説明

水の少なくとも1つの特性を測定するための装置

本発明は、水の少なくとも1つの物理化学パラメータを測定するための装置に関し、この装置が、前記水の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を測定するための手段を備えている。本発明によれば、次亜塩素酸HOClの形態の塩素の濃度を測定するための前記手段が、次亜塩素酸HOClの形態の塩素を検出するための第1および第2の電流測定式センサ(21、22)を備え、該2つの電流測定式塩素センサ(21、22)の各々が信号を出力し、該2つの電流測定式塩素センサ(21、22)が、ただ1つの共通の基準電極(25)を有し、バイポテンショスタットへと接続され、本発明は、前記第1および第2の電流測定式センサ(21、22)を同時に働かせるための手段と、前記2つのセンサ(21、22)によって出力される信号の間の差を測定するための手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明の分野は、物理化学パラメータを測定するための技術の分野である。本発明は、これに限られるわけではないが、特に食品において使用するための飲料水の製造および/または分配ネットワーク(distribution network:流通網)の文脈に、とりわけ適用可能である。また、例えば水泳プール、温泉、ジャクジー、産業プロセス、養殖、廃水、脱塩水、航海用のバラスト水、などにおける水の処理の分野にも適用可能である。
【0002】
より具体的には、本発明は、塩素含有量および水圧など、水の品質ならびに水の分配ネットワークおよびその設備の状態を表わすいくつかの重要パラメータのオンライン測定のためのプローブおよびプロセスの設計および製造に関する。
【0003】
実務において、水中に存在する塩素の測定は、この水の品質について、比較的正確な指標をもたらす。実際に、分配される飲料水の塩素含有量は、飲料水の風味に悪影響が及ぶことがないように十分に低く、しかしながら飲料水において細菌の増殖が見られないことを保証するために十分に高くなければならない。
【背景技術】
【0004】
2.先行技術および先行技術の欠点
水処理の分野においては、水の品質が、処理後または処理前のどちらであっても、処理の効率を検証し、かつ/または水の処理を動作状態に応じて最適化するために、一般的に調査されている。
【0005】
プローブが、水の品質(特に、処理後の水の品質)を表わす物理化学パラメータを測定するために、一般的に使用されている。
【0006】
処理対象の水の品質を表わす大量の情報を集めるために使用される多数の(一般的には、10個を超える)センサを備える多数のプローブが公知である。
【0007】
これらのプローブは、一般に、塩素センサを備えている。分析対象の水の塩素含有量を割り出すために使用される種類の塩素センサは、pHの測定を必要とする。
【0008】
pHセンサは、電解質を含んでいる。この電解質の量が、pHセンサが使用されるときに、使用につれて着実に減少する。したがって、pHセンサは、通常は6ヵ月以下の寿命を有している。
【0009】
したがって、この形式のプローブを備えることで、電解質を交換してプローブを再び較正するための頻繁な保守作業が生じる。このように、これらのプローブは、寿命が比較的短い。
【0010】
これらの多数のプローブは、比較的かさばるという欠点も抱えている。これが、プローブの容易な設置を妨げる。特に、そのようなプローブは、例えばユーザの個人の飲料水分配ネットワークに設置することが不可能であるような大きさの空間を占める。
【0011】
これらのプローブの限られた寿命という問題を改善するために、他の種類のプローブが開発されてきている。
【0012】
特に、Silsens社から市販されているMESM 2405というプローブが知られている。このプローブは、塩素センサおよび温度センサを備えている。
【0013】
このプローブは、電流測定式の塩素センサを実現している。この形式のセンサは、塩素含有量を割り出すために水のpHを測定する必要がない。したがって、水の塩素含有量の測定を、いかなるpHセンサも備えることなく得ることができる。
【0014】
したがって、この形式のプローブの寿命は、pHセンサを備えるプローブの寿命よりも長い。
【0015】
さらには、この形式のプローブは、水分析器への一体化が意図される。水分析器は、従来、水の分配ネットワークから離れた所に配置される。水分析器は、分析のために水の分配ネットワークからのサンプリングのための水の取得を可能にするバイパスネットワークへと接続される。さらに、水サンプルの排出のためのネットワークにも接続される。
【0016】
したがって、このプローブは、設置が比較的複雑である。特に、水の品質の現場での確認が不可能である。ユーザの飲料水分配ネットワークに直接設置することも不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
3.発明の目的
本発明の目的は、電流測定式塩素センサプローブおよびそのようなプローブを使用する水質測定方法を改善することにある。
【0018】
特に、本発明の目的は、少なくとも1つの実施形態において、複数センサプローブによるいくつかのパラメータ(特に、水の品質を表わす少なくとも1つのパラメータ)の測定を可能にするこの種の技術を提供することにある。
【0019】
より具体的には、本発明の目的は、少なくとも1つの実施形態において、分析される水の品質(特に、塩素濃度)についての正確な指標を得るために使用することができるこの種の技術を提供することにある。
【0020】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの実施形態において、保守をあまり必要としないこの種の技術を実現することにある。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、少なくとも1つの実施形態において、コンパクトなやり方で実現することができるこの種の技術を提供することにある。
【0022】
特に、本発明の目的は、少なくとも1つの実施形態において、例えば飲料水の分配ネットワークにおいて直接的に、水の品質の現場での測定に使用することができるこの種の技術を提供することにある。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、少なくとも1つの実施形態において、信頼性のあるこの種の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
4.発明の概要
これらの目的ならびに以下で明らかになる他の目的が、本発明によれば、水中の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を測定するための手段を備え、この塩素濃度を測定するための手段が、第1および第2の電流測定式塩素センサを備え、これら2つの電流測定式塩素センサの各々が信号をもたらし、これら2つの電流測定式塩素センサが、ただ1つの共通の基準電極を有し、バイポテンショスタットへと接続されている、水の少なくとも1つの特性を測定する装置であって、前記第1および第2の電流測定式センサを同時に働かせるための手段を備え、前記2つのセンサによってもたらされる信号の間の差を測定するための手段をさらに備えている装置によって達成される。
【0025】
また、上述の目的ならびに以下で明らかになる他の目的は、本発明によれば、本発明による装置を備えることによって水の少なくとも1つの特性を測定するための方法であって、
・ 前記第1および第2のセンサによって前記水の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を測定するステップと、
・ 次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度の前記測定を制御するステップと、
を含んでおり、
前記制御するステップが、前記センサの動作状態を監視するステップを含んでおり、該監視するステップが、
・ 前記第1のセンサによって前記水の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を表わす第1の情報を測定する第1のステップ、および前記第1のステップと同時に実行され、前記第2のセンサによって前記水の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を表わす第2の情報を測定する第2のステップ、
・ 前記濃度を表わす前記第1および第2の情報の間の差を割り出すステップ、ならびに
・ 前記差の値を少なくとも1つの基準値と比較するステップ、
を含んでいる方法によっても達成される。
【0026】
このように、本発明は、水の品質を、水の活性塩素濃度の測定およびこの目的のために備えられた電流測定式塩素センサの動作状態の監視によって制御することからなる革新的な手法に依拠している。監視は、より具体的には、2つの別個の電流測定式センサによって塩素濃度の二重の測定を実行し、2つの測定値の間の差を割り出すことによって、少なくとも一方のセンサにおける動作異常を検出することからなる。センサの動作異常の検出は、センサの経年劣化の程度の指標であり、この指標により、センサの交換についての判断を行うことが可能になる。
【0027】
2つの塩素センサが、二重の測定を可能にし、そのような二重の測定を、さらに以下のように分析することができる。
・ 塩素レベルについての警報を迅速にもたらすための高い頻度(例えば、6秒ごと)での分析(高域通過フィルタによって迅速にフィルタ処理されたセンサからの信号の分析;各々のセンサによってもたらされる信号の上側および下側しきい値との比較、ならびに塩素濃度の高すぎまたは低すぎを示す警報メッセージの提供)。
・ 2つの塩素センサの経年劣化の状態を判断するための低い頻度(例えば、6分ごと)での分析(低域通過フィルタによってよりゆっくりとフィルタ処理された各々の塩素センサによってもたらされた信号の分析;平均塩素濃度の計算;各々の塩素センサによってもたらされた信号の間の差の計算ならびにセンサの経年劣化の程度の判断)。
【0028】
このようにして、本発明の技法は、塩素センサの最大限の使用を引き出すことを可能にする。実際、塩素センサの寿命はさまざまである。伝統的に、塩素センサは、センサが機能できる状態であることが常に確実であるように、最短の寿命に相当する期間だけ使用されている。すなわち、塩素センサが、定期的に交換されている。交換が、まだ動作できる状態にあるときに行われる可能性がある。これは、センサについて頻繁な作業を必要とし、追加のランニングコストを引き起こす。
【0029】
本発明によれば、センサの状態の管理という事実が、一方または両方のセンサがもはや機能できない状態となる正確な瞬間を検出することを可能にする。それらのセンサを、この時点で交換すればよい。一方の塩素センサだけが不良である場合、他方のセンサによって塩素濃度の測定を続けることができる。この場合には、センサの交換は必須ではない。このように、本発明の技法は、塩素センサを最大限に利用することを可能にし、交換を遅らせることを可能にする。結果として、保守作業の頻度が少なくなり、したがって本発明による測定装置の寿命が向上する。
【0030】
したがって、このような手法は、本発明による装置をユーザの敷地に設置する可能性につながる。その結果、水の各々の分配点において、水の品質の水準を正確に知ることが可能になり、分配ネットワークにおける問題(存在すれば)を検出することが可能になる。
【0031】
本発明によれば、電流測定式塩素センサがバイポテンショスタットに接続されて1つの共通の基準電極を共有するという事実が、利点を有する。
【0032】
これは、センサの実現に必要な電子部品の数を少なくする。一般的に、2つの電流測定式センサの使用を望む当業者であれば、2つのポテンショスタットおよび2つの基準電極を使用すると考えられる。
【0033】
部品の数が抑えられるという本発明による事実は、動作の不確実さを減らし、装置に必要な空間を小さくすると同時に、品質も向上させる。特に、基準電極を2つの電流測定式塩素センサに共通にすることで、2つの電流測定式センサに共通の基準電極と各々のセンサの作用電極との間に加えられる基準電位が、同一であることが保証される。したがって、各々のセンサによってもたらされる2つの信号の間に相違が検出される場合、それはセンサへの供給の問題に関連するのではなく、一方の電流測定式センサそのものの故障に関連している。このように、この実施例は、電流測定式センサにおける故障の原因を抑える。
【0034】
本発明による装置は、好ましくは、前記水の圧力を測定するためのセンサを備える。
【0035】
水の圧力の値は、電流測定式センサによる塩素濃度の測定の品質の指標をもたらす。実際、水の圧力は、電流測定式の技法による塩素の測定を乱す傾向にある妨害因子である。例えば管の破損またはウォーターハンマに起因する圧力の急な変動が、塩素濃度の測定における誤差を引き起こす可能性がある。したがって、塩素濃度の測定に圧力の測定を組み合わせることで、測定された塩素濃度の値が実態に一致し、圧力の急な変動によって誤った値とされていないことを保証することができる。したがって、この実施例は、警報の早まった生成を防止する。
【0036】
本発明による装置は、前記水の導電率を測定するための手段を備える。
【0037】
水の導電率の値が、装置の汚損のレベルの指標をもたらす。この指標が、電流測定式センサによる塩素濃度の測定の品質を評価するために使用される。
【0038】
好ましくは、水の導電率を測定するための前記手段が、4つの電極を備える導電率センサを含む。
【0039】
実際、水の導電率の測定は、導電率センサの電極と水との間の接触の抵抗を明らかにする。本発明による装置の汚損は、導電率センサの汚損に相関し、導電率センサの汚損そのものは、接触抵抗に相関している。
【0040】
導電率センサは、この導電率の測定端子の接触抵抗がボーダーライン値に達したときに、「汚損した」と宣告される。導電率センサは、接触抵抗(CR)の値がシャント抵抗(SR)の値の2倍にほぼ等しい場合に、「清浄」であると考えられる。最大の汚損(100%)は、接触抵抗(CR)の値がシャント抵抗(SR)の値の3倍以上である場合と定義される。接触抵抗の測定からの導電率の測定は、いかなる飽和効果もないという利点を有する。換言すると、値の上側および下側の両方の段階において接触抵抗を正確に知ることが可能である。
【0041】
本発明の好ましい態様によれば、前記電流測定式塩素センサが、低周波信号で動作するセンサであり、前記導電率センサが、高周波信号で動作するセンサである。
【0042】
したがって、塩素センサおよび導電率センサが、周波数に関して切り離される。塩素センサによってもたらされる信号および導電率センサによってもたらされる信号が、お互いを乱すことがない。これは、装置の品質を向上させる。
【0043】
好ましくは、本発明による装置は、前記水の温度を測定するためのセンサを備える。
【0044】
すべての電気化学的測定は、酸化還元対を働かせるため、温度の測定は、電気化学的動態の変化に関連した電気信号を補正する。実際、濃度の測定をもたらす反応の機構は、温度に依存し、多くの場合、アレニウスの法則に従う。したがって、温度の変化を考慮に入れないと、センサの線形な応答を維持することが難しく、温度にかかわらず真の濃度を表わす応答曲線を得ることが困難である。
【0045】
有利な特徴によれば、本発明による装置は、前記センサによってもたらされるデータを処理するための手段と、該処理後のデータを有線および/または無線で送信するための手段とを備える。
【0046】
したがって、本発明による装置を、センサによってもたらされるデータの遠隔送信に使用することができる。したがって、それらのデータを遠方で分析することができる。したがって、装置が、データの処理(フィルタ処理、増幅)および送信のための手段だけを備え、分析手段は離れた場所に置かれる。結果として、本発明による装置が、わずかな空間しか占めない。電力の消費も少なくなり、したがって保守の局面の頻度が抑えられる。これらすべてが、本発明による装置の容易な設置に貢献する。特に、そのような装置を、ユーザの飲料水分配ネットワークに直接設置することができる。
【0047】
好ましくは、本発明による装置は、
・ 前記バイポテンショスタットと、電圧源と、前記処理手段と、前記送信手段とを収容する本体、および
・ 前記センサが搭載されたプリント回路基板が固定的に接続される着脱式のヘッド
を備え、
前記着脱式のヘッドを、前記本体から切り離すことが可能である。
【0048】
したがって、塩素センサの少なくとも1つが不良であることが検出された場合に、着脱式のヘッドを、例えばユーザ自身など、たとえ技術者でなくても、容易に交換することができる。
【0049】
前記処理手段は、好ましくは、前記センサによってもたらされるデータの最大値、最小値、および平均値を測定および記憶するための手段を備える。
【0050】
これは、限られた数の情報要素で測定の一貫性についての情報をもたらす。
【0051】
これは、情報要素が有線リンクを用いずに送信される場合に、きわめて有益である。
【0052】
さらに上述したように、本発明は、水の少なくとも1つの物理化学パラメータを測定するための方法であって、制御ステップを含む方法にさらに関する。
【0053】
好ましくは、前記制御ステップが、前記装置の汚損のレベルを監視するステップを含み、この汚損のレベルを監視するステップが、前記水の導電率を測定するステップを含む。
【0054】
有利には、前記制御ステップが、前記水の圧力を測定するステップを含む。
【0055】
実際、先行技術の技法においては、電流測定式の測定装置が、電解質へと沈められ、電解質に活性塩素だけを通す選択膜によって分析対象の液体から隔てられている。この装置は、以下の欠点を有する。すなわち、膜を通過する塩素の流れが、膜の上流および下流の間の圧力の差に依存する。したがって、測定対象の媒体における遊離塩素の濃度が同一であっても、センサの上流の圧力の変化で活性塩素の流れが変化し、圧力が考慮に入れられない場合、センサによって知覚される塩素濃度の変動につながる。
【0056】
5.図の一覧
本発明の他の特徴および利点が、あくまでも単なる説明用の例(これに限られるわけではない)として提示される好ましい実施形態についての以下の説明および添付の図面からさらに明確に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による装置の分解図である。
【図2】2つの電流測定式塩素センサの組み合わせを示す図である。
【図3】4電極式導電率センサの取り付けを示す図である。
【図4】本発明による装置のブロック図である。
【図5】本発明による装置のセンサの電力供給チャートを示す図である。
【図6】本発明による装置のセンサによってもたらされるデータの分析の期間についてのチャートを示す図である。
【図7】塩素センサによってもたらされる信号の分析についての概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
6.発明の一実施形態の説明
6.1.発明の原理の再確認
本発明の一般的原理は、水の品質が、その活性塩素濃度の測定およびこの目的のために備えられた電流測定式塩素センサの動作状態の監視によって管理される、革新的な手法に依拠している。監視は、より正確には、2つの別個の電流測定式塩素センサによって塩素濃度の二重の測定を実行し、2つの測定値の間の差を割り出すことによって、少なくとも一方のセンサにおける動作異常を検出することを含む。センサの動作異常の検出は、センサの経年劣化の指標であり、この指標により、センサの交換の判断を行うことが可能になる。
【0059】
本発明の技法は、塩素センサを最大限に使用することを可能にする。したがって、特に保守作業の頻度を少なくすることが可能になり、結果として本発明による測定装置の寿命を延ばすことが可能になる。
【0060】
活性塩素の二重の測定を、塩素濃度の測定の品質を制御するために、導電率および/または圧力の測定と組み合わせることもできる。
【0061】
本発明によれば、電流測定式塩素センサが、バイポテンショスタットに接続され、基準電極を共有する。これにより、機能の不確実さが軽減され、さらには測定装置が必要とする空間の大きさが削減されると同時に、測定装置の品質も改善される。
【0062】
6.2.本発明による装置の例
6.2.1.全体的な構成
図1〜6を参照し、本発明による測定装置の実施形態を説明する。
【0063】
そのような装置は、開放端11を備える筒状かつ中空の本体10を有している。ねじ部12が、開放端11から筒状の本体10の内面の一部へと延在している。
【0064】
電子基板13が、筒状かつ中空の本体10の内側に収容される。
【0065】
着脱式のヘッド14が、筒状の本体10に可逆に取り付けられるように設けられる。したがって、ヘッド14は、その一端に、ねじ部12の形状と相補的な形状を有するねじ部15を有している。
【0066】
平らなプリント回路基板16が、着脱式のヘッド14の他端に固定的に接続されている。複数のセンサが、COB(チップ・オン・ボード)技術として知られる技術によって、このプリント回路基板16に直接搭載されている。
【0067】
6.2.2.プリント回路基板およびセンサ
プリント回路基板16は、圧力センサ161、温度センサ162、導電率センサ163、および次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の2つの電流測定式センサ164を備えている。塩素の電流測定式センサは、当業者にとって周知の3電極センサであり、作用電極212、基準電極25、および補助電極211を備えている。2つの塩素センサの各々の3つの電極が、各々の塩素センサの作用電極の電位を一定のレベルに保つために使用される共通の電源/分極回路(以下では、バイポテンショスタットと称される)へと接続されている。換言すると、バイポテンショスタットが、各々のセンサの基準電極と作用電極との間に一定の電流を届けるために使用される。この電流が、センサが沈められた水に存在する塩素を還元する。塩素の還元により、各々の塩素センサの作用電極と補助電極との間を電流が通過する。この電流は、分析対象の水の次亜塩素酸の形態の活性塩素の濃度に比例する。
【0068】
図2に示されるとおり、2つの塩素センサ21、22は、一緒にバイポテンショスタットへと接続される。
【0069】
バイポテンショスタットは、比較器として搭載されたただ1つの演算増幅器を備えている。実際には、抵抗(本実施形態においては10キロオームに等しい)を介して2つの作用電極212に給電し、さらに基準電極25に給電する単一のポテンショスタットである。2つの統合チェーンが、2つの補助電極211に流れる電流を統合するために追加され、この電流が、分析対象の水の活性塩素濃度に比例する。演算増幅器23は、第1の入力24において基準電圧を受け取り、第2の入力において基準電極25から来る電圧信号を受け取り、各々の塩素センサの作用電極212に加えられる出力信号をもたらす。この実施形態においては10キロオームに等しい値であるこれらの抵抗が、電流を制限し、電極における過度の電圧を防止する。
【0070】
各々の塩素センサは、補助電極211をさらに有している。作用電極212の各々において、活性塩素濃度を割り出すべく電流が測定される。
【0071】
導電率センサは、当業者にとって周知の4電極センサである。したがって、以下でのさらに詳しい説明は省略する。
【0072】
しかしながら、図3に示されるように、そのような導電率センサが、2つの外部電極および2つの内部電極を有することを、思い出すことができる。したがって、その動作原理は、2つの外部電極の間に交流電圧を加え、2つの内部電極の端子において電圧を測定することから構成される。
【0073】
より具体的には、導電率センサは、以下のように機能する。高周波(例えば、1キロヘルツ)の交流電圧の発生器が、シャント抵抗として知られる2つの測定抵抗SRを通って、水媒体に配置された2つの注入電極IRの間に電流を生成する。1キロヘルツという同じ周波数の復調の後で、既知の値であるシャント抵抗SRの端子における電圧と、測定電極RIの端子における電圧とが測定される。次いで、測定端子RIの間の水の導電率および等価接触抵抗CRを計算することができる。水媒体における接触抵抗CRの値が大きいほど、装置の汚損のレベルが大であることに留意されたい。
【0074】
圧力および温度センサは、当業者にとって周知の古典的なセンサである。したがって、以下でのさらに詳しい説明は省略する。
【0075】
電気コネクタが、プリント回路基板16に搭載されている。これらのコネクタは、着脱式のヘッド14が筒状の本体10へと取り付けられるときに、電子基板13に搭載された相補的な形状のコネクタと協働するように設けられている。これらのコネクタが、センサと電子基板13との間の電気的接続をもたらす。
【0076】
6.2.3.電子基板
次に、図4を参照して、電子基板13の特定の実施形態を説明する。図示のとおり、電子基板13は、プリント回路基板16と協働する。
【0077】
電子基板13は、電子基板13に搭載された種々の構成部品に電力を供給するために使用されるDC/DC型の電圧レギュレータ42を有している。特定の一実施形態においては、このレギュレータ42に、外部の電源手段41によって電力が供給される。例えば、電源手段41は、3〜5ボルトの電圧を届けるために使用される電池(または、一式の電気セル)を備える。電池の形状および寸法は、筒状かつ中空の本体10への収容が可能であるような形状および寸法である。
【0078】
電子基板は、電圧レギュレータ42と協働する中点調節器43(例えば、1.5ボルトの値を有する)を有している。
【0079】
電子基板は、マイクロコントローラ44をさらに有し、マイクロコントローラ44の動作は、水晶クロックによって制御される。マイクロコントローラ44は、以下を備えている。
・ プリント回路基板16の種々のセンサからのデータが保存されるEEPROM型のメモリ45。
・ 塩素センサ21、22および導電率センサ53からのデータを、マイクロコントローラ44によって利用することができるデータへと変換するための変換手段。マイクロコントローラが、この変換手段を通じて塩素および導電率センサを制御できることにも、注目することができる。この変換手段は、例えばアナログ/デジタル変換器および/またはデジタル/アナログ変換器46を含んでいる。特定の一実施形態においては、変換手段46が、3つの入力を備えている。入力のうちの2つが、2つの電流測定式塩素センサ21、22および基準電極25が接続されたバイポテンショスタットPOT1、POT2へと接続される。これら2つの入力がそれぞれ、2つの塩素センサの各々によってもたらされる電流(水の塩素濃度に比例する)を受け取ることを可能にする。アナログ/デジタル変換器の第3の入力は、入力が導電率センサ53へと接続された増幅器の出力へと接続される。
・ マイクロコントローラが圧力センサおよび温度センサとの通信を行う同期シリアルポート47。特定の一実施形態においては、電子基板13が、マイクロコントローラと圧力および温度センサとの間に搭載された制御回路50を有している。この制御回路は、膜圧力センサの動作を管理する。分析対象の水の圧力に起因する膜の変形が、ホイートストンブリッジのピエゾ抵抗器によって測定される。この目的のために、制御回路が、ホイートストンブリッジへと電流を注入し、水の圧力に比例するブリッジの電圧の不釣り合いを測定するために使用される。
・ マイクロコントローラが例えばRS−232型などのコネクタ49を介して接続された外部の通信手段との通信を行う非同期シリアルポート48。特定の一形式においては、電子基板13が、マイクロコントローラとコネクタ49との間に搭載された電気絶縁手段を有している。
・ マイクロコントローラ44のソフトウェアを何度もロードできるようにする内部フラッシュコネクタ。
【0080】
電気切り離し手段を、圧力および温度センサにも設けることが可能である。
【0081】
スイッチ(図示されていない)が、装置をオンにするために使用される。
【0082】
電気コネクタが、電子基板13に搭載されている。これらのコネクタは、着脱式のヘッド14が筒状の本体10へと取り付けられるときに、プリント回路基板16に搭載された相補的な形状のコネクタと協働するように設計されている。
【0083】
6.3.本発明による装置の動作
6.3.1.全体的な動作
本発明による装置を、ユーザの家庭の飲料水の分配管へと直接接続することが可能である。特に、プローブのヘッドが管内を流れる水へと沈められるようなやり方で、分配管へと固定的に接続することが可能である。
【0084】
装置がスイッチの操作によって起動させられるとき、マイクロコントローラ44が、塩素、導電率、圧力、および温度の各センサの作動を生じさせる。
【0085】
図4に示されている実施形態においては、塩素センサが、1〜5Hzの範囲(好ましくは、3Hzの範囲)の低周波信号で動作し、導電率センサが、500〜5000Hz(好ましくは、800〜1200Hz)の範囲のより高い周波数の信号で動作する。このように、塩素および導電率センサは、周波数に関して切り離されている。これにより、塩素センサおよび導電率センサによって送り出される信号が互いを阻害することが防止される。
【0086】
図5に示されるように、2つの塩素センサ(塩素21および塩素22)、温度センサ、および圧力センサには、電流が連続的に供給される。対照的に、導電率センサへの供給は、周期的である。これにより、圧力センサへのノイズの原因となる可能性がある、かつ実施においてエネルギーを大量に消費する導電率センサの負の影響が軽減される。
【0087】
電流測定式塩素センサの各々が、分析対象の水中の次亜塩素酸の形態の活性塩素の濃度を表わす電圧を測定するために使用される。
【0088】
導電率センサが、着脱式のヘッドにおける分析対象の水の導電率を表わす電圧を測定する。
【0089】
塩素センサおよび導電率センサによってもたらされる信号が、マイクロコントローラの変換手段46へと伝えられ、次いでマイクロコントローラによって処理される。圧力および温度センサによってもたらされる信号も、マイクロコントローラの変換手段へと伝えられ、次いでマイクロコントローラによって処理される。
【0090】
マイクロコントローラは、塩素センサおよび導電率センサによってもたらされる信号をフィルタ処理および増幅する。また、マイクロコントローラは、圧力センサおよび温度センサによってもたらされる信号もフィルタ処理および増幅する。フィルタ(この実施形態においては、低域通過フィルタである)が、特定の数の測定値の平均を得ることを可能にする。これにより、高周波のノイズが取り除かれ、信号の変動を知る可能性がもたらされる。
【0091】
図6が、種々のセンサの交互の動作の順序および種々のセンサからの信号のマイクロコントローラによる処理を示している。特に、2つの塩素センサによってもたらされる信号が、同時に分析される。導電率センサによってもたらされる信号は、塩素センサの信号の分析が中断しているときに分析される。圧力および温度センサによってもたらされる信号は、塩素センサの信号の分析の期間外かつ導電率センサからの信号の分析の期間に重なって、同時に分析される。これにより、センサからの種々の信号の間で、時分割多重化の使用によってアナログ結合が抑えられ、周波数分割多重化およびマイクロコントローラにおける分析の多重化の使用によってデジタル結合が抑えられる。
【0092】
頻度が6秒〜1時間の範囲であってよい測定値の取得の種々のモードが存在する。通常モードにおいては、10分間の期間の間、マイクロコントローラが各々のセンサによって送信される信号を収集および処理する。一変形においては、ターボモードを作動させることができる。このモードにおいては、マイクロコントローラが、1分間の期間において各々のセンサによって送信される信号を収集および処理する。
【0093】
一実施形態においては、マイクロコントローラが、1時間ごとに、先行する1時間の間にセンサによって送信された各々の信号の平均値の計算を行う。24時間の継続期間について、マイクロコントローラが、過去の動作時間の間に各々のセンサによって送信された信号の平均値、最大値、および最小値を記憶する。
【0094】
処理および保存された情報が、マイクロコントローラの送信手段へと伝えられる。次いで、マイクロコントローラは、例えばMODBUSプロトコルのもとで動作するRS232型のバスであってよい有線シリアルバスによって、これらの変換および処理済みの情報を送信する。
【0095】
これらの情報は、
・ 有線リンクへと直接接続され、オペレータまたは任意の他のローカルユーザによって操作されるコントローラまたはPCへとローカルに送信され、あるいは
・ 複数センサプローブから離れて中央集中的なやり方で遠方の専門家サービス(例えば、飲料水の供給者)によって分析されるよう、このデータを遠方の中央サーバへと送信する選択された適切な(例えば、GSM(登録商標)またはGPRS式の)プロトコルを使用する無線通信システムへとローカルに送信される。
【0096】
例えばオン・クロック・モードおよびオン・イベント・モードなど、いくつかの頻度および通信のモードが考えられる。
【0097】
オン・クロック・モード:情報の送信の頻度は、1時間から1日まで、さまざまであってよい。
【0098】
オン・イベント・モード:例えば、所定のしきい値を下回る水の品質が検出された場合や、センサの異常が検出された場合に、プローブがターボモードに移行し、計画による期間の外部でデータを含むメッセージを自発的に送信する。
【0099】
6.3.2.塩素センサの実施
各々の塩素センサが、分析対象の水の活性塩素濃度を表わす電圧の測定を可能にする。
【0100】
2つの塩素センサを備えることで、図7に示される原理に従って、塩素センサの動作状態を監視することが可能になる。
【0101】
塩素センサ21によってもたらされる信号1および塩素センサ22によってもたらされる信号2が、低域通過フィルタによってフィルタ処理され、低い頻度(例えば、6秒ごと)で分析される。これらの信号が、マイクロコントローラによって塩素濃度の上側および下側しきい値と比較される。次いで、このマイクロコントローラが、各々のセンサについて、測定値がしきい値よりも上または下であるか否かに応じて、「塩素過剰」または「塩素不足」タイプの情報をもたらすことができる。この実施例は、基準を外れる塩素レベルについて素速く警報を生じさせることができる。
【0102】
水中に溶存する活性塩素の濃度の上側および下側のしきい値の値は、センサが使用される用途の種類、国、および/または地域に応じて定められる。例えば、フランスにおける水泳プールの水の用途については、水中に溶存する活性塩素の上側のしきい値を、5ppmに設定することができる。フランスにおける飲料水の用途の場合には、センサが測定対象の飲料水の消費場所のすぐ近くの配管に配置される場合に、水中に溶存する活性塩素の上側および下側のしきい値を、それぞれ0.2ppmまたは0.3ppmに設定できる一方で、センサが飲料水製造プラントからの出口の配管に配置される場合に、水中に溶存する活性塩素の上側および下側のしきい値を、それぞれ0.5ppmおよび0.7ppmに設定できる。
【0103】
また、塩素センサ21によってもたらされる信号1および塩素センサ22によってもたらされる信号2は、高域通過フィルタによってもフィルタ処理され、より高い頻度(例えば、6分ごと)で分析される。これらの信号が、2つのセンサによって測定された平均の塩素濃度を表わす信号を送信できるよう、マイクロコントローラによって足し合わせられる。さらに、これらの信号は、塩素センサの動作異常を検出するために、マイクロコントローラによって互いに引き算される。
【0104】
特に、マイクロコントローラが、第1の塩素センサ21によってもたらされる第1の信号1と、第2の塩素センサ22によってもたらされる第2の信号2との間の差を計算する。次いで、この差の値が、マイクロコントローラによって上側および下側の基準値と比較される。この実施形態においては、上側の値が8シグマに等しく、下側の値が−8シグマに等しい。差が上側の値よりも大きい場合、第2のセンサによってもたらされた信号が誤っている。差が下側の値を下回る場合、第1のセンサによってもたらされた信号が誤っている。どちらの場合も、着脱式のヘッドを交換する必要がある。
【0105】
塩素センサの監視を最適化することができる。この目的のために、マイクロコントローラは、計算された差について、例えば最新の10回の測定についての差の平均に対する変動を分析することができる。この変動は、ノイズと称される。
【0106】
ノイズがゼロに等しい場合、装置が全体的な故障を被り、センサが信号を送信していないと推定することができる。ノイズが平均値の半分である場合、一方のセンサが信号を生じていないと推定することができる。ノイズが上側または下側の基準値を超える場合、2つの塩素センサの一方または両方が不良であると推定できる。
【0107】
6.3.3.装置によって送信される情報
本発明による装置は、いくつかの情報をもたらす。
・ 水中の活性塩素濃度を表わす少なくとも1つの情報。各々の塩素センサによってもたらされてフィルタ処理および増幅された信号であってよく、あるいは2つの塩素センサによってもたらされてフィルタ処理および増幅された信号の和であってよい。
・ 着脱式のヘッドの位置における水の導電率を表わす情報。導電率センサの内部電極の間で測定されてフィルタ処理および増幅された電圧。
・ 水の温度を表わす情報。温度センサによってもたらされてフィルタ処理および増幅された電圧。
・ 水の圧力を表わす情報。圧力センサによってもたらされてフィルタ処理および増幅された電圧。
・ 塩素センサの状態を表わす少なくとも1つの情報。2つの塩素センサによってもたらされてフィルタ処理および増幅された信号の間の差、および/または着脱式のヘッドの交換の必要性の知らせ。
【0108】
一変形においては、電池の充電の水準を表わす情報も、もたらすことが可能である。
【0109】
次いで、これらの情報は、遠方のサーバにおいて濃度、導電率、圧力、および温度の値へと変換される。これらの変換がマイクロコントローラによって直接実行されるのではないため、測定装置の電気の消費が少なくなり、したがって保守の作業を必要とすることなくより長い時間にわたって動作することができるという事実に、留意されたい。
【0110】
送信される情報は、活性塩素濃度の1つ(または、2つ)の値(単位は、mg/L)、圧力(単位は、bar)、導電率(単位は、マイクロジーメンス)、温度(単位は、℃)、汚損の指標(%)、および電池の水準の指標(0〜10単位)である。
【0111】
プローブは、例えば以下の信号を送信する。
・−3〜3ppmの溶存活性塩素について、1刻みで−300〜300までの活性塩素の数値の2倍。
・100〜600マイクロジーメンスについて、1刻みで100から600まで。
・0〜10barについて、1刻みで0から10000まで。
・0〜40℃について、1刻みで0から400まで。
・3.2V〜4.5Vの電池の値について、1刻みで320から450まで。
・0〜100%の導電率センサの汚損の値について、1刻みで0から100まで。
【0112】
各々の塩素センサによって測定される電圧は、水中の塩素の濃度が0であるとき、1.5ボルトに等しい。この電圧は、塩素濃度がゼロでなくなるとき、3ボルトという最大電圧に向かって増加する。したがって、1.5〜3ボルトの間で、例えば調節可能な感度によって0〜300ppmの範囲の塩素濃度を測定することが可能である。
【0113】
しかしながら、センサが不良であり、あるいは漏れ電流が存在する場合には、もたらされる電圧が、例えば1ボルトまたはそれ以下に低下する可能性がある。これは、プローブの計算プログラムにおいて、例えば−200または−2ppmなどといった負の「仮想の」塩素レベルに相当し、センサまたは測定電極の誤りを示している。
【0114】
本発明による装置から受信器(例えば、携帯電話機)へと送信される情報は、ASCII文字に符号化される。
【0115】
一変形においては、変換がマイクロコントローラによって直接行われるように計画することができる。
【0116】
別の変形においては、プローブが、着脱式のヘッドの交換の必要性を知らせる信号を送信するのではなく、塩素センサによってもたらされた電圧の間の差を送信し、さらには/あるいはノイズを送信する。遠方のサーバが、このデータを着脱式のヘッドの交換の必要性の知らせへと変換する。
【0117】
6.4.本発明による方法の例
本発明による装置を、例えば飲料水などの水の品質を測定することを含む方法において実現することができる。
【0118】
本発明による方法は、前記第1および第2のセンサによって水中の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を割り出すステップを含む。また、次亜塩素酸の形態の活性塩素の濃度の測定値を検査するステップを含むという独自の特徴を有している。
【0119】
塩素濃度を割り出すステップは、本発明の装置によって送信される塩素濃度を表わす信号を収集することを含む。この信号は、水の塩素濃度の直接的な指標であってよく、あるいは変換後に塩素濃度の値を知ることを可能にするこの濃度に比例する信号(2つのセンサによってもたらされる電圧の和)であってよい。
【0120】
制御ステップは、センサの動作状態を監視するステップを含む。ただいま説明したとおり、この監視ステップは、
・ 第1の塩素センサによって水中の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を表わす第1の情報(前記センサによってもたらされる電圧)を測定する第1のステップ、および前記第1のステップと同時に実行され、第2の塩素センサによって水中の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を表わす第2の情報(前記センサによってもたらされる電圧)を測定する第2のステップ、
・ 活性塩素の濃度を表わす前記第1および第2の情報の間の差を割り出すステップ(マイクロコントローラによって実行される計算)、ならびに
・ 前記差の値を下側基準値および上側基準値に対して比較するステップ(マイクロコントローラによって行われる比較)
を含む。
【0121】
注意として、この差が上側基準値よりも大きい場合、第2のセンサによってもたらされた信号が誤りである。この差が下側基準値を下回る場合、第1の基準センサによってもたらされた信号が誤りである。これらのどちらの場合も、着脱式のヘッドの交換が必要であり、装置がその旨の情報を送信する。
【0122】
一変形においては、差および/またはノイズの基準との比較を、制御を担当するオペレータが直接行うことができる。
【0123】
このように、本発明の技法は、塩素センサの最大限の使用を達成できるようにする。実際、塩素センサの寿命はさまざまである。伝統的に、塩素センサは、使用されるセンサが機能できる状態であることを常に保証するために、最短の理論上の寿命に相当する期間だけ使用されている。すなわち、塩素センサは、定期的に交換されている。これは、センサについて頻繁な作業を要求し、追加のランニングコストを引き起こす。交換が、まだ動作できる状態にあるときに行われる可能性がある。
【0124】
本発明によれば、塩素センサの状態の検査によって、塩素センサがもはや機能できない状態となる正確な瞬間を検出することが可能になる。したがって、その瞬間に交換を行えばよい。このように、本発明の技法は、塩素センサを最大限まで使用し、交換を遅らせることを可能にする。したがって、保守作業の頻度が少なくなり、結果として本発明による測定装置の寿命が向上する。
【0125】
したがって、このような手法は、本発明による装置をユーザの敷地に設置する可能性につながる。その結果、水の各々の分配点において、水の品質の水準を正確に知り、分配ネットワークにおける問題(存在すれば)を検出することが可能になる。
【0126】
この実施形態において、制御ステップは、装置の汚損のレベルを監視するステップをさらに含む。汚損のレベルを監視するこのステップは、水の導電率を測定するステップを含む。
【0127】
本発明の発明者は、着脱式のヘッドにおける水の導電率が、装置の汚損のレベルについての指標をもたらし、したがって装置がもたらす情報の質の水準についての指標をもたらすことを発見した。このように、装置の汚損のレベルが高い場合、水中の塩素濃度について装置がもたらす情報が、現実に沿っていない可能性が高い。
【0128】
導電率センサは、この導電率の測定端子の接触抵抗がボーダーライン値に達したときに、「汚損した」と称される。導電率センサは、接触抵抗(CR)の値がシャント抵抗(SR)の値の2倍にほぼ等しい場合、「清浄」であると考えられる。最大の汚損(100%)は、接触抵抗(CR)の値がシャント抵抗(SR)の値の3倍以上である場合と定義される。
【0129】
この実施形態において、制御ステップは、前記水の圧力を測定するステップを含む。
【0130】
本発明の発明者は、水の圧力の値が、水中の塩素の濃度の測定の品質についての指標をもたらすことも実際に発見した。
【0131】
6.5.利点
本発明の技法は、多数の利点を有している。
【0132】
特に、本発明を実施することで、保守作業の頻度が抑えられる。本発明による装置の寿命が、約1年である一方で、先行技術の装置の寿命が6ヵ月を超えることはまれである。したがって、本発明による装置は、技術者の介入を必要とする保守作業の回数が少ないため、ユーザの家庭に直接設置することが可能である。
【0133】
さらに、本発明の技法は、コンパクトな測定装置をもたらす。特に、塩素センサを一緒に接続することで、装置に含まれる構成部品の数が少なくなる。したがって、決して空間の要件を増大させることなく、装置に、より長い寿命を持たせることが可能である。これは、本発明による装置をユーザの家庭に直接設置することを可能にすることにも貢献する。
【0134】
また、本発明の技法は、高い水準の精度ももたらす。塩素センサの状態を監視することで、機能できる状態のセンサが使用されることが保証される。2つのセンサを一緒に組み合わせることで、備えられる電子部品の数が抑えられ、したがって塩素の測定の不確実さが抑えられる。さらに、装置の汚損のレベルを管理することで、塩素濃度の測定の正確さについての情報を得ることが可能になる。圧力の測定も、塩素濃度の測定の正確さの指標である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を測定するための手段を備え、水の少なくとも1つの物理化学パラメータを測定する装置であって、
塩素濃度を測定するための前記手段が、次亜塩素酸HOClの形態の塩素の第1および第2の電流測定式センサ(21、22)を備え、該2つの電流測定式塩素センサ(21、22)の各々が信号をもたらし、該2つの電流測定式塩素センサ(21、22)が、ただ1つの共通の基準電極(25)を有し、バイポテンショスタットへと接続され、
当該装置が、
前記第1および第2の電流測定式センサ(21、22)を同時に働かせるための手段と、
前記2つのセンサ(21、22)によってもたらされる信号の間の差を測定するための手段と
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記水の圧力を測定するためのセンサ(161)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記水の導電率を測定するための手段を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
水の導電率を測定するための前記手段が、4電極の導電率センサ(163)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記電流測定式塩素センサ(21、22)が、低周波数の信号によって動作するセンサであり、前記導電率センサ(163)が、高周波数の信号によって動作するセンサであることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記水の温度を測定するためのセンサ(162)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記センサ(21、22、161、162、163)によってもたらされるデータを処理するための手段と、該処理後のデータを有線および/または無線で送信するための手段とを備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記バイポテンショスタットと、電圧源と、前記処理手段と、前記送信手段とを収容する本体(10)と、
前記センサ(21、22、161、162、163)が搭載されたプリント回路基板が取り付けられる着脱式のヘッド(14)と、
を備え、
前記着脱式のヘッド(14)を、前記本体(10)から切り離すことが可能であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記処理手段が、前記センサ(21、22、161、162、163)によってもたらされるデータの最大値、最小値、および平均値を測定および記憶するための手段を好ましくは備えていることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の装置を備えることによって水の少なくとも1つの特性を測定するための方法であって、
前記第1および第2のセンサ(21、22)によって前記水の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を測定するステップと、
次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度の前記測定を制御するステップと、
を含んでおり、
前記制御するステップが、前記センサ(21、22)の動作状態を監視するステップを含んでおり、該監視するステップが、
前記第1のセンサ(21)によって前記水の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を表わす第1の情報を測定する第1のステップ、および前記第1のステップと同時に実行され、前記第2のセンサ(22)によって前記水の次亜塩素酸HOClの形態の活性塩素の濃度を表わす第2の情報を測定する第2のステップと、
前記濃度を表わす前記第1および第2の情報の間の差を割り出すステップと、
前記差の値を少なくとも1つの基準値と比較するステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記制御するステップが、前記装置の汚損のレベルを監視するステップを含み、該汚損のレベルを監視するステップが、前記水の導電率を測定するステップを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記制御するステップが、前記水の圧力を測定するステップを含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−532329(P2012−532329A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518972(P2012−518972)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059671
【国際公開番号】WO2011/003923
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(503289595)ヴェオリア・ウォーター・ソリューションズ・アンド・テクノロジーズ・サポート (25)
【Fターム(参考)】