気象事象観測装置
【課題】センサに対する電気ケーブルの接続を不要にして信頼性を向上できると共に、設置費用を安価にでき、しかも、設置の自由度を大きくできる気象事象観測装置の提供。
【解決手段】複数のICタグ41,42,43・・・を垂直方向に配置し、水位の上昇によって水没した少なくとも1個のICタグ41,42,43・・・とICタグリーダー5との無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことを検知して河川等の水位を観測する。
【解決手段】複数のICタグ41,42,43・・・を垂直方向に配置し、水位の上昇によって水没した少なくとも1個のICタグ41,42,43・・・とICタグリーダー5との無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことを検知して河川等の水位を観測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の水位、降雨量、風向、風速などといった気象事象観測装置に関するものであり、特に、無線で情報を取得できる気象事象観測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気象庁などの公的機関から発表される気象事象としては、河川等の水位、降雨量、風向、風速などがあり、これら気象事象観測装置の従来例を次に説明する。
【0003】
河川等の水位観測装置としては、図16に示すように、赤外線測定器30を計測筒31の上部に配置し、計測筒31の内部には反射板32をフロート33に貼り付けて配置して水面34に浮かせておき、赤外線測定器30から発光された赤外光35を反射板32で反射させ、赤外光35の反射角度や反射光量を計測して水位を観測する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、河川等の水位観測装置の他の例としては、図17に示すように、圧力計35を底地盤38上に置き、その上部に加わる水圧を測定し、その値から水位を観測して電気ケーブル36で送信する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
次に、降雨量観測装置としては、図18に示すように、2個の桝411,412からなる転倒枡41を備え、受水口40で集められた雨水を一方の枡411に導き、その一方の枡411が満水になると雨水の重みで転倒枡41が転倒して雨水が排水口421から排水され、続いて一方の枡411の転倒によって他方の枡412に雨水が貯められ、他方の枡412が満水になると転倒枡41が転倒して雨水が排水口421から排水される動作が繰り返えされるものが知られている(例えば特許文献3参照)。
【0006】
前述の降雨量観測装置は、転倒枡41の転倒毎に電気接点を動作させ、電気接点の動作回数と、一回の排水量との関係から降雨量を観測するもので、それらの信号を電気ケーブルを介して変換器に送信し、降雨量を観測するようになっている。
【0007】
風向・風速観測装置としては、図19に示すように、プロペラ43と尾翼44とを備え、尾翼44の受ける風圧でプロペラ43を常に風上に向け、光電エンコーダ方式により尾翼回転を計測して風向を観測し、また、光電パルス方式によりプロペラ回転を計測して風速を観測するものが知られており、いずれにおいてもそれらの信号を電気ケーブルを介して変換器に送信し、風向・風速を観測するようになっている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−039574号公報
【特許文献2】特開平07−218254号公報
【特許文献3】特開2005−221372号公報
【特許文献4】特開2004−257874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
赤外線測定器を用いた水位観測装置は、センサとしての赤外線測定器に電源を必要とするため、商用電源を用いるか、ソーラーとバッテリーを組み合わせた電源を構成する必要があり、また、送出された赤外光を赤外線測定器に正確に反射させる必要があることから、振動の大きな場所や、波動の大きな場所での計測は困難となる。
【0010】
水圧を測定する方式では、圧力計として電気を使用した半導体方式圧力計や水晶方式圧力計が一般に用いられが、これらの圧力計は電気を使用して計測する関係から、圧力計まで信号用電気ケーブルを接続する必要があり、雷や他の電気機械器具などからの電磁ノイズからの影響を受けやすく、特に屋外で使用する場合には保安器を設置するなどの対策が必要になる。
【0011】
また、圧力計は計測部である圧力計測部(センサヘッド)と圧力計測結果から液面位置に変換する変換器の構成となるが、高価なものであり、多点で計測する目的などには経済性の点で困難である。
【0012】
さらに、水圧を測定する方式では、大気圧の変動が計測結果に誤差となり影響を及ぼすことから、圧力計内と大気間をパイプで連結し、圧力計内部の大気圧を外部の大気圧と同じにする大気圧開放の方法をとるか、別途計測した大気圧によって大気圧の誤差を補正する必要があり、装置が複雑化する。
【0013】
さらに、水圧を測定する方式では、測定対象の水の比重により水面位置の計測を補正する必要があり、例えば濁流などの土砂を含む水の場合、測定誤差が発生する。
【0014】
降雨量観測装置や風向、風速観測装置においては、センサ部と変換器間を専用の電気ケーブルで接続するため施工費が嵩むほか、電気設備などからの電気的なノイズによる誤動作、雷からのノイズによる誤動作、あるいは誘導雷によってセンサ部や変換器が損傷を受けるなどの被害の発生などの問題がある。
【0015】
また、変換部は専用の光電エンコーダや光電パルスなどの信号から、風向や風速の値に変換しているが、これをリアルタイムで遠方にデータを伝送しようとする場合、更に高額な伝送機器類の設置が必要となり、特に、伝送機器類は高額であるために、気象観測データとしては、本来リアルタイム性が最も求められるこれらの観測所においても、データを一時記憶装置に保管しておき、後日データを収集する観測所が現実には多数存在している。
【0016】
そこで、本発明は、センサに対する電気ケーブルの接続を不要にして信頼性を向上できると共に、設置費用を安価にでき、しかも、設置の自由度を大きくできる気象事象観測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、ICタグとICタグリーダーとを備え、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測する気象事象観測装置を特徴としている。
【0018】
また、請求項2の発明は、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が所定値より低下したことの検知および所定値より上昇したことの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測する請求項1記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0019】
また、請求項3の発明は、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知および両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測する請求項1記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0020】
また、請求項4の発明は、前記気象事象は、河川等の水位である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0021】
また、請求項5の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0022】
また、請求項6の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって所定値より低下したことの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4および請求項5のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0023】
また、請求項7の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4および請求項5のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0024】
また、請求項8の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって低レベルから高レベルへ変化することの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0025】
また、請求項9の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって所定値より上昇したことの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4および請求項8のいずれかに記載気象事象観測装置を特徴としている。
【0026】
また、請求項10の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項8のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0027】
また、請求項11の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置すると共に、最上位のICタグの上方にICタグリーダーを配置し、ICタグリーダーは水位の上昇にともなって全てのICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づくと共に、ICタグリーダーの水没の検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0028】
また、請求項12の発明は、水位に追従して上下動可能なフロートにICタグを設置し、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0029】
また、請求項13の発明は、水位に追従して転動しながら上下方向に移動する円筒形状フロートの外周面または側面に複数のICタグを設置すると共に、円筒形状フロートが転動しながら上下方向に移動するときICタグの水没と非水没とを繰り返すようし、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0030】
また、請求項14の発明は、前記気象事象は、降雨量である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0031】
また、請求項15の発明は、所定量の雨水を貯留したとき枡の転倒により一方の桝から他方の桝に雨水の貯留が変更することを繰り返す雨量計の双方の枡内部にICタグを配置し、ICタグリーダーは雨水の貯留にともなってICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて枡の転倒を検知して降雨量を観測する請求項14記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0032】
また、請求項16の発明は、所定量の雨水を貯留したとき桝の転倒により一方の桝から他方の桝に雨水の貯留が変更することを繰り返す雨量計の枡の転倒により雨水が流出する通路にICタグを配置し、ICタグリーダーは枡の転倒による雨水の流出にともなってICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて枡の転倒を検知して降雨量を観測する請求項14記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0033】
また、請求項17の発明は、ICタグにはリード線を介して水分と接すると電気特性が変化する電気素子が接続されている請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0034】
また、請求項18の発明は、ICタグおよびICタグリーダーの少なくとも一方を防水構造とし、表面に撥水性のコーティング処理を施してなる請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0035】
また、請求項19の発明は、前記気象事象は、風速である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0036】
また、請求項20の発明は、円板に複数のICタグを配置してなるICタグ円板と、円周方向に電磁遮蔽部と電磁透過部とを有する遮蔽円板とを同心状に配置してなるICタグエンコーダーを、風を受けて回転する風力回転体に取り付け、ICタグリーダーはICタグ円板および遮蔽円板のいずれか一方が風力回転体と共に回転するのにともなってICタグからの電波到達強度が電磁遮蔽部の通過により高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて風速を観測する請求項19記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0037】
また、請求項21の発明は、前記気象事象は、風向である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0038】
また、請求項22の発明は、円板に複数のICタグを配置してなるICタグ円板と、円周方向に電磁遮蔽部と電磁透過部とを有する遮蔽円板とを同心状に配置してなるICタグエンコーダーを、風向に応じて回転する風向回転体に取り付け、ICタグリーダーはICタグ円板および遮蔽円板のいずれか一方が風力回転体と共に回転するのにともなってICタグからの電波到達強度が電磁遮蔽部の通過により高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて風向を観測する請求項21記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、ICタグリーダーがICタグからの電波到達強度が所定値より低下したこと、および所定値より上昇したことの少なくとも一方を検知して、またはICタグとの間の無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したこと、および通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの少なくとも一方を検知して気象事象を観測する気象事象観測装置であり、センサとしてのICタグ自体は電源が不要であるので、ICタグとICタグリーダとの間は非接触式(無線)で情報の授受が可能であり、また、ICタグリーダーはバッテリーで動作可能なため商用電源を引き込む必要が無く、ICタグリーダー自体に無線によって外部から給電することができることから電気ケーブルの接続を不要にすることが可能で、これによって信頼性を向上できると共に設置の自由度を大きくすることができる。
【0040】
また、ICタグおよびICタグリーダーは市販のものを利用でき、観測データ処理も市販のパーソナルコンピュータを利用できるので、設置費用を安価にすることができる。
【0041】
また、ICタグにリード線を介して水分と接すると電気特性が変化する電気素子を接続して使用することにより(請求項17)、1個のICタグによって複数点の水位を観測することができるようになり、また、ICタグによる水位観測の用途を拡大できるようになる。
【0042】
また、ICタグおよびICタグリーダーの少なくとも一方を防水構造とし、表面に撥水性のコーティング処理を施すことにより(請求項19)、表面からの水分の除去が速やかになり、電波到達強度の測定精度を向上でき、また、無線可能状態と無線不可能状態の切替の検知を確実に行うことができるようになる。
【0043】
本発明の気象事象観測装置は、河川等の水位観測、降雨量観測、風速観測および風向観測などに適用することができ、これによって、各種観測の信頼性を向上できると共に設置の自由度を大きくでき、また、設置費用を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の気象事象観測装置の作用を示すフローチャートであり、図1(a)は到達電波強度の変化を利用するときのフローチャートであり、図1(b)は通信可能状態と通信不可能状態の変化を利用するときのフローチャートである。
【図2】ICタグに電気素子を接続した状態を示す概略図である。
【図3】ICタグに電気素子を接続した形態を示す概略図であり、図3(a)は電気素子を1段に接続した概略図であり、図3(b)は電気素子Bを2段に接続した概略図である。
【図4】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第1例を説明する図面であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。
【図5】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第2例を説明する図面であり、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図である。
【図6】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第3例を説明する図面であり、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図である。
【図7】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第4例を説明する図面であり、図7(a)は正面図、図7(b)は側面図である。
【図8】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第5例を説明する図面であり、図8(a)は正面図、図8(b)は側面図である。
【図9】最良の実施の形態の第5例において使用される円筒形状フロートを説明する図面であり、図9(a)は正面図、図9(b)は側面図である。
【図10】本発明の気象事象観測装置をマンホールの水位観測装置に適用した最良の実施の形態を説明する図面である。
【図11】本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した最良の実施の形態の第1例を説明する図面である。
【図12】本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した最良の実施の形態の第2例を説明する図面である。
【図13】本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した最良の実施の形態の第3例を説明する図面である。
【図14】本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した最良の実施の形態の第4例を説明する図面である。
【図15】本発明の気象事象観測装置を風速観測装置および風向観測装置に適用した最良の実施の形態に使用されるICタグエンコーダーを説明する図面であり、図15(a)は正面図、図15(b)は側面図である。
【図16】河川等の水位観測装置の従来例を説明する図面である。
【図17】河川等の水位観測装置の従来例を説明する図面である。
【図18】降雨量観測装置の従来例を説明する図面である。
【図19】風向、風速観測装置の従来例を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の気象事象観測装置の最良の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0046】
本発明の気象事象観測装置は、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づくものであるが、具体的には、例えば、(イ)ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が所定値より低下したことの検知および所定値より上昇したことの検知の少なくとも一方に基づく気象事象観測装置、および、(ロ)ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知および両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知の少なくとも一方に基づく気象事象観測装置をあげることができる。
【0047】
図1(a)は、前記(イ)の気象事象観測装置の作用をフローチャートで示したものであり、ICタグリーダーはICタグからの無線電波を受信して到達電波強度を測定し、この到達電波強度を閾値と比較して所定値以上か否かの判定を行い、所定値以上であるときは、例えば河川等の水位観測においてはICタグの水没なしとして、この情報をメモリに記憶し、さらに基地局に伝送する。
【0048】
ICタグリーダーがICタグからの無線電波を受信できない場合、および到達電波強度が所定値未満のときは、例えば河川等の水位観測においてはICタグの水没ありとして、この情報をメモリに記憶し、さらに基地局に伝送する。
【0049】
ICタグとしては、電池内蔵のアクティブタイプと電池を内蔵しないパッシブタイプとがあり、本発明においてはいずれのタイプも使用可能であるが、アクティブタイプのICタグは使用周波数帯によっては水中での電波到達距離が大となって正確な観測ができなくなることもあるので、周波数帯域が1GHz程度のものを使用することが好ましく、また、前記観測における到達電波強度の閾値は、ICタグリーダーおよびICタグが設置される周囲状況等を勘案して決定されるが、通常の到達電波強度の(1/3)〜(1/5)程度に設定されるのが一般的である。
【0050】
図1(b)は、前記(ロ)の気象事象観測装置の作用をフローチャートで示したものであり、ICタグリーダーがICタグからの無線電波を受信できたときは、例えば河川等の水位観測においてはICタグの水没なしとして、この情報をメモリに記憶し、さらに基地局に伝送する。
【0051】
ICタグリーダーがICタグからの無線電波を受信できなかったときは、例えば河川等の水位観測においてはICタグの水没ありとして、この情報をメモリに記憶し、さらに基地局に伝送する。
【0052】
また、本発明においては、ICタグをそれ自体単独で使用することができるが、ICタグにリード線を介して水分と接すると電気特性が変化する電気素子を接続した形態で使用することができ、このような電気素子としては、抵抗、コンデンサ、熱電対など、現在広く市販されているものを使用することができる。
【0053】
図2は、ICタグに電気素子を接続した状態を示す概略図であり、ICタグAは、メモリ部D、制御部E、送受信部Fおよびアンテナ部Gからなっており、このようなICタグAにリード線Cを介して電気素子Bが接続されている。
【0054】
制御部Eは、電気素子Bでの計測制御および電気素子情報に加えてICタグAのID情報などの書き込み保存、書き換えをメモリ部Dに行わせると共に、電気素子Bでの計測情報などを送受信部Fおよびアンテナ部Gを経由してICタグリーダーに伝送させる機能を備えている。
【0055】
図3は、ICタグAに電気素子Bを接続した形態を示す概略図であり、図3(a)の例では、ICタグAにリード線Cを介して電気素子B1が1段に接続されており、図3(b)の例では、ICタグAにリード線Cを介して電気素子B1,B2が2段に接続されている。
【0056】
(実施例1)
図4は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第1例を示すもので、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。
【0057】
本実施例1の水位観測装置は、地盤1に立設された支柱2に防波管3を固定し、防波管3の内壁に沿った垂直方向には複数のICタグ41,42,・・・45(いずれもパッシブタイプICタグ)を配置し、支柱2の上端部にはICタグリーダー5を配置したものである。
【0058】
ICタグ41,42,・・・45を防波管3の内部に配置することにより、水面6に立つ波の影響を軽減して水位を観測することができる。
【0059】
各ICタグ41,42,・・・45に付与された識別符号はICタグリーダー5によって解読されるようになっており、河川等の増水が無く、水面6がICタグ41よりも下方にあるときは、全てのICタグ41,42,・・・45とICタグリーダー5との間で無線通信が可能な状態にあり、水位はICタグ41以下であると判断される。
【0060】
降雨等により水面6が上昇し、ICタグ41,42,43が水没すると、ICタグ41,42,43とICタグリーダー5との間の無線通信が不可能状態で、ICタグ44,45とICタグリーダー5との間の無線通信が可能状態となり、水位はICタグ43とICタグ44との間であると判断される。
【0061】
逆に、降雨等の影響がなくなって水面6が下降してICタグ41よりも下方になったときは、ICタグ41,42,43とICタグリーダー5との間の無線通信が不可能状態から可能状態となり、全てのICタグ41,42,・・・45とICタグリーダー5との間で無線通信が可能な状態となって、水位はICタグ41以下であると判断される。
【0062】
なお、ICタグ41,42,43とICタグリーダー5との間の無線通信が通信可能状態から通信不可能状態検知および無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知について説明したが、ICタグ41,42,43からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下したことの検知および所定値より上昇したことの検知によっても水位を観測することができる。
【0063】
本実施例1のように、複数のICタグ41,42,・・・45を垂直方向に配置した構成であると、水位をほぼ連続的に観測することが可能であり、集中豪雨などによる河川等の水位上昇に関する情報を的確に把握することができる。
【0064】
図5は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第2例を示すもので、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0065】
本実施例2の水位観測装置は、各ICタグ42,・・・45にリード線を介して電気素子522,523,524,525をそれぞれ接続したものである。
【0066】
降雨等により水面6が上昇し、ICタグ41,42,43までが水没し、さらに水面6が上昇して電気素子524が水没してICタグ44からの到達電波強度が低下し、ICタグ44とICタグリーダー5との間の無線通信が可能状態であるときは、水位は電気素子524とICタグ44との間であると判断される。
【0067】
さらに水面6が上昇してICタグ44とICタグリーダー5との間の無線通信が不可能状態であり、ICタグ45とICタグリーダー5との間の無線通信状態が通常と変化ないときは、ICタグ44と水位は電気素子525との間であると判断される。
【0068】
本実施例2の水位観測装置のように、各ICタグ42,・・・45にリード線を介して電気素子522,523,524,525をそれぞれ接続した構成であると、同じICタグの数でありながら、よりきめ細かな水位観測を行うことが可能となる。
【0069】
本実施例2の上記以外の構成および作用は前記実施例1と同様である。
【0070】
(実施例3)
図6は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第3例を示すもので、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0071】
本実施例3の水位観測装置は、完全に防水構造にしたICタグリーダー25を使用し、このICタグリーダー25を最上位のICタグ45の上方に配置したものである。
【0072】
水面6がICタグリーダー25に到達しないときは、実施例1と同様にICタグリーダー25とICタグ41,42,・・・45との間の無線通信の可能、不可能に基づいて水位の観測が行われ、水面6がICタグリーダー25を越えてICタグリーダー25自体が水没すると、ICタグリーダーから無線の送出が不可能となり、これに基づいて水位はICタグリーダー25を越えたと判断される。
【0073】
本実施例3のように、ICタグ41,42,・・・45の水没に加えてICタグリーダー25の水没に基づいて水位を観測する構成であると、ICタグリーダー25が固定配置される支柱2の高さを低く抑えることができ、水位観測装置の設置費用を低減できる。
【0074】
(実施例4)
図7は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第4例を示すもので、図7(a)は正面図、図7(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0075】
本実施例4の水位観測装置は、防波管3内に水面6の上昇、下降に伴って上下動するフロート7を配置し、このフロート7の上部にICタグ4を配置し、支柱2の上端部にICタグリーダー5を配置したものである。
【0076】
そして、ICタグ4とICタグリーダー5との間には通信可能な距離の限界があることを利用し、通常は水面6が下方にあって、ICタグ4はICタグリーダー5との無線通信不可能距離範囲にあるが、降雨によって水面6(フロート7)が上昇してICタグ4がICタグリーダー5との無線通信可能距離範囲に入ると、この無線通信が開始したことをとらえて一定レベルの水位を観測するのである。
【0077】
また、前記とは逆に、通常は水面6が上方にあって、ICタグ4はICタグリーダー5との無線通信可能距離範囲にあるが、渇水によって水面6(フロート7)が下降してICタグ4がICタグリーダー5との無線通信不可能距離範囲に入ると、この無線通信が途絶えたことをとらえて一定レベルの水位を観測することができる。
【0078】
本実施例4のように、ICタグ4とICタグリーダー5との間の無線通信可能な距離をとらえて水位を観測する構成であると、正確な水位を観測することができる。
【0079】
(実施例5)
図8は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第5例を示すもので、図8(a)は正面図、図8(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0080】
本実施例5の水位観測装置は、防波管3内に水面6の上昇、下降に伴って(水位に追従して)防波管3内壁に沿って転動しながら上下方向に移動する円筒形状フロート8を配置し、この円筒形状フロート8の転動しながらの上下方向移動を利用して水位を観測するものである。
【0081】
具体的には、図9(a)の正面図および図9(b)の側面図に示すように、円筒形状フロート8の外周面に複数のICタグ41,42,43,44を配置し、また、円筒形状フロート8の外周面にリング状磁石9を配置する。
【0082】
一方、防波管3の内壁には図8(a)、図8(b)に示すように、上下方向に金属レール10を設置すると、円筒形状フロート8が自らの浮力とリング状磁石9の吸引力との作用により、水面6の上昇、下降に伴って金属レール10上を転動しながら上下方向に移動する。
【0083】
円筒形状フロート8の転動に伴い、ICタグ41,42,43,44が水没、非水没を繰り返すことで、ICタグ41,42,43,44とICタグリーダー5との間の無線通信の通信可能状態と通信不可能状態が変化を繰り返し、この変化を検知することで水位を観測できる。
【0084】
本実施例5のように、円筒形状フロート8の転動を利用して水位を観測する構成であると、ICタグ41,42,43,44の取り付け間隔を狭くすると、例えば1cm単位での水位観測が可能となり、また、水面6の下降時は金属レール10に沿い、円筒形状フロート8が下降してくることで、水位の下降をも観測でき、また、全てのICタグ41,42,43,44とICタグリーダー5との通信が可能なポイントを水位ゼロレベルと設定すれば、水位ゼロレベルも確実に確認することができる。
【0085】
なお、図8(a)、図8(b)にはICタグリーダー5の電源としてソーラーパネル11およびバッテリー12を設置した例が示されている。
【0086】
また、防波管3の内壁に設置した金属レール10と円筒形状フロート8外周のリング状磁石9との作用により円筒形状フロート8が転動する例を説明したが、金属レール10を梯子状や平面展開のギア状にし、リング状磁石9を歯車状にすると、円筒形状フロート8の転動は金属レール10に対してすべりのないものとなり、より正確な水位観測が可能となる。
【0087】
(実施例6)
図10は、本発明の気象事象観測装置をマンホール内の水位観測装置に適用した例を示すものであり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0088】
本実施例6の水位観測装置は、マンホールの外部にICタグ4を配置すると共に、マンホールの内部に電気素子52を配置し、ICタグ4と電気素子52とをリード線51で接続したものである。
【0089】
マンホール内の水面6が上昇して電気素子52が水没する位置まで到達すると、ICタグ4からICタグリーダー5に到達する電波強度が所定値より低下するので、これを検知することにより電気素子52の水没、すなわち、マンホール内の水位の変化を観測することができる。
【0090】
本実施例6に従ってマンホールの水位を観測することにより、近年の都市型集中豪雨に伴う下水道の排水能力以上の降雨によるマンホール内部の水位上昇への対応を的確に行うことが可能となる。
【0091】
しかも、マンホール外部の地上にICタグ4を配置し、マンホールの内部に電気素子52を配置する構成であると、ICタグ4からの無線電波がマンホールの金属製蓋によって遮られることがないため、マンホール内部の水位変化観測システムをICタグを使用して構築することが可能となる。
【0092】
(実施例7)
図11は、本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した第1例を示すもので、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0093】
本実施例7の降雨量観測装置は、受水口13の下方に枡141,142からなる転倒枡14を備え、各枡141,142の内部にそれぞれICタグ41,42を配置し、受水口13で集められた雨水が一方の枡141に貯留することによってICタグ41とICタグリーダー5との無線通信が通信不可能状態となり、枡141が満水になると雨水の重みで転倒して雨水が排水口151から排水され、その後雨水が他方の枡142に貯留することによってICタグ42とICタグリーダー5との無線通信が通信不可能状態となることの繰り返しを検知することにより降雨量を観測するものである。
【0094】
各枡141,142の下方にはストッパー161,162がそれぞれ配置されており、これによって、枡141,142の過回転が防止されるようになっている。
【0095】
本実施例7のように、枡141,142の内部にICタグ41,42を配置し、雨水の貯留により無線通信可能状態から無線通信不可能状態への変化を検知して降水量を観測する構成であると、一方の枡141から他方の枡142に切り替わるときの電気接点の動作回数を電気ケーブルを介して変換器に送信する必要がなくなり、降雨量観測の信頼性を向上できると共に観測装置設置の自由度を大きくすることができる。
【0096】
(実施例8)
図12は、本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した第2例を示すもので、図4(a)、図4(b)および図11と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0097】
本実施例8の降雨量観測装置は、各ICタグ41,42にリード線511,512を介して電気素子521,522をそれぞれ接続したものである。
【0098】
電気素子521,522は、枡141,142の内部の雨水に触れる箇所に配置され、ICタグ41,42は、枡141,142の外部の雨水に触れない箇所に配置され、雨水が一方の枡141に貯留することによってICタグ41からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下した状態となり、枡141が満水になると雨水の重みで転倒して雨水が排水口151から排水され、その後雨水が他方の枡142に貯留することによってICタグ42からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下した状態となることの繰り返しを検知することにより降雨量を観測するものである。
【0099】
本実施例8のように、各ICタグ41,42にリード線511,512を介して電気素子521,522をそれぞれ接続し、ICタグ41,42を枡141,142の外部の雨水に触れない箇所に配置する構成とすることにより、ICタグ41,42は電気素子521,522の動作に拘わらず常に通信が可能な状態にあり、動作確認の信頼性が高いシステムを実現することができる。
【0100】
(実施例9)
図13は、本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した第3例を示すもので、図11と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0101】
本実施例9の降雨量観測装置は、転倒枡14が転倒したとき一方の枡141から流出する雨水の通路となる排水口151および転倒枡14が転倒したとき他方の枡142から流出する通路となる排水口152の内部にそれぞれICタグ41,42を配置し、雨水が一方の枡141から流出して排水口151を通過するときICタグ41とICタグリーダー5との無線通信が通信不可能状態となり、雨水が他方の枡142から流出して排水口152を通過するときICタグ42とICタグリーダー5との無線通信が通信不可能状態となることの繰り返しを検知することにより降雨量を観測するものである。
【0102】
本実施例9のように、排水口151,152の内部にICタグ41,42を配置し、枡141,142から流出した雨水の通過により無線通信可能状態から無線通信不可能状態へと変化したのを検知して降水量を観測する構成であると、前記実施例5の場合と同様に一方の枡141から他方の枡142に切り替わるときの電気接点の動作回数を電気ケーブルを介して変換器に送信する必要がなくなり、降雨量観測の信頼性を向上できると共に観測装置設置の自由度を大きくすることができる。
【0103】
(実施例10)
図14は、本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した第2例を示すもので、図11と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0104】
本実施例10の降雨量観測装置は、各ICタグ41,42にリード線511,512を介して電気素子521,522をそれぞれ接続したものである。
【0105】
電気素子521,522は、排水口151,152の内部の雨水に触れる箇所に配置され、ICタグ41,42は、排水口151,152の外部の雨水に触れない箇所に配置され、雨水が一方の枡141から流出して排水口151を通過するときICタグ41からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下した状態となり、雨水が他方の枡142から流出して排水口152を通過するときICタグ42からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下した状態となることの繰り返しを検知することにより降雨量を観測するものである。
【0106】
本実施例10のように、各ICタグ41,42にリード線511,512を介して電気素子521,522をそれぞれ接続し、ICタグ41,42を排水口151,152の外部の雨水に触れない箇所に配置する構成とすることにより、ICタグ41,42は電気素子521,522の動作に拘わらず常に通信が可能な状態にあり、動作確認の信頼性が高いシステムを実現することができる。
【0107】
実施例1〜実施例10の各々において、水没するICタグ41,42,43,44およびICタグリーダー5は防水構造とすると共に、表面に撥水性のコーティング処理を施すことにより、表面からの水分の除去が速やかになり、電波到達強度の測定精度を向上でき、また、無線可能状態と無線不可能状態の切替の検知が確実になる。
【0108】
(実施例11)
図15は、本発明の気象事象観測装置を風速観測装置または風向観測装置に適用するとき使用されるICタグエンコーダーの例を示すもので、図15(a)は正面図、図15(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0109】
本実施例11の風速観測装置に使用されるICタグエンコーダー17は、円板18に複数のICタグ41,42,43・・・4nを配置してなるICタグ円板19と、円周方向に電磁遮蔽部21と電磁透過部22とを有する遮蔽円板20とを同心状に配置して構成されている。
【0110】
このようなICタグエンコーダー17を、風を受けて回転する風力回転体(例えば、図12に示す従来の風向・風速観測装置のプロベラ)に取り付け、ICタグ円板18および遮蔽円板20のいずれか一方を風力回転体の回転と連動させ、ICタグ41,42,43・・・4nが電磁透過部22に位置したときは、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信が通信可能状態となり、ICタグ41,42,43・・・4nが電磁遮蔽部21に位置したときは、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信が通信不可能状態となることを利用し、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との通信状態と通信時間を計測することにより、風速を観測することができる。
【0111】
本実施例11のように、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信状態を検出して風速を観測する構成であると、風速データの伝送が簡略化される。
【0112】
(実施例12)
実施例11で説明したICタグエンコーダー17を、風向に応じて回転する風向回転体(例えば、図19に示す従来の風向・風速観測装置の尾翼)に取り付け、ICタグ円板18および遮蔽円板20のいずれか一方を風向回転体の回転と連動させ、ICタグ41,42,43・・・4nが電磁透過部22に位置したときは、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信が通信可能状態となり、ICタグ41,42,43・・・4nが電磁遮蔽部21に位置したときは、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信が通信不可能状態となることを利用し、予めICタグ41,42,43・・・4nと東西南北等の方角を対応させておくことにより、風向を観測することができる。
【符号の説明】
【0113】
4,41,42,43・・・4n ICタグ
5 ICタグリーダ
6 水面
7 フロート
8 円筒形状フロート
14 転倒枡
141,142 枡
151,152 排水口
17 ICタグエンコーダ
18 円板
19 ICタグ円板
20 遮蔽円板
21 電磁遮蔽部
22 電磁透過部
511,512 リード線
521,522 電気素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の水位、降雨量、風向、風速などといった気象事象観測装置に関するものであり、特に、無線で情報を取得できる気象事象観測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気象庁などの公的機関から発表される気象事象としては、河川等の水位、降雨量、風向、風速などがあり、これら気象事象観測装置の従来例を次に説明する。
【0003】
河川等の水位観測装置としては、図16に示すように、赤外線測定器30を計測筒31の上部に配置し、計測筒31の内部には反射板32をフロート33に貼り付けて配置して水面34に浮かせておき、赤外線測定器30から発光された赤外光35を反射板32で反射させ、赤外光35の反射角度や反射光量を計測して水位を観測する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、河川等の水位観測装置の他の例としては、図17に示すように、圧力計35を底地盤38上に置き、その上部に加わる水圧を測定し、その値から水位を観測して電気ケーブル36で送信する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
次に、降雨量観測装置としては、図18に示すように、2個の桝411,412からなる転倒枡41を備え、受水口40で集められた雨水を一方の枡411に導き、その一方の枡411が満水になると雨水の重みで転倒枡41が転倒して雨水が排水口421から排水され、続いて一方の枡411の転倒によって他方の枡412に雨水が貯められ、他方の枡412が満水になると転倒枡41が転倒して雨水が排水口421から排水される動作が繰り返えされるものが知られている(例えば特許文献3参照)。
【0006】
前述の降雨量観測装置は、転倒枡41の転倒毎に電気接点を動作させ、電気接点の動作回数と、一回の排水量との関係から降雨量を観測するもので、それらの信号を電気ケーブルを介して変換器に送信し、降雨量を観測するようになっている。
【0007】
風向・風速観測装置としては、図19に示すように、プロペラ43と尾翼44とを備え、尾翼44の受ける風圧でプロペラ43を常に風上に向け、光電エンコーダ方式により尾翼回転を計測して風向を観測し、また、光電パルス方式によりプロペラ回転を計測して風速を観測するものが知られており、いずれにおいてもそれらの信号を電気ケーブルを介して変換器に送信し、風向・風速を観測するようになっている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−039574号公報
【特許文献2】特開平07−218254号公報
【特許文献3】特開2005−221372号公報
【特許文献4】特開2004−257874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
赤外線測定器を用いた水位観測装置は、センサとしての赤外線測定器に電源を必要とするため、商用電源を用いるか、ソーラーとバッテリーを組み合わせた電源を構成する必要があり、また、送出された赤外光を赤外線測定器に正確に反射させる必要があることから、振動の大きな場所や、波動の大きな場所での計測は困難となる。
【0010】
水圧を測定する方式では、圧力計として電気を使用した半導体方式圧力計や水晶方式圧力計が一般に用いられが、これらの圧力計は電気を使用して計測する関係から、圧力計まで信号用電気ケーブルを接続する必要があり、雷や他の電気機械器具などからの電磁ノイズからの影響を受けやすく、特に屋外で使用する場合には保安器を設置するなどの対策が必要になる。
【0011】
また、圧力計は計測部である圧力計測部(センサヘッド)と圧力計測結果から液面位置に変換する変換器の構成となるが、高価なものであり、多点で計測する目的などには経済性の点で困難である。
【0012】
さらに、水圧を測定する方式では、大気圧の変動が計測結果に誤差となり影響を及ぼすことから、圧力計内と大気間をパイプで連結し、圧力計内部の大気圧を外部の大気圧と同じにする大気圧開放の方法をとるか、別途計測した大気圧によって大気圧の誤差を補正する必要があり、装置が複雑化する。
【0013】
さらに、水圧を測定する方式では、測定対象の水の比重により水面位置の計測を補正する必要があり、例えば濁流などの土砂を含む水の場合、測定誤差が発生する。
【0014】
降雨量観測装置や風向、風速観測装置においては、センサ部と変換器間を専用の電気ケーブルで接続するため施工費が嵩むほか、電気設備などからの電気的なノイズによる誤動作、雷からのノイズによる誤動作、あるいは誘導雷によってセンサ部や変換器が損傷を受けるなどの被害の発生などの問題がある。
【0015】
また、変換部は専用の光電エンコーダや光電パルスなどの信号から、風向や風速の値に変換しているが、これをリアルタイムで遠方にデータを伝送しようとする場合、更に高額な伝送機器類の設置が必要となり、特に、伝送機器類は高額であるために、気象観測データとしては、本来リアルタイム性が最も求められるこれらの観測所においても、データを一時記憶装置に保管しておき、後日データを収集する観測所が現実には多数存在している。
【0016】
そこで、本発明は、センサに対する電気ケーブルの接続を不要にして信頼性を向上できると共に、設置費用を安価にでき、しかも、設置の自由度を大きくできる気象事象観測装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、ICタグとICタグリーダーとを備え、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測する気象事象観測装置を特徴としている。
【0018】
また、請求項2の発明は、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が所定値より低下したことの検知および所定値より上昇したことの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測する請求項1記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0019】
また、請求項3の発明は、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知および両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測する請求項1記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0020】
また、請求項4の発明は、前記気象事象は、河川等の水位である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0021】
また、請求項5の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0022】
また、請求項6の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって所定値より低下したことの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4および請求項5のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0023】
また、請求項7の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4および請求項5のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0024】
また、請求項8の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって低レベルから高レベルへ変化することの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0025】
また、請求項9の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって所定値より上昇したことの検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4および請求項8のいずれかに記載気象事象観測装置を特徴としている。
【0026】
また、請求項10の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項8のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0027】
また、請求項11の発明は、複数のICタグを垂直方向に配置すると共に、最上位のICタグの上方にICタグリーダーを配置し、ICタグリーダーは水位の上昇にともなって全てのICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づくと共に、ICタグリーダーの水没の検知に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0028】
また、請求項12の発明は、水位に追従して上下動可能なフロートにICタグを設置し、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0029】
また、請求項13の発明は、水位に追従して転動しながら上下方向に移動する円筒形状フロートの外周面または側面に複数のICタグを設置すると共に、円筒形状フロートが転動しながら上下方向に移動するときICタグの水没と非水没とを繰り返すようし、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて河川等の水位を観測する請求項4記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0030】
また、請求項14の発明は、前記気象事象は、降雨量である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0031】
また、請求項15の発明は、所定量の雨水を貯留したとき枡の転倒により一方の桝から他方の桝に雨水の貯留が変更することを繰り返す雨量計の双方の枡内部にICタグを配置し、ICタグリーダーは雨水の貯留にともなってICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて枡の転倒を検知して降雨量を観測する請求項14記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0032】
また、請求項16の発明は、所定量の雨水を貯留したとき桝の転倒により一方の桝から他方の桝に雨水の貯留が変更することを繰り返す雨量計の枡の転倒により雨水が流出する通路にICタグを配置し、ICタグリーダーは枡の転倒による雨水の流出にともなってICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて枡の転倒を検知して降雨量を観測する請求項14記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0033】
また、請求項17の発明は、ICタグにはリード線を介して水分と接すると電気特性が変化する電気素子が接続されている請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0034】
また、請求項18の発明は、ICタグおよびICタグリーダーの少なくとも一方を防水構造とし、表面に撥水性のコーティング処理を施してなる請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0035】
また、請求項19の発明は、前記気象事象は、風速である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0036】
また、請求項20の発明は、円板に複数のICタグを配置してなるICタグ円板と、円周方向に電磁遮蔽部と電磁透過部とを有する遮蔽円板とを同心状に配置してなるICタグエンコーダーを、風を受けて回転する風力回転体に取り付け、ICタグリーダーはICタグ円板および遮蔽円板のいずれか一方が風力回転体と共に回転するのにともなってICタグからの電波到達強度が電磁遮蔽部の通過により高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて風速を観測する請求項19記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0037】
また、請求項21の発明は、前記気象事象は、風向である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【0038】
また、請求項22の発明は、円板に複数のICタグを配置してなるICタグ円板と、円周方向に電磁遮蔽部と電磁透過部とを有する遮蔽円板とを同心状に配置してなるICタグエンコーダーを、風向に応じて回転する風向回転体に取り付け、ICタグリーダーはICタグ円板および遮蔽円板のいずれか一方が風力回転体と共に回転するのにともなってICタグからの電波到達強度が電磁遮蔽部の通過により高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて風向を観測する請求項21記載の気象事象観測装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、ICタグリーダーがICタグからの電波到達強度が所定値より低下したこと、および所定値より上昇したことの少なくとも一方を検知して、またはICタグとの間の無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したこと、および通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの少なくとも一方を検知して気象事象を観測する気象事象観測装置であり、センサとしてのICタグ自体は電源が不要であるので、ICタグとICタグリーダとの間は非接触式(無線)で情報の授受が可能であり、また、ICタグリーダーはバッテリーで動作可能なため商用電源を引き込む必要が無く、ICタグリーダー自体に無線によって外部から給電することができることから電気ケーブルの接続を不要にすることが可能で、これによって信頼性を向上できると共に設置の自由度を大きくすることができる。
【0040】
また、ICタグおよびICタグリーダーは市販のものを利用でき、観測データ処理も市販のパーソナルコンピュータを利用できるので、設置費用を安価にすることができる。
【0041】
また、ICタグにリード線を介して水分と接すると電気特性が変化する電気素子を接続して使用することにより(請求項17)、1個のICタグによって複数点の水位を観測することができるようになり、また、ICタグによる水位観測の用途を拡大できるようになる。
【0042】
また、ICタグおよびICタグリーダーの少なくとも一方を防水構造とし、表面に撥水性のコーティング処理を施すことにより(請求項19)、表面からの水分の除去が速やかになり、電波到達強度の測定精度を向上でき、また、無線可能状態と無線不可能状態の切替の検知を確実に行うことができるようになる。
【0043】
本発明の気象事象観測装置は、河川等の水位観測、降雨量観測、風速観測および風向観測などに適用することができ、これによって、各種観測の信頼性を向上できると共に設置の自由度を大きくでき、また、設置費用を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の気象事象観測装置の作用を示すフローチャートであり、図1(a)は到達電波強度の変化を利用するときのフローチャートであり、図1(b)は通信可能状態と通信不可能状態の変化を利用するときのフローチャートである。
【図2】ICタグに電気素子を接続した状態を示す概略図である。
【図3】ICタグに電気素子を接続した形態を示す概略図であり、図3(a)は電気素子を1段に接続した概略図であり、図3(b)は電気素子Bを2段に接続した概略図である。
【図4】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第1例を説明する図面であり、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。
【図5】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第2例を説明する図面であり、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図である。
【図6】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第3例を説明する図面であり、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図である。
【図7】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第4例を説明する図面であり、図7(a)は正面図、図7(b)は側面図である。
【図8】本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した最良の実施の形態の第5例を説明する図面であり、図8(a)は正面図、図8(b)は側面図である。
【図9】最良の実施の形態の第5例において使用される円筒形状フロートを説明する図面であり、図9(a)は正面図、図9(b)は側面図である。
【図10】本発明の気象事象観測装置をマンホールの水位観測装置に適用した最良の実施の形態を説明する図面である。
【図11】本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した最良の実施の形態の第1例を説明する図面である。
【図12】本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した最良の実施の形態の第2例を説明する図面である。
【図13】本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した最良の実施の形態の第3例を説明する図面である。
【図14】本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した最良の実施の形態の第4例を説明する図面である。
【図15】本発明の気象事象観測装置を風速観測装置および風向観測装置に適用した最良の実施の形態に使用されるICタグエンコーダーを説明する図面であり、図15(a)は正面図、図15(b)は側面図である。
【図16】河川等の水位観測装置の従来例を説明する図面である。
【図17】河川等の水位観測装置の従来例を説明する図面である。
【図18】降雨量観測装置の従来例を説明する図面である。
【図19】風向、風速観測装置の従来例を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の気象事象観測装置の最良の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0046】
本発明の気象事象観測装置は、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づくものであるが、具体的には、例えば、(イ)ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が所定値より低下したことの検知および所定値より上昇したことの検知の少なくとも一方に基づく気象事象観測装置、および、(ロ)ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知および両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知の少なくとも一方に基づく気象事象観測装置をあげることができる。
【0047】
図1(a)は、前記(イ)の気象事象観測装置の作用をフローチャートで示したものであり、ICタグリーダーはICタグからの無線電波を受信して到達電波強度を測定し、この到達電波強度を閾値と比較して所定値以上か否かの判定を行い、所定値以上であるときは、例えば河川等の水位観測においてはICタグの水没なしとして、この情報をメモリに記憶し、さらに基地局に伝送する。
【0048】
ICタグリーダーがICタグからの無線電波を受信できない場合、および到達電波強度が所定値未満のときは、例えば河川等の水位観測においてはICタグの水没ありとして、この情報をメモリに記憶し、さらに基地局に伝送する。
【0049】
ICタグとしては、電池内蔵のアクティブタイプと電池を内蔵しないパッシブタイプとがあり、本発明においてはいずれのタイプも使用可能であるが、アクティブタイプのICタグは使用周波数帯によっては水中での電波到達距離が大となって正確な観測ができなくなることもあるので、周波数帯域が1GHz程度のものを使用することが好ましく、また、前記観測における到達電波強度の閾値は、ICタグリーダーおよびICタグが設置される周囲状況等を勘案して決定されるが、通常の到達電波強度の(1/3)〜(1/5)程度に設定されるのが一般的である。
【0050】
図1(b)は、前記(ロ)の気象事象観測装置の作用をフローチャートで示したものであり、ICタグリーダーがICタグからの無線電波を受信できたときは、例えば河川等の水位観測においてはICタグの水没なしとして、この情報をメモリに記憶し、さらに基地局に伝送する。
【0051】
ICタグリーダーがICタグからの無線電波を受信できなかったときは、例えば河川等の水位観測においてはICタグの水没ありとして、この情報をメモリに記憶し、さらに基地局に伝送する。
【0052】
また、本発明においては、ICタグをそれ自体単独で使用することができるが、ICタグにリード線を介して水分と接すると電気特性が変化する電気素子を接続した形態で使用することができ、このような電気素子としては、抵抗、コンデンサ、熱電対など、現在広く市販されているものを使用することができる。
【0053】
図2は、ICタグに電気素子を接続した状態を示す概略図であり、ICタグAは、メモリ部D、制御部E、送受信部Fおよびアンテナ部Gからなっており、このようなICタグAにリード線Cを介して電気素子Bが接続されている。
【0054】
制御部Eは、電気素子Bでの計測制御および電気素子情報に加えてICタグAのID情報などの書き込み保存、書き換えをメモリ部Dに行わせると共に、電気素子Bでの計測情報などを送受信部Fおよびアンテナ部Gを経由してICタグリーダーに伝送させる機能を備えている。
【0055】
図3は、ICタグAに電気素子Bを接続した形態を示す概略図であり、図3(a)の例では、ICタグAにリード線Cを介して電気素子B1が1段に接続されており、図3(b)の例では、ICタグAにリード線Cを介して電気素子B1,B2が2段に接続されている。
【0056】
(実施例1)
図4は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第1例を示すもので、図4(a)は正面図、図4(b)は側面図である。
【0057】
本実施例1の水位観測装置は、地盤1に立設された支柱2に防波管3を固定し、防波管3の内壁に沿った垂直方向には複数のICタグ41,42,・・・45(いずれもパッシブタイプICタグ)を配置し、支柱2の上端部にはICタグリーダー5を配置したものである。
【0058】
ICタグ41,42,・・・45を防波管3の内部に配置することにより、水面6に立つ波の影響を軽減して水位を観測することができる。
【0059】
各ICタグ41,42,・・・45に付与された識別符号はICタグリーダー5によって解読されるようになっており、河川等の増水が無く、水面6がICタグ41よりも下方にあるときは、全てのICタグ41,42,・・・45とICタグリーダー5との間で無線通信が可能な状態にあり、水位はICタグ41以下であると判断される。
【0060】
降雨等により水面6が上昇し、ICタグ41,42,43が水没すると、ICタグ41,42,43とICタグリーダー5との間の無線通信が不可能状態で、ICタグ44,45とICタグリーダー5との間の無線通信が可能状態となり、水位はICタグ43とICタグ44との間であると判断される。
【0061】
逆に、降雨等の影響がなくなって水面6が下降してICタグ41よりも下方になったときは、ICタグ41,42,43とICタグリーダー5との間の無線通信が不可能状態から可能状態となり、全てのICタグ41,42,・・・45とICタグリーダー5との間で無線通信が可能な状態となって、水位はICタグ41以下であると判断される。
【0062】
なお、ICタグ41,42,43とICタグリーダー5との間の無線通信が通信可能状態から通信不可能状態検知および無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知について説明したが、ICタグ41,42,43からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下したことの検知および所定値より上昇したことの検知によっても水位を観測することができる。
【0063】
本実施例1のように、複数のICタグ41,42,・・・45を垂直方向に配置した構成であると、水位をほぼ連続的に観測することが可能であり、集中豪雨などによる河川等の水位上昇に関する情報を的確に把握することができる。
【0064】
図5は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第2例を示すもので、図5(a)は正面図、図5(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0065】
本実施例2の水位観測装置は、各ICタグ42,・・・45にリード線を介して電気素子522,523,524,525をそれぞれ接続したものである。
【0066】
降雨等により水面6が上昇し、ICタグ41,42,43までが水没し、さらに水面6が上昇して電気素子524が水没してICタグ44からの到達電波強度が低下し、ICタグ44とICタグリーダー5との間の無線通信が可能状態であるときは、水位は電気素子524とICタグ44との間であると判断される。
【0067】
さらに水面6が上昇してICタグ44とICタグリーダー5との間の無線通信が不可能状態であり、ICタグ45とICタグリーダー5との間の無線通信状態が通常と変化ないときは、ICタグ44と水位は電気素子525との間であると判断される。
【0068】
本実施例2の水位観測装置のように、各ICタグ42,・・・45にリード線を介して電気素子522,523,524,525をそれぞれ接続した構成であると、同じICタグの数でありながら、よりきめ細かな水位観測を行うことが可能となる。
【0069】
本実施例2の上記以外の構成および作用は前記実施例1と同様である。
【0070】
(実施例3)
図6は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第3例を示すもので、図6(a)は正面図、図6(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0071】
本実施例3の水位観測装置は、完全に防水構造にしたICタグリーダー25を使用し、このICタグリーダー25を最上位のICタグ45の上方に配置したものである。
【0072】
水面6がICタグリーダー25に到達しないときは、実施例1と同様にICタグリーダー25とICタグ41,42,・・・45との間の無線通信の可能、不可能に基づいて水位の観測が行われ、水面6がICタグリーダー25を越えてICタグリーダー25自体が水没すると、ICタグリーダーから無線の送出が不可能となり、これに基づいて水位はICタグリーダー25を越えたと判断される。
【0073】
本実施例3のように、ICタグ41,42,・・・45の水没に加えてICタグリーダー25の水没に基づいて水位を観測する構成であると、ICタグリーダー25が固定配置される支柱2の高さを低く抑えることができ、水位観測装置の設置費用を低減できる。
【0074】
(実施例4)
図7は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第4例を示すもので、図7(a)は正面図、図7(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0075】
本実施例4の水位観測装置は、防波管3内に水面6の上昇、下降に伴って上下動するフロート7を配置し、このフロート7の上部にICタグ4を配置し、支柱2の上端部にICタグリーダー5を配置したものである。
【0076】
そして、ICタグ4とICタグリーダー5との間には通信可能な距離の限界があることを利用し、通常は水面6が下方にあって、ICタグ4はICタグリーダー5との無線通信不可能距離範囲にあるが、降雨によって水面6(フロート7)が上昇してICタグ4がICタグリーダー5との無線通信可能距離範囲に入ると、この無線通信が開始したことをとらえて一定レベルの水位を観測するのである。
【0077】
また、前記とは逆に、通常は水面6が上方にあって、ICタグ4はICタグリーダー5との無線通信可能距離範囲にあるが、渇水によって水面6(フロート7)が下降してICタグ4がICタグリーダー5との無線通信不可能距離範囲に入ると、この無線通信が途絶えたことをとらえて一定レベルの水位を観測することができる。
【0078】
本実施例4のように、ICタグ4とICタグリーダー5との間の無線通信可能な距離をとらえて水位を観測する構成であると、正確な水位を観測することができる。
【0079】
(実施例5)
図8は、本発明の気象事象観測装置を河川等の水位観測装置に適用した第5例を示すもので、図8(a)は正面図、図8(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0080】
本実施例5の水位観測装置は、防波管3内に水面6の上昇、下降に伴って(水位に追従して)防波管3内壁に沿って転動しながら上下方向に移動する円筒形状フロート8を配置し、この円筒形状フロート8の転動しながらの上下方向移動を利用して水位を観測するものである。
【0081】
具体的には、図9(a)の正面図および図9(b)の側面図に示すように、円筒形状フロート8の外周面に複数のICタグ41,42,43,44を配置し、また、円筒形状フロート8の外周面にリング状磁石9を配置する。
【0082】
一方、防波管3の内壁には図8(a)、図8(b)に示すように、上下方向に金属レール10を設置すると、円筒形状フロート8が自らの浮力とリング状磁石9の吸引力との作用により、水面6の上昇、下降に伴って金属レール10上を転動しながら上下方向に移動する。
【0083】
円筒形状フロート8の転動に伴い、ICタグ41,42,43,44が水没、非水没を繰り返すことで、ICタグ41,42,43,44とICタグリーダー5との間の無線通信の通信可能状態と通信不可能状態が変化を繰り返し、この変化を検知することで水位を観測できる。
【0084】
本実施例5のように、円筒形状フロート8の転動を利用して水位を観測する構成であると、ICタグ41,42,43,44の取り付け間隔を狭くすると、例えば1cm単位での水位観測が可能となり、また、水面6の下降時は金属レール10に沿い、円筒形状フロート8が下降してくることで、水位の下降をも観測でき、また、全てのICタグ41,42,43,44とICタグリーダー5との通信が可能なポイントを水位ゼロレベルと設定すれば、水位ゼロレベルも確実に確認することができる。
【0085】
なお、図8(a)、図8(b)にはICタグリーダー5の電源としてソーラーパネル11およびバッテリー12を設置した例が示されている。
【0086】
また、防波管3の内壁に設置した金属レール10と円筒形状フロート8外周のリング状磁石9との作用により円筒形状フロート8が転動する例を説明したが、金属レール10を梯子状や平面展開のギア状にし、リング状磁石9を歯車状にすると、円筒形状フロート8の転動は金属レール10に対してすべりのないものとなり、より正確な水位観測が可能となる。
【0087】
(実施例6)
図10は、本発明の気象事象観測装置をマンホール内の水位観測装置に適用した例を示すものであり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0088】
本実施例6の水位観測装置は、マンホールの外部にICタグ4を配置すると共に、マンホールの内部に電気素子52を配置し、ICタグ4と電気素子52とをリード線51で接続したものである。
【0089】
マンホール内の水面6が上昇して電気素子52が水没する位置まで到達すると、ICタグ4からICタグリーダー5に到達する電波強度が所定値より低下するので、これを検知することにより電気素子52の水没、すなわち、マンホール内の水位の変化を観測することができる。
【0090】
本実施例6に従ってマンホールの水位を観測することにより、近年の都市型集中豪雨に伴う下水道の排水能力以上の降雨によるマンホール内部の水位上昇への対応を的確に行うことが可能となる。
【0091】
しかも、マンホール外部の地上にICタグ4を配置し、マンホールの内部に電気素子52を配置する構成であると、ICタグ4からの無線電波がマンホールの金属製蓋によって遮られることがないため、マンホール内部の水位変化観測システムをICタグを使用して構築することが可能となる。
【0092】
(実施例7)
図11は、本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した第1例を示すもので、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0093】
本実施例7の降雨量観測装置は、受水口13の下方に枡141,142からなる転倒枡14を備え、各枡141,142の内部にそれぞれICタグ41,42を配置し、受水口13で集められた雨水が一方の枡141に貯留することによってICタグ41とICタグリーダー5との無線通信が通信不可能状態となり、枡141が満水になると雨水の重みで転倒して雨水が排水口151から排水され、その後雨水が他方の枡142に貯留することによってICタグ42とICタグリーダー5との無線通信が通信不可能状態となることの繰り返しを検知することにより降雨量を観測するものである。
【0094】
各枡141,142の下方にはストッパー161,162がそれぞれ配置されており、これによって、枡141,142の過回転が防止されるようになっている。
【0095】
本実施例7のように、枡141,142の内部にICタグ41,42を配置し、雨水の貯留により無線通信可能状態から無線通信不可能状態への変化を検知して降水量を観測する構成であると、一方の枡141から他方の枡142に切り替わるときの電気接点の動作回数を電気ケーブルを介して変換器に送信する必要がなくなり、降雨量観測の信頼性を向上できると共に観測装置設置の自由度を大きくすることができる。
【0096】
(実施例8)
図12は、本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した第2例を示すもので、図4(a)、図4(b)および図11と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0097】
本実施例8の降雨量観測装置は、各ICタグ41,42にリード線511,512を介して電気素子521,522をそれぞれ接続したものである。
【0098】
電気素子521,522は、枡141,142の内部の雨水に触れる箇所に配置され、ICタグ41,42は、枡141,142の外部の雨水に触れない箇所に配置され、雨水が一方の枡141に貯留することによってICタグ41からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下した状態となり、枡141が満水になると雨水の重みで転倒して雨水が排水口151から排水され、その後雨水が他方の枡142に貯留することによってICタグ42からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下した状態となることの繰り返しを検知することにより降雨量を観測するものである。
【0099】
本実施例8のように、各ICタグ41,42にリード線511,512を介して電気素子521,522をそれぞれ接続し、ICタグ41,42を枡141,142の外部の雨水に触れない箇所に配置する構成とすることにより、ICタグ41,42は電気素子521,522の動作に拘わらず常に通信が可能な状態にあり、動作確認の信頼性が高いシステムを実現することができる。
【0100】
(実施例9)
図13は、本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した第3例を示すもので、図11と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0101】
本実施例9の降雨量観測装置は、転倒枡14が転倒したとき一方の枡141から流出する雨水の通路となる排水口151および転倒枡14が転倒したとき他方の枡142から流出する通路となる排水口152の内部にそれぞれICタグ41,42を配置し、雨水が一方の枡141から流出して排水口151を通過するときICタグ41とICタグリーダー5との無線通信が通信不可能状態となり、雨水が他方の枡142から流出して排水口152を通過するときICタグ42とICタグリーダー5との無線通信が通信不可能状態となることの繰り返しを検知することにより降雨量を観測するものである。
【0102】
本実施例9のように、排水口151,152の内部にICタグ41,42を配置し、枡141,142から流出した雨水の通過により無線通信可能状態から無線通信不可能状態へと変化したのを検知して降水量を観測する構成であると、前記実施例5の場合と同様に一方の枡141から他方の枡142に切り替わるときの電気接点の動作回数を電気ケーブルを介して変換器に送信する必要がなくなり、降雨量観測の信頼性を向上できると共に観測装置設置の自由度を大きくすることができる。
【0103】
(実施例10)
図14は、本発明の気象事象観測装置を降雨量観測装置に適用した第2例を示すもので、図11と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0104】
本実施例10の降雨量観測装置は、各ICタグ41,42にリード線511,512を介して電気素子521,522をそれぞれ接続したものである。
【0105】
電気素子521,522は、排水口151,152の内部の雨水に触れる箇所に配置され、ICタグ41,42は、排水口151,152の外部の雨水に触れない箇所に配置され、雨水が一方の枡141から流出して排水口151を通過するときICタグ41からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下した状態となり、雨水が他方の枡142から流出して排水口152を通過するときICタグ42からICタグリーダー5への到達電波強度が所定値より低下した状態となることの繰り返しを検知することにより降雨量を観測するものである。
【0106】
本実施例10のように、各ICタグ41,42にリード線511,512を介して電気素子521,522をそれぞれ接続し、ICタグ41,42を排水口151,152の外部の雨水に触れない箇所に配置する構成とすることにより、ICタグ41,42は電気素子521,522の動作に拘わらず常に通信が可能な状態にあり、動作確認の信頼性が高いシステムを実現することができる。
【0107】
実施例1〜実施例10の各々において、水没するICタグ41,42,43,44およびICタグリーダー5は防水構造とすると共に、表面に撥水性のコーティング処理を施すことにより、表面からの水分の除去が速やかになり、電波到達強度の測定精度を向上でき、また、無線可能状態と無線不可能状態の切替の検知が確実になる。
【0108】
(実施例11)
図15は、本発明の気象事象観測装置を風速観測装置または風向観測装置に適用するとき使用されるICタグエンコーダーの例を示すもので、図15(a)は正面図、図15(b)は側面図であり、図4(a)、図4(b)と同一呼称部または同一部材には同一符号を付してある。
【0109】
本実施例11の風速観測装置に使用されるICタグエンコーダー17は、円板18に複数のICタグ41,42,43・・・4nを配置してなるICタグ円板19と、円周方向に電磁遮蔽部21と電磁透過部22とを有する遮蔽円板20とを同心状に配置して構成されている。
【0110】
このようなICタグエンコーダー17を、風を受けて回転する風力回転体(例えば、図12に示す従来の風向・風速観測装置のプロベラ)に取り付け、ICタグ円板18および遮蔽円板20のいずれか一方を風力回転体の回転と連動させ、ICタグ41,42,43・・・4nが電磁透過部22に位置したときは、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信が通信可能状態となり、ICタグ41,42,43・・・4nが電磁遮蔽部21に位置したときは、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信が通信不可能状態となることを利用し、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との通信状態と通信時間を計測することにより、風速を観測することができる。
【0111】
本実施例11のように、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信状態を検出して風速を観測する構成であると、風速データの伝送が簡略化される。
【0112】
(実施例12)
実施例11で説明したICタグエンコーダー17を、風向に応じて回転する風向回転体(例えば、図19に示す従来の風向・風速観測装置の尾翼)に取り付け、ICタグ円板18および遮蔽円板20のいずれか一方を風向回転体の回転と連動させ、ICタグ41,42,43・・・4nが電磁透過部22に位置したときは、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信が通信可能状態となり、ICタグ41,42,43・・・4nが電磁遮蔽部21に位置したときは、ICタグ41,42,43・・・4nとICタグリーダー5との間の無線通信が通信不可能状態となることを利用し、予めICタグ41,42,43・・・4nと東西南北等の方角を対応させておくことにより、風向を観測することができる。
【符号の説明】
【0113】
4,41,42,43・・・4n ICタグ
5 ICタグリーダ
6 水面
7 フロート
8 円筒形状フロート
14 転倒枡
141,142 枡
151,152 排水口
17 ICタグエンコーダ
18 円板
19 ICタグ円板
20 遮蔽円板
21 電磁遮蔽部
22 電磁透過部
511,512 リード線
521,522 電気素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグとICタグリーダーとを備え、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測することを特徴とする気象事象観測装置。
【請求項2】
ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が所定値より低下したことの検知および所定値より上昇したことの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測することを特徴とする請求項1記載の気象事象観測装置。
【請求項3】
ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知および両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測することを特徴とする請求項1記載の気象事象観測装置。
【請求項4】
前記気象事象は、河川等の水位であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項5】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項6】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって所定値より低下したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項5のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項7】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項5のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項8】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって低レベルから高レベルへ変化することの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項9】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって所定値より上昇したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項8のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項10】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項8のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項11】
複数のICタグを垂直方向に配置すると共に、最上位のICタグの上方にICタグリーダーを配置し、ICタグリーダーは水位の上昇にともなって全てのICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づくと共に、ICタグリーダーの水没の検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項12】
水位に追従して上下動可能なフロートにICタグを設置し、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項13】
水位に追従して転動しながら上下方向に移動する円筒形状フロートの外周面または側面に複数のICタグを設置すると共に、円筒形状フロートが転動しながら上下方向に移動するときICタグの水没と非水没とを繰り返すようし、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項14】
前記気象事象は、降雨量であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項15】
所定量の雨水を貯留したとき枡の転倒により一方の桝から他方の桝に雨水の貯留が変更することを繰り返す雨量計の双方の枡内部にICタグを配置し、ICタグリーダーは雨水の貯留にともなってICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて枡の転倒を検知して降雨量を観測することを特徴とする請求項14記載の気象事象観測装置。
【請求項16】
所定量の雨水を貯留したとき桝の転倒により一方の桝から他方の桝に雨水の貯留が変更することを繰り返す雨量計の枡の転倒により雨水が流出する通路にICタグを配置し、ICタグリーダーは枡の転倒による雨水の流出にともなってICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて枡の転倒を検知して降雨量を観測することを特徴とする請求項14記載の気象事象観測装置。
【請求項17】
ICタグにはリード線を介して水分と接すると電気特性が変化する電気素子が接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項18】
ICタグおよびICタグリーダーの少なくとも一方を防水構造とし、表面に撥水性のコーティング処理を施してなることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項19】
前記気象事象は、風速であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項20】
円板に複数のICタグを配置してなるICタグ円板と、円周方向に電磁遮蔽部と電磁透過部とを有する遮蔽円板とを同心状に配置してなるICタグエンコーダーを、風を受けて回転する風力回転体に取り付け、ICタグリーダーはICタグ円板および遮蔽円板のいずれか一方が風力回転体と共に回転するのにともなってICタグからの電波到達強度が電磁遮蔽部の通過により高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて風速を観測することを特徴とする請求項19記載の気象事象観測装置。
【請求項21】
前記気象事象は、風向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項22】
円板に複数のICタグを配置してなるICタグ円板と、円周方向に電磁遮蔽部と電磁透過部とを有する遮蔽円板とを同心状に配置してなるICタグエンコーダーを、風向に応じて回転する風向回転体に取り付け、ICタグリーダーはICタグ円板および遮蔽円板のいずれか一方が風力回転体と共に回転するのにともなってICタグからの電波到達強度が電磁遮蔽部の通過により高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて風向を観測することを特徴とする請求項21記載の気象事象観測装置。
【請求項1】
ICタグとICタグリーダーとを備え、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測することを特徴とする気象事象観測装置。
【請求項2】
ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が所定値より低下したことの検知および所定値より上昇したことの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測することを特徴とする請求項1記載の気象事象観測装置。
【請求項3】
ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知および両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知の少なくとも一方に基づいて気象事象を観測することを特徴とする請求項1記載の気象事象観測装置。
【請求項4】
前記気象事象は、河川等の水位であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項5】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項6】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって所定値より低下したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項5のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項7】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の上昇にともなって両者間での無線通信が通信可能状態から通信不可能状態に変化したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項5のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項8】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって低レベルから高レベルへ変化することの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項9】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって所定値より上昇したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項8のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項10】
複数のICタグを垂直方向に配置し、ICタグリーダーは少なくとも1個のICタグからの到達電波強度が水位の下降にともなって両者間での無線通信が通信不可能状態から通信可能状態に変化したことの検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4および請求項8のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項11】
複数のICタグを垂直方向に配置すると共に、最上位のICタグの上方にICタグリーダーを配置し、ICタグリーダーは水位の上昇にともなって全てのICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づくと共に、ICタグリーダーの水没の検知に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項12】
水位に追従して上下動可能なフロートにICタグを設置し、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項13】
水位に追従して転動しながら上下方向に移動する円筒形状フロートの外周面または側面に複数のICタグを設置すると共に、円筒形状フロートが転動しながら上下方向に移動するときICタグの水没と非水没とを繰り返すようし、ICタグリーダーはICタグからの到達電波強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知および低レベルから高レベルへ変化することの検知の少なくとも一方に基づいて河川等の水位を観測することを特徴とする請求項4記載の気象事象観測装置。
【請求項14】
前記気象事象は、降雨量であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項15】
所定量の雨水を貯留したとき枡の転倒により一方の桝から他方の桝に雨水の貯留が変更することを繰り返す雨量計の双方の枡内部にICタグを配置し、ICタグリーダーは雨水の貯留にともなってICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて枡の転倒を検知して降雨量を観測することを特徴とする請求項14記載の気象事象観測装置。
【請求項16】
所定量の雨水を貯留したとき桝の転倒により一方の桝から他方の桝に雨水の貯留が変更することを繰り返す雨量計の枡の転倒により雨水が流出する通路にICタグを配置し、ICタグリーダーは枡の転倒による雨水の流出にともなってICタグからの電波到達強度が高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて枡の転倒を検知して降雨量を観測することを特徴とする請求項14記載の気象事象観測装置。
【請求項17】
ICタグにはリード線を介して水分と接すると電気特性が変化する電気素子が接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項18】
ICタグおよびICタグリーダーの少なくとも一方を防水構造とし、表面に撥水性のコーティング処理を施してなることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項19】
前記気象事象は、風速であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項20】
円板に複数のICタグを配置してなるICタグ円板と、円周方向に電磁遮蔽部と電磁透過部とを有する遮蔽円板とを同心状に配置してなるICタグエンコーダーを、風を受けて回転する風力回転体に取り付け、ICタグリーダーはICタグ円板および遮蔽円板のいずれか一方が風力回転体と共に回転するのにともなってICタグからの電波到達強度が電磁遮蔽部の通過により高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて風速を観測することを特徴とする請求項19記載の気象事象観測装置。
【請求項21】
前記気象事象は、風向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の気象事象観測装置。
【請求項22】
円板に複数のICタグを配置してなるICタグ円板と、円周方向に電磁遮蔽部と電磁透過部とを有する遮蔽円板とを同心状に配置してなるICタグエンコーダーを、風向に応じて回転する風向回転体に取り付け、ICタグリーダーはICタグ円板および遮蔽円板のいずれか一方が風力回転体と共に回転するのにともなってICタグからの電波到達強度が電磁遮蔽部の通過により高レベルから低レベルへ変化することの検知に基づいて風向を観測することを特徴とする請求項21記載の気象事象観測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−281586(P2010−281586A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132929(P2009−132929)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000173577)財団法人河川情報センター (11)
【出願人】(597052330)株式会社 東京建設コンサルタント (8)
【出願人】(508222036)株式会社トランスコア (4)
【出願人】(500349203)株式会社富士精工 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000173577)財団法人河川情報センター (11)
【出願人】(597052330)株式会社 東京建設コンサルタント (8)
【出願人】(508222036)株式会社トランスコア (4)
【出願人】(500349203)株式会社富士精工 (4)
【Fターム(参考)】
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