第1領域側において前記電気浸透材に接合した第1電極と、前記第2領域側において前記電気浸透材に接合した第2電極と、を備え、水蒸気を含むガスが前記導入孔から前記第1領域に導入され、前記第1領域において前記水蒸気が凝縮した水を前記第1電極と前記第2電極との間に印加された電圧により前記第1領域から前記第2領域へ前記電気浸透材を電気浸透することを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の気液分離装置において、前記第1領域に収容され、ガス中の水を捕捉する液体捕捉部を更に備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の気液分離装置において、前記液体捕捉部が前記第1電極に接触するよう前記第1領域に収容されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の気液分離装置において、前記液体捕捉部が捕捉した水を吸収して前記第1電極に接触させることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項2から4の何れか一項に記載の気液分離装置において、前記液体捕捉部が繊維材であることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の気液分離装置において、前記液体捕捉部が親水性を有することを特徴とする。
【0011】
請求項7に係る発明は、請求項2に記載の気液分離装置において、前記液体捕捉部が前記第1領域において配列された複数のフィンを有することを特徴とする。
【0012】
請求項8に係る発明は、請求項1から7の何れか一項に記載の気液分離装置において、前記本体の外面に凹凸が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項9に係る発明は、請求項1から8の何れか一項に記載の気液分離装置において、前記排出孔を閉塞し、気体を透過させるとともに液体を遮蔽する気液分離膜を更に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項10に係る発明は、請求項1から9の何れか一項に記載の気液分離装置において、前記導入孔と前記排出孔が前記内部空間を挟んで相対する位置に形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項11に係る発明は、請求項10に記載の液体回収装置において、前記内部空間が前記導入孔から前記排出孔にかけて長尺となる空間であることを特徴とする。
【0016】
請求項12に係る発明は、発電装置において、内部空間が形成され、その内部空間に通じる導入孔及び排出孔が形成された本体と、前記内部空間に収容され、前記内部空間を前記導入孔及び前記排出孔が通じる第1領域と他の第2領域とに区切る電気浸透材と、前記第1領域側において前記電気浸透材に接合した第1電極と、前記第2領域側において前記電気浸透材に接合した第2電極と、を有する液体分離装置と、水素と酸素の電気化学反応により電力を取り出して水蒸気を含むガスを排出する発電セルと、を備え、前記発電セルから排出された水蒸気を含むガスが前記導入孔から前記第1領域に導入され、前記第1領域において前記水蒸気が凝縮した水を前記第1電極と前記第2電極との間に印加された電圧により前記第1領域から前記第2領域へ前記電気浸透材を電気浸透することを特徴とする。
【0017】
請求項13に係る発明は、請求項12に記載の発電装置において、前記気液分離装置が、前記第1領域に収容され、ガス中の水を捕捉する液体捕捉部を更に有することを特徴とする。
【0018】
請求項14に係る発明は、請求項12又は13に記載の発電装置において、前記発電セルにおける電気化学反応において未反応の水素を燃焼させて、その燃焼により生成された水蒸気を含むガスを排出する燃焼器を更に備え、前記燃焼器から排出された水蒸気を含むガスが前記導入孔から前記第1領域に導入されることを特徴とする。
【0019】
請求項15に係る発明は、請求項12から14の何れか一項に記載の発電装置において、液体燃料を貯留する燃料貯留室と、前記第2領域に電気浸透した水と前記燃料貯留室から供給された液体燃料とを混合して気化させる気化器と、前記気化器で気化されたガスから水素を生成する改質器と、を更に備え、前記改質器で生成された水素が前記発電セルに供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1領域に導入されたガス中の水が電気浸透材を電気浸透することによって第2領域に浸透することで、ガス中の水を分離することができる。本体の内部空間が電気浸透材によって第1領域と第2領域に区切られているので、装置の向きにかかわらず水を第2領域に回収することができる。
また、電気浸透材が本体の中に収容されているので、本体の外等に他の装置を設けずとも水を回収することができ、装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0022】
図1は気液分離装置1の横断面図であり、図2は気液分離装置1の分解斜視図である。
図1及び図2に示すように、この気液分離装置1は、本体ケース2と、本体ケース2の内側に収容された液体捕捉部4、第1電極膜5、電気浸透材6及び第2電極膜7を有する。
【0023】
本体ケース2は直方体状に成しており、本体ケース2の内側には空間21が形成されている。内部空間21は本体ケース2の長手方向に沿って長尺な略直方体状の空間である。
【0024】
本体ケース2の長手方向一端側の端面には、ニップル22が突出した状態に設けられ、導入孔23がニップル22の突端から内部空間21までニップル22の中心線に沿って貫通している。本体ケース2の長手方向他端側の端面には、ニップル24及びニップル26が突出した状態に設けられ、排出孔25がニップル24の突端から内部空間21までニップル24の中心線に沿って貫通し、排水孔27がニップル26の突端から内部空間21までニップル26の中心線に沿って貫通している。排出孔25は導入孔23の対向位置に形成され、排水孔27は導入孔23の対向位置からずれている。
【0025】
本体ケース2の外面には、本体ケース2の長手方向に沿った複数の溝によって凹凸35が形成されている。本体ケース2は、ニップル22,24,26の中心線を通った面で2つの分割体28,29に分割されており、分割体28,29が接合されることによって本体ケース2が構成されている。本体ケース2は金属材料からなることが好ましいが、樹脂材料からなるものでも良い。
【0026】
電気浸透材6は薄板状又はシート状に形成されており、電気浸透材6の両面には電極膜5,7が接合されている。電気浸透材6には誘電体の多孔質材、繊維材又は粒子充填材が用いられ、一例としてシリカ繊維材料又は多孔質セラミックが用いられる。電極膜5,7は金属、特に貴金属からなり、更に具体的には白金からなる。電極膜5,7はスパッタ法、蒸着法その他の気相成長法により成膜されたものである。電極膜5,7が気相成長法により成膜されたものであるから、電極膜5,7に多数の微小孔が形成されており、電極膜5,7を液体が浸透する。なお、電極膜5,7が網目状に形成されたものでもよく、その網目を通じて液体が浸透する。
【0027】
電極膜5には繊維材料からなる液体捕捉部4が積層され、液体捕捉部4が電極膜5に接触している。液体捕捉部4が繊維材料であるため、液体捕捉部4の内部には微小空間が多数形成されており、液体捕捉部4は気体を透過させるとともに液体を捕捉して、液体捕捉部4の毛細管現象により液体が液体捕捉部4に吸収され得る。更に、液体捕捉部4は親水性を有し、その親水性によって液体捕捉部4の液体吸収性が高くなっている。具体的には、液体捕捉部4は不織布である。不織布以外としては繊維を結合材で固めたもの、スポンジ等を液体捕捉部4として用いても良い。
【0028】
電気浸透材6が内部空間21の長手方向と平行となるように内部空間21に収容され、内部空間21が電気浸透材6によって2つの領域31,32に区切られている。電極膜5は電気浸透材6によって仕切られた2つの領域31,32のうち第1領域31側になり、電極膜7が他方の第2領域32側になっている。そして、導入孔23及び排出孔25が第1領域31に通じ、排水孔27が第2領域32に通じている。また、液体捕捉部4は第1電極膜5に接触した状態で第1領域31に収容され、その第1領域31に充填されているのが更に好ましい。
【0029】
次に、気液分離装置1の動作について説明する。
第1電極膜5と第2電極膜7との間に電圧を印加する。ここで、第1電極膜5が第2電極膜7よりも高電位になるような電圧を印加する。なお、制御回路が第1電極膜5と第2電極膜7との間の電圧を調整したり、第1電極膜5と第2電極膜7に電圧を印加する時間のデューティを例えばPWM制御により調整したりしても良い。
【0030】
水蒸気を含有したガスが導入孔23を通って領域31内に送られると、そのガスは液体捕捉部4を通過して排出孔25から排出される。また、液体捕捉部4を通過しているガスに含まれる水蒸気は液体捕捉部4によって毛管凝縮されて液体捕捉部4に捕捉され、液体捕捉部4に捕捉された水が液体の状態で液体捕捉部4に吸収される。液体捕捉部4に捕捉された水が液体捕捉部4の内部を第1電極膜5へと拡散していき、水が第1電極膜5に接触する。そして、第1電極膜5に接触した水は第1電極膜5を透過して電気浸透材6に吸収される。
【0031】
第1電極膜5と第2電極膜7との間に電解が生じているので、電気浸透流現象が生じる。例えば、電気浸透材6が多孔質シリカである場合、誘電体に「−Si−OH」(シラノール基)が生成され、シラノール基がSi−Oとなり、シリカ表面は負に帯電する。一方、界面近傍には、液体中の正イオン(カウンターイオン)が集まり、正電荷が過剰となる。そして、第1電極膜5を陽極とし、第2電極膜7を陰極として電圧を加えると、過剰な正電荷が陰極方向に移動し、粘性により水全体が陰極方向に浸透する。そのため、電気浸透材6内の水が第1電極膜5側から第2電極膜7側へ浸透し、この第2電極膜7から第2領域32へ滲み出る。なお、水を第1電極膜5から第2電極膜7へと電気浸透させるための電圧の向きは電気浸透材6の種類によって異なるので、電気浸透材6の種類によっては第2電極膜7の電位よりも第1電極膜5の電位を高くすることもある。
【0032】
以上のように水蒸気を含有したガスが第1領域31を導入孔23から排出孔25へ流れている時に、そのガス中の水の一部が分離されて第2領域32へと浸透し、分離された水が排水孔27から排水される。
【0033】
以上のように、本体ケース2の内部空間が電気浸透材6によって第1領域31と第2領域32に区切られているので、水が第2領域32から第1領域31へ逆流せず、気液分離装置1の向きにかかわらず水を第2領域32に回収することができる。特に、液体捕捉部4が第1領域32に充填されているので、気液分離装置1の向きにかかわらず、液体捕捉部4によって水が捕捉されて、捕捉された水が第1電極膜5や電気浸透材6に接触する。
【0034】
また、電気浸透材6が本体ケース2の中に収容され、本体ケース2の外等に他の装置を設けずとも水を回収することができ、気液分離装置1の小型化を図ることができる。特に、電気浸透材6が薄板状又はシート状であり、電気浸透材6の両面の電極膜5,7が膜状であるから、本体ケース2の小型化が可能であり、気液分離装置1を小型化することができる。
【0035】
また、液体捕捉部4が第1領域31に収容されているので、水蒸気が液体捕捉部4にトラップされ、第1電極膜5に水が接触しやすく、この気液分離装置1によってガス中から水を効率よく分離することができる。特に、液体捕捉部4が第1領域32に充填されているので、第1領域31に導入されたガスの殆ど全てが液体捕捉部4を通過するので、水の捕捉の効率が高い。その上、本体ケース2の外面に凹凸35が形成されているので、本体ケース2の放熱効果が高く、そのため液体捕捉部4における水の凝縮の効率も良い。なお、この凹凸35は、本体ケース2に冷却フィンを設けたものでも良い。
【0036】
また、第1電極膜5と第2電極膜7との間の電圧を調整したり、第1電極膜5と第2電極膜7に電圧を印加している時間のデューティを調整したりすることによって、水の浸透速度を変更することができる。つまり、第1領域31から第2領域32へ回収される水の単位時間当たりの量を変更することができる。
【0037】
<変形例1>
図3は、変形例の気液分離装置1Aの横断面図である。図3に示すように、第1領域31に繊維材料である液体捕捉部4を充填する代わりに、液体捕捉部として複数のフィン41を第1領域31に配列しても良い。複数のフィン41が導入孔23から排出孔25にかけて互い違いに配列され、これにより葛折り状の流路が形成されている。これらフィン41は金属材料からなることが好ましい。これらフィン41によって葛折り状の流路が形成され、その流路の断面積が小さいので、水蒸気を含むガスがその流路を流動するときに、水蒸気が毛管凝縮して液体になる。また、フィン41のうち特に本体ケース2に接続されているものは相対的に水蒸気よりも温度が低くなっており、そのフィン41の表面で水蒸気が結露する。その液体状の水は電気浸透現象により第1領域31から第2領域32へと浸透する。気液分離装置1Aは液体捕捉部を除いて図1に示された気液分離装置1と同じであるので、気液分離装置1Aと気液分離装置1との間で互いに対応する部分には同一の符号を付して、気液分離装置1Aについての詳細な説明を省略する。
【0038】
<変形例2>
繊維材料、複数のフィン41の代わりに、金属細線が捲回され絡められた状態で第1領域31に充填されていても良い。絡められた金属細線が液体捕捉部となる。
<変形例3>
第1領域31に液体捕捉部が収容されていなくても良い。但し、第1領域31に液体の水をトラップするという観点からすると、第1領域31に液体捕捉部が収容されていることが好ましい。
【0039】
<変形例4>
排出孔25が、気体を透過させるとともに液体を遮蔽する気液分離膜によって閉塞されていても良い。排出孔25が気液分離膜によって閉塞されると、第1領域31内に水がトラップされやすく、効率よく水を回収することができる。排出孔25を気液分離膜で閉塞することは、図1の気液分離装置1だけなく、変形例1〜3にも適用することができる。
【0040】
<変形例5>
本体ケース2に排水孔27を形成せずに又は排水孔27に開閉バルブを設け、第2領域32に水を貯留するものとしても良い。この場合、第2領域32の容積を大きくすると良い。このように第2領域32に水を貯留することは、図1の気液分離装置1だけなく、変形例1〜変形例4にも適用することができる。
【0041】
<応用例>
図4は、気液分離装置1を用いた発電装置301を示したブロック図である。なお、図1に示された気液分離装置1の代わりに変形例1〜変形例5の何れか一の気液分離装置を用いても良い。
【0042】
図4に示すように、発電装置301は、気液分離装置1の他に、2つの燃料カートリッジ302、マイクロリアクタ303、発電セル309、加湿器310、バルブ311〜317、ポンプ318〜319、流量センサ320〜323、エアフィルタ324及びコネクタ325〜326を備える。この発電装置301は電子機器本体に搭載されており、発電装置301によって生じた電力が電子機器本体に用いられ、これにより電子機器本体が動作する。
【0043】
燃料カートリッジ302の内側には、追従体340が設けられ、燃料カートリッジ302の内側の空間が追従体340によって2つの室341〜342に区分けされ、一方の室341(以下、燃料貯留室341という。)に液体燃料(例えば、メタノール)が貯留されている。燃料カートリッジ302の供給口にコネクタ325又はコネクタ327が接続されると、燃料カートリッジ302内の液体燃料が液体ポンプ319に吸引されるようになる。燃料貯留室341内の液体燃料の消費に伴って追従体340が供給口側に移動し、これにより燃料貯留室341の容積が減少し、室342(以下、廃液室342という。)の容積が増加する。また、燃料カートリッジ302にはダクト343が設けられ、ダクト343の一端が燃料貯留室341に通じている。更に、燃料カートリッジ302には、廃液室342に通じる排気孔が形成され、その排気孔が気液分離膜344によって閉塞されている。燃料カートリッジ302は電子機器本体に対して着脱可能とされ、燃料カートリッジ302が電子機器本体に装着されると、コネクタ325又はコネクタ327が燃料カートリッジ302の供給口に接続され、コネクタ326又はコネクタ328がダクト343に接続される。
【0044】
コネクタ325及びコネクタ327は流路を介して液体ポンプ319に接続されている。液体ポンプ319は、燃料カートリッジ302から液体燃料をマイクロリアクタ303の気化器304へ送液するものである。気化器304と液体ポンプ319との間にはオンオフバルブ313が設けられ、液体ポンプ319から気化器304への液体燃料の流れの遮断及び許容がオンオフバルブ313の開閉によって行われる。液体ポンプ319から気化器304への液体燃料の流量が流量センサ321によって検出されて電気信号に変換される。
【0045】
エアポンプ318は外部から空気を吸引して、マイクロリアクタ303のCO除去器306及び燃焼器308並びに加湿器310に空気を送るものである。加湿器310はエアポンプ318から送られた空気を加湿するものである。
【0046】
外部の空気はエアポンプ318に吸引される前にエアフィルタ324を通過し、空気中の塵埃がエアフィルタ324によって捕捉される。エアポンプ318とCO除去器306との間には制御バルブ316が設けられ、CO除去器306に送られる空気の流量が制御バルブ316によって制御され、その流量が流量センサ323によって検出されて電気信号に変換される。エアポンプ318と燃焼器308との間には制御バルブ315が設けられ、燃焼器308に送られる空気の流量が制御バルブ316によって制御され、その流量が流量センサ322によって検出されて電気信号に変換される。エアポンプ318と加湿器310との間にはオンオフバルブ311が設けられ、燃焼器308に送られる空気の流れの遮断及び許容がオンオフバルブ311の開閉によって行われる。
【0047】
マイクロリアクタ303は気化器304、CO除去器306、燃焼器308の他に、改質器305及び薄膜ヒータ307を有する。
【0048】
気化器304には、燃料カートリッジ302から液体燃料が送られ、更に、気液分離装置1によって分離された水(第2領域32に浸透した水)が送られ、液体燃料と水が気化器304において混合される。気化器304は、液体燃料と水を気化させるものである。気化器304において気化に要するエネルギーには、薄膜ヒータ307による電熱や燃焼器308による燃焼熱が用いられる。
【0049】
気化器304で気化した燃料と水の混合気は改質器305に送られる。改質器305においては燃料と水が触媒により改質反応を起こし、水素ガスが生成されるとともに僅かながら一酸化炭素ガスも生成される(燃料がメタノールの場合には、下記化学式(1)、(2)を参照)。改質器305において改質反応に要するエネルギーには、薄膜ヒータ307による電熱や燃焼器308による燃焼熱が用いられる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 ・・・(1)
2+CO2→H2O+CO ・・・(2)
【0050】
改質器305で生成された水素ガス等はCO除去器306に送られ、更に外部の空気がCO除去器306に送られる。CO除去器306においては、一酸化炭素ガスが一酸化炭素除去触媒により優先的に酸化する選択酸化反応が起こり、一酸化炭素ガスが除去される(下記化学式(3)を参照)。
2CO+O2→2CO2 ・・・(3)
【0051】
CO除去器306を経た水素ガス等は発電セル309の燃料極(アノード)に供給される発電セル309は、燃料極と、酸素極と、燃料極と酸素極の間に挟持された電解質膜とを備える。発電セル309の酸素極には、加湿器310によって加湿された空気が供給される。この発電セル309は、燃料極に供給された水素ガスと、酸素極に供給された酸素ガスとを電気化学的に反応させて、電気エネルギーを生成するものである。発電セルの電解質が固体高分子電解質膜である場合、燃料極においては、水素ガスが、電気化学反応式(4)に示すように、燃料極の触媒微粒子の作用を受けて水素イオンと電子とに分離する。酸素極においては、電気化学反応式(5)に示すように、酸素極に移動した電子と、空気中の酸素ガスと、固体高分子電解質膜を通過した水素イオンとが反応して水が生成される。このような発電セルの電気化学反応により生じた電力が電子機器本体に供給されて、電子機器本体が動作する。
→2H+2e・・・(4)
2H+1/2O+2e→HO・・・(5)
【0052】
発電セル309の燃料極で未反応の水素を含むオフガスは燃焼器308に送られ、発電セル309の酸素極で生成された水(水蒸気)を含むガスは加湿器310に送られて空気の加湿に用いられる。加湿器310は中空糸膜等を有し、発電セル309の酸素極において生成された水等を含むガスが中空糸膜の内部を通過し、エアポンプ318から送られた空気が中空糸膜の周囲を通過し、中空糸膜の内部を通過したガスの湿気によって中空糸膜の周囲の空気が加湿され、その加湿された空気が発電セル309の空気極(カソード)に送られる。中空糸膜の内部を通過したガスは気液分離装置1の導入孔23に送られる。
【0053】
燃焼器308に送られたオフガス(水素ガスを含む)は、エアポンプ318によって燃焼器308に送られた空気と混合する。燃焼器308においては、水素ガスが燃焼器308の触媒により酸化して、燃焼熱が生じるとともに水(水蒸気)が生成される。燃焼器308で生成された水等を含むガスは、気液分離装置1の導入孔23に送られる。上述したように、燃焼器308の燃焼熱は改質器305や気化器304に伝導して、気化器304における気化熱や改質器305における反応熱として用いられる。
【0054】
発電セル309の酸素極や燃焼器308で生成された水(水蒸気)を含有したガスが気液分離装置1の導入孔23に導入されると、水(液体)が排水孔27から排出され、除湿されたガスが排出孔25から排出される。これにより、気液分離装置1において気液分離が行われる。排水孔27から排出された水は、気化器304に送られて液体燃料と混合され、気化される。その水の流量は流量センサ320によって検出されて電気信号に変換される。
【0055】
気液分離装置1の排出孔25から排出されたガスは三方弁317を介してコネクタ326又はコネクタ328に送られる。三方弁317は気液分離装置1の排出孔25から排出されたガスの送り先を切り換えるものであり、その送り先がコネクタ325だけの場合と、コネクタ328だけの場合と、コネクタ325とコネクタ328の両方の場合と成り得る。
【0056】
気液分離装置1の排出孔25からコネクタ325やコネクタ328に送られたガスは、ダクト343を通って廃液室342に送られる。ガスがダクト343を通過している時にそのガスが放熱により冷却され、ガス中の水が凝縮する。そのため、廃液室342には液体状の水が貯留される。また、廃液室342に送られたガスは、気液分離膜344を透過して外部に放出される。気液分離膜344は液体を遮断するため、廃液室342に貯留した水(液体)が気液分離膜344を通過しない。
【0057】
この発電装置301においては、燃料電池型の発電セル309と気液分離装置1が別体で設けられているため、発電セル309の酸素極で生成された水は酸素極では凝縮せず、気液分離装置1において凝縮する。酸素極で水が凝縮しないので、酸素極が水で被膜されず、酸素極で酸素の反応が起こりやすい。
【0058】
なお、発電セル309が水素によって発電を行う燃料電池であったが、発電セル309がメタノールによって発電を行う燃料電池でも良い。この場合、改質器305、CO除去器306を設ける必要はない。
【0059】
また、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態における気液分離装置の横断面を示した断面図である。
【図2】図1に示された気液分離装置の分解斜視図である。
【図3】変形例の気液分離装置の横断面を示した断面図である。
【図4】気液分離装置を具備する発電装置を示した図面である。
【符号の説明】
【0061】
1、1A 気液分離装置
2 本体ケース
4 液体捕捉部
5 第1電極膜
6 電気浸透材
7 第2電極膜
21 内部空間
23 導入孔
25 排出孔
27 排水孔
31 第1領域
32 第2領域
35 凹凸
41 フィン
304 気化器
305 改質器
309 発電セル
308 燃焼器
342 燃料貯留室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間が形成され、その内部空間に通じる導入孔及び排出孔が形成された本体と、
前記内部空間に収容され、前記内部空間を前記導入孔及び前記排出孔が通じる第1領域と他の第2領域とに区切る電気浸透材と、
前記第1領域側において前記電気浸透材に接合した第1電極と、
前記第2領域側において前記電気浸透材に接合した第2電極と、を備え、
水蒸気を含むガスが前記導入孔から前記第1領域に導入され、前記第1領域において前記水蒸気が凝縮した水を前記第1電極と前記第2電極との間に印加された電圧により前記第1領域から前記第2領域へ前記電気浸透材を電気浸透することを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
前記第1領域に収容され、ガス中の水を捕捉する液体捕捉部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の気液分離装置。
【請求項3】
前記液体捕捉部が前記第1電極に接触するよう前記第1領域に収容されていることを特徴とする請求項2に記載の気液分離装置。
【請求項4】
前記液体捕捉部が捕捉した水を吸収して前記第1電極に接触させることを特徴とする請求項3に記載の気液分離装置。
【請求項5】
前記液体捕捉部が繊維材であることを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載の気液分離装置。
【請求項6】
前記液体捕捉部が親水性を有することを特徴とする請求項5に記載の気液分離装置。
【請求項7】
前記液体捕捉部が前記第1領域において配列された複数のフィンを有することを特徴とする請求項2に記載の気液分離装置。
【請求項8】
前記本体の外面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の気液分離装置。
【請求項9】
前記排出孔を閉塞し、気体を透過させるとともに液体を遮蔽する気液分離膜を更に備えることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の気液分離装置。
【請求項10】
前記導入孔と前記排出孔が前記内部空間を挟んで相対する位置に形成されていることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の気液分離装置。
【請求項11】
前記内部空間が前記導入孔から前記排出孔にかけて長尺となる空間であることを特徴とする請求項10に記載の気液分離装置。
【請求項12】
内部空間が形成され、その内部空間に通じる導入孔及び排出孔が形成された本体と、前記内部空間に収容され、前記内部空間を前記導入孔及び前記排出孔が通じる第1領域と、他の第2領域とに区切る電気浸透材と、前記第1領域側において前記電気浸透材に接合した第1電極と、前記第2領域側において前記電気浸透材に接合した第2電極と、を有する液体分離装置と、
水素と酸素の電気化学反応により電力を取り出して水蒸気を含むガスを排出する発電セルと、を備え、
前記発電セルから排出された水蒸気を含むガスが前記導入孔から前記第1領域に導入され、前記第1領域において前記水蒸気が凝縮した水を前記第1電極と前記第2電極との間に印加された電圧により前記第1領域から前記第2領域へ前記電気浸透材を電気浸透することを特徴とする発電装置。
【請求項13】
前記気液分離装置が、前記第1領域に収容され、ガス中の水を捕捉する液体捕捉部を更に有することを特徴とする請求項12に記載の発電装置。
【請求項14】
前記発電セルにおける電気化学反応において未反応の水素を燃焼させて、その燃焼により生成された水蒸気を含むガスを排出する燃焼器を更に備え、
前記燃焼器から排出された水蒸気を含むガスが前記導入孔から前記第1領域に導入されることを特徴とする請求項12又は13に記載の発電装置。
【請求項15】
液体燃料を貯留する燃料貯留室と、
前記第2領域に電気浸透した水と前記燃料貯留室から供給された液体燃料とを混合して気化させる気化器と、
前記気化器で気化されたガスから水素を生成する改質器と、を更に備え、
前記改質器で生成された水素が前記発電セルに供給されることを特徴とする請求項12から14の何れか一項に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−136964(P2008−136964A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326886(P2006−326886)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】