説明

水中ポンプ

【課題】水中モータを確実に冷却可能な水中ポンプを提供すること。
【解決手段】複数のインペラを収納する多段ポンプ13と、多段ポンプ13の最上段に接続され、多段ポンプ13で増圧した水を二次側に供給する吐出ケーシング14と、多段ポンプ13の最下段に接続され、多段ポンプ13内に水を供給する吸込ケーシング11と、吸込ケーシング11に接続された水中モータ10と、吸込ケーシング11及び水中モータ10を覆うとともに、水中モータ10とその内周面との間の隙間を所定の断面積とする流路部材17と、を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸等に設置される水中ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、井戸等で水や温泉水、海水等の湯水を揚水するポンプとして、井戸用の水中ポンプが知られている(例えば特許文献1)。このような水中ポンプは、回転軸に所定の間隔で複数のインペラを固定し、これらインペラをケーシング内にそれぞれ収納させることで、ポンプが多段に連結される構成である。
【0003】
このような水中ポンプは、水中モータの上部に多段ポンプが配置される構成である。このため、水中ポンプは、水中モータの上部から水を吸込む構成である。しかし、水中モータは、その冷却を周囲の水により冷却を行うため、当該水中モータの周囲を流れる水の最低流速が決められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−8791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した水中ポンプでは、以下の問題があった。即ち、上述した井戸用の水中ポンプにおいては、水中モータの周囲を流れる水の流速を水中モータを冷却可能な最低流速とするために、水中モータの外面と井戸の内周面との間隔を所定の間隔として、当該水中モータ及び井戸の内周面との間の水の流路を所定の断面積とする必要がある。
【0006】
例えば、流路断面積が所定の断面積以上となると、水中モータの周囲を流れる水の流速が最低流速よりも遅くなり、水中モータの冷却が適切に行えなくなる虞がある。
【0007】
このため、水中モータの下方の水が多段ポンプの吸込部へと流れるに際し、水中ポンプと井戸との間の流路が最低流速以上となる断面積とするために、水中ポンプは、使用可能な井戸の内径が制限される、という問題があった。
【0008】
そこで本発明は、水中モータを確実に冷却可能な水中ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の水中ポンプは、次のように構成されている。
【0010】
本発明の一態様として、複数のインペラを収納する多段ポンプと、前記多段ポンプの最上段に接続され、前記多段ポンプで増圧した水を二次側に供給する吐出ケーシングと、多段ポンプの最下段に接続され、前記多段ポンプ内に水を供給する吸込ケーシングと、前記吸込ケーシングに接続された水中モータと、前記吸込ケーシング及び前記水中モータを覆うとともに、前記水中モータとその内周面との間の隙間を所定の断面積とする流路部材と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水中モータを確実に冷却可能な水中ポンプを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る水中ポンプの構成を一部断面で示す説明図。
【図2】同水中ポンプに用いられるフランジの構成を示す上面図。
【図3】本発明の変形例に係る水中ポンプの構成を一部省略して断面で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る水中ポンプ1を、図1及び図2を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係る水中ポンプ1の構成を一部断面で示す説明図、図2は水中ポンプ1に用いられる第1フランジ部23の構成を示す上面図である。なお、図1、2中、Bはボルトを、Fは流体の流れを、Nはナットを、Pはシール部材を、Vは井戸を、Wは井戸水を、それぞれ示している。
【0015】
図1に示すように、水中ポンプ1は、例えば、井戸Vに配置される井戸用水中ポンプであり、少なくともその一部が井戸V内の流体、例えば井戸水Wの水面下に位置する。水中ポンプ1は、水中モータ10と、吸込ケーシング11と、多段ポンプ13と、吐出ケーシング14と、固定バンド15と、電源ケーブル16と、流路部材17と、第1ストレーナ18と、を備えている。
【0016】
水中モータ10は、電源ケーブル16を介して外部電源に接続されている。この水中モータ10は、水中モータ10の駆動軸が、例えば継手等を介して多段ポンプ13の回転軸に接続されている。
【0017】
吸込ケーシング11は、水中モータ10の上部に設けられ、多段ポンプ13の最下段に接続される。吸込ケーシング11は、略円筒状に形成されるとともに、その下部に水中モータ10の外郭部材(モータケーシング)とボルト等により組み付く。吸込ケーシング11は、井戸水を多段ポンプ13に吸込む吸込口を有している。また、吸込ケーシング11は、その吸込口を覆って第1ストレーナ18が設けられる。
【0018】
多段ポンプ13は、吸込ケーシング11の上部に固定された複数のケーシング13aと、複数のケーシング13aの内部に亘って延設された回転軸と、回転軸に固定されケーシング13aにそれぞれ収納される複数のインペラと、を備えている。
【0019】
吐出ケーシング14は、例えば固定バンド15の他方が固定されるとともに、多段ポンプ13の最上段に接続される下部ケーシング21と、この下部ケーシング21にボルトB等により結合され、吐出配管等に接続される上部ケーシング22とを備えている。また、吐出ケーシング14は、上部ケーシング22に設けられ、流路部材17の一部を成す第1フランジ部23を備えている。
【0020】
図2に示すように、第1フランジ部23は、円盤状に形成され、少なくとも水中モータ10、吸込ケーシング11、多段ポンプ13、吐出ケーシング14及び固定バンド15の外面よりも径方向に延出するように、大径に形成される。
【0021】
また、第1フランジ部23は、少なくとも一つの切欠部24が形成されている。この切欠部24は、第1フランジ部23の外周面からその中心に向かって、後述する流路部材17の流路管32の内周面よりも内側まで切欠され、電源ケーブル16を挿通可能に形成されている。なお、図2においては、第1フランジ部23は、切欠部24を2つ有する構成を用いて説明する。
【0022】
固定バンド15は、帯状のバンド部65と、その両端にナットNにより締結可能に形成されたねじ部66とを有している。この固定バンド15は、吸込ケーシング11、ケーシング13a及び吐出ケーシング14を固定可能、且つ、ねじ部66及びナットNにより、吸込ケーシング11及び吐出ケーシング14に固定可能に形成されている。
【0023】
電源ケーブル16は、水中モータ10に接続されている。電源ケーブル16は、流路部材17内部の水中モータ10から第1フランジ部23の切欠部24を挿通して外部電源に接続される。
【0024】
流路部材17は、第1フランジ部23と、第1フランジ部23にボルトB等の締結部材により、ガスケット等のシール部材Pを介して固定される第2フランジ部31と、第2フランジ部31にその一方の端部が固定された流路管32と、流路管32の他方の端部に固定された第3フランジ部33と、を備えている。
【0025】
第1フランジ部23は、第2フランジ部31が接続することで、切欠部24が、第2フランジ部31及び流路管32により一部が閉塞され、他部が流路管32内に対向して開口する。第1フランジ部23は、当該開口する切欠部24により電源ケーブル16を流路管32内から第1フランジ部23を介して外部に延出可能に形成されている。
【0026】
第2フランジ部31は、その中心側が開口し、流路管32が固定される。流路管32は、第2フランジ部31に固定される。流路管32は、円筒状の管状部材であって、多段ポンプ13、吸込ケーシング11及び水中モータ10の延設方向に沿って設けられる。流路管32は、その内部に水中モータ10、吸込ケーシング11、多段ポンプ13、吐出ケーシング14及び固定バンド15を収納可能、且つ、水中モータ10の外径と所定の隙間を形成する内径に形成されている。ここで、所定の隙間とは水中モータ10の側面の水の流れが最低流速を確保できる隙間である。
【0027】
即ち、流路管32は、その内周面と水中モータ10の外周面との隙間の開口により、吸込ケーシング11から吸込まれる水の流路を形成するとともに、当該開口を通過する水の流速が水中モータ10を冷却可能な最低流速となる断面積となるように形成されている。
【0028】
また、流路部材17は、第3フランジ部33にボルトB等の締結部材により固定される第4フランジ部41が固定され、第3フランジ部33及び第4フランジ部41の間に複数の孔部を有し、異物を遮断して水を通過可能な第2ストレーナ42が設けられる。
【0029】
第1ストレーナ18は、吸込ケーシング11内に吸込まれる水に含有される異物を遮断可能に形成されている。
【0030】
このように構成された水中ポンプ1は、電源ケーブル16を介して水中モータ10に電力が供給されると、水中モータ10内の回転子が回転し、当該回転に追従して回転軸が回転する。この回転軸の回転により、複数のケーシング13a内のインペラが回転し、ケーシング13a内の水を増圧し、吐出ケーシング14から水中ポンプ1の二次側へと送水する。
【0031】
また、多段ポンプ13によりその内部の水が圧送されると、一次側が低圧となることから、吸込ケーシング11に水が流入するため、井戸V内から吸込ケーシング11間での水の流れが発生する。この水の流れとしては、井戸V中から、第4フランジ部41を介して流路管32内に進入し、流路管32と水中モータ10との間の流路を通過して、吸込ケーシング11に移動する。また、この移動の際に、通過する水が水中モータ10の外表面と熱交換を行うことで、水中モータ10が冷却される。
【0032】
このように構成された水中ポンプ1によれば、水中モータ10と流路管32との間の隙間(開口)により、井戸Vから吸込ケーシング11までの流路が形成される。また、水中モータ10と流路管32との流路の面積は、流路管32の内径により管理することが可能となるため、当該流路を流れる水の流速を所定の流速とすることが可能となる。
【0033】
即ち、当該流路の面積によって、水中モータ10が冷却可能な流速とすることで、確実に水中モータ10を冷却することが可能となる。
【0034】
また、水中ポンプ1は、水中モータ10の冷却が確実に行うことが可能となることで、井戸Vの内径によらずに水中ポンプ1を用いることが可能となり、汎用性が向上する。
【0035】
さらに詳しく説明すると、水中ポンプ1に用いられる水中モータ10は、その駆動により発生する熱を、井戸水Wにより熱交換を行い冷却する構成である。このため、水中モータ10は、その据付条件として、水中モータ10の側面を流れる水の最低流速が決められている。従来では、水中モータ10と井戸Vとの隙間を流路としていたことから、水中ポンプは、井戸Vの内径が所定の内径の場合にのみ据付が可能であった。井戸Vの内径が、所定の内径よりも大径の井戸Vに据え付けると、水中モータ10の周囲の流速が所定の流速よりも低くなり、結果、冷却不足による水中モータ10の温度の異常上昇にもなる。
【0036】
本実施形態の水中ポンプ1は、水中モータ10の周囲の流速を、水中モータ10及び流路管32の隙間により所定の流速が確保できるため、井戸Vの内径によらず水中ポンプ1の据付が可能となる。
【0037】
また、水中ポンプ1は、第1フランジ部23に切欠部24を設けるとともに、第2フランジ部23及び流路管32により、切欠部24の一部を閉塞することで、流路管32内に対向する切欠部24の部位のみが開口することとなり、当該部位から電源ケーブル16を外部に延出させることが可能となる。
【0038】
また、水中ポンプ1は、第1ストレーナ18及び第2ストレーナ42を有する構成とすることで、流路管32内及び多段ポンプ13内に異物が進入することを防止可能となる。
【0039】
上述したように本発明の一実施の形態に係る水中ポンプ1によれば、水中モータ10と流路管32とにより水中モータ10の周囲の流速を所定の流速とすることで、井戸Vの内径によらず据付が可能、且つ、確実に水中モータ10を冷却可能となる。
【0040】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した例では、水中ポンプ1は、吸込ケーシング11に第1ストレーナ18を設け、流路部材17の第4フランジ部41に第2ストレーナ42を設ける構成としたがこれに限定されない。異物が多段ポンプ13内に侵入することを防止可能であればよく、第1ストレーナ18及び第2ストレーナ42の一方であってもよい。
【0041】
また、上述した例では、流路管32を一つ有する構成を説明したがこれに限定されない。即ち、水中ポンプ1は、流路管32により、水中モータ10との間に所定の断面積の流路を形成可能であればよく、流路管32を複数有する構成であっても良い。
【0042】
第4フランジ部41に第2ストレーナ42でなく、流路管32をさらに設ける構成であってもよい。また、第2フランジ部31及び第3フランジ部33の間に複数の流路管32を設ける構成であってもよい。
【0043】
さらに詳しく述べると、図3に示す変形例のように、例えば、第2フランジ部31及び第3フランジ部33を両端に有する流路管32を複数用い、多段ポンプ13の段数や水中モータ10の長さに応じて適宜単数から複数の流路管32を第2フランジ部31及び第3フランジ部33を接続する構成であっても良い。なお、流路管32は、異なる長さのものを用いても良い。
【0044】
このような構成とすることで、多段ポンプ13の段数によって多段ポンプ13の長さが変更になっても、複数の流路管32を組み合わせることで対応可能となり、汎用性が向上する。特に、多段ポンプ13は、顧客要望や使用条件等によりその段数や長さが変更になることもあるが、流路管32を複数組み合わせることで、様々な長さの多段ポンプ13を用いたものであっても対応が可能となり、管理コストの低減及び汎用性の向上にもなる。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…水中ポンプ、10…水中モータ、11…吸込ケーシング、13…多段ポンプ、13a…ケーシング、14…吐出ケーシング、15…固定バンド、16…電源ケーブル、17…流路部材、18…ストレーナ、21…下部ケーシング、22…上部ケーシング、23…第1フランジ部、24…切欠部、31…第2フランジ部、32…流路管、33…第3フランジ部、41…第4フランジ部、42…ストレーナ、65…バンド部、66…ねじ部、B…ボルト、N…ナット、P…シール部材、V…井戸、W…井戸水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインペラを収納する多段ポンプと、
前記多段ポンプの最上段に接続され、前記多段ポンプで増圧した水を二次側に供給する吐出ケーシングと、
多段ポンプの最下段に接続され、前記多段ポンプ内に水を供給する吸込ケーシングと、
前記吸込ケーシングに接続された水中モータと、
前記吸込ケーシング及び前記水中モータを覆うとともに、前記水中モータとその内周面との間の隙間を所定の断面積とする流路部材と、
を備えることを特徴とする水中ポンプ。
【請求項2】
前記流路部材は、
前記吐出ケーシングに設けられた第1フランジ部と、
前記多段ポンプ、前記吸込ケーシング及び前記水中モータの延設方向に沿って設けられた円筒状の流路管と、
前記流路管の一方の端部に設けられ、前記第1フランジ部と接続される第2フランジ部と、
を特徴とする請求項1に記載の水中ポンプ。
【請求項3】
前記流路部材は、前記流路管の他端に他の流路部材の第2フランジ部と接続可能な第3フランジ部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の水中ポンプ。
【請求項4】
前記吸込ケーシング及び前記流路管の他端の少なくとも一方にストレーナを有することを特徴とする請求項1に記載の水中ポンプ。
【請求項5】
前記第1フランジ部は、切欠部が形成され、前記第2フランジ部と接続したときに切欠部の一部が開口することを特徴とする請求項2に記載の水中ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19346(P2013−19346A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153989(P2011−153989)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】