説明

気相成長炭素繊維製造用触媒及び気相成長炭素繊維

【課題】樹脂への分散性及び導電性の発現性に優れた気相成長炭素繊維を効率的に製造する。
【解決手段】コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩とを含む原料混合物を焼成してなり、レーザー回折法による乾式状態での粒度分布測定において、正規分布50%における平均粒子径D50が3μm以下である気相成長炭素繊維製造用触媒。微細な繊維が絡み合って集合した凝集体構造を有し、水銀加入法による細孔容量測定において、孔径20nm〜4μmの範囲の細孔として測定される空隙を2.4ml/g以上有する気相成長炭素繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長法により炭素繊維を製造するための触媒と、この触媒を用いて製造される気相成長炭素繊維に係り、特に、気相成長時の繊維の絡み合いを抑制することにより、炭素繊維凝集体内部の空隙を広げ、これにより、樹脂含浸性を高めた気相成長炭素繊維と、この気相成長炭素繊維を製造するための触媒に関する。
【0002】
本発明により提供される気相成長炭素繊維は、その優れた樹脂含浸性により、樹脂に配合したときの分散性及び導電性の発現性に優れ、少ない配合量で高い導電性を有する樹脂成形体を提供することができる。
【背景技術】
【0003】
一般に、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブと称される、直径が1μm以下の微細炭素繊維(以下、単位「炭素繊維」と言う。)は、例えば樹脂へ配合され、導電性や強度等の特性を付与するフィラーとして、種々の検討がなされている。そして、このような炭素繊維は、従来、主にアーク放電法、レーザー蒸着法、気相成長法などで製造されていた。
【0004】
このうちアーク放電法やレーザー蒸着法では、真空装置、高電圧大電流電源等、高価且つ取り扱いも注意を要する大型装置を必要とし、加えて炭素繊維の生成量も少ないという問題があった。更に、これらの方法によって得られる炭素繊維は、回収物の中に繊維形状とは異なる黒鉛やアモルファスカーボン等といった不純物を多く含み、生成効率が低いという問題もあった。
【0005】
このような課題に対し、炭化水素や一酸化炭素等の炭素を含む原料ガスを、触媒金属上で熱分解して繊維状炭素を得る方法(気相成長法)による炭素繊維の製造方法が提案されている。気相成長法は、アーク放電法やレーザー蒸着法に比べて効率良く不純物の少ない炭素繊維が得られるという利点がある。また、気体状態の原料を使用することによって、連続反応が可能であり、更には原料ガスとなる炭化水素や一酸化炭素等の炭素を含むガスが安価に入手できるので、炭素繊維の量産化に適した技術といえる。
【0006】
気相成長法で使用される触媒(以下、「気相成長法炭素繊維製造用触媒」ということがある。)は、例えばシリカ、アルミナ、マグネシア、ゼオライト等の担体に、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属を担持させたもの、さらにはこれらにモリブテンを含むもの等が提案されている。また、これらの触媒は、一般的に遷移金属が酸化物として存在しているため、水素、アンモニア等によって還元処理を施して触媒を活性化した後に使用される。
【0007】
従来、気相成長炭素繊維製造用触媒として、硝酸金属塩とクエン酸を含む混合物を乾燥し、700℃で5時間焼成して得られた気相成長炭素繊維製造用触媒を用いて、チューブ部分が多層の炭素繊維を得る方法が提案されている(例えば非特許文献1参照)。この方法では、高温での焼成条件のため触媒粒子がシンタリングを生じやすく、その結果、炭素繊維析出効率が低く、生成した炭素繊維中に触媒不純物が数10%以上残留し、生産性が著しく低かった。
【0008】
触媒粒子のシンタリングによる失活を抑制することにより、気相成長炭素繊維の製造効率を改善する技術も提案されているが(特許文献1)、生成効率は十分とは言えず、その炭素繊維中の残触媒の多さから樹脂コンパンドのフィラーとしては適正とはいえない。これは触媒原料を一度溶液混合し乾燥処理を後に焼成しているために触媒均一性には優れるが、乾燥工程を経ることで触媒が強固に凝集し、焼成時の有機物分解による多孔質化作用が不十分になり炭素繊維析出に必要な成分の露出度が減少するからである。また製造された炭素繊維においてもこのように凝集した触媒構造特性に起因する成長時における繊維同士の絡まりが多く樹脂浸透性に劣ることが予想される。
【0009】
一方、ゼオライト担持型触媒を粒径10μm以下に粉砕処理することにより、1〜2層の炭素繊維の生成量を増加させる方法も提案されているが(特許文献2)、乾燥ゼオライトを担持材として直接使用する方法では焼成時にコバルト金属を均一にゼオライト表面に担持させることが困難であり、触媒あたりの炭素繊維生成量が非常に低く、量産性に優れているとはいえず、フィラー材料として炭素繊維を使用するためには触媒成分の除去が必要となる。さらに1〜6nmの微細繊維では繊維の強度が十分といえず、また比表面積の増加にともない樹脂中における分散が困難になることが予想される。
【0010】
炭素繊維において、樹脂に対する分散性は、少ない配合量で優れた導電性を得る上で極めて重要な特性である。即ち、炭素繊維を配合することにより、樹脂に対して導電性を付与することができるが、樹脂に対する分散性の悪い炭素繊維では、少ない配合量で高い導電性を得ることができず、樹脂における分散を改善するために長時間の混練を行うことは樹脂劣化を招き適切ではない。炭素繊維の配合量を多くすることにより、導電性を高めることができるが、炭素繊維の配合量を多くすることは、コストの増加のみならず、樹脂の成形性、得られる樹脂成形体の機械的特性を損なうこととなり好ましいことではない。
生成効率の低い炭素繊維も同様であり、不純物である触媒を多量に含む場合、その影響を取り除くためには触媒の洗浄による不純物の除去といった多くの工程を必要とし、工業的に優れているとはいえない。
【0011】
また、反応条件から収率を改善させた例としては基盤法において、原料ガス中のHOを1000ppm未満で管理して炭素繊維の成長効率を高める方法があるが(特許文献3)、基盤法ではその限られた表面積から、全体的な収量が低く、またHO管理も生産性を重視した安価な原料ガスを取り扱うにあたってはその濃度を極限まで下げざるを得ず、管理基準としては適切でない。
【0012】
なお、炭素繊維の凝集体を粉砕してその粒径を小さくすることにより、樹脂に対する分散性、導電性発現性を高める技術も提案されているが(特許文献4)、炭素繊維本来の分散性や導電性発現性を改善するものではない。
【0013】
樹脂中における炭素繊維の分散を改良する技術として、カーボンブラックのストラクチャー構造を表す指標の一つとして一般に使用されているDBP(ジブチルフタレート)吸油量に着目し、DBP吸油量を一定以上に上げることで、分散性、導電性を改良する技術が提案されているが(特許文献5)、後述する実施例1、比較例1で明らかにされるように、DBP吸油量だけが炭素繊維の樹脂分散性に影響を与えるとはいえない。
【非特許文献1】Carbon,41,2949−2959(2002)
【特許文献1】特開2006−181477号公報
【特許文献2】特開2005−314204号公報
【特許文献3】特開2006−143515号公報
【特許文献4】特開平7−102112号公報
【特許文献5】特開2006−152490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、樹脂への分散性及び導電性の発現性に優れた気相成長炭素繊維を効率的に製造するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩の混合物を焼成した後、微細化処理して得られる気相成長炭素繊維製造用触媒を用いることにより、気相成長時の炭素繊維の絡み合いを抑制することで、炭素繊維凝集体構造内部の空隙を広げ、これにより樹脂含浸性を高めることができ、樹脂への分散性及び導電性発現性に優れた気相成長炭素繊維を得ることができることを見出した。
【0016】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0017】
[1] コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩とを含む原料混合物を焼成してなる、気相成長法による炭素繊維製造用触媒であって、レーザー回折法による乾式状態での粒度分布測定において、正規分布50%における平均粒子径D50が3μm以下であることを特徴とする気相成長炭素繊維製造用触媒。
【0018】
[2] [1]において、平均粒子径D50が1μm以下であることを特徴とする気相成長炭素繊維製造用触媒。
【0019】
[3] [1]又は[2]において、コバルトとマグネシウムとの合計100モル%に対するコバルトの含有割合が10〜50モル%であることを特徴とする気相成長炭素繊維製造用触媒。
【0020】
[4] [1]ないし[3]のいずれかの気相成長炭素繊維製造用触媒を用いて、気相成長法により製造されたことを特徴とする気相成長炭素繊維。
【0021】
[5] 気相成長法により製造された炭素繊維において、微細な繊維が絡み合って集合した凝集体構造を有し、水銀加入法による細孔容量測定において、孔径20nm〜4μmの範囲の細孔として測定される空隙を2.4ml/g以上有することを特徴とする気相成長炭素繊維。
【0022】
[6] [5]において、前記空隙を3ml/g以上有することを特徴とする気相成長炭素繊維。
【0023】
[7] [5]又は[6]において、[1]ないし[3]のいずれかの気相成長炭素繊維製造用触媒を用いて製造されたことを特徴とする気相成長炭素繊維。
【0024】
[8] [4]ないし[7]のいずれかにおいて、透過型電子顕微鏡による繊維の観察から算出された内径が3〜13nmで、同外径が6〜30nmであり、炭素が同心円状に少なくとも3層以上の多層にわたり積層した構造を有することを特徴とする気相成長炭素繊維。
【0025】
[9] [4]ないし[8]のいずれかにおいて、COを50〜95体積%含み、かつ、HOを0.1〜1体積%含む原料ガスから製造されたことを特徴とする気相成長炭素繊維。
【発明の効果】
【0026】
コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩の混合物を焼成した後、所定の粒子径に微細化処理して得られる本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒を用いることにより、気相成長時の炭素繊維の絡み合いを抑制することができ、この結果、炭素繊維凝集体構造内部の空隙が広く、樹脂の含浸性に優れた炭素繊維を効率的に製造することができる。
【0027】
しかして、このような樹脂の含浸性に優れた本発明の気相成長炭素繊維は、樹脂への分散性に優れ、その結果、樹脂成形体における導電性発現性にも優れ、少ない配合量で、従って、樹脂の成形性や樹脂成形体の機械的特性を損なうことなく、優れた導電性樹脂成形体を実現することができる。この導電性樹脂成形体は、帯電防止用電子部材、静電塗装用樹脂成形体、導電性透明樹脂組成物等への応用が可能である。また、本発明の気相成長炭素繊維は成形体以外にも、シート、テープ、透明フィルム、インキ、導電塗料などの樹脂組成物へ適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒及び気相成長炭素繊維の実施の形態を詳細に説明する。
【0029】
[気相成長炭素繊維製造用触媒]
まず、本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒について説明する。
本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒は、コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩とを含む原料混合物を焼成してなる気相成長法により炭素繊維を製造するための触媒であって、レーザー回折法による乾式状態での粒度分布測定において、正規分布50%における平均粒子径D50が3μm以下であることを特徴とする。
【0030】
本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒は、具体的には、コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩と有機化合物とを十分に混合し、得られた混合物を焼成した後、所定の粒子径になるように微粉砕することにより製造される。
【0031】
ここで、コバルト化合物塩は、触媒の活性成分としての酸化コバルトの原料となり、また、マグネシウム化合物塩はこのコバルト活性成分の担体としてのマグネシアの原料となり、有機化合物は、金属を錯体化させることで担持成分に均一に結合させ、且つ、焼成時に分解、気化する際に、活性成分の粒子径を制御する役割を有するための成分として用いられる。
【0032】
コバルト及びマグネシウム化合物塩は例えば塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の無機酸塩や有機酸塩、アンモニア錯体塩、及び金属アルコキシド等が通常用いられるが入手や取り扱いの容易さ等の理由から無機酸塩や有機酸塩が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
従って、有機化合物としては、コバルト化合物塩と親和し、錯体形成するものが好ましく、同一分子内にカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等を有する有機化合物が挙げられ、具体的にはカルボン酸や、ヒドロキシカルボン酸、カルボン酸エステルなどのカルボン酸誘導体、アミノ酸類、アミド類、アミン類、およびこれらの水和物や無水物などが挙げられる。
【0034】
これら有機化合物の中でも、分解温度の低いもの、例えば300℃以下で分解するものが好ましく、特に金属との錯形成能を有する(配位子となりうる)化合物は、本発明の触媒において含有されるコバルトの分散性を良好なものとし、且つ微粒子化できるので好ましい。
【0035】
このような有機化合物としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、フェニルアラニン、アラニン、ロイシン、イソロイシンなどが挙げられる。中でも分解温度が低く、金属との錯形成能に優れるカルボン酸が好ましく、特にクエン酸が好ましい。
【0036】
触媒の製造に用いるコバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩との割合は、得られる触媒中のコバルトとマグネシウムとの合計100モル%に対するコバルトの含有割合(以下、この割合を単に「コバルト含有率」と称す。)が10〜50モル%、特に20〜40モル%となるような量であることが好ましい。触媒中のコバルト含有率が上記範囲よりも少ないと、触媒活性が低く、炭素繊維生成量が低くなり、逆に、コバルト含有率が上記範囲よりも多いと、コバルト粒子径が過大となり、炭素繊維成長点の減少や触媒として寄与しないコバルトの増加が生じ、効率が低下する。
【0037】
また、有機化合物は、コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩との合計に対して10〜60重量%、特に15〜40重量%の割合で用いることが好ましい。この範囲よりも有機化合物使用量が多いと、焼成分解時の発熱反応から触媒のシンタリングを引きおこし、少ないとコバルトの粒径抑制がうまくいかなくなる。
【0038】
コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩と有機化合物とは、乳鉢等を用いて、工業レベルでは2軸ミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、ブレンダーミル、自動乳鉢等を用いて十分に混合撹拌する。なお、コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩と有機化合物との混合は乾式混合法限定されず混合攪拌促進のため溶解しない程度に水を含浸させる方式を用いても良い。
【0039】
このようにして得られた混合物は空気雰囲気下で、もしくは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で加熱焼成する。
有機化合物に酸素官能基が多い場合は、自身の分解作用により不活性雰囲気下で十分に焼成可能であるが、有機化合物の酸素官能基量が少ない場合には、焼成雰囲気として空気+窒素混合雰囲気を用いることもできる。この場合、残存酸素が多く、焼成時の温度上昇により触媒のシンタリングが生じる場合には、供給される酸素濃度を低下させることが望ましい。
この焼成は500℃以下、好ましくは450℃以下、さらに好ましくは400℃以下で行われることが好ましい。焼成温度が高すぎると、触媒がシンタリングを生じ、低すぎると有機化合物未分解のため、多量の炭素質不純物が触媒中に残り、炭素繊維における異物の原因となり、またマグネシアへのコバルト粒子の均一担持が不十分となり、いずれも触媒効率の低下の原因となる。
【0040】
焼成により、コバルト化合物塩及びマグネシウム化合物塩はそれぞれ酸化コバルト及びマグネシアとなり、酸化コバルトがマグネシアに担持された触媒が得られる。なお、有機化合物は燃焼により、分解・気化し、排出される。炭素繊維析出反応を阻害されないためにも、触媒表面を清浄化させる必要があり、残炭分が焼成後触媒中の10重量%以下、好ましくは5重量%以下になることが望ましい。
【0041】
本発明においては、このようにして得られた焼成物を更に微粉砕して平均粒子径D50が3μm以下、好ましくは1μm以下の微粒子状触媒とする。
【0042】
この微粉砕手段としては特に制限はないが、ピンミル、ハンマーミル、パルペライザー、ジェットミル等を用いることができる。例えば、このジェットミルによる微粉砕時に、圧縮気体(通常、空気もしくは窒素が用いられる。)の圧力を制御するか、後段への分級機設置により粉砕粒度を調整して、所望の粒径の微粒子状触媒を得ることができる。
【0043】
本発明において、触媒の平均粒子径D50が3μmを超えると、本発明で目的とする凝集体構造内部の空隙の大きな炭素繊維を生産性良く得ることができない。平均粒子径D50は特に1μm以下であることが好ましいが、この平均粒子径D50を過度に小さくすることは、低コスト性に優れる乾式粉砕法では困難であり、また、気相成長法による気体−固体接触時による気流同伴によるふきこぼれおよび反応装置への閉塞が懸念されるため平均粒子径D50は通常0.1μm以上とする。
【0044】
なお、本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒の平均粒子径D50は具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0045】
このような本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒は、還元雰囲気下で活性化した後、又は還元性ガスと共に炭素繊維原料ガスと接触させて使用される。活性化時における還元性ガスは、水素(H)、アンモニア等を用いることができるが、特にHが好ましく、その濃度は通常は5〜100体積%、特に10体積%以上であることが好ましい。
【0046】
[気相成長炭素繊維]
次に、本発明の気相成長炭素繊維について説明する。
【0047】
本発明の気相成長炭素繊維は、気相成長法により製造された炭素繊維であって、微細な繊維が絡み合って集合した凝集体構造を有し、水銀加入法による細孔容量測定において、孔径20nm〜4μmの範囲の細孔として測定される空隙(以下「20nm〜4μm空隙率」と称す場合がある。)を2.4ml/g以上有するものである。ここで、孔径20nm未満のものは、炭素繊維(カーボンナノチューブ)のチューブ内の空孔に相当すると考えられ、従って、孔径20nm以上の空隙を測定する。孔径4μmを超える空隙は、凝集体内部ではなく分離独立した凝集炭素繊維間の間隔もしくは非常に弱い力で崩壊する凝集体内部を測定しており、樹脂含浸性に大きくは寄与しないことから孔径4μm以下の空隙を測定する。
【0048】
ここで、水銀加入法による細孔容量測定において、孔径20nm〜4μmの範囲の細孔として測定される空隙とは、次のようなものである。
細孔容量測定で20nm未満の孔径として観測されるのは一本一本の繊維と繊維とが直に隣接した隙間であり、仮にこの孔径を1次凝集体(図1における10nm前後の小さく鋭いピーク)とみなすと、この繊維同士がさらに寄り集まり複雑に絡まり集合した状態を2次凝集体(図1における20nm〜4μmの範囲の大きくなだらかなピーク)とみなすことができる。
この2次凝集体の空隙が孔径20nm〜4μmの範囲の細孔として測定され、この凝集体を機械的に壊そうとするとその強固に絡まりあった構造から解きほぐすことは困難である。しかしながら、この2次凝集空隙が大きいことで、この隙間に対する樹脂の浸透性が高まり、凝集体内部における樹脂分子の拡散力が効率的に加わることが可能となり、機械的せん断力では分散しきれなかった凝集気相成長炭素繊維の分散を容易にすることができる。
なお、孔径4μm以上の空隙は3次凝集体構造とみなすことができ、これらは比較的弱い力で容易に解きほぐすことができ、しかも大きな塊状であるため導電性及び樹脂分散性に対する改善寄与は低い。
【0049】
この20nm〜4μm空隙率が2.4ml/g未満であると、良好な樹脂含浸性を得ることができず、樹脂への分散性、導電性発現性に優れた気相成長炭素繊維を提供し得ない。
20nm〜4μm空隙率は特に3ml/g以上であることが好ましい。20nm〜4μm空隙率は大きい程好ましいが、過度に大きいと炭素繊維のかさ密度が低くなりすぎ樹脂混練を行う際に定量フィーダーからの供給が不安定になり適切な混練が困難となるために通常の管理は10ml/g以下が好ましい。
【0050】
なお、気相成長炭素繊維の20nm〜4μm空隙率は、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0051】
また、本発明の気相成長炭素繊維は、透過型電子顕微鏡による繊維の観察から算出された内径が3〜13nm、特に4〜8nmで、同外径が6〜30nm、特に8〜20nmであり、炭素繊維のチューブ壁の厚さは2〜5nm程度であることが好ましい。
特に、炭素繊維の内径及び外径が上記範囲であり、また炭素が同心円状に少なくとも3層以上の多層にわたり積層され、且つその積層数が15層未満である構造であることが好ましい。
【0052】
なお、気相成長炭素繊維の内径、外径、及び構造は具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
【0053】
このような本発明の気相成長炭素繊維の製造方法には特に制限はないが、前述の本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒を用いることにより、容易に製造することができる。
【0054】
以下に、本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒を用いた本発明の気相成長炭素繊維の製造方法について説明する。
【0055】
本発明の気相成長炭素繊維を製造するには、触媒として本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒を用いて、原料ガスを加熱下、この触媒に接触させて炭素繊維の析出反応を行う。
【0056】
炭素繊維の原料ガスとしては、従来公知の任意のものを使用でき、例えば、炭素を含むガスとしてメタンやエチレン、アセチレンなどの炭化水素や、一酸化炭素、アルコールなどを用いることができるが、特に一酸化炭素を用いることが好ましい。原料ガス中におけるCO濃度は、通常、50〜95体積%、好ましくは70〜90体積%で用いられる。
【0057】
製造時の温度や原料ガスの供給量などは、従来公知の任意の値から、適宜選択し決定すれば良いが、反応温度は650〜480℃、特に600〜520℃が好ましく、反応圧力は5〜40kPa、特に25〜30kPaとすることが好ましい。反応時間は、反応温度や触媒と原料ガスとの接触比率に応じて任意に設定されるが、通常4〜6時間程度である。本発明での反応速度は反応開始から約1時間で最大となり、その後、徐々に失速して反応開始から5〜5.5時間で停止する。従って、反応時間は上記範囲で管理することが好ましい。
反応終了後の原料ガス置換には、通常窒素等の不活性ガスが用いられる。
【0058】
なお、本発明の気相成長炭素繊維を製造するに当たり、COを主成分とする原料ガスを用い、原料ガス中のHO濃度を0.1〜1体積%、特に0.2〜0.4体積%に制御することにより、触媒あたりの炭素繊維析出量を高めることができ、なお且つ20nm〜4μm空隙率の高い気相成長炭素繊維を高収率で得る事ができる。この所定濃度のHOによる効果は、触媒からの炭素繊維成長時におけるコーキング作用による触媒失活を防ぐことによると推定される。
【0059】
このような本発明の気相成長炭素繊維製造用触媒を用いる気相成長炭素繊維の製造方法によれば、微粒子状触媒の酸化コバルト部分を核として、屈曲した炭素繊維が析出、成長し、触媒粒子が微細なため、成長時には隣接した炭素繊維が接触しても容易に反発し合い離れていくことができ、この結果、炭素繊維同士の絡まりが適度に抑制されて、20nm〜4μm空隙率の大きい炭素繊維が得られる。これに対して、微粉砕を行っていない平均粒子径の大きな触媒を用いた場合には、炭素繊維の成長時に炭素繊維同士が接触しても反発、拡散が困難なため、繊維の絡み合いがより密接なものとなり、凝集体内部の空隙の小さい炭素繊維となる。
【0060】
本発明の気相成長炭素繊維は、屈曲した炭素繊維同士が適度に絡まり合った凝集体構造を有するが、これを樹脂等の充填材として用いる場合は、適宜粉砕処理して用いても良く、本発明の炭素繊維は、粉砕を行った場合でも、その凝集体構造内部の空隙が大きいことによる樹脂含浸性が損なわれることはなく、樹脂分散性、導電性発現性に優れた炭素繊維を得ることができる。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
なお、以下の実施例及び比較例で用いた触媒は、次のようにして製造した。
[触媒の製造]
硝酸コバルト六水和物175g、硝酸マグネシウム六水和物356g、及びクエン酸一水和物137gを秤量して混合し、乳鉢で均一になるまですりつぶした。この混合物をセラミックス容器に入れ電気炉を用いて空気雰囲気下、450℃で、1.5時間焼成した(触媒組成:コバルト含有率=30モル%)。
【0063】
焼成により得られた焼成物を回収して乳鉢で粉状になるまですりつぶして「比較用触媒B」とした。
【0064】
また、乳鉢ですりつぶした触媒をさらに微細化させるために、ジェットミル(セイシン企業製「FS−4」)を用いて粉砕を実施した。このとき、ジェットミルの圧縮気体(窒素)の圧力ないし風量を制御することにより粉砕強度を変化させて、「本発明触媒A」と、各種の平均粒子径D50の触媒を得た。
【0065】
得られた触媒の粒度分布測定はレーザー回折・散乱法により、以下のようにして行った。
<粒度分布測定>
触媒を、圧力0.2MPaの空気に分散・拡散させて、セイシン企業製「LMS−300」により、測定を実施した。
【0066】
その結果、比較用触媒Bの平均粒子径D50は6.872μmで、本発明触媒Aの平均粒子径D50は0.878μmであった。
【0067】
[実施例1、比較例1]
<原料ガスの調整>
石油系重質油(エチレンヘビーエンド)の熱分解により発生したガスを成長炭素の主原料とした。この分解ガスのH濃度調整を膜分離装置(宇部興産製:分解膜モジュール410型)を用いて行い、さらにこのガスは飽和ガスであるため脱湿により水分調整を行って原料ガスとした。
この原料ガスの組成(体積%)は、CO=85%、H=10%、CO=3.5%、CH=1%、HO=0.3%、その他微量の重炭化水素ガス成分である。
【0068】
<炭素繊維の製造>
触媒A(実施例1)又は触媒B(比較例1)108gを耐熱性容器に均一に散布し、その周囲を抑えるためステンレス製カバーにて密閉した。原料ガスの流れは容器に入り触媒と接触した後にカバー外へと排出される。触媒を散布した後窒素パージを行い、容器内の空気を窒素に置換した。装置全体を電気炉にて外周加熱して内部の温度を調整した。窒素を導入しながら500℃前後に到達したら水素を導入し、触媒を活性化処理した。この処理は約1〜1.5時間ほど行った。活性化処理後、原料ガスを導入して析出反応を開始させた。反応開始直後は反応熱による発熱作用により一時的に温度が上昇しその後、反応温度は590℃〜520℃の温度に段階的に下げていき、反応は4.5時間行った。反応容器内の圧力は5〜30KPaの範囲であるが、主な反応圧力は25〜30KPaである。反応終了後は原料ガスを窒素で置換し、電気炉による加熱を停止して、常温まで冷却した。冷却後、カバーを開放して容器内で析出した炭素繊維を回収した。
【0069】
<TEM観察>
透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製 型式:JEOL JEM−1230)によって、得られた炭素繊維を観測した。観察は、炭素繊維サンプルをエタノール溶液に超音波分散を行って分散させ、分散試料を測定用メッシュにて採取して行った(観察条件:120kV)。観察の写真より約100本について径の長さを計測し、その数平均値より内径、外径とした。
【0070】
<SEM観察>
走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製 型式:JEOL JSM−7401F)によって、得られた炭素繊維の形態観察を実施した。観察は、炭素繊維サンプルを黒鉛導電シート上にそのままの状態で散布して実施した。
【0071】
<細孔分布測定>
水銀加入法による細孔分布測定を行った。測定装置(Micromeritics社製オートポアIII9420型)を用い、細孔の性状によりピークが生じるため、これを切り分けた場合の領域ごとの容量を提供した。孔径20nm未満の容量は炭素繊維1本ごとの空隙と考えられる。20nm〜4μmの空隙は炭素繊維同士が絡みあい成長した際に生じた凝集間の空隙を示していると考えられる。
【0072】
<DBP吸油量測定>
炭素繊維のBDP吸油量は、JIS K6221吸油量A法に従い、DBPアブソープトメーターにより測定を行った。
【0073】
<導電性の評価>
東洋精機製作所製プラストミルを用いて、260℃、150rpmの条件にて炭素繊維と樹脂とを表2に示す各種の割合で2分間混練し、炭素繊維/樹脂組成物を得た。樹脂は6ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス、1010C)を使用した。
プラストミルにて混練を行った炭素繊維/樹脂組成物をプレスして導電評価用のシートを作成した。成型サイズは100×100×2mm(厚さ)の平板であり、加熱用と冷却用の2台のプレス機を用いて作成した。プレス機は東洋精機製作所製ミニテストプレス(ラム径65mm、盤面200×200)を使用し、圧縮力は20MPa(ラム圧)で盤面への加圧力は約1.6MPaとし、温度は260℃で実施した。
得られた成型シートの端を切削し、その両端に銀ペーストを付与後、測定器の端末を当てることで導電率(体積抵抗値)を測定した。測定器にはロレスタEP(三菱化学製)及びハイレスタ(東亜電波製)を使用し、体積抵抗値が10E+6Ω・cm以下のときはロレスタを用い、それ以上のときはハイレスタを用いた。使用したプローブはESP型である。ハイレスタはリング法を用いて、500V、チャージ1分、測定開始後1分後の値を採用した。
【0074】
<結果>
上記炭素繊維の製造により生成した炭素繊維量と、用いた触媒当たりの炭素繊維生成量を表1に示した。
また、製造された炭素繊維の細孔分布測定結果を図1に示すと共に、20nm〜4μm空隙率を表1に示した。
また、製造された炭素繊維のTEM観察による内径及び外径と構造を表1に示し、SEM写真を図2,3に示した。
また、導電性の評価結果を表2に示した。なお、導電性の良否の評価基準は1E+7Ω・cmとした。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
<考察>
以上の結果から次のことが分かる。
【0078】
平均粒子径D50が1μm以下の微粉砕された触媒Aを用いた実施例1では20nm〜4μmが3.691ml/gと凝集体構造内の空隙の大きい炭素繊維が得られたのに対して、平均粒子径D50が大きい触媒Bを用いた比較例1で得られた炭素繊維は、20nm〜4μm空隙率が1.938ml/gと小さい。また、生成効率も実施例1では36(g−炭素繊維/g−触媒)であるのに対して、比較例1では29(g−炭素繊維/g−触媒)と、生成効率においても触媒Aを用いた実施例1の方が優れた結果となった。
【0079】
なお、実施例1の炭素繊維の凝集体構造内部の空隙が大きいことは、SEM写真において、実施例1の炭素繊維の凝集体表面に凹凸が多いのに対して、比較例1の炭素繊維の凝集体は、表面が比較的平滑であることからも明らかである。
【0080】
しかして、このように凝集体構造内部の空隙の大きい実施例1の炭素繊維を用いた場合には、樹脂に対して3重量%の配合で十分な導電性が得られるのに対して、比較例1の炭素繊維では、導電性を得るためには8重量%以上の配合が必要となる。
実施例1の炭素繊維と比較例1の炭素繊維とのこのような差異は、用いた触媒の粒度の差にあり、実施例1では、触媒を微粉砕して微粒子化したことにより、炭素繊維成長時の炭素繊維同士の強固な絡まりや凝集が抑制されて、凝集体内の空隙容量が増し、樹脂含浸性に優れた炭素繊維が製造される。
そして、樹脂含浸性に優れることで、より均一分散に適した形態に炭素繊維の凝集構造を制御できる。この結果、導電性の発現性に優れたものとなる。
【0081】
内部空隙の指標の一つとされるDBP吸油量に関しては、実施例1が256ml/100g、比較例1では258ml/100gとなり、ほぼ同じ値で差は生じていない。しかしながら、導電性発現に関しては、実施例1の方が優れており、本発明の効果がDBP吸油量による空隙値に左右されないことが明らかであり、技術的には全く異なるものである。本発明の効果を比較するためには、水銀加入法による炭素繊維における20nm〜4μm空隙率を測定する方法を用いる必要がある。
【0082】
[実施例2、比較例2,3]
実施例1で得られた炭素繊維(実施例2)と、比較例1で得られた炭素繊維(比較例2)をそれぞれ粉砕処理した。
粉砕装置としては、ピンミル型粉砕機(槙野産業製:コロプレックス160Z)を用い、回転数を8000〜14000rpmの範囲にて、窒素と空気の混合気体を同伴させて粉砕を行った。粉砕後の炭素繊維は同伴気体によって気力輸送し、集塵用捕集パックにて回収した。
比較のため、比較例1で得られた炭素繊維をそのまま粉砕しないもの(比較例3)も準備した。
炭素繊維と樹脂とを表3に示す各種割合で2軸混練後、射出成型し、その体積抵抗値を測定し、結果を表3に示した。
【0083】
2軸押出機としては日本製鋼所製TEX−30αを用い、樹脂には6ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス1010C,1005J)を用いた。押出機の温度を250℃に設定し、スクリュー回転数は200〜400rpm、吐出量を15〜30Kg/hの範囲で調整して混練りを実施した。混練手法としては最初に炭素繊維と6ナイロン(1005J)とで炭素繊維濃度8〜12重量%の高濃度マスターバッチを作成し、その後そのマスターバッチと6ナイロン(1010C)とを混練して希釈して各濃度に調整をした。
また、射出成型機としては、日鋼J12USA IIを用い、設定温度は250℃、金型温度は80〜100℃の範囲で、射出速度は40〜80%の範囲にて成型を実施した。金型としては3mm厚さの平板型を用いた。
体積抵抗値の測定は実施例1と同様に行った。
【0084】
【表3】

【0085】
表3より明らかなように、炭素繊維の粉砕により、粗大凝集粒子を減少させることによって、特許文献4の記載と同様に導電性の改良効果が認められるが、いずれの場合も、実施例1の炭素繊維を用いた場合の方が導電性は優れていた。
即ち、炭素繊維と樹脂との混練手法や成型手法にかかわらず、20nm〜4μm空隙率が大きい本発明の炭素繊維は、その空隙の効果によって、樹脂含浸性に優れ、より分散し易いこと、そしてこの効果は炭素繊維の粉砕により失われるものではなく、粉砕の如何によらず有効に発揮されることが分かる。
【0086】
[実施例3〜9、比較例4,5]
前述の触媒の製造法において、粉砕強度を変えて粉砕を行い、表4に示す各平均粒子径D50の触媒を得、この触媒を用いて、実施例1と同様に炭素繊維の製造を行い、得られた炭素繊維の20nm〜4μm空隙率を測定し、結果を表4に示した。
また、各炭素繊維を用いて、実施例1と同様にして、炭素繊維6重量部、樹脂(6ナイロン)94重量部の割合で混合、成型して、同様に導電性の評価を行い、結果を表4に示した。
【0087】
【表4】

【0088】
表4より明らかなように、20nm〜4μm空隙率が2.9ml/g以上ある炭素繊維を用いた場合は、導電性の目安とした1E+7Ω・cm以下を達成することができ、導電性に優れている。特に、20nm〜4μm空隙率3ml/g以上では良好な結果が示された。また、この20nm〜4μm空隙率は2.4ml/gを境に閾値があると考えられ、これよりも小さい空隙容量では急速に導電性が低下する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施例1及び比較例1で得られた炭素繊維の細孔分布測定結果を示すチャートである。
【図2】実施例1で得られた炭素繊維のSEM写真である。
【図3】比較例1で得られた炭素繊維のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト化合物塩とマグネシウム化合物塩とを含む原料混合物を焼成してなる、気相成長法による炭素繊維製造用触媒であって、
レーザー回折法による乾式状態での粒度分布測定において、正規分布50%における平均粒子径D50が3μm以下であることを特徴とする気相成長炭素繊維製造用触媒。
【請求項2】
請求項1において、平均粒子径D50が1μm以下であることを特徴とする気相成長炭素繊維製造用触媒。
【請求項3】
請求項1又は2において、コバルトとマグネシウムとの合計100モル%に対するコバルトの含有割合が10〜50モル%であることを特徴とする気相成長炭素繊維製造用触媒。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の気相成長炭素繊維製造用触媒を用いて、気相成長法により製造されたことを特徴とする気相成長炭素繊維。
【請求項5】
気相成長法により製造された炭素繊維において、微細な繊維が絡み合って集合した凝集体構造を有し、水銀加入法による細孔容量測定において、孔径20nm〜4μmの範囲の細孔として測定される空隙を2.4ml/g以上有することを特徴とする気相成長炭素繊維。
【請求項6】
請求項5において、前記空隙を3ml/g以上有することを特徴とする気相成長炭素繊維。
【請求項7】
請求項5又は6において、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の気相成長炭素繊維製造用触媒を用いて製造されたことを特徴とする気相成長炭素繊維。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれか1項において、透過型電子顕微鏡による繊維の観察から算出された内径が3〜13nmで、同外径が6〜30nmであり、炭素が同心円状に少なくとも3層以上の多層にわたり積層した構造を有することを特徴とする気相成長炭素繊維。
【請求項9】
請求項4ないし8のいずれか1項において、COを50〜95体積%含み、かつ、HOを0.1〜1体積%含む原料ガスから製造されたことを特徴とする気相成長炭素繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−173608(P2008−173608A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11424(P2007−11424)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】